(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の気筒と、前記複数の気筒にそれぞれ燃料を供給するための複数のインジェクタと、前記複数の気筒の各々の排気ポートにそれぞれ接続される複数の枝管を1つに集約した排気通路とを搭載したエンジンの制御装置であって、
前記制御装置は、
前記排気通路内の圧力を検出するための第1検出部と、
前記圧力の検出時における前記エンジンのクランク角度を検出するための第2検出部と、
前記第1検出部および前記第2検出部による検出結果に基づいて前記複数のインジェクタを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第1検出部により検出される圧力に対応する気筒を前記クランク角度によって特定して、特定された気筒の排気行程における排気圧力の履歴を用いて補正対象気筒を特定し、
前記制御部は、前記排気圧力の平均値である第1平均値を前記複数の気筒毎に算出して、前記複数の気筒のうちの前記第1平均値が第1範囲外となる気筒を前記補正対象気筒として特定し、
前記制御部は、前記補正対象気筒の吸気行程の吸気圧力の平均値である第2平均値を算出して、前記第2平均値が第2範囲内である場合には、1サイクル中の1回の供給タイミングにおいて最も多くの燃料が供給されるメイン供給時期における燃料の供給量を補正する、エンジンの制御装置。
前記制御部は、前記メイン供給時期における前記供給量を補正した後の前記補正対象気筒の前記第1平均値が前記第1範囲を下回る値である場合には、前記メイン供給時期よりも前の供給タイミングであるプレ供給時期における前記供給量を補正する、請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
図1は、本実施の形態におけるエンジン1の概略構成を示す図である。本実施の形態において、エンジン1は、たとえば、コモンレール式のディーゼルエンジンを一例として説明するが、その他の形式のエンジン(たとえば、ガソリンエンジン等)であってもよい。
【0021】
エンジン1は、エンジンブロック2と、コモンレール14と、インジェクタ16と、第1吸気管22と、第2吸気管24と、インタークーラ26と、第3吸気管27と、吸気マニホールド28と、過給機30と、排気マニホールド50と、第1排気管52と、第2排気管54と、制御装置200と、吸気圧力センサ202と、排気圧力センサ204と、クランク角度センサ206とを備える。
【0022】
エンジンブロック2には、気筒12が複数個形成される(
図1においては3個の気筒12が形成される例を示す)。複数の気筒12には、複数のインジェクタ16がそれぞれ設けられる。複数のインジェクタ16は、複数の気筒12にそれぞれ燃料を供給する燃料供給装置である。複数のインジェクタ16の各々は、コモンレール14に接続される。燃料タンク(図示せず)に貯留された燃料は、サプライポンプ(図示せず)によって所定圧まで加圧されてコモンレール14へ供給される。コモンレール14に供給された燃料は複数のインジェクタ16の各々から所定のタイミングで気筒12内に噴射される。
【0023】
本実施の形態においては、エンジン1は、直列3気筒エンジンを一例として説明するが、複数の気筒を有していればよく、たとえば、2気筒エンジンであってもよいし、4気筒以上の気筒数を有するエンジンであってもよい。また、エンジン1は、直列形式のレイアウトに限定されるものではなく、その他の気筒レイアウト(たとえば、V型あるいは水平型)のエンジンであってもよい。
【0024】
過給機30は、コンプレッサ32とタービン36とを含む。コンプレッサ32のハウジング内にはコンプレッサホイール(図示せず)が収納され、タービン36のハウジング内にはタービンホイール(図示せず)が収納される。コンプレッサホイールとタービンホイールとは、連結軸(図示せず)によって連結され、一体的に回転する。そのため、コンプレッサホイールは、タービンホイールに供給される排気の排気エネルギーによって回転駆動される。
【0025】
第1吸気管22の一方端には、図示しないエアクリーナが接続される。第1吸気管22の他方端には、過給機30のコンプレッサ32の入口に接続される。コンプレッサ32の出口には、第2吸気管24の一方端が接続される。コンプレッサ32は、第1吸気管22から流入する空気を過給して第2吸気管24に供給する。
【0026】
第2吸気管24の他方端には、インタークーラ26の一方端が接続される。インタークーラ26は、第2吸気管24を流通する空気を冷却する空冷式あるいは水冷式の熱交換器である。
【0027】
