特許第6897956号(P6897956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897956
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/28 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   C02F3/28 A
   C02F3/28 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-63483(P2017-63483)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-164888(P2018-164888A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(72)【発明者】
【氏名】野口 真人
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−179283(JP,A)
【文献】 特開平02−174994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃水を生物処理するための水処理装置であって、
前記有機性廃水中の界面活性剤の濃度を測定する界面活性剤濃度測定部と、
前記界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムであり、
前記界面活性剤濃度測定部により界面活性剤の濃度を測定した有機性廃水に希釈水を投入し、前記有機性廃水の界面活性剤の濃度を400mg/L以下に希釈する希釈手段と、
前記希釈手段により希釈された有機性廃水を、メタン生成菌により生物処理する生物処理部と、
を備えたことを特徴とする、水処理装置。
【請求項2】
前記希釈水は、前記生物処理部で処理された又は処理中の処理水であることを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
有機性廃水を生物処理するための水処理方法であって、
前記有機性廃水中の界面活性剤の濃度を測定する界面活性剤濃度測定工程と、
前記界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムであり、
前記界面活性剤濃度測定工程により界面活性剤の濃度を測定した有機性廃水に希釈水を投入し、前記有機性廃水の界面活性剤の濃度を400mg/L以下に希釈する希釈工程と、
前記希釈工程により希釈された有機性廃水を、メタン生成菌により生物処理する生物処理工程と、
を備えたことを特徴とする、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤を高濃度で含有する有機性廃水を生物処理するための水処理装置に関するものである。更に詳しくは、本発明は、界面活性剤を高濃度で含有する有機性廃水を希釈水で希釈し、界面活性剤の濃度を低下した有機性廃水を生物処理する水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機性廃水の微生物処理では、有機物を細胞内に蓄積した微生物が余剰汚泥として発生する。余剰汚泥の処理方法としては、界面活性剤により細胞を破壊し、細胞内の有機物が流出した菌体廃液として処理されることがある。このような菌体廃液には、界面活性剤が高濃度で含有しており、界面活性剤がメタン発酵を阻害するという問題がある。
【0003】
近年、廃棄物からのエネルギーの回収や廃棄物量の軽減の観点から、このような界面活性剤を高濃度で含有する有機性廃水をメタン発酵する方法が開発されている。例えば、特許文献1には、メタン発酵工程を行う前に、菌体廃液にカルシウム塩を添加して界面活性剤を凝集させる凝集工程を備えた処理方法が開示されている。この方法では、界面活性剤を凝集させることで、メタン発酵工程を良好に進行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−184388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の生物処理方法では、カルシウム塩を添加することにより界面活性剤を凝集させ、除去することにより生物処理を行う。しかし、この方法では、界面活性剤を含む残渣が発生するという別の問題も生じる。
そこで、本発明の課題は、界面活性剤を高濃度で含有する有機性廃水を生物処理する水処理装置において、界面活性剤の除去工程による残渣を生じることなく、生物処理することが可能な水処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、界面活性剤を高濃度で含有する有機性廃水を希釈し、界面活性剤の濃度を400mg/L以下とすることにより、微生物の活性度が急激に高まり、処理水中の化学的酸素要求量(COD)の除去率が向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の水処理装置及び水処理方法である。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の水処理装置は、有機性廃水を生物処理するための水処理装置であって、前記有機性廃水中の界面活性剤の濃度を測定する界面活性剤濃度測定部と、前記界面活性剤濃度測定部により界面活性剤の濃度を測定した有機性廃水に希釈水を投入し、前記有機性廃水の界面活性剤の濃度を400mg/L以下に希釈する希釈手段と、前記希釈手段により希釈された有機性廃水を、微生物により生物処理する生物処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この水処理装置によれば、界面活性剤濃度測定部及び希釈手段を具備するため、界面活性剤濃度測定部において有機性廃水の界面活性剤の濃度を測定し、界面活性剤の濃度が400mg/Lを超える場合には、希釈手段により界面活性剤の濃度を400mg/L以下に希釈することができる。そして、界面活性剤の濃度を400mg/L以下に希釈した有機性廃水を生物処理することにより、微生物の活性度が急激に高まり、処理水中の化学的酸素要求量(COD)の除去率が向上するという効果を奏する。
