特許第6897332号(P6897332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897332
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/46 20060101AFI20210621BHJP
   H01R 13/504 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   H01R13/46 B
   H01R13/504
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-107894(P2017-107894)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-206531(P2018-206531A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 務
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−272354(JP,A)
【文献】 特開2015−159037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40−13/533
H01R 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに、互いに平行な状態で並んで挿通された、複数の端子と、を備えるコネクタにおいて、
前記端子は、
前記コネクタが被装着物に装着される装着方向に沿って、前記装着方向の装着側において、前記ハウジングから突出する突出先端部と、
前記装着側とは反対側の取付側において、前記ハウジングから突出する突出基端部と、
前記突出基端部に設けられ、前記装着方向に対して屈曲するクランク部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記取付側に配置された、熱可塑性樹脂からなる第1ハウジング部と、
前記第1ハウジング部に対向して前記装着側に配置された、熱可塑性樹脂からなる第2ハウジング部と、
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部との間に全体が囲まれ、複数の前記端子に接着された、熱硬化性樹脂からなる接着部と、を有する、コネクタ。
【請求項2】
前記第1ハウジング部は、前記接着部が配置された第1凹部を有し、
前記第2ハウジング部は、前記第1ハウジング部及び前記接着部が配置された第2凹部を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
複数の前記端子は、前記第1ハウジング部に設けられた挿通穴に圧入されており、
前記接着部は、複数の前記端子が圧入された前記第1ハウジング部の前記第1凹部内に注入されたものである、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記接着部は、複数の前記端子との間に外部からオイルが浸透しないよう複数の前記端子に接着されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング及び複数の端子を備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジングに複数の端子が配置されたコネクタは、例えば、電子回路が設けられた回路基板等と、種々の機械部品等の被装着物との電気接続を行うために用いられる。例えば、特許文献1に開示されるように、コネクタが、オイルが使用されるトランスミッション(変速機)等に装着される場合には、コネクタからのオイルの漏洩を防止する工夫がなされている。具体的には、コネクタを製造する際には、複数の端子を成形型に配置して、ハウジングのインサート成形を行い、その後、ハウジングに形成された凹部に樹脂のポッティング材のポッティングを行っている。そして、ポッティング材が端子に接着されることによって、コネクタからのオイルの漏洩を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−125973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コネクタを回路基板等に直接取り付ける場合には、各端子を回路基板の被接続部に接続する半田付け部に、コネクタを被装着物に装着した際に生じる応力が作用することが懸念される。そのため、この応力を緩和するために、各端子に、屈曲形状のクランク部を設けることが考えられる。
【0005】
特許文献1においては、ハウジングの凹部に配置された樹脂のポッティング材がコネクタの表面に露出している。
【0008】
本発明はクランク部が設けられた端子を用いる場合において、接着部が表面に露出せず、コネクタの表面に、熱可塑性樹脂による第1ハウジング部及び第2ハウジング部が配置されることにより、コネクタの耐久性を高めることができるコネクタを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ハウジングと、前記ハウジングに、互いに平行な状態で並んで挿通された、複数の端子と、を備えるコネクタにおいて、
前記端子は、
