特許第6897744号(P6897744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000002
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000003
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000004
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000005
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000006
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000007
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000008
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000009
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000010
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000011
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000012
  • 特許6897744-作業車連携システム 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897744
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】作業車連携システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20210628BHJP
   A01F 15/08 20060101ALI20210628BHJP
   A01F 25/13 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   A01B69/00 Z
   A01F15/08 R
   A01F25/13 Z
【請求項の数】1
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-193066(P2019-193066)
(22)【出願日】2019年10月23日
(62)【分割の表示】特願2015-135498(P2015-135498)の分割
【原出願日】2015年7月6日
(65)【公開番号】特開2020-10723(P2020-10723A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 俊郎
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−239693(JP,A)
【文献】 特開2005−242489(JP,A)
【文献】 特開2000−010617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00−69/08
A01F 1/00− 1/06、
12/00、
13/00−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫物を放出した位置を示す放出位置情報を送信する第1作業車と、
前記放出位置情報に含まれる収穫物の放出位置と収穫物の集積場所とに基づいて移動経路を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された移動経路に応じて自動的に前記放出位置の収穫物を回収する第2作業車と、を含む
ことを特徴とする作業車連携システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車同士を連携して動作させる作業車連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の飼料の一つに、稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ)がある。稲発酵粗飼料とは、稲の実と茎葉を同時に収穫し発酵させた牛の飼料である。このような飼料用の稲の収穫には、牧草用の作業機を利用したトラクター牽引式のロールベーラや、刈落とし作業を行わずに、立毛状態のまま、稲をダイレクトに収穫して、ロールベールに形成することができる自走式の飼料コンバインベーラが用いられる。そして、飼料コンバインベーラ等から放出されたロールベールは圃場に放置される。放置されているロールベールはラッピングマシンに回収され、フィルムが巻かれて密封され、ラップサイロとなる。ラップサイロは、ラッピングマシン又はベールグラブによって所定の集積場所に集積される。集積されたラップサイロは、トラックに積載されてストックヤードに輸送される。ラップサイロは数週間で乳酸発酵が安定し、良質なサイレージとなり、家畜に給与することができる。
【0003】
このように、飼料の生産には多くの工程があり、各工程で様々な作業車(飼料コンバインベーラ、ラッピングマシン、ベールグラブ等)が使用される。そのため、効率良く作業するには工程間の連携、つまり作業車間の連携を良くすることが重要となる。
【0004】
作業車間の連携に関する技術としては、例えば、田植え用の作業車が、圃場内において予定走行経路に沿って自動走行しながら、補助作業車から苗の補給を受けるものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3200554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術をそのまま上記の飼料の生産工程に適用することは困難である。例えば、上記の飼料の生産工程では、飼料コンバインベーラが放出したロールベール、つまり圃場に放置されたロールベールをラッピングマシンが回収して回る。したがって、飼料コンバインベーラからラッピングマシンへ直接ロールベールを渡すわけではないので、作業車間での直接的な受け渡しに関する特許文献1のような技術を適用することはできない。また、ベールグラブがラップサイロを回収する工程についても、作業車間での直接的な受け渡しではないので、同様である。
【0007】
