特許第6897422号(P6897422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897422
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】アクスルハウジング支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60G 1/02 20060101AFI20210621BHJP
   F16D 55/38 20060101ALN20210621BHJP
【FI】
   B60G1/02
   !F16D55/38
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-161221(P2017-161221)
(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公開番号】特開2019-38354(P2019-38354A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年11月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】増田 英夫
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102012208921(DE,A1)
【文献】 特開2003−247573(JP,A)
【文献】 特開2000−240824(JP,A)
【文献】 実開平04−067502(JP,U)
【文献】 特開2009−150486(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0062928(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
B60B 35/00
F16D 55/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクスルハウジングをブレーキハウジングとともに、アクスルブラケットに支持させるアクスルハウジング支持構造であって、
前記アクスルブラケットから前記アクスルハウジングが脱落することを防止する連結部材が前記アクスルブラケット及び前記アクスルハウジングに挿入されることによって、前記アクスルハウジングと前記アクスルブラケットとが連結されており、
前記アクスルブラケット、前記ブレーキハウジング、及び、前記アクスルハウジングは、共締めボルトによって共締めされており、
前記連結部材は、ボルトであり、
前記ブレーキハウジングの前記アクスルハウジングとの対向面には凹部が形成されており、
前記凹部には、前記ボルトの頭部が挿入されているアクスルハウジング支持構造。
【請求項2】
前記連結部材及び前記共締めボルトは、同一方向から挿通される請求項1に記載のアクスルハウジング支持構造。
【請求項3】
前記連結部材は、前記共締めボルトよりも直径の小さいボルトである請求項1又は請求項2に記載のアクスルハウジング支持構造。
【請求項4】
前記共締めボルトは、前記アクスルハウジングに収容されたアクスルシャフトの周方向に間隔を空けて複数設けられており、
前記共締めボルト同士は、等間隔置きに配置されている請求項1〜請求項のうち何れか一項に記載のアクスルハウジング支持構造。
【請求項5】
前記アクスルハウジングは、前記アクスルブラケットに嵌め合わされる嵌合部を備える請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のアクスルハウジング支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクスルハウジング支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の産業車両は、駆動輪に駆動力を伝えるアクスルシャフトと、アクスルシャフトが収容されたアクスルハウジングと、アクスルブラケットと、ブレーキ装置と、を備える。ブレーキ装置は、ブレーキと、ブレーキが収容されたブレーキハウジングと、を備える。アクスルハウジングは、ブレーキハウジングとともにアクスルブラケットに支持される。これにより、アクスルハウジング、ブレーキ装置、及び、アクスルブラケットはユニット化されている。
