(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897922
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】3次元の物体を製造するための装置及び付随する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/259 20170101AFI20210628BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20210628BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20210628BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20210628BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20210628BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20210628BHJP
【FI】
B29C64/259
B29C64/153
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/00
B29C64/386
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-225024(P2019-225024)
(22)【出願日】2019年12月13日
(62)【分割の表示】特願2017-556571(P2017-556571)の分割
【原出願日】2016年5月30日
(65)【公開番号】特開2020-59284(P2020-59284A)
(43)【公開日】2020年4月16日
【審査請求日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】102015109525.4
(32)【優先日】2015年6月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506154834
【氏名又は名称】ツェーエル・シュッツレヒツフェアヴァルトゥングス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツォーク・フランク
【審査官】
神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−056466(JP,A)
【文献】
特開2011−251529(JP,A)
【文献】
特開2007−030303(JP,A)
【文献】
特開2001−334580(JP,A)
【文献】
特表平09−500845(JP,A)
【文献】
特表2002−527613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元の物体(2)のそれぞれの断面に対応する位置で、放射線により硬化可能な造形材料(3)の層を相次いで硬化することによって、前記物体(2)を製造するための装置(1)であって、
キャリア装置(8)を内に備えた造形容器(6)が内部に配置されたプロセスチャンバー(5)を取り囲むハウジング(4)と、
前記ハウジング(4)内に配置された造形容器(6)と、
前記造形容器(6)内の前記キャリア装置(8)又は事前に形成された層の上に前記造形材料(3)の層を塗布するための、前記造形容器(6)の造形面の上を前記造形容器(6)のサイズに適合可能な距離範囲内で層敷き詰め方向に案内されるように構成されたコータ要素(9)を有する塗布装置(7)と、
前記塗布装置(7)に前記造形材料(3)を供給するためのディスペンス機構と、
集束されたエネルギービームによって、前記物体(2)のそれぞれの断面に対応する位置で前記造形材料(3)の層を照射するための照射装置(12)と、
プロセスチャンバー底(18)と、
を備える当該装置(1)であって、
前記造形容器(6)が、独立した交換容器として又は交換モジュールの構成要素として前記装置(1)から取り出し可能であり、
前記装置(1)が、互いに異なる断面形状を有する複数の異なる造形容器(6)を受け入れるように構成され、前記複数の異なる造形容器(6)は前記物体(2)の形状にそれぞれ適合しており、据付最終位置では、層敷き詰め方向「S」での前記造形容器(6)の造形面寸法が、それに対して直角な方向「L」においてよりも短く、
前記プロセスチャンバー底(18)が、少なくとも1つの前記複数の異なる造形容器(6)の断面形状に関して変更可能な又は形状が適合可能に構成された少なくとも1つの造形エリア開口部を備えていることで、当該少なくとも1つの前記複数の異なる造形容器(6)を収容可能なように構成されている、製造装置。
