特許第6897809号(P6897809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6897809-保護フィルム 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897809
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20210628BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20210628BHJP
   B29C 53/04 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   B32B27/00 M
   B32B27/32 E
   B29C53/04
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-12001(P2020-12001)
(22)【出願日】2020年1月28日
(62)【分割の表示】特願2018-154702(P2018-154702)の分割
【原出願日】2018年8月21日
(65)【公開番号】特開2020-75512(P2020-75512A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2020年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】稲場 大成
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 和房
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/189078(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/080445(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 49/00−51/46
53/00−53/84
57/00−59/18
C09J 1/00−201/10
G02B 5/00−5/136
G02C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板を、加熱下で熱曲げ加工を施す際に、前記樹脂基板に貼付して用いられる保護フィルムであって、
基材層と、該基材層に積層して設けられ、前記熱曲げ加工の際に、前記樹脂基板に粘着する粘着層とを有し、
前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置し、熱可塑性樹脂を含有する融点が150℃以上の第1の層と、前記粘着層側に位置し、熱可塑性樹脂を含有する融点が130℃未満の第2の層とを有する積層体で構成され、
前記粘着層は、熱可塑性樹脂を含有する融点が150℃未満のもので構成され、
前記第2の層が含有する前記熱可塑性樹脂は、低密度ポリエチレンであり、JIS K7210に準拠して、加熱温度190℃、荷重2.16kgfの条件下において測定されるメルトフローレートが0.9g/10min以上3.0g/10min以下であることを特徴とする保護フィルム。
【請求項2】
前記第1の層が含有する前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンである請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着層が含有する前記熱可塑性樹脂は、融点が150℃未満のポリオレフィンと、エラストマーとである請求項1または2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
前記粘着層が含有する前記エラストマーは、スチレン−オレフィン−スチレンブロック共重合体を含む請求項3に記載の保護フィルム。
【請求項5】
前記第1の層は、その平均厚さが10μm以上80μm以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項6】
前記第2の層は、その平均厚さが10μm以上60μm以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項7】
前記樹脂基板の両面に貼付される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項8】
前記樹脂基板は、両面、一方の面または他方の面に、ポリカーボネート樹脂層、ポリアミド樹脂層およびセルロース樹脂層のうちの少なくとも1層を有する単層体または積層体で構成される被覆層を備える請求項1ないし7のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項9】
前記樹脂基板は、プレス成形または真空成形により、前記熱曲げ加工が施される請求項1ないし8のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基板を、加熱下で熱曲げ加工を施す際に、樹脂基板に貼付して用いられる保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂またはセルロース樹脂で構成される被覆層で偏光子の両面を被覆した構成をなす樹脂基板を備えるサングラス用レンズは、例えば、平面視で平板状をなす前記樹脂基板の両面に保護フィルムを貼付した状態で、平面視で円形状等の所定の形状に、前記樹脂基板を打ち抜き、その後、この樹脂基板を加熱下で熱曲げ加工を施す。そして、熱曲げがなされた樹脂基板から、保護フィルムを剥離させた後に、この樹脂基板の凹面にポリカーボネート層を射出成形することで製造される。
【0003】
この保護フィルムとして、例えば、ポリオレフィン系樹脂を主材料とする基材を、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体等を主材料とする粘着層を介して、前記樹脂基板の両面に対して貼付する構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、かかる構成の保護フィルムでは、熱曲げ加工の後に、樹脂基板の両面にそれぞれ貼付された保護フィルムを剥離させる際に、樹脂基板の縁部から、保護フィルムの一部が樹脂基板の面方向に突出した掴みシロが形成されず、この掴みシロを起点とする保護フィルムの剥離を実施することができないため、保護フィルムの剥離に時間と手間とを有すると言う問題があった。
【0005】
また、熱曲げ加工時の条件を変化させることで、掴みシロを形成させることができたとしても、樹脂基板の両面から突出して対向する2つの掴みシロ同士が接合してしまい、これに起因して、掴みシロとして用いることができないと言う問題もあった。
【0006】
なお、これらの問題は、上述したサングラス用レンズばかりでなく、ゴーグルが備えるレンズ、ヘルメットが備えるバイザー等の樹脂基板についても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−145616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、熱曲げ加工の後に樹脂基板の両面にそれぞれ貼付された保護フィルムを剥離させる際に、樹脂基板の縁部から、保護フィルムの一部が樹脂基板の面方向に突出した掴みシロを形成し、かつ、両面から突出する掴みシロ同士が接合するのを防止して、掴みシロを起点とする保護フィルムの剥離を、時間と手間とを有することなく円滑に実施することができる保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(9)に記載の本発明により達成される。
(1) 樹脂基板を、加熱下で熱曲げ加工を施す際に、前記樹脂基板に貼付して用いられる保護フィルムであって、
基材層と、該基材層に積層して設けられ、前記熱曲げ加工の際に、前記樹脂基板に粘着する粘着層とを有し、
