(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の光学シートおよび光学部品を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
本発明の光学シート10は、少なくとも1種の光吸収剤を含み、偏光機能を有する偏光層4と、偏光層4に積層された保護層1とを備える積層体で構成されるものであり、偏光層4は、JIS Z 8781−4で規定されるL
*a
*b
*表色系において、a
*の値が0以上30以下であり、b
*の値が0以上30以下であり、かつ、オーストラリア規格Australian/NewZealand Standard 1067−2016で規定された、Q Blue値の大きさが0.70以上となっている。
【0018】
このように、偏光層4は、L
*a
*b
*表色系において、a
*の値が0以上30以下であり、b
*の値が0以上30以下となっている。そのため、この光学シート10は、ブラウンに調色された光学シートであると言うことができる。そして、このような光学シート10において、本発明では、オーストラリア規格Australian/NewZealand Standard 1067−2016で規定された、Q Blue値の大きさが0.70以上となっている。したがって、ブラウンに調色された光学シート10において、青色の光であっても優れた識別性をもって視認することができる。
【0019】
本発明の光学シート10は、例えば、光学部材としてのサングラス100が備える眼鏡レンズ30に貼着して使用される。そこで、以下では、まず、本発明の光学シート10を説明するのに先立って、本発明の光学シート10が貼着された状態を示す、光学部品としてのサングラス100について説明する。
【0020】
<サングラス>
図1は、本発明の光学シートが貼着された状態を示す、光学部品としてのサングラスの斜視図である。なお、
図1において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。
【0021】
サングラス100は、
図1に示すように、フレーム20と、眼鏡レンズ30と、光学シート10とを備えている。
【0022】
なお、本明細書中において、「眼鏡レンズ」とは、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
【0023】
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、眼鏡レンズ30を使用者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
【0024】
このフレーム20は、リム部21と、ブリッジ部22と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
【0025】
リム部21は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、内側に眼鏡レンズ30が装着される。これにより、使用者は、眼鏡レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
【0026】
また、ブリッジ部22は、棒状をなし、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部21を連結する。
【0027】
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21のブリッジ部22が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
【0028】
ノーズパッド部24は、サングラス100を使用者の頭部に装着する際に、各リム部21における使用者の鼻に対応する縁部に設けられ、使用者の鼻に当接し、このとき使用者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
【0029】
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
【0030】
眼鏡レンズ30は、各リム部21に、それぞれ装着されている。この眼鏡レンズ30は、光透過性を有し、外側に向って湾曲した板状をなす部材である。
【0031】
眼鏡レンズ30の構成材料としては、光透過性を有していれば、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等の各種樹脂材料や、各種ガラス材料および各種結晶材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
また、ガラス材料としては、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、結晶材料としては、例えば、サファイア、水晶等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
眼鏡レンズ30の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、10mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
【0036】
