特許第6897961号(P6897961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897961
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ガスコンロ及びガスコンロの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/10 20060101AFI20210628BHJP
   F24C 3/00 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   F24C15/10 B
   F24C3/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-142503(P2017-142503)
(22)【出願日】2017年7月24日
(65)【公開番号】特開2019-23522(P2019-23522A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2020年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 茂之
【審査官】 川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−267638(JP,A)
【文献】 特開平10−281479(JP,A)
【文献】 特開2007−287608(JP,A)
【文献】 特開2005−162937(JP,A)
【文献】 特開2017−101869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/10
F24C 3/00
A47J 37/00−37/07
B32B 37/12
F16B 5/00− 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端側が開放した形態をなす筐体部と、
板状の天板本体部と、前記天板本体部の周縁部に沿うように前記天板本体部の裏面部に固定される枠体と、前記天板本体部を裏面部側から補強する補強板と、を備え、前記筐体部の上端側に組み付けられて前記筐体部を閉塞する天板部と、
を有し、
前記枠体は、前記天板本体部の板面方向において前記天板本体部の中心側を内側とし前記周縁部側を外側としたとき、前記周縁部に沿うように前記周縁部に隣接して配置される肉厚部と、前記肉厚部よりも内側において前記周縁部に沿って配置されるとともに前記肉厚部より薄く構成された肉薄部と、を備え、
前記肉薄部には、貫通孔又は切り欠き部からなる第1連通部が当該肉薄部を厚さ方向に貫いた形態で形成され、
前記補強板は、前記肉薄部の内側に配置されるとともに前記天板本体部の裏面部に対向する対向板部と、前記肉薄部に接着され前記天板本体部とともに前記肉薄部を厚さ方向に挟む挟持板部と、前記対向板部と前記挟持板部とを連結する段差部と、を備え、
前記挟持板部には、貫通孔又は切り欠き部からなる第2連通部が当該挟持板部を厚さ方向に貫いた形態且つ前記第1連通部に続く形態で形成され、
前記天板本体部の裏面部と前記第1連通部と前記第2連通部とによって構成される第1溜まり部に第1接着媒体が貯留され、
前記天板本体部の裏面部と前記肉薄部の内側端部と前記段差部とによって構成される第2溜まり部に、前記第1接着媒体よりも乾燥が遅い遅乾性の第2接着媒体が貯留されるガスコンロ。
【請求項2】
前記第1溜まり部は、前記第1連通部の内壁部及び前記第2連通部の内壁部によって前記第1接着媒体を貯留する第1貯留空間の周囲が囲まれ、且つ前記第1貯留空間の上下方向一方側が前記天板本体部の裏面部によって閉塞され、上下方向他方側が開放した構成をなす請求項1に記載のガスコンロ。
【請求項3】
