(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
膜分離に供される濾過本体部、当該膜分離による処理水を当該濾過本体部の上方向側端部から集水する集水部、当該集水部から処理水を導出する処理水導出部、を有した膜エレメントが、所定間隔を隔てて水平方向に複数配列された膜モジュールと、
膜モジュールを収容可能な形状であって各膜エレメントを出し入れ自在な収容部を有したラックと、
前記収容部に収容されている収容状態の各膜エレメントの配列方向に延在した形状の管状周壁を有し、当該管状周壁に各膜エレメントの処理水導出部が接続されて、前記導出された処理水を集水する集水管と、
を備え、
ラックの収容部は、
水平方向のうち前記配列方向と交差する交差方向の一方側に開口し、各膜エレメントをそれぞれ前記交差方向に出し入れ自在な収容口と、
それぞれ前記配列方向に延在した形状であって前記交差方向に並列している一対の下方向側支持部と、
を有し、
各下方向側支持部は、
前記配列方向に延在した形状であって、前記収容状態の各膜エレメントの下方向側端部を支持する下方向側基体部と、
下方向側基体部において前記配列方向に所定間隔を隔てた位置に設けられ、それぞれ当該位置から上方向側に突出した形状の複数個の下方向側揺動抑制壁と、
を有し、
前記収容状態の各膜エレメントは、それぞれ隣接する2つの下方向側揺動抑制壁の間に介在することを特徴とする支持構造。
【背景技術】
【0002】
例えば下水処理や産業排水処理等の各種設備に適用可能な固液分離手段の一例としては、膜分離技術を利用した膜濾過装置が知られている。この膜濾過装置は、例えば生物処理槽内や凝集処理槽内の液相に浸漬しておくことにより、当該槽内で処理された処理水を固形物質と水成分とに固液分離できるようになっている。
【0003】
処理水の固液分離には、例えば、膜分離に供される濾過本体部、当該膜分離による処理水(濾過された処理水)を当該濾過本体部の端部から集水する集水部、当該集水部から処理水を導出する処理水導出部、を有した膜エレメントが適用されている。この膜エレメントの処理水導出部に集水管を接続しておくことにより、当該膜エレメントにより固液分離された処理水を、当該集水管に集水してから外部(例えば膜濾過装置の後段の処理工程の場所)に取り出すことができる。
【0004】
以上のような膜濾過装置を液相に浸漬しておくと、例えば稼動状況等に応じて種々の付着物が膜エレメント等に付着してしまう。このため、膜エレメント等については、例えば散気装置等を用いて当該膜エレメント等の表面をエア洗浄したり、膜エレメント内や集水管内の処理水を一時的に逆流させて逆圧洗浄する等により、洗浄工程が適宜行われている。
【0005】
また、膜エレメントにおいては、膜濾過装置の稼動状況等に応じて種々の応力が加わるため、当該膜エレメントを適宜支持することが好ましい。
【0006】
特許文献1では、複数の膜エレメントが配列された膜モジュールの上方側に、各膜エレメントを保持する押さえ板(特許文献1では符号14)を設けた構成が開示されている。この押さえ板においては、各膜エレメント間に圧入する櫛歯状凸部(特許文献1では符号16a)を有した構成が開示されている。
【0007】
このような特許文献1の支持構造によれば、エア洗浄時において、膜エレメントの垂直方向の振動を抑制し、膜エレメントと周辺部との摺動、およびそれに起因する膜エレメントの磨耗を防止できるとされている。
【0008】
特許文献2では、膜濾過装置のラックにおいて、膜エレメントの出し入れを案内するための櫛歯状案内部材(特許文献2では符号70,71)を設けた構成が開示されている。また、ラックに収容した膜エレメント側方の支持部(特許文献2では(特許文献2の符号51a,51b)に間隔保持部材(特許文献2では符号65)を嵌合させることにより、当該膜エレメントを保持する構成が開示されている。
【0009】
このような特許文献2の支持構造によれば、膜エレメントを容易に抜き出すことができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の支持構造の場合、膜エレメントの振動等を抑制できたとしても、各膜エレメントと押さえ板との間の摩擦力により、当該各膜エレメントを出し入れすることが困難となり、取り扱い作業性が低くなってしまう。
