特許第6897722号(P6897722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897722
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】空調機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0007 20190101AFI20210628BHJP
   F24F 1/0033 20190101ALI20210628BHJP
【FI】
   F24F1/0007 331
   F24F1/0033
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-133143(P2019-133143)
(22)【出願日】2019年7月18日
(65)【公開番号】特開2021-18015(P2021-18015A)
(43)【公開日】2021年2月15日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】坂野 雄治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】市橋 昌志
(72)【発明者】
【氏名】大澤 直勝
(72)【発明者】
【氏名】白井 学
(72)【発明者】
【氏名】飯島 竜太
【審査官】 奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−21139(JP,A)
【文献】 特開2002−147794(JP,A)
【文献】 特開2006−145145(JP,A)
【文献】 特開2018−25359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00−13/32
F28D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口から吸い込まれた空気が流れる吸込流路と、
気化させる水を散布する散布部と、
前記散布部が散布した水の気化熱により冷却される第1空気が流れる第1流路と、
前記第1空気と、前記吸込流路に流れる空気との間で熱交換させ、前記吸込流路に流れる空気を冷却する熱交換器と
前記吸込流路における前記熱交換器の下流側に設けられ、前記吸込流路を、前記第1流路と、被空調空間に吹き出される第2空気が流れる第2流路とを含む2つ以上の流路に分岐する分岐機構とを備え、
前記分岐機構は、前記吸込流路に流れる空気を分流させて、前記第1流路及び前記第2流路に送風する送風部を含む
ことを特徴とする空調機。
【請求項2】
前記散布部は、前記熱交換器よりも上方に設けられており、
前記分岐機構によって分岐された前記第1流路は、前記散布部に向かって延設され、
前記分岐機構によって分岐された前記第2流路は、前記第1流路とは異なる方向に向かって延設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の空調機。
【請求項3】
前記分岐機構は、前記熱交換器よりも上方に設けられており、
前記分岐機構によって分岐された前記第1流路は、前記散布部に向かって延設され、
前記分岐機構によって分岐された前記第2流路は、前記第1流路とは異なる方向に向かって延設されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調機。
【請求項4】
前記吸込流路は、前記吸込口から吸い込まれた空気の流れ方向において下方から上方に向かって設けられ、
前記第1流路は、前記第1空気の流れ方向において上方から下方に向かって設けられ、
前記分岐機構は、前記吸込流路及び前記第1流路による折り返し地点に設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空調機。
【請求項5】
前記送風部は、遠心ファンである
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空調機。
【請求項6】
前記送風部は、前記第1流路に送風する第1ファン及び、前記第2流路に送風する第2ファンを含む
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空調機。
【請求項7】
前記第1ファン及び前記第2ファンは、吹出部を備えるターボファンであり、
前記第1ファンの吹出部と、前記第2ファンの吹出部とは、異なる方向に向けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の空調機。
【請求項8】
前記送風部は、単一の遠心ファンから成り、
