(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態に至る検討)
現在、各企業は働き方改革の一環として、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を実現するテレワーク制度や、席を固定しないフリーアドレスの仕組みを導入してきており、各社員の生産性向上、業務効率化、ワークライフバランス向上を実現しようとしている。
【0016】
テレワークにおけるサテライトオフィス勤務では、本来の勤務地とは異なる場所での勤務を可能とし、またフリーアドレスといったオフィススタイルでは、各社員が予め決まった固定席ではなく自分で選択した自由な席で働くことを可能としている。
【0017】
そのような働き方において、社員同士や、社員とお客様とのコミュニケーション手段の確保が課題の一つとなっている。
【0018】
社員同士や社員とお客様との連絡手段として、チャットやメール、Web会議といったコミュニケーション手段がいろいろあるものの、その中でも電話による音声コミュニケーションは、多くの企業で導入済みであり、異なる企業間においても、リアルタイムに通信可能であることから、必須の通信手段と言える。しかし、音声コミュニケーションのために、社員ひとりひとりに携帯電話やスマートフォンといったモバイルデバイスを配布すると、会社の通信コストの負担が大きくなるという課題がある。また、個人が所有する私品のスマートデバイスを業務利用するBYOD(Bring Your Own Device)という仕組みもあるが、企業の情報漏洩等、セキュリティ面で対策が必須であり簡単には導入することは難しい。
【0019】
そこで、発明者は、このような多様化が進むオフィス環境に対応し得るコミュニケーション手段を確保するため、多機能電話機を収容する電話交換機を用いたシステムについて検討した。しかしながら、電話交換機のデータ変更にはそれを専門とする工事担当者による作業が必要であり、リアルタイム性、フレキシブル性が欠けるという課題がある。
【0020】
例えば、フリーアドレスオフィスに設置された共用電話機の台数が利用者数より少ない場合でも、設置されている共用電話機を、利用者全員が自分の専用電話機として使用可能とする必要がある。特許文献1では、座席数に比べて設置電話機台数が少ないフリーアドレスオフィスにおいて、設置電話機台数以上の利用者が在席する場合、電話機を利用できない利用者が出る恐れがある。また、特許文献2及び3では、1台の共用電話機に複数人が同時に個人認証することで、当該1台の共用電話機を当該複数人で共同利用することはできない。
【0021】
このため、以下の実施の形態では、1つの電話機を不特定多数のユーザで共有可能とするため、セキュリティを確保しつつ、電話交換機のデータ変更を自動で行い、多機能電話機に収容するライン情報をフレキシブルに変更可能とする。
【0022】
(実施の形態の概要)
図1は、実施の形態に係る電話交換システムの概要を示し、
図2は、実施の形態に係る電話交換装置の概要を示し、
図3は、実施の形態に係る電話端末の概要を示している。
図1に示すように、実施の形態に係る電話交換システム1は、互いに通信可能に接続された電話交換装置10と電話端末20を備えている。電話端末20は、ユーザAやユーザBなど複数のユーザが認証を行い、共有可能である。
【0023】
図2に示すように、電話交換装置10は、記憶部11、取得部12、登録部13、制御部14を備えている。記憶部11は、電話端末20ごとに複数の個人電話番号(内線番号)を登録する登録テーブル11aを記憶する。取得部12は、電話端末20に対するユーザの認証結果を取得する。登録部13は、取得した認証結果に応じて、電話端末20とユーザの個人電話番号とを関連付けて登録テーブル11aに登録する。制御部14は、登録された登録テーブルに基づいて、電話端末20におけるユーザの個人電話番号を用いた発着信を制御する。
また、
図3に示すように、電話端末20は、複数のユーザによる共有を可能とするため、認証部21、取得部22、設定部23、出力部24を備えている。認証部21は、入力されるユーザの認証情報により、例えば認証処理を実行する電話交換装置10等に対し認証要求を行う。取得部22は、例えば認証結果に応じて個人電話番号を登録する電話交換装置10等から、認証要求に対する認証結果とユーザの個人電話番号とを取得する。設定部23は、取得した個人電話番号を含む複数の個人電話番号のそれぞれの着信出力動作を設定する。出力部24は、設定された着信出力動作に基づき、着信した個人電話番号に応じた着信出力動作を行う。
【0024】
このように、実施の形態では、電話端末に対するユーザの認証結果に応じて、電話端末とユーザの個人電話番号(内線番号)とを関連付けて自動で登録するため、利用者数がフリーアドレスオフィスに設置された共用電話機の台数より多い場合でも、利用者全員が当該共用電話機を同時に自分の専用電話機同様に利用することができる。
【0025】