【0012】
また、特許文献2の支持構造の場合、膜エレメントの側方を支持(特許文献2の
図1では膜エレメントの立設方向中央部の側方を支持)するため、当該膜エレメント自体が持つ可撓性を低下させてしまうおそれがある。
【0013】
膜エレメントの可撓性が低くなると、当該膜エレメントに応力が加わった場合に撓み難くなり(当該応力を分散することが困難となり)、膜エレメントに負荷が掛かり過ぎてしまうおそれもある。
【0014】
本発明は、前述のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、膜エレメントの取り扱い作業性,可撓性に貢献可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る支持構造および膜濾過装置は、前記の課題の解決に貢献できるものであり、当該支持構造の一態様においては、膜分離に供される濾過本体部、当該膜分離による処理水を当該濾過本体部の上方向側端部から集水する集水部、当該集水部から処理水を導出する処理水導出部、を有した膜エレメントが、所定間隔を隔てて水平方向に複数配列された膜モジュールと、膜モジュールを収容可能な形状であって各膜エレメントを出し入れ自在な収容部を有したラックと、前記収容部に収容されている収容状態の各膜エレメントの配列方向に延在した形状の管状周壁を有し、当該管状周壁に各膜エレメントの処理水導出部が接続されて、前記導出された処理水を集水する集水管と、を備えている。
【0016】
ラックの収容部は、水平方向のうち前記配列方向と交差する交差方向の一方側に開口し、各膜エレメントをそれぞれ前記交差方向に出し入れ自在な収容口と、それぞれ前記配列方向に延在した形状であって前記交差方向に並列している一対の下方向側支持部と、を有している。各下方向側支持部は、前記配列方向に延在した形状であって、前記収容状態の各膜エレメントの下方向側端部を支持する下方向側基体部と、下方向側基体部において前記配列方向に所定間隔を隔てた位置に設けられ、それぞれ当該位置から上方向側に突出した形状の複数個の下方向側揺動抑制壁と、を有している。前記収容状態の各膜エレメントは、それぞれ隣接する2つの下方向側揺動抑制壁の間に介在することを特徴とする。
【0017】
前記一態様においては、各下方向側揺動抑制壁は、前記収容状態の隣接する膜エレメントとの間にクリアランスを形成するように設けられていることを特徴としても良い。
【0018】
また、各下方向側支持部により、前記収容状態の各膜エレメントの下方向側端部のうち前記交差方向側の両端縁部を支持し、各下方向側支持部のうち少なくとも一方における前記交差方向外側には、当該交差方向外側を遮蔽する下方向側遮蔽部が、着脱自在に設けられていることを特徴としても良い。
【0019】
また、ラックは、2つの収容部が、それぞれ収容口の反対側である背面側で対向した姿勢において、管状周壁を挟んで配置され、前記各収容部に、前記膜モジュールがそれぞれ収容されることを特徴としても良い。
【0020】
また、ラックの収容部は、前記配列方向に延在した形状の上方向側橋架部を、更に有し、上方向側橋架部は、前記配列方向に延在した形状であって、前記収容状態の各膜エレメントの上方向側端部に係合する上方向側基体部と、上方向側基体部において前記配列方向に所定間隔を隔てた各々の位置に設けられ、それぞれ当該位置から下方向側に突出した形状の複数個の上方向側揺動抑制壁と、を有し、前記収容状態の各膜エレメントは、それぞれ隣接する2つの上方向側揺動抑制壁の間に介在することを特徴としても良い。
【0021】
また、各上方向側揺動抑制壁は、前記収容状態の隣接する膜エレメントとの間にクリアランスを形成するように設けられていることを特徴としても良い。
【0022】
また、管状周壁は、管状周壁径方向のうち上方向側において、当該管状周壁径方向のうち前記交差方向に肉厚な肉厚部と、肉厚部において管状周壁内外方向に貫通した接続孔と、が設けられており、処理水導出部は、前記集水部における前記交差方向の他方側に設けられており、前記収容状態において前記接続孔に接続されて管状周壁内側と連通していることを特徴としても良い。