前記コネクタが被装着物に装着される装着方向に沿って、前記装着方向の装着側において、前記ハウジングから突出する突出先端部と、
前記装着側とは反対側の取付側において、前記ハウジングから突出する突出基端部と、
前記突出基端部に設けられ、前記装着方向に対して屈曲するクランク部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記取付側に配置された、熱可塑性樹脂からなる第1ハウジング部と、
前記第1ハウジング部に対向して前記装着側に配置された、熱可塑性樹脂からなる第2ハウジング部と、
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部との間に全体が囲まれ、複数の前記端子に接着された、熱硬化性樹脂からなる接着部と、を有する、コネクタにある。
【0010】
本発明の参考態様は、ハウジングと、前記ハウジングに、互いに平行な状態で並んで挿通された、複数の端子と、を備えるコネクタを製造する方法において、
前記ハウジングの一部を構成する熱可塑性樹脂からなる第1ハウジング部に、複数の前記端子を圧入する圧入工程と、
複数の前記端子が圧入された前記第1ハウジング部に設けられ、複数の前記端子の一部が配置された第1凹部に、液状の熱硬化性樹脂を注入して、前記ハウジングの他の一部を構成する接着部を形成する注型工程と、
複数の前記端子、前記第1ハウジング部及び前記接着部がインサート部品として配置された成形型において熱可塑性樹脂のインサート成形を行い、前記第1ハウジング部との間に前記接着部を挟み、前記ハウジングのさらに他の一部を構成する第2ハウジング部を成形する成形工程と、を含む、コネクタの製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
(一態様)
前記一態様のコネクタは、クランク部を有する端子を用いる。また、ハウジングは、熱可塑性樹脂からなる第1ハウジング部及び第2ハウジング部と、熱硬化性樹脂からなる接着部との3層構造を有する。そして、接着部は、第1ハウジング部と第2ハウジング部との間に挟まれている。
【0012】
また、接着部は、第1ハウジング部と第2ハウジング部とによってコネクタの内部に配置されており、コネクタの表面に露出していない。そして、コネクタの表面には、耐薬品性等に優れた熱可塑性樹脂による第1ハウジング部及び第2ハウジング部が配置される。そのため、コネクタの耐久性を高めることができる。
【0014】
それ故、前記一態様のコネクタによれば、クランク部が設けられた端子を用いる場合において、接着部が表面に露出せず、コネクタの表面に、熱可塑性樹脂による第1ハウジング部及び第2ハウジング部が配置されることにより、コネクタの耐久性を高めることができる。
【0015】
参考態様)
前記他の態様のコネクタの製造方法は、クランク部を有する端子を用いたコネクタを、簡易な成形型によって密封性を確保して成形することができるものである。
具体的には、圧入工程を行って、第1ハウジング部に複数の端子を圧入し、注型工程を行って、第1ハウジング部の第1凹部に接着部を形成する。また、成形工程を行って、第1ハウジング部との間に接着部を挟む第2ハウジング部を成形する。
【0016】
圧入工程を行うことにより、第1ハウジング部を成形するための成形型の構造を簡易にすることができる。また、注型工程を行うことにより、第1ハウジング部の第1凹部に接着部を容易に形成することができ、複数の端子、第1ハウジング部及び接着部によるインサート部品を形成することができる。
また、インサート部品を用いた成形工程を行うことにより、第2ハウジング部を成形するための成形型の一部を複数の端子のクランク部の周囲にまで形成する必要がなくなり、この成形型の構造が簡易になる。また、インサート部品を用いた成形工程を行うことにより、複数の端子と接着部との隙間に、第2ハウジング部となる熱可塑性樹脂が浸透せず、複数の端子と接着部との密封性を確保して、コネクタを成形することができる。
【0017】
それ故、前記他の態様のコネクタの製造方法によれば、クランク部が設けられた端子を有するコネクタを、簡易な成形型によって密封性を確保して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態にかかる、コネクタの断面を示す説明図。
図2】実施形態にかかる、被装着物と制御回路基板との電気接続を中継するコネクタの断面を示す説明図。
図3】実施形態にかかる、コネクタの取付側の面を示す説明図。
図4】実施形態にかかる、コネクタの装着側の面を示す説明図。
図5】実施形態にかかる、複数の端子が圧入された第1ハウジング部の断面を示す説明図。
図6】実施形態にかかる、複数の端子、第1ハウジング部及び接着部が一体化されたインサート部品の断面を示す説明図。
図7】実施形態にかかる、インサート部品が配置され、第2ハウジング部の成形を行うための成形型の断面を示す説明図。
図8】実施形態にかかる、成形後のコネクタが取り出される状態の成形型の断面を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
前述したコネクタにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
