(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ローパスフィルタ回路は、前記ローパスフィルタ回路の共振周波数と同一周波数のノーマルモードノイズに対する前記ローパスフィルタ回路のゲインが車両の仕様に基づいて設定される許容ゲインとなるときに、特定Q値を有し、
前記ダンピング部は、前記ローパスフィルタ回路のQ値を前記特定Q値よりも下げるように構成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の車載用の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、車載用の電力変換装置としての車載用のインバータ装置の実施形態について説明する。すなわち、本実施形態では、電力変換装置は、直流電力を交流電力に変換するインバータ装置である。
【0015】
図1に示すように、車載用のインバータ装置30は、ヒートシンク10に対して接触している。ヒートシンク10は、車両のボディに接地されている。車載用のインバータ装置30は、車両に搭載された電動モータ20を駆動するものである。
【0016】
電動モータ20は、ロータ21と、ステータ22と、ステータ22に捲回されたコイル23とを有している。コイル23が通電されることによりロータ21が回転し、電動モータ20が駆動する。なお、電動モータ20の駆動電流は、信号の電流等と比較して高く、例えば10A以上、好ましくは20A以上である。
【0017】
車載用のインバータ装置30は、回路基板41、パワーモジュール42及びノイズ低減部50等の各種部品が収容されたインバータケース31を備えている。インバータケース31は、伝熱性を有する非磁性体の導電性材料(例えばアルミニウム等の金属)で構成されている。インバータケース31が「ケース」に相当する。
【0018】
インバータケース31は、ヒートシンク10に対して接触している板状のベース部材32と、当該ベース部材32に対して組み付けられた筒状のカバー部材33とを有する。カバー部材33は、開口部と端壁とを有する。ベース部材32とカバー部材33とは、固定具としてのボルト34によってヒートシンク10に固定されている。
【0019】
ちなみに、インバータケース31とヒートシンク10とは接触しているため、両者は熱的に結合している。そして、車載用のインバータ装置30は、ヒートシンク10と熱的に結合する位置に配置されている。
【0020】
車載用のインバータ装置30は、例えばベース部材32に固定された回路基板41と、当該回路基板41に実装されたパワーモジュール42とを備えている。回路基板41は、ベース部材32に対して当該ベース部材32の厚さ方向に所定の間隔を隔てて対向配置されており、ベース部材32に対向する基板面41aを有している。基板面41aは、パワーモジュール42が実装されている面である。
【0021】
パワーモジュール42の出力部は、電動モータ20のコイル23と電気的に接続されている。パワーモジュール42は、複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2(以降単に各スイッチング素子Qu1〜Qw2ともいう)を有している。本実施形態では、パワーモジュール42が「電力変換回路」に相当する。
【0022】
インバータケース31(詳細にはカバー部材33)にはコネクタ43が設けられている。コネクタ43を介して、車両に搭載されたDC電源Eから車載用のインバータ装置30に直流電力が供給される。なお、車両には、DC電源Eに並列に接続された電源用コンデンサC0が設けられている(
図5参照)。電源用コンデンサC0は、例えばフィルムコンデンサで構成されている。
【0023】
車載用のインバータ装置30は、コネクタ43とパワーモジュール42の入力部とを電気的に接続する2本の配線EL1,EL2を備えている。第1配線EL1は、コネクタ43を介して、DC電源Eの+端子(正極端子)に接続されているとともに、パワーモジュール42の第1の入力端子である第1モジュール入力端子42aに接続されている。第2配線EL2は、コネクタ43を介して、DC電源Eの−端子(負極端子)に接続されているとともに、パワーモジュール42の第2の入力端子である第2モジュール入力端子42bに接続されている。車載用のインバータ装置30は、2本の配線EL1,EL2を介してパワーモジュール42に直流電力が入力されている状況において各スイッチング素子Qu1〜Qw2が周期的にON/OFFすることにより、直流電力を交流電力に変換して、当該交流電力を電動モータ20のコイル23に出力する。これにより、電動モータ20が駆動する。
【0024】
なお、車載用のインバータ装置30が扱う電流(換言すれば電力)は、電動モータ20を駆動させることが可能な大きさであり、信号の電流(換言すれば電力)等と比較して大きい。例えば、車載用のインバータ装置30が扱う電流は10A以上、好ましくは20A以上である。また、DC電源Eは、例えば二次電池やキャパシタ等といった車載用蓄電装置である。
【0025】
図2に示すように、回路基板41には、両配線EL1,EL2の一部を構成している複数のパターン配線41bが形成されている。パターン配線41bは、例えば基板面41a及び当該基板面41aとは反対側の面を含めて、複数層に形成されている。なお、パターン配線41bの具体的な構造は任意であり、例えばバスバーのような棒状又は平板状等であってもよい。
【0026】
コネクタ43からパワーモジュール42に向けて伝送される直流電力、詳細には両配線EL1,EL2を伝送する直流電力には、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズが含まれる場合がある。
【0027】
コモンモードノイズとは、両配線EL1,EL2に同一方向の電流が流れるノイズである。当該コモンモードノイズは、例えば車載用のインバータ装置30とDC電源Eとが、両配線EL1,EL2以外の経路(例えば車両のボディ等)を介して電気的に接続されている場合に生じ得る。ノーマルモードノイズとは、直流電力に重畳された所定の周波数を有するノイズであって、瞬間的に見れば両配線EL1,EL2に、互いに逆方向の電流が流れるノイズである。ノーマルモードノイズは、車載用のインバータ装置30に流入する直流電力に含まれる流入リップル成分とも言える。ノーマルモードノイズの詳細については後述する。
【0028】
これに対して、本実施形態の車載用のインバータ装置30は、コネクタ43からパワーモジュール42に向けて伝送される直流電力に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減(減衰)させるノイズ低減部50を備えている。ノイズ低減部50は、両配線EL1,EL2上に設けられており、コネクタ43から供給された直流電力は、ノイズ低減部50を通って、パワーモジュール42に入力される。