インタークーラ26の他方端には、第3吸気管27の一方端が接続される。第3吸気管27の他方端には、吸気マニホールド28が接続される。吸気マニホールド28は、エンジンブロック2に形成される複数の気筒12の各々の頂部に接続される吸気ポート(図示せず)に連結される。吸気マニホールド28は、一方端が第3吸気管27に接続される吸気通路と、吸気通路の他方端から各気筒の吸気ポートに分岐する複数の枝管とを有する。
【0028】
排気マニホールド50は、エンジンブロック2に形成される複数の気筒12の各々の頂部に接続される排気ポート(図示せず)に連結される。排気マニホールド50は、各排気ポートに連結される複数の枝管と、複数の枝管を1つに集約した排気通路とを有する。排気マニホールド50の排気通路には、第1排気管52の一方端が接続される。第1排気管52の他方端は、過給機30のタービン36の入口に接続される。そのため、各気筒の排気ポートから排出される排気は、排気マニホールド50に集められた後、第1排気管52を経由してタービン36に供給される。
【0029】
タービン36の出口には、第2排気管54の一方端が接続される。第2排気管54の他方端には、粒子状物質(PM(Particular Matter)を除去するフィルタやNOx触媒などの排気から特定の成分を除去するための排気処理装置(図示せず)およびマフラー等が接続される。そのため、タービン36から排出された排気は、第2排気管54、排気処理装置およびマフラー等を経由して車外に排出される。
【0030】
制御装置200は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、入出力バッファ等とを含んで構成される。制御装置200は、各センサ(たとえば、吸気圧力センサ202、排気圧力センサ204またはクランク角度センサ206)および機器からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジン1が所望の運転状態となるように各種機器(たとえば、複数のインジェクタ16)を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0031】
吸気圧力センサ202は、第3吸気管27に設けられ、第3吸気管27内の圧力Pinを検出する。吸気圧力センサ202は、検出した第3吸気管27内の圧力Pinを示す信号を制御装置200に送信する。なお、吸気圧力センサ202は、たとえば、吸気マニホールド28の吸気通路に設けられるようにしてもよい。
【0032】
排気圧力センサ204は、第1排気管52に設けられ、第1排気管52内の圧力Pexを検出する。排気圧力センサ204は、検出した第1排気管52内の圧力Pexを示す信号を制御装置200に送信する。なお、排気圧力センサ204は、たとえば、排気マニホールド50の排気通路に設けられるようにしてもよい。
【0033】
クランク角度センサ206は、エンジン1のクランクシャフトの回転角度(以下、クランク角度と記載する)CAを検出する。クランク角度センサ206は、検出したクランク角度CAを示す信号を制御装置200に送信する。本実施の形態においては、たとえば、クランク角度CAは、0℃CA〜720℃CAを1周期とする値である。
【0034】
以上のような構成を有するエンジン1においては、複数の気筒12の各々への噴射量のバラツキや吸入空気量のバラツキによって燃焼バラツキが発生し、燃費が悪化したりエミッションが悪化したりする場合がある。そのため、複数の気筒12の各々に燃焼圧(筒内圧)を検出するセンサを設け、当該センサによって検出される燃焼圧に基づいて気筒間の燃焼バラツキを把握し、噴射量や噴射時期を補正することができる。
【0035】
しかしながら、たとえば、複数の気筒12の各々に燃焼圧を検出するセンサを設ける場合には、コストが増加するだけでなく、複数のセンサの個体差(出力バラツキ)の影響を考慮することが求められる。そのため、センサの個体差の影響を排除した上での燃焼バラツキの検出が複雑化し、燃焼バラツキを検出することについて一定の精度を確保することが困難になる場合がある。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、制御装置200が、排気圧力センサ204により検出される圧力に対応する気筒をクランク角度センサ206により検出されるクランク角度CAによって特定して、特定された気筒の排気行程における排気圧力の履歴を用いて補正対象気筒を特定するものとする。
【0037】