本発明は、第1作業車が放出した収穫物を第2作業車が回収する場合に、第2作業車が効率良く収穫物を回収できるように支援する作業車連携システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、収穫物を放出した位置を示す放出位置情報を送信する第1作業車と、前記放出位置情報に含まれる収穫物の放出位置と収穫物の集積場所とに基づいて移動経路を算出する算出部と、前記算出部によって算出された移動経路に応じて自動的に前記放出位置の収穫物を回収する第2作業車と、を含む作業車連携システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2作業車が算出部によって算出された移動経路に応じて自動的に第1作業車が放出した放出位置の収穫物を回収することにより、効率良く収穫物を回収して集積場所に集積できるので、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の作業車連携システムが適用される飼料の生産工程の概要を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態の飼料コンバインベーラの外観図である。
図3】本発明の一実施形態のラッピングマシンの外観図である。
図4】本発明の一実施形態のベールグラブの外観図である。
図5】本発明の一実施形態の作業車連携システムの概略構成を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態の飼料コンバインベーラの作業車連携システムに関する構成を示すブロック図である。
図7】本発明の一実施形態のラッピングマシンの作業車連携システムに関する構成を示すブロック図である。
図8】本発明の一実施形態のベールグラブの作業車連携システムに関する構成を示すブロック図である。
図9】本発明の一実施形態の管理サーバの概略構成を示すブロック図である。
図10】本発明の一実施形態の収穫作業中の圃場の様子を簡略化した平面図である。
図11】本発明の一実施形態のラッピングマシンの移動経路を示す図である。
図12】本発明の一実施形態のベールグラブの移動経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の作業車連携システムは、農業における作業車の連携に利用することができ、特に飼料の生産に有効に利用することができる。以下の実施形態では、稲発酵粗飼料の生産における稲の収穫からサイレージまでの工程に、作業車連携システムを適用した例について説明する。
【0012】
図1は、作業車連携システムが適用される飼料の生産工程の概要を説明する図である。
【0013】
稲発酵粗飼料の生産工程においては、まず、圃場で栽培されている稲を立毛状態のまま、自走式の飼料コンバインベーラ2でダイレクトに収穫して、飼料コンバインベーラ2でロールベール50に成形し、成形が完了した時点で飼料コンバインベーラ2からロールベール50を放出し、ロールベール50を圃場に放置する。
【0014】
続いて、圃場に放置されたロールベール50をラッピングマシン3で回収し、ラッピングマシン3でロールベール50にフィルム30を巻いて密封することでラップサイロ51を作製し、作製が完了した時点でラッピングマシン3からラップサイロ51を放出し、ラップサイロ51を圃場に放置する。
【0015】
続いて、圃場に放置されたラップサイロ51をベールグラブ4で回収し、畦道などの所定の集積場所に集積する。集積されたラップサイロ51は、トラックに積載されてストックヤードに輸送される。その後、ラップサイロ51は数週間で乳酸発酵が安定し、良質なサイレージとなり、家畜に給与することができる。
【0016】
次に、各作業車について簡単に説明する。
【0017】
<飼料コンバインベーラ>
図2は、飼料コンバインベーラ2の外観図である。飼料コンバインベーラ2は、走行台車部分として、走行機台20に対して走行部21、運転部22、原動機部(不図示)等を具備する。
【0018】
走行部21は、走行機台20を移動可能にするものであり、走行機台20の下部に設けられる。走行部21は、左右一対のクローラ210を有するクローラ式走行装置を具備し、走行機台20を前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0019】
運転部22は、走行部21、原動機部およびロールベーラ部23の操作を行うものである。運転部22は、走行機台20の前部右側方に配置される。運転部22は、ステアリングハンドル220、運転席221、作業クラッチレバー222等を具備する。
【0020】
運転部22の前方であって略左右中央部には、ハンドルコラムが配置され、その上面にステアリングハンドル220が配置される。ステアリングハンドル220の後方には、運転席221が配置される。運転席221の右側方には操縦者を保護するプロテクタ223が配置される。運転席221の左側方には、サイドコラムが立設され、その上面に作業クラッチレバー222等が配置される。作業クラッチレバー222には、ロールベーラ部23の稼動状態を検知する作業状態検知装置として、作業クラッチがロールベーラ部23に動力を伝達する入り状態と動力を伝達しない切り状態とを検知する入り切り状態検知センサ(不図示)が設置される。このように、運転部22は、運転席212に運転者を着座させ、操作具類により運転者が各部の装置を操作できるように構成される。
【0021】
原動機部は、走行部21やロールベーラ部23に動力を伝達するものである。原動機部は、エンジン、エンジンの動力を変速するトランスミッション、燃料タンク、ロールベーラ部23に動力を伝達するためのカウンタユニット等を具備して走行機台20に設けられる。
【0022】
このようにして、飼料コンバインベーラ2は、運転部22での操作具類の操作によって、エンジンの動力を走行部21や搭載される作業機であるロールベーラ部23に伝達して、走行部21にて走行機台20を走行させながら、各種作業を行うことができるように構成される。
【0023】
ロールベーラ部23は、飼料作物を刈り取り、ロールベールを成形するものである。ロールベーラ部23は、刈取部24、搬送部25、成形部26等を具備する。
【0024】
刈取部24は、飼料作物を刈り取るものである。刈取部24は、カバー240、駆動軸241、フレール刃242、固定刃243等を有し、走行機台20の前方に配置される。
【0025】
刈取部24においては、カバー240内に左右水平方向に向けて駆動軸241が回動自在に軸支される。駆動軸241には、フレール刃242が放射状に所定間隔、かつ所定角度で位置をずらして配置される。カバー240内には、固定刃243が水平方向にフレール刃242と対向して配置される。これにより、フレール刃242は、立毛状態の収穫物(稈)を切断可能であるとともに、回動により搬送部25方向に向かう搬送風を発生させて切断された飼料作物を搬送部25内に跳ね上げるように構成される。
