【実施例1】
【0018】
[保護構造体]
<1>全体の構成(
図1)。
本発明の保護構造体1は、海底ケーブルやパイプライン等、水底に沿って敷設される線状設備Aを被覆して保護する構造体である。ここで「保護する」とは、線状設備Aを覆って水中の漂流物や水底の転動物による衝突から守ることの他、線状設備Aを水底に係留して水流による移動を防ぐこと、線状設備Aの下方が水流によって洗掘されるのを防ぐこと等を含む。
保護構造体1は、長尺かつ扁平な六面体からなる布団篭10と、布団篭10内に充填した中詰材20と、を少なくとも備える。
保護構造体1は、布団篭10内を長手方向に仕切ることで、布団篭10の内部に、連続する3つ以上のセルCを構成する。
複数のセルCは、布団篭10の長手方向両側の係留セルCbと、係留セルCbに挟まれた保護セルCaと、の組合せからなる。
本例では保護構造体1のサイズを、長さ6m×幅2m×高さ0.6mとする。
【0019】
<2>布団篭。
布団篭10は、内部に中詰材20を収容する函体である。
布団篭10は、篭本体11を少なくとも備え、本例では、更に篭本体11内の保護セルCa内に付設した内貼材12を備える。
内貼材12の網目寸法は、篭本体11の網目寸法より小さい。
本例では、篭本体11の菱形金網の網目寸法が150mm、内貼材12のジオグリッドの網目寸法が1辺30mmである。
ここで菱形金網の網目寸法とは、列線で囲まれた空間四辺形の一辺の長さを意味し、ジオグリッドの網目寸法とは、目合いではなくストランドで囲まれた空間四辺形の一辺の長さを意味する。
【0020】
<2.1>篭本体(
図2)。
篭本体11は、金網からなる函体である。
篭本体11は、複数の側面網11aと、底面網11bと、蓋面網11cと、を長尺の函状に組んでなる。篭本体11の内部は、仕切網11dによって長手方向に仕切り、内部に複数のセルCを構成する。
本例では、側面網11a、底面網11b、蓋面網11c、及び仕切網11dがそれぞれ、矩形の枠線の内側に菱形金網を展設してなる、金網パネルである。
ただし、側面網11aは必ずしも独立の部材である必要はなく、例えば篭本体11の幅方向両側の2枚の側面網11aを、底面網11bに対して折り畳み可能に連結した3面一体構造としてもよい。また、例えば長辺側の側面網11aを1枚ではなく複数枚の側面網11aを連結して構成してもよい。
本例では、各枠線及び菱形金網の素材として、亜鉛アルミ合金めっき鋼線をポリエチレンアイオノマー樹脂で被覆した線材(IR被覆めっき鋼線)を採用する。
ただし、枠線等の素材はこれに限らず、例えば亜鉛アルミ合金めっき鉄線、亜鉛めっき鉄線等であってもよい。
【0021】
<2.1.1>篭本体の寸法。
篭本体11の寸法は、長さL、幅W、及び高さHが、[L≧3W]かつ[W≧3H]の関係を満たすことが望ましい。
本例では篭本体11のサイズが、長さ6m×幅2m×高さ0.6mであるから、[L=3W]かつ[W=3.3H]である。
以上のような長尺で扁平な寸法とすることで、柔軟性、線状設備Aの外周への追従性、荷重分散効果等の効果を発揮することができる。また、1ユニット当たりの敷設面積が広くなるため、従来技術に比べてm
2当たりの材料コスト及び施工コストが安価となる。
【0022】
<2.2>内貼材。
内貼材12は、細粒材22の流失を防ぐための面材である。
内貼材12は、保護セルCa内の、少なくとも側面網11a、底面網11b、及び仕切網11dの内側に付設する。本例では、蓋面網11cにも内貼材12を付設する。
本例では内貼材12の材料として、樹脂製のジオグリッドを採用する。
ジオグリッドとは、引張抵抗のある構成要素を格子状に連結してシート状に構成してなる土木資材である。ジオグリッドは、高い強度、優れたクリープ特性、耐候性、耐衝撃性、耐摩擦性等を兼ね備えた部材である。
本例ではジオグリッドとして、高強度ポリエステル樹脂(PET)製の繊維からなる芯材を、ポリプロピレン樹脂(PP)で被覆することで格子状に構成した製品を採用する。このような製品として、例えば岡三リビック株式会社製の『TRIGRID(登録商標)』等がある。
以上のように、内貼材12の材料はジオグリッドが最適であるが、これに限られず、例えば篭本体11の網目寸法より網目寸法が小さい溶接金網等からなってもよい。
【0023】
<2.3>連結材。
連結材13は、篭本体11の側面網11a、底面網11b、蓋面網11c、及び仕切網11dを相互に連結する部材である。
本例では、連結材13として硬鋼線をコイル状に巻いてなる連結コイルを採用する。
例えば、隣接する2枚の側面網11aの縦線材に連結コイルを巻き付けることで、2枚の側面網11aを簡易かつ確実に連結することができる。
なお、連結材13はコイル材に限られず、番線やクリップなど他の公知の連結手段であってもよい。
【0024】
<2.4>拘束線材。
拘束線材14は、篭本体11の対向する2面の金網を拘束する部材である。
詳細には、対向する2面の側面網11a、又は対向する側面網11aと仕切網11dの間を、複数の拘束線材14で相互に連結する。
