(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、実施例1について図を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1にシングルパス方式における一般的な印刷構成例を示す。インクジェットヘッド1a、インクジェットヘッド1b、インクジェットヘッド1c、インクジェットヘッド1dは、それぞれインクジェットヘッドのノズル列方向に横一列に配置されてインクジェットヘッド群を構成することで1個のインクジェットヘッドの幅よりも広い印刷領域をカバーする。被印刷物2上の印刷領域を領域3から領域6に分割し、インクジェットヘッド群を構成する個々のインクジェットヘッドが印刷を担当すべき印刷領域を、領域3はヘッド1a、領域4はヘッド1b、領域5はヘッド1c、領域6はヘッド1dが担当するという構成をとり、インクジェットヘッド1aからインクジェットヘッド1dのノズル面の真下を被印刷物2が通過する際に、インクジェットヘッド1aからインクジェットヘッド1dのノズルからインクが吐出されることにより、被印刷物が通過した時点で被印刷物上に画像が印刷されることになる。
図1においては、インクジェットヘッド1aからインクジェットヘッド1dは千鳥配置されているが、印刷領域をカバーできる形で配置されていれば、千鳥配置以外の配置方法でもよく、また、インクジェットヘッド群を構成するインクジェットヘッドの数は、被印刷物の幅に応じて追加し、又は減らすことも可能である。なお、
図1においては個々の隣接するインクジェットヘッドはそれぞれ一部重なる形でいわゆるオーバーラップして配置されているおり、この点は下記において詳述するが、使用するインクジェットヘッドの仕様によっては、オーバーラップしない配置方法も想定しうる。
【0021】
図2は複数のインクジェットヘッド間で生じる、印刷すべき本来の画像データの色濃度と実際の印刷物の色濃度が異なるという印刷物のインク濃度誤差に対する従来方式による補正の例を示している。
図2(a)は補正前のインク濃度誤差をグラフ化したものであり、
図2(b)は補正後のインク濃度誤差をグラフ化したものである。
図1と同様に、被印刷物2上の印刷領域を領域3から領域6に分割し、領域3はインクジェットヘッド1a、領域4はインクジェットヘッド1b、領域5はインクジェットヘッド1c、領域6はインクジェットヘッド1dが印刷を担当する例を示している。なお、本発明はサーマル方式のインクジェットヘッドを用いる場合でも使用できるが、ここで示す例におけるインクジェットヘッドは圧電素子を用いた、圧電効果によりインクを吐出するいわゆるピエゾ方式のインクジェットヘッドを想定している。上記の通りインクジェットヘッドには同一機種であってもピエゾ素子を用いることを主因とする個体差が存在し、
図2(a)に示すようにインクジェットヘッド1aからインクジェットヘッド1dそれぞれインク濃度誤差は大きく、補正をせずに画像を印刷した場合には印刷領域ごとにインク濃度が大きく異なるため画質に悪影響を及ぼす。ここでインクジェットヘッドごとに、その使用条件であるピエゾ素子の駆動電圧を調整して複数のインクジェットヘッド間のインク濃度誤差を補正した例が
図2(b)である。
図2(a)と
図2(b)を比較すると、一定程度の補正は出来るが、調整できる印加電圧の範囲に制約があり、また、上記の通り、印加電圧の調整が固定値であるため、異なる色濃度帯で発生する程度の異なるインク濃度誤差を一括して補正できない問題も発生する。また駆動電圧を変更するという事は、吐出されるインクの液滴の吐出速度を変える事になり、基材への着弾位置の変化などが発生するため印刷される画像の画質に影響する別の問題の発生も想定される。
【0022】
図3は
図1に示した構成においてテストパターンを印刷してこれを読み取り測定したインク濃度データの測定例であり、本例では、濃い色濃度のデータ例が測定データ7、薄い色濃度のデータ例が測定データ8であり、測定データ7及び測定データ8の領域3から領域6は、
図1の被印刷物の印刷領域と対応することになる。
図3の例では、インクジェットヘッド1a内のインク濃度誤差が一番大きく、インクジェットヘッド1bにおいては少しあり、インクジェットヘッド1cとインクジェットヘッド1dではほとんど無いという例になっている。インクジェットヘッド内の平均濃度はインクジェットヘッド1cだけ他より濃くなっている例である。
【0023】
また、本例では
図3のインクジェットヘッド1aと1bのつなぎ部のインク濃度が高く、インク濃度が高い部分が印刷された画像上において帯状になって現れるいわゆる黒スジが発生しており、インクジェットヘッド1bと1c及び1cと1dの間の隣接するつなぎ部のインク濃度が低く、インク濃度の低い部分が印刷された画像上において帯状になって現れるいわゆる白スジが発生している。
通常測定データ7と測定データ8は、違う色濃度の部分の測定データであっても同じインクジェットヘッドを用いて印刷する以上、その数値は同じ傾向を示すことが通常であるが、補正すべき量が異なる場合が多い。よって別途説明する異なる濃度ごとのテストパターンを使用することになる。
【0024】
図4はインク濃度補正と補正の際に目標とすべきターゲット濃度値との関係を説明する色濃度の測定値とターゲット濃度値が示されたグラフである。横軸に印刷幅方向の位置を示し、縦軸に色濃度を示す。測定データ10は、テストパターンの色濃度の測定値を示す。ある位置は色濃度値が高く、ある位置は色濃度値が低いことが分かる。これを補正して均一の色濃度になるように補正データを作成する。まずは目標とすべき色濃度の基準値を決める必要がある。