【0026】
搬送部25は、刈取部24で刈り取られた収穫物を成形部26へ搬送するものである。搬送部25は、搬送ダクト250、支持アーム251、揺動軸252、昇降シリンダ253等を有し、走行機台20の前部上側方に配置される。
【0027】
搬送ダクト250の一側端部は、刈取部24の後部上側面に連通するようにして固設される。搬送ダクト250は、一側端部から後上方に向かって延設され、側面視略逆J字状に形成される。搬送ダクト250の他側端部は、刈り取られた飼料作物の排出口254として、成形部26の前部上側面から成形部26内部に挿入されている。これにより、搬送部25は、刈取部24で刈り取られた収穫物を、搬送風によって搬送ダクト250を通じて成形部26内に投入可能に構成される。
【0028】
搬送ダクト250の後側側面には、支持アーム251が後方に向かって略水平に立設され、その後側端部を走行機台20の連結フレームに軸方向を左右方向として設けられる揺動軸252に軸支される。また、搬送ダクト250の後側側面には、伸縮方向を略上下方向として昇降シリンダ253が設けられ、走行機台20の前端部に連結されている。従って、搬送ダクト250、および搬送ダクト250の一側端部に固設される刈取部24は、昇降シリンダ253が伸縮されることにより、揺動軸252を中心として昇降回動自在に構成される。昇降シリンダ253には、刈取部24の昇降位置を検知する検知装置として、昇降シリンダ253の伸縮量から刈取部24の昇降位置を検知する昇降位置検知センサ255が設置される。
【0029】
成形部26は、刈り取られた収穫物をロールベール50に成形するものである。成形部26は、固定側筐体260、開閉側筐体261、揺動軸262、開閉シリンダ263、ロールベール形成装置264等を有し、走行機台20上の後部に配置される。
【0030】
成形部26は、固定側筐体260と開閉側筐体261とによって前後半割状に構成される。開閉側筐体261は、その前側上端部を固定側筐体260の後側上端部に軸方向を左右方向として設けられる揺動軸262に軸支される。固定側筐体260の上側面には、伸縮方向を前後方向として開閉シリンダ263が設けられ、開閉側筐体261の上側面に連結されている。よって、開閉側筐体261は、開閉シリンダ263が伸縮されることにより、揺動軸262を中心として開閉回動自在に構成される。固定側筐体260の前部上側面には、刈り取られた収穫物の投入口265として、搬送ダクト250(搬送部25の排出口254)が挿入されている。
【0031】
成形部26の内部には、軸方向を左右方向として軸支される複数の回転ローラ266を、側面視略C字状に配置し、その開口部分を投入口265に向けたロールベール形成装置264が構成される。複数の回転ローラ266は、エンジンからカウンタユニットを介して伝達される動力により同一方向に回動可能に構成される。よって、投入口265から投入された収穫物は、ロールベール形成装置264の内側に投入されて複数の回転ローラ266によって円柱状に形成される。新たに投入される収穫物は、すでにロールベール形成装置264の内側で円柱状に形成された収穫物の外径部分に順次巻きつけられ、所定の外径のロールベール50に形成される。
【0032】
ロールベール形成装置264の後側部分を構成する複数の回転ローラ266は、開閉側筐体261に配置されている。すなわち、ロールベール形成装置264の後部は、開閉側筐体261の開閉に伴って開閉される。すなわち、ロールベール形成装置264は、形成したロールベール50を機外に放出可能に構成される。
【0033】
開閉シリンダ263には、ロールベール50の放出を検知する放出検知装置として、開閉シリンダ263の伸縮量によって開閉側筐体261の開放状態と閉鎖状態とを検知する開閉状態検知センサ267が設置される。ロールベール50を放出する際に開放される開閉側筐体261の開放状態を検知することで、ロールベール50の放出を検出するように構成される。
【0034】
以上より、飼料コンバインベーラ2は、運転部22での操作具類の操作によって、エンジンの動力を走行部21やロールベーラ部23に伝達して、走行部21にて走行機台20を走行させながら、ロールベーラ部23でロールベール50の形成、および放出を行うことができるように構成される。これにより、飼料コンバインベーラ2は、圃場で栽培されている稲を立毛状態のままダイレクトに収穫して、ロールベール50に成形し、成形が完了した時点でロールベール50を放出することができる。
【0035】
なお、飼料コンバインベーラ2の代わりに自走式のロールベーラやトラクター牽引式のロールベーラを用いてもよい。この場合、別途、稲の刈落とし作業が必要となる。また、飼料コンバインベーラ2は、オペレータが運転する代わりに自動運転制御による無人運転としてもよい。
【0036】
<ラッピングマシン>
図3は、ラッピングマシン3の外観図である。ラッピングマシン3は、矩形状に枠組みされたベースフレーム31に昇降装置310を設けて、その上に載置されたターンテーブル32を昇降させられるようにしたものである。昇降装置310は、矩形状に枠組みされたフレームの内側にXリンクを設けて油圧シリンダによってターンテーブル32を昇降させるようにしている。このような昇降装置310を用いることによって、トラックなどの高所であってもラップサイロ51を放出できるようにしている。
【0037】
昇降装置310の上に支持されるターンテーブル32は、縦軸方向の回転軸を中心として、モーターなどの回転手段320を用いてその上に載置されたベール支持台33を水平面内で回転させるようにしている。また、ターンテーブル32と昇降装置310との間には、ターンテーブル32を後方側に向けて傾斜させるための傾斜手段34が設けられており、これによって、ターンテーブル32上に設けられたベール支持台33にロールベール50を積み込めるようにしている。傾斜手段34としては、後方側に設けられたヒンジ340を中心に、前方側を持ち上げるようにした油圧シリンダ341をターンテーブル32の下方に配置し、油圧シリンダ341を伸ばすことによってターンテーブル32を後方に向けて傾斜させられるようにしている。
【0038】
ターンテーブル32に支持されるベール支持台33は、ロールベール50を載置できるようにしたものであって、枠体に前後一定の間隔をもって取り付けられたロールにベルトを張架させ、その上に載置されたロールベール50を、円筒軸を中心に自転させられるようにしたものである。
【0039】
フィルムユニット35は、ベール支持台33に載置されたロールベール50に対して、プラスチックフィルムを伸ばしながら巻き付けられるようにしたものであって、ベースフレーム31の後方側から支柱350を立設し、その上端に一または二本のフィルムロール300を取り付けようにしたものである。フィルムロール300を二本取り付ける場合は、互いに段違いとなるように取り付け、一度に幅広い面積のロールベール50にフィルム30をストレッチさせながら巻き付けられるようにする。
