特許第6897341号(P6897341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6897341-タイヤ 図000004
  • 特許6897341-タイヤ 図000005
  • 特許6897341-タイヤ 図000006
  • 特許6897341-タイヤ 図000007
  • 特許6897341-タイヤ 図000008
  • 特許6897341-タイヤ 図000009
  • 特許6897341-タイヤ 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897341
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20210621BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   B60C11/12 A
   B60C11/12 C
   B60C11/13 C
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-111891(P2017-111891)
(22)【出願日】2017年6月6日
(65)【公開番号】特開2018-203117(P2018-203117A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】森 一真
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−230643(JP,A)
【文献】 特開2004−106747(JP,A)
【文献】 特開2010−095196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、
前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、
前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、
前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、
前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、
前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、
前記第1横溝は、曲がった部分を含むタイヤ。
【請求項2】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、
前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、
前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、
前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、
前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、
前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、
前記第1横溝は、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜した一対の外側部と、前記一対の外側部の間に配された中央部とを含み、
前記中央部は、タイヤ軸方向に対して前記外側部と同じ向きに傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対して前記各外側部よりも大きい角度で傾斜しているタイヤ。
【請求項3】
前記第1タイバーは、前記中央部を含むように配されている請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、
前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、
前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、
前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、
前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、
前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、
前記第1ブロックには、前記第1縦エッジ又は前記第2縦エッジからのび、第1サイプに接続することなく前記第1ブロック内で途切れる少なくとも1本のラグサイプが設けられており、
前記ラグサイプは、タイヤ軸方向に対して前記第1サイプと同じ向きに傾斜しているタイヤ。
【請求項5】
前記第1ブロックは、前記第1サイプに区分された一対のブロック片を含み、
前記ラグサイプは、少なくとも一方の前記ブロック片に配された第1ラグサイプ及び第2ラグサイプを含む請求項4記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第2ラグサイプは、前記第1サイプと前記第1ラグサイプとの間に設けられ、
前記第2ラグサイプは、前記第1ラグサイプよりも小さいタイヤ軸方向の長さを有する請求項5記載のタイヤ。
【請求項7】
前記各ブロック片には、前記第1ラグサイプ及び前記第2ラグサイプが1本ずつ設けられている請求項5又は6記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第3部分は、前記第1タイバーをタイヤ周方向に仮想延長した領域からはみ出すことなくその内部に設けられている請求項1乃至7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1タイバーには、前記第1横溝の長手方向にのびる溝底サイプが設けられている請求項1乃至8のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた氷雪上性能を持続させ得るタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、氷雪上走行に適した冬用のタイヤが記載されている。上記タイヤは、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、主溝に連通する複数の横溝及び複数のサイプとを有している。