このようにすると、排気圧力センサ204によって第1排気管52内の圧力を検出することによって複数の気筒12毎の排気圧力の履歴(たとえば、代表点における排気圧力あるいは排気行程における排気圧力の平均値)を取得することができる。そのため、各気筒12の各々に燃焼圧等を検出するためのセンサを設ける必要がないため、コストの増加を抑制するとともに複数のセンサを設けることによる個体差を考慮する必要がなくなる。これにより、たとえば、他の気筒の排気圧力の履歴と異なる履歴を有する燃焼バラツキの大きい気筒を補正対象気筒として特定することができる。
【0038】
以下に、
図2を参照して、制御装置200で実行される制御処理について説明する。
図2は、本実施の形態に係るエンジン1の制御装置200で実行される制御処理を示すフローチャートである。制御装置200は、たとえば、エンジン1の所定の燃焼サイクル(たとえば、4サイクル以上)毎に以下の制御処理を繰り返し実行する。
【0039】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、制御装置200は、1回の燃焼サイクル(以下、1サイクルと記載する)中の排気行程における排気圧力および吸気行程における吸気圧力を複数の気筒毎に取得する。制御装置200は、たとえば、予め定められたクランク角度間隔毎の排気圧力および吸気圧力を複数の気筒毎に取得する。
【0040】
なお、制御装置200は、たとえば、エンジン1が一定出力で作動している場合(定常運転中である場合)に排気圧力および吸気圧力の取得を実行する。制御装置200は、たとえば、エンジン回転数の予め定められた期間における変化量がしきい値以下である場合や、エンジン1が車両に搭載されている場合には、車両の速度の予め定められた期間における変化量がしきい値以下である場合に、エンジン1が一定出力で作動していると判定する。
【0041】
制御装置200は、たとえば、排気圧力センサ204により検出される圧力Pexとクランク角度センサ206により検出されるクランク角度CAを取得し、取得されたクランク角度CAによって排気圧力センサ204により検出される圧力Pexがどの気筒の排気圧力であるかを特定する。制御装置200は、排気圧力センサ204により検出される圧力Pexを特定された気筒の排気圧力として取得する。
【0042】
図3は、複数の気筒毎の排気圧力の取得方法を説明するための図である。
図3の縦軸は、排気圧力を示し、
図3の横軸は、クランク角度CAを示す。
図3に示すように、制御装置200は、たとえば、クランク角度CAが第1のクランク角度範囲内である場合には、排気圧力センサ204により検出される圧力Pexを第1気筒(#1)の排気圧力として取得する。なお、第1のクランク角度範囲は、第1気筒の排気行程に対応するクランク角度範囲であって、
図3においては、クランク角度CA(0)〜CA(1)の範囲で示される。
【0043】
同様に、制御装置200は、たとえば、クランク角度CAが第2のクランク角度範囲内である場合には、排気圧力センサ204により検出される圧力Pexを第2気筒(#2)の排気圧力として取得する。なお、第2のクランク角度範囲は、第2気筒の排気行程に対応するクランク角度範囲であって、
図3においては、クランク角度CA(1)〜CA(2)の範囲で示される。
【0044】
同様に、制御装置200は、たとえば、クランク角度CAが第3のクランク角度範囲内である場合には、排気圧力センサ204により検出される圧力Pexを第3気筒(#3)の排気圧力として取得する。なお、第3のクランク角度範囲は、第3気筒の排気行程に対応するクランク角度範囲であって、
図3においては、クランク角度CA(2)〜CA(0)の範囲で示される。
【0045】
さらに、制御装置200は、たとえば、吸気圧力センサ202により検出される圧力Pinとクランク角度センサ206により検出されるクランク角度CAを取得し、取得されたクランク角度CAによって吸気圧力センサ202により検出される圧力Pinがどの気筒の吸気圧力であるかを特定する。制御装置200は、吸気圧力センサ202により検出される圧力Pinを特定された気筒の吸気圧力として取得する。
【0046】
図4は、複数の気筒毎の吸気圧力の取得方法を説明するための図である。
図4の縦軸は、吸気圧力を示し、
図4の横軸は、クランク角度CAを示す。
図4に示すように、制御装置200は、たとえば、クランク角度CAが第4のクランク角度範囲である場合には、吸気圧力センサ202により検出される圧力Pinを第1気筒(#1)の吸気圧力として取得する。なお、第4のクランク角度範囲は、第1気筒の吸気行程に対応するクランク角度範囲であって、
図4においてはクランク角度CA(4)〜CA(5)の範囲で示される。
【0047】
