特許第6897620号(P6897620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897620
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20210621BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   H01R13/52 301E
   H01B7/00 301
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-69924(P2018-69924)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-179736(P2019-179736A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2020年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河口 智哉
(72)【発明者】
【氏名】末谷 正晴
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−287464(JP,A)
【文献】 特開2016−212976(JP,A)
【文献】 特開平8−64301(JP,A)
【文献】 特開平6−5327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01B 7/00
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線及び該芯線を覆う被覆材を有する電線と、該電線の端部に取り付けられたコネクタと、前記電線の前記被覆材と前記コネクタとの間に介在されるシール部材と、を有するワイヤハーネスであって、
前記被覆材と前記シール部材との間には、前記被覆材よりも弾性率の高い筒状部材が設けられることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記筒状部材は、熱収縮チューブで構成されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記筒状部材は、前記被覆材と同一材質で前記被覆材よりも架橋度が高いことを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載されるワイヤハーネスとして、電線と、電線の端末に設けられるコネクタとを有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。このようなワイヤハーネスのコネクタは、電線の芯線の端末に設けられる端子金具と、端子金具を保持するコネクタハウジングとを有する。また、ワイヤハーネスにおいては、コネクタと電線との間から水等の液体が浸入するのを抑えるため、コネクタハウジングと電線の被覆材との間にシール部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−204960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなワイヤハーネスのシール部材は、環状に形成され、その内側に設けられる前記電線(被覆材)との間で所定の面圧が生じることでシール部材と電線(被覆材)との間のシール(止水)がなされることとなる。このとき、被覆材はシール部材によって変形する。しかしながら、シール部材は、コネクタ内で発生した熱により劣化が進行し、電線(被覆材)との間の面圧が低下することでシール性能が維持できない虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、シール性能を維持できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するワイヤハーネスは、芯線及び該芯線を覆う被覆材を有する電線と、該電線の端部に取り付けられたコネクタと、前記電線の前記被覆材と前記コネクタとの間に介在されるシール部材と、を有するワイヤハーネスであって、前記被覆材と前記シール部材との間には、前記被覆材よりも弾性率の高い筒状部材が設けられる。
【0007】
上記態様によれば、被覆材とシール部材との間に被覆材よりも弾性率の高い筒状部材を設けることで、シール部材を被覆材(電線)に直接取り付けて同じ圧力が発生するように構成した場合と比較して、シール部材による変形量が抑えられることとなる。そのため、例えばコネクタ内で発生した熱によりシール部材の劣化が進行し、シール部材と筒状部材との間の面圧が低下した場合であっても、シール部材による筒状部材の変形量はシール部材を被覆材に直接取り付けた場合と比較して小さいため、シール部材と筒状部材との間で隙間が生じることが抑えられる。これにより、シール性能が維持できる。
【0008】
上記ワイヤハーネスにおいて、前記筒状部材は、熱収縮チューブで構成されることが好ましい。
上記態様によれば、筒状部材を熱収縮チューブで構成することで収縮前の状態の筒状部材によって電線に外挿し易くでき、電線に対する取り付けを容易にできる。
【0009】
上記ワイヤハーネスにおいて、前記筒状部材は、前記被覆材と同一材質で前記被覆材よりも架橋度が高いことが好ましい。
上記態様によれば、筒状部材は、被覆材と同一材質で被覆材よりも架橋度が高いため、同一材質でありながら被覆材よりも弾性率を高くできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のワイヤハーネスによれば、シール性能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態におけるワイヤハーネスを示す概略構成図。
図2】同実施形態におけるワイヤハーネスのコネクタ周囲の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して一実施形態について説明する。なお、添付図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、添付図面では、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0013】
図1に示すワイヤハーネス1は、2個又は3個以上の電気機器(機器)2を電気的に接続する。本実施形態のワイヤハーネス1は、ハイブリッド車や電気自動車等の車両の前部に設置されたインバータ3と、そのインバータ3よりも車両の後方に設置された高圧バッテリ4とを電気的に接続する。ワイヤハーネス1は、例えば、車両の床下等を通るように配索される。インバータ3は、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータ3は、高圧バッテリ4の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ4は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0014】