【0003】
しかしながら、上記タイヤは、氷雪上走行時、主溝や横溝に雪や砕けた氷が詰まり易く、良好な氷雪上性能を持続させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−203703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題に鑑み案出されたもので、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた氷雪上性能を持続させ得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、前記主溝に区分された第1陸部とを含み、前記第1陸部は、前記第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含み、前記第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられ、前記第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、前記第1縦エッジから前記第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有し、前記第1サイプは、前記第1縦エッジからのびる第1部分と、前記第2縦エッジからのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分とを含み、前記第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1部分及び前記第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第1横溝は、曲がった部分を含むのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第1横溝は、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜した一対の外側部と、前記一対の外側部の間に配された中央部とを含み、前記中央部は、タイヤ軸方向に対して前記外側部と同じ向きに傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対して前記各外側部よりも大きい角度で傾斜しているのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記第1タイバーは、前記中央部を含むように配されているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第3部分は、前記第1タイバーをタイヤ周方向に仮想延長した領域からはみ出すことなくその内部に設けられているのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第1タイバーには、前記第1横溝の長手方向にのびる溝底サイプが設けられているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記第1ブロックには、前記第1縦エッジ又は前記第2縦エッジからのび、第1サイプに接続することなく前記第1ブロック内で途切れる少なくとも1本のラグサイプが設けられているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記ラグサイプは、タイヤ軸方向に対して前記第1サイプと同じ向きに傾斜しているのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記第1ブロックは、前記第1サイプに区分された一対のブロック片を含み、前記ラグサイプは、少なくとも一方の前記ブロック片に配された第1ラグサイプ及び第2ラグサイプを含むのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記第2ラグサイプは、前記第1サイプと前記第1ラグサイプとの間に設けられ、前記第2ラグサイプは、前記第1ラグサイプよりも小さいタイヤ軸方向の長さを有するのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記各ブロック片には、前記第1ラグサイプ及び前記第2ラグサイプが1本ずつ設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタイヤのトレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、主溝に区分された第1陸部とを含む。第1陸部は、第1陸部を完全に横切る複数の第1横溝で区分された複数の第1ブロックを含む。第1横溝には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバーが設けられている。第1横溝は、氷雪上走行時、溝内で雪や氷を押し固めてこれをせん断することにより、大きなトラクションを提供し得る。また、第1横溝に設けられた第1タイバーは、第1ブロックのタイヤ周方向の変形を適度に抑制し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を維持するのに役立つ。
【0018】
本発明のタイヤの第1ブロックは、タイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびる第1縦エッジ及び第2縦エッジと、第1縦エッジから第2縦エッジまでタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびる第1サイプとを有している。また、第1サイプは、第1縦エッジからのびる第1部分と、第2縦エッジからのびる第2部分と、第1部分と第2部分との間の第3部分とを含む。第3部分のタイヤ軸方向に対する角度は、第1部分及び第2部分のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。