同様に、制御装置200は、たとえば、クランク角度CAが第5のクランク角度範囲内である場合には、吸気圧力センサ202により検出される圧力Pinを第2気筒(#2)の吸気圧力として取得する。なお、第5のクランク角度範囲は、第2気筒の吸気行程に対応するクランク角度範囲であって、
図4においてはクランク角度CA(5)〜CA(3)の範囲で示される。
【0048】
同様に、制御装置200は、たとえば、クランク角度CAが第6のクランク角度範囲内である場合には、吸気圧力センサ202により検出される圧力Pinを第3気筒(#3)の吸気圧力として取得する。なお、第6のクランク角度範囲は、第3気筒の吸気行程に対応するクランク角度判定であって、
図4においては、クランク角度CA(3)〜CA(4)の範囲で示される。
【0049】
図2に戻って、S101にて、制御装置200は、気筒毎の排気圧力の平均値(第1平均値)および吸気圧力の平均値(第2平均値)を算出する。
【0050】
制御装置200は、たとえば、第1のクランク角度範囲内において取得した排気圧力の総和を第1のクランク角度範囲内における取得数で除算することによって第1気筒の排気圧力の平均値を算出する。同様に、制御装置200は、たとえば、第2のクランク角度範囲内において取得した排気圧力の総和を第2のクランク角度範囲内における取得数で除算することによって第2気筒の排気圧力の平均値を算出する。同様に、制御装置200は、たとえば、第3のクランク角度範囲内において取得した排気圧力の総和を第3のクランク角度範囲内における取得数で除算することによって第3気筒の排気圧力の平均値を算出する。
【0051】
さらに、制御装置200は、たとえば、第4のクランク角度範囲内において取得した吸気圧力の総和を第4のクランク角度範囲内における取得数で除算することによって第1気筒の吸気圧力の平均値を算出する。同様に、制御装置200は、たとえば、第5のクランク角度範囲内において取得した吸気圧力の総和を第5のクランク角度範囲内における取得数で除算することによって第2気筒の吸気圧力の平均値を算出する。同様に、制御装置200は、たとえば、第6のクランク角度範囲内において取得した吸気圧力の総和を第6のクランク角度範囲内における取得数で除算することによって第3気筒の吸気圧力の平均値を算出する。
【0052】
S102にて、制御装置200は、第1気筒から第3気筒の排気圧力の平均値のうち平均値が排気圧力の所定範囲外となる気筒があるか否かを判定する。排気圧力の所定範囲とは、たとえば、下限値th(1)〜上限値th(2)までの範囲である。
【0053】
図5は、各気筒の排気圧力の平均値と所定範囲との比較処理を説明するための図である。
図5の縦軸は、排気圧力の平均値を示す。
図5には、第1気筒〜第3気筒の各々の排気圧力の平均値が示される。
【0054】
制御装置200は、
図5に示すように、たとえば、第1気筒〜第3気筒の排気圧力の平均値毎に平均値が下限値th(1)〜上限値th(2)までの範囲内であるか否かを判定する。制御装置200は、たとえば、第1気筒〜第3気筒の排気圧力の平均値のうちのいずれかの平均値が下限値th(1)よりも小さい場合、あるいは、上限値th(2)よりも大きい場合に、第1気筒から第3気筒のうち排気圧力の平均値が所定範囲外となる気筒があると判定する。排気圧力の平均値が所定範囲外となる気筒があると判定される場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。
【0055】
図2に戻って、S104にて、制御装置200は、補正対象気筒を特定する。制御装置200は、たとえば、第1気筒〜第3気筒のうち、排気圧力の平均値が所定範囲外となる気筒を補正対象気筒として特定する。
【0056】
S106にて、制御装置200は、補正対象気筒の吸気圧力の平均値が吸気圧力の所定範囲内であるか否かを判定する。この処理は、補正対象気筒の排気圧力の異常が吸気異常によるものであるか、燃焼異常によるものであるかを切り分けるために行なわれる。吸気圧力の所定範囲とは、たとえば、下限値th(3)〜上限値th(4)までの範囲である。補正対象気筒の吸気圧力の平均値が吸気圧力の所定範囲内であると判定される場合(S106にてYES)、吸気異常ではないため、処理はS108に移される。
【0057】
S108にて、制御装置200は、補正対象気筒に燃料を供給するインジェクタ16のメイン噴射量を補正する。この処理は、メイン噴射量を補正することにより燃焼バラツキを是正するために行なわれる。メイン噴射量とは、1サイクルにおいてインジェクタ16から噴射される複数の噴射時期のうちの1回の噴射量が最も多い噴射時期(メイン供給時期)における噴射量を示す。
【0058】
