(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897279
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】3次元造形用ステージ
(51)【国際特許分類】
B29C 64/245 20170101AFI20210621BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20210621BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20210621BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20210621BHJP
【FI】
B29C64/245
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/118
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-87002(P2017-87002)
(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公開番号】特開2018-183930(P2018-183930A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 正俊
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−155587(JP,A)
【文献】
特開2010−100883(JP,A)
【文献】
特開2015−000574(JP,A)
【文献】
特開2017−170742(JP,A)
【文献】
特開2018−118434(JP,A)
【文献】
特開2017−200727(JP,A)
【文献】
特開平04−366619(JP,A)
【文献】
特開平11−165354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00ー64/40
B33Y 10/00、30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元造形用ステージ上で熱溶融した熱可塑性樹脂の吐出と硬化を行い、以降熱溶融した熱可塑性樹脂の吐出と硬化を繰り返すことにより熱可塑性樹脂の薄層成形物を積層して3次元造形物を製造する、熱溶解積層法による3次元造形用ステージであって、
該ステージの少なくとも上面に複数の細孔を有し、該細孔にはステージの上面より下方に、該上面における細孔の孔径以上の孔径を有するアンカー部が形成されており、該アンカー部の輪郭とステージの上面における細孔の輪郭とがステージの上面視で位置ずれしている3次元造形用ステージ。
【請求項2】
細孔がステージを貫通している請求項1記載の3次元造形用ステージ。
【請求項3】
ステージの上面における孔径が0.1〜1.5mm、アンカー部の最大孔径がステージの上面における孔径の1.1〜2倍である請求項1又は2記載の3次元造形用ステージ。
【請求項4】
ステージの上面及び下面における細孔の孔径よりもステージ内部における細孔の孔径が大きい請求項2又は3に記載の3次元造形用ステージ。
【請求項5】
細孔が円錐台形状である請求項1〜3のいずれかに記載の3次元造形用ステージ。
【請求項6】
ステージの厚さ方向の断面において、細孔がステージ上面に対して斜行している請求項1〜3のいずれかに記載の3次元造形用ステージ。
【請求項7】
3次元造形用ステージ上で熱溶融した熱可塑性樹脂の吐出と硬化を行い、以降熱溶融した熱可塑性樹脂の吐出と硬化を繰り返すことにより熱可塑性樹脂の薄層成形物を積層して3次元造形物を製造する、熱溶解積層法による3次元造形方法であって、3次元造形用ステージとして請求項1〜6のいずれかに記載のステージを使用する3次元造形方法。
【請求項8】
3次元造形用ステージ上で熱溶融した熱可塑性樹脂の吐出と硬化を行い、以降熱溶融した熱可塑性樹脂の吐出と硬化を繰り返すことにより熱可塑性樹脂の薄層成形物を積層して3次元造形物を製造する、熱溶解積層法による3次元造形装置であって、3次元造形用ステージとして請求項1〜6のいずれかに記載のステージを備えた3次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元造形用ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