【0019】
第1サイプは、氷雪上走行時、そのエッジによってタイヤ周方向及びタイヤ軸方向の摩擦力を提供することができる。また、第1サイプは、第1部分と第2部分との間に、タイヤ軸方向に対する角度が相対的に大きい第3部分を含んでいるため、第1ブロックの中央部のタイヤ周方向の剛性を維持し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を維持することができる。
【0020】
第1サイプは、第1縦エッジから第2縦エッジまで同じ向きに傾斜しているため、第1ブロックにタイヤ周方向の圧縮応力が作用したとき、第1サイプで区分される各ブロック片は、互いに接触しながらブロック外側に位置ずれする傾向がある。このようなブロック片の挙動は、氷雪上走行時、第1陸部と隣接する主溝内の雪を効果的に排出するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1の第1陸部の拡大図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4図2の第1ブロックの拡大図である。
図5図1の第2陸部の拡大図である。
図6図1の第3陸部の拡大図である。
図7】比較例のタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車の冬用空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに用いることができる。
【0023】
トレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝が設けられている。複数の主溝は、例えば、ショルダー主溝3及びクラウン主溝4を含んでいる。
【0024】
ショルダー主溝3は、例えば、複数の主溝の内、最もトレッド端Te側に設けられている。本実施形態のショルダー主溝3は、各トレッド端Te側に1本ずつ設けられている。
【0025】
トレッド端Teは、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0026】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0027】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0028】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0029】
本実施形態のショルダー主溝3は、例えば、タイヤ軸方向内側の溝縁が直線状にのび、タイヤ軸方向外側の溝縁がジグザグ状にのびている。
【0030】
クラウン主溝4は、例えば、各ショルダー主溝3とタイヤ赤道Cとの間に1本ずつ設けられている。これにより、本実施形態のクラウン主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cを挟む様に2本設けられている。本発明の他の態様では、クラウン主溝4は、タイヤ赤道C上に1本設けられても良い。本実施形態のクラウン主溝4は、例えば、両側の溝縁がそれぞれ直線状にのびている。
【0031】
ショルダー主溝3は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L1がトレッド幅TWの0.20〜0.30倍であるのが望ましい。クラウン主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L2がトレッド幅TWの0.05〜0.10倍であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態での一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0032】
ショルダー主溝3の溝幅W1及びクラウン主溝4の溝幅W2は、例えば、トレッド幅TWの3%〜7%であるのが望ましい。各主溝3乃至6の溝深さは、乗用車用のタイヤの場合、例えば、5〜10mm程度であるのが望ましい。但し、各主溝3乃至6の寸法は、このような範囲に限定されるものではない。
【0033】
上述の複数の主溝3、4が設けられることにより、トレッド部2には、第1陸部11が区分されている。望ましい態様として、本実施形態の第1陸部11は、一対のクラウン主溝4の間に区分されている。これにより、第1陸部11は、タイヤ赤道C上に設けられている。但し、第1陸部11は、このような位置に限定されるものではない。
【0034】
図2には、第1陸部11の拡大図が示されている。図2に示されるように、第1陸部11は、複数の第1横溝14と、これらに区分された複数の第1ブロック15とを含んでいる。
【0035】
第1横溝14は、タイヤ軸方向に対して第1方向(本明細書の各図では、右上がりとなっている。)に傾斜している。また、第1横溝14は、第1陸部11を完全に横切っている。第1横溝14は、氷雪上走行時、溝内で雪や氷を押し固めてこれをせん断することにより、大きなトラクションを提供し得る。
【0036】
第1横溝14は、例えば、曲がった部分を含んでいるのが望ましい。本実施形態の第1横溝14は、例えば、一対の外側部17と中央部18とを含んでいる。
【0037】
一対の外側部17は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。各外側部17は、例えば、タイヤ軸方向に対して25〜35°の角度θ4で傾斜している。中央部18は、一対の外側部17の間に配されている。中央部18は、例えば、タイヤ軸方向に対して外側部17と同じ向きに傾斜している。中央部18は、例えば、タイヤ軸方向に対して各外側部17よりも大きい角度θ5で傾斜している。中央部18の角度θ5は、例えば、50〜65°であるのが望ましい。このような第1横溝14は、氷雪上走行時、溝内で固い雪柱を形成でき、大きな雪柱せん断力を提供することができる。
【0038】
図3には、第1横溝14のA−A線断面図が示されている。図3に示されるように、第1横溝14には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第1タイバー19が設けられている。第1タイバー19は、第1ブロック15のタイヤ周方向の変形を適度に抑制し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を維持するのに役立つ。