【請求項2】
前記塗布装置(7)に前記造形材料(3)を供給するためのディスペンス機構が開口部を有するディスペンス容器(10)を有し、
前記造形容器(6)が、前記ディスペンス機構の前記ディスペンス容器(10)の前記開口部に対して最小限の間隔で配置されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
1つ又は複数の嵌め込みプレート(21)を備え、
前記プロセスチャンバー底の、必要でない1つ又は複数の造形エリア開口部(20)の各々が、前記1つ又は複数の嵌め込みプレート(21)のうちの対応する1つによって密閉されている請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセスチャンバー(5)内での、前記造形容器(6)のポジション、及び/又は越流容器(16)のポジション、及び/又はディスペンス容器(10)のポジションが、可変に選択され得る請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセスチャンバー底(18)が、共通の開口部(20)を備え、
前記造形容器(6)が、前記プロセスチャンバー底(18)の前記共通の開口部(20)の下に配置されており、前記造形容器(6)が、前記共通の開口部(20)の一部だけを占領しており、かつ前記共通の開口部(20)の残った部分が少なくとも1つの嵌め込みプレート(21)によって覆われている請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセスチャンバー底(18)が、内部にディスペンス容器(10)、及び造形容器(6)を運転準備の整った配置で備え、前記運転準備の整った配置とは、前記ディスペンス容器(10)、及び造形容器(6)が、交換可能な前記プロセスチャンバー底(18)に固定的に配置されるか、前記プロセスチャンバー底(18)に嵌め込み可能な嵌め込み部に固定的に配置されるか、又は前記プロセスチャンバー底(18)を備えた交換モジュール内に固定的に配置されていることである請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
造形容器交換により、前記コータ要素(9)の移動距離「V」が、前記プロセスチャンバー(5)内に配置された前記造形容器(6)の断面形状に関連した必要なコーティング長さに自動的に適合され得る請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記造形容器(6)の側壁が、造形すべき物体(2)のうち側壁に一番近い位置から最大50mmの距離に配置されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記コータ要素(9)の幅及び/又はディスペンス容器(10)の幅が、層敷き詰め方向「S」に対して直角な前記造形容器の寸法に適合している請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記造形容器(6)が、前記造形容器(6)内で製造すべき物体(2)の造形データに基づいて生成的造形方法によって製造されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記造形容器(6)が、前記造形面の縮小又は拡大のために変位可能な少なくとも1つの側壁(30)を有しており、前記側壁(30)が、前記造形容器(6)の据付最終位置では、側面敷き詰め方向「S」を横切って配置されている請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
請求項1の特徴を有する装置を使用した3次元の物体の製造方法であって、
製造すべき物体(2)の最大寸法を決定し、かつ前記最大寸法をメモリー装置内に記憶し、
異なる断面形状を有する複数の造形容器(6)を設け、
製造すべき前記物体(2)の前記最大寸法と、前記複数の造形容器(6)のうちの1つの断面形状との比較により、前記複数の造形容器(6)から物体形状に適合した1つの造形容器(6)を選択し、
前記選択された造形容器(6)を、据付最終位置では、層敷き詰め方向「S」での前記選択された造形容器(6)の造形エリア寸法が、それに対して直角な方向「L」においてよりも短いように前記装置(1)内に嵌め込む、
ことを含む製造方法。
【請求項13】