【0003】
特許文献1では、アクスルブラケット、アクスルハウジング、及び、ブレーキハウジングを共締めボルトで共締めすることで、アクスルハウジングをアクスルブラケットに支持させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−343612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アクスルブラケット、アクスルハウジング、及び、ブレーキハウジングを共締めボルトで共締めする場合、各部材を位置決めした状態で共締めボルトを締結する必要がある。各部材の位置決めに治具を用いる場合、専用の治具を製造する必要がある。また、治具の着脱に手間がかかる。
【0006】
本発明の目的は、治具を用いることなく、アクスルブラケット、アクスルハウジング、及び、ブレーキハウジングを共締めボルトによって共締めできるアクスルハウジング支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するアクスルハウジング支持構造は、アクスルハウジングをブレーキハウジングとともに、アクスルブラケットに支持させるアクスルハウジング支持構造であって、前記アクスルブラケットから前記アクスルハウジングが脱落することを防止する連結部材が前記アクスルブラケット及び前記アクスルハウジングに挿入されることによって、前記アクスルハウジングと前記アクスルブラケットとが連結されており、前記アクスルブラケット、前記ブレーキハウジング、及び、前記アクスルハウジングは、共締めボルトによって共締めされている。
【0008】
これによれば、連結部材によってアクスルブラケットとアクスルハウジングとが連結されることで、アクスルブラケットからアクスルハウジングが脱落することが防止されている。共締めボルトによってアクスルブラケット、アクスルハウジング、及び、ブレーキハウジングを共締めする際には、ブレーキハウジングとアクスルハウジングとの位置決めを行った状態で、共締めボルトを締結すればよく、治具を用いることなくアクスルハウジング、ブレーキハウジング、及び、アクスルブラケットを共締めすることができる。
【0009】
上記アクスルハウジング支持構造について、前記連結部材は、前記共締めボルトよりも直径の小さいボルトであってもよい。
連結部材として、直径の大きいボルトを用いると、共締めボルトの配置位置に制約が生じ得る。連結部材として、共締めボルトよりも直径の小さいボルトを用いることで、共締めボルトの配置位置に制約が生じにくい。
【0010】
上記アクスルハウジング支持構造について、前記共締めボルトは、前記アクスルハウジングに収容されたアクスルシャフトの周方向に間隔を空けて複数設けられており、前記共締めボルト同士は、等間隔置きに配置されていてもよい。
【0011】
これによれば、各共締めボルトに加わる荷重が分散されやすく、特定の共締めボルトに荷重が集中することを抑制できる。
上記アクスルハウジング支持構造について、前記アクスルハウジングは、前記アクスルブラケットに嵌め合わされる嵌合部を備えていてもよい。
【0012】
これによれば、嵌合部がアクスルブラケットに嵌め合わされることで、共締めボルトを締結する際に、連結部材を中心として、アクスルハウジングが回転することを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、治具を用いることなく、アクスルブラケット、アクスルハウジング、及び、ブレーキハウジングをボルトによって共締めできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フロントアクスルの断面図。
図2】フロントアクスルを示す図1の2−2線端面図。
図3】フロントアクスルを示す図1の3−3線端面図。
図4】フロントアクスルを示す図2の4−4線端面図。
図5】アクスルブラケットにアクスルハウジングを組み付けるときの工程を説明するための図。
図6】アクスルブラケット及びアクスルハウジングにブレーキハウジングを組み付けるときの工程を説明するための図。
図7】比較例の壁部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、アクスルハウジング支持構造の一実施形態について説明する。