制御装置200は、補正対象気筒の排気圧力の平均値が所定範囲(上限値th(2))よりも大きい場合には、次回の燃焼サイクル以降の排気行程における排気圧力の平均値が所定範囲内になるようにメイン噴射量を減量補正する。制御装置200は、たとえば、メイン噴射量の前回値から減量分を減算することによってメイン噴射量を減量補正する。なお、減量分は、予め定められた量であってもよいし、あるいは、排気圧力の平均値と上限値th(2)との差分に応じて定められる量であってもよく、実験等により適合される。
【0059】
また、制御装置200は、補正対象気筒の排気圧力の平均値が所定範囲(下限値th(1))よりも小さい場合には、次回の燃焼サイクル以降の排気行程における排気圧力の平均値が所定範囲内になるようにメイン噴射量を増量補正する。制御装置200は、たとえば、メイン噴射量の前回値からの増量分を加算することによってメイン噴射量を増量補正する。なお、増量分は、予め定められた量であってもよいし、あるいは、排気圧力の平均値と下限値th(1)との差分に応じて定められる量であってもよく、実験等により適合される。なお、制御装置200は、たとえば、フィードバック制御により排気圧力の平均値が所定範囲内に収まるようにメイン噴射量の補正量を設定するようにしてもよい。
【0060】
S109にて、制御装置200は、補正後の1サイクル中の補正対象気筒の排気行程における排気圧力の平均値を算出する。排気圧力の平均値の算出方法については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。なお、制御装置200は、たとえば、補正時点から予め定められた燃焼サイクルが繰り返された後に排気圧力の平均値を算出してもよいし、補正直後の燃焼サイクル中の排気圧力の平均値を算出してもよい。
【0061】
S110にて、制御装置200は、S109にて算出された補正対象気筒の排気圧力の平均値が排気圧力の所定範囲の下限値th(1)よりも小さいか否かを判定する。補正対象気筒の排気圧力の平均値が下限値th(1)よりも小さいと判定される場合(S110にてYES)、処理はS112に移される。
【0062】
S112にて、制御装置200は、補正対象気筒に燃料を供給するインジェクタ16のプレ噴射量を補正する。プレ噴射量とは、1サイクルにおいてインジェクタ16から噴射される複数の噴射時期のうちのメイン供給時期よりも前のプレ供給時期における噴射量を示す。プレ噴射量は、メイン噴射よりも噴射量の少ない微小噴射時の噴射量を示す。この処理は、メイン噴射量を補正しても排気圧力の平均値が所定範囲を下回る場合には、プレ噴射量が不足していることが考えられるため、プレ噴射量を増量補正することにより排気圧力の平均値を上昇させることを目的としている。
【0063】
制御装置200は、たとえば、次回の燃焼サイクル以降の排気行程における排気圧力の平均値が所定範囲内になるようにプレ噴射量を増量補正する。なお、増量補正の方法については、メイン噴射量の増量補正の方法と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0064】
S113にて、制御装置200は、補正後の1サイクル中の補正対象気筒の排気行程における排気圧力の平均値を算出する。S113の処理は、S109の処理と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0065】
S114にて、制御装置200は、S113にて算出された補正対象気筒の排気圧力の平均値が排気圧力の所定範囲内であるか否かを判定する。排気圧力の所定範囲は、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。制御装置200は、補正対象気筒の排気圧力の平均値が下限値th(1)以上であって、かつ、上限値th(2)以下である場合に、補正対象気筒の排気圧力の平均値が所定範囲内であると判定する。補正対象気筒の排気圧力の平均値が所定範囲内であると判定される場合(S114にてYES)、吸気異常も燃焼異常も発生していないため、この処理は終了される。
【0066】
なお、補正対象気筒の吸気圧力の平均値が吸気圧力の所定範囲内でないと判定される場合(S106にてNO)、処理はS116に移される。S116にて、制御装置200は、吸気異常が発生していると判定する。
【0067】