【0029】
ノイズ低減部50について詳細に説明する。
図2〜
図4に示すように、ノイズ低減部50は、例えばコモンモードチョークコイル51を備えている。コモンモードチョークコイル51は、コア52と、コア52に巻回された第1巻線53a及び第2巻線53bとを有している。
【0030】
コア52は、例えば所定の厚さを有した多角形(本実施形態では長方形)のリング状(無端状)に形成されている。換言すれば、コア52は、所定の高さを有した筒状とも言える。
図2及び
図4に示すように、コア52は、第1巻線53aが巻回された第1コア部52aと、第2巻線53bが巻回された第2コア部52bと、両巻線53a,53bが巻回されておらずコア52の表面52cが露出した露出部52dとを有している。両巻線53a,53bは、互いの巻回軸方向が一致した状態で対向配置されている。本実施形態では、両巻線53a,53bの巻数(ターン数)は同一に設定されている。
【0031】
なお、本実施形態では、コア52は、1つのパーツで構成されている。但し、これに限られず、コア52は、例えば対称形状の2つのパーツを連結させることによって構成されていてもよいし、3つ以上のパーツで構成されてもよい。
【0032】
図2に示すように、コモンモードチョークコイル51は、第1巻線53aから引き出された第1入力端子61及び第1出力端子62と、第2巻線53bから引き出された第2入力端子63及び第2出力端子64とを有している。
【0033】
図3及び
図5に示すように、DC電源Eの+端子とパワーモジュール42とを接続するのに用いられている第1配線EL1は、コネクタ43と第1入力端子61とを接続する第1コネクタ側配線EL11と、第1出力端子62と第1モジュール入力端子42aとを接続する第1モジュール側配線EL12とを備えている。
【0034】
DC電源Eの−端子とパワーモジュール42とを接続するのに用いられている第2配線EL2は、コネクタ43と第2入力端子63とを接続する第2コネクタ側配線EL21と、第2出力端子64と第2モジュール入力端子42bとを接続する第2モジュール側配線EL22とを備えている。これにより、DC電源Eの直流電力は、両コネクタ側配線EL11,EL21、両巻線53a,53b、両モジュール側配線EL12,EL22を通って、パワーモジュール42に入力されることとなる。つまり、両モジュール側配線EL12,EL22は、コモンモードチョークコイル51の出力部とパワーモジュール42の入力部とを接続している。この場合、両巻線53a,53bは、配線EL1,EL2上に設けられているとも言える。なお、両端子61,62は第1巻線53aの両端部とも言え、両端子63,64は第2巻線53bの両端部とも言える。また、回路基板41に形成されたパターン配線41bは、両コネクタ側配線EL11,EL21と、両モジュール側配線EL12,EL22とを含む。
【0035】
コモンモードチョークコイル51は、両配線EL1,EL2にコモンモード電流が流れる場合にはインピーダンス(詳細にはインダクタンス)が相対的に大きくなり、両配線EL1,EL2にノーマルモード電流が流れる場合にはインピーダンスが相対的に小さくなるように構成されている。詳細には、両巻線53a,53bは、両配線EL1,EL2(換言すれば両巻線53a,53b)に同一方向の電流であるコモンモード電流が流れる場合には互いに強め合う磁束が発生する一方、両配線EL1,EL2に互いに逆方向の電流であるノーマルモード電流が流れる場合には互いに打ち消しあう磁束が発生するように巻回されている。
【0036】
コア52に露出部52dが設けられているため、両配線EL1,EL2にノーマルモード電流が流れている状況においてコモンモードチョークコイル51には漏れ磁束が発生している。すなわち、コモンモードチョークコイル51は、ノーマルモード電流に対して所定のインダクタンスを有している。なお、漏れ磁束は、コモンモードチョークコイル51の周囲に発生しており、両巻線53a,53bにおける巻回軸方向の両端部に集中し易い。
【0037】
図3及び
図5に示すように、ノイズ低減部50は、コモンモードノイズを低減させるバイパスコンデンサ71,72と、バイパスコンデンサ71,72とは別に設けられた平滑コンデンサ73を備えている。平滑コンデンサ73は、例えばフィルムコンデンサや電解コンデンサで構成されている。平滑コンデンサ73は、コモンモードチョークコイル51と協働してローパスフィルタ回路74を構成している。当該ローパスフィルタ回路74によって、DC電源Eから流入するノーマルモードノイズが低減される。ローパスフィルタ回路74は、共振回路であり、LCフィルタとも言える。
【0038】
図3に示すように、コモンモードチョークコイル51及び各コンデンサ71〜73は、回路基板41の基板面41aとベース部材32との間に配置されている。コモンモードチョークコイル51は、両巻線53a,53bの巻回軸方向と、基板面41a及びベース部材32の対向方向とが交差(詳細には直交)する状態で配置されている。この場合、コア52の厚さ方向と上記対向方向とは一致している。
【0039】
ちなみに、コア52における基板面41aと対向する面をコア底面52eとし、ベース部材32と対向する面をコア上面52fとする。また、コア52におけるコア上面52f及びコア底面52eの双方と連続し且つコア52の外郭を構成する面をコア外周面52gとする。コア外周面52g(コモンモードチョークコイル51の側面)は、両巻線53a,53bの巻回軸を含む平面(本実施形態ではコア52の厚さ方向と直交する平面)に対して交差する面である。コア外周面52gは、コア52内を流れる磁束に沿い、且つ、漏れ磁束に対して交差している。
【0040】
なお、本実施形態では、コア外周面52gは、コア52の厚さ方向に対して平行である。コア外周面52gは、両巻線53a,53bの巻回軸方向に対して交差(詳細には直交)している部分と、両巻線53a,53bの巻回軸方向に対して平行な部分とを有する。
【0041】
また、コモンモードチョークコイル51の側面は、コア外周面52g(詳細にはコア外周面52gにおける露出部52dを構成する部分)と両巻線53a,53bにおけるコア外周面52g上に配置されている部分とによって構成されている。
【0042】
図2及び
図3に示すように、車載用のインバータ装置30は、ローパスフィルタ回路74のQ値を下げるダンピング部80を備えている。ダンピング部80は、コモンモードチョークコイル51から発生する漏れ磁束の磁路と交差する位置に設けられ、コモンモードチョークコイル51から発生する漏れ磁束によって渦電流を発生させるものである。
【0043】