図4に示す例では、実線で示すターゲット濃度値(目標濃度)9は全体濃度の平均値とした。この場合、補正データ11は、測定値を下記において詳述するが、所定の方法により数値が算出されることになるが、概要を説明すると、色濃度の値が高い部分はこれを低くなるように補正データを生成し、濃度値が低い部分はこれが高くなるように補正データを生成し、ターゲット濃度と同じ濃度の部分は補正しないという処理を行う。
【0025】
ここでターゲット濃度値(目標濃度)は9a、9bのように指定の値を設定することもできる。この方法を実行すべき場合として、同じ被印刷物、同じインクを用いて印刷する複数台の同機種の印刷装置が生産工場に設置される場合が想定される。この場合、設置された印刷装置のいずれを用いて印刷を実行した場合であっても同じ色濃度値、色味の画像が印刷される必要がある。例えば建築材料など複数を一面に並べて使用されるような印刷物においては、すべての色濃度値が均一である必要があり、かかる印刷物にわずかでも色濃度値の誤差があると、印刷物が商品としての品質を維持することができない事態になる。そこでかかる事態を回避するためには設置された印刷装置がすべて同じ色濃度値となるようにインク濃度を補正する必要が生じる。例えば、設置すべき印刷装置が1号機から5号機まで存在する場合において、新たに設置する2号機の測定値が測定データ10であるとし、2号機単体においてテストパターンを印刷して測定した色濃度値の平均から算出される補正値を補正データ11とし、すでに設置されている1号機自体の補正後の濃度値がターゲット濃度値(目標濃度)9aとする。1号機の色濃度値を基準値とする場合には、2号機の目標の濃度値をターゲット濃度値(目標濃度)9aに設定する。また1号機の補正後の濃度値がターゲット濃度値(目標濃度)9bとしたらこれに合わせるために、2号機の目標の濃度値をターゲット濃度値(目標濃度)9bに設定すればいい。そして、2号機単体の全体濃度の平均値から算出された補正値に対して、さらに所定のターゲット濃度に合わせる処理を同時に行うことで、それぞれのインクジェットヘッド自体に生じるインク濃度誤差、インクジェットヘッド群を構成するそれぞれのインクジェットヘッド相互のインク濃度誤差、インクジェットヘッド群を構成するインクジェットヘッドの隣接部分における濃度誤差のみならず、装置間の個体差により生じるインク濃度誤差も一度に補正する事ができる。
【0026】
図5にシングルパス方式の印刷におけるテストパターン例を示す。テストパターン画像はインク濃度を測定するための色濃度パターンとアライメントマークを少なくとも有する。アライメントマーク12a、アライメントマーク12b、アライメントマーク12c、アライメントマーク12dはそれぞれテストパターンの印刷位置、撮像解像度、画像の傾きなどを検出するための働きを持ち、
図5や後述の
図16、
図22のように、色濃度パターン外周部に配置される。。アライメントマークの形状は、円形でなくともコンピューター処理する上で使いやすい形状であればいい。撮像条件や具体的なデータ処理については、本発明と直接関係しないため詳細な説明は省略するが、テストパターンの撮像の解像度は、補正したい分解能、空間周波数に比べ同等以上の必要がある。また撮像装置のダイナミックレンジは、印刷がない部分でも明るい方向で飽和無い事、最大濃度の部分でも暗い方向で飽和無い事が必要である。
【0027】
また、
図5の例では色濃度パターンは印刷がない部分を含めて16段階の色濃度を持つ。必ずしも16パターンには限られず、色濃度の段階順に配置する必要もないが、複数段階の色濃度パターンを持つ趣旨は、色濃度によって印刷の際に生じるインク濃度誤差の発生状況が異なるため、広い色濃度の領域にごとにリニアに色濃度が変化するようにインク濃度補正を実行する必要があるためであり、複数の色濃度において発生しているインク濃度誤差をそれぞれ測定して補正データを生成することでより高精度な補正が可能になると共に、複数の色濃度ごとにターゲット濃度値を設定することで、さらに高い精度の補正が可能になる。
【0028】
図6に、
図5のテストパターンを測定例のうち、2つの色濃度の領域における個々の測定値を測定値13、測定値14として示す。ここで、印刷幅端部15a、印刷幅端部15bにおける測定値は、どちらも一様に色濃度値が下がる傾向を示しているが、これは、撮像装置の光学的なボケ現象により生じるものであり、ボケ現象の結果、印刷幅端部の色濃度値は正確に測定することができない。これはいかに高価な撮像装置を使っても避けることはできない。なお、後述の
図16で示すマルチパス方式のインクジェット印刷装置で用いるテストパターンを撮像した場合でも、同一の現象が発生する。この場合、
図5のテストパターンの端部には、端部近傍の平均処理を端部に適用することで撮像装置の光学的な課題を回避する事が出来る。また、
図16で示すマルチパス方式の場合におけるテストパターンを撮像してインク濃度誤差を算出する場合は、これと異なる処理を施すことになるが、この点の詳細は後述する。
【0029】
図21は、算出されたパラメータをもとに撮像画像を変形処理することを示す概念図である。市販の廉価な撮像装置(スキャナー)を使用した場合、スキャナーの撮像精度の都合上、撮像したテストパターン画像上の画素の位置座標と、印刷前の実際のテストパターン画像上の画素の位置座標とは、測定時に著しい誤差が生じることから、どのようにして実用レベルの撮像を行うかについて説明する。
【0030】
まず、
図21左側に示される市販のスキャナーをつかって、高精度メジャーであるガラスマスクを撮像して、スキャナーの撮像画像にどの程度の誤差がどのように生じるかの例を下記に示す。
140mm×350mmの長方形のガラスマスクを読み取ったが、左上原点201.の座標を(0,0)と合わせたとして、右上頂点202.の座標が(140―0.639mm、0)、右下頂点203.の座標が(140+0.166mm、350+0.139mm)、左下頂点204.の座標が(0+0.974mm、350+0.182mm)というように、各頂点の座標に誤差が発生している。例えば、600dpiのヘッドの場合ノズル間隔は、約42