前記分岐機構は、前記単一の遠心ファンから吹き出された空気を前記第1流路と前記第2流路とに分岐する分岐壁を含む
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空調機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の空気を吸い込み、水の気化熱を利用し雰囲気温度を低下させて冷却した空気を、室内に吹き出す気化冷却式の空調機が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1の空調機(冷風扇)は、ケーシング内に配置された送風手段と、吸込口と第1吹出口とを連通し、送風手段によって発生した空気流を第1吹出口に導く第1流路と、吸込口と第2吹出口とを連通し、送風手段によって発生した空気流を第2吹出口に導く第2流路と、第2流路に配置され、水の気化熱により第2流路を流れる空気を冷却する気化手段とを備え、第2流路の気化手段によって冷却された空気流と第1流路を流れる空気流との間で熱交換を行う熱交換器が設けられている。気化手段が備えられている第2流路において、気化手段の下流側には、気化手段によって散布された霧状の水(未蒸発の散布水)及び、気化した水(蒸発した散布水)により絶対湿度が増加した空気が流れる。この湿度が増加した空気は、第2流路の出口となる第2吹出口から排気として吹き出される。熱交換器を介して冷却された第1流路を流れる空気流は、第1吹出口から給気として被空調空間に吹き出される。
【0003】
特許文献1の空調機は、更に第1流路を流れる空気流と、前記第2流路を流れる空気流との分配量を調整する分配量調整手段を備え、当該配量調整手段は、吸込口と熱交換器との間に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−092338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の空調機は、送風手段(ファン)及び分配量調整手段が第1流路(給気経路)の流れ方向において熱交換器の上流側に設けられているため、吸込口から吸い込まれた空気が熱交換器に流入する前に第1流路及び第2流路に分配されるものとなる。従って、熱交換器におけるいずれかの流路に、吸込口から吸い込まれた空気が流入するにあたり、これら流路夫々に流入する空気の偏流が発生し、冷却能力が減少することが懸念される。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、冷却能力を向上させることができる空調機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る空調機は、吸込口から吸い込まれた空気が流れる吸込流路と、
気化させる水を散布する散布部と、
前記散布部が散布した水の気化熱により冷却される第1空気が流れる第1流路と、
前記第1空気と、前記吸込流路に流れる空気との間で熱交換させ、前記吸込流路に流れる空気を冷却する熱交換器と
前記吸込流路における前記熱交換器の下流側に設けられ、前記吸込流路を、前記第1流路と、被空調空間に吹き出される第2空気が流れる第2流路とを含む2つ以上の流路に分岐する分岐機構とを備え、
前記分岐機構は、前記吸込流路に流れる空気を分流させて、前記第1流路及び前記第2流路に送風する送風部を含むことを特徴とする。
【0008】
本態様にあたっては、送風部を含む分岐機構及び、被空調空間に吹き出される第2空気が流れる第2流路は、熱交換器よりも下流側に設けられている。従って、吸込口から吸い込まれた空気は、分流されることなく、すなわち偏流が発生することなく、全て熱交換器内の吸込流路、すなわち吸込経路に流入されるものとなり、冷却能力を向上させることができる。散布部が散布した水の気化熱により冷却される第1空気は、分岐機構によって、吸込流路に流れる空気から分流された空気である。吸込流路に流れる空気は、熱交換器によって冷却され、吸込口から吸い込まれた直後の空気、すなわち被空調空間の室内空気よりも低温となっている。このように吸込流路を流れ、熱交換器によって冷却した空気を分流した第1空気を用いて、散布部が散布した水の気化熱により冷却することにより、当該第1空気の温度を効率的に低下させることができ、冷却能力を向上させることができる。吸込流路を第1流路及び第2流路に分岐する分岐機構は、送風部を含み当該送風部と一体化することにより、編流の発生を低減することができ、冷却能力を向上させることができる。
【0009】
本開示の一態様に係る空調機は、前記散布部は、前記熱交換器よりも上方に設けられており、
前記分岐機構によって分岐された前記第1流路は、前記散布部に向かって延設され、