【0040】
一方、ベール支持台33の後方側には、ロールベール50に巻き付けられたフィルム30を切断するための切断機構351が取り付けられており、ベール支持台33を前方に向けて傾斜させることによって、カッターを有する切断機構351を上方に持ち上げ、フィルム30を挟み込むことによって切断できるようにしている。この切断機構351には、フィルム30を保持するためのクランプ機構が設けられており、切断されたフィルム30のフィルムロール300側を保持できるようにしている。
【0041】
また、積込機構36は、圃場からロールベール50を拾い上げてベール支持台33上に載置するとともに、ラッピングの終了したラップサイロ51を圃場などに放出できるようにしている。積込装置36は、ベースフレーム31から立設するリフトアーム360と、リフトアーム360の先端側でL字状に屈曲するベール支持アーム361と、リフトアーム360の中央付近に設けられるT字状のストッパー362とを備えて構成されており、圃場のロールベール50を積み込む際には、傾斜手段34を用いてリフトアーム360を水平に傾倒させ、ベール支持アーム361を寄せてロールベール50を挟み込むようにする。このとき、T字状のストッパー362はバネによってロールベール50から逃げるように支点を中心として回転する。そして、その状態でリフトアーム360を起立させるように回転させることで、ロールベール50をベール支持台33上に載置させるようにする。一方、ラッピングが終了した場合、ベール支持台33を前方に向けて傾斜させ、ベール支持アーム361で挟み込んだ状態でリフトアーム360に移し替え、リフトアーム360を水平状態にまで傾動させることによってラップサイロ51を圃場に放出する。
【0042】
ベースフレーム31の下方には、ラッピングマシン3を移動可能にする走行部37が設けられる。走行部37は、左右一対のクローラ370を有するクローラ式走行装置を具備し、ラッピングマシン3を前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0043】
フィルムユニット35の後方には、運転部38が設けられる。運転部38は、走行、ロールベール50の回収、ラッピング、ラップサイロ51の放出等の操作を行うものである。運転部38は、タッチパネル等の表示操作部380、運転席381、作業クラッチレバー382等を具備する。ラッピングマシン3は、オペレータが運転することも、自動運転制御による無人運転も可能に構成される。
【0044】
以上より、ラッピングマシン3は、エンジンの動力を走行部37やターンテーブル32に伝達して、ラッピングマシン3を走行させながら、ターンテーブル32上でロールベール50のラッピングを行うことができるように構成される。これにより、ラッピングマシン3は、圃場に放置されたロールベール50を回収し、ロールベール50にフィルム30を巻いて密封することでラップサイロ51を作製し、作製が完了した時点でラップサイロ51を放出することができる。
【0045】
なお、ラッピングマシン3はトラクター牽引式であってもよい。
【0046】
<ベールグラブ>
図4は、ベールグラブ4の外観図である。ベールグラブ4は、トラクター41の前部にグラブアダプタ42が取り付けられて構成される。トラクター41は、主に、フレーム410と、エンジンと、トランスミッションと、フロントアクスルと、リヤアクスルと、キャビン411とを備えている。キャビン411は、その内側が操縦室になっており、運転席412のほか、ステアリングハンドル413、アクセルペダル、シフトレバーなどが配置されている。
【0047】
グラブアダプタ42は、アーム420と、グラブ421とを備えている。アーム420は、トラクター41の前部に回動可能に取り付けられている。アーム420には油圧アクチュエータが設けられており、トラクター41から供給される油圧によって、回動可能となっている。
【0048】
グラブ421は、左右一対の把持アームを有する左右両開き式のロールベール用グラブである。グラブ421はアーム420の先端に回動可能に設けられている。グラブ421には油圧アクチュエータが設けられており、トラクター41から供給される油圧によって開閉可能となっている。
【0049】
ベールグラブ4は、オペレータが運転することも、自動運転制御による無人運転も可能に構成される。
【0050】
以上より、ベールグラブ4は、エンジンの動力をフロントアクスル及びリヤアクスルに伝達して、トラクター41を走行させながら、エンジンの動力から油圧を取り出して、グラブ421でラップサイロ51を把持することができるように構成される。これにより、ベールグラブ4は、圃場に放置されたラップサイロ51を回収し、畦道などの所定の集積場所に集積したり、集積されたラップサイロ51をトラックに積載したりすることができる。
【0051】
なお、ベールグラブ4はトラクター41にグラブアダプタ42を取り付けた構成としているが、ベールグラブに特化した作業車であってもよい。
【0052】
<作業車連携システム>
図5は、作業車連携システム1の概略構成を示すブロック図である。作業車連携システム1は、飼料コンバインベーラ2と、ラッピングマシン3と、ベールグラブ4と、管理サーバ6と、通信網7とを備える。各作業車(飼料コンバインベーラ2、ラッピングマシン3、ベールグラブ4)にはそれぞれ作業車端末装置27、39、43が備えられる。本実施形態では、作業車連携システム1は飼料用の稲が栽培されている圃場で使用され、飼料コンバインベーラ2はオペレータにより運転され、ラッピングマシン3及びベールグラブ4は自動運転制御されるものとする。
【0053】
作業車端末装置27、39、43及び管理サーバ6は、通信網7を介して互いの通信部で接続されることで、作業車端末装置27、39、43と管理サーバ6との間で情報の送受信を行うことが可能とされている。これにより、管理サーバ6で各作業車を管理したり、各作業車間で情報を共有したりすることができる。
【0054】
管理サーバ6は、圃場を運営する農家の事務所又は作業車連携システム1の販売元等のシステム管理会社に設置されており、後述する放出位置情報や集積位置情報等を格納(蓄積)するようになっている。管理サーバ6に格納されている情報は、管理サーバ6に接続されている表示部に出力され、システムの利用者によって利用されるようになっている。
【0055】
