特許第6897718号(P6897718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6897718冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897718
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20210628BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   C09K5/04 F
   C09K5/04 E
   F25B1/00 396Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-118913(P2019-118913)
(22)【出願日】2019年6月26日
(65)【公開番号】特開2021-4312(P2021-4312A)
(43)【公開日】2021年1月14日
【審査請求日】2020年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板野 充司
(72)【発明者】
【氏名】大久保 瞬
(72)【発明者】
【氏名】加留部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】徳野 敏
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−506131(JP,A)
【文献】 特開2015−229767(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/182030(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/147338(WO,A1)
【文献】 国際公開第2019/021726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00− 5/20
F25B 1/00
F25B 15/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、1,1−ジフルオロエチレン(HFO-1132a)及びジフルオロメタン(R32)を含み、
HFO-1132a及びR32の合計に対して26〜40質量%のHFO-1132aと、HFO-1132a及びR32の合計に対して60〜74質量%のR32とを含み、かつ
HFO-1132a及びR32の合計を、冷媒全体に対して99.5質量%以上含む、組成物。
【請求項2】
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、HFO-1132a及びトランス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、並びにR32を含み、
HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対して、HFO-1132a及びHFO-1132(E)の合計の割合が26〜40質量%であり、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対してR32の割合が60〜74質量%であかつ
HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対して、HFO-1132a の割合が3質量%以上である、
組成物。
【請求項3】
さらに、冷凍機油を含有し、冷凍機用作動流体として用いられる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
R410Aの代替冷媒として用いられる、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物の、R410Aの代替冷媒としての使用。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍機。
【請求項7】
冷凍機の運転方法であって、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物を作動流体として冷凍機において循環させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用エアコン等の空調用冷媒として現在、R410Aが用いられている。R410Aは、ジフルオロメタン(CH2F2;HFC-32又はR32)とペンタフルオロエタン(C2HF5;HFC-125又はR125)との2成分混合冷媒であり、擬似共沸組成物である。
しかし、R410Aの地球温暖化係数(GWP)は2088であり、地球温暖化への懸念の高まりからGWPが675のR32がより多く使用されつつある。
このため、R410Aに代替可能な低GWP混合冷媒が種々提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/141678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、新規な低GWP混合冷媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、1,1−ジフルオロエチレン(HFO-1132a)及びジフルオロメタン(R32)を含み、
HFO-1132a及びR32の合計に対して26〜40質量%のHFO-1132aと、HFO-1132a及びR32の合計に対して60〜74質量%のR32とを含む、組成物。
項2.
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、HFO-1132a及びトランス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、並びにR32を含み、
HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対して、HFO-1132a及びHFO-1132(E)の合計の割合が26〜40質量%であり、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対してR32の割合が60〜74質量%である、組成物。
項3.
HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対して、HFO-1132a の割合が3質量%以上である、項2に記載の組成物。
項4.
さらに、冷凍機油を含有し、冷凍機用作動流体として用いられる、項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
項5.
R410Aの代替冷媒として用いられる、項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
項6.
項1〜4のいずれか一項に記載の組成物の、R410Aの代替冷媒としての使用。
項7.
項1〜4のいずれか一項に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍機。
項8.
冷凍機の運転方法であって、
項1〜4のいずれか一項に記載の組成物を作動流体として冷凍機において循環させる工程を含む、方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示の冷媒は、低GWPである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、HFO-1132a及びR32の合計に対して26〜40質量%のHFO-1132aと、HFO-1132a及びR32の合計に対して60〜74質量%のR32とを含む組成物が、上記特性を有することを見出した。また、本発明者らは、冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32を含み、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対して、HFO-1132a及びHFO-1132(E)の合計の割合が26〜40質量%であり、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対してR32の割合が60〜74質量%である組成物が、上記特性を有することを見出した。
【0008】
本開示は、かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果完成されたものである。本開示は、以下の実施形態を含む。
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さらに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、二酸化炭素(R744)及びアンモニア(R717)等が挙げられる。
【0009】
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と、(2)その他の成分をさらに含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体とが少なくとも含まれる。本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
【0010】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0011】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0012】
本明細書において用語「冷凍機」とは、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0013】
1. 冷媒
1.1 冷媒成分
本開示の冷媒1は、HFO-1132(E)及びR32の合計に対して26〜40質量%のHFO-1132aと、HFO-1132(E)及びR32の合計に対して60〜74質量%のR32とを含む。
本開示の冷媒1は、R410Aを基準とするCOP比及び冷凍能力比がいずれも90%以上となり、かつGWPが500以下となる。
本開示の冷媒2は、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32を含み、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対して、HFO-1132a及びHFO-1132(E)の合計の割合が26〜40質量%であり、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対してR32の割合が60〜74質量%である。
本開示の冷媒2は、R410Aを基準とするCOP比が90%以上であり、R410Aを基準とする冷凍能力比が115%以上となり、かつGWPが500以下となる。
【0014】
本開示の冷媒1は、上記の特性や効果を損なわない範囲内で、HFO-1132a及びR32に加えて、さらに他の追加的な冷媒を含有していてもよい。この点で、本開示の冷媒が、HFO-1132a及びR32の合計を、冷媒全体に対して99.5質量%以上含むことが好ましく、99.75質量%以上含むことがより好ましく、99.9質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0015】
本開示の冷媒2は、上記の特性や効果を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)及びHFO-1132(E)、並びにR32に加えて、さらに他の追加的な冷媒を含有していてもよい。この点で、本開示の冷媒が、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計を、冷媒全体に対して99.5質量%以上含むことが好ましく、99.75質量%以上含むことがより好ましく、99.9質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0016】
追加的な冷媒としては、特に限定されず、幅広く選択できる。混合冷媒は、追加的な冷媒として、一種を単独で含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。
【0017】
1.2 用途
本開示の冷媒は、冷凍機における作動流体として好ましく使用することができる。
【0018】
本開示の組成物は、R410Aの代替冷媒としての使用に適している。
【0019】
2. 冷媒組成物