本実施形態では、この眼鏡レンズ30の外側の面、すなわち、湾曲凸面上に光学シート10が、かかる形状に対応して湾曲形状をなして貼着されており、これにより、サングラス100に装飾性が付与される。また、所定の波長領域の光が選択的に反射・透過され、本発明では、光学シート10がブラウンに調色されており、これにより、サングラス100がサングラスとしての機能を発揮する。
【0037】
このようなサングラス100において、光学シート10が本発明の光学シートで構成される。以下、光学シート10すなわち本発明の光学シートについて説明する。
【0038】
<光学シート>
図2は、本発明の光学シートの実施形態を示す部分拡大縦断面図、
図3は、
図2に示す光学シートが備える偏光層の光吸収スペクトルを示すグラフ、
図4は、
図2に示す光学シートが備える偏光層4に含まれる第2光吸収剤の光吸収スペクトルを示すグラフである。
【0039】
なお、
図2では、上側を「上方」または「上」と言い、下側を「下方」または「下」とも言う。また、本明細書で参照する図面では、厚さ方向の寸法を誇張して図示しており、実際の寸法とは大きく異なる。
【0040】
光学シート10は、
図2に示すように、保護層1と、接着剤層15と、偏光層4とを有し、これらがこの順で積層されている。すなわち、偏光層4と保護層1とが接着剤層15を介して接合されている。そして、本実施形態では、偏光層4が眼鏡レンズ30側に位置する向きで眼鏡レンズ30に接合されている。
【0041】
かかる構成の光学シート10において、本発明では、偏光層4は、JIS Z 8781−4で規定されるL
*a
*b
*表色系において、a
*の値が0以上30以下であり、b
*の値が0以上30以下であり、かつ、オーストラリア規格Australian/NewZealand Standard 1067−2016で規定された、Q Blue値の大きさが0.70以上となっている。したがって、ブラウンに調色された光学シート10であっても、青色の光をも、優れた識別性をもって視認することができる。
【0042】
以下、この光学シート10を構成する各層について説明する。
(偏光層)
偏光層4は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取出す機能を有している。これにより、光学シート10を介して目に入射する入射光は、乱光が除去され、偏光されたものとなる。
【0043】
偏光層4の偏光度は、特に限定されないが、例えば、50%以上100%以下であるのが好ましく、80%以上100%以下であるのがより好ましい。
【0044】
この偏光層4は、樹脂材料で構成された高分子フィルムを、一軸延伸したものであり、これにより、偏光層4としての前記機能が付与される。
【0045】
また、この偏光層4は、本発明では、JIS Z 8781−4で規定されるL
*a
*b
*表色系において、a
*の値が0以上30以下であり、b
*の値が0以上30以下であり、かつ、オーストラリア規格Australian/NewZealand Standard 1067−2016で規定された、Q Blue値の大きさが0.70以上となっている。このように、偏光層4において、L
*a
*b
*表色系におけるa
*の値が0以上30以下であり、b
*の値が0以上30以下であることで、光学シート10を、ブラウンに調色されたものとすることができる。そして、前記Q Blue値の大きさが0.70以上となっていることで、ブラウンに調色された光学シート10であっても、青色の光をも、優れた識別性をもって視認することができる。
【0046】
かかる構成の偏光層4は、特に限定されないが、例えば、580nm以上680nm以下の波長域に光の吸収率のピークを有する第1光吸収剤と、380nm以上430nm以下の波長域に光の吸収率のピークを有する第2光吸収剤と、430nm以上580nm以下の波長域に光の吸収率のピークを有する第3光吸収剤と、を含み、これにより、偏光層4に含まれる樹脂材料に吸着させて、偏光層4を染色させた構成をなすものであることが好ましい。偏光層4を、上記のような波長域に光の吸収率のピークを有する第1光吸収剤〜第3光吸収剤を含むものとすることで、光学シート10を、比較的容易にブラウンに調色されたものとし得る。すなわち、前記L
*a
*b
*表色系において、a
*の値が0以上30以下、b
*の値が0以上30以下、好ましくはa
*の値が2.0以上14以下、b
*の値が14以上24以下であることを、比較的容易に満足するものとし得る。
【0047】
第1光吸収剤は、上記の通り、580nm以上680nm以下の波長域に光の吸収率のピークを有するものであり、具体的には、直接染料、酸性染料、塩基性染料等の青色染料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
また、第2光吸収剤は、380nm以上430nm以下の波長域に光の吸収率のピークを有するものであり、具体的には、直接染料、酸性染料、塩基性染料等の黄色染料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
第3光吸収剤は、430nm以上580nm以下の波長域に光の吸収率のピークを有するものであり、具体的には、直接染料、酸性染料、塩基性染料等の赤色染料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