【0023】
膜濾過装置の一態様においては、前記支持構造の何れかを有したものであって、ラックは、収容部の下方側の位置に、複数個の空気噴出孔を有した散気装置が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上示したように本発明によれば、膜エレメントの取り扱い作業性,可撓性に貢献可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態の支持構造および膜濾過装置は、特許文献1,2に示すような支持構造を有したものとは全く異なるものである。
【0027】
すなわち、本実施形態による支持構造および膜濾過装置は、ラックの収容部に収容した複数の膜エレメントにおいて、それぞれ当該膜エレメントの上方向側端部と下方向側端部とを支持するものである。
【0028】
具体的に、各膜エレメントの上方向側端部は、当該各膜エレメントの膜分離による処理水を集水する集水管に接続(後述の
図3では処理水導出部34を接続孔23に接続)して、支持する。また、各膜エレメントの下方向側端部は、それぞれ当該各膜エレメントの配列方向(後述の
図1では矢印Y1Y2方向)に延在した形状であって、当該配列方向と交差する交差方向(後述の
図1では矢印X1X2方向)に並列した一対の下方向側支持部により、支持する。
【0029】
各下方向側支持部は、前記配列方向に延在した形状であって、前記収容部に収容された状態(以下、単に収容状態と適宜称する)の各膜エレメントの下方向側端部を支持する下方向側基体部と、その下方向側基体部において前記配列方向に所定間隔を隔てた位置に設けられ、それぞれ当該位置から上方向側に突出した形状の複数個の下方向側揺動抑制壁と、
を有しているものとする。
【0030】
そして、前記収容状態の各膜エレメントは、それぞれ隣接する2つの下方向側揺動抑制壁の間に介在することを特徴とする。
【0031】
このような本実施形態の支持構造によれば、収容状態の各膜エレメントの上方向側端部と下方向側端部との間を支持(例えば特許文献2のように側部を支持)する必要が無いため、当該各膜エレメント自体が持つ可撓性を維持し易くなる。
【0032】
これにより、収容状態の膜エレメントは、応力が加わった場合に撓み易くなり(当該応力を分散し易くなり)、当該膜エレメントに加わる負荷(例えば、エア洗浄時の連続的な曝気エネルギーによる衝撃や、地震等による一時的な衝撃による負荷)を抑制することが可能となる。
【0033】
また、収容状態の各膜エレメントの下方向側端部を支持する一対の下方向側支持部は、隣接する2つの膜エレメント間に対して下方向側揺動抑制壁が介在(例えば、隣接する2つの膜エレメントとの間にクリアランスを形成するように介在)しているものの、例えば特許文献1のように隣接する2つの膜エレメント間に圧入するような部位は無い(特許文献1では符号16a)。これにより、下方向側支持部と膜エレメントとの間の摩擦力を抑制(特許文献1と比較して抑制)でき、当該各膜エレメントを出し入れすることが容易になる。
【0034】
したがって、本実施形態の支持構造によれば、膜エレメントの取り扱い作業性や可撓性等に貢献可能であることが判る。
【0035】
本実施形態の支持構造および膜濾過装置は、前述のように収容状態の各膜エレメントの上方向側端部と下方向側端部とを支持し、膜エレメントの取り扱い作業性や可撓性等に貢献することが可能な構成であれば良く、種々の分野(例えば、各種設備で適用されている膜分離技術や配管技術の分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能である。
【0036】
≪本実施形態の一例である膜濾過装置10≫
図1〜
図6は、本実施形態による接続構造および当該接続構造を有した膜濾過装置10を説明するためのものである。なお、
図1〜
図6において矢印で示す方向のうち、矢印Z1Z2方向は、膜濾過装置10の設置方向に相当するものであり、矢印X1X2方向,矢印Y1Y2方向は、それぞれ水平方向を示すものである。また、