【0009】
更に、本発明の水処理装置の一実施態様としては、界面活性剤は、陰イオン界面活性剤であることを特徴とする。
陰イオン界面活性剤は、微生物を失活させる作用が強いことから、界面活性剤として陰イオン界面活性剤を高濃度で含む有機性廃水において、本発明の希釈により微生物の活性度を高めるという作用効果をより発揮することができる。
【0010】
更に、本発明の水処理装置の一実施態様としては、希釈水は、生物処理部で処理された又は処理中の処理水であることを特徴とする。
この特徴によれば、有機性廃水を希釈する際に、上水等の利用を低減することができるため、処理コストを低減することができる。
【0011】
また、上記課題を解決するための本発明の水処理方法は、有機性廃水を生物処理するための水処理方法であって、前記有機性廃水中の界面活性剤の濃度を測定する界面活性剤濃度測定工程と、前記界面活性剤濃度測定工程により界面活性剤の濃度を測定した有機性廃水に希釈水を投入し、前記有機性廃水の界面活性剤の濃度を400mg/L以下に希釈する希釈工程と、前記希釈工程により希釈された有機性廃水を、微生物により生物処理する生物処理工程と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この水処理方法によれば、上述した水処理装置と同様、界面活性剤濃度測定工程において有機性廃水の界面活性剤の濃度を測定し、界面活性剤の濃度が400mg/Lを超える場合には、希釈工程により界面活性剤の濃度を400mg/L以下に希釈することができる。そして、界面活性剤の濃度を400mg/L以下に希釈した有機性廃水を生物処理することにより、微生物の活性度が急激に高まり、処理水中の化学的酸素要求量(COD)の除去率が向上するという効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、界面活性剤を高濃度で含有する有機性廃水を生物処理する水処理装置において、界面活性剤の除去工程による残渣を生じることなく、生物処理することが可能な水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一の実施態様の水処理装置の構成を示す概略説明図である。
図2】ラウリル硫酸ナトリウム濃度とメタン生成菌の活性度の関係を表すグラフである。
図3】ラウリル硫酸ナトリウム濃度と化学的酸素要求量(CODCr)の除去率の関係を表すグラフである。
図4】本発明の第二の実施態様の水処理装置の構成を示す概略説明図である。
図5】本発明の第三の実施態様の水処理装置の構成を示す概略説明図である。
図6】本発明の第四の実施態様の水処理装置の構成を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の水処理装置について説明する。なお、本発明の水処理装置についての説明は、これに対応する水処理方法も開示するものとする。
【0016】
本発明の水処理装置は、被処理水として、界面活性剤を高濃度で含有する有機性廃水に使用されるものである。有機性廃水の界面活性剤の濃度は、特に制限されないが、好ましくは200mg/Lを超える有機性廃水であり、より好ましくは300mg/Lを超える有機性廃水であり、特に好ましくは400mg/Lを超える有機性廃水である。
【0017】
被処理水としては、界面活性剤を高濃度で含有している有機性廃水であれば、どのようなものを使用してもよく、例えば、余剰汚泥を界面活性剤で処理した菌体廃液や、製紙工場、繊維工場、化学工場、食品工場等の工場排水や、洗剤等を含有する生活排水などが挙げられる。
【0018】
有機性廃水に含まれる界面活性剤の種類は、嫌気処理部における微生物の生育を阻害するものであり、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤のいずれでもよい。
【0019】
陰イオン界面活性剤としては、具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POE(3)ミリスチルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等のN−アシルメチルタウリン塩、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸等のN−アシルグルタミン酸塩、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のN−アシルメチルアラニン塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩、ステアロイル乳酸ナトリウム等のアシル乳酸塩、ヤシ油脂肪酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩等が挙げられる。なお、POEは、ポリオキシエチレンの略であり、カッコ内の数字は付加モル数を示す。
【0020】