作業車端末装置27、39、43は、GPS衛星からの電波等を利用することで自車の位置情報を取得する。また、作業車端末装置27、39、43は、取得した位置情報を他の作業車端末装置27、39、43や管理サーバ6に送信する。また、作業車端末装置27、39、43は、取得した位置情報や地図情報に基づいて移動経路を算出する。
【0056】
通信網7は無線通信網、又は有線通信網と無線通信網を組み合わせた通信網を用いることができる。通信網7としては、代表的には、電気通信事業者が適用する公衆回線網であって、固定電話機や携帯電話機等の端末機どうしを通信させる公衆回線網を挙げることができる。
【0057】
このような作業車連携システム1は、稲発酵粗飼料の生産工程において以下のように機能する。まず、飼料コンバインベーラ2が、圃場で栽培されている稲を収穫し、ロールベール50に成形し、ロールベール50を放出する。このとき、作業車端末装置27は、ロールベール50を放出する際に開放される開閉側筐体261の開放操作又は開放状態を検知することでロールベール50の放出を検出し、GPS衛星からの電波等を利用してロールベール50を放出した位置を示すロールベール放出位置情報を取得する。ロールベール50は放出された位置に放置されるので、実質的にロールベール放出位置情報はロールベール50が放置されている位置を示すことになる。
【0058】
作業車端末装置27は、ロールベール放出位置情報をラッピングマシン3の作業車端末装置39及び管理サーバ6へ送信する。飼料コンバインベーラ2とラッピングマシン3との間の情報の送受信は通信網7を介して直接送受信してもよいし、管理サーバ6を介して間接的に送受信してもよい。
【0059】
続いて、作業車端末装置39は、飼料コンバインベーラ2の作業車端末装置27から放出位置情報を取得する。そして、ラッピングマシン3は、自動運転制御によりロールベール放出位置情報に基づいてロールベール50が放置されている場所に移動し、ロールベール50を回収する。ラッピングマシン3は、回収したロールベール50にフィルム30を巻いて密封することでラップサイロ51を作製し、ラップサイロ51を放出する。このとき、作業車端末装置39は、GPS衛星からの電波等を利用してラップサイロ51を放出した位置を示すラップサイロ放出位置情報を取得する。ラップサイロ51は放出された位置に放置されるので、実質的にラップサイロ放出位置情報はラップサイロ51が放置されている位置を示すことになる。
【0060】
作業車端末装置39は、ラップサイロ放出位置情報をベールグラブ4の作業車端末装置43及び管理サーバ6へ送信する。ラッピングマシン3とベールグラブ4との間の情報の送受信は通信網7を介して直接送受信してもよいし、管理サーバ6を介して間接的に送受信してもよい。
【0061】
続いて、ベールグラブ4の作業車端末装置43は、ラッピングマシン3の作業車端末装置39からラップサイロ放出位置情報を取得する。そして、ベールグラブ4は、自動運転制御によりラップサイロ放出位置情報に基づいてラップサイロ51が放置されている場所に移動し、ラップサイロ51を回収し、所定の集積場所に集積する。所定の集積場所は、予め利用者等によって集積位置情報として登録されている場所である。
【0062】
なお、作業車端末装置43は、上記の動作に替えて、複数のラップサイロ放出位置情報と集積位置情報とに基づいて、移動距離が最短となる順序でラップサイロ51を回収して集積するようにしてもよい。
【0063】
本発明の作業車連携システムは、上述した作業車連携システム1以外の構成であってもよく、以下のように一般化することができる。
【0064】
すなわち、収穫物を放出する第1作業車と、第1作業車が放出した収穫物を回収する第2作業車とを含み、第1作業車が収穫物を放出した位置を示す放出位置情報を、第2作業車が取得する構成とした作業車連携システムである。
【0065】
ここで、第2作業車は自動運転制御され、第2作業車は、放出位置情報に基づいて移動し、収穫物を回収するようにしてもよい。また、第2作業車は、複数の放出位置情報と回収した収穫物を集積する位置を示す集積位置情報とに基づいて、移動距離が最短となる順序で収穫物を回収して集積するようにしてもよい。
【0066】
例えば、第1作業車は飼料コンバインベーラ、第2作業車はラッピングマシンとすることができる。また、第1作業車はラッピングマシン、第2作業車はベールグラブとすることができる。
【0067】
このような作業車連携システムは、飼料の生産の他にも、収穫物を放出する作業車と放出された収穫物を回収する作業車とを用いる農業に広く利用することができる。
【0068】
次に、各作業車の作業車連携システムに関する構成について詳しく説明する。
【0069】
<作業車連携システムにおける飼料コンバインベーラ>
図6は、飼料コンバインベーラ2の作業車連携システム1に関する構成を示すブロック図である。飼料コンバインベーラ2において、作業車端末装置27に、液晶パネル等の表示部224と、キーボード等の操作部225と、飼料コンバインベーラ制御装置28とが接続されている。
【0070】
飼料コンバインベーラ制御装置28は、エンジンをはじめ飼料コンバインベーラ2の電気系統の制御を行うものである。例えば、飼料コンバインベーラ制御装置28は、電気系統の制御信号からロールベール50が放出されたことを検出して作業車端末装置27にその情報を出力したり、作業車端末装置27から取得した情報に基づいて飼料コンバインベーラ2の自動運転制御を行ったりする。
【0071】
飼料コンバインベーラ制御装置28が、ロールベール50が放出されたと判断する指標としては、例えば、飼料コンバインベーラ2のロールベール50の放出クラッチの動作を用いることができる。放出クラッチはロールベール50が放出される際に動作するので、放出クラッチの動作をロールベール50放出の指標とすることで、ロールベール50の放出タイミングを正確に検出することができ、正確なロールベール放出位置情報の取得に繋がる。なお、放出クラッチの動作を用いる他に、放出ボタンの操作や放出扉の動作(開閉状態検知センサ267による検知)を用いることもできる。このように、ロールベール50が放出されたと判断する指標としては、飼料コンバインベーラ2におけるロールベール50の放出に関する動作や操作を利用できる。
【0072】
作業車端末装置27は、通信部270と、GPSセンサ271と、位置検出部272と、位置情報記憶部273と、制御部274とを備えている。
【0073】
通信部270は、管理サーバ6及び他の作業車端末装置39、43の通信部と同一の通信プロトコル(通信規約)で通信可能とされている。通信時に送受信される情報は、通信プロトコルに従うように通信部270で変換される。そして、通信部270は、ロールベール放出位置情報を作業車端末装置39や管理サーバ6へ送信する。
【0074】