μmであるので、5ノズルずれると42
μm×=210
μmになる。本発明のノズルごとの濃度測定という観点で見れば、測定位置が210
μmずれるということは、ノズル位置が5ノズルずれるという事を意味し、1000ノズルのヘッドを想定すると#503番ノズルを補正しようとして、508番ノズルを補正した、という事を意味する。
【0031】
以上の問題を解決するために、撮像装置(スキャナー)により撮像されたテストパターン画像を構成する各画素の位置誤差を次の通り補正する方法をとることができる。
(1)
図5、
図16、
図22の例のように、テストパターンを構成する色濃度パターンの外周部に4個以上のアライメントマークを印刷する。
図5の例であれば、アライメントマーク12a、アライメントマーク12b、アライメントマーク12c、アライメントマーク12dがこれに該当する。
(2)アライメントマークの平面直交座標系上のXY座標を読取り、理論値に一致するように画像を変形処理する変形パラメータを計算して算出する。
(3)算出された変形パラメータをもとに撮像したテストパターン画像のうち少なくとも色濃度パターン部分を2次元的に変形処理する。
(4)変形後の画像をもとにノズルの切り出し(特定し)、濃度測定を行う。
【0032】
まず、上記「(1)テストパターンを構成する色濃度パターンの外周部に4個以上のアライメントマークを印刷する。」について説明する。
図5の例においてアライメントマーク12a、アライメントマーク12b、アライメントマーク12c、アライメントマーク12dで示す4つのマークが色濃度パターンの外周部に4個以上印刷される。アライメントマークは、
図5、
図16、
図22の例のように、少なくとも色濃度パターンの4隅には配置されることが好ましい。なお、アライメントマークの個数は、4個に限定されるものではなく、多ければ多いほど、より精度よくテストパターン画像の位置誤差を補正することができる。
【0033】
次に、「(2)アライメントマークの平面直交座標系上のXY座標を読取り、理論値に一致するように画像を変形処理する変形パラメータを計算して算出する。」について説明する。
図5の例において、アライメントマークは中心部の黒ベタ、白ベタ、黒円の線の太さでどのアライメントマークか識別できる。そして、各アライメントマークの中心部をラベリング処理することでアライメントマークの中心座標を求め、もってアライメントマークの座標を読み取る事ができる。
ここで、アライメントマークの平面直交座標系上の理論座標を(X1、Y1)、(X2、Y2)、(X3、Y3)、(X4、Y4)として、撮像装置(スキャナー)での読取り座標を、(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)、(x4、y4)とする。
ここで下記の関係式が成立し、この関係式により、変形パラメータa11、a12、a13、a14、b11、b12、b13、b14が算出される。
X1=a11×x1+a12×y1+a13×x1×y1+a14
X2=a11×x2+a12×y2+a13×x2×y2+a14
X3=a11×x3+a12×y3+a13×x3×y3+a14
X4=a11×x4+a12×y4+a13×x4×y4+a14
Y1=b11×x1+b12×y1+b13×x1×y1+b14
Y2=b11×x2+b12×y2+b13×x2×y2+b14
Y3=b11×x3+b12×y3+b13×x3×y3+b14
Y4=b11×x4+b12×y4+b13×x4×y4+b14
【0034】
次に、上記「算出された変形パラメータをもとに撮像したテストパターン画像のうち少なくとも色濃度パターン部分を2次元的に変形処理する。」について説明する。
上記で求めた、パラメータa11、a12、a13、a14、b11、b12、b13、b14を用いて、撮像画像全体を変換する。変形前の撮像されたテストパターン画像における色濃度パターンのある画素の平面直交座標系上の座標を(xi、yi)として変形後の座標を(Xi、Yi)とすると
Xi=a11×xi+a12×yi+a13×xi×yi+a14
Yi=b11×xi+b12×yi+b13×xi×yi+b14
となる。
図21の例で説明すると、変形後の基準座標が205.となるところ、変形後右上頂点は206.、変形後右下頂点が207.、変形後左下頂点が208.となり、これに基づきテストパターン画像全体を一括して変形することで撮像したテストパターン画像の位置誤差を2次元的に補正できる。
【0035】
なお、前出のガラスマスクを用いて、600dpiのテストパターン印刷に対して、600dpiの撮像にて、ガラスマスク上の所定の位置を注目点として検証したところ、ノズルの位置誤差は1−2ノズル(42−84μm)に収まっていた。この程度の誤差であれば、実用の範囲内の誤差と評価できる。
【0036】
図22に示すような幅広のテストパターンに対する撮像方法の例を説明する。
一般的に、市販のスキャナーは大きくてもA3サイズまたはA3ノビサイズになる。長手方向でも、400mm程度しか一度に撮像できない。一方インクジェット印刷機においては、1m以上の印刷幅を持つ場合がある。例えば、印刷幅が1.2mの場合、スキャナーで撮像できる40cmサイズに印刷幅方向配置されるアライメントマークが、分割する部分のアライメントマーク双方を含むように3分割して撮像する。
その後、ソフトウエアー上で分割して撮像したテストパターン画像を0−40cm、40−80cm、80−120cmでそれぞれ合成すればいい。テストパターン内に複数のアライメントマークを付けることで、