【0039】
第1タイバー19は、例えば、上述の中央部18を含むように配されているのが望ましい。第1タイバー19のタイヤ軸方向の長さL4は、例えば、第1横溝14のタイヤ軸方向の長さL3の0.20〜0.35倍であるのが望ましい。第1タイバー19の深さd2は、第1横溝14の最大の深さd1の0.60〜0.80倍であるのが望ましい。
【0040】
第1タイバー19には、第1横溝14の長手方向にのびる溝底サイプ24が設けられているのが望ましい。溝底サイプ24を有する第1タイバー19は、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能とをバランス良く高めるのに役立つ。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.5mm未満の切れ込みを意味する。
【0041】
図4には、第1ブロック15の拡大図が示されている。図4に示されるように、第1ブロック15には、第1縦エッジ26及び第2縦エッジ27と、第1サイプ20とを有している。
【0042】
第1縦エッジ26及び第2縦エッジ27は、第1ブロック15のタイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびている。本実施形態の第1縦エッジ26及び第2縦エッジ27は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびている。但し、このような態様に限定されるものではなく、第1縦エッジ26及び第2縦エッジ27は、例えば、ジグザグ状や波状にのびるものでも良い。
【0043】
第1サイプ20は、第1縦エッジ26から第2縦エッジ27までタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびている。本実施形態の第1サイプ20は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1横溝14と同じ向きに傾斜している。これにより、第1ブロック15は、第1サイプ20に区分された一対のブロック片15aを含んでいる。
【0044】
第1サイプ20は、第1部分21、第2部分22及び第3部分23を含んでいる。第1部分21は、第1縦エッジ26からのびている。第2部分22は、第2縦エッジ27からのびている。第3部分23は、第1部分21と第2部分22との間に設けられている。第1部分21乃至第3部分23は、それぞれ、直線状にのびているのが望ましい。
【0045】
第3部分23のタイヤ軸方向に対する角度θ3は、第1部分21のタイヤ軸方向に対する角度θ1及び第2部分22のタイヤ軸方向に対する角度θ2よりも大きい。
【0046】
第1サイプ20は、氷雪上走行時、そのエッジによってタイヤ周方向及びタイヤ軸方向の摩擦力を提供することができる。また、第1サイプ20は、第1部分21と第2部分22との間に、タイヤ軸方向に対する角度が相対的に大きい第3部分23を含んでいるため、第1ブロック15の中央部のタイヤ周方向の剛性を維持し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を維持することができる。
【0047】
第1サイプ20は、第1縦エッジ26から第2縦エッジ27まで同じ向きに傾斜しているため、第1ブロック15にタイヤ周方向の圧縮応力が作用したとき、第1サイプ20で区分される各ブロック片15aは、互いに接触しながらブロック外側(図4の矢印aの方向である)に位置ずれする傾向がある。このようなブロック片15aの挙動は、氷雪上走行時、第1陸部11と隣接する主溝内の雪を効果的に排出するのに役立つ。
【0048】
また、第1サイプ20は、上述した第1部分21乃至第3部分23を含んでいるため、各ブロック片がブロック外側に位置ずれするとき、第1横溝14と第1部分21との間の小片部分28a、及び、第1横溝14と第2部分22との間の小片部分28bは、それぞれ、隣接するブロック片に押されて第1横溝14の溝幅を小さくする向き(図4の矢印bの方向である)に変形する。しかも、第1タイバー19が第1横溝14の両側の端部を除いた部分に設けられているため、上記小片部分28a、28bは、第1タイバー19に妨げられることなく、比較的大きく変形できる。これにより、氷雪上走行時、主溝及び第1横溝14内の雪がさらに効果的に排出される。従って、本発明のタイヤは、優れた氷雪上性能を持続して発揮することができる。
【0049】
上述の効果をさらに発揮させるために、第1部分21の角度θ1及び第2部分22の角度θ2は、例えば、25〜35°であるのが望ましい。第3部分23の角度θ3は、例えば、70〜80°であるのが望ましい。
【0050】
図2に示されるように、第1部分21乃至第3部分23が上述の角度で配されることにより、第3部分23と第1部分21又は第2部分22との間の角度θ6は、例えば、125〜150°であるのが望ましい。
【0051】
第1部分21のタイヤ軸方向の長さL5、及び、第2部分22のタイヤ軸方向の長さL6は、例えば、第1ブロック15のタイヤ軸方向の幅W3の0.35〜0.45倍であるのが望ましい。より望ましい態様では、第2部分22の長さL6は、第1部分21の長さL5と同一である。このような第1サイプ20は、上記小片部分28a、28bをさらに大きく変形させることができ、ひいては優れた氷雪上性能をさらに持続して発揮することができる。
【0052】
同様の観点から、第3部分23は、例えば、第1部分21よりも小さいタイヤ軸方向の長さL7を有しているのが望ましい。第3部分23のタイヤ軸方向の長さL7は、例えば、第1ブロック15の幅W3の0.15〜0.25倍であるのが望ましい。
【0053】
さらに望ましい態様では、第3部分23は、第1タイバー19をタイヤ周方向に仮想延長した領域からはみ出すことなくその内部に設けられているのが望ましい。これにより、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、上述の効果を得ることができる。
【0054】