前記第2溜まり部は、前記肉薄部の内側端部と前記段差部とによって前記周縁部に沿った方向に延びる接着剤収容路が構成されるとともに前記接着剤収容路内が前記第2接着媒体を貯留する第2貯留空間として構成され、前記第2貯留空間の上下方向一方側が前記天板本体部の裏面部によって閉塞され、前記第2貯留空間の上下方向他方側が前記挟持板部によって閉塞されている請求項1又は請求項2に記載のガスコンロ。
【請求項4】
上端側が開放した形態をなす筐体部と、
板状の天板本体部と、前記天板本体部の周縁部に沿うように前記天板本体部の裏面部に固定される枠体と、前記天板本体部を裏面側から補強する補強板と、を備え、前記筐体部の上端側に組み付けられて前記筐体部を閉塞する天板部と、
を有するガスコンロの製造方法であって、
前記天板本体部の板面方向において前記天板本体部の中心側を内側とし前記周縁部側を外側としたとき、前記周縁部に沿うように前記周縁部に隣接して配置される部位である肉厚部と、前記肉厚部よりも内側において前記周縁部に沿って配置される部位であり前記肉厚部より薄く構成される肉薄部と、が設けられ、前記肉薄部において、貫通孔又は切り欠き部からなる第1連通部が厚さ方向に貫かれてなる前記枠体を、前記天板本体部の裏面部上に配置する枠体配置工程と、
前記天板本体部及び前記枠体の少なくともいずれかにおいて、第2溜まり部となることが予定された部位に、遅乾性の接着媒体である第2接着媒体を塗布する塗布工程と、
前記肉薄部の内側に配置される部位であり且つ前記天板本体部の裏面部に対向する部位である対向板部と、前記肉薄部に接着される部位であり且つ前記天板本体部とともに前記肉薄部を厚さ方向に挟む部位である挟持板部と、前記対向板部と前記挟持板部とを連結する段差部と、が設けられ、前記挟持板部において貫通孔又は切り欠き部からなる第2連通部が厚さ方向に貫かれてなる前記補強板を用い、前記肉薄部において前記天板本体部側とは反対側の面に前記挟持板部を対向させるとともに、前記第1連通部と前記第2連通部とを連通させて第1溜まり部を構成し、前記天板本体部の裏面部と前記肉薄部の内側端部と前記段差部とによって前記第2溜まり部を構成するように前記補強板を配置する補強板配置工程と、
前記第1溜まり部に速乾性の第1接着媒体を貯留させる貯留工程と、
前記第2接着媒体を乾燥させる乾燥工程と、
を含むガスコンロの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロ及びガスコンロの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロに用いられる天板は、ガラス等で構成された板状の天板本体を備えるとともに、この天板本体の周縁部に枠体が固定されるような構成が一般的である。しかし、従来から一般的に用いられている天板は、枠体が天板本体の表側から裏側に及ぶように周縁部の上下全体を覆うように構成されていたため、枠体の存在感が大きくなりすぎてしまい、見栄えが悪くなるという問題がある。この問題を解消し得る一つの技術としては、特許文献1で開示されるようなコンロ用天板がある。このコンロ用天板は、平板状に形成された天面板(天板本体部)の下面(裏面)に台枠が接着されており、台枠に設けられた張出縁部が天面板の外方に張り出している。そして、張出縁部の上面が、当接面(台枠における天面板の下面に当接する面)と同一レベルを維持しつつ天面板の外側に露出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−101869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示されるガスコンロのように、天板本体部の裏面に枠体を接着する構成の場合、製造工程では、天板本体部と枠体との間に接着剤などの接着媒体を介在させ、両部品をクランプ部材などによって位置保持しながら乾燥させる必要がある。しかし、両部材を位置ずれしないように確実に保持するためには、多数のクランプ部材を取り付けて位置を保持しておかなければならず、作業負担が大きくなることが避けられなかった。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、より簡易な構成で、天板本体部の裏面部側に枠体及び補強板をより正確且つ確実に接着することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の例であるガスコンロは、