ダンピング部80は、例えばアルミニウム等といった非磁性体の導電性材料で構成されている。ダンピング部80の比透磁率は例えば「0.9〜3」に設定されているとよい。
ダンピング部80は、回路基板41の基板面41aとベース部材32との間に配置されており、ベース部材32に向けて開口した開口部80aと底部(端壁)とを有する箱状である。ダンピング部80は、コア底面52e及びコア外周面52gの全体を覆っている。詳細には、ダンピング部80は、コモンモードチョークコイル51の底面であるコア底面52eを覆うダンピング底部81と、コモンモードチョークコイル51の側面であるコア外周面52gを覆うダンピング側部82と、を備えている。
【0044】
ダンピング側部82は、ダンピング底部81からベース部材32に向けて、換言するとヒートシンク10に向けて、起立した壁部であり、コア外周面52gと対向している。詳細には、ダンピング側部82は、コア外周面52gのうち両巻線53a,53bの巻回軸方向と交差している部分と対向する第1側部82aと、両巻線53a,53bの巻回軸方向と平行な部分と対向する第2側部82bとを有している。ダンピング側部82の先端は、両巻線53a,53bを越えてベース部材32に向けて突出している。ダンピング側部82は、両巻線53a,53bの巻回軸を含む平面に対して交差している。
【0045】
本実施形態では、ダンピング部80は、コア外周面52gのうち露出部52dを構成している部分と、両巻線53a,53bにおけるコア外周面52g上に配置されている部分との双方を覆っている。コモンモードチョークコイル51の側面が、コア外周面52gと両巻線53a,53bにおけるコア外周面52g上に配置されている部分とによって構成されていることを鑑みれば、ダンピング部80は、コモンモードチョークコイル51の側面を覆っていると言える。
【0046】
ダンピング部80の開口部80aは、インバータケース31のベース部材32によって覆われており、ダンピング部80及びベース部材32によって収容空間83が区画されている。そして、コモンモードチョークコイル51は、当該収容空間83内に収容されている。コモンモードチョークコイル51におけるコア底面52eとは反対側のコア上面52fは、ベース部材32に対向しており、当該ベース部材32によって覆われている。
【0047】
かかる構成によれば、コモンモードチョークコイル51から発生する漏れ磁束の磁路とダンピング部80とが交差しているため、当該漏れ磁束がダンピング部80を通過する。これにより、ダンピング部80にて渦電流が発生し、漏れ磁束の流れが阻害され、漏れ磁束が低減される。つまり、ダンピング部80は、コモンモードチョークコイル51から発生する漏れ磁束に対して磁気抵抗を有する。
【0048】
ダンピング部80とコモンモードチョークコイル51とは絶縁されている。両者を絶縁する具体的な構成については任意であるが、例えばダンピング部80とコモンモードチョークコイル51とが隙間又は絶縁層を介して対向している構成等が考えられる。
【0049】
なお、本実施形態では、ダンピング側部82の先端は、ベース部材32に対して離間しているが、これに限られず、ダンピング側部82の先端がベース部材32に対して接触している構成でもよい。この場合、ダンピング部80とベース部材32(インバータケース31)とによって閉ループが形成されるため、渦電流を好適に発生させることができる。また、ダンピング側部82の先端とベース部材32との間に導電性又は絶縁性の介在物が存在していてもよい。
【0050】
図2及び
図3に示すように、ダンピング底部81には、端子61〜64がそれぞれ挿通可能な貫通孔81aが形成されている。端子61,62,63,64は、貫通孔81aに挿通されるとともに、対応する配線EL11,EL12,EL21,EL22に接続されている。
【0051】
なお、図示は省略するが、各端子61〜64と貫通孔81aの内面との間には絶縁材が介在している。このため、各端子61〜64とダンピング部80とは電気的に絶縁されている。
【0052】
図1に示すように、コモンモードチョークコイル51は、各コンデンサ71〜73よりもパワーモジュール42から離れた位置に配置されている。詳細には、各コンデンサ71〜73は、コモンモードチョークコイル51とパワーモジュール42との間に配置されている。
【0053】
また、コモンモードチョークコイル51及び各コンデンサ71〜73は、ヒートシンク10と熱的に結合している。詳細には、コモンモードチョークコイル51及び各コンデンサ71〜73は、ヒートシンク10に接触しているインバータケース31(ベース部材32)に近接している。例えば、コア上面52fとベース部材32との距離H1は、コア底面52eと回路基板41との距離H2よりも短く設定されている。コモンモードチョークコイル51及び各コンデンサ71〜73にて発生した熱は、ベース部材32に伝達され、ヒートシンク10によって吸収される。なお、
図3に示すように、各コンデンサ71〜73にも端子が設けられており、当該端子が回路基板41のパターン配線41bに接続されている。
【0054】
次に、
図5及び
図6を用いて車載用のインバータ装置30の電気的構成について説明する。
既に説明した通り、ノイズ低減部50は、パワーモジュール42(詳細には各スイッチング素子Qu1〜Qw2)の入力側に設けられている。具体的には、ノイズ低減部50のコモンモードチョークコイル51は、両コネクタ側配線EL11,EL21と両モジュール側配線EL12,EL22との間に介在している。
【0055】
ここで、コモンモードチョークコイル51は、ノーマルモード電流が流れた場合に漏れ磁束を発生させる。この点を鑑みれば、
図5に示すように、コモンモードチョークコイル51は、両巻線53a,53bとは別に、仮想ノーマルモードコイルL1,L2を有しているとみなすことができる。すなわち、本実施形態のコモンモードチョークコイル51は、等価回路的には、両巻線53a,53bと仮想ノーマルモードコイルL1,L2との双方を有している。仮想ノーマルモードコイルL1,L2と巻線53a,53bとは互いに直列に接続されている。なお、図示は省略するが、ダンピング部80は、ローパスフィルタ回路74のQ値を下げるインピーダンスとして機能する。
【0056】
車両には、車載用のインバータ装置30とは別に、車載用機器として例えばPCU(パワーコントロールユニット)103が搭載されている。PCU103は、DC電源Eから供給される直流電力を用いて、車両に搭載されている走行用モータを駆動させる。すなわち、本実施形態では、PCU103と車載用のインバータ装置30とは、DC電源Eに対して並列に接続されており、DC電源Eは、PCU103と車載用のインバータ装置30とで共用されている。
【0057】