また、補正対象気筒の排気圧力の平均値が下限値th(1)以上であると判定される場合(S110にてNO)、処理はS117に移される。S117にて、制御装置200は、S109にて算出された補正対象気筒の排気圧力の平均値が排気圧力の所定範囲の上限値th(2)よりも大きいか否かを判定する。補正対象気筒の排気圧力の平均値が上限値th(2)よりも大きいと判定される場合(S117にてYES)、処理はS118に移される。一方、補正対象気筒の排気圧力の平均値が上限値th(2)以下であると判定される場合(S117にてNO)、メイン噴射の補正によって排気圧力の平均値が所定範囲内に収まり、吸気異常も燃焼異常も発生していないため、この処理は終了される。S118にて、制御装置200は、燃焼異常が発生していると判定する。
【0068】
さらに、S114にて、補正対象気筒の排気圧力が所定範囲内でないと判定される場合(S114にてNO)、処理はS118に移される。メイン噴射量によってもプレ噴射量によっても排気圧力の平均値が所定範囲内に収まらなかったことから、筒内圧縮ガスの漏れや筒内に進入したエンジンオイルの燃焼により燃焼バラツキが発生している可能性があるため、燃焼異常と判定される。
【0069】
S102にて、排気圧力の平均値が所定範囲外となる気筒がないと判定される場合には(S102にてNO)、処理はS122に移される。S122にて、制御装置200は、代表点の排気圧力のいずれかが所定範囲外であるか否かを判定する。この処理は、排気圧力の平均値が所定範囲内であっても、燃焼が変化し脈動波形が部分的に変化している可能性があるため、そのような部分的な変化を検出するために行なわれる。
【0070】
排気圧力の波形において設定される代表点は、たとえば、ピーク値や極値となる位置である。本実施の形態においては、たとえば、排気圧力の波形において設定される代表点として、ピーク値となる位置を設定する場合を一例として説明する。
図6は、排気圧力の代表点を説明するための図である。
図6の縦軸は、排気圧力を示し、
図6の横軸は、クランク角度を示す。
【0071】
制御装置200は、第1のクランク角度範囲内においてピーク値(最大値)となる位置を第1気筒の代表点(
図6の点#1−1参照)として抽出する。制御装置200は、第2のクランク角度範囲内においてピーク値となる位置を第2気筒の代表点(
図6の点#2−1参照)として抽出する。制御装置200は、第3のクランク角度範囲内においてピーク値となる位置を第3気筒の代表点(
図6の点#3−1参照)として抽出する。
【0072】
なお、代表点としては、点#1−1,点#2−1および点#3−1に示されるようにピーク値となる位置に限定されるものではなく、点#1−2あるいは点#1−3に示されるような極値となる位置を代表点として抽出してもよい。
【0073】
図7は、代表点における排気圧力と所定範囲との比較処理を説明するための図である。
図7の縦軸は、排気圧力を示す。
図7には、気筒毎の代表点の排気圧力が示される。制御装置200は、抽出された気筒毎の代表点の排気圧力が下限値th(3)と下限値th(4)との間の所定範囲内であるか否かを判定する。下限値th(3)と下限値th(4)とは、予め定められた値であってもよいし、エンジン1の運転状態に応じて設定される値であってもよい。
【0074】
制御装置200は、
図7に示すようにいずれの気筒の代表点の排気圧力も所定範囲内である場合には、代表点の排気圧力のいずれかが所定範囲外でないと判定し(S122にてNO)、少なくともいずれかの気筒の代表点の排気圧力が所定範囲を超えていたり、あるいは、下回っていたりしていると、代表点の排気圧力のいずれかが所定範囲外であると判定する(S122にてYES)。代表点の排気圧力のいずれかが所定範囲外であると判定される場合(S122にてYES)、処理はS124に移される。
【0075】
図2に戻って、S124にて、制御装置200は、所定範囲外となる代表点に対応する気筒を異常が発生している異常気筒として特定する。S126にて、制御装置200は、異常気筒において燃焼異常が発生していると判定する。S128にて、制御装置200は、異常が発生している旨をユーザに通知する。制御装置200は、たとえば、警告灯を点灯させたり、文字情報を表示装置に表示したり、警告音あるいは警告音声を発生させることにより異常が発生している旨をユーザに通知する。なお、制御装置200は、たとえば、S116にて吸気異常が発生していると判定される場合には、吸気異常が発生している旨をユーザに通知する。同様に、制御装置200は、S118あるいはS126にて燃焼異常が発生していると判定される場合には、燃焼異常が発生している旨をユーザに通知する。
【0076】
以上のような構造およびフローチャートに基づく制御装置200の動作について
図8〜
図11を参照しつつ説明する。
【0077】