上端側が開放した形態をなす筐体部と、
板状の天板本体部と、前記天板本体部の周縁部に沿うように前記天板本体部の裏面部に固定される枠体と、前記天板本体部を裏面部側から補強する補強板と、を備え、前記筐体部の上端側に組み付けられて前記筐体部を閉塞する天板部と、
を有し、
前記枠体は、前記天板本体部の板面方向において前記天板本体部の中心側を内側とし前記周縁部側を外側としたとき、前記周縁部に沿うように前記周縁部に隣接して配置される肉厚部と、前記肉厚部よりも内側において前記周縁部に沿って配置されるとともに前記肉厚部より薄く構成された肉薄部と、を備え、
前記肉薄部には、貫通孔又は切り欠き部からなる第1連通部が当該肉薄部を厚さ方向に貫いた形態で形成され、
前記補強板は、前記肉薄部の内側に配置されるとともに前記天板本体部の裏面部に対向する対向板部と、前記肉薄部に接着され前記天板本体部とともに前記肉薄部を厚さ方向に挟む挟持板部と、前記対向板部と前記挟持板部とを連結する段差部と、を備え、
前記挟持板部には、貫通孔又は切り欠き部からなる第2連通部が当該挟持板部を厚さ方向に貫いた形態且つ前記第1連通部に続く形態で形成され、
前記天板本体部の裏面部と前記第1連通部と前記第2連通部とによって構成される第1溜まり部に第1接着媒体が貯留され、
前記天板本体部の裏面部と前記肉薄部の内側端部と前記段差部とによって構成される第2溜まり部に、前記第1接着媒体よりも乾燥が遅い遅乾性の第2接着媒体が貯留される。
【0007】
本発明の第2の例であるガスコンロの製造方法は、
上端側が開放した形態をなす筐体部と、
板状の天板本体部と、前記天板本体部の周縁部に沿うように前記天板本体部の裏面部に固定される枠体と、前記天板本体部を裏面側から補強する補強板と、を備え、前記筐体部の上端側に組み付けられて前記筐体部を閉塞する天板部と、
を有するガスコンロの製造方法であって、
前記天板本体部の板面方向において前記天板本体部の中心側を内側とし前記周縁部側を外側としたとき、前記周縁部に沿うように前記周縁部に隣接して配置される部位である肉厚部と、前記肉厚部よりも内側において前記周縁部に沿って配置される部位であり前記肉厚部より薄く構成される肉薄部と、が設けられ、前記肉薄部において、貫通孔又は切り欠き部からなる第1連通部が厚さ方向に貫かれてなる前記枠体を、前記天板本体部の裏面部上に配置する枠体配置工程と、
前記天板本体部及び前記枠体の少なくともいずれかにおいて、第2溜まり部となることが予定された部位に、遅乾性の接着媒体である第2接着媒体を塗布する塗布工程と、
前記肉薄部の内側に配置される部位であり且つ前記天板本体部の裏面部に対向する部位である対向板部と、前記肉薄部に接着される部位であり且つ前記天板本体部とともに前記肉薄部を厚さ方向に挟む部位である挟持板部と、前記対向板部と前記挟持板部とを連結する段差部と、が設けられ、前記挟持板部において貫通孔又は切り欠き部からなる第2連通部が厚さ方向に貫かれてなる前記補強板を用い、前記肉薄部において前記天板本体部側とは反対側の面に前記挟持板部を対向させるとともに、前記第1連通部と前記第2連通部とを連通させて第1溜まり部を構成し、前記天板本体部の裏面部と前記肉薄部の内側端部と前記段差部とによって前記第2溜まり部を構成するように前記補強板を配置する補強板配置工程と、
前記第1溜まり部に速乾性の第1接着媒体を貯留させる貯留工程と、
前記第2接着媒体を乾燥させる乾燥工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の例である上記ガスコンロは、挟持板部において、貫通孔又は切り欠き部からなる第2連通部が当該挟持板部を厚さ方向に貫いた形態且つ第1連通部に続く形態で形成されている。そして、天板本体部の裏面部と第1連通部と第2連通部とによって構成される第1溜まり部に第1接着媒体が貯留される。このように構成されるため、第1溜まり部に貯留される第1接着媒体によって、天板本体部、補強板、枠体、を互いに固定することができる。しかも、第1接着媒体は、第2接着媒体と比較して乾燥が早い接着媒体であるため、天板本体部、補強板、枠体、の3部材がより早期に接着され、迅速に位置決めされる構成となる。つまり、特別な位置決め構造や多数の治具などを用いなくても、天板本体部、補強板、枠体、の3部材が高精度に位置決めされやすい構成となる。