PCU103は、例えば、昇圧スイッチング素子を有し且つ当該昇圧スイッチング素子を周期的にON/OFFさせることによりDC電源Eの直流電力を昇圧させる昇圧コンバータ104と、昇圧コンバータ104によって昇圧された直流電力を、走行用モータが駆動可能な駆動電力に変換する走行用インバータとを有している。
【0058】
かかる構成においては、昇圧スイッチング素子のスイッチングに起因して発生するノイズが、ノーマルモードノイズとして、車載用のインバータ装置30に流入する。換言すれば、ノーマルモードノイズには、昇圧スイッチング素子のスイッチング周波数に対応したノイズ成分が含まれている。そして、昇圧スイッチング素子のスイッチング周波数は車種に応じて異なるため、ノーマルモードノイズの周波数は、車種に応じて異なる。なお、昇圧スイッチング素子のスイッチング周波数に対応したノイズ成分とは、当該スイッチング周波数と同一周波数のノイズ成分だけでなく、その高調波成分を含み得る。
【0059】
両バイパスコンデンサ71,72は、互いに直列に接続されている。第1バイパスコンデンサ71及び第2バイパスコンデンサ72の各々は、第1端部と、該第1端部とは反対側の第2端部とを有する。詳細には、ノイズ低減部50は、第1バイパスコンデンサ71の第1端部と第2バイパスコンデンサ72の第1端部とを接続するバイパス線EL3を備えている。当該バイパス線EL3は車両のボディに接地されている。
【0060】
また、両バイパスコンデンサ71,72の直列接続体は、コモンモードチョークコイル51に対して並列に接続されている。詳細には、第1バイパスコンデンサ71の第2端部は、第1巻線53a(第1出力端子62)とパワーモジュール42(第1モジュール入力端子42a)とを接続する第1モジュール側配線EL12に接続されている。第2バイパスコンデンサ72の第2端部は、第2巻線53b(第2出力端子64)とパワーモジュール42(第2モジュール入力端子42b)とを接続する第2モジュール側配線EL22に接続されている。
【0061】
平滑コンデンサ73は、コモンモードチョークコイル51の出力側且つパワーモジュール42の入力側に設けられている。詳細には、平滑コンデンサ73は、両バイパスコンデンサ71,72の直列接続体とパワーモジュール42との間に設けられており、両者に対して並列に接続されている。平滑コンデンサ73は、第1端部と、該第1端部とは反対側の第2端部とを有する。詳細には、平滑コンデンサ73の第1端部は、第1モジュール側配線EL12における第1バイパスコンデンサ71との接続点P1からパワーモジュール42までの部分に接続され、平滑コンデンサ73の第2端部は、第2モジュール側配線EL22における第2バイパスコンデンサ72との接続点P2からパワーモジュール42までの部分に接続されている。
【0062】
図6に示すように、電動モータ20のコイル23は、例えばu相コイル23u、v相コイル23v及びw相コイル23wを有する三相構造となっている。各コイル23u〜23wは例えばY結線されている。
【0063】
パワーモジュール42は、インバータ回路である。パワーモジュール42は、u相コイル23uに対応するu相スイッチング素子Qu1,Qu2と、v相コイル23vに対応するv相スイッチング素子Qv1,Qv2と、w相コイル23wに対応するw相スイッチング素子Qw1,Qw2と、を備えている。各スイッチング素子Qu1〜Qw2は例えばIGBT等のパワースイッチング素子である。なお、スイッチング素子Qu1〜Qw2は、還流ダイオード(ボディダイオード)Du1〜Dw2を有している。
【0064】
各u相スイッチング素子Qu1,Qu2は接続線を介して互いに直列に接続されており、その接続線は、u相モジュール出力端子42uを介してu相コイル23uに接続されている。そして、各u相スイッチング素子Qu1,Qu2の直列接続体に対してDC電源Eからの直流電力が入力されている。詳細には、第1u相スイッチング素子Qu1のコレクタは、第1モジュール入力端子42aに接続されており、当該第1モジュール入力端子42aを介して第1モジュール側配線EL12と接続されている。第2u相スイッチング素子Qu2のエミッタは、第2モジュール入力端子42bに接続されており、当該第2モジュール入力端子42bを介して第2モジュール側配線EL22と接続されている。
【0065】
なお、他のスイッチング素子Qv1,Qv2,Qw1,Qw2については、対応するコイルが異なる点を除いて、u相スイッチング素子Qu1,Qu2と同様の接続態様である。この場合、各スイッチング素子Qu1〜Qw2は、両モジュール側配線EL12,EL22に接続されていると言える。
【0066】
また、各v相スイッチング素子Qv1,Qv2を直列に接続する接続線は、v相モジュール出力端子42vを介してv相コイル23vに接続されており、各w相スイッチング素子Qw1,Qw2を直列に接続する接続線は、w相モジュール出力端子42wを介してw相コイル23wに接続されている。つまり、パワーモジュール42の各モジュール出力端子42u〜42wは電動モータ20に接続されている。
【0067】
車載用のインバータ装置30は、パワーモジュール42(詳細には各スイッチング素子Qu1〜Qw2のスイッチング動作)を制御する制御部90を備えている。制御部90は、外部指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1〜Qw2を周期的にON/OFFさせる。詳細には、制御部90は、外部指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1〜Qw2をパルス幅変調制御(PWM制御)する。より具体的には、制御部90は、キャリア信号(搬送波信号)と指令電圧値信号(比較対象信号)とを用いて、制御信号を生成する。そして、制御部90は、生成された制御信号を用いて各スイッチング素子Qu1〜Qw2のON/OFF制御を行うことにより直流電力を交流電力に変換する。
【0068】
ローパスフィルタ回路74のカットオフ周波数fcは、上記キャリア信号の周波数であるキャリア周波数f1よりも低く設定されている。なお、キャリア周波数f1は、各スイッチング素子Qu1〜Qw2のスイッチング周波数とも言える。
【0069】
次に、
図7を用いて本実施形態のローパスフィルタ回路74の周波数特性について説明する。
図7は、流入するノーマルモードノイズに対するローパスフィルタ回路74の周波数特性を示すグラフである。なお、
図7の実線は、ダンピング部80がある場合の周波数特性を示し、
図7の二点鎖線は、ダンピング部80がない場合の周波数特性を示す。
【0070】
図7の二点鎖線に示すように、ダンピング部80が存在しない場合には、ローパスフィルタ回路74のQ値が比較的高くなっている。このため、ローパスフィルタ回路74の共振周波数f0に近い周波数のノーマルモードノイズは、ノイズ低減部50にて低減されにくくなっている。
【0071】