図1〜
図6において同様のものには、それぞれ同一符号を引用する等により、詳細な説明を適宜省略する。
【0037】
<膜濾過装置10の主な構成>
膜濾過装置10は、
図1に示すように複数のフレーム枠(
図1では後述のフレーム枠1a,1b,1c)が筐体状に組み付けられているラック1と、当該ラック1内の上段側空間部1A,下段側空間部1Bでそれぞれ矢印Y1Y2方向に延在するように設けられた長尺条状の集水管2A,2Bと、を有している。そして、ラック1内には、複数の膜エレメント3(
図3に基づいて後述する)が所定間隔を隔てて矢印Y1Y2方向(管状周壁軸方向)に並んで配列されている膜モジュール30(後述する収容部11A,12A,11B,12Bそれぞれに収容される膜モジュール30)が、収容される。
【0038】
図1に示すラック1は、矢印X1X2方向に延在する複数のフレーム枠1aと、矢印Y1Y2方向に延在する複数のフレーム枠1bと、矢印Z1Z2方向に延在する複数のフレーム枠1cと、が筐体状に組み付けられ、膜濾過装置10の各種構成要素(例えば、集水管2A,2B、膜エレメント3、図外の散気装置等)を適宜支持できる構成となっている。ラック1の構成材料においては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス等の金属材料や、各種樹脂材料等が挙げられ、適宜適用することが可能である。
【0039】
ラック1内の矢印Z2方向側に位置する上段側空間部1Aにおいては、矢印Z2方向側の位置かつ矢印X1X2方向の中央側の位置において、集水管2Aが矢印Y1Y2方向に延在するように設けられている。そして、上段側空間部1Aには、集水管2Aを挟んで対向して位置するように、収容部11A,12Aが構成されている。
【0040】
ラック1内の矢印Z1方向側に位置する下段側空間部1Bにおいても、上段側空間部1Aと同様であって、矢印Z2方向側の位置かつ矢印X1X2方向の中央側の位置において、集水管2Bが矢印Y1Y2方向に延在するように設けられている。そして、下段側空間部1Bには、集水管2Bを挟んで対向して位置するように、収容部11B,12Bが構成されている。
【0041】
収容部11A,12A,11B,12Bそれぞれは、矢印X1X2方向の外側に開口された収容口16が設けられており、当該収容口16を介して、膜モジュール30の各膜エレメント3を矢印X1X2方向に出し入れ自在に収容できる構成となっている。これにより、例えば集水管2Aを挟んで配置されている収容部11A,12Aは、収容口16の反対側である背面側で対向した姿勢となる。
【0042】
収容部11A,12A,11B,12Bそれぞれの矢印Z1方向側には、所定距離を隔てて矢印Y1Y2方向に延在する一対の支持フレーム15が設けられている。各支持フレーム15には、矢印Y1Y2方向に延在した形状の下方向側支持部4(
図5,
図6に基づいて後述する)がそれぞれ設けられており、収容した膜モジュール30の各膜エレメント3の下方向側端部(例えば後述のフッター33)を、当該下方向側支持部4を介して支持できる構成となっている。
【0043】
また、収容部11A,12A,11B,12Bそれぞれの収容口16の矢印Z2方向側には、矢印Y1Y2方向に延在する上方向側橋架部5(
図5,
図6に基づいて後述する)が設けられており、収容した膜モジュール30の各膜エレメント3の上方向側端部(例えば後述のヘッダー32)を、当該上方向側橋架部5を介して支持できる構成となっている。
【0044】
膜モジュール30を収容した状態の収容部11A,12A,11B,12Bの水平方向の各側部には、当該膜モジュール30外周側を遮蔽するように、遮蔽パネル13,14がそれぞれ設けられる。これら遮蔽パネル13,14により、例えば後述の散気装置による気泡については、前記収容部11A,12A,11B,12Bの水平方向の各側部から外側に出ないように抑制されることとなる。
【0045】
ラック1においては、例えば各収容部11A,12A,11B,12Bよりも下方側(矢印Z1方向側;