更に、天板本体部の裏面部と肉薄部の内側端部と段差部とによって構成される第2溜まり部に、第1接着媒体よりも乾燥が遅い遅乾性の第2接着媒体が貯留され、第2接着媒体により、天板本体部と、枠体と、補強板と、が接着される。このように、第1接着媒体だけでなく、第2接着媒体も用いて、天板本体部、補強板、枠体、の3部材を固定するため、これらがより強固に固定されることになる。また、第2接着媒体の乾燥が完全に完了するまでの間、相対的に乾燥が早い第1接着媒体によって天板本体部、補強板、枠体、の3部材が安定的に保持されやすいため、これら3部材がより高精度に固定されやすい。しかも、肉薄部の内端部付近によって第1溜まり部と第2溜まり部とが区分けされた構造として設けられるため、第1接着媒体と第2接着媒体とが混合しにくくなる。
【0009】
本発明の第2の例であるガスコンロの製造方法によっても、上記ガスコンロと同様の効果を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のガスコンロを概略的に例示する斜視図である。
図2】実施例1のガスコンロにおける天板部の底面図である。
図3図2のA−A断面概略図である。
図4図2で示す天板部の一部を拡大して示す拡大図である。
図5】ガスコンロの天板部を製造する製造工程を説明する説明図であり、(A)は、天板本体部の形成工程を説明する説明図であり、(B)は、枠体配置工程を説明する説明図であり、(C)は、塗布工程を説明する説明図である。
図6図5の工程に続く工程を説明する説明図であり、(A)は、補強板配置工程を説明する説明図であり、(B)は、貯留工程を説明する説明図であり、(C)は、乾燥工程を説明する説明図である。
図7】枠体配置工程を裏面側から説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の望ましい例を以下に示す。但し、本発明は、以下の例に限定されない。
第1溜まり部は、第1連通部の内壁部及び第2連通部の内壁部によって第1接着媒体を貯留する第1貯留空間の周囲が囲まれ、且つ第1貯留空間の上下方向一方側が天板本体部の裏面部によって閉塞され、上下方向他方側が開放した構成をなしていてもよい。このようにすれば、天板本体部、枠体、補強板のそれぞれに第1接着媒体が接触し得る貯留構造を、より簡易に実現し得る。また、第1溜まり部は、上下方向他方側が開放した構成をなすため、第1接着媒体をより一層迅速に乾燥させやすい構造となる。
【0012】
第2溜まり部は、肉薄部の内側端部と段差部とによって周縁部に沿った方向に延びる接着剤収容路が構成されるとともに接着剤収容路内が第2接着媒体を貯留する第2貯留空間として構成され、第2貯留空間の上下方向一方側が天板本体部の裏面部によって閉塞され、第2貯留空間の上下方向他方側が挟持板部によって閉塞されていてもよい。このように、天板本体部の周縁部に沿った方向に延びるように第2貯留空間を構成する収容路(接着剤収容路)が設けられていれば、天板本体部の周縁部付近のより広い範囲で、天板本体部、枠体、補強板をより強固に固定することができる。
【0013】
<実施例1>