前記分岐機構によって分岐された前記第2流路は、前記第1流路とは異なる方向に向かって延設されていることを特徴とする。
【0010】
本態様にあたっては、散布部を熱交換器よりも上方に設けることにより、散布部から散布した水を、重力によって下方に位置する熱交換器に散布することができる。そして、散布部に向かって延設される第1流路と、第2流路とを異なる方向に向かって延設させることにより、吸込流路に流れる空気の分流を効率的に行うことができる。
【0011】
本開示の一態様に係る空調機は、前記分岐機構は、前記熱交換器よりも上方に設けられており、
前記分岐機構によって分岐された前記第1流路は、前記散布部に向かって延設され、
前記分岐機構によって分岐された前記第2流路は、前記第1流路とは異なる方向に向かって延設されていることを特徴とする。
【0012】
本態様にあたっては、分岐機構を熱交換器よりも上方に設けることにより、分岐機構により分流された第1空気の風速が低減することを抑制して、当該第1空気を熱交換器に流入させることができる。
【0013】
本開示の一態様に係る空調機は、前記吸込流路は、前記吸込口から吸い込まれた空気の流れ方向において下方から上方に向かって設けられ、
前記第1流路は、前記第1空気の流れ方向において上方から下方に向かって設けられ、
前記分岐機構は、前記吸込流路及び前記第1流路による折り返し地点に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本態様にあたっては、分岐機構は、下方から上方に向かって設けられる吸込流路と、上方から下方に向かって設けられる第1流路とによる折り返し地点に設けられているため、分岐機構に含まれる送風部によって、当該折り返し地点における圧力損失を低減することができる。
【0015】
本開示の一態様に係る空調機は、前記送風部は、遠心ファンである。
【0016】
本態様にあたっては、送風部として遠心ファンを用いることにより、圧力損失の発生を抑制しつつ、吸込流路を流れ、分岐機構に流入した空気の風向きを変化させ、第1流路に流れる第1空気と、第2流路に流れる第2空気とに効率的に分流することができる。
【0017】
本開示の一態様に係る空調機は、前記送風部は、前記第1流路に送風する第1ファン及び、前記第2流路に送風する第2ファンを含むことを特徴とする。
【0018】
本態様にあたっては、送風部は、第1流路に送風する第1ファン及び、第2流路に送風する第2ファンを含むため、吸込流路から分岐機構に流入した空気を、効率的に第1流路及び第2流路に分流することができる。
【0019】
本開示の一態様に係る空調機は、前記第1ファン及び前記第2ファンは、吹出部を備えるターボファンであり、
前記第1ファンの吹出部と、前記第2ファンの吹出部とは、異なる方向に向けられていることを特徴とする。
【0020】
本態様にあたっては、第1ファン及び第2ファンとしてターボファンを用い、吹き出し方向における指向性が高いターボファンの夫々の吹出部、すなわち第1ファンの吹出部及び第2ファンの吹出部を異なる方向に向けることにより、分岐機構に流入した空気を効率的に第1流路及び第2流路に分流することができる。
【0021】
本開示の一態様に係る空調機は、前記送風部は、単一の遠心ファンから成り、
前記分岐機構は、前記単一の遠心ファンから吹き出された空気を前記第1流路と前記第2流路とに分岐する分岐壁を含むことを特徴とする。
【0022】
本態様にあたっては、分岐機構は単一の遠心ファンにより構成されるため、分岐機構の構造を簡素化し、空調機の部品点数を削減することができる。分岐機構は、当該遠心ファンから吹き出された空気を第1流路と第2流路とに分岐されるための分岐壁を含むため、分岐機構に流入した空気を効率的に第1流路及び第2流路に分流することができる。
【発明の効果】
【0023】
空調機の冷却能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1に係る空調機の一構成例を示す模式的側断面図である。
図2】空調機の外観を示す斜視図である。
図3】分岐機構の要部を示す説明図である。
図4】実施形態2に係る分岐機構(単一のターボファン及び分岐壁)の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態1)
以下、実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る空調機1の一構成例を示す模式的側断面図である。図2は、空調機1の外観を示す斜視図である。空調機1は、箱状の筐体15を備え、当該筐体15の底部に設けられたキャスター151によって、例えば工場等の被空調空間の床面に載置される。図1に示す空調機1の載置状態を、当該空調機1の通常の使用態様として上下左右を示す。なお、図1は、図2におけるA−A´線による断面を、図2上にて左側から模式的に示したものである。