図1では下段側空間部1Bの矢印Z1方向側)の位置に、例えば複数個の空気噴出孔を有した散気装置(図示省略)が設けられる。この散気装置においては、例えば膜濾過装置10を液相に浸漬した状態で、当該散気装置の各空気噴出孔から空気を噴き出すことにより、ラック1内に気泡を発生させることができる。
【0046】
この散気装置の気泡が、例えば膜モジュール30の各膜エレメント3の表面に沿って矢印Z2方向に上昇(例えば隣接する膜エレメント3間を上昇)し、膜エレメント3表面に接触する際にせん断力を発生させることにより、当該膜エレメント3表面がエア洗浄(例えば付着物が除去)されることとなる。
【0047】
<集水管2A,2Bの構成>
集水管2A,2Bは、
図2,
図4に示すように、径方向断面が略円状の内周面21aを有した長尺条状の管状周壁21と、管状周壁21の矢印Z2方向側(管状周壁径方向のうち上方向側)に位置する上方向周壁部22において矢印Y1Y2方向(管状周壁軸方向)に複数個並んで位置するように設けられた接続孔23と、を主として備えている。
【0048】
管状周壁21は、上方向周壁部22において矢印X1X2方向(管状周壁径方向のうち水平方向)に肉厚な肉厚部24が形成され、径方向断面が略台形形状をなしている。
【0049】
接続孔23は、収容状態の各膜エレメント3の処理水導出部と対向する位置において、前記肉厚部24を管状周壁21の内外方向(X1X2方向)に貫通するように、設けられている。
【0050】
管状周壁21の外周面のうち、上方向周壁部22の接続孔23の矢印Z1Z2方向側の外周縁面(
図2,
図4では矢印Z1方向側の外周縁面)の位置には、矢印Y1Y2方向に延在した形状の条状溝26が形成されている。そして、条状溝26には、当該条状溝26を溝埋めするように、衝撃緩衝材(例えばラバーシート等)26aが設けられている。この衝撃緩衝材26aにより、例えば管状周壁21と後述のヘッダー32とが互いに衝突したとしても、当該衝突により衝撃を緩衝することが可能となる。
【0051】
管状周壁21は、例えば矢印Y1方向側の端部を開口し、
図1に示すように当該端部に配管27等を適宜設けることにより、管状周壁21内に集水されている処理水を外部(例えば膜濾過装置10の後段の処理工程の場所側)に取り出せるように構成することが挙げられる。
【0052】
集水管2A,2Bの形状(例えば管状周壁21の外径,内径や矢印Y1Y2方向の長さ)や接続孔23の形状(例えば孔径)や配置個数は、膜エレメント3が具備される膜濾過装置10の処理水量等に応じて適宜設定することが挙げられる。
【0053】
集水管2A,2Bの構成材料においても、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス等の金属材料や、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル等の樹脂材料や、ポリ塩化ビニルと繊維強化プラスチックとの複合材料や、ポリエチレンと繊維強化プラスチックとの複合材料等が挙げられ、これら材料を適宜選択して適用することが可能である。
【0054】
また、前記のような構成材料を用い、射出成型,押出成型,切削加工等の各種成形技術を適用することにより、
図2,
図4に示すような軸方向(矢印Y1Y2方向)に非分割な構造の集水管2A,2Bを構成することが可能である。
【0055】
なお、複数個の筒状体を軸方向に連設して多段構造(すなわち、軸方向に分割されている構造)の集水管2A,2Bを構成することも可能であるが、その場合には、各筒状体間にシール材を適宜介在させて所望の液密性を保持できるようにすることが挙げられる。
【0056】
<膜エレメント3,膜モジュール30の構成>
膜エレメント3は、
図3,
図4に示すように、濾過本体部31と、ヘッダー32と、フッター33と、を主として備えている。図示する膜エレメント3の場合、矢印Z1Z2方向に長尺な平板状であり、例えば濾過本体部31の中央部が矢印Y1Y2方向に適度に撓む可撓性を有した構造となっている。
【0057】