前記複数の造形容器が、交換収納庫内に用意され、かつ前記装置(1)の制御装置により、物体形状に適合した1つの造形容器(6)が選択され、かつ自動的に前記装置(1)に嵌め込まれる請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元の物体のそれぞれの断面に対応する位置で、放射線により硬化可能な造形材料の層を相次いで硬化することによって、当該物体を製造するための装置及びこのような装置との関連で実施し得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生成的造形方法、特に選択的なレーザ焼結又はレーザ溶融方法を実施するためのこのような装置は、プロセスチャンバー及び造形容器が格納されているハウジングを有している。造形容器は、プロセスチャンバー底の下で固定的に固定することができるか、又は交換容器として形成してプロセスチャンバー底の下で固定することができる。造形容器ならびにディスペンス容器及び越流容器を、いわゆる交換モジュール内に配置し、これらの3つ
の容器をまとめて製造装置内に取り付け、そこで相応にプロセスチャンバーの下でラッチロックすることもできる。
【0003】
造形材料を層ごとに塗布するために塗布装置が設けられており、この塗布装置は、造形容器の造形面の上を層敷き詰め方向に案内されるコータ要素を備えている。ディスペンス機構は、塗布装置に造形材料を供給する働きをし、このために、高さ変位可能な造形材料供給プラットフォームを備えたディスペンス容器を設けることができる。ただし、コータ機構に対して造形材料を提供するほかのディスペンス機構も考えられる。
【0004】
照射装置は、物体のそれぞれの断面に対応する位置で造形材料を選択的に照射する働きをする。このためにたいていは集束レーザビームを使用し、この集束レーザビームが粉末層の硬化すべき位置で造形材料を少し又は完全に溶融する。冷却により、造形材料の硬化が引き起こされる。レーザの代わりにほかの放射線源を使用してもよい。
【0005】
造形容器は、例えば特許文献1に記載されているような独立した交換容器であることができる。
【0006】
従来技術に基づく装置では、既存の造形容器が、たとえ交換可能であっても、一般的には最適に利用されていないという問題がある。これは複数の観点で不利である。一つには、例えば大きすぎる造形容器内に不要に大量の造形材料をコーティングしなければならず、これは高い造形材料費を伴う。もう一つには、不要に大きく寸法決定された造形エリア上の不要に長い移動距離が、1つの物体のための造形時間を少なからず長くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE19846478
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の基礎となる課題は、造形費及び造形時間を節減することができ、その際、造形装置の利用をより可変にアレンジできる装置及び方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1を特徴づけている特徴に従い、装置内に、物体形状に適合した様々なサイズ及び/又は断面形状の造形容器を嵌め込むことができ、その際、据付最終位置では、層敷き詰め方向での造形容器の造形面寸法が、それに対して直角な方向においてよりも短くされていることによって解決される。
【0010】
これに伴って本発明はいろいろな観点で改善を実現する。最初に、造形容器は物体形状に適合させるべきである。造形容器との関連で物体形状に適合しているとは、例えば面要素として形成された物体の場合、幅が狭くて長い断面形状を提供する適合した造形容器を選択することを意味しており、これに関しては造形エリアの寸法が、物体の断面長さ及び断面幅に適合している。例として、SLM又はSLS装置において生成的に造形すべき扉要素を挙げる。この扉要素は、幅が60cmで厚さが5cmであり、これに関しては扉の湾曲が一緒に計算に入れられている。扉の高さは30cmであるべきである。扉要素は、実質的に垂直に立った状態で、造形容器内で造形されるべきである。この場合、造形容器の寸法決定は約65cm×10cmであることが有利であり、物体形状に適合した造形容器は、少なくとも40cmのプラットフォーム沈下を保証するのに適していなければならず、これにより扉物体を垂直に立った状態で、プラットフォームのZ方向での移動により層ごとに造形容器内に造形することができる。
【0011】
このように物体形状に適合した造形容器を、ここでは短手方向で設備に嵌め込み、したがって据付最終位置では、層敷き詰め方向、つまりコータが造形面の上を動く方向での造形面寸法が、それに対して直角な方向においてよりも短い。
【0012】
これは、造形エリア長さが65cmで造形エリア幅が10cmの、物体形状に適合した前述の定義した造形容器に関しては、コータが少なくとも1つの65cmの長さを有さなければならず、かつコータの移動距離を、ディスペンス容器の面及び越流容器の越流開口部の面を一緒に含むとすれば約20cmに減らせることを意味している。したがって本発明の核心は、造形容器の物体形状適合及び装置内でのこの造形容器の、コーティングを速くする据付位置から成っている。