まず、ガスコンロ1の概要を説明する。図1に示すガスコンロ1は、調理鍋等の調理器具を加熱可能なビルトインコンロとして構成され、複数のこんろ部6A,6B,6Cを備え、器内にグリル10を内蔵してなる。ガスコンロ1は、装置本体1Aに天板部4(トッププレート)が取り付けられた構成をなす。装置本体1Aは、ガスコンロ1から天板部4を除いた部分であり、ガスコンロ1の外殻をなす筐体部2と、筐体部2内に収容される様々な部品とを有してなる。天板部4は、筐体部2の上端部に固定されており、この天板部4から露出するように、左こんろ部6A、右こんろ部6Bが夫々設けられ、その左右のこんろ部6A,6Bの間で後方寄りに小こんろ部6Cが設けられている。左こんろ部6Aには、ガスバーナ8Aが設けられ、右こんろ6Bには、ガスバーナ8Bが設けられ、小こんろ部6Cには、ガスバーナ8Cが設けられている。ガスバーナ8A,8B、8Cは、公知のコンロバーナとして構成され、図示しないガス供給路を介してガスが供給される構成をなす。天板部4の下方において装置本体1Aの内部中央付近にはグリル10が設けられている。
【0014】
次に、天板部4について説明する。図1図2のように、天板部4は、筐体部2の上端部に固定されるものであり、ガスコンロ1の上面部を構成するものである。天板部4の取付対象となる筐体部2は、左右の側壁部(図1では、一方の側壁部2Bを図示)と、図示しない後壁部と、前壁部として機能する前面パネル2Aと、図示しない底壁部とを備え、前後左右の壁部によって部品の収容空間が囲まれた構成をなし、部品の収容空間の下方側は底壁部によって閉塞される。このように、筐体部2は、上端部が開口した箱状形態をなし、天板部4は筐体部2の上端側に構成される開口部を閉塞する構成で筐体部2に取り付けられる。なお、本明細書では、天板本体部20の厚さ方向を上下方向とし、天板本体部20を平面視したときの長手方向を左右方向とし、上下方向及び左右方向と直交する方向を前後方向とする。上下方向において、天板本体部20の表側を上方側とし裏側を下方側とする。また、天板本体部20の板面方向(天板本体部20の厚さ方向と直交する平面方向)において天板本体部20の中心側を天板部4の内側とし天板本体部20の周縁部側を天板部4の外側とする。
【0015】
図1図2のように、天板部4は、板状の天板本体部20と、天板本体部20の周縁部に沿うように天板本体部20の裏面部22に固定される枠体30と、天板本体部20を裏面部側から補強する補強板40と、を備えており、図1のように筐体部2の上端側に組み付けられて筐体部2を閉塞する構成をなす。
【0016】
天板本体部20は、ガラス板からなる板状部材、或いは金属板材の表面にホーロー処理を施してガラスコート層を形成した板状部材などとして構成されている。図1図2のように、天板本体部20には、後端側内枠部60,中央側内枠部61,62,63がそれぞれ固定されている。図2のように、後端側内枠部60は、天板本体部20において後端側に形成された開口部20A付近に固定され、グリル10からの排気を排出するための排気口60Aを有している。後端側内枠部60には、カバー部材70が嵌め込まれ、カバー部材70には、排気を導出するための多数の貫通孔が形成されている。中央側内枠部61,62,63は、天板本体部20の中央側に形成された各開口部孔近にそれぞれ固定されている。中央側内枠部61は、天板本体部20の裏面部22に裏面側固定部61Aが固定され、天板本体部20の表面部21にリング部材61Bが固定され、これらが固定部材(ねじ等)によって連結される。中央側内枠部62は、天板本体部20の裏面部22に裏面側固定部62Aが固定され、表面部21にリング部材62Bが固定され、これらが固定部材(ねじ等)によって連結される。中央側内枠部63は、天板本体部20の裏面部22に裏面側固定部63Aが固定され、天板本体部20の表面部21にリング部材63Bが固定され、これらが固定部材(ねじ等)によって連結される。中央側内枠部61,62,63のそれぞれには、上下に貫通した開口部61C,62C,63Cがそれぞれ形成され、天板部4の装着時には、開口部61C,62C,63Cに対して下側からガスバーナ8A,8B、8Cがそれぞれ挿入されようになっている(図1参照)。
【0017】