直接染料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、ジオキサジン系等の染料が挙げられ、酸性染料としては、アゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、酸素アントラセン系、キサンテン系、インジゴイド系、ニトロソ基系、ピラゾロン系等の染料が挙げられ、塩基性染料としては、アゾ系、トリフェニルメタン系、アジン系、チアジン系、オキサジン系等の染料が挙げられ、これらのうち、そのものが有する吸収率のピークの位置に応じて、第1光吸収剤〜第3光吸収剤として用いられる。
【0051】
これらの中でも、第1光吸収剤、第2光吸収材および第3光吸収材は、それぞれ、アゾ系の染料であるのが好ましく、特に、アゾ系の直接染料であるのが好ましい。これにより、水中でのポリビニルアルコール(PVA)の染色を効率的に行い、目的の色であるブラウンに確実に染色することができる。すなわち、光学シート10を、確実に、ブラウンに調色されたものとすることができる。
【0052】
このような、第1光吸収剤〜第3光吸収材のうち、第2光吸収剤は、特に、下記一般式(1)
で表される黄色染料(アゾ系の黄色染料)や、下記一般式(2)で表される黄色染
料のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0053】
【化3】
[前記一般式(1)中、各R
1は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはスルホン酸ナトリウム基を表す。]
【0054】
【化4】
[前記一般式(2)中、各R
2は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはスルホン酸ナトリウム基を表す。]
【0055】
上記一般式(1)および上記一般式(2)で表される黄色染料としては、具体的には、それぞれ、例えば、下記式(1A)および下記式(2A)、(2B)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
このような第2光吸収剤は、
図4に示すように、ピークトップPtの透過率Ttが30%、680nmから780nmでの透過率Thが90%以上となるように透明フィルムすなわち偏光層4を染色したとき、480nm以上530nm以下の波長域における平均光透過率Taを好ましくは67%以上99%以下、より好ましくは70%以上90%以下、さらに好ましくは70%以上87%以下に設定し得る。上記の特徴を有する第2光吸収剤を使用することにより、前記光吸収剤の配合量を適切な量とすることができる。
【0060】
そのため、偏光層4の光吸収スペクトルを、
図3に示すようなスペクトル特性をなすもの、すなわち、460nm以上510nm以下の波長域に光透過率のピーク波長を備える第1ピークP1を有し、この第1ピークP1のかかるピーク波長における透過率T1が、好ましくは5%以上40%以下、より好ましくは10%以上35%以下となっているものとすることができる。
【0061】
なお、
図3、4では、横軸が波長(nm)、縦軸が透過率(%)で表され、
図3は、偏光層4の光吸収スペクトルを示すグラフであり、
図4は、第2光吸収剤の光吸収スペクトルを示すグラフである。また、縦軸の透過率は、光の吸収率と相関性があるものとし、光の吸収率が大きければ透過率は小さくなり、光の吸収率が小さければ透過率は大きくなることとする。
【0062】
以上のことから、この偏光層4を備える光学シート10を、オーストラリア規格Australian/NewZealand Standard 1067−2016で規定された、Q Blue値の大きさが、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.9以上に設定されたものとし得ることから、この光学シート10によれば、青色の光であっても優れた識別性をもって視認することができる。したがって、使用者は、サングラス100の装着時において、物や人の輪郭、色をはっきりと認識することができるため、装着時の安全性を高めることができる。
【0063】
また、第1ピークにおける透過率の半値幅W1は、20nm以上60nm以下であることが好ましく、25nm以上55nm以下であることがより好ましい。これにより、前記Q Blue値の大きさを、より確実に0.70以上に設定し得ることから、光学シート10を介することで、青色の光を優れた識別性をもって視認することができる。
【0064】
なお、第1ピークP1における半値幅W1は、次のように定義される。すなわち、第1ピークP1のピークトップと530nm〜560nm間のボトムピークの平均透過率を示す波長と、第1ピークP1のピークトップと430〜460nm間のボトムピークの中間透過率を示す波長の差を取ることで得られる第1ピークP1の幅を、第1ピークP1における半値幅W1とする。
【0065】
偏光層4中における、第1光吸収剤〜第3光吸収剤の含有量は、それぞれ、0.0001wt%以上、0.1wt%以下であるのが好ましく、0.001wt%以上、0.08wt%以下であるのがより好ましい。かかる範囲内の含有量で、第1光吸収剤〜第3光吸収剤を、それぞれ偏光層4に添加することで、偏光層4を、前記a
*の値が0以上30以下であり、前記b
*の値が0以上30以下あることを確実に満足し、かつ、前記Q Blue値の大きさが0.70以上であることを確実に満足するものとし得る。
【0066】