また、通信部270は、作業車端末装置39又は管理サーバ6からラッピングマシン3の現在地情報、作業車端末装置43又は管理サーバ6からベールグラブ4の現在地情報を受信するようにしてもよい。
【0075】
GPSセンサ271は、GPS衛星からの電波を受信するセンサである。位置検出部272は、GPSセンサ271にて受信した電波に基づいて飼料コンバインベーラ2の現在地を検出するものである。検出した現在地の位置情報のうち、ロールベール50の放出に対応して検出した現在地はロールベール放出位置情報として扱われ、その他は現在地情報として扱われる。また、位置検出部272は、飼料コンバインベーラ2の速度情報や方位情報を検出するようにしてもよい。位置情報記憶部273は、RAM(Random Access Memory)等の揮発メモリからなり、位置検出部272にて検出した位置情報を一時的に格納する。位置情報記憶部273のロールベール放出位置情報は、通信部270から作業車端末装置39や管理サーバ6へ送信される。
【0076】
制御部274は、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロコンピュータからなる処理部275と、ROM(Read Only Memory)、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部276とを有している。制御部274は、処理部275が記憶部276のROMに予め格納された制御プログラムを記憶部276のRAM上に読み出して実行することにより、各種構成要素の作動制御を行う。具体的には、通信時における情報の送受信、各種の入出力制御及び演算処理の制御等を行う。また、記憶部276は地図情報も記憶する。
【0077】
制御部274は、操作部225による入力(指示)を受け付ける。制御部274は、GPSセンサ271で受信した現在地情報を地図情報に重畳して表示部224に表示させる。また、制御部274は、ロールベール放出位置情報、ラッピングマシン3やベールグラブ4の現在地情報を地図情報に重畳して表示部224に表示させるように制御してもよい。これらにより、オペレータはいつでも圃場の作業状況を確認することができる。
【0078】
<作業車連携システムにおけるラッピングマシン>
図7は、ラッピングマシン3の作業車連携システム1に関する構成を示すブロック図である。ラッピングマシン3において、作業車端末装置39に、タッチパネル等の表示操作部380と、ラッピングマシン制御装置3Aとが接続されている。
【0079】
ラッピングマシン制御装置3Aは、エンジンをはじめラッピングマシン3の電気系統の制御を行うものである。例えば、ラッピングマシン制御装置3Aは、電気系統の制御信号からラップサイロ51が放出されたことを検出して作業車端末装置39にその情報を出力したり、作業車端末装置39から取得した情報に基づいてラッピングマシン3の自動運転制御を行ったりする。
【0080】
ラッピングマシン制御装置3Aが、ラップサイロ51が放出されたと判断する指標としては、例えば、ラッピングマシン3の傾斜手段34や積込機構36の動作を用いることができる。傾斜手段34や積込機構36はラップサイロ51が放出される際に動作するので、傾斜手段34や積込機構36の動作をラップサイロ51放出の指標とすることで、ラップサイロ51の放出タイミングを正確に検出することができ、正確なラップサイロ放出位置情報の取得に繋がる。なお、傾斜手段34や積込機構36の動作を用いる他に、放出ボタンの操作を用いることもできる。このように、ラップサイロ51が放出されたと判断する指標としては、ラッピングマシン3におけるラップサイロ51の放出に関する動作や操作を利用できる。
【0081】
作業車端末装置39は、通信部390と、GPSセンサ391と、位置検出部392と、位置情報記憶部393と、制御部394とを備えている。
【0082】
通信部390は、管理サーバ6及び他の作業車端末装置27、43の通信部と同一の通信プロトコル(通信規約)で通信可能とされている。通信時に送受信される情報は、通信プロトコルに従うように通信部390で変換される。そして、通信部390は、作業車端末装置27又は管理サーバ6からロールベール放出位置情報を受信する。また、通信部390は、ラップサイロ放出位置情報を作業車端末装置43や管理サーバ6へ送信する。
【0083】
また、通信部390は、作業車端末装置27又は管理サーバ6から飼料コンバインベーラ2の現在地情報、作業車端末装置43又は管理サーバ6からベールグラブ4の現在地情報を受信するようにしてもよい。
【0084】
GPSセンサ391は、GPS衛星からの電波を受信するセンサである。位置検出部392は、GPSセンサ391にて受信した電波に基づいてラッピングマシン3の現在地を検出するものである。検出した現在地の位置情報のうち、ラップサイロ51の放出に対応して検出した現在地はラップサイロ放出位置情報として扱われ、その他は現在地情報として扱われる。また、位置検出部392は、ラッピングマシン3の速度情報や方位情報を検出するようにしてもよい。位置情報記憶部393は、RAM等の揮発メモリからなり、位置検出部392にて検出した位置情報を一時的に格納する。位置情報記憶部393のラップサイロ放出位置情報は、通信部390から作業車端末装置43や管理サーバ6へ送信される。
【0085】
制御部394は、CPU等のマイクロコンピュータからなる処理部395と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部396とを有している。制御部394は、処理部395が記憶部396のROMに予め格納された制御プログラムを記憶部396のRAM上に読み出して実行することにより、各種構成要素の作動制御を行う。具体的には、通信時における情報の送受信、各種の入出力制御及び演算処理の制御等を行う。また、記憶部396は地図情報も記憶する。
【0086】
制御部394は、表示操作部380による入力(指示)を受け付ける。制御部394は、GPSセンサ391で受信した現在地情報、ラップサイロ放出位置情報、飼料コンバインベーラ2やベールグラブ4の現在地情報を地図情報に重畳して表示操作部380に表示させるように制御してもよい。これらにより、オペレータが乗車している場合、オペレータはいつでも圃場の作業状況を確認することができる。
【0087】
また、制御部394は、ロールベール放出位置情報に基づいて移動経路を算出する。移動経路は、例えば、現在地情報とロールベール放出位置情報とを結ぶ直線の経路とすることができる。算出された移動経路はラッピングマシン制御装置3Aに送信され、自動運転制御に用いられる。これにより、ラッピングマシン3はロールベール50の放出位置へ移動し、ロールベール50を回収する。よって、効率良くロールベール50を回収できるので、作業効率が向上する。
【0088】