図1に示すように、フロントアクスル10は、アクスルシャフト11と、アクスルブラケット20と、アクスルシャフト11が収容されたアクスルハウジング30と、ブレーキ装置40と、ハブ12と、を備える。フロントアクスル10は、フォークリフトなどの産業車両に用いられ、駆動輪となる前輪を回転させる。
【0016】
アクスルシャフト11は、シャフト本体13と、シャフト本体13の軸線方向Zの第1端部14に設けられたシャフトフランジ15と、を備える。フロントアクスル10は、シャフトフランジ15とハブ12とを連結する締結ボルト16を備える。ハブ12には、前輪のホイール17が固定される。アクスルシャフト11の回転により、ハブ12、及び、前輪が一体となって回転し、これにより産業車両が走行する。
【0017】
アクスルブラケット20は、筒状である。アクスルブラケット20は、シャフト本体13の軸線方向Zの第2端部18に寄って配置されている。アクスルブラケット20は、アクスルブラケット20の軸線方向と軸線方向Zとが一致するように配置されている。アクスルブラケット20は、内周面に囲まれる領域にシャフト本体13の一部が挿通される第1挿通孔21を備える。図示は省略するが、アクスルブラケット20は、産業車両の車体に取り付けられる取付部を備え、この取付部が車体に取り付けられることでフロントアクスル10は車体に取り付けられる。
【0018】
図1図2、及び、図4に示すように、アクスルブラケット20は、軸線方向Zに延びる8つのネジ穴22と、軸線方向Zに延びる1つの脱落防止ネジ穴23と、を備える。ネジ穴22は、軸線方向Zの両端面のうち第1端部14側の端面24に開口している。ネジ穴22はアクスルブラケット20(アクスルシャフト11)の周方向に並んで、同心円状に設けられている。ネジ穴22同士は、等間隔置き(45度置き)に配置されている。脱落防止ネジ穴23は、端面24に開口している。脱落防止ネジ穴23の直径は、ネジ穴22の直径よりも小さい。
【0019】
図1に示すように、アクスルハウジング30は、筒状の本体31と、本体31の外周面から突出するフランジ32と、を備える。アクスルハウジング30は、本体31の軸線方向と軸線方向Zとが一致するように配置されている。アクスルハウジング30は、軸線方向Zに対してアクスルブラケット20と並んで設けられている。アクスルハウジング30は、アクスルブラケット20よりも第1端部14側に配置されている。フランジ32は、アクスルブラケット20の端面24に向かい合うように配置されている。
【0020】
アクスルハウジング30は、本体31の内周面に囲まれる領域にシャフト本体13が挿通される第2挿通孔33を備える。フランジ32の軸線方向Zの両端面のうち端面24に向かい合う面を第1端面34、第1端面34とは反対の面を第2端面35とすると、本体31の一部は第1端面34よりも軸線方向Zに突出した突出部36となっている。この突出部36は、アクスルブラケット20の第1挿通孔21内に挿入されている。突出部36の外径は、アクスルブラケット20の第1挿通孔21の内径よりも僅かに小さい。突出部36は、アクスルブラケット20の第1挿通孔21に嵌め合わされており、嵌合部として機能する。
【0021】
図1、及び、図4に示すように、アクスルハウジング30は、フランジ32を軸線方向Zに貫通した8つの第1貫通孔37(図では1つのみ図示)と、フランジ32を軸線方向Zに貫通した1つの脱落防止貫通孔38と、を備える。第1貫通孔37同士の配置関係は、ネジ穴22同士の配置関係と同様とされている。詳細にいえば、第1貫通孔37はアクスルハウジング30(アクスルシャフト11)の周方向に並んで、同心円状に設けられている。第1貫通孔37同士は、等間隔置き(45度置き)に配置されている。脱落防止貫通孔38の直径は、第1貫通孔37の直径よりも小さい。
【0022】
図1に示すように、ブレーキ装置40は、ブレーキハウジング41と、ブレーキハウジング41に収容されたブレーキ51と、を備える。
ブレーキハウジング41は、全体として、アクスルハウジング30を覆うような筒状である。ブレーキハウジング41は、ブレーキハウジング41の軸線方向と軸線方向Zとが一致するように配置されている。ブレーキハウジング41は、第1ハウジング42及び第2ハウジング43を備える。第1ハウジング42は、筒部44と、筒部44から筒部44の軸心に向けて延びる壁部45と、を備える。ブレーキハウジング41は、壁部45を軸線方向Zに貫通し、アクスルハウジング30が挿通されるアクスル挿通孔46を備える。第2ハウジング43は、筒状である。第2ハウジング43は、筒部44に連結されている。