枠体30は、例えば金属材料などによって構成されており、接着媒体(具体的には2種類の接着剤)によって天板本体部20の裏面部22に接着される構成をなし、天板本体部20の周縁部近傍を補強する機能を有する。図2のように、枠体30は、矩形状に構成された天板本体部20の周縁部に沿った形状の矩形枠として構成されており、枠体30の外縁部は、天板本体部20の板面方向において天板本体部20の周縁部とほぼ同位置、又は天板本体部20の周縁部よりも僅かに外側に張り出している。図3のように、枠体30は、肉厚部32と肉薄部34とを備える。肉厚部32は、天板本体部20の周縁部に沿うようにこの周縁部に隣接して環状に配置されている。厚部32の外縁付近(周縁部付近)には、下方側に突出する突出部32Aが、天板本体部20の周縁部に沿うようにリブ状に形成されている。肉薄部34は、肉厚部32よりも内側(天板本体部20の板面方向中心側)において天板本体部20の周縁部に沿うように配置されるとともに肉厚部32より薄く構成されている。肉薄部34は、環状に構成された肉厚部32の内側に環状に配置され、貫通孔からなる第1連通部34Aが当該肉薄部34を厚さ方向に貫いた形態で複数個形成されている。なお、枠体30には、パッキン50が固定されている。
【0018】
図3図4のように、補強板40は、対向板部42と、挟持板部46と、段差部44とを備え、対向板部42と挟持板部46とが上下方向にずれた段差構造をなす。挟持板部46は、天板本体部20の周縁部及び肉薄部34に沿って配置されるとともに肉薄部34の下面に接着され天板本体部20とともに肉薄部34を厚さ方向に挟む構成をなす。対向板部42は、肉薄部34よりも内側において肉薄部34の内側端部34Bに沿って配置される部分であり、天板本体部20の裏面部22に対向するように配置され、この裏面部22に接着される。段差部44は、対向板部42と挟持板部46とを連結する部分であり、肉薄部34の内側端部34Bと距離を隔てて配置されるとともに内側端部34Bの方向に沿って配置される。
【0019】
挟持板部46には、切り欠き部からなる第2連通部46Aが当該挟持板部46を厚さ方向に貫いた形態且つ第1連通部34Aに続く形態で形成されている。そして、天板本体部20の裏面部22と第1連通部34Aと第2連通部46Aとによって構成される第1溜まり部81に第1接着媒体91が貯留されている。第1溜まり部81は、第1連通部34Aの内壁部及び第2連通部46Aの内壁部によって第1接着媒体91を貯留する第1貯留空間の周囲が囲まれ、且つ第1貯留空間の上下方向一方側(上方側)が天板本体部20の裏面部22によって閉塞され、上下方向他方側(下方側)が開放した構成をなす。なお、図2図3では、第1接着媒体91を省略して示している。第1接着媒体91は、例えば紫外線硬化型の接着剤などによって構成されている。
【0020】
そして、天板本体部の裏面部22と肉薄部34の内側端部34Bと段差部44(絞り部)とによって構成される第2溜まり部82に、第1接着媒体91よりも乾燥が遅い遅乾性の第2接着媒体92が貯留されている。図4のように、第2溜まり部82は、肉薄部34の内側端部34Bと段差部44とによって天板本体部20の周縁部に沿った方向に延びる接着剤収容路82Aが構成されるとともに接着剤収容路82A内が第2接着媒体92を貯留する第2貯留空間として構成され、第2貯留空間の上下方向一方側(上方側)が天板本体部20の裏面部22によって閉塞され、第2貯留空間の上下方向他方側(下方側)が挟持板部46によって閉塞されている。
【0021】
次に、ガスコンロ1の製造方法を説明する。以下では、ガスコンロ1における天板部4の製造工程を主に説明する。なお、天板部4以外は公知の製造方法を採用可能である。天板部4を製造する場合、まず、図5(A)のように天板本体部20を形成する工程を行う。例えば、天板本体部20をガラス板として構成する場合、天板本体部20を形成する工程は、ガラス板状の天板本体を形成する公知の様々な方法を採用することができ、形状や厚さなども様々に設定し得る。
【0022】