【0026】
空調機1は、顕熱交換器2及び散布部16を備え、散布部16から散布した散布水の気化熱を用いて雰囲気温度を低下させ、被空調空間を冷却するものであり、例えば間接気化冷却式の空調機1である。
【0027】
空調機1の筐体15には、被空調空間の空気を吸い込む吸込口51、散布水の気化熱により直接的に冷却された空気を吹き出す第1吹出口31及び、顕熱交換器2を介して第1空気と熱交換することにより冷却され、被空調空間を冷却するための空気を被空調空間に吹き出す第2吹出口41が、設けられている。第1空気は排気と同義であり、第2空気は給気と同義である。また、第1吹出口31は排気吹出口に相当し、第2吹出口41は、給気吸出口に相当する。
【0028】
空調機1には、散布部16から散布される散布水の気化熱により直接的に冷却される第1空気が流れる第1流路3と、吸込口51から吸い込まれ、当該冷却された第1空気と熱交換することにより冷却される空気が流れる吸込流路5とが、設けられている。空調機1は、当該吸込流路5を、第1流路3及び第2流路4に分岐する分岐機構6を備える。分岐機構6は、送風部として機能する第1ファン61及び第2ファン62を含み、吸込流路5に流れる吸込空気を、第1流路3に流れる第1空気と、第2流路4に流れる第2空気とに分流する。分岐機構6の詳細は後述する。
【0029】
吸込流路5は、吸込口51と分岐機構6との間に設けられる流路であり、後述する顕熱交換器2の吸込経路22を含む。吸込口51の近傍となる吸込流路5には、例えばポリエステル又はオレフィン系繊維により形成されるフィルタ52が設けられている。フィルタ52は、吸込口51から吸い込む空気内の塵埃を捕集し、当該塵埃が、顕熱交換器2の吸込経路22に侵入することを防止する。
【0030】
第1流路3は、分岐機構6と第1吹出口31との間に設けられる流路であり、後述する顕熱交換器2の第1経路21を含む。第2流路4は、分岐機構6と第2吹出口41との間に設けられる流路である。
【0031】
顕熱交換器2は、吸込流路5の少なくとも一部を構成する吸込経路22と、第1流路3の少なくとも一部を構成する第1経路21を含む。顕熱交換器2は、例えばアルミニウム等の金属製又は樹脂製の箱状のケースを備え、当該ケースの外周面には断熱部材を設けることにより、顕熱交換器2の内部に流れる第1空気又は吸込空気と、顕熱交換器2の周辺空気との間の熱交換を制限するものであってもよい。
【0032】
顕熱交換器2に形成されている第1経路21及び吸込流路5は、例えば、第1空気又は吸込空気が流れる中空構造を有する金属プレートを複数個、並列に設けることにより構成される。当該中空構造を有する金属プレートは、例えば複数枚のフィンにより構成されるもの又は、扁平管であってもよい。例えば、当該プレートは、伝熱性の良い金属であるアルミニウム、銅等又は、これらを主成分とする合金で形成することで、顕熱交換の効率を向上させることができる。第1経路21及び吸込経路22は、これら中空構造を有する複数の金属プレート夫々により、複数並んで形成される。
【0033】
吸込空気の流れ方向において、顕熱交換器2の吸込経路22の入口は、顕熱交換器2の下方の左側面に設けられており、吸込経路22の出口は、顕熱交換器2の上方の右側面に設けられている。従って、顕熱交換器2の吸込経路22は、左下方の入口から右上方の出口まで連通するクランク状に形成されている。図2において、吸込経路22は逆Z状に形成されている。
【0034】
第1空気の流れ方向において、顕熱交換器2の第1経路21の入口は、顕熱交換器2の上方に設けられており、顕熱交換器2の第1経路21の出口は、顕熱交換器2の下方に設けられている。従って、顕熱交換器2の第1経路21は、上方から下方に向かって、直線状に形成されている。
【0035】
顕熱交換器2内において、第1経路21を流れる第1空気は上方から下方に向かって流れ、吸込経路22を流れる吸込空気は下方から上方に向かって流れるため、第1空気及び吸込空気の流れは、互いに逆方向となる対向流を形成している。
【0036】
顕熱交換器2の第1経路21の入口の上方には、散布部16が設けられており、散布部16から散布された霧状の水が気化する際の気化熱により、第1経路21に流れる第1空気は冷却される。顕熱交換器2によって、吸込経路22を流れる吸込空気と、第1経路21を流れる第1空気とは、熱交換され、吸込空気は第1空気によって冷却される。第1空気及び吸込空気の流れは対向流を形成するため、顕熱交換器2における熱交換率を向上させることができる。
【0037】