一方、本実施形態では、ダンピング部80が存在するため、
図7の実線に示すように、ローパスフィルタ回路74のQ値が低くなっている。このため、ローパスフィルタ回路74の共振周波数f0に近い周波数のノーマルモードノイズも、ノイズ低減部50によって低減される。
【0072】
ここで、
図7に示すように、車両の仕様に基づいて要求されるゲイン(減衰率)Gの許容値を許容ゲインGthとする。そして、ノーマルモードノイズの周波数が共振周波数f0と同一である場合においてローパスフィルタ回路74のゲインGが許容ゲインGthとなるQ値を特定Q値とする。かかる構成において、本実施形態では、ダンピング部80によって、ローパスフィルタ回路74のQ値が特定Q値よりも下がっている。このため、ノーマルモードノイズの周波数が共振周波数f0と同一である場合におけるローパスフィルタ回路74のゲインGが許容ゲインGthよりも小さく(絶対値としては大きく)なっている。換言すれば、ダンピング部80は、ローパスフィルタ回路74のQ値を上記特定Q値よりも下げるように構成されている。
【0073】
ちなみに、コモンモードチョークコイル51の漏れ磁束(換言すれば仮想ノーマルモードコイルL1,L2のインダクタンス)は、ダンピング部80の存在によって低くなっている。このため、本実施形態のローパスフィルタ回路74の共振周波数f0は、ダンピング部80がない場合と比較して、若干高くなっている。
【0074】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)車載用のインバータ装置30は、直流電力を交流電力に変換するパワーモジュール42と、パワーモジュール42の入力側に設けられ、直流電力に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部50と、を備えている。ノイズ低減部50は、コア52とコア52の第1コア部52aに巻回された第1巻線53aとコア52の第2コア部52bに巻回された第2巻線53bとを有するコモンモードチョークコイル51を備えている。車載用のインバータ装置30は、コモンモードチョークコイル51によってコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズが低減された直流電力がパワーモジュール42に入力されるように構成されている。詳細には、車載用のインバータ装置30は、コモンモードチョークコイル51とパワーモジュール42とを接続するモジュール側配線EL12,EL22を備えている。
【0075】
かかる構成によれば、車載用のインバータ装置30に入力される前の直流電力に含まれるコモンモードノイズがコモンモードチョークコイル51によって低減される。また、コモンモードチョークコイル51は、ノーマルモード電流が流れる場合には漏れ磁束を発生させる。これにより、コモンモードチョークコイル51及び平滑コンデンサ73で構成されたローパスフィルタ回路74を用いてノーマルモードノイズを低減することができる。したがって、ノーマルモードノイズを低減させる専用のコイルを設けることなく、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズの双方が低減された直流電力をパワーモジュール42に入力させることができるため、車載用のインバータ装置30の大型化を抑制できる。
【0076】
(2)車載用のインバータ装置30は、コモンモードチョークコイル51と協働してローパスフィルタ回路74を構成する平滑コンデンサ73と、コモンモードチョークコイル51から発生する漏れ磁束の磁路と交差する位置に設けられたダンピング部80とを備えている。ダンピング部80は、コモンモードチョークコイル51から発生する漏れ磁束によって渦電流を発生させることでローパスフィルタ回路74のQ値を下げる。かかる構成によれば、ローパスフィルタ回路74によってノーマルモードノイズを好適に低減することができる。また、ダンピング抵抗等を設けることなく、ローパスフィルタ回路74のQ値を下げることができるため、車載用のインバータ装置30の大型化を抑制しつつ、汎用性の向上を図ることができる。
【0077】
詳述すると、既に説明した通り、仮にローパスフィルタ回路74のQ値が高い場合、ローパスフィルタ回路74の共振周波数f0に近いノーマルモードノイズが低減されにくくなる。このため、Q値が高いローパスフィルタ回路74は、共振周波数f0に近い周波数のノーマルモードノイズに対しては有効に機能しない場合がある。したがって、車載用のインバータ装置30の誤動作やローパスフィルタ回路74の寿命低下等が懸念され、Q値が高いローパスフィルタ回路74は、共振周波数f0に近い周波数のノーマルモードノイズを発生させる車種には適用できない。これに対して、本実施形態では、ダンピング部80によってQ値が低くなっているため、共振周波数f0に近い周波数のノーマルモードノイズがノイズ低減部50(詳細にはローパスフィルタ回路74)によって低減され易い。これにより、ノイズ低減部50が低減可能なノーマルモードノイズの周波数帯域を広くでき、それを通じて幅広い車種に本車載用のインバータ装置30を適用することができる。
【0078】
ここで、例えばQ値を下げるために、コモンモードチョークコイル51に対して直列にダンピング抵抗を設けることも考えられる。しかしながら、ダンピング抵抗は、10A以上という比較的高い電流に対応する必要があるため、比較的大型なものとなり易く、電力損失及び発熱量も大きくなり易い。このため、放熱性等も考慮してダンピング抵抗を設置する必要があり、車載用のインバータ装置30の大型化が懸念される。これに対して、本実施形態では、ダンピング部80には漏れ磁束によって渦電流が発生するが、当該渦電流はダンピング抵抗に流れる電流より低いため、ダンピング部80の発熱量は小さくなり易い。また、ダンピング部80は、コモンモードチョークコイル51から発生する漏れ磁束の磁路と交差する位置に設けられていればよいため、設置の自由度が高く、比較的狭いスペースに配置することができる。以上のことから、車載用のインバータ装置30の大型化の抑制と両ノイズの低減との両立を図りつつ、汎用性の向上を図ることができる。
【0079】
(3)ダンピング部80は、コモンモードチョークコイル51の側面、詳細にはコア外周面52g及び両巻線53a,53bにおけるコア外周面52g上に配置されている部分を覆っている。コア外周面52gは、両巻線53a,53bの捲回軸を含む平面に対して交差する面である。これにより、ダンピング部80が漏れ磁束に対する磁気抵抗として機能する。すなわち、ダンピング部80がQ値を下げる磁気抵抗として機能する。よって、比較的簡素な構成で(2)の効果を実現できる。
【0080】
