(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されるパターン層とを備え、上記パターン層が、導電性の渦巻き状のコイルパターンと、このコイルパターンの最内周よりも内側に配設され、磁性を有するコイル芯パターンとを含む。
【0012】
当該プリント配線板は、渦巻き状のコイルパターンの内側に磁性を有するコイル芯パターンを有するため、このコイル芯パターンによって、コイルパターンの配線密度を高めずとも、従来よりも磁束密度を高めることができる。つまり、当該プリント配線板によれば、平面コイルの磁束密度を比較的低いコストで向上できる。
【0013】
上記コイル芯パターンの主成分が金属であり、上記コイル芯パターンがコイルパターンと絶縁されているとよい。このように磁性体として金属を用い、コイル芯パターンをコイルパターンと絶縁することで、コイル芯パターンをコイルパターンと同様の手順でベースフィルム上に形成することができるため、コストの低減効果を促進できる。
【0014】
また、別の本発明の一態様に係るプリント配線板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されるパターン層とを備えるプリント配線板の製造方法であって、上記ベースフィルムの一方の面側に導電性下地層を積層する導電性下地層積層工程と、この導電性下地層の一方の面にフォトレジスト膜を積層するフォトレジスト膜積層工程と、このフォトレジスト膜への露光及び現像により、渦巻き状のコイルパターンを含むパターン層の反転形状のレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、このレジストパターンの開口部の導電性下地層上へのメッキにより上記コイルパターンを形成するコイルパターン形成工程と、上記レジストパターン及びその底部の導電性下地層を除去する導電性下地層除去工程と、上記コイルパターンの最内周よりも内側に磁性を有するコイル芯パターンを形成するコイル芯パターン形成工程とを備える。
【0015】
当該プリント配線板の製造方法によれば、渦巻き状のコイルパターンの内側に磁性を有するコイル芯パターンを有するプリント配線板を得ることができる。このプリント配線版は、上記コイル芯パターンによって、コイルパターンの配線密度を高めずとも、従来よりも磁束密度を高めることができる。つまり、当該プリント配線板の製造方法によれば、比較的低いコストで平面コイルの磁束密度を向上できる。
【0016】
上記レジストパターン形成工程で形成するレジストパターンがコイル芯パターンの反転形状を含み、上記コイル芯パターン形成工程が、上記レジストパターンの開口部へのメッキによりコイル芯用金属パターンを形成するコイル芯用金属パターン形成工程と、上記コイル芯用金属パターンを熱処理により磁性化する磁性化工程とを有するとよい。このような工程により、コイル芯パターンを形成することで、コイル芯パターンをコイルパターンと同様の手順でベースフィルム上に形成することができるため、コストの低減効果を促進できる。
【0017】
なお、「渦巻き状」とは、厳密な渦巻き形状に限定されず、複数の円弧又は複数の多角形の一部が多列状に配設され、外側の円弧又は多角形の一部の一端と内側の円弧又は多角形の一部の一端とが直線又は曲線で接続された形状も含む概念である。「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば材料中50質量%以上を占める成分を指す。
【0018】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係るプリント配線板及びその製造方法の一実施形態について図面を参照しつつ詳説する。なお、本実施形態のプリント配線板における「表裏」は、プリント配線板の厚さ方向のうち、パターン層積層側を「表」、パターン層積層側と反対側を「裏」とする方向を意味し、プリント配線板の使用状態における表裏を意味するものではない。
【0019】
[プリント配線板]
図1に示す当該プリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルム1と、このベースフィルム1の一方の面側(表面側)に積層されるパターン層2とを主に備える。また、パターン層2は、渦巻き状のコイルパターン2aと、このコイルパターン2aの最内周よりも内側に配設され、磁性を有するコイル芯パターン2bとを含む。また、当該プリント配線板は、ベースフィルム1及びパターン層2の表面に積層されるカバーレイ(図示せず)を備える。
【0020】
<ベースフィルム>
ベースフィルム1は、電気絶縁性を有する合成樹脂製の層である。また、ベースフィルム1は、パターン層2を形成するための基材でもある。ベースフィルム1は可撓性を有してもよく、この場合、当該プリント配線板はフレキシブルプリント配線板として用いられる。
【0021】