また、偏光層4中に含まれる樹脂材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
この樹脂材料のうち、特に、ポリビニルアルコール(PVA)は、透明性、耐熱性、第1光吸収剤〜第3光吸収剤との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光層4は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光機能に優れたものとなる。
【0068】
また、偏光層4に含まれる樹脂材料のうち、ポリカーボネートは、透光性、耐熱性、強度に優れた材料である。したがって、ポリカーボネートを主材料とする偏光層4は、強度に優れたものとなる。
【0069】
ポリカーボネートとしては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネートであることが好ましい。芳香族系ポリカーボネートは、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、光学シート10の強度をより優れたものとすることができる。
【0070】
なお、偏光層4は、上述した第1光吸収剤〜第3光吸収剤と、樹脂材料との他に、さらに、紫外線(波長域が100nm以上420nm以下の光)を吸収する紫外線吸収剤等の添加剤を含むものであてもよい。
【0071】
この偏光層4の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。これにより、偏光層4に、上述した偏光層4としての機能を確実に付与することができる。
【0072】
(保護層)
保護層1は、光学シート10が眼鏡レンズ30に接合された状態において、最も外側に位置し、保護層1よりも内側の層、すなわち偏光層4を保護する機能を有する。
【0073】
保護層1の構成材料としては、光透過性を有していれば特に限定されないが、各種樹脂材料や各種ガラス材料等が挙げられる。樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、前述した偏光層4の樹脂材料と同様の材料が挙げられるが、偏光層4の樹脂材料と同種のものであるのが好ましい。
【0074】
また、保護層1は、一方向に延伸されたものであるのが好ましく、その延伸度は、1%以上10%以下であるのが好ましく、2%以上8%以下であるのがより好ましい。また、その延伸方向は、偏光層4の延伸方向と一致しているのが好ましい。これにより、光学シート10全体としての偏光特性を高めることができる。
【0075】
さらに、保護層1の厚さは、特に限定されず、例えば、10μm以上100μm以下であるのが好ましく、30μm以上60μm以下であるのがより好ましい。これにより、保護層1としての機能を、確実に付与することができる。
【0076】
(接着剤層)
接着剤層15は、偏光層4と保護層1とを接合する機能を有する。
【0077】
接着剤層15を構成する接着剤(または粘着剤)としては、特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。中でも、ウレタン系接着剤が好ましい。これにより、接着剤層15の透明性、接着強度、耐久性をより優れたものとしつつ、形状変化に対する追従性を特に優れたものとすることができる。
【0078】
この接着剤層15の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。これにより、接着剤層15としての機能を、確実に付与することができる。
【0079】
上記のような光学シート10は、その総厚が0.1mm以上、2mm以下であるのが好ましい。
【0080】
以上、説明した光学シート10、および、かかる光学シート10が設けられた眼鏡レンズ30は、例えば、以下に示す光学シートの製造方法、および、光学シートが設けられた眼鏡レンズの製造方法を適用することで製造し得る。なお、以下では、押出法を用いて光学シートを製造する場合を一例に説明する。
【0081】
<光学シートの製造方法>
まず、光学シートの製造方法の説明に先立って、光学シート製造装置について説明する。
【0082】
図5は、
図2に示す光学シートを製造する光学シート製造装置を模式的に示した側面図ある。なお、以下の説明では、
図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0083】
図5に示す光学シート製造装置1000は、シート供給部200と、シート成形部300とを有している。
【0084】
シート供給部200は、本実施形態では、押出機210と、押出機210の溶融樹脂吐出部に配管を介して接続されたTダイ220とで構成されている。このTダイ220により、溶融状態または軟化状態の帯状のシート1’がシート成形部300に供給される。
【0085】
Tダイ220は、押出法で溶融状態または軟化状態のシート1’を帯状のシートとした状態で押し出す押出成形部である。Tダイ220には、前述した光学シート10を構成する各層の構成材料が溶融状態で、順次装填されることなり、この溶融状態の材料をTダイ220から押し出すことで、帯状をなすシート1’が連続的に送り出される。
【0086】