【0013】
造形容器は、必ずしも直角に形成されなくてよい。容器容積を減らすために、断面のスリム化を上回って造形エリアの形状適合を行うことができる。例えばS字形の対象物を造形する場合、S字形に成形した造形容器も考慮され、この造形容器の造形面の周縁は、製造すべき物体の形状に適合している。
【0014】
「物体形状に適合」の下では、当然、常にある程度の妥協が理解されるべきである。物体の周りには造形材料のためのスペースが十分になければならず、ただしこのスペースは、余分な造形材料をできるだけ少ししか容器に入れなくてもよいように最小限に抑えられるべきである。
【0015】
このような容器を、請求項1で挙げた特徴を有する装置内に取り付け得るためには、プロセスチャンバー底が、様々なサイズ及び断面形状の造形容器を収容するために準備されており、それらのサイズ又は断面形状に関して形状適合されているか又は変更可能な1つ又は複数の造形エリア開口部を備えている場合が有利であり得る。このために、プロセスチャンバー底に二者択一で複数の嵌め込み部を備えることができ、この嵌め込み部の中又は下に、対応する造形容器を形状適合させて当てがうことができる。しかし、プロセスチャンバー底を全体的に装置から外して、適合した開口部を有する適合したプロセスチャンバー底を装置に嵌め込むこともできる。
【0016】
本方法の加速に重要なのは、造形容器の縁を、ディスペンス容器の縁の開口部に対して最小限の間隔で配置することであり、これにより両方の容器間の不要に長い移動距離が回避される。
【0017】
プロセスチャンバー底に、複数の造形エリア開口部が設けられている場合、プロセスチャンバー底の、造形プロセスにそれほど必要でない造形エリア開口部は、嵌め込みプレートによって密閉することができる。ディスペンスチャンバーのポジションに対する造形容器及び/又は越流容器のポジションを可変に選択することもできる。これが意味するのは、例えば1つの嵌め込み開口部に、最初に比較的幅が狭い造形容器を、それからそのすぐ後ろに、適合した越流容器を嵌め込むことである。造形容器の容積が小さければ小さいほど、越流容器の容積もそれだけ小さく選択することができる。これらの容器は、ディスペンス容器のポジションに対して可変に選択され、かつ嵌め込まれ、かつ間隔を最適化される。造形容器及び越流容器は、プロセスチャンバー底の1つの共通の開口部内に配置することができ、かつこの開口部の一部だけを占領することができる。開口部の残った部分はその後、嵌め込みプレートによって覆われる。
【0018】
本発明は、容積を適合させたディスペンス容器、物体形状に適合した造形容器、及び同様に適合した越流容器が、運転準備の整った配置で、プロセスチャンバー底、プロセスチャンバー底嵌め込み部、又はプロセスチャンバー底を備えた交換モジュール内に固定的に
配置されることも一緒に含んでいる。
【0019】
造形容器交換により、コータの移動距離を、造形容器に関連した必要なコーティング長さに、特にディスペンス容器、造形容器、越流容器の全体的に選択された容器位置関係に、自動的に適合させることができる。容器が幅広ければ幅広いほど、コータの移動長さもそれだけ長く選択しなければならない。例えば容器をコード化し、かつ装置のセンサーによりコードを走査することが考えられ、これによりコータ移動電子機器により、自動的に最適なコーティング長さが調整されるであろう。
【0020】
或る物体に関し、比較的多くの個数を作製する場合、装置内に嵌め込み可能で、物体形状に適合した造形容器を、その造形容器内で製造すべき物体の造形データに基づいて生成的造形方法によって製造してもよい。その際、物体の外寸を考慮し、これに、物体の寸法に対するある程度の間隔を足し算し、その後、こうして生成されたデータに基づいて、物体形状に適合した造形容器を生成的に造形する。これは、この場合に造形容器をさらに、特に物体の熱感受性領域にも適合させ得るという利点を有している。生成的に造形された造形容器は、温度クリティカルなゾーン内に冷却流路を取り付けることができ、したがって、これによっても、生成的造形方法を改善すること、特に加速させることができる。
【0021】
本発明の枠内ではさらに、造形容器が、その造形面の縮小又は拡大のために変位可能な少なくとも1つの側壁を有することができ、この側壁は、層敷き詰め方向を横切って配置されている。この少なくとも1つの側壁の変位によって物体形状適合が行われる。このような可変の造形容器は、交換容器として形成することができるか、又は交換モジュール内に取り付けることもでき、したがって造形壁の変位により、造形速度の最適化及び必要な造形材料量の削減を達成することができる。
【0022】