第1ブロック15には、例えば、少なくとも1本のラグサイプ30が設けられているのが望ましい。ラグサイプ30は、第1縦エッジ26又は第2縦エッジ27からのび、第1サイプ20に接続することなく第1ブロック15内で途切れている。ラグサイプは、例えば、タイヤ軸方向に対して第1サイプ20と同じ向きに傾斜している。ラグサイプ30は、第1ブロック15の過度な剛性低下を抑制しつつ、氷雪上性能を高めることができる。
【0055】
ラグサイプ30は、例えば、少なくとも一方のブロック片15aに配された第1ラグサイプ31及び第2ラグサイプ32を含んでいる。望ましい態様として、本実施形態の各ブロック片15aには、第1ラグサイプ31及び第2ラグサイプ32が1本ずつ設けられている。
【0056】
第1ラグサイプ31は、例えば、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。望ましい態様では、第1ラグサイプ31は、例えば、第1サイプ20の第1部分21又は第2部分22に沿ってのびている。
【0057】
第2ラグサイプ32は、例えば、第1サイプ20と第1ラグサイプ31との間に設けられている。第2ラグサイプ32は、例えば、第1ラグサイプ31よりも小さいタイヤ軸方向の長さを有する。これにより、第1ブロック15のタイヤ周方向の中央部分の剛性を維持でき、ドライ路面での操縦安定性を効果的に維持することができる。
【0058】
各ラグサイプ30は、例えば、タイヤ軸方向に対して25〜35°の角度θ8で傾斜しているのが望ましい。各ラグサイプ30のタイヤ軸方向の長さL8は、例えば、第1ブロック15のタイヤ軸方向の幅W3の0.35〜0.45倍であるのが望ましい。
【0059】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、第2陸部12及び第3陸部13が区分されている。第2陸部12は、例えば、ショルダー主溝3とクラウン主溝4との間に区分されている。第3陸部13は、例えば、ショルダー主溝3とトレッド端Teとの間に区分されている。
【0060】
図5には、第2陸部12の拡大図が示されている。図5に示されるように、第2陸部12は、複数の第2横溝34と、これらに区分された複数の第2ブロック35とを含んでいる。
【0061】
第2横溝34は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1横溝14と同じ向きに傾斜して直線状にのびているのが望ましい。第2横溝34は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1横溝14よりも小さい角度θ9で配されているのが望ましい。前記角度θ9は、例えば、5〜10°である。
【0062】
第2横溝34には、タイヤ軸方向の両側の端部を除いた部分の少なくとも一部で溝底が隆起した第2タイバー36が設けられているのが望ましい。第2タイバー36は、例えば、少なくとも第2横溝34のタイヤ軸方向の中央部を含むのが望ましい。第2タイバー36のタイヤ軸方向の長さL9は、例えば、第2ブロック35のタイヤ軸方向の幅W4の0.20〜0.30倍であるのが望ましい。このような第2横溝34は、第2ブロック35のタイヤ周方向の変形を適度に抑制し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を維持するのに役立つ。
【0063】
第2タイバー36には、第2横溝34の長手方向にのびる溝底サイプ37が設けられているのが望ましい。このような溝底サイプ37は、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能とをバランス良く高めることができる。
【0064】
第2ブロック35は、例えば、第3縦エッジ38及び第4縦エッジ39と、第2サイプ40とを有している。第3縦エッジ38及び第4縦エッジ39は、第2ブロック35のタイヤ軸方向の両側でタイヤ周方向にのびている。第3縦エッジ38及び第4縦エッジ39は、例えば、タイヤ周方向に沿って直線状にのびている。
【0065】
第2サイプ40は、第3縦エッジ38から第4縦エッジ39までタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜してのびている。本実施形態の第2サイプ40は、例えば、タイヤ軸方向に対して第2横溝34と同じ向きに傾斜している。これにより、第2ブロック35は、第2サイプ40に区分された一対のブロック片35aを含んでいる。
【0066】
第2サイプ40は、第1部分41、第2部分42及び第3部分43を含んでいる。第1部分41は、第3縦エッジ38からのびている。第2部分42は、第4縦エッジ39からのびている。第3部分43は、第1部分41と第2部分42との間に設けられている。第2サイプ40の第1部分41乃至第3部分43は、それぞれ、上述した第1サイプ20の第1部分21乃至第3部分23に対応し、これらの構成を適用することができる。
【0067】
第3部分43のタイヤ軸方向に対する角度θ12は、第1部分41のタイヤ軸方向に対する角度θ10及び第2部分42のタイヤ軸方向に対する角度θ11よりも大きい。これにより、上述した効果を得ることができる。
【0068】
第2サイプ40の第1部分41の角度θ10及び第2部分42の角度θ11は、第1サイプ20の第1部分41の角度θ1よりも小さいのが望ましい。具体的には、前記角度θ10及びθ11は、例えば、5〜10°であるのが望ましい。これにより、氷雪上走行時、第1ブロック15と第2ブロック35とが異なる態様で変形し易くなり、ひいてはクラウン主溝4に雪や砕けた氷が詰まるのを抑制することができる。
【0069】
同様の観点から、第2サイプ40の第3部分43の角度θ12は、例えば、第1サイプ20の第3部分43の角度θ3よりも小さいのが望ましい。具体的には、前記角度θ12は、例えば、65〜80°であるのが望ましい。
【0070】
さらに望ましい態様では、第3部分43は、第2タイバー36をタイヤ周方向に仮想延長した領域からはみ出すことなくその内部に設けられているのが望ましい。これにより、これにより、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、上述の効果を得ることができる。
【0071】