シート成形部300は、タッチロール310と、冷却ロール320と、後段冷却ロール330とを有している。これらのロールは、それぞれ図示しないモータ(駆動手段)により、それぞれ単独回転するように構成されており、これらのロールの回転により、冷却され、連続的に送り出されるようになっている。このシート成形部300に、シート1’を連続的に送り込むことにより、シート1’の表面が平坦化されるとともに、シート1’が所望の厚さに設定されて冷却される。そして、押出機210(Tダイ220)に装填する、光学シート10を構成する各層の構成材料を適宜選択することにより、冷却されたシート1’として、偏光層4または保護層1が得られ、その後、この偏光層4と保護層1とを接着剤層15を介して接合した後に、このものを所定の長さに切断することで、光学シート10を得ることができる。
【0087】
以上のような光学シート製造装置1000を用いた光学シート10の製造方法により、光学シート10が製造される。
【0088】
光学シート製造装置1000を用いた光学シート10の製造方法は、押出工程と、成形工程と、冷却工程と、接合工程と、切断工程とを有している。
【0089】
<1A>まず、帯状をなす溶融状態または軟化状態のシート1’を押し出す(押出工程)。
【0090】
この押出工程では、押出機210に、光学シート10を構成する各層の構成材料が順次装填される。また、光学シート10を構成する各層の構成材料は、押出機210内において、溶融または軟化した状態となっている。
【0091】
<2A>次に、シート1’の表面を平坦化するとともに、シート1’を所定の厚さに設定する(成形工程)。本工程は、タッチロール310と、冷却ロール320との間で行われる。
【0092】
<3A>次に、シート1’の表面を冷却する(冷却工程)。本工程は、冷却ロール320と、後段冷却ロール330との間で行われる。
【0093】
以上のような工程<1A>〜工程<3A>について、押出機210に装填する、光学シート10を構成する各層の構成材料を適宜選択して、繰り返して実施することで、偏光層4および保護層1を、それぞれ得ることができる。
【0094】
<4A>次に、接着剤層15を形成するための接着剤を偏光層4上に塗布し、この接着剤上に保護層1を貼り合わせた状態で、接着剤を固化させて接着剤層15を形成する(接合工程)。
【0095】
これにより、接着剤層15を介して偏光層4と保護層1とが接合され、偏光層4と接着剤層15と保護層1とがこの順で積層された積層体を得ることができる。
【0096】
<5A>次に、得られた積層体を、所定の長さに切断する(切断工程)。
これにより、接着剤層15を介して偏光層4と保護層1とが接合された構成をなす、光学シート10を得ることができる。
【0097】
以上の工程を経ることで、光学シート10が得られる。次いで、この光学シート10が設けられた眼鏡レンズ30を製造する眼鏡レンズの製造方法について説明する。
【0098】
<光学シートが設けられた眼鏡レンズの製造方法>
まず、光学シートが設けられた眼鏡レンズの製造方法の説明に先立って、眼鏡レンズ製造装置について説明する。
【0099】
図6は、光学シートが設けられた眼鏡レンズを製造する眼鏡レンズ製造装置を模式的に示した断面図である。
【0100】
図6に示す眼鏡レンズ製造装置400は、樹脂供給部500と、金型600とを有している。樹脂供給部500には、前述した眼鏡レンズ30の構成材料(レンズ材料)が充填されている。金型600は、キャビティー610と、キャビティー610の内外を連通する供給口620と、を有する。また、金型600は、上部材630と下部材640とで構成され、これらを組立てた組立状態において、眼鏡レンズ製造装置400を画成する金型600が構成される。
【0101】
以上のような眼鏡レンズ製造装置400を用いた、光学シートが設けられた眼鏡レンズの製造方法により、光学シート10が設けられた眼鏡レンズ30が製造される。
【0102】
光学シートが設けられた眼鏡レンズの製造方法は、光学シート配置工程と、レンズ材料供給工程とを有している。
【0103】
<1B>まず、上部材630と下部材640とを分解した状態において、下部材640の底面641に、前記光学シートの製造方法で製造した光学シート10を、保護層1が底面641側となるように配置する(光学シート配置工程)。なお、底面641は、湾曲凹面となっており、これにより、眼鏡レンズ30に湾曲面を形成することができる。また、光学シート10は、可撓性を有しているため、底面641の形状に倣って配置される。
【0104】
<2B>次に、上部材630と下部材640とを組立状態とし、供給口620を介して、溶融または軟化した状態のレンズ材料を流し込む(レンズ材料供給工程)。そして、溶融または軟化した状態のレンズ材料を冷却することにより、光学シート10と眼鏡レンズ30とが積層された積層体、すなわち、光学シート10が貼着された眼鏡レンズ30を得ることができる。
【0105】
なお、前記では、いわゆるシートインサート法を一例に挙げて説明したが、光学シート10が設けられた眼鏡レンズ30は、これに限定されず、例えば、成形された眼鏡レンズ30に接着剤層を介して光学シート10が積層された構成であってもよい。
【0106】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述したものに限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0107】
例えば、本発明の光学シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0108】