方法の請求項に基づき、造形装置はまず第一に、プロセスチャンバーを取り囲むハウジング、そのハウジング内に格納されているか又は嵌め込み可能な造形容器、造形容器内のキャリア装置又は事前に形成された層の上に造形材料を塗布するための、造形容器の造形面の上を層敷き詰め方向に案内されるコータ要素を有する塗布装置を備えている。それに加え、塗布装置に造形材料を供給するためにディスペンス機構が存在しており、照射機構が、造形材料の硬化のため、溶融に用いられる。
【0023】
本方法によれば、最初に、製造すべき物体の寸法を決定し、かつ様々なサイズ、形状、又は容積の複数の造形容器を用意し、造形容器寸法又は造形容器の形状特徴を装置のメモリー内に記憶し、次いで、物体寸法データと造形容器データの比較により、ストックされた複数の造形容器から物体に適合した1つの造形容器を電子的に選択し、最後に、物体に適合した造形容器を、据付最終位置では、層敷き詰め方向での物体形状に適合した造形容器の造形面寸法が、それに対して直角な方向においてよりも短いように装置内に配置し、かつ据え付ける。したがってこのような「マルチ容器装置」は複数の容器を内包しており、つまり少なくとも2つの、つまり大型容器を少なくとも1つと、寸法決定に関して明らかにより小さい容器を少なくとも1つ内包している。容器選択は、記憶した容器データに基づいて自動的に行われる。造形データから物体の寸法が確定されるとすぐに、コーティング距離が最小限に抑えられるように容器が選択され、かつ嵌め込まれる。本発明によれば、複数の容器を、容器交換収納庫内に用意することができ、かつ装置の制御機構によって選択することができ、かつ自動的に装置に嵌め込むことができる。これにより装置は、容器適合に関し自ら最適化する。
【0024】
図での1つの例示的実施形態に基づいて本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術に基づく、交換容器として形成された造形容器を備えた3次元の物体の製造装置の概略的な断面図である。
【
図2】造形容器が物体形状に適合しており、かつ越流容器が造形容器のサイズに適合している場合の、
図1に倣った図である。
【
図3】ディスペンス容器もその造形材料量に関して交換可能な適合した容器として形成されている場合の、
図1及び
図2に基づく図である。
【
図5a】造形面の拡大又は縮小のための、したがって物体適合のための変位可能な側壁を備えた造形容器の概略図である。
【
図5b】造形面の拡大又は縮小のための、したがって物体適合のための変位可能な側壁を備えた造形容器の概略図である。
【
図6】造形容器を選択するための方法の概略的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
最初に
図1(従来技術)の要素を参照する。そこに示した装置1は、物体2のそれぞれの断面に対応する位置で、放射線により硬化可能な造形材料3の層を相次いで硬化することによる3次元の物体2の製造に用いられる。このために装置1は、プロセスチャンバー5を取り囲むハウジング4を有している。プロセスチャンバー5の下には造形容器6が配置されている。塗布装置7は、造形容器6内のキャリア装置8又は事前に形成された層の上に造形材料3の層を塗布する働きをする。このために塗布装置7は、造形容器6の造形面の上を層敷き詰め方向に案内されるコータ要素9を備えている。ディスペンス容器10を備えたディスペンス機構は、塗布装置7に造形材料3を供給する働きをする。
【0027】
プロセスチャンバー5の上では、造形材料3の層を照射するための照射装置12が設けられており、この照射装置12は、複数のスキャナーミラーを介した偏向により、それ自体で既知の様式で、レーザビーム15を造形材料3の硬化すべき位置に偏向させ得るレーザ13及びスキャナー機構14を含んでいる。
【0028】
造形容器6は、示した
図1に基づく例示的実施形態では独立した交換容器であり、装置1内のポジションから外部の装置(ポジション6a)内に持っていくことができる。複数の容器を設けて、これらの容器を例えば周期的に交換してもよく、これにより、このような交換容器内で製造された物体2を冷却することができる。
【0029】
造形容器6のディスペンス容器10と反対の側では、越流開口部17を有する越流容器16がさらに設けられている。ディスペンス容器10、造形容器6、及び越流容器16は、それらの開口部により、プロセスチャンバー底18の相応に寸法決定された開口部の下で固定されているか又は固定可能である。
【0030】
そして
図2では、造形容器6が、物体形状に適合した造形容器として形成されていることを示している。物体形状に適合したこの造形容器はその側壁により、物体2の外輪郭に対する間隔をできるだけ少なくしており、この間隔は数ミリメートルから数センチメートルにすることができる。物体形状適合には、コータ距離の短縮又は造形材料の節減により、かなりの費用節減がどのくらいに達し得るのかが常に重要であり、この費用節減を、物体形状に適合した造形容器6が事情によっては原因となる超過出費と比較するべきである。