ベースフィルム1の材質としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、シート状に形成された低誘電率の合成樹脂フィルムを採用できる。この合成樹脂フィルムの主成分としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0022】
ベースフィルム1の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。また、ベースフィルム1の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、40μmがより好ましい。ベースフィルム1の平均厚さが上記下限未満である場合、ベースフィルム1の絶縁強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム1の平均厚さが上記上限を超える場合、当該プリント配線板が無用に厚くなるおそれがある。
【0023】
<パターン層>
パターン層2は、導電性を有する材料からなる層であり、ベースフィルム1の表面に積層される。パターン層2は、上述のコイルパターン2a及びコイル芯パターン2bを主に有する。また、パターン層2は、コイル芯パターン2a及び芯パターン2b以外の例えばランド部等のパターンを含んでもよい。なお、パターン層2は、ベースフィルム1の表面に直接積層されてもよいし、接着剤層を介して積層されてもよい。
【0024】
(コイルパターン)
上記コイルパターン2aは渦巻き状である。コイルパターン2aの外形(最外周の配線が形成する形状)は、特に限定されず、正方形状、長方形状等の矩形状、正円状、楕円状等の円状などとすることができる。
【0025】
コイルパターン2aの材質(主成分)としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、電気抵抗が小さいものが好ましい。コイルパターン2aは、例えば銅、銀等によって形成することができる。コイルパターン2aは、金、銀、錫、ニッケル等でメッキされてもよい。
【0026】
また、
図1に示すように、コイルパターン2aは、渦巻き状パターンの最内周の配線の端部に配設される第一接続端子2cと、渦巻き状パターンの最外周の配線の端部に配設される第二接続端子2dとを有する。これらの端子は、ビアホールやリード線等の導体で他の配線や機器に接続される。なお、これらの端子は必須の構成要件ではなく、コイルパターン2aの形状や他の配線との位置関係等によっては省略が可能である。
【0027】
コイルパターン2aの平均厚さの下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましい。また、コイルパターン2aの平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、80μmがより好ましい。コイルパターン2aの平均厚さが上記下限未満である場合、内部抵抗が大きくなり損失が過大となるおそれがあると共に、強度が不足してコイルパターン2aが断裂しやすくなるおそれがある。また、コイルパターン2aの平均厚さが上記上限を超える場合、当該プリント配線板が無用に厚くなるおそれがある。
【0028】
コイルパターン2aにおける配線の平均幅の下限としては、0.03mmが好ましく、0.2mmがより好ましい。また、コイルパターン2aにおける配線の平均幅の上限としては、1.5mmが好ましく、1.25mmがより好ましい。コイルパターン2aにおける配線の平均幅が上記下限未満である場合、コイルパターン2aの機械的強度が不足し、破断するおそれがある。一方、コイルパターン2aにおける配線の平均幅が上記上限を超える場合、当該プリント配線板が無用に大きくなるおそれがある。なお、コイルパターン2aにおける配線の幅は一定とすることが好ましい。
【0029】
コイルパターン2aにおける配線間の間隔としては、特に限定されないが、例えば0.02mm以上4.5mm以下とすることができる。
【0030】
(コイル芯パターン)
コイル芯パターン2bは、
図1に示すようにコイルパターン2aの最内周よりも内側に配設されるベタパターンである。
【0031】
コイル芯パターン2bは、磁性を有する。つまり、コイル芯パターン2bは磁性体を含む。この磁性体としては、常磁性又は強磁性を有するものであれば特に限定されず、金属、金属化合物等を用いることができる。主成分として金属を含むコイル芯パターン2bを用いることで、後述するようにコイル芯パターン2bの形成を比較的容易に行うことができる。この金属としては、例えばニッケル、鉄、クロム等が用いられる。
【0032】
コイル芯パターン2bは、導電性を有してもよいが、導電性を有する場合はコイルパターン2aや他の配線と導通しないように絶縁する必要がある。
【0033】