また、天板本体部20を形成する工程の前、又は後、又は同時期に、枠体30を形成する工程(枠体形成工程)を行う。具体的には、上述した形状の枠体30(図1図4等)を公知の金属加工方法を用いて形成する。この枠体形成工程により、上述した形状(天板本体部20の周縁部に沿うように周縁部に隣接して配置される部位である肉厚部32と、肉厚部32よりも内側において周縁部に沿って配置される部位であり肉厚部32より薄く構成される肉薄部34と、が設けられ、肉薄部34において、貫通孔からなる第1連通部34Aが厚さ方向に貫かれた形状)の枠体30が形成される。
【0023】
また、天板本体部20や枠体30を形成する工程の前、又は後、又は同時期に、補強板40を形成する工程(補強板形成工程)を行う。具体的には、上述した形状の補強板40(図2図4等)を公知の金属加工方法を用いて形成する。この補強板形成工程により、上述した形状(肉薄部34よりも内側において肉薄部34の内側端部34Bに沿って配置される部位であり且つ天板本体部20の裏面に対向する部位である対向板部42と、肉薄部34に接着される部位であり且つ天板本体部20とともに肉薄部34を厚さ方向に挟む部位である挟持板部46と、対向板部42と挟持板部46とを連結する段差部44と、が設けられた形状)の補強板40が形成される。
【0024】
天板本体部20及び枠体30が形成された後には、枠体配置工程を行う。この枠体配置工程では、図5(B)、図7のように、天板本体部20の板面方向の所定位置(天板本体部20の周縁部に沿うように枠体30の周縁部が配置される位置)において、天板本体部20の裏面部22上に枠体30を配置する。具体的には、天板本体部20の裏面部22と枠体30の上面部(肉厚部32の上面部32C及び肉薄部34の上面部34C)とを接触させるように配置する。なお、図7では、枠体30以外に後端側内枠部60,リング部材61B,62B,63Bなども配置した状態を示している。
【0025】
図5(B)のように、天板本体部20の裏面部22の所定位置に枠体30が配置された後には、図5(C)のように塗布工程を行う。塗布工程では、天板本体部20及び枠体30の少なくともいずれかにおいて、第2溜まり部82となることが予定された部位に、遅乾性の接着媒体である第2接着媒体92を塗布する。図5(C)の例では、枠体30の内側端部34B及び天板本体部20の裏面部22のいずれにも接触するように内側端部34Bに沿って第2接着媒体92を塗布している。
【0026】
図5(C)のように第2接着媒体92を塗布した後には、図6(A)のように補強板40を配置する工程(補強板配置工程)を行う。この工程では、図6(A)のように肉薄部34において天板本体部20側とは反対側の面(即ち、肉薄部34の下面34D)に挟持板部46の上面46Cを対向させるとともに、第1連通部34Aと第2連通部46Aとを連通させて第1溜まり部81を構成し、天板本体部の裏面部22と肉薄部34の内側端部34Bと段差部44とによって第2溜まり部82を構成するように補強板40を配置する。このような配置を行ったとき、第2溜まり部82内には、上述した塗布工程で塗布された第2接着媒体92が収容されることになる。
【0027】
次に、貯留工程を行う。図6(A)のように、補強板40を配置した後、図6(B)のように第1溜まり部81に速乾性の第1接着媒体91を貯留させる工程(貯留工程)を行う。具体的には、第1溜まり部81に形成された下方側の開口から第1溜まり部81内に第1接着媒体91を流し込む。第1接着媒体91は、紫外線硬化型の接着剤である。
【0028】
図6(B)のように第1溜まり部81内に第1接着媒体91を貯留させた後には、図6(B)で示す中間体に対して裏面側から紫外線を照射し、第1溜まり部81の第1接着媒体91を硬化させる(図6(C))。この工程により、第1接着媒体91が固化し、天板本体部20と枠体30と補強板40とを仮固定する。そして、このように天板本体部20、枠体30、補強板40を仮固定した後には、仮固定された結合体を乾燥させる乾燥工程を行う。乾燥工程では、仮固定された結合体を例えば常温で所定時間放置し、第2接着媒体92を乾燥させる。
【0029】
次に、本発明の主な効果を例示する。