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒を少なくとも含み、本開示の冷媒と同じ用途のために使用することができる。また、本開示の冷媒組成物は、さらに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる。
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒に加え、さらに少なくとも一種のその他の成分を含有する。本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。上述の通り、本開示の冷媒組成物を、冷凍機における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。したがって、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0〜0.1質量%である。
【0020】
2.1
本開示の冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。冷媒組成物における含水割合は、冷媒全体に対して、0.1質量%以下とすることが好ましい。冷媒組成物が微量の水分を含むことにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。
【0021】
2.2 トレーサー
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
【0022】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーとして、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0023】
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。
【0024】
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが特に好ましい。
【0025】
トレーサーとしては、以下の化合物が好ましい。
FC-14(テトラフルオロメタン、CF4
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-23(トリフルオロメタン、CHF3
HFC-41(フルオロメタン、CH3Cl)
HFC-125(ペンタフルオロエタン、CF3CHF2
HFC-134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン、CF3CH2F)
HFC-134(1,1,2,2−テトラフルオロエタン、CHF2CHF2
HFC-143a(1,1,1−トリフルオロエタン、CF3CH3
HFC-143(1,1,2−トリフルオロエタン、CHF2CH2F)
HFC-152a(1,1−ジフルオロエタン、CHF2CH3
HFC-152(1,2−ジフルオロエタン、CH2FCH2F)
HFC-161(フルオロエタン、CH3CH2F)
HFC-245fa(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2)HFC-236fa(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3)HFC-236ea(1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2)HFC-227ea(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、CF3CHFCF3)HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF2
HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
CFC-1113(クロロトリフルオロエチレン、CF2=CClF)
HFE-125(トリフルオロメチル−ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2)HFE-134a(トリフルオロメチル−フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)HFE-143a(トリフルオロメチル−メチルエーテル、CF3OCH3
HFE-227ea(トリフルオロメチル−テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3)HFE-236fa(トリフルオロメチル−トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3
【0026】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約10重量百万分率(ppm)〜約1000ppm含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約30ppm〜約500ppm、より好ましくは約50ppm〜約300ppm含んでいてもよい。
【0027】
2.3 紫外線蛍光染料
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0028】
紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
【0029】
紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。紫外線蛍光染料としては、ナフタルイミド及びクマリンのいずれか又は両方が特に好ましい。
【0030】
2.4 安定剤
本開示の冷媒組成物は、安定剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0031】
安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
【0032】
安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。
【0033】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0034】
エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0035】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0036】
その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0037】
安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.05〜2質量%とすることがより好ましい。
【0038】
2.5 重合禁止剤
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0039】
重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
【0040】
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0041】
重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.05〜2質量%とすることがより好ましい。
【0042】
3. 冷凍機油含有作動流体
本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍機における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に10〜50質量%含まれる。
【0043】
3.1 冷凍機油
本開示の組成物は、冷凍機油として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0044】
冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、前記混合物との相溶性(miscibility)及び前記混合物の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0045】
冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0046】
冷凍機油は、基油に加えて、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0047】
冷凍機油として、40℃における動粘度が5〜400 cStであるものが、潤滑の点で好ましい。
【0048】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、さらに少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
【0049】
3.2 相溶化剤
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0050】
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
【0051】
相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
【0052】
4. 冷凍機の運転方法
本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍機を運転する方法である。
【0053】
具体的には、本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を冷凍機において循環させる工程を含む。
【0054】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32を、これらの総和を基準として、表1〜3にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
R410A(R32=50%/R125=50%)及び上記混合冷媒のGWPは、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次報告書の値に基づいて評価した。HFO-1132aのGWPは記載がないが、HFO-1132a(GWP=1以下)、HFO-1132(E)(GWP=0.3,特許文献1に記載)から、そのGWPを1と想定した。R410A及び上記混合冷媒の冷凍能力は、National Institute of Science and Technology(NIST)Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使い、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
【0057】
これらの各混合冷媒について、R410Aを基準とするCOP比及び冷凍能力比をそれぞれ求めた。計算条件は以下の通りとした。
蒸発温度:5℃
凝縮温度:45℃
過熱度:5K
過冷却度;5K
圧縮機効率 70%
これらの値を、各混合冷媒についてのGWPと合わせて表1〜3に示す。なお、比COP及び比冷凍能力については、R410Aに対する割合を示す。
【0058】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP =(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0059】
結果を表1〜3に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
表1の結果から、HFO-1132a及びR32の合計に対して26〜40質量%のHFO-1132aと、HFO-1132a及びR32の合計に対して60〜74質量%のR32とを含む冷媒は、R410Aを基準とするCOP比及び冷凍能力比がいずれも90%以上となり、かつGWPが500以下となることが判る。
また、表2及び3の結果から、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32を含み、HFO-1132(E)及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対して、HFO-1132a及びHFO-1132(E)の合計の割合が26〜40質量%であり、HFO-1132a及びHFO-1132(E)、並びにR32の合計に対してR32の割合が60〜74質量%である冷媒は、R410Aを基準とするCOP比が90%以上であり、R410Aを基準とする冷凍能力比が115%以上となり、かつGWPが500以下となることが判る。