コイル芯パターン2bの平面形状は、コイルパターン2aの最内周の配線で囲まれる領域(以下、「コイル内側領域」ともいう)に形成可能な形状であれば、特に限定されないが、磁束密度の向上効果を促進する観点から、可能な限り面積を大きくすることが好ましい。つまり、コイル芯パターン2bの外縁がコイル内側領域の外縁に沿う形状が好ましい。ただし、上述のようにコイル芯パターン2bが導電性を有する場合は、コイルパターン2aと離間する必要がある。なお、コイル芯パターン2bは複数のブロックに分割されていてもよい。
【0034】
コイル芯パターン2bの平均厚さの下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましい。また、コイル芯パターン2bの平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、80μmがより好ましい。コイル芯パターン2bの平均厚さが上記下限未満である場合、磁束密度向上効果が不十分となるおそれがある。また、コイル芯パターン2bの平均厚さが上記上限を超える場合、当該プリント配線板が無用に厚くなるおそれがある。
【0035】
上記コイル内側領域におけるコイル芯パターン2bの占有面積率の下限としては、50%が好ましく、80%が好ましく、95%がより好ましい。なお、上記専有面積率の上限は、100%であるが、コイル芯パターン2bが導電性を有する場合は、99%が好ましく、98%がより好ましい。
【0036】
コイル芯パターン2bが導電性を有する場合、上記コイル内側領域におけるコイル芯パターン2bとコイルパターン2aとの最小距離の下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記最小距離が上記下限より小さいと、コイルパターン2aとコイル芯パターン2bとが導通するおそれがある。
【0037】
なお、コイル芯パターン2bは、多層構造であってもよく、その一部が磁性を有しない層(例えば銅箔層)であってもよい。
【0038】
<カバーレイ>
カバーレイは、当該プリント配線板において主にパターン層2を保護するものである。このカバーレイは、カバーフィルムと接着層とを有する。
【0039】
(カバーフィルム)
カバーフィルムは、絶縁性を有する。カバーフィルムの主成分としては、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。耐熱性の観点からはこれらの中でもポリイミドが好ましいが、カバーフィルムは高誘電材料を主成分とすることが好ましい。また、このカバーフィルムは、主成分以外の他の樹脂、耐候剤、帯電防止剤等を含有してもよい。
【0040】
カバーフィルムの平均厚さの下限としては、特に限定されないが、3μmが好ましく、10μmがより好ましい。また、カバーフィルムの平均厚さの上限としては、特に限定されないが、500μmが好ましく、150μmがより好ましい。カバーフィルムの平均厚さが上記下限未満である場合、パターン層2等の保護が不十分となるおそれがあると共に、絶縁性が不十分となるおそれがある。一方、カバーフィルムの平均厚さが上記上限を超える場合、パターン層2等の保護効果の上積みが少なくなるおそれがある。
【0041】
(接着層)
カバーレイの接着層を構成する接着剤としては、特に限定されるものではないが、柔軟性や耐熱性に優れたものが好ましい。かかる接着剤としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミドイミド等の各種の樹脂系接着剤が挙げられる。
【0042】
接着層の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。また、接着層の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、40μmがより好ましい。接着層の平均厚さが上記下限未満である場合、カバーレイのパターン層2及びベースフィルム1に対する接着強度が不十分となるおそれがある。一方、接着層の平均厚さが上記上限を超える場合、当該プリント配線板が無用に厚くなるおそれある。
【0043】
[プリント配線板の製造方法]
当該プリント配線板の製造方法は、ベースフィルムの一方の面側に導電性下地層を積層する導電性下地層積層工程と、この導電性下地層の一方の面にフォトレジスト膜を積層するフォトレジスト膜積層工程と、このフォトレジスト膜への露光及び現像により、渦巻き状のコイルパターンを含むパターン層の反転形状のレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、このレジストパターンの開口部の導電性下地層上へのメッキにより上記コイルパターンを形成するコイルパターン形成工程と、上記レジストパターン及びその底部の導電性下地層を除去する導電性下地層除去工程と、上記コイルパターンの最内周よりも内側に磁性を有するコイル芯パターンを形成するコイル芯パターン形成工程と、ベースフィルム及びパターン層の一方の面側にカバーレイを積層するカバーレイ積層工程とを主に備える。当該プリント配線板の製造方法は、いわゆるセミアディティブ法を用いたものである。