篭本体11の対向する2面の金網を拘束線材14で相互に拘束することによって、中詰材20の充填による側面網11aの孕み出しを防ぐことができる。
本例では、拘束線材14として、両端に側面網11a等の網目に掛止する鉤状部を備えたIR被覆めっき鋼線を採用する。
ただし拘束線材14はこれに限らず、例えば繊維製ロープ、ワイヤロープ等であってもよい。要は所定の強度及び耐候性を備えた素材からなり、対向する2面の金網間を拘束して補強可能な構成であればよい。
【0025】
<2.4.1>拘束線材の配置(
図3)。
本例では、保護セルCa内と、係留セルCb内とで、拘束線材14の配置を変える(なお、
図3では、説明の便宜上、底面網11b、蓋面網11c、内貼材12、及び中詰材20を省略して表示している)。
詳細には、係留セルCb内では、2本の拘束線材14によって、篭本体11の幅方向の2枚の側面網11a同士、及び長手方向の側面網11aと仕切網11dとを連結する。すなわち拘束線材14を平面視略十字型に配設する。
一方、保護セルCa内では、1本の拘束線材14によって、篭本体11の幅方向の2枚の側面網11a同士を連結する。すなわち、拘束線材14は幅方向にのみ配設し、長手方向には配設しない。
このように、保護セルCa内の長手方向に拘束線材14を配設しないことで、保護セルCaが篭本体11の長手方向に湾曲しやすくなり、線状設備Aの外形への追従が容易になる。
【0026】
<3>中詰材。
中詰材20は、布団篭10内に充填する塊状又は粒状の部材である。
中詰材20は、粗粒材21と、粗粒材21より粒径の小さい細粒材22と、の組合せからなる。
ここで、「粒径が小さい」とは、粗粒材21と細粒材22がそれぞれの粒度範囲を有し、少なくとも細粒材22の粒度範囲の下限が、粗粒材21の粒度範囲の下限より小さいことを意味する。
【0027】
<3.1>粗粒材。
粗粒材21は、篭本体11のセルC内に充填する中詰材20である。
本例では粗粒材21として、粒径200mmの割栗石を採用する。
粗粒材21の粒径はこれに限らず、細粒材22より粒径が大きく、かつ篭本体11の金網の目合より大きな粒度範囲内にあればよいが、粒径100mm〜300mmの範囲にあるとより好適である。
また、粗粒材21の種類は割栗石に限らず、単粒度砕石、岩砕、コンクリート塊やレンガ塊などの再生砕石等であってもよい。
篭本体11の幅方向両側のセルC内に充填した粗粒材21によって、係留セルCbを構成する。
係留セルCbは、粒径の大きい粗粒材21によって粗粒材21内に大きな空隙を確保できるため、水中の波力エネルギーを粗粒材21間で順次分散させて吸収することで、周辺の洗掘を起こさない水準まで低減させることができる。
また、係留セルCbは、粗粒材21の空隙率が高いため、粗粒材21の空隙を魚介類の生息空間として利用することで、漁礁機能を発揮することもできる。
【0028】
<3.2>細粒材。
細粒材22は、内貼材12内に充填する中詰材20である。
本例では細粒材22として、粒径50mmの砕石を採用する。
細粒材22の粒径はこれに限らず、粗粒材21より粒径が小さく、かつ内貼材12のジオグリッドの目合より大きな粒度範囲内にあればよいが、粒径20mm〜100mmの範囲にあるとより好適である。
これは、20mmより細粒化すると捕獲する金網のコストや強度面から非合理であり、かつ100mmより粗粒化すると、細粒材22同士の噛み合わせ力が強くなり重機ではなく手詰め作業が必要となるためである。
また、細粒材22の種類は砕石に限らず、割栗石、玉石、再生砕石等であってもよい。
係留セルCbに挟まれたセルC内に充填した細粒材22によって、保護セルCaを構成する。
保護セルCaは、底面網11b下部の砂が水流によって海底から吸引される際に、水のみを排出して、砂を細粒材22の隙間の小さな空隙内に捕捉することで、砂の吸出しを防止することができる。
【0029】
<4>保護構造体の使用方法(
図4)。
保護構造体1の使用方法について、海底に風力発電設備の送電ケーブルが敷設されている例を説明する。
陸上の仮置き場に設置した保護構造体1を、起重機船のクレーンによって吊り上げて海上輸送し、設置場所で海中に吊り込む。
続いて、保護構造体1の長手方向を線状設備Aと直交する方向に向け、保護セルCaが線状設備Aの上部を覆うように海底へ吊り下ろす。
すると、細粒材22を充填した保護セルCaが線状設備Aの外形に追従変形して線状設備Aを面状に抑えると共に、両側の係留セルCbが海底に直接設置される。この際、係留セルCb内の粗粒材21が、底面網11bの網目を通して海底の砂に噛み込むことで、線状設備Aを確実に係留することができる。
保護構造体1は、潮流の影響を受けにくく海底への接触面積が大きい長尺扁平な形状からなるため、線状設備Aを長期間安定的に保護することができる。
また、線状設備Aを跨いで両側で係留する構造であるため、線状設備A上にかかる荷重が少なく、線状設備Aに変形や損傷を与えにくい。