図22の例では、左画像、中央画像、右画像と3回に分けてスキャナーに読み込ませ、各画像で共有されるアライメントマーク同士の座標を内部で結合する事で、幅広のテストパターンを必要とするインクジェット印刷装置においても、インク濃度誤差を測定する事が可能になる。
【0037】
図7は、インクジェットヘッドのオーバーラップ処理に関する説明図である。本説明
図7では、隣接する2個のインクジェットヘッドが4ノズル分重なりあいオーバーラップしている。
図7に示される×は左側のインクジェットヘッドで印刷を担当する画素を示し、
図7に示される□は右側のインクジェットヘッドで印刷を担当する画素を示す。オーバーラップしている4ノズル分の幅の印刷は、右のインクジェットヘッドと左のインクジェットヘッドがそれぞれ交互に印刷を担当する事で、オーバーラップ部分のインク濃度誤差を低減する事が出来る。本処理で、全体の濃度差を低減した後で、ここまで説明してきた濃度補正手段を行う事でさらに高精度な画質改善が可能になる。
【0038】
以上を前提に、本発明の最良の実施例のうち一つである実施例1として、シングルパス方式印刷における本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0039】
以下、
図8から
図13を用いて実施例1を詳細に説明する。まず、
図8はシングルパス方式におけるインク濃度誤差補正データの作成手順を示し、
図12は印刷する画像データに対して作成した補正データに基づき画像データを変換する作業手順フローを示す。
【0040】
まず、
図8に基づきインク濃度誤差補正データの作成について説明する。まず、使用条件調整工程31において、従来方法である印加電圧の調整により、インクジェットヘッド群を構成する複数のインクジェットヘッドそれぞれに対して、インク濃度誤差を補正する処理を行う。使用条件調整工程31は
図2で説明した処理に相当する。次にオーバーラップ処理工程32において、インクジェットヘッド群を構成し、相互に隣接しオーバーラップしているインクジェットヘッドのつなぎ部分のオーバーラップ処理を行う。オーバーラップ処理の具体的な内容は、
図7において説明した処理に相当する。手順2までの処理によって、インクジェット群を構成するインクジェットヘッド相互のインク濃度誤差と、つなぎ部分のインク濃度誤差は一定程度改善されることになるが、製品として要求される画質としては不十分なものとなる。
【0041】
次にテストパターン準備工程33において、
図5において説明した、印刷すべきテストパターン画像を準備し、このテストパターン画像に対して、プリントガンマ補正工程34においてプリントガンマ補正を行う。なお、プリンタガンマ補正とは、詳細は後述するが、印刷すべき画像データに対して、実際の印刷物の色濃度の変化を濃度ごとにリニアになるように補正するための手段を指す。
【0042】
その後、テストパターン印刷工程35において、インクジェットヘッド群が構成する印刷可能幅全幅分のテストパターンを印刷する。印刷すべきテストパターンは本実施例では
図5に示すものとする。また、印刷するテストパターンの幅は、上記の通り、1個のインクジェットヘッド内のノズルのインク濃度誤差、インクジェットヘッド群を構成する個々のインクジェットヘッド間のインク濃度誤差、隣接するインクジェットヘッドのつなぎ部分のインク濃度誤差及び製造された個々のインクジェット印刷装置相互の個体差から生じるインク濃度誤差の全てを一括して補正する観点から、印刷可能幅全幅分であることが望ましい。
【0043】
そして、テストパターン撮像工程36において、印刷したテストパターンを撮像する。撮像する手段はスキャナーでもその他の撮像手段でもよいが、所定の解像度である等の必要精度でテストパターン全体を撮像することが必要となる。また、この際に
図6で示した、撮像したテストパターン画像の印刷幅端部について端部近傍色濃度とする平均処理を適用することで、上記の撮像装置の光学的な課題を回避し、より高精度な補正データ作成に寄与することができる。
【0044】
最後に、補正データ算出工程37において、撮像したテストパターンの画像の色濃度を測定し、インク濃度誤差を算出したうえで、算出した数値を用いてインク濃度誤差補正データの作成を行う。
【0045】
ここで、具体的なインク濃度誤差補正データ算出方法について
図9から
図11を用いて説明する。
【0046】
図9は、
図3とは異なるインク濃度データの測定例であり、印刷のため入力した色濃度の段階が計9段階の場合のインク濃度の測定例である。入力データの色濃度の幅は0から255の256段階のいずれかであり、数字が多い方が高い色濃度であるとする。
図9では、入力データ255が一番高い色濃度であり、以下224、192、160、128、96、64、32、0と小さくなるにしたがって低い色濃度になる。0は印刷しないので基材の濃度になり、インク濃度は0となっている。横軸は上記の例の通り画像の印刷幅方向の位置を表し、換言するとノズルの位置を示す。
図9の横軸上にはnノズルの位置が示されている。縦軸は濃度を表し、図では入力データ255の時の濃度が一番上に高い濃度で示してあり、以下入力データに従って記載されている。なお、本例においては画像が8ビットで構成されている場合を想定しているが、16ビットなど異なるビット数で構成されることも想定される。
図9は、各濃度、ここでは9段階における全ノズル及び全領域の濃度を示している事になる。これが測定データの全体像となる。なお、
図9では測定データは9個の入力データの色濃度帯のインク濃度であるが、8ビットの場合256点のデータが必要であり、これらのデータは線形補完などの方法で推測作成する事も可能である。
【0047】
図10は、
図9のnノズルとその周辺のノズルにおけるインク濃度誤差データを切り出してプロットしたグラフを表す。