【0044】
<導電性下地層積層工程>
導電性下地層積層工程では、
図2Aに示すようにベースフィルム1の表面側に、パターン層の下地となる導電性下地層Sを積層する。この導電性下地層Sの材質(主成分)としては、銅、銀、ニッケル、パラジウム等の公知の材質を用いることができ、これらの中で銅が好ましい。また、導電性下地層Sの積層方法は公知の方法を用いることができ、例えば無電解メッキ、スパッタリング、蒸着法、導電性微粒子分散液の塗布等の方法が挙げられる。
【0045】
上記導電性下地層Sの平均厚みの下限としては、5nmが好ましく、10nmがより好ましい。一方、上記平均厚みの上限としては、0.2μmが好ましく、0.1μmがより好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、後述の除去工程において導電性下地層Sが十分に除去されないおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満の場合、導電性下地層Sの表面にコイルパターンが形成され難くなるおそれがある。
【0046】
<フォトレジスト膜積層工程>
フォトレジスト膜積層工程では、導電性下地層Sの表面にフォトレジスト膜を積層する。フォトレジスト膜の積層方法としては、例えば感光することにより高分子の結合が強化されて現像液に対する溶解性が低下するネガ型レジスト組成物、又は感光することにより高分子の結合が弱化されて現像液に対する溶解性が増大するポジ型レジスト組成物を導電性下地層Sの表面に塗工する方法、これらの組成物を含むドライフィルムレジストを導電性下地層Sの表面に積層する方法等が挙げられる。
【0047】
<レジストパターン形成工程>
レジストパターン形成工程では、フォトレジスト膜を露光及び現像しコイルパターンを含むパターン層の反転形状のレジストパターンを形成する。具体的には、ネガ型レジスト生成物を用いた場合、フォトレジスト膜にマスクを積層し、フォトレジスト膜のパターン層の存在部分以外の部分のみを露光する。その後、未露光部を有機溶媒等により除去することで上記レジストパターンを形成する。
【0048】
<コイルパターン形成工程>
コイルパターン形成工程では、
図2Bに示すように形成した上記レジストパターンRの開口部の導電性下地層S上へのメッキによりコイルパターン2aを形成する。
【0049】
レジストパターンRの開口部に充填されるメッキとしては、電気メッキ又は無電解メッキが挙げられ、電気メッキが好ましい。電気メッキを用いることで、コイルパターン2aを容易かつ確実に形成できる。メッキ時の温度、時間等は用いるメッキの種類に応じて適宜変更可能である。
【0050】
<導電性下地層除去工程>
導電性下地層除去工程では、
図2Cに示すようにコイルパターン2a形成後にレジストパターン及びその底部の導電性下地層を除去する。
【0051】
レジストパターンの除去は、レジストパターンを導電性下地層から剥離することで行われる。具体的には、
図2Bに示すレジストパターンR、コイルパターン2a、導電性下地層S及びベースフィルム1を有する積層体を剥離液に浸漬させることで、レジストパターンを剥離液により膨張させる。これにより、レジストパターンと導電性下地層Sとの間に反発力が生じ、レジストパターンが導電性下地層Sから剥離する。この剥離液としては公知のものを用いることができる。
【0052】
レジストパターン底部の導電性下地層の除去は、レジストパターン剥離後に露出する導電性下地層をコイルパターン2aをマスクとしたエッチングにより除去する。これにより、コイルパターン2aにおける配線が電気的に分離される。このエッチングには導電性下地層を形成する金属を浸食するエッチング液が使用される。このため、コイルパターン2aもエッチング液による浸食を受け得るが、コイルパターン2a全体の厚みは導電性下地層に比べて十分に大きいためエッチングの影響を無視できる。
【0053】
なお、上記導電性下地層除去工程後に配線を太らせる二次メッキを行ってもよい。
【0054】
<コイル芯パターン形成工程>
コイル芯パターン形成工程では、
図2Dに示すようにコイルパターン2aの最内周よりも内側に磁性を有するコイル芯パターン2bを形成する。
【0055】
コイル芯パターン2bの形成方法は特に限定されず、例えばコイル芯パターン2bを形成する磁性体ブロックをコイル内側領域に接着剤等により積層する方法を用いることができる。ただし、生産性の観点からは、次の方法を用いることが好ましい。
【0056】
つまり、コイル芯パターン形成工程は、レジストパターンの開口部へのメッキによりコイル芯用金属パターンを形成するコイル芯用金属パターン形成工程と、上記コイル芯用金属パターンを熱処理により磁性化する磁性化工程とを有するとよい。