陽イオン界面活性剤としては、具体的には、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム等のアルキル4級アンモニウム塩、ジメチルステアリルアミン、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド等のアミン塩等が挙げられる。
【0021】
両性界面活性剤としては、具体的には、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、ラルリルアミノプロピオン酸ナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
非イオン界面活性剤としては、具体的には、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0023】
嫌気性微生物の阻害活性が高いという観点から、好ましくは陰イオン界面活性剤であり、より好ましくはアルキル硫酸エステル塩であり、特に好ましくはラウリル硫酸ナトリウムである。
【0024】
本発明の水処理装置は、有機性廃水を生物処理するための水処理装置であって、有機性廃水中の界面活性剤の濃度を測定する界面活性剤濃度測定部と、界面活性剤濃度測定部により界面活性剤の濃度を測定した有機性廃水に希釈水を投入し、有機性廃水の界面活性剤の濃度を400mg/L以下に希釈する希釈手段と、希釈手段により希釈された有機性廃水を、微生物により生物処理する生物処理部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0025】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施形態は、本発明を限定するものではない。
[第一の実施態様]
図1は、本発明の第一の実施態様の水処理装置1Aの構造を示す概略説明図である。水処理装置1Aは、嫌気性微生物により被処理水W0を嫌気処理するための嫌気性処理装置であり、酸生成槽2及び反応槽3を備えている。被処理水W0は、界面活性剤を高濃度で含有する有機性廃水を用いる。酸生成槽2は、酸生成菌により、糖、蛋白質又は油分などの固体や高分子有機物から低級脂肪酸を生成するための槽である。反応槽3は、本発明の生物処理部に相当する構成であり、メタン生成菌により、低級脂肪酸からメタンを生成するための槽である。なお、酸生成槽2、反応槽3のいずれも嫌気状態である。
【0026】
図1に示すように、酸生成槽2の上部には、被処理水W0を供給するための配管L0が設けられ、底部には、酸生成処理された酸生成処理水W1を流出するための配管L1が設けられている。配管L1は、反応槽3の底部に連結されており、酸生成槽2から流出した酸生成処理水W1を反応槽3に供給する。酸生成処理水W1は反応槽3の底部から上方向に向かって供給され、反応槽3の内部に上向流を形成している。反応槽3には、グラニュール汚泥が保持されており、この上向流によりグラニュール汚泥と酸生成処理水W1が撹拌混合され、メタン生成反応が促進される。なお、生物処理部に利用するメタン生成菌は、どのような形態でもよく、グラニュール汚泥でもよいし、メタン生成菌を担体表面に保持した微生物固定化担体でもよい。メタン生成反応により生成されたメタンは、反応槽3の上部に設置された配管L4より、バイオガスGとして回収される。
【0027】
反応槽3の上部には、グラニュール汚泥と処理水を分離するための処理水集水部3Aが設置されている。処理水集水部3Aは、反応槽3の水面より高く設置された筒体と、筒体の底部開口の下部において上向流を塞き止めるための塞き止め部材を備えた構成であり、例えば、第一の実施態様の処理水集水部3Aでは、下部に向かって断面積が縮小する筒体と、該筒体の底部開口の下部に間隙を開けて配置された断面山型の板部材により構成されている。
【0028】
筒体の内側の水面付近には、上向きに開口した桶状の処理水流出部3Bが設置されており、処理水流出部3Bには、処理水W2を反応槽外へ排出するための配管L2が連結されている。配管L2には、バルブ等の流量調整部材が設けられており、配管L2から排出する処理水W2の流量を調整している。
【0029】
また、処理水流出部3Bには、流入した処理水の一部(W3)を酸生成槽2に循環するための配管L3が連結されている。この配管L3は、酸生成槽2内の有機性廃水を希釈するための希釈手段5Aを構成し、処理水W3を希釈水として使用することができる。
【0030】
酸生成槽2には、有機性廃水中の界面活性剤の濃度を測定する界面活性剤濃度測定部4が設置されている。この測定部4では、計測器等を用いて界面活性剤の濃度を測定してもよいし、内部の有機性廃水を測定サンプルとして一部抜き取り、当該測定サンプルについて界面活性剤の濃度を測定してもよい。また、界面活性剤濃度測定部4の設置位置は、生物処理部である反応槽3の前段であれば、どの位置でもよいが、例えば、反応槽3の直前の酸生成槽2や、酸生成槽2と反応槽3を連結する配管L1に設置する。
【0031】
界面活性剤の濃度の測定方法としては、特に制限されないが、陰イオン界面活性剤であれば、「メチレンブルー吸光光度法による陰イオン界面活性剤の定量」(JIS K 0102 30.1.1)、非イオン界面活性剤であれば、「テトラチオシアナトコバルト(II)酸吸光光度法による非イオン界面活性剤の定量」(JIS K 0102 30.2.1)により測定する。また、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤であれば、「陽イオン−両性2元界面活性剤の分析 オレンジII法」(工業化学雑誌、第66巻、第10号、1963年、1449−1451頁)により測定する。
【0032】