図10ではnノズルと隣のn+1ノズル及びn+2ノズルの3ノズルのインク濃度誤差データをプロットしている。位置はノズル番号で把握してもいいし、画像の位置の番号で把握してもいい。
図10によって印刷領域のnノズルにより印刷された位置のインク濃度の状態が示されることになる。
図10の例では、n+2ノズルの濃度が薄く、nノズルが一番濃くなっている。例えば500mm幅を600dpiの解像度で印刷する場合、500/25.5×600=11811ノズルのヘッド幅が必要になり、
図10のグラフに示されるノズル1個分のインク濃度誤差データが11811個測定されることになる。ただし、処理速度の高速化の観点から2ノズル以上で1グラフとすることもできるし、分解能を向上させる観点から、1ノズル2グラフ以上とすることもできる。2ノズル1グラフの場合グラフは5905個となり、1ノズル2グラフの場合23622個となる。
【0048】
図11は補正データを算出するロジックを説明している。nノズルのデータと補正の目標濃度であるターゲット濃度値(目標濃度)データを示す。nノズルの測定データをターゲット濃度値に変換するにあたり、
図11によると、入力データDiの時のnノズルから出力されるインク濃度はP1であり、ターゲット濃度値はP2であることがわかる。そこで、nノズルを使いP2のインク濃度を出力するには、入力データをDoにする必要がある。よってDiをDоに変換するテーブルを作成することでnノズルからP2のインク濃度を出力することが可能となる。
【0049】
以上の工程を実行することで、インクジェットヘッド群を構成する個々のインクジェットヘッド自体で生じるインク濃度誤差のみならず、インクジェットヘッド群を構成する個々のインクジェットヘッド間相互のインク濃度誤差、隣接するインクジェットヘッドのつなぎ部分のインク濃度誤差及び製造された個々のインクジェット印刷装置相互の個体差から生じるインク濃度誤差の全てを一括して補正することのできるインク濃度誤差補正データを、1回の手順の実行で算出することができる。
【0050】
次に、
図12に基づいて、印刷する画像データに対して作成した補正データに基づき画像データの変換作業を説明する。
【0051】
まず、工程38において、印刷する画像データを準備し、その画像データに対して工程39によってRGB画像のCMYK画像への変換、カラープロファイル変換を行い、その上で工程40においてプリントガンマ変換を画像データに対して実行する。
【0052】
ここで、工程38から工程40までの間に行われている画像データの処理の一例を詳細に説明する。
【0053】
本例では、印刷する画像データは処理開始前においてはRGBの多値データであり各色は通常は8ビットで構成される。これはあくまで一例であり、16ビットや12ビットなど他の階調も想定されるし、パレットなどの異なるデータ形式であることも想定される。画像データはカラープロファイルを介してインク色CMYKの多値データ(通常は8ビット)に変換される。印刷装置が異なる機種であれば、搭載されるインクもその他の機能も異なるため、同じ画像データを印刷しても色味が異なるという課題があるため、一般に、ICCプロファイルという標準仕様のプロファイルを介することで、印刷装置に依存しない色再現性を実現することになる。
【0054】
プリンタガンマ変換は、印刷する画像データに対して、実際の印刷物の色濃度の変化がリニアになるように補正するための手段であり、その実態はテーブル変換になる場合が多い。また、本発明によるインク濃度誤差補正も複数のテーブル変換を駆使して行う場合が多いので、プリンタガンマ変換用のテーブルとインク濃度誤差補正用のテーブルを合成して1つのテーブルで行うことも想定できる。一つのテーブルで行うことで、処理すべき情報量を必要最小限にすることができ、データ処理の高速化が実現できる。
【0055】
以上の工程40までが終了したのちに、画像変換(インク濃度誤差補正)工程41において、補正データ算出工程37で作成したインク濃度誤差補正データを用いて印刷画像全体を変換する。ここで、算出されたインク濃度誤差補正データに基づき、画像を変換する例について詳述する。
図13はnノズルのインク濃度誤差について画像を入力データ256段階で変換した例を示す。
図11において示した算出方法に基づき算出された0から255の全ての濃度帯のインク濃度誤差補正データをプロットすると
図13のような例となる。そこで、
図13にプロットされた補正後の出力データで印刷する画像の色濃度を変換して印刷すれば、nノズルはターゲット濃度値と同じインク濃度で印刷を実行することが出来る。全てのノズル、またはすべての位置データに対して、この工程を実施する事で全領域、全色濃度領域でインク濃度誤差を補正する事が可能になる。なお、
図12における工程38から工程40を実行する前に画像変換(インク濃度誤差補正)工程41の濃度誤差補正を実行すると、結局工程38から工程40までの変換処理によって補正後の濃度が狂うことになるため、画像変換(インク濃度誤差補正)工程41は工程40までが終了してから実行することが望ましい。
【0056】
そして、最後に、
図12における減諧調処理工程42として補正した印刷画像に対して減諧調処理を実行する。ここで減諧調処理について詳細に説明する。
図14は減階調処理の一例の説明図である。一般的に画像データは8ビットで256の濃度階調を有するが、インクジェットヘッドで実現できる諧調は、例えば小滴、中滴、大滴の3サイズを液滴を吐出できる機種の場合、吐出しない場合を含めて4階調しか有しないため、256諧調の濃度階調の画像データを4階調に減階調処理する必要がある。