濾過本体部31は、固液分離に供されるものであって、例えば平板状の濾過部材を用いて成る。この濾過部材の内部には固液分離により得られた濾過水を流通させる空間として流通路または流通間隙が形成されている。濾過部材は、濾過機能を有しているものであれば特に限定されるものではなく、種々の態様を適用することが可能である。その一例としては、通水性の平板状の支持体の表面(濾過本体部31の矢印Y1Y2方向側の平坦な主面等)に濾過膜が形成されたものが挙げられる。
【0058】
ヘッダー32,フッター33は、例えば接着、溶着若しくはモールド形態により、濾過本体部31の一端部,他端部に各々液密的に固定することが挙げられる。
【0059】
ヘッダー32は、濾過本体部31の一端部から前記固液分離の処理水を集水する集水部として機能する。ヘッダー32の一端部(
図3では矢印X2方向の端部)には、配管状の部材からなる処理水導出部34が具備されている。この処理水導出部34は、管状周壁21の接続孔23に嵌装して接続され、膜エレメント3で固液分離された処理水を管状周壁21内に導出できるように構成されている。
【0060】
図4に示す処理水導出部34の場合、管状周壁21の接続孔23に挿入される液密部34aと、ヘッダー32の一端部に設けられ接続孔23に嵌め込まれる嵌め込み部34bと、を有している。液密部34aの外周面には、当該液密部34aと接続孔23との間を液密に封止する止水部材34cが装着されている。
【0061】
濾過本体部31,ヘッダー32,フッター33の構成材料においても、特に限定されるものではないが、例えば、固液分離技術に適用されている金属,セラミック等に例示される周知の無機材料または高分子樹脂等に例示される周知の有機材料が挙げられる。また、前記構成材料は、濾過本体部31,ヘッダー32及びフッター33が膜分離装置として組み込まれた際に、例えば濾過本体部31の洗浄のための気液混合流によって破損しない程度の強度を有するように、適宜選択して適用することが挙げられる。
【0062】
処理水導出部34の構成材料には、濾過本体部31,ヘッダー32,フッター33と同様の構成材料を適用することが挙げられる。この処理水導出部34としては、円筒状の態様が挙げられるが、横断面が円形以外の三角形、四角形に例示される多角形の態様を適用することも可能である。また、嵌め込み部34bをテーパー形状にする等により、液密性の向上に貢献することも可能である。止水部材34cは、例えば水処理技術に採用されているOリング等に例示される周知の弾性部材を適用することが挙げられる。
【0063】
また、ヘッダー32,フッター33の形状等は、それぞれの機能を発揮できるように支持できる態様であれば良く、適宜設定することが可能である。例えばフッター33の場合は、後述する隣接した2つの下方向側揺動抑制壁42間に介在し易くした態様が挙げられる。具体例としては、
図3(B)に示すフッター33のように、矢印Y1Y2方向の肉厚が、矢印Z1方向に向かうに連れて狭くなっている形状が挙げられる。
【0064】
以上のような膜エレメント3複数個を、矢印Z1Z2方向に立設した姿勢で所定間隔を隔てて矢印Y1Y2方向(管状周壁軸方向)に並んで配列するように、収容部11A,12A,11B,12Bに対して収容口16から収容することにより、
図5,
図6に示すような膜モジュール30が構成されることとなる。
【0065】
図5,
図6に示す膜モジュール30においては、各膜エレメント3が、当該各膜エレメント3の濾過本体部31が対向して位置する姿勢(例えば
図3に示すように矢印Z1Z2方向に立設する姿勢)で所定間隔を隔てて矢印Y1Y2方向(管状周壁軸方向)に並んで配列されている。
【0066】
また、各膜エレメント3のヘッダー32は、そのヘッダー32の処理水導出部34が管状周壁21の接続孔23に接続(
図4に基づいて後述する)されて、支持される。このように処理水導出部34と接続孔23とが接続した状態であれば、ヘッダー32を支持することも十分可能であるが、
図6に示すように、ヘッダー32の処理水導出部34の反対側の端部(
図3では矢印X1方向の端部)に上方向側橋架部5を係合させても良い。これにより、より安定した支持構造が得られることとなる。
【0067】
フッター33においては、当該フッター33の矢印X1X2方向の両端が、各支持フレーム15に設けられている下方向側支持部4によって支持されることとなる。