前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置し、熱可塑性樹脂を含有する融点が150℃以上の第1の層と、前記粘着層側に位置し、熱可塑性樹脂を含有する融点が130℃未満の第2の層とを有する積層体で構成され、
前記粘着層は、熱可塑性樹脂を含有する融点が150℃未満のもので構成され、
前記第2の層が含有する前記熱可塑性樹脂は、低密度ポリエチレンであり、JIS K7210に準拠して、加熱温度190℃、荷重2.16kgfの条件下において測定されるメルトフローレートが0.9g/10min以上3.0g/10min以下であることを特徴とする保護フィルム。
【0010】
(2) 前記第1の層が含有する前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンである上記(1)に記載の保護フィルム。
【0011】
(3) 前記粘着層が含有する前記熱可塑性樹脂は、融点が150℃未満のポリオレフィンと、エラストマーとである上記(1)または(2)に記載の保護フィルム。
【0012】
(4) 前記粘着層が含有する前記エラストマーは、スチレン−オレフィン−スチレンブロック共重合体を含む上記(3)に記載の保護フィルム。
【0014】
) 前記第1の層は、その平均厚さが10μm以上80μm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の保護フィルム。
【0015】
) 前記第2の層は、その平均厚さが10μm以上60μm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の保護フィルム。
【0016】
) 前記樹脂基板の両面に貼付される上記(1)ないし()のいずれかに記載の保護フィルム。
【0017】
) 前記樹脂基板は、両面、一方の面または他方の面に、ポリカーボネート樹脂層、ポリアミド樹脂層およびセルロース樹脂層のうちの少なくとも1層を有する単層体または積層体で構成される被覆層を備える上記(1)ないし()のいずれかに記載の保護フィルム。
【0018】
) 前記樹脂基板は、プレス成形または真空成形により、前記熱曲げ加工が施される上記(1)ないし()のいずれかに記載の保護フィルム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱曲げ加工の後に樹脂基板の両面にそれぞれ貼付された保護フィルムを剥離させる際に、樹脂基板の縁部から、保護フィルムの一部が樹脂基板の面方向に突出した掴みシロを、樹脂基板の両面にそれぞれ形成することができる。そして、樹脂基板の両面からそれぞれ突出する掴みシロ同士が接合してしまうのを的確に抑制または防止することができる。したがって、掴みシロを起点とした保護フィルムの剥離を、時間と手間とを有することなく円滑に実施することができる。そのため、樹脂基板を、例えば、サングラス用レンズが備える樹脂基板に適用した場合には、サングラス用レンズを高い生産性をもって製造することができる。
【0020】
また、熱曲げ加工が施された樹脂基板を、外観性に優れたものとして得ることができ、さらに、この熱曲げ加工の際に、樹脂基板に貼付された保護フィルムが、熱曲げ加工に用いられる金型に接着することなく、熱曲げ加工の後に優れた剥離性をもって金型から保護フィルムを剥離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】保護フィルムを用いたサングラス用レンズの製造方法を説明するための模式図である。
図2】本発明の保護フィルムの好適実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の保護フィルムを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
本発明の保護フィルムは、樹脂基板を、加熱下で熱曲げ加工を施す際に、前記樹脂基板に貼付して用いられる保護フィルムであり、基材層と、該基材層と前記樹脂基板との間に位置し、前記樹脂基板に粘着する粘着層とを有し、前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置し、熱可塑性樹脂を含有する融点が150℃以上の第1の層と、前記粘着層側に位置し、熱可塑性樹脂を含有する融点が150℃未満の第2の層とを有する積層体で構成され、前記粘着層は、熱可塑性樹脂を含有する融点が150℃未満のもので構成され、前記第2の層が含有する前記熱可塑性樹脂は、そのJIS K7210に準拠して、荷重2.16kgfの条件下において測定されるメルトフローレートが0.5g/10min以上4.0g/10min以下であることを特徴とする。
【0024】
保護フィルムが備える基材層および粘着層を、かかる構成のものとすることで、熱曲げ加工の後に樹脂基板の両面にそれぞれ貼付された保護フィルムを剥離させる際に、樹脂基板の縁部から、保護フィルム(第1の層)の一部が樹脂基板の面方向に突出した掴みシロを形成することができる。そして、樹脂基板の両面からそれぞれ突出する掴みシロ同士が接合してしまうのを的確に抑制または防止することができる。したがって、この掴みシロを起点とした保護フィルムの剥離を、時間と手間とを有することなく円滑に実施することができる。そのため、樹脂基板を、例えば、サングラス用レンズが備える樹脂基板に適用した場合には、サングラス用レンズを高い生産性をもって製造することができる。
【0025】
また、熱曲げ加工が施された樹脂基板を、外観性に優れたものとして得ることができ、さらに、この熱曲げ加工の際に、樹脂基板に貼付された保護フィルムが、熱曲げ加工に用いられる金型に接着することなく、熱曲げ加工の後に優れた剥離性をもって金型から保護フィルムを剥離させることができる。
【0026】
以下、本発明の保護フィルムを説明するのに先立って、本発明の保護フィルムを用いて製造される、サングラス用レンズの製造方法について説明する。
【0027】
<サングラス用レンズの製造方法>
図1は、保護フィルムを用いたサングラス用レンズの製造方法を説明するための模式図である。なお、以下では、説明の都合上、図1の上側を「上」、下側を「下」という。
【0028】
以下、サングラス用レンズの製造方法の各工程を詳述する。
[1]まず、平板状をなす樹脂基板21を用意し、この樹脂基板21の両面に、保護フィルム10(マスキングテープ)を貼付することで、樹脂基板21の両面に保護フィルム10が貼付された積層体100を得る(図1(a)参照)。
【0029】
なお、本実施形態では、樹脂基板21として、偏光していない自然光から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取出す光学素子として機能する偏光子23を、その両面を被覆層24で被覆したものが用意される。なお、この樹脂基板21において、被覆層24は、ポリカーボネート樹脂層、ポリアミド樹脂層、および、トリアセチルセルロースのようなセルロース樹脂層のうちの少なくとも1層を有する単層体または積層体で構成され、さらに、被覆層24は、図1(a)のように、偏光子23の両面(双方の面)に形成される場合の他、上面(一方の面)および下面(他方の面)のうちのいずれかに形成されるものであってもよい。
【0030】
[2]次に、図1(b)に示すように、用意した積層体100を、すなわち、樹脂基板21の両面に保護フィルム10を貼付した状態で樹脂基板21を、その厚さ方向に打ち抜くことで、積層体100を平面視で円形状をなすものとする。
【0031】
[3]次に、図1(c)に示すように、円形状とされた積層体100に対して、加熱下で熱曲げ加工を施す。
【0032】
この熱曲げ加工は、通常、プレス成形または真空成形により実施される。なお、プレス成形は、積層体100の上下にそれぞれ金型を配置し、これら上下の金型で積層体100を挾持して加圧することにより加工する成形方法であり、真空成形は、前記上下の金型のうちのいずれか一方を用意し、この一方の金型から積層体100を吸引することにより加工する成形方法である。なお、真空成型では、一方の金型から積層体100を吸引する際に、シリコーンゴム等で構成されるシート材を積層体100の他方の面側に配置したり、手等で他方の面側を吸引開始時に押圧することにより、一方の金型による積層体100の吸引を補助するようにしてもよい。