図14の横軸は入力データを示し、0から255の256階調を持つ。縦軸は各液滴の印刷率であり、100%というのは所定のエリアに全てドットが印刷されている状態を示し、50%の場合は、所定のエリアのうち50%にドットが印刷されている状態を示す。
図14では、入力データが0−aの間は小滴だけが印刷率0%−100%に変化する。入力データがa−bの間は小滴の印刷率が100%−0%に変化し、中滴の印刷率が0%−100%に変化する。入力データがb−255の間は中滴の印刷率が100%−0%に変化し、大滴の印刷率が0%−100%に変化する。すなわち、小滴の印刷率100%が入力データaに対応して、中滴の印刷率100%が入力データbに対応し、大滴の印刷率100%が入力データ255に対応するともいえる。もちろんこの関係は、基材やインクの特性による事であり、大滴を100%使用すると印刷されるインク濃度が濃すぎる可能性があるため、この場合は大滴を100%使わないよう調整する場合もある。
【0057】
以上の手順をすべて実行したうえで、補正された印刷画像データをインクジェット印刷装置によって印刷することで、インクジェットヘッド群を構成する個々のインクジェットヘッドのノズルのインク濃度誤差、インクジェットヘッド群を構成する個々のインクジェットヘッド間のインク濃度誤差、隣接するインクジェットヘッドのつなぎ部分のインク濃度誤差及び製造された個々のインクジェット印刷装置相互の個体差から生じるインク濃度誤差の全てを一括して高度に補正することができ、結果、高画質の印刷を実現することができる。
【0058】
以下に、実施例2について図を参照して詳細に説明する。
【0059】
図15に通常のマルチパス方式印刷における一般的な印刷構成例を示す。マルチパス方式は、上記の通り、同じ部分を複数回に分割して印刷する方式である。
図15においては、第1スキャン16が1回目の描画スキャンを示し、矢印で示すX方向に移動走査しながらインクを吐出させて描画し、この動作が第2スキャン17、第3スキャン18と繰り返される。本例は同じ部分を3分割して印刷する3パスと呼ばれる方式であり、第1スキャン16から第3スキャン18までの3回の重ね印刷によって一部分の印刷画像が完了する方式を示す。第1スキャン16では
図15において示されるインクジェットヘッド下部3分の1の部分を用いて1回目の描画をする。1回のスキャンで通常は最終的に完成する印刷画像のインク濃度である最終濃度の3分の1程度が印刷される。
【0060】
第2スキャン17は2回目の描画スキャンを示し、ヘッドの下3分の2を使い印刷する。2回重ね印刷した部分は最終濃度の3分の2程度になり、下半分は最終濃度の3分の1程度になることは第1スキャン16の場合と同様である。
【0061】
第3スキャン18は3回目の描画スキャンを示し、インクジェットヘッド全体を用いて印刷する。3回の重ね印刷した部分は最終濃度を達成した最終画像となりその部分の印刷が完成する。その後も第4スキャン19、第5スキャン20というように、描画スキャンを繰り返して全体画像を形成するのがマルチパス印刷である。ここで被印刷物とヘッドの関係は相対的であり、ヘッドが矢印のX方向に移動し、被印刷物がY方向に移動してもいい。
【0062】
なお、
図15においては1回のスキャンでインクジェットヘッドの3分の1の長さの画像を印刷することになるが、本発明でいうマルチパス方式の印刷における基本単位は1回のスキャンで印刷する画像の長さを示す。本例ではインクジェットヘッド3分の1の長さが基本単位となるが、もちろん印刷の分割回数を増やせば基本単位は相対的に短くなり、分割回数を減らせば基本単位は相対的に長くなる。また、基本単位は必ずしもインクジェットヘッドのノズル列方向の長さの何分の1という形には限定されない。
【0063】
図16で
図15に対応するテストパターンの例を示す。印刷幅は印刷の基本単位の2倍以上をもつ。
図16(a)は印刷幅が基本単位の2倍である例、
図16(b)は印刷幅が基本単位の5倍の例である。
図15においてX方向はヘッドが移動し、Y方向は被印刷物が移動するとする。N回目のスキャンとn+1回目のスキャンの間に白っぽいまたは黒っぽいスジが入ることがある。この原因は被印刷物の移動量の精度や、基本単位の境界におけるインクと基材の物性的影響から生じるインクの基材上での濡れ広がり方の誤差による物理現象の場合があり、同現象はインクジェット印刷装置業界においてバンディングという用語で説明されている。本発明においてはバンディングも解決すべきインク濃度誤差となる。この点、
図16(a)では印刷の基本単位を2個入れて、スキャンとスキャンの間の境目がテストパターンに含まれるようにテストパターンを印刷することで、バンディングが発生する可能性がある領域を確保している。
図16(b)では印刷の基本単位を5個入れて、より情報量を増やしている。基本単位量を増やすと情報量は増えることでより詳細なインク濃度誤差測定が可能となるが、情報量が増えて処理負担が増大するという問題がある。
【0064】
なお、
図16のマルチパス方式のテストパターンを撮像してインク濃度誤差を算出する場合における、上記の
図6の説明において述べた、撮像したテストパターン画像の印刷幅端部のボケ現象の処理について説明する。マルチパス方式の場合、印刷される基本単位のつなぎ部分のインク濃度誤差の存在は、上記のバンディングの発生に直結することから、より正確なインク濃度誤差の算出が必要となるため、印刷幅端部の処理が特に重要となる。そこで、この場合は、撮像したテストパターンに印刷されている基本単位の隣接部分両端部から算出されるインク濃度誤差の数値を、印刷幅端部に適用する。すなわち、
図16(a)の例で説明すると、各基本単位内の印刷は、すべてのパスで同一のインクジェットヘッドを用いて使用するノズルをそれぞれ同じ分割方法で分割して印刷する以上、各基本単位内におけるインク濃度誤差の発生状況は理論上同一または近似することになる。そこで、