3次元造形物をCADによる設計データに基づき3次元造形装置(所謂、3Dプリンタ)で製造する3次元造形方法が種々の造形物の製造に使用されている。3次元造形方法には種々の方式があるが、このうち熱溶解積層法は、ステージ上で熱溶融した熱可塑性樹脂の吐出と硬化を繰り返すことにより薄層成形物を積層することで3次元造形物を製造する(特許文献1)。また、熱可塑性樹脂の吐出に代えて熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂のペースト状物を吐出する3次元造形方法もある(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、熱溶解積層法ではステージ上に吐出された熱可塑性樹脂が冷却により硬化する際に収縮してステージが変形するという問題がある。これに対し、ステージの表面に均一に穴を開けてステージと成形物との接着状態を向上させることや、成形物が直接接触する樹脂製のステージの下面に金属板を重ね合わせてステージを反り難くすることが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を用いる方法では、それらの樹脂を溶剤に分散させたペースト状の樹脂組成物をステージ上に吐出し、それを熱又は光で硬化させる操作を繰り返すことにより薄層成形物を積層するが、樹脂組成物に含まれる溶剤が成形物に残存すると3次元造形物の寸法精度が低下する。そこで、ステージに薄層成形物の厚さ方向の貫通孔を形成し、貫通孔を介して吸引することにより溶剤を除去し、3次元造形物の変形を防止することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−574号公報
【特許文献2】特開2016−132102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ステージの表面に単に穴を開けてもステージ上に最初に形成される薄層成形物の第1層の下面はステージと接触し、その上面は薄層成形物の第2層と接触するために第1層の上面と下面では硬化条件に差異があるので第1層付近には大きな内部応力が発生する。そのため、第1層をベースとする3次元造形物がステージから離れたり、3次元造形物に反りや割れが生じる場合がある。
【0007】
また、ステージに開けた貫通孔を介してステージ上の成形物を吸引するには吸引装置が必要となるので、3Dプリンタのコンパクト化に支障がきたされる。
【0008】
さらに、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を用いる方法は、熱溶解積層法に対し、樹脂組成が複雑であったり吸引などの周辺装置が必要であるため、材料面からも装置面からも高価なものとなる。
【0009】
これに対し、本発明は3次元造形方法で造形物を製造するにあたり、反り、割れ等の欠陥がない造形物を高い寸法精度で低コストに製造できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、3次元造形方法として熱溶解積層法を使用し、熱溶解積層法で使用するステージに、アンカー効果により造形物がステージから外れないようにする特定形状の細孔を形成すると、吸引装置を使用することなく、造形物の反りや割れ等の欠陥の発生を防止でき、造形物を高い寸法精度で製造できることを見出し、本発明を想到した。
【0011】
即ち、本発明は、3次元造形用ステージ上で樹脂の吐出と硬化を繰り返すことにより樹脂の薄層成形物を積層して3次元造形物を製造する熱溶解積層法による3次元造形方法で使用する3次元造形用ステージであって、
該ステージの少なくとも上面に複数の細孔を有し、該細孔にはステージの上面より下方に、該上面における細孔の孔径以上の孔径を有するアンカー部が形成されており、該アンカー部の輪郭とステージの上面における細孔の輪郭とがステージの上面視で位置ずれしている3次元造形用ステージを提供する。
【0012】