【0023】
図1図3、及び、図4に示すように、壁部45の外面47は、フランジ32の第2端面35に対向して配置されている。ブレーキハウジング41は、壁部45を軸線方向Zに貫通した8つの第2貫通孔48を備える。第2貫通孔48は、アクスル挿通孔46を囲むように配置されている。第2貫通孔48同士の配置関係は、第1貫通孔37同士の配置関係と同様とされている。詳細にいえば、第2貫通孔48は、ブレーキハウジング41(アクスルシャフト11)の周方向に並んで、同心円状に設けられている。第2貫通孔48同士は、等間隔置き(45度置き)に配置されている。ブレーキハウジング41は、壁部45の外面47から軸線方向Zに凹む凹部49を1つ備える。
【0024】
ネジ穴22、第1貫通孔37、及び、第2貫通孔48は軸線方向Zに並んでいる。脱落防止ネジ穴23、脱落防止貫通孔38、及び、凹部49は軸線方向Zに並んでいる。
本実施形態のブレーキ51は、湿式多板ブレーキである。ブレーキ51は、ハブ12に固定されたフリクションプレート52と、第2ハウジング43の内周面に固定されたメーティングプレート53と、第1ハウジング42に収容されたピストン54と、を備える。フリクションプレート52と、メーティングプレート53とは、軸線方向Zに交互に並んで配置されている。ピストン54は、軸線方向Zに移動可能であり、軸線方向Zに移動することで、メーティングプレート53及びメーティングプレート53の押圧、並びに、押圧解除を行う。
【0025】
フロントアクスル10は、アクスルハウジング30の外周面と、ハブ12との間に配置された軸受60を備える。この軸受60によって、ハブ12は回転可能な状態で支持されている。
【0026】
上記したアクスルハウジング30は、ブレーキハウジング41とともにアクスルブラケット20に支持されている。フロントアクスル10は、8つの共締めボルト71と、連結部材としての1つの脱落防止ボルト72と、を備える。脱落防止ボルト72は、共締めボルト71に比べて直径が小さいボルトである。
【0027】
脱落防止ボルト72は、脱落防止貫通孔38から脱落防止ネジ穴23に向けて挿入され、脱落防止ネジ穴23に螺合されている。脱落防止ボルト72の頭部は、凹部49に入り込んでいる。脱落防止ボルト72は、アクスルブラケット20及びアクスルハウジング30に挿入されることで、両者を連結している。
【0028】
共締めボルト71は、第2貫通孔48からネジ穴22に向けて挿入され、第2貫通孔48及び第1貫通孔37を貫通して、ネジ穴22に螺合されている。共締めボルト71によって、アクスルブラケット20、アクスルハウジング30、及び、ブレーキハウジング41は共締めされている。ネジ穴22、第1貫通孔37、及び、第2貫通孔48が等間隔で配置されることで、8つの共締めボルト71同士は、等間隔置きに配置されている。なお、上記した実施形態における「等間隔」とは、フロントアクスル10を構成する各部材の公差等に起因した若干の寸法誤差を許容するものである。
【0029】
上記したように本実施形態のアクスルハウジング支持構造は、脱落防止ボルト72によりアクスルブラケット20及びアクスルハウジング30が連結され、共締めボルト71によってアクスルブラケット20、アクスルハウジング30、及び、ブレーキハウジング41が共締めされた構造である。
【0030】
次に、本実施形態のアクスルハウジング支持構造の作用についてアクスルハウジング30の組み付け方法とともに説明する。
図5に示すように、アクスルハウジング30をアクスルブラケット20に組み付ける際には、アクスルハウジング30の突出部36をアクスルブラケット20の第1挿通孔21に挿入する。そして、アクスルブラケット20の脱落防止ネジ穴23と、アクスルハウジング30の脱落防止貫通孔38とが連通するように位置決めを行う。アクスルブラケット20は、脱落防止ネジ穴23が上部に位置するように配置される。例えば、脱落防止ネジ穴23が、8つのネジ穴22よりも上(鉛直方向での上)に位置するように配置される。
【0031】
次に、脱落防止ボルト72を、脱落防止貫通孔38から脱落防止ネジ穴23に向けて挿入し、脱落防止ネジ穴23に脱落防止ボルト72を螺合する。脱落防止ボルト72によって、アクスルハウジング30とアクスルブラケット20とは連結され、ユニット化される。