ワイヤハーネス1は、複数(本実施形態では2本)の電線10と、電線10の両端部に取り付けられた一対のコネクタ20と、複数の電線10を一括して包囲する保護管30とを有している。一方のコネクタ20はインバータ3に接続され、他方のコネクタ20は高圧バッテリ4に接続されている。保護管30としては、例えば、金属製や樹脂製のパイプ、樹脂等からなり可撓性を有するコルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。保護管30は、例えば、内部に収容する電線10を飛翔物や液体から保護する。
【0015】
電線10は、芯線11と、芯線11の外周を被覆する被覆材12とを有している。芯線11としては、例えば、複数の金属素線を撚り合せてなる撚り線を用いることができる。芯線11の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金などの導電性に優れた金属を用いることができる。被覆材12は、例えば、芯線11の外周面を全周に亘って密着状態で被覆している。被覆材12は、例えば、架橋ポリエチレンなどの絶縁材料によって構成されている。被覆材12は、例えば、芯線11に対する押出成形(押出被覆)によって形成することができる。
【0016】
図2に示すように、コネクタ20は、端子金具21と、コネクタハウジング22とを有する。
端子金具21は、各電線10の末端部に接続されている。端子金具21は、バレル部21aと、端子部21bとを有する。バレル部21aは、電線10の芯線11にかしめ圧着されることで電線10の芯線11と電気的に接続される。
【0017】
コネクタハウジング22は、例えば略筒状に形成されている。コネクタハウジング22は、樹脂部材によって構成されている。
また、本実施形態のワイヤハーネス1には、コネクタハウジング22の内周面22aと被覆材12との間にシール部材40と筒状部材50とを有する。
【0018】
シール部材40は、例えばゴム栓を用いることができる。シール部材40は、コネクタハウジング22の内周面22aと筒状部材50との間においてコネクタハウジング22及び筒状部材50に対して周方向全体に亘って密着状態で保持されている。シール部材40の端子金具21とは逆側にはリテーナ60が取り付けられている。
【0019】
筒状部材50は、略円筒状をなし、シール部材40と被覆材12との間においてシール部材40及び被覆材12に対して周方向全体に亘って密着状態で保持されている。本例の筒状部材50は、筒状部材50は被覆材12の端部12aから離間した位置に設けられている。つまり、筒状部材50は端部12aを覆わない構成となっている。
【0020】
筒状部材50は、例えば熱収縮チューブで構成される。筒状部材50は、例えば被覆材12よりも弾性率の高い部材、すなわち変形しにくい部材で構成される。また、筒状部材50は、被覆材12と同じ架橋ポリエチレンを採用することができる。筒状部材50及び被覆材12を共に架橋ポリエチレンを採用した場合には、例えば筒状部材50の架橋度(架橋密度)を被覆材12よりも高くすることで弾性率を高めて変形しにくくしている。なお、架橋ポリエチレンに限らず、筒状部材50及び被覆材12を同一材質(材料)で構成し、前述したように筒状部材50の架橋度を高めるようにしてもよい。また、筒状部材50及び被覆材12をともに同一材質とすることで相互に分子レベルで結合しやすく、強固に結合することができ、密着状態が維持し易くなっている。
【0021】
本実施形態の作用を説明する。
本実施形態のワイヤハーネス1では、コネクタハウジング22の内側に配置されるシール部材40と被覆材12との間に被覆材12よりも弾性率の高い筒状部材50が設けられる。これによって、シール部材40から筒状部材50側(径方向内側)に圧力がかかった場合であっても、被覆材12よりも筒状部材50の変形量が抑えられている。
【0022】
本実施形態の効果を記載する。
(1)シール部材40と被覆材12との間に被覆材12よりも弾性率の高い筒状部材50を設けることで、シール部材40を被覆材12に直接取り付けて同じ圧力が発生するように構成した場合と比較してシール部材40による変形量が抑えられることとなる。そのため、例えばコネクタ20内で発生した熱によりシール部材40の劣化が進行し、シール部材40と筒状部材50との間の面圧が低下した場合であっても、シール部材40による筒状部材50の変形量はシール部材40を被覆材12に直接取り付けた場合と比較して小さいため、シール部材40と筒状部材50との間で隙間が生じることが抑えられる。これにより、シール性能が維持できる。
【0023】
(2)筒状部材50のみを被覆材12よりも弾性率を高い構成とすることで、芯線11の略全体を覆う被覆材12自身は弾性率が相対的に低い構成となるため、電線10の柔軟性を維持することができる。特に、電気自動車等に用いられる電線10は、芯線11の直径が大きいため、電線10が曲げにくくなる。そのため、前述したように被覆材12については相対的に弾性率が低いものを用いることで電線10の曲げ性(柔軟性)の悪化を抑えることは有用である。
【0024】
(3)筒状部材50は、熱収縮チューブで構成されるため、収縮前の状態の筒状部材50によって電線10に外挿し易くでき、電線10に対する取り付けを容易にできる。
(4)筒状部材50は、被覆材12と同一材質で被覆材12よりも架橋度が高いため、同一材質でありながら被覆材12よりも弾性率を高く(変形しにくく)できる。
【0025】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、筒状部材50を直接電線10の被覆材12に密着させる構成としたが、これに限らない。例えば、筒状部材50と被覆材12との間に接着剤を介在させて筒状部材50と被覆材12とを接着固定する構成を採用してもよい。
【0026】
・上記実施形態では、筒状部材50として熱収縮チューブを用いる構成としたが、これに限らず、電線10の被覆材12よりも弾性率が高い部材(変形しにくい部材)であれば適宜変更してもよい。
【0027】
・上記実施形態では、筒状部材50と被覆材12とを同一材質で構成したが、電線10の被覆材12よりも弾性率が高い材質であれば、筒状部材50と被覆材12とが異なる材質で構成してもよい。
【0028】
・上記実施形態では、筒状部材50を被覆材12の長手方向の端部12aから離間した位置に設けてその端部12aを覆わない構成としたが、これに限らない。被覆材12の端部12aを筒状部材50の一部で覆うような構成を採用してもよい。
【0029】
・上記実施形態並びに各変形例は適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…ワイヤハーネス
10…電線
11…芯線
12…被覆材
20…コネクタ
40…シール部材
50…筒状部材
図1
図2