本形態のコネクタ1は、図1及び図2に示すように、絶縁性の樹脂からなるハウジング3と、導通性の金属からなる複数の端子2とを備える。複数の端子2は、ハウジング3に、互いに平行な状態で並んで挿通されている。
【0020】
端子2は、突出先端部21、突出基端部22及びクランク部221を有する。突出先端部21は、コネクタ1が被装着物71に装着される装着方向Dに沿って、装着方向Dの装着側D1において、ハウジング3から突出している。突出基端部22は、装着側D1とは反対側の取付側D2において、装着方向Dに沿ってハウジング3から突出している。クランク部221は、突出基端部22に設けられており、装着方向Dに対して屈曲して形成されている。
【0021】
ハウジング3は、熱可塑性樹脂からなる第1ハウジング部4及び第2ハウジング部5と、熱硬化性樹脂からなる接着部6とを有する。第1ハウジング部4は、コネクタ1の取付側D2に配置されており、第2ハウジング部5は、第1ハウジング部4に対向してコネクタ1の装着側D1に配置されている。接着部6は、第1ハウジング部4と第2ハウジング部5との間に挟まれた状態で、複数の端子2に接着されている。
【0022】
以下に、本形態のコネクタ1について詳説する。
図2に示すように、本形態のコネクタ1は、オイルが内部で使用される被装着物71に装着されるものである。本形態の被装着物71は、車両等に用いられる電子制御式のトランスミッション(変速機)である。コネクタ1は、トランスミッションの電子制御部と、トランスミッションの外部に配置される制御回路基板72との電気接続の中継を行うために用いられる。コネクタ1は、制御回路基板72に直接取り付けられるものである。コネクタ1の複数の端子2の突出基端部22は、制御回路基板72に設けられた被接続部721に配置される。被接続部721には、スルーホール722が形成されており、突出基端部22は、スルーホール722に挿入された状態で、半田付け等によって被接続部721に接続される。
【0023】
制御回路基板72は、トランスミッションのケース711の外側面に配置される制御装置を構成する。コネクタ1は、制御装置のケース73に設けられた配置穴731内に挿通された状態で、トランスミッションのケース711に設けられた被装着部712に装着される。コネクタ1と配置穴731との間、及びコネクタ1とケース711との間には、Oリング等のシール材12,13が配置される。シール材12,13は、トランスミッション内のオイルを封止するために用いられる。
【0024】
図1図3及び図4に示すように、複数の端子2は、長尺状又は線状のピンによって形成されており、クランク部221を除く全体がコネクタ1の装着方向Dに平行に配置されている。複数の端子2は、装着方向Dに直交する平面における2つの方向に並んで配置されている。複数の端子2における、突出先端部21及び突出基端部22を除く中間部23は、ハウジング3内に埋設されている。突出基端部22に設けられたクランク部221は、略半円状の屈曲形状に形成されている。クランク部221は、クランク部221の両側に位置する突出先端部21及び突出基端部22の部分が同一軸線上に位置するように屈曲している。
【0025】
本形態のハウジング3においては、第1ハウジング部4が、中子となる形状に形成され、第2ハウジング部5が、中子及び接着部6を覆う形状に形成されている。より具体的には、第1ハウジング部4は、接着部6が配置された第1凹部41を有する。図5及び図6に示すように、第1凹部41は、接着部6を形成するための液状の熱硬化性樹脂をポッティング(注型)するために使用される。第1凹部41は、液状の熱硬化性樹脂を貯留することができる種々の形状に形成することができる。第1ハウジング部4に第1凹部41が形成されていることにより、第1ハウジング部4に接着部6を設けることが容易になる。
【0026】
図1に示すように、第1凹部41は、第1ハウジング部4の装着側D1の表面に陥没して形成されている。第1ハウジング部4の取付側D2の表面は、外部に露出されるコネクタ1の表面を形成する。第1ハウジング部4は、装着方向Dに直交する平面において、複数の端子2が平面的に並んで配置された範囲よりも大きく形成されている。図3に示すように、コネクタ1における取付側D2の表面においては、第1ハウジング部4の周りを囲む状態で第2ハウジング部5が配置されている。
【0027】
第2ハウジング部5は、第1ハウジング部4及び接着部6が配置された第2凹部51を有する。第2凹部51は、第2ハウジング部5の取付側D2の表面に陥没して形成されている。第2ハウジング部5は、コネクタ1の主な外形形状を形成するものである。図2に示すように、第2ハウジング部5には、トランスミッションの被装着部712に装着される装着部52、及び制御装置のケース73に取り付けられる取付部53が形成されている。取付部53には、円筒状のカラー531が配置されており、カラー531の内側には、ボルトが挿通される挿通穴532が形成されている。
【0028】
図1に示すように、第1ハウジング部4の、装着方向Dに直交する平面における外周部の取付側D2の端部には、外形が縮小した縮小部42が形成されている。第2ハウジング部5の第2凹部51の取付側D2の端部には、縮小部42に配置される係止部54が形成されている。そして、係止部54によって、第1ハウジング部4が第2ハウジング部5から抜け出すことが防止されている。
【0029】