すなわち、実施の形態によれば、サテライトオフィスやフリーアドレスフロアに、個人認証を行うための機能を備えた多機能電話機を設置し、該当多機能電話機に収容するサブライン(内線番号)をフレキシブルに自動で変更可能とする手段を実現することで、ひとりで利用する場合だけなく、複数ユーザで共有する場合においても、セキュリティやユーザのモビリティを確保しつつ、音声によるコミュニケーション手段の確保が可能となる。
【0026】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。まず、本実施の形態に係る電話交換システムの構成について説明する。
【0027】
図4は、本実施の形態に係る電話交換システム2の構成例を示している。
図4に示すように、電話交換システム2は、電話交換機100、複数の多機能電話機200、個人認証システム300、個人データベース310を備えている。なお、
図4の構成は一例であり、後述する本実施の形態に係る動作が可能であればその他の構成でもよい。
【0028】
電話交換システム2は、電話交換機100が複数の内線番号を使用する多機能電話機200を収容し、個人認証を利用して複数のユーザによる多機能電話機200の共有を可能とする。このような共有を実現するため、多機能電話機200はユーザの個人認証を行うための機能を有し、個人認証システム300はユーザの生体認証等の機能を有し、個人データベース310は認証するユーザに対する内線番号を管理し、電話交換機100は個人認証システム300から電話データ(登録データ)の変更を可能とするインタフェースを有している。
【0029】
電話交換機100、複数の多機能電話機200、及び個人認証システム300は、LAN(Local Area Network)などのネットワーク400を介して通信可能に接続されている。個人データベース310は、個人認証システム300と直接接続されてもよいし、LAN400を介して接続されてもよい。
【0030】
多機能電話機200は、サテライトオフィスやフリーアドレスフロア、会議室等に設置された内線電話機であり、複数のユーザが共有可能な共有電話機である。1台の多機能電話機200において、複数のユーザが個人認証を行って、認証に成功すると、複数のユーザのそれぞれが、当該1台の多機能電話機200を、個人の専用電話機として利用可能となる。専用電話機の機能には、個人の電話番号による通話のほか、個人用のワンタッチボタンの設定等が含まれる。
【0031】
多機能電話機200は、複数のユーザの個人認証に必要な認証データを入力するための認証機器210を有する。認証機器210は、例えば、ID/パスワード認証のためのID/パスワード入力手段、ICカード認証(社員証認証)のためのICカードリーダ、顔認証のためのカメラ、その他の生体認証のための生体情報入力手段等である。認証機器210は、多機能電話機200の外部の装置であってもよいし、多機能電話機200の内部の装置でもよい。
【0032】
多機能電話機200は、個人認証や共有電話機に必要な機能を実現するため、例えば、通信IF(インタフェース)201、記憶部202、認証部203、表示部204、スピーカ205、マイク206、操作部207、制御部208を備える。
【0033】
通信IF201は、ネットワーク400を介して、電話交換機100や個人認証システム300と通信を行う通信部である。例えば、通信IF201は、個人認証に関するデータやメッセージを個人認証システム300との間で送受信し、また、発着信や通話に関するデータやメッセージを電話交換機100との間で送受信する。
【0034】
記憶部202は、多機能電話機200の動作に必要なデータを記憶する。例えば、記憶部202は、多機能電話機200の識別情報(固有データ)や、個人認証が成功した複数のユーザの内線番号、内線番号ごとにそれぞれ異なる着信音や着信ランプ等の情報を記憶し、必要に応じて個人認証のための情報(内線番号に関連付けられる照合データ)等を記憶する。記憶部202は、複数の内線番号のそれぞれの着信出力動作やワンタッチボタン、電話帳などの個人設定情報を設定する設定部であるとも言える。内線番号ごとの個人設定情報は、予め記憶部202に設定されていてもよいし、電話交換機100から登録結果を取得した際に登録されたユーザの操作等に応じて設定されてもよい。表示部204及びスピーカ205は、記憶部202の個人設定情報に基づき、着信する内線番号ごとに異なる着信出力動作を行う出力部であるとも言える。
【0035】
認証部203は、複数のユーザの個人認証に必要な処理を実行する。例えば、認証部203は、認証機器210を介してユーザが入力した認証データ(ID/パスワード情報、ICカード情報、顔の画像情報、その他の生体情報等)を取得し、取得した認証データと多機能電話機200の識別情報を、通信IF201及びネットワーク400を介して個人認証システム300へ送信する(認証要求を行う)。また、認証部203は、発着信時、必要に応じてユーザを特定するため認証処理を行う。認証部203は、発信操作を行うユーザの認証結果に応じて発信元の内線番号を特定してもよい。