また、本発明は、3次元造形用ステージ上で樹脂の吐出と硬化を繰り返すことによりステージ上に樹脂の薄層成形物を積層して3次元造形物を製造する熱溶解積層法による3次元造形方法であって、3次元造形用ステージとして上述のステージを使用する3次元造形方法と、3次元造形用ステージ上で樹脂の吐出と硬化を繰り返すことにより樹脂の薄層成形物を積層して3次元造形物を製造する熱溶解積層法による3次元造形装置であって、3次元造形用ステージとして上述のステージを備えた3次元造形装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、3次元造形用ステージに設けられている細孔がアンカー部を有するので、そのステージ上に吐出された樹脂が細孔のアンカー部に入り込んで硬化すると、その樹脂の硬化物は細孔から上方に抜けなくなるというアンカー効果を得られる。したがって、ステージ上に形成された3次元造形物がステージから外れて反ったり割れたりすることが防止され、3次元造形物の寸法精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例の3次元造形装置の模式図である。
【
図3A】
図3Aは、実施例のステージ10A上に形成した薄層成形物の第1層の断面図である。
【
図3B】
図3Bは、従来のステージ10Xに形成した薄層成形物の第1層の断面図である。
【
図9】
図9は、細孔が45°千鳥に配列したステージの上面図である。
【
図10】
図10は、細孔が並列に配列したステージの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0016】
<全体構成>
図1は、熱溶解積層法で3次元造形物を製造する本発明の一実施例の3次元造形装置1の模式図である。この3次元造形装置1では、平板状のプラットフォーム2に本発明のステージ10を載置し、ステージ10の上面が水平になるようにステージ10をクリップ3で固定する。一方、ヘッド4にフィラメント状の樹脂5を装着し、目的とする3次元造形物のCADによる設計データに基づき、フィラメント状の樹脂5をヘッド4で熱溶融させてヘッド4からステージ10上に薄く吐出し、冷却により硬化させて樹脂の薄層成形物である第1層20aを形成する。この樹脂の吐出と硬化を繰り返すことによりステージ10上で薄層成形物を鉛直方向に積層して3次元造形物20を製造する。
【0017】
なお、ステージ10上に製造した3次元造形物20は、スクレーバ等を使用してステージから外せばよい。また、3次元造形物を外した後のステージ10は、細孔を清掃することにより、再度使用することができる。
【0018】
本発明の3次元造形装置及び3次元造形方法では、ステージ上に形成された3次元造形物がアンカー効果によりステージ10に固定されるように、ステージ10が後述する特定の細孔を有することを特徴としており、ステージ10以外の構成は、公知の熱溶解積層法の3次元造形装置や3次元造形方法と同様とすることができる。
【0019】
<ステージ>
図2Aは、本発明の一実施例のステージ10Aの上面図であり、
図2BはそのX−X断面図である。
【0020】
このステージ10Aは平板状で、3次元造形物と接触する上面aと、その反対側の下面bを貫通する細孔11が、ステージ10Aの上面視において60°千鳥(6方格子配列)に形成されている。
【0021】
本発明においてステージ10Aの形成素材は、3次元造形物の形成素材に応じて適宜選択することができ、例えば3次元造形物をABS、PLAなどの樹脂から形成する場合、ステージ10Aの形成素材としては、融点又は軟化点が210〜260℃のナイロン、300℃程度のポリアミドイミド等の樹脂、耐熱ガラス、アルミニウム等の金属などをあげることができる。
【0022】
ステージ10Aの厚みは細孔11を所定形状に形成しやすくする点から、例えば、好ましくは1.0〜3.0mm、特に好ましくは、1.3〜2.5mmとすることができる。
【0023】
本実施例のステージ10Aにおいて上面aにおける個々の細孔11の開口形状は円形であり、ステージ10Aの下面bにおける細孔11の開口形状も円形であるが、細孔11の水平方向の孔径は、上面aから下面bに向かって徐々に拡大しており、細孔11の内部空間は円錐台形状となっている。そのため、本実施例の細孔11では上面aより下の部分がアンカー部cとなり、アンカー部cの最大孔径Lcが下面bにおける孔径Lbと一致している。また、ステージ10Aの上面視において上面aにおける細孔11の開口形状の輪郭11aと下面bにおける細孔11の開口形状の輪郭11bが位置ずれしている。このように細孔11の内部空間を円錐台形状とすると、ステージ10Aの上面aに熱溶融した樹脂を吐出した場合、熱溶融した樹脂は、ステージ10Aの下側から吸引されなくても容易に細孔11の内部に入り込むと共に上面a上に薄く広がる。そして、それが硬化することにより薄層成形物の第1層20aが形成される。
【0024】
薄層成形物の第1層20aは、