【0033】
熱曲げ加工の際の積層体100(樹脂基板21)の加熱温度(成形温度)は、前述の通り、本実施形態では、樹脂基板21が被覆層24を備え、被覆層24が、ポリカーボネート樹脂層、ポリアミド樹脂層、および、セルロース樹脂層のうちの少なくとも1層を有する単層体または積層体で構成されているため、被覆層24の溶融または軟化温度を考慮して、好ましくは110℃以上150℃以下程度、より好ましくは140℃以上150℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、樹脂基板21の変質・劣化を防止しつつ、樹脂基板21を軟化または溶融状態として、樹脂基板21を確実に熱曲げすることができる。
【0034】
[4]次に、図1(d)に示すように、熱曲げがなされた樹脂基板21すなわち積層体100から、保護フィルム10を剥離させた後、この樹脂基板21の凹面にポリカーボネート樹脂で構成されるポリカーボネート層30を射出成形する。なお、樹脂基板21の凹面には、ポリカーボネート層30に代えて、例えば、ポリアミド樹脂で構成されるポリアミド層を形成してもよい。
【0035】
これにより、熱曲げがなされた樹脂基板21を備えるサングラス用レンズ200が製造される。
【0036】
以上のようなサングラス用レンズの製造方法に、本発明の保護フィルムを適用することで、前記工程[4]における樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離を、積層体100に形成された掴みシロを用いることで、時間と手間とを有することなく円滑に実施することができるが、以下、本発明の保護フィルムについて詳述する。
【0037】
<保護フィルム10>
図2は、本発明の保護フィルムの好適実施形態を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図2の上側を「上」、下側を「下」という。
【0038】
保護フィルム10は、図2に示すように、基材層15と、この基材層15と樹脂基板21との間に位置し、樹脂基板21に粘着(接合)する粘着層11とを有し、さらに、基材層15は、粘着層11の反対側、すなわち、成形型側に位置する第1の層16と、粘着層11側、すなわち、樹脂基板21側に位置する第2の層17とを有している。
以下、これら各層について詳述する。
【0039】
<<基材層15>>
基材層15は、粘着層11を介して樹脂基板21(被覆層24)に接合し、前記工程[2]および前記工程[3]における樹脂基板21の打ち抜きおよび熱曲げの際に、樹脂基板21を保護(マスキング)し、前記工程[3]における熱曲げの後に、熱曲げに用いた金型から樹脂基板21(保護フィルム10)を剥離(離脱)させるための機能層(保護層)として機能するものである。
【0040】
さらに、基材層15は、前記工程[4]における樹脂基板21の両面から保護フィルム10をそれぞれ剥離させる際に、樹脂基板21の縁部から、保護フィルム10の一部が樹脂基板21の面方向に突出した掴みシロを形成して、この掴みシロを起点とする保護フィルム10の剥離を実施するための機能層としても機能する。そのため、掴みシロを起点とした保護フィルムの剥離を、時間と手間とを有することなく円滑に実施することができる。
【0041】
本発明では、これらの機能を基材層15に発揮させるために、基材層15は、図2に示すように、粘着層11の反対側に位置し、熱可塑性樹脂を含有する融点が150℃以上の第1の層16と、粘着層11側に位置し、熱可塑性樹脂を含有する融点が150℃未満の第2の層17とを有する積層体で構成され、第2の層17が含有する熱可塑性樹脂は、そのJIS K7210に準拠して、荷重2.16kgfの条件下において測定されるメルトフローレートが0.5g/10min以上4.0g/10min以下であるが、以下、基材層15が備える第1の層16および第2の層17について説明する。
【0042】
<<第1の層16>>
第1の層16は、粘着層11の反対側、すなわち、前記工程[3]における熱曲げの際に、成形型側に位置して、樹脂基板21を保護し、かつ、前記工程[3]における熱曲げの後に、熱曲げに用いた金型から樹脂基板21(保護フィルム10)を剥離(離脱)させるための最外層として機能し、さらに、前記工程[4]における樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離の際に、樹脂基板21の面方向に突出した掴みシロとして機能するものである。
【0043】
この第1の層16は、前記工程[3]における熱曲げの後に、成形型からの優れた剥離性(離脱性)を維持させること、すなわち、成形型(金型)に第1の層16を密着させないこと、さらには、前記工程[4]における樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離の際に、掴みシロとして機能させることを目的に、第1の層16は、熱可塑性樹脂を含有し、その融点が150℃以上、好ましくは155℃以上165℃以下程度に設定される。
【0044】
ここで、前述の通り、前記工程[3]における熱曲げの際の被覆層24(樹脂基板21)の加熱温度は、好ましくは、110℃以上150℃以下程度に設定される。そのため、第1の層16の融点を前記の通り設定することにより、前記工程[3]における熱曲げの際に、第1の層16が溶融または軟化状態となるのを確実に防止することができる。したがって、前記工程[3]における熱曲げの後に、成形型から確実に積層体100を剥離(離脱)させることができる。また、前記工程[4]における保護フィルム10の剥離の際に、第1の層16を、掴みシロとして利用することができる。
【0045】
このような第1の層16の構成材料としては、熱可塑性樹脂を含み、第1の層16の融点を150℃以上とし得るものであれば、特に限定されないが、好ましくは融点が150℃以上である熱可塑性樹脂が挙げられ、より好ましくは融点が150℃以上のポリオレフィンが選択される。これにより、第1の層16の融点を容易に150℃以上に設定することができる。また、後述する第2の層17もポリオレフィンを含む構成として、第1の層16と第2の層17とをともにポリオレフィンを含有するものとした際には、基材層15(第1の層16および第2の層17)と粘着層11とを優れた密着性を有するものとすることができるため、保護フィルム10が備える各層において剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0046】
なお、融点が150℃以上のポリオレフィンとしては、例えば、後述する粘着層11に含まれるポリオレフィンのうち融点が150℃以上のものが挙げられる。
【0047】
また、第1の層16は、その平均厚さが10μm以上80μm以下であることが好ましく、15μm以上45μm以下であることがより好ましい。これにより、前述した第1の層16としての機能を確実に発揮させることができる。
【0048】
<<第2の層17>>
第2の層17は、粘着層11側、すなわち、樹脂基板21側に位置して、粘着層11と第1の層16との間に位置する中間層として機能するものである。
【0049】
この第2の層17は、前記工程[3]における熱曲げの際に溶融・軟化状態となり、成形型側に位置する第1の層16と樹脂基板21との間に位置して樹脂基板21を保護し、かつ、積層体100の熱曲げにより、積層体100の湾曲面の縁部に、樹脂基板21の面方向に第1の層16が突出した掴みシロを形成させるための中間層として機能させることを目的に、第2の層17は、熱可塑性樹脂を含有し、その融点が150℃未満、好ましくは110℃以上125℃以下程度に設定される。そして、第2の層17が含有する熱可塑性樹脂は、そのJIS K7210に準拠して、荷重2.16kgfの条件下において測定されるメルトフローレート(MFR)が0.5g/10min以上4.0g/10min以下であり、好ましくは0.7g/10min以上3.0g/10min以下のものが用いられる。