たとえば、エンジン1が一定出力で作動している場合を想定する。エンジン1が作動中の場合において、排気圧力と吸気圧力とが取得され(S100)、気筒毎の排気圧力の平均値と吸気圧力の平均値とが算出される(S101)。
【0078】
図8は、正常時と異常時とにおける排気圧力の変化を示す図である。
図8の縦軸は、排気圧力を示し、
図8の横軸は、クランク角度を示す。
図8の実線に示すように、正常時においては、第1のクランク角度範囲、第2のクランク角度範囲および第3のクランク角度範囲の各々における排気圧力の波形は、類似した波形となる。一方、
図8の破線に示すように、異常時においては、第2のクランク角度範囲における排気圧力の波形は、他のクランク角度範囲における排気圧力の波形よりも上側にオフセットした形状となる場合がある。
【0079】
その結果、第2気筒の排気圧力の平均値は、他の気筒の排気圧力の平均値よりも高い値になる。
図9は、正常時と異常時とにおける気筒毎の排気圧力の平均値を示す図である。
図9の縦軸は、排気圧力を示す。
図9には、正常時における気筒毎の排気圧力の平均値(ハッチングなし)と異常時における気筒毎の排気圧力の平均値(ハッチングあり)とが示される。
【0080】
図9の異常時における第2気筒の排気圧力の平均値に示すように、第2気筒の排気圧力の平均値が上限値th(2)を超える場合には、排気圧力の平均値が所定範囲外となる気筒があると判定され(S102にてYES)、第2気筒が補正対象気筒として特定される(S104)。
【0081】
そして、補正対象気筒の吸気圧力の平均値が所定範囲内であるか否かが判定される(S106)。
図10は、正常時と異常時とにおける吸気圧力の変化を示す図である。
図10の縦軸は、吸気圧力を示し、
図10の横軸は、クランク角度を示す。
図10の実線に示すように、正常時においては、第4のクランク角度範囲、第5のクランク角度範囲および第6のクランク角度範囲の各々における吸気圧力の波形は、類似した波形となる。一方、
図10の破線に示すように、異常時においては、補正対象気筒において、吸気ポートの詰まり等により吸気量が過少になるなどして正常時よりも吸気圧力が高い状態を維持する場合がある。
【0082】
その結果、補正対象気筒の吸気圧力の平均値が所定範囲外であると判定される場合には(S106にてNO)、吸気異常が発生していると判定される(S116)。そのため、吸気異常が発生している旨がユーザに通知されることになる(S128)。
【0083】
一方、補正対象気筒に吸気異常が発生していない場合には、補正対象気筒の吸気圧力の平均値が所定範囲内となり(S106にてYES)、メイン噴射量の補正が行なわれる(S108)。
【0084】
メイン噴射量の補正後に、1サイクルにおける第2気筒の排気圧力の平均値が算出され(S109)、たとえば、メイン噴射量が減量補正されたにもかかわらず、算出された排気圧力の平均値が依然として上限値th(2)よりも高い場合には(S110にてNO,S117にてYES)、燃焼異常が発生していると判定され(S118)、燃焼異常が発生している旨がユーザに通知されることになる(S128)。
【0085】
一方、たとえば、補正対象気筒の排気圧力の平均値が下限値th(1)よりも低いことによって、メイン噴射量が増量補正されたにもかかわらず、算出された排気圧力の平均値が依然として下限値th(1)よりも低い場合には(S110にてYES)、プレ噴射量の補正が行なわれる(S112)。たとえば、補正対象気筒の排気圧力の平均値が下限値th(1)よりも低い場合には、プレ噴射量の増量補正が行なわれる。
【0086】
プレ噴射量の補正後に、1サイクルにおける第2気筒の排気圧力の平均値が算出され(S113)、算出された排気圧力の平均値が所定範囲内であるか否かが判定される(S114)。
【0087】
図11は、プレ噴射量の補正後の排気圧力の変化を示す図である。
図11の縦軸は、排気圧力を示す。
図11の横軸は、クランク角度を示す。
図11の実線は、正常時の排気圧力の変化を示す。
図11の破線は、プレ噴射量の補正後の排気圧力の変化を示す。
図11の破線に示すように、プレ噴射量の補正により第2気筒の燃焼バラツキが解消することによって排気圧力の波形が
図11の実線に示される排気圧力の波形に類似した形状になると、排気圧力の平均値は所定範囲内であると判定される(S114にてYES)。
【0088】
一方、算出された排気圧力の平均値がプレ噴射量の補正後も下限値th(1)よりも下回る状態である場合には(S114にてNO)、燃焼異常が発生していると判定され(S118)、ユーザにその旨が通知されることになる(S128)。
【0089】