図16(a)の例では、
図16(a)最上部の印刷幅端部におけるボケ現象発生部分に、
図16(a)の基本単位隣接部と接する下の基本単位の上端の数値を適用する。また、
図16(a)最下部の印刷幅端部におけるボケ現象発生部分に、
図16(a)の基本単位隣接部と接する上の基本単位の下端の数値を適用する。同処理によって、理論上は印刷幅端部のより正確な処理を実行することが可能になる。
【0065】
また、ここで、
図16のテストパターンを撮像する場合における撮像条件について詳述する。マルチパス方式の印刷において被印刷物に印刷される画像の解像度は一様ではない。また、マルチパス方式の印刷特有のバンディングの問題や、下記の使用されるノズルと印刷される画像との一致の必要などの関係から、撮像されたテストパターンの解像度はそこで、印刷したテストパターンの解像度と撮像されたテストパターン画像の解像度とを一致させることが必要となる。そこで、テストパターン撮像時は、その解像度を印刷されたテストパターンの解像度に一致させる条件を設定する必要がある。
【0066】
図17を用いて、マルチパス印刷において、インクジェットノズルと印刷画像の位置関係が固定されていることの説明を行う。
図17におけるインクジェットヘッド1は1000個のノズルを有するインクジェットヘッドを示し、この中に、番号が割り振られたインクを吐出するノズルが示されている。このインクジェットヘッドを使用して4パスのマルチパス印刷を実行することを想定すると、各パスの印刷は、インクジェットヘッドノズルを図中のノズル201aから始まるノズル番号1から250の区画、ノズル201bから始まるノズル番号251から500の区画、ノズル201cから始まるノズル番号501から750の区画、ノズル201dから始まるノズル番号751から1000の区画の4区画に分割し、それぞれが分担して、実行される事になる。
【0067】
図17(a)と
図17(b)は、印刷に使用するノズルと印刷された画素の対応関係を示す図であり、画像データを左上基準で示し、ノズル201の番号と画素204の番号によって、印刷された画素と印刷に使用されたノズルとの対応関係を示している。
図17においては同じ4パスの印刷ではあるが
図17(a)と
図17(b)の2種類の4パス印刷の実施例が示されている。
図17(a)はノズル列方向の解像度を4倍にする4パスであり1つの画素のラインを1つのノズルで印刷しており、
図17(b)はノズル方向の解像度は2倍にし、1つの画素のラインを2つのノズルで印刷している。これらの効果についての詳細は本発明には直接は関係しないため、その説明は割愛する。
【0068】
図17(a)の例では、左側書出し位置である1番目のラインは1番ノズル、2番目のラインは251番ノズル、3番目のラインは501番ノズル、4番目のラインは751番ノズルで印刷されており、画像を構成する画素の番号とノズル番号は対応している。
図17(b)の例では、左側書出し位置である1番目のラインは1番ノズルと501番ノズル、2番目のラインは251番ノズルと751番ノズル、3番目のラインは2番ノズルと502番ノズルというように、画像を構成する画素の番号とノズル番号は対応している。
【0069】
このようにして画像とノズル番号の位置関係を一定化することが可能になる。換言すれば、この方法によって、ノズルにより生じるインク濃度誤差、隣接するインクジェットヘッドのつなぎ部分などの関係と、画像を構成する画素の位置関係を一定化することが可能になる。
【0070】
なお、シングルパス方式の印刷の場合、同方式の印刷が、上記の通り、インクジェットヘッドのノズル面の真下を被印刷物が通過する際にノズルからインクが吐出されることにより被印刷物上に画像が描画される方式であり、解像度はインクジェットヘッドのノズルに依存することになるため、
図17のインクジェットヘッドの1の例でいえば、1番目の画素のラインは1番ノズルで印刷され、2番目の画素のラインは2番ノズルで印刷されるということになり、結果として自動的にインクジェットノズルと印刷画像の位置関係が一定化されることになる。
【0071】
以上を前提に、本発明の最良の実施例の一つである実施例2として、マルチパス方式印刷における本発明の実施例を説明する。
【実施例2】
【0072】
図18は、マルチパス方式における本発明の作業手順フローであり、これに基づき説明する。
図18はインク濃度誤差補正データの作成手順を示し、
図19は印刷する画像データに対して作成した補正データに基づき画像データを変換する作業手順フローを示す。なお、すでに実施例1において説明したシングルパス方式の場合の手順と基本的には変わらないため、共通する部分は適宜省略する。
【0073】
まず、
図18に基づきインク濃度誤差補正データの作成について説明する。まず使用条件調整工程51において、従来方法である印加電圧を調整して、インクジェットヘッド群を構成する個々のインクジェットヘッドそれぞれに対して、インク濃度誤差を補正する処理を行い、次にオーバーラップ処理工程52においてインクジェットヘッドのつなぎ部分のオーバーラップ処理を行う。なお、オーバーラップ処理工程52は上記の
図7で説明した通り、インクジェットヘッドがオーバーラップしている場合のみ必要となる。
【0074】
次にテストパターン準備工程53において、
図16において説明したテストパターン画像を準備し、このテストパターン画像に対して、プリントガンマ補正工程54においてプリントガンマ補正を行う。
その後、テストパターン印刷工程55において、インクジェットヘッド群が構成する印刷可能幅全幅分のテストパターンを印刷する。また、印刷するテストパターンの幅は、
図16において説明する通り、基本単位2個分以上の幅を有することが望ましい。
【0075】