【0068】
<下方向側支持部4の支持構造>
図5,
図6に示す下方向側支持部4においては、支持フレーム15の上端縁部15aに沿って矢印Y1Y2方向に延在するように設けられている下方向側基体部41と、その下方向側基体部41において矢印Y1Y2方向に所定間隔を隔てた位置に設けられた複数個の下方向側揺動抑制壁42と、を有している。
【0069】
各下方向側揺動抑制壁42は、それぞれ下方向側基体部41の各々位置から矢印Z2方向に突出した形状であって、隣接する2つの下方向側揺動抑制壁42間に膜エレメント3が介在できるように、構成されている。
【0070】
以上のような下方向側支持部4によれば、収容状態の各膜エレメント3が所定間隔を隔てて矢印Y1Y2方向に並んで配列している状態を維持するように、それぞれのフッター33を支持することができる。また、下方向側支持部4によれば、各膜エレメント3は、収容口16から出し入れする場合に、隣接する2つの下方向側揺動抑制壁42により案内され、矢印X1X2方向に移動し易くなる。
【0071】
前記のように隣接する2つの下方向側揺動抑制壁42間に膜エレメント3を介在させることにより、例えば膜濾過装置10の稼動状況等により膜エレメント3が矢印Y1Y2方向に揺動した場合には、当該2つの下方向側揺動抑制壁42によって揺動が抑制されることとなる。
【0072】
各下方向側揺動抑制壁42は、膜モジュール30の膜エレメント3の個数や、当該膜エレメント3の形状等に応じて、適宜形成することが挙げられる。例えば、収容状態の各膜エレメント3が互いに衝突しないように、各下方向側揺動抑制壁42を矢印Y1Y2方向に所定間隔を隔てて設けることが挙げられる。
【0073】
各下方向側揺動抑制壁42の間隔は、例えば、膜エレメント3と隣接する下方向側揺動抑制壁42との間にクリアランス(空隙)を形成できるように設定することも挙げられる。このようなクリアランスを形成した場合、膜エレメント3と隣接する下方向側揺動抑制壁42との間に生じ得る摩擦力を抑制できる。これにより、膜エレメント3を出し入れする際の取り扱い作業性も良好となる。
【0074】
図5,
図6に示す各下方向側支持部4の場合、膜モジュール30の収容状態において各膜エレメント3の矢印X1X2方向の両端縁部を支持している。そして、当該各下方向側支持部4の矢印X1X2方向外側には、当該矢印X1X2方向外側を遮蔽するように、下方向側遮蔽部43が着脱自在に設けられている。
【0075】
図5の下方向側遮蔽部43の場合、矢印Y1Y2方向に延在する支持フレーム44に支持されている構成であって、その支持フレーム44をラック1のフレーム枠1cに着脱自在(例えば図外の締結手段等により着脱自在)に取り付けることにより、下方向側支持部4の矢印X1方向外側を遮蔽している。
【0076】
このように下方向側遮蔽部43を着脱自在に設けることにより、収容状態の各膜エレメント3において、矢印X1X2方向外側の移動を規制することができる。
【0077】
<上方向側橋架部5の支持構造>
図6に示す上方向側橋架部5においては、例えば収容部11A,12A,11B,12Bそれぞれの収容口16の矢印Z2方向側で矢印Y1Y2方向に延在(例えばフレーム枠1bに沿って延在)するように設けられている上方向側基体部51と、その上方向側基体部51において矢印Y1Y2方向に所定間隔を隔てた位置に設けられた複数個の上方向側揺動抑制壁52と、を有している。
【0078】
各上方向側揺動抑制壁52は、それぞれ上方向側基体部51の各々位置から矢印Z1方向に突出した形状であって、隣接する2つの上方向側揺動抑制壁52間に膜エレメント3が介在できるように、構成されている。
【0079】
以上のような上方向側橋架部5によれば、収容状態の各膜エレメント3が所定間隔を隔てて矢印Y1Y2方向に並んで配列している状態を維持するように、それぞれのヘッダー32を支持することができる。また、上方向側橋架部5によれば、各膜エレメント3は、収容口16から出し入れする場合に、隣接する2つの上方向側揺動抑制壁52間により案内され、矢印X1X2方向に移動し易くなる。
【0080】