吸込口51を介して披空調空間から吸い込まれた吸込空気は、フィルタ52を通過した後、顕熱交換器2の吸込経路22に流入する。顕熱交換器2の吸込経路22に流入した吸込空気は、顕熱交換器2を介して第1空気と熱交換することにより、冷却される。冷却され、顕熱交換器2の吸込経路22を通過した吸込空気は、吸込経路22の下流側に位置する分岐機構6の分岐室63内に流入する。
【0038】
分岐機構6に流入した吸込空気は、第1流路3を流れる第1空気と、第2流路4を流れる第2空気とに分流される。第2流路4を流れる第2空気は、第2吹出口41(給気吹出口)から被空調空間に吹き出され、被空調空間を冷却する。第1流路3を流れる第1空気は、顕熱交換器2の第1経路21に流入する。
【0039】
第1経路21に流入した第1空気は、上述のとおり散布部16から散布された散布水の気化熱により、更に冷却される。第1経路21を流れる第1空気は、顕熱交換器2を介して、吸込経路22を流れる吸込空気と熱交換することにより、当該吸込空気は冷却される。吸込空気を分流して第1空気とすることにより、実質的に第1空気を二段階で冷却することができ、当該第1空気の温度を効率的に低下させることができる。すなわち、第1空気を2段階にて冷却することにより、吸込空気を気化熱により直接的に冷却するのみの場合よりも、更に低温に冷却することができる。
【0040】
被空調空間に吹き出される第2空気は、吸込空気を分流したものであり、吸込空気は顕熱交換器2を介して第1空気により冷却される。上述のとおり第1空気は2段階にて冷却され更に低温となっているため、当該第1空気により冷却される吸込空気を効率的に冷却し、このように冷却された吸込空気を分流した第2空気を、被空調空間に吹き出し、給気することができる。
【0041】
顕熱交換器2の第1経路21を通過した第1空気は、後述するドレンパン13を通過した後、第1吹出口31から被空調空間又は室外に吹き出されることにより排気される。
【0042】
空調機1は、顕熱交換器2の下方に設けられたドレンパン13、散布部16から散布する散布水を保存するタンク14、及びタンク14内の水を散布部16に供給するポンプ11を備える。
【0043】
ドレンパン13は、上面に開口部を備えた例えば皿状の容器である。ドレンパン13の底面には、タンク14と連通するための連通路が設けられている。散布部16から散布された散布水において、気化しなかった水又は、気化した後に凝縮した水は、顕熱交換器2の第1経路21の内壁面を伝って下方に滴下し、ドレンパン13にて保持される。ドレンパン13内の水は、連通路を介してタンク14内に流れ込む。
【0044】
タンク14は給水口(図示せず)を備え、給水口を介して、水道水がタンク14内に補給される。タンク14とポンプ11とは、配管により連通しており、ポンプ11が駆動することにより、タンク14内の水は散布部16に供給される。
【0045】
ポンプ11は、コントローラ12から出力された制御信号により、駆動又は停止するように制御される。コントローラ12は、制御部及び記憶部を含むマイコン等により構成され、空調機1の操作者の操作に基づき、ポンプ11及び、送風部である第1ファン61及び第2ファン62の駆動又は停止の制御を行う。
【0046】
散布部16は、霧状の水を散布する散布ノズルを含み、当該散布ノズルは、配管及びポンプ11を介してタンク14と連通している。上述のとおり、ポンプ11によってタンク14内の水は、散布部16に供給され、散布ノズルから顕熱交換器2の第1経路21の入口に向かって、散布される。
【0047】
空調機1は、電気部品171及び蓄電池172を含む電気装置17を備える。電気装置17は、顕熱交換器2の第1経路21及びドレンパン13を通過した後の第1流路3に隣接して、設けられている。換言すると、電気装置17は、第1空気の流れ方向においてドレンパン13の下流側から第1吹出口31の間の第1流路3に隣接して設けられている。
【0048】
電気部品171は、例えば、抵抗、コイル、キャパシタ又は半導体素子等、電圧が印加され、電流が流れることにより発熱する部品である。具体的には電気部品171は、これら部品が実装された制御基板又は電源基板等の回路基板を含む。電気部品171は、電装品箱等の箱体に収納されたものであってもよい。電気部品171は、コントローラ12を含むものであってもよい。蓄電池172は、例えばリチウムイオン電池であり、空調機1が商用電源に接続されていない場合、送風部及びポンプ11等の電気負荷に対し、電力を供給する。
【0049】
図3は、分岐機構6を示す説明図である。分岐機構6は、送風部と、当該送風部として機能する第1ファン61、および、第2ファン62を収納する分岐室63とを含む。図3においては、第1ファン61および第2ファン62が上下にあるように記載されているが、図3の奥行き方向に前後して並んでいてもよい。