また、本発明の光学シートは、前述した構成に加え、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0109】
より具体的には、例えば、本発明の光学シートは、中間層や、レンズとしての度数を調整する度数調整層等を備えていてもよい。
【0110】
また、本発明の光学シートは、前記実施形態で説明した眼鏡レンズに貼着する場合に限らず、例えば、サンバイザーが備えるつば部や、自動車、オートバイ、鉄道等のような車両、航空機、船舶および住宅等が有する湾曲形状をなす窓部材に貼着して設けられている光学部品に用いることもできる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
1.光吸収剤の準備
(第1光吸収剤)
第1光吸収剤として、下記式(DB−85)で表される青色染料を用意した。
【0112】
【化8】
【0113】
(第2光吸収剤)
第2光吸収剤として、下記式(1A)、下記式(2A)、下記式(3A)、下記式(4A)で表される黄色染料を、それぞれ用意した。
【0114】
【化9】
【0115】
【化10】
【0116】
【化11】
【0117】
【化12】
【0118】
(第3光吸収剤)
第3光吸収剤として、下記式(DR−81)で表される赤色染料を用意した。
【0119】
【化13】
【0120】
2.光学シートの作成
[実施例1]
[1]まず、ポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製「クラレビニロン#7500」)を水槽中で延伸しながら、第1光吸収剤〜第3光吸収剤として表1に示すものを溶解した水溶液にて染色した後にホウ酸溶液中に浸漬処理し、さらに水洗、乾燥処理を行うことで偏光層4を得た。
【0121】
なお、染料を溶解する際、乾燥後に、ポリビニルアルコール100重量部に対して、第1光吸収剤、第2光吸収剤および第3光吸収剤の配合量が、それぞれ、0.57重量部、2.0重量部および0.55重量部となるように、第1光吸収剤、第2光吸収剤および第3光吸収剤をそれぞれ溶解した。
なお、得られた偏光層4の厚さは、0.02mmであった。
【0122】
また、偏光層4は、日本分光社製分光光度計V−660を用いて、JIS Z 8781−4で規定されるL
*a
*b
*表色系を測定した。その結果、L
*の値が38.8であり、a
*の値が4.3であり、b
*の値が16.7であった。
【0123】
さらに、偏光層4は、日本分光社製分光光度計V−660を用いて、オーストラリア規格Australian/NewZealand Standard 1067−2016で規定された、Q Blue値の大きさを測定した。その結果、Q Blue値の大きさが0.81であった。
【0124】
さらに、偏光層4の光吸収スペクトルを、日本分光社製分光光度計V−660装置を用いて測定し、460nm以上510nm以下の波長域に認められる光透過率の第1ピークP1(ピーク波長)における透過率T1および半値幅W1を求めたところそれぞれ15.1%および30nmであった。
【0125】
[2]次に、保護層形成材料として、100重量部のビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「ユーピロン E2000FN E5100」)を用意し、保護層形成材料を
図5に示す光学シート製造装置1000の押出機210に収納、溶融し、Tダイ220より押出し成形を行い、保護層1を得た。得られた保護層1の厚さは、0.325mmであった。
【0126】
[3]次に、偏光層4の一方の面上に、固化後に形成される接着剤層15の厚さが、20μmになるように、コニシ製ボンドウルトラ多用途クリア(シリル化ウレタン系樹脂)で構成される塗膜を塗工した。そして、偏光層4に塗膜が積層された積層体と、保護層1とを、偏光層4と保護層1との間に塗膜が介在するように貼り合わせ、その後、塗膜を固化させて接着剤層15を形成することで、光学シート10を得た。
【0127】
[実施例2〜9、比較例1〜3]
光学シート10の形成に用いる、第1光吸収剤〜第3光吸収剤の種類およびその含有量を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例2〜9、比較例1〜3の光学シートを得た。
【0128】
3.光学シートの評価
各実施例および各比較例の光学シートを、以下の方法で評価した。
【0129】
(青色識別性評価)
上記のように製造した光学シートを通して青色造形物の写真を撮り、この写真を10人にそれぞれ青色識別が可能か否かを確認した。
【0130】
A:10人中10人が識別可能
B:10人中6〜9人が識別可能
C:10人中2〜5人が識別可能
D:10人中1人が識別可能
【0131】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の光学シートにおける評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
表1に示したように、各実施例におけるブラウンに調色された光学シートでは、前記Q Blue値の大きさが0.70以上であることを満足することで、青色の光であっても優れた識別性をもって視認することができた。
【0134】
これに対して、各比較例におけるブラウンに調色された光学シートでは、前記Q Blue値の大きさが0.70以上であることを満足しておらず、これに起因して、青色の光を、識別することができない結果を示した。