【0032】
脱落防止ボルト72は、アクスルハウジング30及びアクスルブラケット20を上方で連結している。アクスルブラケット20からアクスルハウジング30が脱落する際には、アクスルハウジング30の上部がアクスルブラケット20から離間して、アクスルハウジング30が脱落する。これは、アクスルハウジング30を支持する支持点(突出部36とアクスルブラケット20の内周面との接触部)が下方にあり、この支持点を中心としてアクスルハウジング30が回動することに起因する。アクスルハウジング30が脱落する際に離間する部分に脱落防止ボルト72を設けることで、アクスルハウジング30の脱落を適切に防止することができる。また、アクスルハウジング30の一部である突出部36が第1挿通孔21に挿入され、アクスルハウジング30がアクスルブラケット20に嵌め合わされることで、脱落防止ボルト72を中心とするアクスルハウジング30の回転が規制されている。
【0033】
次に、図6に示すように、ブレーキハウジング41のアクスル挿通孔46にアクスルハウジング30を挿通する。そして、脱落防止ボルト72の頭部が凹部49に入り込むようにブレーキハウジング41の位置決めを行う。これにより、ネジ穴22、第1貫通孔37、及び、第2貫通孔48が連通する。アクスル挿通孔46にアクスルシャフト11が挿通されることで、ブレーキハウジング41はアクスルハウジング30に支持されている。この状態で、共締めボルト71を第2貫通孔48からネジ穴22に向けて挿入し、ネジ穴22に共締めボルト71を螺合することで、アクスルブラケット20、アクスルハウジング30、及び、ブレーキハウジング41が共締めされる。
【0034】
次に、比較例のアクスルハウジング支持構造について説明する。
仮に、アクスルブラケット20とアクスルハウジング30とを連結するボルトと、アクスルハウジング30とブレーキハウジング41とを連結するボルトとを別に設ける場合、ボルト同士が干渉し、ボルトの配置に制約が生じる。これらのボルトを別に設ける場合、ボルトの数が多くなる。例えば、アクスルブラケット20とアクスルハウジング30とを連結するボルトを4つ、アクスルハウジング30とブレーキハウジング41とを連結するボルトを8つ設ける場合、計12個のボルトが必要となる。アクスルブラケット20とアクスルハウジング30とを締結するボルトの頭部は、ブレーキハウジング41の壁部45に干渉する。このため、図7に示すように、アクスルブラケット20とアクスルハウジング30とを締結するボルトの数に合わせて、壁部45に凹部100を設ける必要がある。また、壁部45にはアクスルハウジング30とブレーキハウジング41とを締結するボルトを挿通するための貫通孔101を設ける必要がある。したがって、4つの凹部100と、8つの貫通孔101とを互いに干渉しないように配置する必要がある。
【0035】
これに対して、本実施形態のように、アクスルブラケット20、アクスルハウジング30、及び、ブレーキハウジング41を共締めする場合、アクスルブラケット20とアクスルハウジング30を連結するボルトと、アクスルハウジング30とブレーキハウジング41を連結するボルトとを共通化しているといえる。壁部45には、脱落防止ボルト72との干渉を抑止する凹部49を設ける必要があるものの、アクスルブラケット20とアクスルハウジング30を連結するボルトと、アクスルハウジング30とブレーキハウジング41を連結するボルトとを別に設ける場合に比べてボルトの数が低減されている。このため、ボルトの配置位置に制約が生じにくい。
【0036】
したがって、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)脱落防止ボルト72でアクスルハウジング30とアクスルブラケット20とを連結している。アクスルブラケット20、アクスルハウジング30、ブレーキハウジング41を共締めボルト71によって共締めする際には、ブレーキハウジング41をアクスルハウジング30に支持させた状態で共締めボルト71を締結すればよい。したがって、治具を用いることなく、アクスルハウジング30、ブレーキハウジング41、及び、アクスルブラケット20を共締めすることができる。アクスルハウジング30、ブレーキハウジング41、及び、アクスルブラケット20を固定するための治具に比べて、共締めボルト71は軽量である。このため、治具を用いる場合に比べて、容易に共締めを行うことができる。また、治具を用いる場合には、共締め後に治具を取り外す必要があるのに対し、脱落防止ボルト72は取り外す必要がない。したがって、治具を用いる場合に比べて、手間が少ない。更に、治具を製造する必要もなく、製造コストの削減が図られる。