前記のように隣接する2つの上方向側揺動抑制壁52間に膜エレメント3を介在させることにより、例えば膜濾過装置10の稼動状況等により膜エレメント3が矢印Y1Y2方向に揺動した場合には、当該2つの上方向側揺動抑制壁52によって揺動が抑制されることとなる。
【0081】
各上方向側揺動抑制壁52は、膜モジュール30の膜エレメント3の個数や、当該膜エレメント3の形状等に応じて、適宜形成することが挙げられる。例えば、収容状態の各膜エレメント3が互いに衝突しないように、各上方向側揺動抑制壁52を矢印Y1Y2方向に所定間隔を隔てて設けることが挙げられる。
【0082】
各上方向側揺動抑制壁52の間隔は、例えば、膜エレメント3と隣接する上方向側揺動抑制壁52との間にクリアランス(空隙)を形成できるように設定することも挙げられる。このようなクリアランスを形成した場合、膜エレメント3と隣接する上方向側揺動抑制壁52との間に生じ得る摩擦力を抑制できる。これにより、膜エレメント3を出し入れする際の取り扱い作業性も良好となる。
【0083】
図6に示す各上方向側橋架部5の場合、膜モジュール30の収容状態において各膜エレメント3の処理水導出部34の反対側である矢印X1方向の一端縁部を支持している。そして、当該各上方向側橋架部5の矢印X1方向外側には、当該矢印X1方向外側を遮蔽するように、上方向側遮蔽部53が着脱自在に設けられている。
【0084】
このように上方向側遮蔽部53を着脱自在に設けることにより、収容状態の各膜エレメント3において、矢印X1方向外側の移動を規制することができる。
【0085】
<接続構造>
図5に示すように各膜エレメント3を収容し、管状周壁21の接続孔23と膜エレメント3の処理水導出部34との両者を接続するには、まず、例えば
図4に示すように、当該両者が対向して近接した姿勢となるように、管状周壁21と膜エレメント3を配置する。
【0086】
そして、管状周壁21と膜エレメント3との両者を更に近接する方向に移動させ、処理水導出部34の液密部34aから接続孔23内に嵌入させていくことにより、接続孔23と処理水導出部34との両者を液密に接続でき、当該処理水導出部34を管状周壁21内側と連通させることができる。
【0087】
<接続構造の変形例>
管状周壁21の接続孔23と膜エレメント3の処理水導出部34との両者の接続構造においては、
図4に示すような態様に限定されるものではなく、例えば集水管2A,2Bや膜エレメント3の構造に応じて適宜変更することが可能である。
【0088】
例えば、
図7に示すように、管状周壁21の矢印Z1方向側(管状周壁径方向のうち下方向側)に位置する下方向周壁部25において、矢印X1X2方向(管状周壁径方向のうち水平方向)に肉厚な肉厚部24が形成され、その下方向周壁部25の肉厚部24に接続孔23が適宜設けられている構造であっても良い。
【0089】
この
図7に示すような接続構造の場合、
図4に示した接続構造と比較して、管状周壁21の内周面21aの矢印Z1方向側(底面側)と、接続孔23内の矢印Z1方向側(底面側)と、の両者の矢印Z1Z2方向の距離が短縮されることとなる。これにより、例えば管状周壁21内を移動する処理水等において、いわゆる死水域が発生しないように抑制することが可能となる。
【0090】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【解決手段】膜モジュール30の各膜エレメント3のヘッダー32は、そのヘッダー32に設けられている処理水導出部34を集水管2Aの接続孔23に接続して、支持する。各膜エレメントのフッター33は、それぞれ当該各膜エレメント3の配列方向に延在した形状の一対の下方向側支持部4により、支持する。各下方向側支持部4は、前記配列方向に延在した形状であって、収容部11Bに収容されている状態の各膜エレメント3のフッター33を支持する下方向側基体部41と、その下方向側基体部41において前記配列方向に所定間隔を隔てた位置に設けられ、それぞれ当該位置から上方向側に突出した形状の複数個の下方向側揺動抑制壁42と、を有しているものとする。そして、前記収容状態の各膜エレメント3は、それぞれ隣接する2つの下方向側揺動抑制壁42の間に介在する。