【0057】
具体的には、まず上記レジストパターン形成工程において、
図3に示すように、コイルパターンの反転形状に加え、コイル芯パターンの反転形状も含むレジストパターンRを形成する。その後、上記導電性下地層除去工程よりも前に、つまりレジストパターンRを除去する前に、以下の工程を含むコイル芯パターン形成工程を行う。
【0058】
(コイル芯用金属パターン形成工程)
コイル芯用金属パターン形成工程では、
図3のレジストパターンRのコイル芯パターンの反転形状の開口部にメッキを行ってコイル芯パターンと同形状のコイル芯用金属パターンを形成する。なお、このメッキは、上記コイルパターン形成工程のメッキと同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
【0059】
(磁性化工程)
磁性化工程では、上記メッキにより得られたコイル芯用金属パターンを熱処理して磁性化することで、コイル芯パターン2bを形成する。コイル芯パターン2b形成後、上記導電性下地層除去工程を行う。なお、導電性下地層除去工程の後に磁性化工程を行ってもよい。
【0060】
上記熱処理温度の下限としては、100℃が好ましく、150℃がより好ましい。一方、上記熱処理温度の上限としては、350℃が好ましく、300℃がより好ましい。また、上記熱処理時間の下限としては、0.25時間が好ましく、0.5時間がより好ましい。一方、上記熱処理時間の上限としては、24時間が好ましく、12時間がより好ましい。上記熱処理温度又は時間が上記下限より小さいと、磁性化が不十分となるおそれがある。逆に、上記熱処理温度及び時間が上記上限を超えると、カバーレイ等が熱劣化する恐れや生産コストが過大となるおそれがある。
【0061】
上述の方法では、一つのレジストパターンを用いてコイルパターンとコイル芯パターンとをメッキで形成することができるので、製造性に優れる。なお、上述の方法で形成したコイル芯パターンは、導電性下地層の表面にコイル芯用金属パターンを積層したものであるため、ベースフィルム側に導電性下地層を含む。コイル芯パターン全体の厚みは導電性下地層に比べて十分に大きいため、この導電性下地層は磁性化されていてもされていなくてもよい。
【0062】
なお、コイル芯パターンをコイルパターンよりも先に形成してもよい。つまり、コイル芯パターン形成工程後にコイルパターン形成工程を行ってもよい。
【0063】
<カバーレイ積層工程>
カバーレイ積層工程において、ベースフィルム及びパターン層の表面にカバーレイを積層する。具体的には、カバーレイは、ベースフィルム及びパターン層の表面に接着層を介してカバーフィルムを貼着することで積層できる。
【0064】
<利点>
当該プリント配線板は、渦巻き状のコイルパターンの内側に磁性を有するコイル芯パターンを有するため、このコイル芯パターンによって、コイルパターンの配線密度を高めずとも、従来よりも磁束密度を高めることができる。つまり、当該プリント配線板及びその製造方法によれば、平面コイルの磁束密度を比較的低いコストで向上できる。
【0065】
当該プリント配線板は、磁束密度を高めることができるので、小型機器用のアクチュエータ、アンテナ、トランス等として好適に用いることができる。
【0066】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0067】
上記実施形態では、単一のベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面に積層される1層のパターン層を有するプリント配線板について説明したが、単一のベースフィルムの両面にパターン層が積層したものも本発明の意図する範囲内である。さらに、当該プリント配線板は、複数のベースフィルムを有し、各ベースフィルムが一方の面又は両面にパターン層を有する多層プリント配線板であってもよい。
【0068】
また、コイルパターンの周囲(最外周の配線の外側)に磁性を有するベタパターンをさらに配設してもよい。これにより、磁束密度をさらに高めることができる。
【0069】
なお、当該プリント配線板のコイルパターンは、サブトラクティブ法で形成してもよく、銅、銀、ニッケル等の金属を配合したペースト、インキ等で印刷して形成してもよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
まず、内径2mm、外径2.703mm、巻き数11、配線の平均幅24μm、配線の平均間隔8μmのコイルパターンのインダクタンスをシミュレーションにより求めたところ、0.496μHであった。次に、このコイルパターンの最内周よりも内側に、Niを主成分とし、比透磁率が1.5のコイル芯パターンを形成したパターン層のインダクタンスを同様に求めたところ、0.744μHとなり、このコイル芯パターンによりインダクタンス(磁束密度)が向上することが示された。