また、制御部394は、複数のロールベール放出位置情報に基づいて、移動距離が最短となる移動経路を算出してもよい。この移動経路は、例えば、現在地情報を始点とし、最も近いロールベール放出位置情報を順に結んだ折れ線状の経路を移動経路とすることができる。このような移動経路によれば、最短距離で効率良くロールベール50を回収できるので、作業効率が向上する。
【0089】
なお、ラッピングマシン3がオペレータにより運転されている場合、制御部394は移動経路を地図情報に重畳して表示操作部380に表示させる。これにより、オペレータは移動経路を参考にして運転できるので、作業効率が向上するとともに、オペレータの負荷が軽減される。また、移動経路は管理サーバ6に送信されるようにしてもよい。
【0090】
<作業車連携システムにおけるベールグラブ>
図8は、ベールグラブ4の作業車連携システム1に関する構成を示すブロック図である。ベールグラブ4において、作業車端末装置43に、液晶パネル等の表示部414と、キーボード等の操作部415と、ベールグラブ制御装置44とが接続されている。
【0091】
ベールグラブ制御装置44は、エンジンをはじめベールグラブ4の電気系統の制御を行うものであり、本実施形態ではトラクター制御装置ともいえる。例えば、ベールグラブ制御装置44は、作業車端末装置43から取得した情報に基づいてベールグラブ4の自動運転制御を行う。また、ベールグラブ制御装置44は、電気系統の制御信号からラップサイロ51が放出されたことを検出して作業車端末装置43にその情報を出力するようにしてもよい。
【0092】
ベールグラブ制御装置44が、ラップサイロ51が放出されたと判断する指標としては、例えば、ベールグラブ4のグラブ421の開動作を用いることができる。グラブ421はラップサイロ51を放す際に開くので、グラブ421の開動作をラップサイロ51放出の指標とすることで、ラップサイロ51の放出タイミングを正確に検出することができる。なお、グラブ421の開動作を用いる他に、放出ボタンの操作を用いることもできる。このように、ラップサイロ51が放出されたと判断する指標としては、ベールグラブ4におけるラップサイロ51の放出に関する動作や操作を利用できる。
【0093】
作業車端末装置43は、通信部430と、GPSセンサ431と、位置検出部432と、位置情報記憶部433と、制御部434とを備えている。
【0094】
通信部430は、管理サーバ6及び他の作業車端末装置27、39の通信部と同一の通信プロトコル(通信規約)で通信可能とされている。通信時に送受信される情報は、通信プロトコルに従うように通信部430で変換される。そして、通信部430は、作業車端末装置39又は管理サーバ6からラップサイロ放出位置情報を受信する。また、通信部430は、ベールグラブ4がラップサイロ51を放出したことを示すラップサイロ放出情報を管理サーバ6へ送信してもよい。
【0095】
また、通信部430は、作業車端末装置27又は管理サーバ6から飼料コンバインベーラ2の現在地情報、作業車端末装置39又は管理サーバ6からラッピングマシン3の現在地情報を受信するようにしてもよい。
【0096】
GPSセンサ431は、GPS衛星からの電波を受信するセンサである。位置検出部432は、GPSセンサ431にて受信した電波に基づいてベールグラブ4の現在地を検出するものである。また、位置検出部432は、ベールグラブ4の速度情報や方位情報を検出するようにしてもよい。位置情報記憶部433は、RAM等の揮発メモリからなり、位置検出部432にて検出した位置情報を一時的に格納する。位置情報記憶部433の現在地情報は、通信部390から作業車端末装置27、39や管理サーバ6へ送信される。
【0097】
制御部434は、CPU等のマイクロコンピュータからなる処理部435と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部436とを有している。制御部434は、処理部435が記憶部436のROMに予め格納された制御プログラムを記憶部436のRAM上に読み出して実行することにより、各種構成要素の作動制御を行う。具体的には、通信時における情報の送受信、各種の入出力制御及び演算処理の制御等を行う。また、記憶部436は地図情報も記憶する。
【0098】
制御部434は、操作部415よる入力(指示)を受け付ける。制御部434は、GPSセンサ431で受信した現在地情報、ラップサイロ放出位置情報、飼料コンバインベーラ2やラッピングマシン3の現在地情報を地図情報に重畳して表示部414に表示させるように制御してもよい。これらにより、オペレータが乗車している場合、オペレータはいつでも圃場の作業状況を確認することができる。
【0099】
また、制御部434は、ラップサイロ放出位置情報と集積位置情報とに基づいて移動経路を算出する。移動経路は、例えば、現在地情報とラップサイロ放出位置情報と集積位置情報とを結ぶ折れ線の経路とすることができる。算出された移動経路はベールグラブ制御装置44に送信され、自動運転制御に用いられる。これにより、ベールグラブ4はラップサイロ51の放出位置へ移動してラップサイロ51を回収し、次に集積場所へ移動してラップサイロ51を放出(集積)する。よって、効率良くラップサイロ51を回収して集積できるので、作業効率が向上する。
【0100】
また、制御部434は、複数のラップサイロ放出位置情報と集積位置情報とに基づいて、移動距離が最短となる移動経路を算出してもよい。この移動経路は、例えば、現在地情報を始点とし、最も近いラップサイロ放出位置情報を経由して集積位置情報に移動し、集積場所から残りのラップサイロ放出位置情報のうち最も近いラップサイロ放出位置情報を経由して集積場所に戻ることを繰り返す経路とすることができる。このような移動経路によっても、効率良くラップサイロ51を回収して集積できるので、作業効率が向上する。
【0101】
また、制御部434は、ベールグラブ制御装置44から取得したラップサイロ放出情報からラップサイロ51の集積数や集積完了を算出することができる。
【0102】
なお、ベールグラブ4がオペレータにより運転されている場合、制御部434は移動経路を地図情報に重畳して表示部414に表示させる。これにより、オペレータは移動経路を参考にして運転できるので、作業効率が向上するとともに、オペレータの負荷が軽減される。また、移動経路は管理サーバ6に送信されるようにしてもよい。
【0103】
<作業車連携システムにおける管理サーバ>
図9は、管理サーバ6の概略構成を示すブロック図である。管理サーバ6は、例えばデスクトップ型パーソナルコンピュータであり、通信部60と、制御部61とを備えている。また、管理サーバ6には、液晶パネル等の表示部62及びキーボード等の操作部63が外部接続されている。なお、表示部62及び操作部63は管理サーバ6に含まれる構成(例えば、ノート型パーソナルコンピュータ)であってもよい。