【0050】
ここで、前述の通り、前記工程[3]における熱曲げの際の被覆層24(樹脂基板21)の加熱温度は、好ましくは、110℃以上150℃以下程度に設定される。そのため、第2の層17の融点を前記の通り設定することにより、前記工程[3]における熱曲げの際に、第2の層17を確実に溶融または軟化状態とすることができる。したがって、前記工程[3]において、この第2の層17を溶融または軟化状態の中間層としての機能を発揮させ、成形型側に位置する第1の層16と樹脂基板21との間において樹脂基板21を第2の層17がクッション層として保護することで、樹脂基板21の表面に金型表面形状の転写による凹凸が形成されることを的確に抑制または防止しつつ熱曲げすることができる。そのため、優れた外観性を有する熱曲げされた樹脂基板21が得られる。さらに、第2の層17が溶融または軟化状態となるため、樹脂基板21の面方向に対して、第1の層16を位置ずれさせ得ることから、積層体100の縁部に第1の層16による掴みシロが形成されることとなる。
【0051】
さらに、第2の層17が含有する熱可塑性樹脂は、そのJIS K7210に準拠して、荷重2.16kgfの条件下において測定されるメルトフローレート(MFR)が0.5g/10min以上4.0g/min以下であり、好ましくは0.7g/10min以上3.0g/10min以下に設定される。上記の通り、前記工程[3]における熱曲げの際に、積層体100の縁部に第1の層16による掴みシロが形成されることとなるが、第2の層17が溶融または軟化状態となったとしても、MFRが前記範囲内に設定されており、形成される掴みシロが適切な長さのものとなる。そのため、樹脂基板21の上面および下面の両面から突出する掴みシロ同士が接合してしまうのを的確に抑制または防止することができる。したがって、前記工程[4]における保護フィルム10の剥離の際に、第1の層16の樹脂基板21から面方向に突出した部分を、掴みシロとして確実に利用できることから、保護フィルム10の剥離を容易に行うことができる。
【0052】
なお、樹脂基板21の両面から突出する掴みシロ同士の接合は、前記工程[3]における熱曲げを、プレス成形により実施する場合に、上下の金型で積層体100を挾持して加圧することに起因して、真空成形により実施する場合と比較して、その発生頻度が高くなる。しかしながら、本発明を適用することで、前記工程[3]における熱曲げを、プレス成形により実施したとしても、前記掴みシロ同士が接合してしまうのを、的確に抑制または防止することができる。
【0053】
また、真空成形により実施する場合、シート材を積層体100の他方の面側に配置したり、手等で他方の面側を吸引開始時に押圧することにより、一方の金型による積層体100の吸引を補助した際に、掴みシロ同士が接合してしまう傾向が高くなるが、この際に本発明を適用することで、前記掴みシロ同士が接合してしまうのを、的確に抑制または防止することができる。
【0054】
また、この掴みシロの長さをLとし、平面視で円形状をなす積層体100が前記工程[3]により熱曲げされた後の平面視における直径をLとし、前記工程[3]により熱曲げされた積層体100の曲率半径Rを8.5cmとしたとき、(L/L)×100は、0.1%以上1.0%以下であることが好ましく、0.2%以上0.5%以下であることがより好ましい。かかる関係を満足することにより、樹脂基板21の両面から突出する掴みシロ同士が接合してしまうのを的確に抑制または防止することができるため、前記工程[3]により形成される掴みシロを用いて、前記工程[4]における保護フィルム10の剥離を、確実に実施することができる。
【0055】
このような第2の層17の構成材料としては、前記メルトフローレートが0.5g/10min以上4.0g/10min以下である熱可塑性樹脂を含み、第2の層17の融点を150℃未満とし得るものであれば、特に限定されないが、好ましくは前記メルトフローレートが0.7g/10min以上3.0g/10min以下であり、かつ、融点が130℃未満である熱可塑性樹脂が挙げられ、より好ましくは前記メルトフローレートが0.9g/10min以上2.5g/10min以下であり、かつ、融点が125℃未満のポリオレフィンが選択される。これにより、第2の層17の融点を容易に150℃未満に設定することができる。また、前述した第1の層16もポリオレフィンを含む構成として、第1の層16と第2の層17とをともにポリオレフィンを含有するものとした際には、基材層15(第1の層16および第2の層17)と粘着層11とを優れた密着性を有するものとすることができるため、保護フィルム10が備える各層において剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0056】
なお、0.5g/10min以上4.0g/10min以下であり、かつ、融点が150℃未満のポリオレフィンとしては、後述する粘着層11に含まれるポリオレフィンのうち、0.5g/10min以上4.0g/10min以下であり、かつ、融点が150℃未満のものが挙げられ、例えば、0.5g/10min以上4.0g/10min以下であり、かつ、融点が150℃未満のポリエチレンの単独重合体、α−オレフィン/ポリエチレン共重合体、α−オレフィン/ポリプロピレン共重合体等が挙げられる。
【0057】
また、第2の層17は、その平均厚さが10μm以上60μm以下であることが好ましく、15μm以上45μm以下であることがより好ましい。これにより、前述した第2の層17としての機能を確実に発揮させることができる。
【0058】
<<粘着層11>>
粘着層11は、基材層15と樹脂基板21との間に位置(介在)し、樹脂基板21に粘着することで、基材層15を樹脂基板21に接合するためのものである。
【0059】
さらに、この粘着層11は、前記工程[3]における熱曲げの際に溶融・軟化状態となり、積層体100の熱曲げにより、積層体100の湾曲面の縁部に、樹脂基板21の面方向に第1の層16が突出した掴みシロを形成させるための接合層としての機能も併せ持つ。そのため、粘着層11は、第2の層17と同様に、熱可塑性樹脂を含有し、その融点が150℃未満、好ましくは105℃以上123℃以下程度に設定される。
【0060】
そのため、粘着層11の融点を前記の通り設定することにより、前記工程[3]における熱曲げの際に、第2の層17と同様に粘着層11を確実に溶融または軟化状態とすることができる。したがって、前記工程[3]において、この粘着層11を溶融または軟化状態の接合層としての機能を発揮させ、基材層15を樹脂基板21に接合しつつ、樹脂基板21の面方向に対して、第1の層16を位置ずれさせ得ることから、積層体100の縁部に第1の層16による掴みシロを確実に形成することができる。
【0061】
また、この粘着層11は、本発明では、樹脂基板21から保護フィルム10を剥離させることなく前記工程[2]および前記工程[3]における樹脂基板21の打ち抜きおよび熱曲げを実施することができるとともに、前記工程[4]における樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離を実施し得るものが好ましく用いられる。
【0062】
そのため、粘着層11は、融点が150℃未満のポリオレフィンと、エラストマーとを含有することが好ましい。このように、粘着層11を、融点が150℃未満ポリオレフィンと、エラストマーとの双方を含む構成とすることで、前記効果を確実に発揮させることができるとともに、粘着層11の融点を150℃未満に比較的容易に設定することができる。
【0063】
ここで、前記工程[2]および前記工程[3]における保護フィルム10による樹脂基板21の保持性と、前記工程[4]における樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離性とは、例えば、樹脂基板21(被覆層24)に対するピール強度により評価することができる。