【0031】
図2では、造形容器6が層敷き詰め方向「S」では比較的幅が狭く構成され、例えば造形容器6の層敷き詰め方向「S」での寸法と、それに対して直角な方向「L」での寸法との比率が、例えば1:4又は1:6であることがはっきり分かる。ここでももちろん、全面的に物体の寸法及び形状に依存して、そこから逸脱する必要があり得る。
【0032】
図2ではさらに、プロセスチャンバー底18が、物体形状に適合した造形容器6及び適
合した越流容器16を嵌め込み得る比較的大きな開口部を有していることが分かる。この開口部20は、必要ないところでは、嵌め込みプレート21によって密閉される。
【0033】
物体形状に適合した造形容器6が、ディスペンス容器10の開口部に対して最小限の間隔をとっていることもはっきりと分かり、したがってここでもまた、コータ要素9の移動距離「V」を、従来技術での明らかにより長い移動距離「V」に対して短縮することができる。総括すると、プロセスチャンバー5内での、物体形状に適合した造形容器6及び越流容器16及び/又はディスペンス容器10のポジションは、可変に選択することができる。重要なことは、容器ができるだけ近くに相並んでいるということだけである。これは
図3で分かり、そこでは、容器が
図2に比べてプロセスチャンバーの中央によりいっそうずれている。そのうえ
図3では、ディスペンス容器もその造形材料容積を減らしている。
【0034】
図5では、物体形状適合のための改変された実施形態の造形容器6が、少なくとも1つの変位可能な側壁30を有することをさらに示している。
図5aでは、側壁30が最大の造形エリアサイズを保証する位置にあり、これに対して
図5bでは、側壁30が造形容器6の内部領域に変位されており、これにより造形面ははるかに小さく、したがって造形容器6の容積も減っている。
【0035】
基本的には、造形容器を生成的造形方法によって製造し、かつ造形チャンバー壁内に、造形容器6内で製造すべき物体に特異的に適合した場所で冷却流路を取り付けることもできる。冷却流路は、物体2によって生じる特にクリティカルな領域が特に良く冷却されるように選択することができ、つまり造形容器6が物体形状に適合しているだけでなく、生成的に造形された造形容器の冷却流路の場所も物体形状に最適化されている。
【0036】
図6ではさらに、ストックされた複数の容器から、物体形状に適合した造形容器としての適切な1つの造形容器を選択するか、又は可変の容器を側壁30の変位により物体の形状に適合させる方法のフローを純粋に概略的に示している。
【0037】
(付記1)
3次元の物体(2)のそれぞれの断面に対応する位置で、放射線により硬化可能な造形材料(3)の層を相次いで硬化することによって、前記物体(2)を製造するための装置(1)であって、
−プロセスチャンバー(5)を取り囲むハウジング(4)と、
−前記ハウジング(4)内に配置された造形容器(6)と、
−前記造形容器(6)内のキャリア装置(8)又は事前に形成された層の上に前記造形材料(3)の層を塗布するための、前記造形容器(6)の造形面の上を層敷き詰め方向に案内されるコータ要素(9)を有する塗布装置(7)と、
−前記塗布装置(7)に前記造形材料(3)を供給するためのディスペンス機構と、
−集束されたエネルギービーム、特にレーザビームによって、前記物体(2)のそれぞれの断面に対応する位置で前記造形材料(3)の層を照射するための照射装置(12)と、を備える当該装置(1)であって、
−前記造形容器(6)が、独立した交換容器として又は交換モジュールの構成要素として前記装置(1)から取り出し可能である当該製造装置において、
−物体形状に適合した様々なサイズ及び/又は断面形状の造形容器(6)が、前記装置内に嵌め込み可能であり、据付最終位置では、層敷き詰め方向「S」での前記造形容器(6)の造形面寸法が、それに対して直角な方向「L」においてよりも短いことを特徴とする製造装置。
【0038】
(付記2)
プロセスチャンバー底(18)が、様々なサイズ及び/又は断面形状の造形容器(6)を収容するため、前記造形容器(6)のサイズ及び/又は断面形状に関して変更可能な又は様々な造形容器形状に適合した少なくとも1つの造形エリア開口部を備えていることを特徴とする付記1に記載の装置。
【0039】
(付記3)
物体形状に適合した前記造形容器(6)が、前記ディスペンス機構のディスペンス容器(10)の開口部に対して最小限の間隔で配置されていることを特徴とする付記1又は2に記載の装置。
【0040】
(付記4)