上記ガスコンロ1は、天板本体部の裏面部22と第1連通部34Aと第2連通部46Aとによって構成される第1溜まり部81に第1接着媒体91が貯留される。このように構成されるため、第1溜まり部81に貯留される第1接着媒体91によって、天板本体部20、補強板40、枠体30、を互いに固定することができる。しかも、第1接着媒体91は、第2接着媒体92と比較して乾燥が早い接着媒体であるため、天板本体部20、補強板40、枠体30、の3部材がより早期に接着され、迅速に位置決めされる構成となる。つまり、特別な位置決め構造や多数の治具などを用いなくても、天板本体部20、補強板40、枠体30、の3部材が高精度に位置決めされやすい構成となる。
【0030】
更に、図3のように、天板本体部20の裏面部22と肉薄部34の内側端部と段差部44とによって構成される第2溜まり部82に、第1接着媒体91よりも乾燥が遅い遅乾性の第2接着媒体92が貯留され、第2接着媒体92により、天板本体部20と、枠体30と、補強板40と、が接着される。このように、第1接着媒体91だけでなく、第2接着媒体92も用いて、天板本体部20、補強板40、枠体30、の3部材を固定するため、これらがより強固に固定されることになる。また、第2接着媒体92の乾燥が完全に完了するまでの間、相対的に乾燥が早い第1接着媒体91によって天板本体部20、補強板40、枠体30、の3部材が安定的に保持されやすいため、これら3部材がより高精度に固定されやすい。しかも、第1溜まり部81と第2溜まり部82が別々の構造として設けられるため、第1接着媒体91と第2接着媒体92とが混合しにくくなる。
【0031】
第1溜まり部81は、第1連通部34Aの内壁部及び第2連通部46Aの内壁部によって第1接着媒体91を貯留する第1貯留空間の周囲が囲まれ、且つ第1貯留空間の上下方向一方側が天板本体部20の裏面部22によって閉塞され、上下方向他方側が開放した構成をなしている。このようにすれば、天板本体部20、枠体30、補強板40のそれぞれに第1接着媒体91が接触し得る貯留構造を、より簡易に実現し得る。また、第1溜まり部81は、上下方向他方側が開放した構成をなすため、第1接着媒体91をより一層迅速に乾燥させやすい構造となる。
【0032】
第2溜まり部82は、肉薄部34の内側端部と段差部44とによって天板本体部20の周縁部に沿った方向に延びる接着剤収容路82Aが構成されるとともに接着剤収容路82A内が第2接着媒体92を貯留する第2貯留空間として構成され、第2貯留空間の上下方向一方側が天板本体部20の裏面部22によって閉塞され、第2貯留空間の上下方向他方側が挟持板部46によって閉塞されるようになっている。このように、天板本体部20の周縁部に沿った方向に延びるように第2貯留空間を構成する収容路(接着剤収容路82A)が設けられていれば、天板本体部20の周縁部に沿ったより広い範囲で、天板本体部20、枠体30、補強板40をより強固に固定することができる。
【0033】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような例も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施例の特徴や後述する実施例の特徴は矛盾しない範囲で様々に組み合わせることが可能である。
【0034】
実施例1では、貫通孔からなる第1連通部34Aを例示したが、第1連通部は、肉薄部を厚さ方向に貫いた形態の切り欠き部として形成されていてもよい。また、実施例1では、切り欠き部からなる第2連通部46Aを例示したが、第2連通部は挟持板部を厚さ方向に貫いた形態の貫通孔として形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…ガスコンロ、2…筐体部、4…天板部、20…天板本体部、22…天板本体部の裏面部、30…枠体、32…肉厚部、34…肉薄部、34A…第1連通部、40…補強板、42…対向板部、44…段差部、46…挟持板部、46A…第2連通部、81…第1溜まり部、82…第2溜まり部、91…第1接着媒体、92…第2接着媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7