【0064】
具体的には、被覆層24に、保護フィルム10を貼付し、その後、温度50℃、時間12hrの条件で保管した後のJIS C−6481:1996に準拠して測定される、被覆層24と保護フィルム10との間のピール強度T、および、温度150℃、時間5minの条件で保管した後のJIS C−6481:1996に準拠して測定される、被覆層24と保護フィルム10との間のピール強度Tは、それぞれ、0.05N/25mm以上3.0N/25mm以下であることが好ましく、0.10N/25mm以上1.5N/25mm以下であることがより好ましく、0.15N/25mm以上0.5N/25mm以下であることがさらに好ましい。温度50℃、時間12hrの条件および温度150℃、時間5minの条件で、それぞれ、保管した後のピール強度Tおよびピール強度Tを前記範囲内とすることで、前記工程[2]および前記工程[3]における樹脂基板21の打ち抜きおよび熱曲げを、樹脂基板21から保護フィルム10を剥離させることなく実施することができ、かつ、前記工程[3]における熱曲げによる熱履歴を保護フィルム10が経たとしても、前記工程[4]における樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離を実施することができる。
【0065】
また、粘着層11に含まれる、ポリオレフィンと、エラストマーとのうち、ポリオレフィンは、前述の通り、融点が150℃未満のものであることが好ましく、105℃以上123℃以下程度のものであることがより好ましい。このような融点を有するポリオレフィンを粘着層11が含有することにより、粘着層11の融点を比較的容易に150℃未満に設定することができる。そのため、樹脂基板21から保護フィルム10を剥離させることなく前記工程[2]および前記工程[3]における樹脂基板21の打ち抜きおよび熱曲げを実施することができるとともに、前記工程[4]における樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離をより容易に実施することができる。さらに、前記工程[3]における樹脂基板21の熱曲げの際に、掴みシロを確実に形成することができる。
【0066】
また、ポリオレフィンとしては、粘着層11の融点を150℃未満に設定し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンの単独重合体(ホモポリマー)または共重合体、ポリエチレンの単独重合体または共重合体、EPR相(ゴム相)を備えるプロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニルブロック共重合体、エチレン−エチルアクリレートブロック共重合体、エチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、中でも、融点が150℃未満のポリエチレンの単独重合体、α−オレフィン/ポリエチレン共重合体、α−オレフィン/ポリプロピレン共重合体のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらのものは、比較的安価に入手することができ、さらに、融点が150℃未満のものも容易に入手することができる。また、これらのものであれば粘着層11に透明性を付与することができる。そのため、基材層15も同様に透明性を有している場合には、保護フィルム10が透明性を備えるものとなる。したがって、前記工程[1]における保護フィルム10の樹脂基板21への貼付の際に、ホコリ等のゴミが保護フィルム10と樹脂基板21との間に介在しているか否かを視認し得ることから、前記工程[2]以降にゴミが介在している積層体100が移行するのを確実に防止することができるため、結果として、得られるサングラス用レンズ200の歩留まりの向上が図られる。
【0067】
さらに、ポリオレフィンは、そのJIS K7210に準拠して、荷重2.16kgfの条件下において測定されるメルトフローレート(MFR)が0.5g/10min以上10.0g/10min以下であることが好ましく、1.0g/10min以上5.0g/10min以下であることがより好ましく、2.0g/10min以上4.0g/10min以下であることがさらに好ましい。これにより、粘着層11を、被覆層24に対する初期の馴染み性に優れたものとし得るため、前記工程[1]における保護フィルム10の樹脂基板21に対する貼付を、優れた密着性をもって行うことができる。また、第2の層17に含まれる熱可塑性樹脂のMFRを前記範囲内に設定することにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0068】
また、粘着層11は、前述の通り、ポリオレフィンの他に、エラストマーを含有することが好ましい。このように、粘着層11にエラストマーが含まれることにより、前記工程[4]における樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離の際に、樹脂基板21に粘着層11が残存すること、すなわち、樹脂基板21における糊残りの発生を的確に抑制または防止することができるため、樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離をより円滑に行うことができる。
【0069】
このエラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、α−オレフィン/ポリエチレン共重合体エラストマー、α−オレフィン/ポリプロピレン共重合体エラストマー、スチレンブロックエラストマー等が挙げられ、中でも、スチレンブロックエラストマーであることが好ましく、特に、スチレン−オレフィン−スチレンブロック共重合体エラストマーであることが好ましい。このように、エラストマーを、モノマー成分としてスチレンを含むものとすることで、前記工程[4]において、樹脂基板21に糊残りが発生するのをより的確に抑制または防止することができる。なお、α−オレフィンとしては、例えば、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテンおよび1−ヘプテン等が挙げられる。
【0070】
また、この場合、エラストマーにおけるスチレンの含有量は、25wt%以下であることが好ましく、10wt%以上18wt%以下であることがより好ましい。これにより、スチレン含有量が高くなることに起因して、粘着層11の硬度の上昇を招くのを的確に抑制または防止することができる。そのため、粘着層11の樹脂基板21(被覆層24)に対する密着力を確実に維持しつつ、樹脂基板21に糊残りが発生するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0071】
さらに、スチレン−オレフィン−スチレンブロック共重合体としては、例えば、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)等が挙げられるが、中でも、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)であることが好ましい。スチレン−オレフィン−スチレンブロック共重合体として、SEBSを選択することにより、エラストマーにおけるスチレンの含有量を、容易に25wt%以下に設定することができ、前述した効果を確実に得ることができる。
【0072】
粘着層11における、エラストマーの含有量は、特に限定されないが、好ましくは3wt%以上50wt%以下、より好ましくは5wt%以上30wt%以下に設定される。これにより、粘着層11に、エラストマーを含有させることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0073】