(4)車載用のインバータ装置30は、回路基板41、パワーモジュール42及びノイズ低減部50が収容されたインバータケース31を備えている。ダンピング部80は、インバータケース31によって覆われた開口部80aを有する箱状であり、コモンモードチョークコイル51は、ダンピング部80及びインバータケース31によって区画された収容空間83内に収容されている。これにより、コア52における開口部80aに対応するコア上面52f以外の面(詳細にはコア外周面52g及びコア底面52e)がダンピング部80によって覆われるため、より好適にローパスフィルタ回路74のQ値の低下を図ることができる。また、インバータケース31を、伝熱性を有する非磁性体の導電性材料で構成することにより、開口部80aを覆うインバータケース31がQ値を下げるものとして機能する。これにより、Q値の更なる低下を図ることができる。
【0081】
(5)特に、コモンモードチョークコイル51は、コア上面52fとベース部材32との距離H1がコア底面52eと回路基板41との距離H2よりも短くなるように、インバータケース31に対して近接して配置されている。これにより、インバータケース31によるダンピング効果を高めることができ、Q値の更なる低下を図ることができる。
【0082】
(6)パワーモジュール42は、複数のスイッチング素子Qu1〜Qw2を有し、当該複数のスイッチング素子Qu1〜Qw2がPWM制御されることによって直流電力を交流電力に変換するものである。そして、ローパスフィルタ回路74のカットオフ周波数fcは、各スイッチング素子Qu1〜Qw2のPWM制御に用いられるキャリア信号の周波数であるキャリア周波数f1よりも低く設定されている。これにより、各スイッチング素子Qu1〜Qw2のスイッチングに起因したリップルノイズ(パワーモジュール42にて発生するノーマルモードノイズ)がローパスフィルタ回路74によって低減(減衰)されるため、上記リップルノイズが車載用のインバータ装置30外に流出することを抑制できる。つまり、ローパスフィルタ回路74は、PCU103の動作時には車載用のインバータ装置30に流入するノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズを低減させるものとして機能し、車載用のインバータ装置30の動作時にはリップルノイズの流出を低減させるものとして機能する。
【0083】
ここで、ノイズ低減部50が低減可能なノーマルモードノイズの周波数帯域を広くする観点に着目すれば、共振現象の発生を回避するために、共振周波数f0を、想定されるノーマルモードノイズの周波数帯域よりも高くすることも考えられる。しかしながら、この場合、ローパスフィルタ回路74のカットオフ周波数fcも高くなるため、上記のようにカットオフ周波数fcをキャリア周波数f1よりも低くすることが困難となる。かといって、カットオフ周波数fcの上昇に伴ってキャリア周波数f1を高くすることは、各スイッチング素子Qu1〜Qw2のスイッチング損失が大きくなる点で好ましくない。
【0084】
これに対して、本実施形態では、上記のようにダンピング部80によって共振周波数f0に近い周波数のノーマルモードノイズを低減させることが可能となっているため、共振周波数f0を、想定されるノーマルモードノイズの周波数帯域に合わせて高くする必要がない。したがって、キャリア周波数f1を過度に高くすることなくカットオフ周波数fcをキャリア周波数f1よりも低くできる。よって、パワーモジュール42の電力損失の増大化等を抑制しつつ、各スイッチング素子Qu1〜Qw2のスイッチングに起因したリップルノイズが車載用のインバータ装置30外に流出することを抑制できる。
【0085】
(7)コア52は、第1巻線53aが巻回された第1コア部52aと、第2巻線53bが巻回された第2コア部52bと、両巻線53a,53bが巻回されておらず表面52cが露出した露出部52dとを有している。これにより、両配線EL1,EL2(詳細には両巻線53a,53b)にノーマルモード電流が流れた場合には、漏れ磁束が生じ易くなっている。よって、(1)の効果を得ることができる。
【0086】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図8に示すように、コア52の全体に両巻線110,111が巻回されていてもよい。この場合、巻線110,111は、相対的に巻回密度が異なる高密度部110a,111a及び低密度部110b,111bを有していてもよい。巻回密度とは、巻回軸方向の単位長さ当たりの巻数(ターン数)である。この場合であっても、コモンモードチョークコイル51から漏れ磁束が発生し易い。なお、第1巻線110又は第2巻線111のいずれか一方が高密度部及び低密度部を有する構成であってもよい。この場合、露出部と低密度部との双方が併存する。要は、第1巻線110及び第2巻線111の少なくとも一方が高密度部及び低密度部を有すればよい。
【0087】
○ ダンピング部80の形状は、上記実施形態のものに限られない。例えば、ダンピング部80は、コア上面52fとベース部材32との間に介在するものであってコア上面52fを覆う上面カバー部を備えている箱形状であってもよい。また、ダンピング部80は、完全に閉じた箱形状である必要はなく、例えば第1側部82aと第2側部82bとの間に隙間(スリット)が形成されていたり、貫通孔が形成されていたりしてもよい。また、ダンピング部80の少なくとも一部がメッシュ形状となっていてもよいし、ダンピング部80の少なくとも一部に凹部やエンボス又はパンチング孔等が形成されていてもよい。更に、ダンピング部80は、ダンピング底部81が省略された枠状であってもよい。
【0088】
また、ダンピング側部82は、コア外周面52gの全体を覆っていたが、これに限られず、コア外周面52gの一部を覆う構成であってもよい。例えば、第1側部82a又は第2側部82bのいずれか一方を省略してもよい。また、ダンピング部80は、コモンモードチョークコイル51の側面のうち、コア外周面52gにおける露出部52dを構成する部分のみを覆い両巻線53a,53bにおけるコア外周面52g上に配置されている部分を覆わない構成としてもよいし、その逆であってもよい。また、ダンピング部80は、コア外周面52gにおける露出部52dを構成する部分の一部又は全部を覆う構成であってもよいし、両巻線53a,53bにおけるコア外周面52g上に配置されている部分の一部又は全部を覆う構成であってもよい。要は、ダンピング部80は、コモンモードチョークコイル51の側面の少なくとも一部を覆えばよい。また、コア52の内側にダンピング部を設けてもよい。換言すれば、ダンピング部80は、コモンモードチョークコイル51から発生する漏れ磁束と交差する位置に設けられ、コモンモードチョークコイル51の少なくとも一部と対向しているとよい。
【0089】
○ ダンピング部80の材質は、非磁性金属であればよく、アルミニウムに限られない。例えば、材質は銅でもよい。