第2ブロック35には、例えば、少なくとも1本のラグサイプ45が設けられているのが望ましい。ラグサイプ45は、第3縦エッジ38又は第4縦エッジ39からのび、第2サイプ40に接続することなく第2ブロック35内で途切れている。ラグサイプ45は、例えば、タイヤ軸方向に対して第2サイプ40と同じ向きに傾斜している。このようなラグサイプ45は、第2ブロック35の剛性を維持しつつ、氷雪上性能を高めることができる。
【0072】
ラグサイプ45は、例えば、少なくとも一方のブロック片35aに配された第3ラグサイプ46及び第4ラグサイプ47を含んでいる。望ましい態様として、本実施形態の各ブロック片35aには、第3ラグサイプ46及び第4ラグサイプ47が1本ずつ設けられている。第3ラグサイプ46及び第4ラグサイプ47は、それぞれ、上述した第1ブロック15に設けられた第1ラグサイプ31及び第2ラグサイプ32に対応し、これらの構成を適用することができる。
【0073】
第4ラグサイプ47は、例えば、第2サイプ40と第3ラグサイプ46との間に設けられている。第4ラグサイプ47は、例えば、第3ラグサイプ46よりも小さいタイヤ軸方向の長さを有する。このような第4ラグサイプ47は、第2ブロック35のタイヤ周方向の中央部の剛性を維持することができる。
【0074】
各ラグサイプ45は、例えば、タイヤ軸方向に対して5〜10°の角度θ13で傾斜しているのが望ましい。各ラグサイプ45のタイヤ軸方向の長さL10は、例えば、第2ブロック35のタイヤ軸方向の幅W4の0.35〜0.45倍であるのが望ましい。
【0075】
図6には、第3陸部13の拡大図が示されている。第3陸部13は、例えば、複数の第3横溝49と、これらに区分された第3ブロック50とを含んでいる。
【0076】
第3横溝49は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1横溝14とは逆向き傾斜しているのが望ましい。
【0077】
第3横溝49は、例えば、内側溝部51と、外側溝部52と、接続溝部53とを含んでいるのが望ましい。内側溝部51は、例えば、ショルダー主溝3からタイヤ軸方向外側にのびている。外側溝部52は、例えば、内側溝部51とはタイヤ周方向に位置ずれし、トレッド端Teまでのびている。接続溝部53は、内側溝部51と外側溝部52との間に配され、これらに連通している。このような第3横溝49は、氷雪上走行時、溝内で固い雪柱を形成することができる。
【0078】
内側溝部51及び外側溝部52は、例えば、タイヤ軸方向に対して5°以下の角度θ14で配されているのが望ましい。接続溝部53は、例えば、タイヤ軸方向に対して30〜45°の角度θ15で配されているのが望ましい。
【0079】
内側溝部51には、溝底が他の部分よりも隆起した第3タイバ−54が設けられているのが望ましい。より望ましい態様では、第3タイバー54には、第3横溝49の長手方向にのびる溝底サイプ55が設けられている。このような第3タイバー54は、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能とをバランス良く高めることができる。
【0080】
第3ブロック50には、例えば、少なくとも1本の第3サイプ56が設けられているのが望ましい。本実施形態の各第3ブロック50には、2本の第3サイプ56が設けられている。
【0081】
第3サイプ56は、例えば、ショルダー主溝3からタイヤ軸方向外側にのび、トレッド端Teの手前で途切れている。このような第3サイプ56は、第3ブロック50の剛性を維持しつつ、氷雪上性能を高めることができる。
【0082】
第3サイプ56は、例えば、内側サイプ部57と、外側サイプ部58と、接続サイプ部59とを含んでいるのが望ましい。内側サイプ部57は、例えば、ショルダー主溝3からのび、第3横溝49の内側溝部51に沿ってのびている。外側サイプ部58は、例えば、内側サイプ部57のタイヤ軸方向外側に配され、第3横溝49の外側溝部52に沿ってのびている。接続サイプ部59は、内側サイプ部57と外側サイプ部58との間に配され、接続溝部53に沿ってのびている。このような第3サイプ56は、氷雪上走行時、そのエッジによってタイヤ軸方向にも摩擦力を提供することができる。
【0083】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0084】
図1の基本パターンを有するサイズ265/70R17のタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、図7に示されるように、各ブロックを直線状に横切るサイプが設けられたタイヤが試作された。各テストタイヤのドライ路面での操縦安定性及び氷雪上性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:17×8.0JJ
タイヤ内圧:270kPa
テスト車両:4輪駆動車、排気量4600cc
タイヤ装着位置:全輪
【0085】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときハンドル応答性、剛性感、グリップ感等を含む操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
【0086】
<氷雪上性能>
上記テスト車両で、氷雪上を走行したときのハンドル応答性、発進、制動感、グリップ等及びこれらの持続性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、優れた氷雪上性能を有していることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0087】
【表1】
【0088】
テストの結果、実施例のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、優れた氷雪上性能を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0089】
2 トレッド部
11 第1陸部
14 第1横溝
15 第1ブロック
19 第1タイバー
20 第1サイプ
21 第1部分
22 第2部分
23 第3部分
26 第1縦エッジ
27 第2縦エッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7