また、粘着層11は、その平均厚さが3μm以上40μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。これにより、前述した粘着層11としての機能を確実に発揮させることができる。
【0074】
なお、本明細書において、粘着層11を含む保護フィルム10を構成する各層の融点とは、それぞれ、各層に含まれる各構成材料の融点(DSC測定によるピーク温度)に、各構成材料が含まれる比率を乗じたものの和により求められた値を融点とする。
【0075】
また、上述した保護フィルム10が備える粘着層11、基材層15(第1の層16および第2の層17)の各層には、それぞれ、上述した構成材料の他に、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
また、これら各層の間には、上記添加剤等を含む中間層が形成されていてもよい。
【0076】
さらに、上述した保護フィルム10は、いかなる方法により製造されたものであってもよいが、例えば、共押し出し法を用いることで製造し得る。
【0077】
具体的には、3つの押し出し機を用意し、これらに、それぞれ、粘着層11、第1の層16および第2の層17の構成材料を収納した後、これらを溶融または軟化状態としたものを押し出すことで、共押し出しTダイから、これらが層状に積層された、溶融または軟化状態の積層体を、複数の冷却ロール等で構成されるシート成形部に供給し、その後、このシート供給部において積層体を冷却することにより保護フィルム10が製造される。
【0078】
以上、本発明の保護フィルムについて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、保護フィルムを構成する各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0079】
さらに、前記実施形態では、本発明の保護フィルムを、サングラス用レンズが有する樹脂基板を熱曲げ加工する際に、樹脂基板に貼付して用いる場合について説明したが、本発明の保護フィルムは、このようなサングラス用レンズが有する樹脂基板の熱曲げに適用できる他、例えば、ゴーグルが備えるレンズ、ヘルメットが備えるバイザー等の樹脂基板を熱曲げする際にも用いることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0081】
1.基材層が備える第2の層の構成の検討
1−1.原材料の準備
まず、各実施例および各比較例の保護フィルムの作製に使用した原料は以下の通りである。
【0082】
<ポリオレフィン>
融点が145℃のランダムポリプロピレン(MFR(加熱温度:230℃)=0.8g/10min)
融点が132℃のランダムポリプロピレン(MFR(加熱温度:230℃)=1.5g/10min)
融点が121℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=2.5g/10min)
融点が121℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=0.9g/10min)
融点が119℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=4.0g/10min)
融点が114℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=2.0g/10min)
融点が110℃の低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=0.8g/10min)
融点が162℃のホモポリプロピレン(MFR(加熱温度:230℃)=0.5g/10min)
融点が158℃のホモポリプロピレン(MFR(加熱温度:230℃)=2.5g/10min)
融点が110℃の低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=5.0g/10min)
融点が109℃の低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=0.35g/10min)
【0083】
<エラストマー>
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)(旭化成社製、「タフテックH1221」)
【0084】
1−2.保護フィルムの製造
(実施例1A)
[1A]まず、粘着層を形成するにあたり、SEBSと、融点が114℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=2.0g/10min)とを、SEBSの含有量が10wt%となるように混練することで粘着層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0085】
[2A]次に、調製した粘着層形成材料と、第2の層(中間層)形成材料として融点が121℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=2.5g/10min)と、第1の層(最外層)形成材料として融点が162℃のホモポリプロピレン(MFR(加熱温度:230℃)=0.5g/10min)とを、それぞれ、3つの押し出し機に収納した。
【0086】
[3A]次に、3つの押し出し機から、これらを溶融状態としたものを押し出すことで、共押し出しTダイから、これらが層状に積層された溶融状態の積層体を得た後、この積層体を冷却することで、実施例1Aの保護フィルムを得た。
【0087】
(実施例2A〜実施例7A、比較例1A〜比較例4A)
前記工程[2A]において第2の層形成材料として用いたポリオレフィンの種類を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1Aと同様にして、実施例2A〜実施例7A、比較例1A〜比較例4Aの保護フィルムを得た。
【0088】
1−3.評価
各実施例および各比較例の保護フィルムを、以下の方法で評価した。
【0089】
<1>掴みシロの大きさの評価
まず、各実施例および各比較例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製、「P1352」)の両面に、荷重0.5kg/cmの条件でロールを用いて圧着して、保護フィルムを貼付することで積層体を得た後、この積層体を厚さ方向に打ち抜くことで、積層体を平面視で円形状をなすもの(直径7.5cm)とした。
【0090】
次いで、円形状とされた積層体に対して、150℃の加熱下で、プレス成形により熱曲げ加工を施すことで、円形状の積層体を曲率半径Rが8.5cmの湾曲形状を有するものとした。
【0091】
そして、この熱曲げ加工が施された積層体における、掴みシロの長さLと、平面視における直径Lとを測定して、(L/L)×100を求めた後、得られた(L/L)×100に基づいて、次のように評価した。
【0092】
◎:0.2%以上0.5%以下である。
○:0.1%以上0.2%未満、または、0.5%超1.0%以下である。
×:0.1%未満、または、1.0%超である。
【0093】
<2>掴みシロ同士の接合の有無の評価
まず、各実施例および各比較例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製、「P1352」)の両面に、荷重0.5kg/cmの条件でロールを用いて圧着して、保護フィルムを貼付することで積層体を得た後、この積層体を厚さ方向に打ち抜くことで、積層体を平面視で円形状をなすもの(直径7.5cm)とした。
【0094】
次いで、円形状とされた積層体に対して、150℃の加熱下で、プレス成形により熱曲げ加工を施すことで、円形状の積層体を曲率半径Rが8.5cmの湾曲形状を有するものとした。
【0095】
そして、この熱曲げ加工が施された積層体における、2つの掴みシロ同士の接合の有無を観察し、その観察結果に基づいて、次のように評価した。
【0096】
◎:2つの掴みシロ同士間において、明らかに接合が認められず、