○ ダンピング側部82には各端子61〜64が挿通される貫通孔が形成されており、各端子61〜64は、側方に向けて延びている構成であってもよい。この場合であっても、ダンピング側部82は、コア外周面52gの全体を覆っていると言える。
【0090】
○ また、
図9に示すように、ダンピング部130は、ベース部材32から起立し、且つ、コア外周面52gを囲むダンピング側部131を有する構成であってもよい。すなわち、ダンピング部は、インバータケース31と別体の構成でもよいし、インバータケース31と一体であってもよい。
【0091】
○ コモンモードチョークコイル51及びダンピング部80の設置位置は、インバータケース31内であれば任意である。例えば、
図10に示すように、コモンモードチョークコイル51及びダンピング部80は、回路基板41の基板面41aとベース部材32との間ではなく、回路基板41の側方に回路基板41からはみ出すように配置されてもよい。
【0092】
また、
図10に示すように、コモンモードチョークコイル51は、基板面41aとベース部材32との対向方向(言い換えれば、基板41の厚さ方向)とコア52の厚さ方向とが交差(直交)した状態で配置されていてもよい。この場合、ダンピング部80は、開口部80aがカバー部材33に覆われるように配置されていればよい。
【0093】
○ コモンモードチョークコイル51は、両巻線53a,53bの巻回軸方向が基板面41aとベース部材32との対向方向と一致するように起立した状態で、基板面41aとベース部材32との間にあってもよい。
【0094】
○ 昇圧コンバータ104を省略してもよい。この場合、ノーマルモードノイズとしては、例えば走行用インバータのスイッチング素子のスイッチング周波数に起因するノイズが考えられる。
【0095】
○ コモンモードチョークコイル51を収容する絶縁性を有する非磁性体の収容ケース(例えば樹脂ケース)を別途設けてもよい。この場合、ダンピング部は、非磁性体の導電性材料で構成され且つコモンモードチョークコイル51を収容ケースごと覆うフィルム(例えばアルミニウムフィルム)であるとよい。
【0096】
○ インバータケース31とダンピング部80とは異なる材料で構成されてもよい。
○ ベース部材32を省略してもよい。この場合、両巻線53a,53b及びダンピング側部82の先端と、ヒートシンク10とが隙間又は絶縁層を介して近接又は接触しているとよい。
【0097】
○ 例えばヒートシンク10の外面から起立した環状のリブが設けられている構成においては、インバータケースに代えて、板状のインバータカバー部材が、リブと突き合わせられた状態で取り付けられてもよい。この場合、ヒートシンク10とリブとインバータカバー部材とによって、回路基板41、パワーモジュール42及びノイズ低減部50等の各種部品が収容される収容室が形成されるとよい。要は、上記収容室を区画する具体的な構成は任意である。
【0098】
○ コア52の形状は任意である。例えば、コアとして、UUコア、EEコア及びトロイダルコア等を用いてもよい。また、コアは、完全に閉じたリング状である必要はなく、隙間が形成されている構成であってもよい。コア外周面52gは湾曲面であってもよい。
【0099】
○ 両モジュール側配線EL12,EL22を省略して、コモンモードチョークコイル51の両出力端子62,64とパワーモジュール42の両モジュール入力端子42a,42bとを直接接続してもよい。また、平滑コンデンサ73等は、両出力端子62,64に直接接続されてもよい。
【0100】
○ 電動モータ20の駆動対象は、車両に搭載された走行用モータ等、任意である。電動モータ20の駆動対象が走行用モータであって、DC電源Eが車載用蓄電装置である場合には、DC電源Eの電圧を昇圧回路にて昇圧させてから車載用のインバータ装置30にて電力変換が行われてもよい。
【0101】
○ 車載用機器は、PCU103に限られず、周期的にON/OFFするスイッチング素子を有しているものであれば任意である。例えば、車載用機器は、車載用のインバータ装置30とは別に設けられたインバータ等であってもよい。
【0102】
○ ノイズ低減部50の具体的な回路構成は、上記実施形態のものに限られない。例えば平滑コンデンサ73を省略してもよいし、平滑コンデンサ73が2つ設けられた構成でもよい。また、バイパスコンデンサ71,72と平滑コンデンサ73との位置を置換してもよいし、バイパスコンデンサ71,72をコモンモードチョークコイル51の前段(コモンモードチョークコイル51とコネクタ43との間)に設けてもよい。また、ローパスフィルタ回路は、π型やT型等任意である。
【0103】
○ 実施形態のパワーモジュール42は、インバータ回路であったが、これに限られず、DC/DCコンバータ回路であってもよい。すなわち、電力変換回路は、直流電力を直流電力に変換を行うものでもよいし、直流電力を交流電力に変換を行うものでもよい。
【0104】
○ 上記各別例同士を組み合わせてもよいし、上記各別例と上記実施形態とを適宜組み合わせてもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態及び各別例との相違点を中心に説明する。
【0105】
図11、
図12及び
図13には、第2の実施形態でのノイズ低減部(ダンピング部200)を示す。
第1の実施形態では、
図2,3で示したようにダンピング部80は、インバータケース31によって覆われた開口部80aと底部(端壁)とを有する箱状であり、コモンモードチョークコイル51を、ダンピング部80及びインバータケース31によって区画された収容空間83内に収容してローパスフィルタ回路74のQ値の低下を図った。しかし、回路基板41にコモンモードチョークコイル51を実装する際にコモンモードチョークコイル51の六面を金属で覆うことが困難な場合がある。
【0106】
第2の実施形態においては、コモンモードチョークコイル51にめっきを施すことによって、コモンモードチョークコイル51をシールド用導電性金属膜210で被覆しており、ダンピング部200は、コモンモードチョークコイル51の少なくとも一部を被覆するシールド用導電性金属膜210よりなる。コモンモードチョークコイル51にめっきを施す際に、シールド用導電性金属膜210をコモンモードチョークコイル51に密着させるべくコーティング用の絶縁膜211をシールド用導電性金属膜210とコモンモードチョークコイル51との間に介在させて絶縁も確保している。これにより、コモンモードチョークコイル51に対し六面を金属で覆う場合と同等の効果が得られる。
【0107】
以下、詳しく説明する。