接着部6の全体は、第1ハウジング部4と第2ハウジング部5とによって囲まれている。接着部6の取付側D2の表面は、第1ハウジング部4に接触しており、接着部6の装着側D1の表面は、第2ハウジング部5に接触している。本形態の接着部6は、全ての端子2に対して化学結合を伴って接着されている。そして、各端子2と接着部6との間には隙間がほとんど形成されていない。
【0030】
また、本形態の接着部6は、複数の端子2が圧入された第1ハウジング部4の第1凹部41内に注入されたものである。接着部6は、複数の端子2との間に、外部からオイルが浸透しないよう複数の端子2に接着されている。接着部6は、複数の端子2に接触する形状であれば、いかなる形状に形成してもよい。
【0031】
第1ハウジング部4及び第2ハウジング部5は、射出成形等によって成形が容易な熱可塑性樹脂によって成形されている。第1ハウジング部4及び第2ハウジング部5を構成する熱可塑性樹脂は、耐熱性、耐薬品性等に優れた種々のものとすることができ、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリアミド樹脂等とすることができる。
接着部6を構成する熱硬化性樹脂は、封止機能に優れた種々のエラストマーとすることができ、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等とすることができる。
【0032】
図1に示すように、複数の端子2は、第1ハウジング部4に設けられた複数の挿通穴43にそれぞれ圧入されている。この圧入を行う代わりに、複数の端子2を成形型に配置し、この成形型において第1ハウジング部4のインサート成形を行って、複数の端子2が挿通された第1ハウジング部4を成形することも可能である。ただし、この場合には、成形型の一部を、各端子2のクランク部221の周囲にまで形成する必要が生じ、第1ハウジング部4を成形するための成形型の構造が複雑になる。一方、挿通穴43を有する第1ハウジング部4を単独で成形する場合には、成形型の一部を、各端子2のクランク部221の周囲にまで形成する必要がなく、成形型の構造が簡易である。従って、複数の端子2を第1ハウジング部4の複数の挿通穴43に圧入した方が、コネクタ1の製造が容易になる。
【0033】
各端子2が第1ハウジング部4の各挿通穴43に圧入された状態においては、各端子2と各挿通穴43との境界に、隙間が形成される場合がある。接着部6を構成するための熱硬化性樹脂を第1ハウジング部4の第1凹部41内に注入するときには、熱硬化性樹脂が、各端子2と各挿通穴43との隙間に浸透して樹脂のバリ(突起物)を形成することがある。この場合、熱硬化性樹脂は、各端子2と接着される接着部6の一部となるものであり、バリが形成されても特段の支障は生じない。
【0034】
(成形型8)
次に、本形態のコネクタ1を製造する際に用いる成形型8について説明する。
図6及び図7に示すように、本形態の第2ハウジング部5の成形を行う際には、コネクタ1の取付側D2の表面を成形する第1型部81と、コネクタ1の装着側D1の表面を成形する第2型部82とを有する成形型(金型)8を用いる。成形型8内には、第1型部81と第2型部82との分割面84から、複数の端子2、第1ハウジング部4及び接着部6が一体化したインサート部品11が配置される。そして、成形型8内には、第2型部82の内壁面とインサート部品11の表面とによって囲まれたキャビティ83が形成される。第2ハウジング部5は、キャビティ83内において成形される。
【0035】
第1型部81には、インサート部品11における複数の端子2の突出基端部22の干渉を避け、複数の端子2の突出基端部22を収容可能な収容凹部811が形成されている。収容凹部811は、第1型部81を貫通する状態で形成されていてもよい。第1型部81と第2型部82との分割面84の平面における収容凹部811の外形は、分割面84の平面におけるインサート部品11の第1ハウジング部4の外形よりも小さい。そして、第2ハウジング部5の成形を行う際には、インサート部品11における第1ハウジング部4の取付側D2の面の周縁部が、第1型部81の装着側D1の面によって受けられる。
【0036】
第1ハウジング部4がハウジング3の中子として成形型8内に配置されることにより、第1型部81の一部を切り欠いて、収容凹部811を形成することができる。これにより、第1型部81に、クランク部221が設けられた複数の突出基端部22を押さえる構造を設ける必要がなくなる。
【0037】
図6及び図7に示すように、インサート部品11は、第2型部82内に配置される。第2型部82の一部は、成形後のコネクタ1を、分割面84から成形型8の外部へ取り出すことができるように、分割面84に対して直交する方向にスライド可能なスライド型部821として構成されている。そして、成形後のコネクタ1を成形型8の外部へ取り出すときには、スライド型部821を、成形後のコネクタ1の第2ハウジング部5から隔離した後、このコネクタ1を分割面84から取り出す。
【0038】
(製造方法)
次に、本形態のコネクタ1を製造する方法について説明する。
コネクタ1を製造するに当たっては、まず、第1成形工程として、第1ハウジング部4を射出成形等によって成形する。このとき、第1ハウジング部4には、接着部6を形成するための液状の熱硬化性樹脂を注入するための第1凹部41、及び複数の端子2を圧入するための挿通穴43が形成される。第1ハウジング部4を単独で成形することにより、第1ハウジング部4を成形するための成形型の構造を簡易にすることができる。