保護フィルムを剥離させる際に、掴みシロとして容易に用い得る。
○:2つの掴みシロ同士間において、若干の接合が認められるものの、
保護フィルムを剥離させる際に、掴みシロとして比較的容易に用い得る。
×:2つの掴みシロ同士間において、明らかな接合が認められ、
保護フィルムを剥離させる際に、掴みシロとして用いることができない。
【0097】
<3>熱曲げ加工後の樹脂基板の外観の評価
まず、各実施例および各比較例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製、「P1352」)の両面に、荷重0.5kg/cmの条件でロールを用いて圧着して、保護フィルムを貼付することで積層体を得た後、この積層体を厚さ方向に打ち抜くことで、積層体を平面視で円形状をなすもの(直径7.5cm)とした。
【0098】
次いで、円形状とされた積層体に対して、150℃の加熱下で、プレス成形により熱曲げ加工を施すことで、円形状の積層体を曲率半径Rが8.5cmの湾曲形状を有するものとした。その後、熱曲げ加工が施された積層体から保護フィルムを剥離させた。
【0099】
そして、保護フィルムが剥離された、熱曲げ加工後の樹脂基板における表面の外観に基づいて、次のように評価した。
【0100】
◎:金型の転写が全く無く成型前同等の平滑性である。
○:金型の転写が若干発生しているが実使用上問題ない程度である。
×:金型の転写による凹凸が顕著で実使用できない程度である。
【0101】
<4>金型剥離性の評価
まず、各実施例および各比較例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製、「P1352」)の両面に、荷重0.5kg/cmの条件でロールを用いて圧着して、保護フィルムを貼付することで積層体を得た後、この積層体を厚さ方向に打ち抜くことで、積層体を平面視で円形状をなすもの(直径7.5cm)とした。
【0102】
次いで、円形状とされた積層体に対して、150℃の加熱下で、プレス成形により熱曲げ加工を施すことで、円形状の積層体を曲率半径Rが8.5cmの湾曲形状を有するものとした。
【0103】
そして、この熱曲げ加工が施された積層体のプレス成形に用いた金型からの剥離性に基づいて、次のように評価した。
【0104】
◎:容易に剥離できる。
○:若干の密着があるが剥離可能な程度である。
×:密着して剥離できない。
【0105】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の保護フィルムにおける評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に示したように、各実施例における保護フィルムでは、第2の層の融点が150℃未満であり、かつ、第2の層が含有する熱可塑性樹脂のMFRが0.5g/10min以上4.0g/10min以下に設定されることで、掴みシロの指標である(L/L)×100の大きさが、0.1%以上1.0%以下の範囲に設定され、さらに、2つの掴みシロ同士間における接合が認められず、これらの掴みシロを、前記工程[4]において、保護フィルムを剥離させる際の掴みシロとして利用することができ、保護フィルムの剥離を容易に実施し得ることが判った。また、熱曲げ加工後の樹脂基板の表面に金型表面形状の転写による凹凸が認められず、優れた外観性をもって樹脂基板を熱曲げ加工し得ることが明らかとなった。
【0108】
また、各実施例における保護フィルムでは、第1の層の融点が150℃以上に設定されることで、前記工程[3]の熱曲げ加工の後に、成形型に保護フィルムが接着することなく、優れた剥離性をもって熱曲げされた積層体を剥離させ得ることが判った。
【0109】
これに対して、第2の層の融点が150℃以上である各比較例における保護フィルムでは、(L/L)×100の大きさが、0.1%未満となり、形成された掴みシロを、前記工程[4]において、保護フィルムを剥離させる際の掴みシロとして利用することができない結果を示した。さらに、第2の層が含有する熱可塑性樹脂のMFRが0.5g/10min未満、または、4.0g/10min超である各比較例における保護フィルムでは、掴みシロの指標である(L/L)×100の大きさが、0.1%未満、または、掴みシロが形成されたとしても2つの掴みシロ同士間において明らかな接合が認められたことから、形成された掴みシロを、前記工程[4]において、保護フィルムを剥離させる際の掴みシロとして利用することができない結果を示した。
【0110】
2.粘着層に含まれるエラストマーの種類の検討
2−1.原材料の準備
まず、各実施例の保護フィルムの作製に使用した原料は以下の通りである。
【0111】
<ポリオレフィン>
融点が162℃のホモポリプロピレン(MFR(加熱温度:230℃)=0.5g/10min)
融点が121℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=2.5g/10min)
融点が114℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=2.0g/10min)
【0112】
<エラストマー>
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)
スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)
α−オレフィン/ポリプロピレン共重合体エラストマー
【0113】
2−2.保護フィルムの製造
(実施例1B)
[1B]まず、粘着層を形成するにあたり、SEBSと融点が114℃の直鎖状低密度ポリエチレンとを、SEBSの含有量が10wt%となるように混練することで粘着層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0114】
[2B]次に、調製した粘着層形成材料と、第2の層(中間層)形成材料として融点が121℃の直鎖状低密度ポリエチレンと、第1の層(最外層)形成材料として融点が162℃のホモポリプロピレンとを、それぞれ、3つの押し出し機に収納した。
【0115】
[3B]次に、3つの押し出し機から、これらを溶融状態としたものを押し出すことで、共押し出しTダイから、これらが層状に積層された溶融状態の積層体を得た後、この積層体を冷却することで、実施例1Bの保護フィルムを得た。
【0116】
(実施例2B)
前記工程[1B]において、SEBSに代えて、SIBSを用いたこと以外は、前記実施例1Bと同様にして、実施例2Bの保護フィルムを得た。
【0117】
(実施例3B)
前記工程[1B]において、SEBSに代えて、α−オレフィン/ポリプロピレン共重合体エラストマーを用いたこと以外は、前記実施例1Bと同様にして、実施例3Bの保護フィルムを得た。
【0118】
2−3.評価
各実施例の保護フィルムを、以下の方法で評価した。
【0119】
<1>熱曲げ前の密着性評価
まず、各実施例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製、「P1352」)の両面に、荷重0.5kg/cmの条件でロールを用いて圧着することで、保護フィルムを貼付することで積層体を得た。
【0120】
次いで、JIS C−6481:1996に準拠してポリカーボネート基板と保護フィルムとの間のピール強度を測定した。そして、得られたピール強度に基づいて、次のように評価した。
【0121】
◎:0.10N/25mm以上1.5N/25mm以下である。
○:0.05N/25mm以上0.10N/mm未満、または、
1.5N/25mm超3.0N/25mm以下である。
×:0.05N/25mm未満、または、3.0N/25mm超である。
【0122】
<2>熱曲げ後の糊残り評価
まず、各実施例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製、「P1352」)の両面に、荷重0.5kg/cmの条件でロールを用いて圧着することで、保護フィルムを貼付することで積層体を得た。