コモンモードチョークコイル51は、少なくとも一部の表面がシールド用導電性金属膜210で被覆されている。シールド用導電性金属膜210は銅のめっき膜からなり、シールド用導電性金属膜210は非磁性体の導電性材料で構成されている。シールド用導電性金属膜210とコモンモードチョークコイル51との間には絶縁膜211が介在されている。つまり、コア52に直接、めっきすることは困難であるが、コア52の表面にコーティング材としての樹脂等の絶縁膜211を形成し、その表面にめっきを施してシールド用導電性金属膜210を形成している。また、シールド用導電性金属膜210の表面が絶縁膜212で被覆されている。詳しくは、巻線53a,53bは、絶縁膜で被覆された導線であるが、さらに絶縁膜211,212により被覆されることにより、より絶縁性に優れたものになる。すなわち、巻線53a,53bは、多重絶縁構造を有することにより品質向上が図られる。このように、コア52に巻線53a,53bを巻回し、巻線53a,53bが巻回されたコア52に対し絶縁膜211を介してシールド用導電性金属膜210を形成し、シールド用導電性金属膜210を絶縁膜212で被覆することにより、コモンモードチョークコイル51は、絶縁膜211とシールド用導電性金属膜210と絶縁膜212との3層膜で被覆されている。
【0108】
また、第1の実施形態におけるダンピング部80は
図2及び
図3で示されるようにダンピング底部81に各端子61〜64が挿通可能な貫通孔81aを有しており、貫通孔81aに端子61〜64を通す構成となっているので、絶縁性を確保する工夫が必要である。これに対し第2の実施形態においては端子挿通用の貫通孔を不要にすることができる。
【0109】
なお、コモンモードチョークコイル51の全部をシールド用導電性金属膜210で被覆しても一部をシールド用導電性金属膜210で被覆してもよい。コモンモードチョークコイル51の少なくとも一部を被覆することにより漏れ磁束によって渦電流を発生させることができる。また、シールド用導電性金属膜210はめっき膜に限るものではなく、例えば塗布等によって形成される金属膜であってもよい。また、シールド用導電性金属膜210は、非磁性金属であればよく、材質は銅に限定されない。例えば、材質はアルミニウムでもよい。また、絶縁膜211と絶縁膜212のうちの一方は、省略されてもよい。
【0110】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を、第1の実施形態及び各別例との相違点を中心に説明する。
図14及び
図15には、第3の実施形態でのノイズ低減部(ダンピング部300)を示す。
【0111】
第1の実施形態では、
図2,3で示したように、開口部80aと底部(端壁)とを有する箱状のダンピング部80及びインバータケース31によって区画された収容空間83内にコモンモードチョークコイル51を収容してローパスフィルタ回路74のQ値の低下を図った。しかし、回路基板41にコモンモードチョークコイル51を実装する際にコモンモードチョークコイル51の六面を金属で覆うことが困難な場合がある。
【0112】
第3の実施形態においては、コモンモードチョークコイル51について、六面のうち一面を回路基板41のパターン導電体(銅箔)320を使って覆い、他の五面を開口部311を有するシールド用導電性金属ケース310で覆っている。つまり、インバータ装置30は、パターン配線が形成されている回路基板41を備えている。ダンピング部300は、シールド用導電性金属ケース310とシールド用パターン導電体320とを含む。シールド用導電性金属ケース310は開口部311からコモンモードチョークコイル51を収容し、その状態で回路基板41に固定される。シールド用パターン導電体320は、回路基板41においてシールド用導電性金属ケース310の開口部311の内側の領域に形成される。これにより、コモンモードチョークコイル51に対し六面を金属で覆う場合と同等の効果が得られる。さらに、パターン導電体320は、回路基板41に元々備わっているパターン導電体を流用すればよく、これによりダンピング部300を追加するための加工の一部を省くことができる。
【0113】
以下、詳しく説明する。
シールド用導電性金属ケース310は略直方体の箱型をなしている。シールド用導電性金属ケース310は銅よりなり、シールド用導電性金属ケース310は非磁性体の導電性材料で構成されている。シールド用導電性金属ケース310は、開口部311からコモンモードチョークコイル51を収容し、開口部311を回路基板41で塞ぐようにして回路基板41に固定される。開口部311の周縁には回路基板41に向かって直線的に延びる取付用脚部312が複数箇所にわたり設けられている。
【0114】
回路基板41において開口部311と対応する領域にはシールド用パターン導電体320が形成されている。シールド用パターン導電体320は、表面が、絶縁膜321で被覆されている。絶縁膜321はレジスト膜である。パターン配線41b及びシールド用パターン導電体320は銅箔よりなり、パターン配線41b及びシールド用パターン導電体320は非磁性体の導電性材料で構成されている。回路基板41には、シールド用導電性金属ケース310の各取付用脚部312に対応する位置に貫通孔330が形成されている。シールド用導電性金属ケース310の各取付用脚部312が回路基板41の貫通孔330に挿入されることによりシールド用導電性金属ケース310が回路基板41に取り付けられる。取付用脚部312は先端部の抜止部(爪部)312aにより取付用脚部312が貫通孔330を貫通する状態で抜け止めされている。
【0115】
また、回路基板41にはコモンモードチョークコイル51の端子61〜64に対応する位置に貫通孔340が形成されている。コモンモードチョークコイル51の端子61〜64が回路基板41の貫通孔340に挿入されている。端子61〜64における回路基板41から突出した先端部が、パターン配線41bと、はんだ付けされている。
【0116】
第1の実施形態におけるダンピング部80は
図2及び
図3で示されるようにダンピング底部81に各端子61〜64が挿通可能な貫通孔81aを有していた。これに対し、第3の実施形態においてはシールド用導電性金属ケース310の開口部311に端子61〜64が通ることによりシールド用導電性金属ケース310には端子挿通用の貫通孔を不要にすることができる。
【0117】
なお、シールド用パターン導電体320は銅箔に限ることなく、例えば銅めっき膜を用いて構成してもよい。
また、回路基板41に設けるダンピング部300はシールド用導電金属膜であればよく、パターン導電体320に限定されない。例えば、シールド用導電金属膜として銅箔が回路基板41に施されてもよい。さらには、銅箔と回路基板41との間に絶縁膜が介在してもよい。
【0118】
また、回路基板41に設けるダンピング部300の材質は、非磁性金属であればよく、銅に限定されない。例えば、材質はアルミニウムでもよい。