【0037】
(2)壁部45には、脱落防止ボルト72と壁部45との干渉を防ぐための凹部49を設ける必要があり、脱落防止ボルト72の直径が大きくなると凹部49も大きくする必要がある。第2貫通孔48は、凹部49と干渉しない位置に設ける必要があり、凹部49が大きくなると第2貫通孔48の配置位置に制約が生じる。即ち、脱落防止ボルト72の直径が大きい程、共締めボルト71の配置位置に制約が生じることになる。本実施形態において、脱落防止ボルト72は、共締めボルト71よりも直径が小さいため、共締めボルト71の配置に制約が生じることを抑制できる。
【0038】
なお、フロントアクスル10が車体に取り付けられた状態で、共締めボルト71には車体の荷重が加わるため、共締めボルト71には車体の荷重に耐え得る強度が求められる。これに対して、脱落防止ボルト72は、組み付けの際にアクスルハウジング30の荷重を支えることに用いられるため、アクスルハウジング30の荷重に耐え得る強度があればよい。このため、脱落防止ボルト72の直径は小さくすることができる。
【0039】
(3)共締めボルト71同士は、等間隔置きに配置されている。各共締めボルト71に加わる荷重が分散されやすく、特定の共締めボルト71に荷重が集中することを抑制できる。
【0040】
前述したように、アクスルブラケット20とアクスルハウジング30とを締結するボルトと、アクスルハウジング30とブレーキハウジング41とを締結するボルトとを別に設ける場合には、互いのボルト同士が干渉し、ボルトの配置に制約が生じる。本実施形態のように、アクスルブラケット20、アクスルハウジング30、及び、ブレーキハウジング41を共締めして、ボルトの総数を減らすことで、共締めボルト71を等間隔で配置しやすい。
【0041】
(4)アクスルハウジング30の突出部36は、アクスルブラケット20に嵌め合わされる。このため、共締めボルト71を締結する際に、脱落防止ボルト72を中心として、アクスルハウジング30が回転することを抑制できる。
【0042】
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
○共締めボルト71同士の間隔は、適宜変更してもよく、等間隔でなくてもよい。
○脱落防止ボルト72の直径は、共締めボルト71の直径以上であってもよい。
【0043】
○共締めボルト71の数は、適宜変更してもよい。この場合、共締めボルト71の数に合わせてネジ穴22の数、第1貫通孔37の数、及び、第2貫通孔48の数も変更する。
○連結部材としては、アクスルハウジング30及びアクスルブラケット20に挿入されることで、アクスルハウジング30及びアクスルブラケット20を連結することができれば、どのような部材であってもよい。例えば、連結部材としてノックピンを用いてもよい。
【0044】
○脱落防止ボルト72の数は、適宜変更してもよい。この場合、脱落防止ボルト72の数に合わせて、脱落防止ネジ穴23、脱落防止貫通孔38、及び、凹部49の数を変更する。
【0045】
○ブレーキ51の種類は、湿式多板ブレーキ51に限られず、適宜変更してもよい。
○アクスルハウジング30の突出部36は、設けられていなくてもよい。
○駆動輪が後輪となる産業車両の場合、後輪を駆動するリアアクスルについて、本実施形態のアクスルハウジング支持構造を適用してもよい。
【0046】
○共締めボルト71や、脱落防止ボルト72を締結することができれば、ネジ穴22や、脱落防止ネジ穴23に代えてナットを用いてもよい。また、ネジ穴22や、脱落防止ネジ穴23に代えて、アクスルブラケット20を軸線方向Zに貫通するネジ孔や、脱落防止ネジ孔を用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
11…アクスルシャフト、20…アクスルブラケット、30…アクスルハウジング、36…突出部(嵌合部)、41…ブレーキハウジング、71…共締めボルト、72…脱落防止ボルト(連結部材)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7