【0050】
分岐機構6は、吸込経路22の下流側に位置する吸込流路5を、第1流路3及び第2流路4に分岐することにより、顕熱交換器2の吸込経路22を通過した吸込空気を、第1流路3に流れる第1空気と、第2流路4に流れる第2空気とに分流する。従って、吸込流路5は、分岐室63を介して、第1流路3と、第2流路4とに連通している。
【0051】
第1ファン61及び第2ファン62は、例えばターボファン等の遠心ファンであり、中央に位置する吸込部611,621と、一方向に延びる吹出部612,622とを有する。吸込部611,621及び吹出部612,622は、ターボファンの外郭を成すシェル部材に設けられている。第1ファン61及び第2ファン62は、その一部が重なるように分岐室63に設けられている。
【0052】
第1ファン61は、吹出部612を第1流路3に向けて設けられている。第1流路3には、散布部16が設けられており、第1ファン61の吹出部612は、散布部16に向けられている。第1ファン61は、分岐機構6に流入した吸込空気の一部を、第1空気として第1流路3に吹き出す。第1ファン61から吹き出された第1空気は、第1流路3に設けられたガイド壁32により散布部16に案内される。
【0053】
第2ファン62は、吹出部622を第2流路4に向けて設けられている。第2流路4は、第2吹出口41に連通しており、第2ファン62の吹出部622は、第2吹出口41に向いている。第2ファン62は、分岐機構6に流入した吸込空気の一部を、第2空気として第2流路4に吹き出す。第2ファン62から吹き出された第2空気は、第2吹出口41から被空調空間に給気される。
【0054】
ターボファンの吹出部612,622は、一方向に延びる形状をなし、ターボファンの吹出部612,622から吹き出された空気は、当該吹出部612,622の延設方向に向かう指向性を有する。従って、第1ファン61は、吸込部611から吸込んだ吸込空気を、吹出部612から散布部16に向けて効率的に吹き出すことができる。また、第2ファン62は、吸込部621から吸込んだ吸込空気を、吹出部622から第2吹出口41に向けて効率的に吹き出すことができる。
【0055】
分岐機構6によって分岐された第1経路21と、第2経路とは、互いに逆方向となるように異なる方向に向かって延設されている。同様に、第1ファン61の吹出部612と、第2ファン62の吹出部622は、互いに逆方向となるように異なる方向に向いている。
従って、第1ファン61及び第2ファン62により分流された第1空気及び第2空気を、第1経路21及び第2経路を吹き出すにあたり、第1空気及び第2空気による干渉を抑制し、通風抵抗が発生することを低減することができる。
【0056】
第1ファン61及び第2ファン62は、コントローラ12と通信可能に接続されており、コントローラ12から出力された制御信号に基づき、回転等の駆動又は、停止する。コントローラ12は、空調機1の操作者から入力された操作内容に基づき、又はコントローラ12の記憶部に記憶されているプログラムを実行することにより、第1ファン61と第2ファン62との回転数を異ならせ、第1空気及び第2空気の体積流量を制御するものであってもよい。第1空気及び第2空気の体積流量を制御することにより、空調機1の運転モードの種類を増加させることができる。
【0057】
図1に示すとおり、分岐機構6は、顕熱交換器2よりも上方に設けられている。吸込経路22は、吸込空気の流れ方向において、下方から上方に向かって設けられている。吸込経路22は吸込流路5の一部を構成するため、吸込流路5は、吸込空気の流れ方向において、下方から上方に向かって設けられるものとなる。第1経路21は、第1空気の流れ方向において、上方から下方に向かって設けられている。第1経路21は第1流路3の一部を構成するため、第1流路3は、第1空気の流れ方向において、上方から下方に向かって設けられるものとなる。
【0058】
分岐機構6は、下方から上方に向かって設けられる吸込流路5と、上方から下方に向かって設けられる第1流路3とによる折り返し地点に設けられている。図1においては、分岐機構6の近傍で流路が約270度折り返している部分が折り返し地点である。このように下方から上方に向かって設けられた吸込流路5と、上方から下方に向かって設けられた第1流路3により、U字状の流路が形成されるところ、当該U字状の流路における折り返し地点に、送風部を備える分岐機構6を設けることにより、U字状の流路における圧力損失の影響を緩和させることができる。分岐機構6は、顕熱交換器2よりも上方の折り返し地点に設けられている場合を説明したが、折り返し地点の範囲内に設けられれば圧損の緩和に寄与することができる。一例として、図1の吸込経路22の出口に吸込部611及び吸込部621が隣接していてもよい。その場合、各ファンの吹出部612,622の方向および流路を第1経路21方向、または第2吹出口41方向へ規定する壁面などを設けることにより容易に変形が可能である。