【0123】
次いで、温度150℃の加熱温度で加熱しつつ、積層体を真空成形により熱曲げした後に、ポリカーボネート基板から保護フィルムを剥離させ、その後、ポリカーボネート基板における糊残りの有無を観察した。そして、糊残りの有無の観察結果に基づいて、次のように評価した。
【0124】
◎:糊残りが全く認められない。
○:若干の糊残りが認められる。
×:明らかな糊残りが認められる。
【0125】
以上のようにして得られた各実施例の保護フィルムにおける評価結果を、それぞれ、下記の表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
表2に示したように、各実施例における保護フィルムにおいて、粘着層をエラストマーを含むものとすることで、熱曲げした後のポリカーボネート基板と保護フィルムとの積層体において、ポリカーボネート基板から保護フィルムを、ポリカーボネート基板に糊残りを認めることなく、剥離し得る結果を示した。
【0128】
3.粘着層に含まれるポリオレフィンの融点の検討
3−1.原材料の準備
まず、各実施例の保護フィルムの作製に使用した原料は以下の通りである。
【0129】
<ポリオレフィン>
融点が132℃のランダムポリプロピレン(MFR(加熱温度:230℃)=1.5g/10min)
融点が121℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=2.5g/10min)
融点が121℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=0.9g/10min)
融点が114℃の直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=2.0g/10min)
融点が110℃の低密度ポリエチレン(MFR(加熱温度:190℃)=0.8g/10min)
融点が162℃のホモポリプロピレン(MFR(加熱温度:230℃)=0.5g/10min)
【0130】
<エラストマー>
スチレン含有量が12wt%のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)
【0131】
3−2.保護フィルムの製造
(実施例1C)
[1C]まず、粘着層を形成するにあたり、スチレン含有量が12wt%のSEBSと融点が114℃の直鎖状低密度ポリエチレンとを、SEBSの含有量が10wt%となるように混練することで粘着層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0132】
[2C]次に、調製した粘着層形成材料と、第2の層(中間層)形成材料として融点が121℃の直鎖状低密度ポリエチレンと、第1の層(最外層)形成材料として融点が162℃のホモポリプロピレンとを、それぞれ、3つの押し出し機に収納した。
【0133】
[3C]次に、3つの押し出し機から、これらを溶融状態としたものを押し出すことで、共押し出しTダイから、これらが層状に積層された溶融状態の積層体を得た後、この積層体を冷却することで、実施例1Cの保護フィルムを得た。
【0134】
(実施例2C〜実施例5C)
前記工程[1C]において調製する粘着層形成材料に含まれるポリオレフィンの種類を、それぞれ、表3に示すように変更したこと以外は、前記実施例1Cと同様にして、実施例2C〜実施例5Cの保護フィルムを得た。
【0135】
3−3.評価
各実施例の保護フィルムを、以下の方法で評価した。
【0136】
<1>熱履歴を経る前の密着強度評価
まず、各実施例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製、「P1352」)の両面に、荷重0.5kg/cmの条件でロールを用いて圧着することで、保護フィルムを貼付することで積層体を得た。
【0137】
次いで、温度50℃、時間12hrの条件で保管した後に、JIS C−6481:1996に準拠してポリカーボネート基板と保護フィルムとの間のピール強度Tを測定した。
【0138】
<2>熱履歴を経た後の密着強度評価
まず、各実施例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製、「P1352」)の両面に、荷重0.5kg/cmの条件でロールを用いて圧着することで、保護フィルムを貼付することで積層体を得た。
【0139】
次いで、温度150℃、時間5minの条件で保管した後に、JIS C−6481:1996に準拠してポリカーボネート基板と保護フィルムとの間のピール強度Tを測定した。
【0140】
<3>掴みシロの大きさの評価
まず、各実施例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製、「P1352」)の両面に、荷重0.5kg/cmの条件でロールを用いて圧着して、保護フィルムを貼付することで積層体を得た後、この積層体を厚さ方向に打ち抜くことで、積層体を平面視で円形状をなすもの(直径7.5cm)とした。
【0141】
次いで、円形状とされた積層体に対して、150℃の加熱下で、プレス成形により熱曲げ加工を施すことで、円形状の積層体を曲率半径Rが8.5cmの湾曲形状を有するものとした。
【0142】
そして、この熱曲げ加工が施された積層体における、掴みシロの長さLと、平面視における直径Lとを測定して、(L/L)×100を求めた後、得られた(L/L)×100に基づいて、次のように評価した。
【0143】
◎:0.2%以上0.5%以下である。
○:0.1%以上0.2%未満、または、0.5%超1.0%以下である。
×:0.1%未満、または、1.0%超である。
【0144】
<4>掴みシロ同士の接合の有無の評価
まず、各実施例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製、「P1352」)の両面に、荷重0.5kg/cmの条件でロールを用いて圧着して、保護フィルムを貼付することで積層体を得た後、この積層体を厚さ方向に打ち抜くことで、積層体を平面視で円形状をなすもの(直径7.5cm)とした。
【0145】
次いで、円形状とされた積層体に対して、150℃の加熱下で、プレス成形により熱曲げ加工を施すことで、円形状の積層体を曲率半径Rが8.5cmの湾曲形状を有するものとした。
【0146】
そして、この熱曲げ加工が施された積層体における、2つの掴みシロ同士の接合の有無を観察し、その観察結果に基づいて、次のように評価した。
【0147】
◎:2つの掴みシロ同士間において、明らかに接合が認めらず、
保護フィルムを剥離させる際に、掴みシロとして容易に用い得る。
○:2つの掴みシロ同士間において、若干の接合が認められるものの、
保護フィルムを剥離させる際に、掴みシロとして比較的容易に用い得る。
×:2つの掴みシロ同士間において、明らかな接合が認められ、
保護フィルムを剥離させる際に、掴みシロとして用いることができない。
【0148】
以上のようにして得られた各実施例の保護フィルムにおける評価結果を、それぞれ、下記の表3に示す。
【0149】
【表3】
【0150】
表3に示したように、各実施例における保護フィルムでは、融点が150℃未満の熱可塑性樹脂が粘着層に含まれることで、ピール強度T、および、ピール強度Tともに0.05N/25mm以上3.0N/25mm以下の範囲内に設定され、前記工程[2]および前記工程[3]における樹脂基板の打ち抜きおよび熱曲げを、樹脂基板から保護フィルムを剥離させることなく実施することができ、かつ、前記工程[3]における熱曲げによる熱履歴を保護フィルムが経たとしても、前記工程[4]における樹脂基板からの保護フィルムの剥離を実施することができる程度に、保護フィルムが樹脂基板に貼付されていることが判った。
【符号の説明】
【0151】
10 保護フィルム
11 粘着層
15 基材層
16 第1の層
17 第2の層
21 樹脂基板
23 偏光子
24 被覆層
30 ポリカーボネート層
100 積層体
200 サングラス用レンズ
図1
図2