【0039】
次いで、図5に示すように、圧入工程として、第1ハウジング部4の各挿通穴43に対して、各端子2を、突出先端部21の側から圧入する。そして、全ての端子2の一部が第1凹部41内に配置され、複数の端子2が一体化された第1ハウジング部4が形成される。
【0040】
なお、第1成形工程及び圧入工程を行う代わりに、別の第1成形工程として、複数の端子2を成形型に配置し、第1ハウジング部4のインサート成形を行って、複数の端子2が挿通された第1ハウジング部4を成形することもできる。
【0041】
次いで、図6に示すように、注型工程として、第1ハウジング部4の第1凹部41内に、接着剤としての液状の熱硬化性樹脂を注入(ポッティング)し、第1凹部41の全体に熱硬化性樹脂を充填する。このとき、液状の熱硬化性樹脂は、第1凹部41内に配置された各端子2の突出先端部21の一部に接触する。そして、熱硬化性樹脂に熱が加えられたときには、熱硬化性樹脂が硬化し、第1凹部41内において接着部6が形成される。こうして、第1ハウジング部4の第1凹部41に接着部6を容易に形成することができる。また、各端子2の突出先端部21に接着部6が接着され、複数の端子2、第1ハウジング部4及び接着部6が一体化したインサート部品11が形成される。
【0042】
次いで、図7に示すように、第2成形工程として、インサート部品11を成形型8内に配置し、第2ハウジング部5のインサート成形を行う。具体的には、第1型部81と第2型部82との間にインサート部品11が支えられたときには、第1型部81と第2型部82とインサート部品11とによって成形型8内にキャビティ83が形成される。そして、キャビティ83内に、第2ハウジング部5を構成するための溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する。このとき、各端子2と接着部6とが接着されていることにより、各端子2と接着部6との境界に隙間が形成されておらず、溶融状態の熱可塑性樹脂は、各端子2と接着部6との境界へ浸透することができない。
【0043】
その後、溶融状態の熱可塑性樹脂が冷却されることによって固化して第2ハウジング部5となり、成形型8内にコネクタ1が製造される。そして、図8に示すように、第1型部81と第2型部82とを相対的に離して成形型8を開くとともに、スライド型部821を第2ハウジング部5から離すようにスライドさせて、成形型8内から成形後のコネクタ1を取り出す。
【0044】
(作用効果)
本形態のコネクタ1は、接着部6が第1ハウジング部4と第2ハウジング部5との間に挟まれる構造を有し、第2ハウジング部5の成形を行う際に、複数の端子2、第1ハウジング部4及び接着部6が、インサート部品11として成形型8内に配置されるようにしたものである。
【0045】
本形態においては、複数の端子2と一体化された第1ハウジング部4の第1凹部41に接着部6を形成してインサート部品11とし、このインサート部品11を成形型8内に配置して、第2ハウジング部5のインサート成形を行う。これにより、第2ハウジング部5を成形する際には、インサート部品11における第1ハウジング部4の存在により、成形型8の一部をクランク部221の周囲にまで形成する必要がなくなり、成形型8の構造が簡易になる。
【0046】
また、第2ハウジング部5の成形を行う際には、複数の端子2に接着部6が接着されており、第1ハウジング部4を構成するための溶融状態の熱可塑性樹脂は、複数の端子2と接着部6との境界へ浸透することができない。そのため、複数の端子2と接着部6との境界に、熱可塑性樹脂のバリ(突出物)がほとんど形成されない。これにより、複数の端子2と接着部6との接着が阻害されず、複数の端子2と接着部6との密封性を確保して、コネクタ1を製造することができる。そして、コネクタ1が、内部にオイルが循環するトランスミッション等の被装着物71の被装着部712に装着される場合であっても、オイルが複数の端子2と接着部6との境界から被装着物71の外部へ漏洩することが防止される。また、複数の端子2と接着部6との接着不良の発生がほとんどなく、コネクタ1の不良品がほとんど発生しない。
【0047】
また、接着部6は、第1ハウジング部4と第2ハウジング部5とによってコネクタ1の内部に配置されており、コネクタ1の表面に露出していない。そして、コネクタ1の表面には、耐薬品性等に優れた熱可塑性樹脂による第1ハウジング部4及び第2ハウジング部5が配置される。そのため、コネクタ1の耐久性を高めることができる。
【0048】
それ故、本形態のコネクタ1及びその製造方法によれば、クランク部221が設けられた端子2を有するコネクタ1を、簡易な成形型8によって密封性を確保して製造することができる。
【0049】
なお、本発明は、実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 コネクタ
11 インサート部品
2 端子
21 突出先端部
22 突出基端部
221 クランク部
3 ハウジング
4 第1ハウジング部
41 第1凹部
5 第2ハウジング部
51 第2凹部
6 接着部
71 被装着物(トランスミッション)
8 成形型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8