前記プロセスチャンバー底の、必要でない1つ又は複数の造形エリア開口部(20)が、嵌め込みプレート(21)によって密閉されていることを特徴とする付記1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【0041】
(付記5)
前記プロセスチャンバー(5)内での、物体形状に適合した前記造形容器(6)及び/又は前記越流容器(16)及び/又は前記ディスペンス容器(10)のポジションが、可変に選択され得ることを特徴とする付記1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【0042】
(付記6)
物体形状に適合した前記造形容器(6)及び前記越流容器(16)が、前記プロセスチャンバー底(18)の1つの共通の開口部(20)の下に配置されており、前記開口部(20)の一部だけを占領しており、かつ残った部分が少なくとも1つの嵌め込みプレート(21)によって覆われていることを特徴とする付記1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【0043】
(付記7)
ディスペンス容器(10)、物体形状に適合した造形容器(6)、及び越流容器(16)が、運転準備の整った配置で、交換可能なプロセスチャンバー底(18)、プロセスチャンバー底嵌め込み部、又はプロセスチャンバー底(18)を備えた交換モジュール内に固定的に配置されていることを特徴とする付記1〜6のいずれか1つに記載の装置。
【0044】
(付記8)
造形容器交換により、前記コータ要素(9)の移動距離「V」が、物体形状に適合した
前記造形容器(6)に関連した必要なコーティング長さに、又は選択された容器位置関係に、自動的に適合され得ることを特徴とする付記1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【0045】
(付記9)
物体形状に適合した造形容器(6)の側壁が、造形すべき物体(2)のうち側壁に一番近い位置からせいぜい50mm、特に20mmの間隔で配置されていることを特徴とする付記1〜8のいずれか1つに記載の装置。
【0046】
(付記10)
前記コータ要素(9)の幅及び/又は前記ディスペンス容器(10)の幅が、層敷き詰め方向「S」に対して直角な前記造形容器の寸法に適合していることを特徴とする付記1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【0047】
(付記11)
前記装置(1)内に嵌め込み可能で、物体形状に適合した前記造形容器(6)が、前記造形容器(6)内で製造すべき物体(2)の造形データに基づいて生成的造形方法によって製造されていることを特徴とする付記1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【0048】
(付記12)
前記造形容器(6)が、前記造形面の縮小又は拡大のために変位可能な少なくとも1つの側壁(30)を有しており、前記側壁(30)が、前記造形容器(6)の据付最終位置では、側面敷き詰め方向「S」を横切って配置されていることを特徴とする付記1〜11のいずれか1つに記載の装置。
【0049】
(付記13)
特許請求項1の特徴を有する装置を使用した3次元の物体の製造方法であって、以下のさらなる特徴
−製造すべき物体(2)の最大寸法を決定し、かつ前記最大寸法をメモリー装置内に記憶すること、
−様々なサイズ又は形状又は容積の複数の造形容器(6)を設け、かつ前記造形容器寸法及び/又は形状及び/又は容積をメモリー内に記憶すること、
−製造すべき前記物体(2)の前記最大寸法と、前記造形容器(6)の前記サイズ及び/又は形状との比較により、ストックされた複数の前記造形容器(6)から物体形状に適合した1つの造形容器(6)を選択すること、
−物体形状に適合した選択された前記造形容器(6)を、据付最終位置では、層敷き詰め方向「S」での物体形状に適合した前記造形容器(6)の前記造形エリア寸法が、それに対して直角な方向「L」においてよりも短いように前記装置(1)内に嵌め込むこと、
を有する製造方法。
【0050】
(付記14)
複数の前記造形容器が、交換収納庫内に用意され、かつ前記装置(1)の制御装置により、物体形状に適合した1つの造形容器(6)が選択され、かつ自動的に前記装置(1)に嵌め込まれることを特徴とする付記13に記載の方法。
【符号の説明】
【0051】
1 装置
2 物体
3 造形材料
4 ハウジング
5 プロセスチャンバー
6 造形容器
7 塗布装置
8 キャリア装置
9 コータ要素
10 ディスペンス容器
12 照射装置
13 レーザ
14 スキャナー機構
15 レーザビーム
16 越流容器
17 越流開口部
18 プロセスチャンバー底
20 開口部
21 嵌め込みプレート
30 側壁
V 移動距離
L 方向
S 層敷き詰め方向