図3Aに示したように、細孔内のアンカー部cで硬化した樹脂のアンカー効果によりステージ10Aに強固に固定される。したがって、第1層20a上にさらに薄層成形物が積層され、3次元造形物が形成されても、その3次元造形物はステージ10Aから反り上がって外れたり割れたりすることがなく、寸法精度が向上する。
【0025】
これに対し、
図3Bに示す従来のステージ10Xのように細孔11の内部空間が円柱形状で、その軸がステージ10Xの上面aに垂直であると、薄層成形物の第1層20aを形成する樹脂の一部が細孔11に入り込んで硬化しても、硬化時の内部応力により第1層20aがステージ10Xから外れ、反り上がることがある。
【0026】
(細孔の開口形状)
本発明においてステージの上面aにおける細孔11の開口形状は特に限定がなく、
図2Aに示した円形の他に楕円形、矩形などとすることができる。加工の容易性の点からは円形が好ましい。
【0027】
(細孔の孔径)
本発明においてステージの上面aにおける細孔11の孔径Laは、細孔内で硬化した樹脂のアンカー効果により3次元造形物の反りを十分に防止し、寸法精度を向上させる点、及び細孔11の形成を容易にする点から、0.1〜1.5mmとすることが好ましく、アンカー部cの最大孔径Lc(
図2A、
図2Bに示した態様ではステージ10Aの下面bにおける孔径Lb)は、ステージの上面aにおける孔径Laの1.1〜3倍とすることが好ましく、1.1〜2倍がより好ましい。
【0028】
(細孔のピッチ)
細孔11のピッチLpは特に限定されないが、アンカー効果により3次元造形物の反りを十分に防止し、寸法精度を向上させる点、及び3次元造形物の製造後に細孔由来の凸部が3次元造形物の美観や手触りに与える影響や、3次元造形物の製造後に必要により細孔由来の凸部を除去する場合の手間を軽減する点から、1.5〜6mmが好ましい。
【0029】
(細孔の断面形状)
本発明において細孔11は、その内部にアンカー部cがあれば必ずしもステージ10Aの上面aから下面bまで貫通していなくてもよい。例えば、
図4に示したステージ10Bのように、細孔11がステージ10Bの下面bに達していない有底状の孔でもよい。このステージ10Bは、貫通孔を有するプレート12と、該プレート12に着脱自在に装着できる底プレート13を組み合わせて有底状の細孔11を形成したものである。この場合、底プレート13の下面bは孔のない平坦面とすることができる。有底状の細孔11においても、細孔11内の最大孔径Lcは上面aにおける孔径Laの1.1〜3倍とすることが好ましく、1.1〜2倍とすることがより好ましい。
【0030】
なお、ステージ上に吐出した樹脂を細孔11内に入り込み易くする点からは、
図2Bに示したように細孔11はステージを貫通していることが好ましい。一方、
図4に示すように、底プレート13を用いて有底状の細孔11を設けた場合、3次元造形終了後に底プレート13を取り外すと細孔11内の樹脂の一部が底プレート13に付着することにより細孔11の掃除時間を短縮することができるので好ましい。
【0031】
本発明において、細孔11の内部空間は上述の円錐台形状に限られない。例えば、
図5に示したステージ10Cのように、細孔11の内部空間を径の異なる2つの円柱形状を組み合わせた形状とし、細孔11の内部の孔径を段階的に変化させてもよい。この場合、3次元造形物と接することになるステージ10Cの上面aの孔径Laより、その反対側の下面bの孔径Lbを大きくする。
【0032】
図6に示すように、ステージ10Dの上面aにおける孔径Laと下面bにおける孔径Lbを等しくし、上面aと下面bからステージ内部に向かって円筒状の細孔を形成し、ステージ10Dの内部にアンカー部cとして上面aや下面bよりも孔径が大きい円筒状の内部空間を形成してもよい。このステージ10Dによれば、ステージの表裏両面のいずれも3次元造形物の形成面とすることができる。したがって、一方の面で3次元造形物を形成した後、その面の清掃をすることなく、他方の面で3次元造形物を形成することができる。
【0033】
図7A及び
図7Bに示すように、円筒状の細孔11をステージ10Eの上面aに対して斜行させてもよい。この場合、ステージ10Eの上面aにおける孔径Laと下面bにおける孔径Lbは等しいが、ステージ10Eの上面aにおける細孔の輪郭11aと下面bにおける細孔11の輪郭11bはステージの上面視で位置ずれしているので、細孔11の内部に拡径部がなくてもアンカー効果を発揮させることができる。
【0034】
円筒状の細孔11をステージの上面aに対して斜行させるにあたり、