なお、エンジン1が一定出力で作動している場合に気筒毎に算出された排気圧力の平均値がいずれも所定範囲内であると判定される場合には(S102にてNO)、代表点#1−1,点#2−1および点#3−1のうちのいずれかの排気圧力が所定範囲外であるか否かが判定される(S122)。
【0090】
いずれかの排気圧力が所定範囲外であると判定される場合(S122にてYES)、異常気筒が特定され(S124)、異常気筒において燃焼異常が発生していると判定されるとともに(S126)、その旨がユーザに通知されることになる(S128)。
【0091】
一方、いずれの代表点の排気圧力も所定範囲内であると判定される場合(S122にてNO)、各気筒の排気圧力が正常であり、処理が終了される。
【0092】
以上のようにして、本実施の形態に係るエンジンの制御装置によると、排気圧力センサ204により第1排気管52内の圧力を検出することによって複数の気筒12毎の排気圧力の履歴として排気圧力の平均値を算出することができる。そのため、各気筒の各々に燃焼圧を検出するセンサを設ける必要がないため、コストの増加を抑制するとともに複数のセンサを設けることによる個体差(出力バラツキ)を考慮する必要がなくなる。これにより、第1平均値が所定範囲外の値となる気筒を補正対象気筒として特定することによって燃焼バラツキの大きい気筒を特定することができる。したがって、コストの増加を抑制しつつ、各気筒間の燃焼バラツキを精度高く検出可能なエンジンの制御装置を提供することができる。
【0093】
さらに、補正対象気筒の吸気圧力の平均値が所定範囲内である場合には、補正対象気筒において吸気異常は発生しておらず、燃焼異常が発生している可能性があると推定することができる。そのため、このような場合には、補正対象気筒におけるメイン噴射量やプレ噴射量を補正することによって、燃焼バラツキの発生を抑制することができる。
【0094】
さらに、メイン噴射量を補正しても排気圧力の平均値が所定範囲を下回る場合には、プレ噴射量のズレによって燃焼異常が発生している可能性があることを推定することができる。そのため、補正対象気筒におけるプレ噴射量を補正することによって、燃焼異常の発生を抑制することができる。
【0095】
さらに、各気筒の排気圧力の平均値が所定範囲内であっても、燃焼が変化し部分的に脈動波形が変化している可能性があるため、排気圧力の代表点が所定範囲であるか否かを判定することによって燃焼バラツキが発生しているか否かを精度高く判定することができる。
【0096】
以下、変形例について説明する。
上述の実施の形態においては、排気圧力センサ204は、第1排気管52に設けられるものとして説明したが、たとえば、排気マニホールド50の排気通路に設けられるようにしてもよい。また、排気圧力センサ204は、好ましくは、各気筒から同程度の距離を有する位置に設けられることが望ましい。排気圧力センサ204は、各気筒から、少なくとも排気圧力の脈動が検出可能な距離を有する位置に設けられることが望ましい。
【0097】
さらに上述の実施の形態においては、1サイクルの排気行程における排気圧力と、1サイクルの吸気行程における吸気圧力とを取得し、平均値を算出するものとして説明したが、所定サイクルの排気圧力と吸気圧力とを取得し、それらの平均値を算出するようにしてもよい。
【0098】
さらに上述の実施の形態においては、メイン噴射量の補正後に排気圧力が所定範囲を下回る場合にプレ噴射量の補正を行なうものとして説明したが、プレ噴射量の補正を行なう前に補正対象気筒のメイン噴射量の補正量を補正前の値に戻した上でプレ噴射量の補正を行なうようにしてもよい。
【0099】
さらに上述の実施の形態においては、各気筒の排気圧力の平均値が所定範囲内である場合に各気筒の代表点の排気圧力が所定範囲内であるか否かを判定するものとして説明したが、たとえば、各気筒の代表点の排気圧力が所定範囲内である場合に、各気筒の排気圧力の平均値が所定範囲内であるか否かを判定してもよい。
【0100】
さらに上述の実施の形態においては、各気筒の排気圧力の平均値と吸気圧力の平均値とを並行して算出するものとして説明したが、たとえば、排気圧力の平均値に基づいて補正対象気筒が特定された後に吸気圧力の平均値を算出してもよい。
【0101】
さらに上述の実施の形態においては、排気圧力の所定範囲および吸気圧力の所定範囲は、いずれも予め定められた範囲であるものとして説明したが、たとえば、エンジン1の回転数や負荷に基づいて設定されるものであってもよいし、あるいは、吸気圧力センサ202や排気圧力センサ204と各気筒との距離応じて気筒毎に設定されてもよい。
【0102】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。