界面活性剤濃度測定部4により測定された界面活性剤の濃度に応じて希釈手段5Aによる希釈水の流量を調整することにより、有機性廃水の界面活性剤の濃度が400mg/L以下に調整される。有機性廃水の界面活性剤の濃度を400mg/L以下とすることにより、メタン生成菌の活性度が急激に高まり、処理水中の化学的酸素要求量(CODCr)が低下するという効果を奏する。処理水の化学的酸素要求量(CODCr)の除去率をより向上するという観点から、生物処理部に供する有機性廃水の界面活性剤の濃度としては、好ましくは300mg/L以下であり、より好ましくは200mg/L以下であり、更に好ましくは100mg/L以下であり、特に好ましくは50mg/Lである。
【0033】
希釈手段5Aによる希釈水の流量の調整は、配管L1のポンプ流量の調整や、配管L2のバルブによる流量の調整により実行することができる。この希釈水の流量の調整手段としては、界面活性剤濃度測定部4からの信号の入力により制御された制御装置により実行してもよいし、界面活性剤濃度測定部4の測定値から希釈水の供給量を算出し、人為的に希釈水の流量を調整してもよい。
【0034】
希釈手段の別の構成としては、例えば、反応槽3内の反応処理液を、処理水集水部3Aを介さずに、直接取水した生物処理中の処理液を希釈水として酸生成槽2に循環してもよい。また、希釈水を、酸生成槽2と反応槽3を連結する配管L1に循環してもよい。
さらに、上水や、他の設備の処理水や有機性廃水を供給してもよい。メタン生成菌によるメタン発酵が進行する条件では、界面活性剤の分解処理速度が遅くなるため、反応槽3からの処理水を希釈水として循環すると、界面活性剤が蓄積する場合がある。そのため、上水や他の設備の処理水や有機性廃水を供給することにより、界面活性剤の蓄積を防止することができる。
なお、有機性廃水を希釈する手段としては、複数の希釈手段を組み合わせてもよい。
【0035】
次に、有機性廃水中の界面活性剤の濃度と、メタン生成菌の活性度及び化学的酸素要求量(CODCr)の除去率の関係を求めたデータを図2図3に示す。
図2は、ラウリル硫酸ナトリウム濃度とメタン生成菌の活性度との関係を示すグラフであり、図3は、ラウリル硫酸ナトリウム濃度と化学的酸素要求量(CODCr)の除去率との関係を示すグラフである。
なお、この試験では、被処理水として有機性廃水にラウリル硫酸ナトリウムを所定量添加したものを用いた。また、メタン生成菌の活性度は、グラニュールを用いた酢酸資化試験(バッチ試験)を行い、ラウリル硫酸ナトリウムを添加しない場合を100%として算出した。
【0036】
図2に示すとおり、メタン生成菌の活性度は、ラウリル硫酸ナトリウムの濃度が400mg/L以下において急激に向上し、50mg/L以下において100%となった。
また、図3に示すとおり、化学的酸素要求量(CODCr)の除去率は、ラウリル硫酸ナトリウムの濃度が400mg/L以下において急激に向上し、200mg/L以下においてほぼ一定となった。
すなわち、メタン生成菌の活性度を向上するという観点では、界面活性剤の濃度は50mg/L以下であることが特に好ましく、化学的酸素要求量(CODCr)の除去率を向上するという観点では、界面活性剤の濃度は200mg/L以下であることが特に好ましいといえる。
【0037】
[第二の実施態様]
図4には、本発明の第二の実施態様の水処理装置1Bの構成を示した。第二の実施態様では、希釈手段5Bとして、反応槽3内の生物処理中の処理液を直接取水する配管L5を備えたものである。この装置では、希釈水を得るために、処理水集水部3Aを介する必要がないため、処理水集水部3Aの容量を小型化することができる。
【0038】
[第三の実施態様]
図5には、本発明の第三の実施態様の水処理装置1Cの構成を示した。第三の実施態様では、希釈手段5Cとして、反応槽3内の生物処理中の処理液を直接取水し、酸生成槽2と反応槽3を連結する配管L1に循環するための配管L6を備えたものである。
【0039】
[第四の実施態様]
図6には、本発明の第四の実施態様の水処理装置1Dの構成を示した。第四の実施態様では、希釈手段5Dとして、酸生成槽2と反応槽3を連結する配管L1に、上水または工業用水W5を供給するための配管L7を備えたものである。メタン生成菌によるメタン発酵が進行する条件では界面活性剤の分解速度が遅いため、被処理水W0として界面活性剤を高濃度で含有する有機性廃水が供給され続けると、第一乃至第三の実施態様のような循環による希釈手段では、処理水中に界面活性剤が蓄積されてしまう。一方、第四の実施態様の希釈手段Dは、配管L7から供給される上水により界面活性剤を希釈することができるため、処理水中の界面活性剤の蓄積を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の水処理装置は、被処理水として、界面活性剤を高濃度で含有する有機性廃水に使用されるものである。
被処理水としては、界面活性剤を高濃度で含有している有機性廃水であれば、どのようなものを使用してもよく、例えば、余剰汚泥を界面活性剤で処理した菌体廃液や、製紙工場、繊維工場、化学工場、食品工場等の工場排水や、洗剤等を含有する生活排水などの処理において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1A,1B,1C,1D…水処理装置、2…酸生成槽、3…反応槽、3A…処理水集水部、3B…処理水流出部、4…界面活性剤濃度測定部、5A,5B,5C,5D…希釈手段、W0…被処理水、W1…酸生成処理水、W2…生物処理部で処理された処理水、W3,W4…生物処理部で処理中の処理水、W5…上水または工業用水、G…バイオガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6