【0104】
通信部60は、各作業車端末装置27、39、43の通信部と同一の通信プロトコル(通信規約)で通信可能とされている。通信時に送受信される情報は、通信プロトコルに従うように通信部60で変換される。
【0105】
制御部61は、CPU等のマイクロコンピュータからなる処理部64と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部65とを有している。制御部61は、処理部64が記憶部65のROMに予め格納された制御プログラムを記憶部65のRAM上に読み出して実行することにより、各種構成要素の作動制御を行う。具体的には、通信時における情報の送受信、各種の入出力制御及び演算処理の制御等を行う。また、記憶部65は地図情報、各作業車の現在地情報、ロールベール放出位置情報、ラップサイロ放出位置情報、ラップサイロ放出情報、集積位置情報等も記憶する。
【0106】
制御部61は、操作部63よる入力(指示)を受け付ける。制御部61は、各作業車の現在地情報、ロールベール放出位置情報、ラップサイロ放出位置情報、集積位置情報等を地図情報に重畳して表示部62に表示させる。これにより、管理サーバ6のオペレータはいつでも圃場の作業状況を確認することができる。
【0107】
他にも、管理サーバ6は取得した情報を様々な形態に加工することができる。例えば、各作業車の移動経路、ロールベール放出位置情報、ラップサイロ放出位置情報、ラップサイロ放出情報等から作業日報を作成することができる。また、管理サーバ6は取得した情報を蓄積して利用することもできる。例えば、圃場に穴がある場合、穴の位置情報を蓄積しておけば、各作業車に穴の位置を知らせることで、各作業車は穴を避けて移動することができる。
【0108】
また、作業車端末装置39、43が行う移動経路の算出を管理サーバ6で行い、管理サーバ6から作業車端末装置39、43へ算出した移動経路を送信してもよい。これにより、作業車端末装置39、43の負荷を軽減することができる。また、作業車端末装置39、43の機能を簡素化することもできる。
【0109】
<実施例>
以下に実施例により、上記の作業車連携システム1の動作例を説明する。
【0110】
図10は、収穫作業中の圃場の様子を簡略化した平面図である。本実施例では略矩形の圃場80の一辺に沿って畦道81があり、畦道81を集積場所Pとしている。圃場80では、飼料コンバインベーラ2と、ラッピングマシン3と、ベールグラブ4とが稼働している。飼料コンバインベーラ2はオペレータにより運転され、ラッピングマシン3及びベールグラブ4は自動運転制御されている。図10では、飼料コンバインベーラ2が、圃場で栽培されている稲を収穫し、圃場80に8個のロールベール50を放出した状態を示している。
【0111】
このような状況において、ラッピングマシン3の作業車端末装置39は、飼料コンバインベーラ2の作業車端末装置27から8つのロールベール放出位置情報を取得している。ここで作業車端末装置39は、8つのロールベール放出位置情報に基づいて、移動距離が最短となる移動経路を算出する。具体的には、現在地情報を始点とし、最も近いロールベール放出位置情報を順に結んだ折れ線状の経路を移動経路とする。このようにして算出した移動経路82を図11に破線で示す。このような移動経路82によれば、最短距離でロールベール50を回収できるので、効率良く作業できる。
【0112】
ラッピングマシン3は移動経路82に沿ってロールベール50を回収し、回収した場所でラップサイロ51を作製し、回収した場所とほぼ同じ位置にラップサイロ51を放出する。このとき、作業車端末装置39は、ラップサイロ放出位置情報を取得し、ベールグラブ4の作業車端末装置43へ送信する。
【0113】
稼働作業車端末装置43は、8つのラップサイロ51が放出されてから稼働した場合、8つのラップサイロ放出位置情報と集積位置情報とに基づいて、移動距離が最短となる移動経路を算出する。具体的には、現在地情報を始点とし、最も近いラップサイロ放出位置情報を経由して集積位置情報に移動し、集積場所から残りのラップサイロ放出位置情報のうち最も近いラップサイロ放出位置情報を経由して集積場所に戻ることを繰り返す経路を移動経路とする。このようにして算出した移動経路83を図12に破線で示す。このような移動経路83によれば、最短距離でラップサイロ51を回収して集積できるので、効率良く作業できる。
【0114】
<その他>
作業車連携システム1において管理サーバ6は省略してもよい。作業車間で直接通信することで管理サーバ6は省略することができる。また、管理サーバ6は、何れかの作業車に搭載してもよい。また、管理サーバ6の機能を各作業車の作業車端末装置27、39、43に、それぞれの作業車に必要な機能のみを組み込み、管理サーバ6を省略してもよい。
【0115】
上記の作業車連携システム1のように、ベールグラブ4を用いると作業効率がよいが、ベールグラブ4は省略してもよい。この場合、ラッピングマシン3がラップサイロ51を集積場所まで搬送すればよい。ラッピングマシン3の移動経路の算出には上述したベールグラブ4の移動経路の算出方法を用いることができる。
【0116】
ラッピングマシン3は、ラッピングのみを行い、その場所にラップサイロ51を放出するモードと、ラッピングを行いながら次のロールベール50の位置へ移動するモードと、ラッピング及び集積場所への搬送を行うモードとを選択可能にしてもよい。これにより、状況に応じて最適なモードを選択することで、効率良く作業できる。
【0117】
ラッピングマシン3は複数用いてもよい。この場合、ラッピングマシン3どうしが連携(通信)することで、効率良くロールベール50を回収し、ラッピングすることができる。例えば、各ラッピングマシン3が次のロールベール50を回収しに行く時点で他のラッピングマシン3へそのロールベール50の位置情報を送信し、その位置情報を受信したラッピングマシン3はそのロールベール50を回収済みとして扱えばよい。
【0118】
現在地を取得するには、上記のGPS衛星に替えて又はGPS衛星に加えて、自律航法を用いてもよい。
【0119】
各作業車には前方を撮影するカメラを設けてもよい。これにより、自動運転制御でベールグラブ50やラップサイロ51を回収する際にカメラの画像を解析することにより、確実に回収することができる。また、集積場所への集積も精度良く行うことができる。
【符号の説明】
【0120】
1 作業車連携システム
2 飼料コンバインベーラ
3 ラッピングマシン
4 ベールグラブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12