そして、テストパターン撮像工程56において、印刷したテストパターンを撮像する。この際に、上記の通り説明した撮像したテストパターン画像の印刷幅端部について、上記のボケ現象に対する処理を適用することで、より正確なインク濃度誤差を算出することが重要となる。
【0076】
最後に、補正データ算出工程57において、撮像したテストパターンの画像の色濃度を測定し、インク濃度誤差を算出したうえで、算出した数値を用いてインク濃度誤差補正データの作成を行う。 具体的な補正データ算出方法は、シングルパス方式の印刷の場合におけるインク濃度誤差補正データ算出の場合と基本的に同一であるが、バンディングが生じている部分についても一括してテストパターンを撮像したうえで算出するため、バンディング部分の補正データも一度に算出できることに特色がある。
【0077】
以上の手順を実行することで、個々のインクジェットヘッド自体で生じるインク濃度誤差のみならず、基本単位の境目に生じるバンディングや、複数のインクジェットヘッドを用いる場合はインクジェットヘッド群を構成する個々のインクジェットヘッド間相互のインク濃度誤差、隣接するインクジェットヘッドのつなぎ部分のインク濃度誤差及び製造された個々のインクジェット印刷装置相互の個体差から生じるインク濃度誤差の全てを一括して補正することのできるインク濃度誤差補正データを、1回の手順の実行で算出することができる。
【0078】
次に、
図19に基づいて、印刷する画像データに対して作成した補正データに基づき画像データの変換作業を説明する。
【0079】
工程58において、印刷する画像データを準備し、その画像データに対して工程59によってRGB画像のCMYK画像への変換、カラープロファイル変換を行い、その上で工程60においてプリントガンマ変換を画像データに対して実行する。
【0080】
以上の工程60までが終了したのちに、画像変換(インク濃度誤差補正)工程61において、補正データ算出工程57で作成したインク濃度誤差補正データを用いて印刷画像全体を変換する 。なお、工程58から工程60を実行する前に画像変換(インク濃度誤差補正)工程61の濃度誤差補正を実行すると、結局工程58から工程60までの変換処理によって補正後の濃度が狂うことになるため、画像変換(インク濃度誤差補正)工程61は工程60までが終了してから実行することが望ましいことは実施例1と同様である。そして、最後に、減諧調処理工程62として補正した印刷画像に対して減諧調処理を実行する。
【0081】
以上の手順をすべて実行したうえで、補正された印刷画像データをインクジェット印刷装置によって印刷することで、個々のインクジェットヘッド自体で生じるインク濃度誤差のみならず、基本単位の境目に生じるバンディングや、複数のインクジェットヘッドを用いる場合はインクジェットヘッド群を構成する個々のインクジェットヘッド間相互のインク濃度誤差、隣接するインクジェットヘッドのつなぎ部分のインク濃度誤差及び製造された個々のインクジェット印刷装置相互の個体差から生じるインク濃度誤差の全てを一括して補正することができ、結果、高画質の印刷を実現することができる。
【0082】
なお、
図20は、本発明のインクジェット印刷装置の構成例である。構成例におけるインクジェット印刷装置は被印刷物の巻き出し部101と印刷部103、被印刷物の巻き取り部105からなる。印刷部103にはインクジェットヘッドが搭載されており、本構成例はシングルパス方式であってもマルチパス方式であってもよい。印刷部103で印刷したテストパターンを撮像装置109として使用するスキャナーで読み取り、コンピューターで処理をする。撮像装置109は、インクジェット印刷装置の中に組み込まれてテストパターンの印刷、テストパターンの撮像、補正データの算出、印刷データの補正等を自動的に行う事も可能である。
【0083】
以上説明した本発明における効果を総合すると、以下の通りとなる。
【0084】
個々のインクジェットヘッドごとの印加電圧の調整などのインク濃度誤差の補正後に、印刷し読み取ったテストパターンに基づき算出された補正データに基づき印刷画像を変換することで、搭載されたインクジェットヘッド群全体に対してインク濃度の補正を行うことができ、産業用途インクジェット印刷装置において、従来の補正方法では実現できない、完成度の高い、高画質の印刷を実現できた。
【0085】
隣接するインクジェットヘッド同士のつなぎの部分の後述のオーバーラップ処理による補正後に、読み取ったテストパターンに基づき算出された補正データに基づき印刷画像補正を実施する事で産業用途用インクジェット印刷装置において完成度の高い、高画質化が実現できた。
【0086】
シングルパス方式によるインクジェット印刷装置においては、インクの種類ごとのインクジェットヘッド群の印刷幅全体を用いてテストパターンを印刷し、印刷したテストパターンを用いて算出された補正データに基づき画像変換を行うことでインクジェットヘッドのノズルごとのインク濃度差とインクジェットヘッド群を構成する各インクジェットヘッド間のインク濃度差と個々の隣接しあうインクジェットヘッド同士のつなぎ部分のインク濃度差を、すべて一括で補正する事が可能になった。
【0087】
インク濃度補正における基準とすべき基準値を定め、インク濃度の補正すべき目標値を基準値に切り替える手段を持つことで、装置間の濃度差を補正する事が可能になった。
【0088】
マルチパス方式によるインクジェット印刷装置においては、印刷画像データとノズル関係を一定化してインクジェットヘッドの1回の移動走査により印刷すべき幅である基本単位2単位分以上の単位の幅のテストパターンに基づき補正データを生成することで、マルチパス方式においても補正が可能になり、より少ないパス数でも高い画質の画像を印刷できるようになったことから、高画質化、印刷の高速化の両立が可能になった。