【0059】
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係る分岐機構6(単一のターボファン64及び分岐壁65)の要部を示す説明図である。実施形態2の分岐機構6は、送風部が単一のターボファン64によって構成され、分岐機構6が分岐壁65を含む点で、実施形態1と異なる。
【0060】
実施形態2の分岐機構6は、送風部、送風部を収納する分岐室63及び、分岐室63に設けられた分岐壁65を含む。実施形態2の分岐機構6の送風部は、例えばターボファン64等の遠心ファンである。
【0061】
ターボファン64は、円筒状を成し、中央に設けられた吸込部641と、円筒の外周面の全周に亘って設けられた吹出部642とを備える。ターボファン64は、分岐機構6に流入した吸込空気を、吸込部641から吸込み、吹出部642から吹き出す。ターボファン64の吹出部642は、外周面の全周に亘って設けられているため、ターボファン64に吸い込まれた空気は、外周面の全周から放射状に吹き出される。
【0062】
分岐室63に設けられた分岐壁65は、ターボファン64が吹き出した空気を第1流路3側に分岐するための第1流路3方向に延びる分岐壁65と、第2流路4側に分岐するための第2流路4方向に延びる分岐壁65とを含む。
【0063】
第1流路3の分岐壁65は、紙面上、ターボファン64の上側に設けられており、第1流路3の分岐壁65の一端部は、第1流路3に設けられたガイド壁32に接し、他端部は、ターボファン64の上側の外周面に接することにより、ガイド壁32とターボファン64の上側の外周面とを架け渡すように設けられている。従って、第1流路3の分岐壁65は、第1流路3の内壁の一部として構成される。
【0064】
第2流路4の分岐壁65は、紙面上、ターボファン64の下側に設けられており、第2流路4の分岐壁65の一端部は、第2吹出口41に接し、他端部は、ターボファン64の下側の外周面に接することにより、第2吹出口41とターボファン64の下側の外周面とを架け渡すように設けられている。従って、第2流路4の分岐壁65は、第2流路4の内壁の一部として構成される。
【0065】
第1流路3の分岐壁65は、第1流路3と吸込流路5とを仕切る仕切板として機能するものであってもよい。更に、第2流路4の分岐壁65は、第1流路3と吸込流路5とを仕切る仕切板として機能するものであってもよい。このように第1流路3の分岐壁65及び第2流路4の分岐壁65が仕切板として機能することにより、分岐機構6により分流された第1空気及び第2空気が、吸込流路5に逆流することを防止することができる。
【0066】
第1流路3の分岐壁65及び第2流路4の分岐壁65は、円弧状の曲面を有し、曲面の凹部側をターボファン64に向けて、設けられている。従って、ターボファン64から吹き出された空気は、第1流路3の分岐壁65及び第2流路4の分岐壁65の曲面の凹部側に沿って、分流されるものとなり、通風抵抗を低減することができる。
【0067】
分岐機構6の送風部を単一のターボファン64にて構成することにより、分岐機構6の構造を簡素化し、空調機1の部品点数を削減することができる。
【0068】
第1流路3の分岐壁65と、第2流路4の分岐壁65との間にターボファン64を位置させて、ターボファン64を挟み込むように第1流路3の分岐壁65及び第2流路4の分岐壁65を設けることにより、ターボファン64の外周面から全周に亘って吹き出された空気を効率的に第1流路3及び第2流路4に分流することができる。
【0069】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 空調機
11 ポンプ
12 コントローラ
13 ドレンパン
14 タンク
15 筐体
151 キャスター
16 散布部
17 電気装置
171 電気部品
172 蓄電池
2 顕熱交換器
21 第1経路
22 吸込経路
3 第1流路
31 第1吹出口(排気吹出口)
32 ガイド壁
4 第2流路
41 第2吹出口(給気吹出口)
5 吸込流路
51 吸込口
52 フィルタ
6 分岐機構
61 第1ファン(送風部、遠心ファン)
611 吸込部
612 吹出部
62 第2ファン(送風部、遠心ファン)
621 吸込部
622 吹出部
63 分岐室
64 ターボファン(送風部、遠心ファン)
641 吸込部
642 吹出部
65 分岐壁
図1
図2
図3
図4