図8A及び
図8Bに示すステージ10Fのように隣り合う細孔同士で斜行する方向を異ならせてもよく、ランダムでもよい。
【0035】
(細孔の平面配置)
本発明においてステージの上面aにおける細孔11の配置は特に限定されないが、ステージ上の3次元造形物の固定状態が部分的に低下しないように、上面aにおける細孔11の分布が均一であることが好ましい。そのため、細孔11の平面配置は、
図2Aに示した60°千鳥(6方格子配列)の他、
図9に示したように45°千鳥(正方向格子配列で配列軸を矩形のステージ10の辺に対して45°傾けたもの)としてもよく、
図10に示したように並列(正方格子配列の配列軸を矩形のステージ10の辺に対して平行にしたもの)としてもよい。これらの場合においてもステージの細孔11の上面の孔径La、下面の孔径Lb、アンカー部の最大孔径Lcは上述の60°千鳥と同様とすることができる。また、45°千鳥や並列のピッチでは、隣り合う細孔のうち最も近接した細孔同士の中心間距離となる細孔ピッチ(最短)Lp1や、その次に近接した細孔同士の中心間距離となる細孔ピッチ(最長)Lp2を1.5〜6mmとすることが好ましい。
【0036】
(ステージの製造方法)
本発明のステージの製造方法は、細孔の形状に応じて適宜選択することができる。例えば、樹脂板又は金属板の片面又は両面からドリルにより細孔を開けてもよく、3次元造形法により所定形状の細孔を有するステージを製造してもよい。
図5、
図6に示したステージ10C、10Dでは、2枚又は3枚の平板に異なる孔径の細孔を開け、それらを貼り合わせることにより製造してもよい。
【0037】
本発明のステージは、熱溶解積層法でステージ上で樹脂の吐出と硬化を繰り返すことにより樹脂の薄層成形物を積層して3次元造形物を製造する方法及び装置に広く使用することができる。そこで、本発明は、本発明のステージ上で樹脂の吐出と硬化を繰り返すことにより樹脂の薄層成形物を積層して3次元造形物を製造する熱溶解積層法による3次元造形方法及び3次元造形装置を包含する。
【実施例】
【0038】
実施例1
市販の3Dプリンタ(Delta Micro Factory社、UP! Plus2)において、上面視で円錐台形状の細孔を45°千鳥に配置したアルミニウム製のステージ10Aを使用し、直方体形状の3次元造形物(160×60×5mm)を熱溶解積層法で製造した。
【0039】
この場合、造形物材料としては、ナイロン製の直径1.75mmのフィラメントを使用した。
【0040】
また、円錐台形状の細孔のステージの上面における細孔の孔径は0.8mm、面積は0.50mm
2、その反対面における細孔の孔径は1.25mm、面積は1.23mm
2、細孔のピッチは最短で2.83mm、最長で4.0mmとした。この3Dプリンタでは、個々の薄層成形物の厚みは生産性の面から0.1mm以上が好ましく、精度低下を防止するため0.4mm以下が好ましい。本実施例では、0.2mmとした。プリント速度は50〜150mm/sが好ましく、特に好ましくは、生産性の面から80mm/s以上、精度低下を防止するため110mm/s以下が好ましい。本実施例では、100mm/sとした。
【0041】
3次元造形終了後の3次元造形物には、反りによりステージ表面から離れている部分は存在しなかった。
3次元造形物の内部の密度は40%であった。表面部の密度は100%である。高密度な表面の厚みは、通常0.5〜2.0mm程度とされ、本実施では1.2mmとした。
【0042】
比較例1
実施例1において、ステージの細孔の形状を円錐台から直径1.0mmの円筒状でその軸をステージの上面に垂直にした以外は実施例1と同様にして3次元造形物を製造した。
3次元造形終了後の3次元造形物には、反りによりステージの表面から離れている部分が存在し、その部分のステージの表面との距離は3〜4mmであった。
【符号の説明】
【0043】
1 3次元造形装置
2 プラットフォーム
3 クリップ
4 ヘッド
5 フィラメント状の樹脂
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F ステージ
10X 従来のステージ
11 細孔
11a ステージの上面における細孔の輪郭
11b ステージの下面における細孔の輪郭
12 貫通孔を有するプレート
13 底プレート
20a 第1層(薄層成形物)
20 3次元造形物
a ステージの上面
b ステージの下面
c アンカー部
La ステージの上面の孔径
Lb ステージの下面の孔径
Lc アンカー部の最大孔径
Lp ピッチ