【0036】
表示部204は、発着信や通話時に必要な情報を表示する。表示部204は、発着信時に、発信元の内線番号(外線番号)や発信者名、着信先の内線番号(外線番号)や着信者名等を表示する。表示部204は、利用するユーザの内線番号ごとに異なる表示を行うことが好ましい。例えば、表示部204は、着信時、着信した内線番号に割り当てられた表示方法(着信ランプの色や点滅等)で表示する。
【0037】
スピーカ205は、発着信や通話時に音声等を出力する。スピーカ205は、利用するユーザの内線番号ごとに異なる音を出力することが好ましい。例えば、スピーカ205は、着信時、着信した内線番号に割り当てられた着信音で鳴動する。マイク206は、ユーザが通話時に音声を入力する。操作部207は、ボタンやタッチパネル等であり、個人認証や発着信に必要なユーザ操作を受け付ける。制御部208は、多機能電話機200の各部の動作を制御する制御部である。例えば、制御部(取得部)208は、電話交換機100から認証結果と認証されたユーザの内線番号(登録結果)を取得し、取得した内線番号を用いてユーザごとの発着信動作や通話動作を制御する。
【0038】
個人認証システム300は、多機能電話機200を使用する複数のユーザの個人認証処理を実行する認証装置である。なお、個人認証システム300は、電話交換機100の内部に設けられていてもよい。個人認証システム300は、個人認証処理を実行に必要な機能を実現するため、例えば、通信IF301、記憶部302、認証部303、検索部304を備える。
【0039】
通信IF301は、ネットワーク400を介して、多機能電話機200や電話交換機100と通信を行う通信部である。例えば、通信IF301は、個人認証に関するデータやメッセージを多機能電話機200との間で送受信し、また、多機能電話機200の内線番号に関するデータやメッセージを電話交換機100との間で送受信する。
【0040】
記憶部302は、個人認証システム300の動作に必要なデータを記憶する。例えば、記憶部302は、個人認証のための照合データと個人を特定する個人データ(個人識別情報)とが関連付けて記憶されている。
【0041】
認証部(認証処理部)303は、通信IF301及びネットワーク400を介して、多機能電話機200から複数のユーザの個人認証に必要なデータ等を受信し、個人認証処理を行う。個人認証処理は、ID/パスワード情報によりユーザを認証するID/パスワード認証処理、ICカード情報によりユーザを認証するICカード認証処理、顔の画像情報によりユーザを認証する顔認証処理、指紋などその他の生体情報によりユーザを認証する生体認証処理等である。認証部303は、記憶部302の照合データを参照し、多機能電話機200を介して得られる認証データに基づき、その人物を認証及び特定する。すなわち、認証成功すると、ユーザの認証データと一致した照合データに関連付けられた個人データにより、個人を特定できる。
【0042】
検索部304は、個人データベース310を参照し、認証成功した複数のユーザの内線番号等(認証結果)を検索する。個人データベース(内線番号データベース)310には、個人データと内線番号(内線番号情報)とが関連付けて記憶されている。検索部304は、個人データベース310と連携して、認証処理により特定した人物に紐づけられた内線番号を取得し、特定された内線番号と多機能電話機200の識別情報を、通信IF301及びネットワーク400を介して電話交換機100へ送信する。検索部304は、認証成功したユーザの個人データを内線番号に変換する変換処理部であるとも言える。
【0043】
電話交換機100は、PBX等であり、複数の多機能電話機200を収容し、収容する多機能電話機200の内線番号を登録する電話交換装置である。電話交換機100は、内線番号の登録や電話交換装置に必要な機能を実現するため、例えば、通信IF101、記憶部102、登録部103、制御部104を備えている。
【0044】
通信IF101は、ネットワーク400を介して、多機能電話機200や個人認証システム300と通信を行う通信部である。例えば、通信IF101は、多機能電話機200の内線番号に関するデータやメッセージを個人認証システム300との間で送受信し、また、発着信や通話に関するデータやメッセージを多機能電話機200との間で送受信する。
【0045】
記憶部102は、電話交換機100の動作に必要なデータを記憶する。例えば、記憶部102は、多機能電話機200ごとに複数の内線番号(サブライン)を登録する登録テーブル102aを記憶する。
図5は、記憶部102に登録される登録テーブル102aの一例を示している。
図5に示すように、登録テーブル102aは、多機能電話機200の識別情報と、その多機能電話機200を使用するユーザの内線番号とが関連付けて記憶される。電話機の識別情報は、多機能電話機200を特定できる任意の識別情報であり、例えばIPアドレス等である。
図5の例では、識別情報“XXX.XXX.XXX.001”の電話機において、内線番号“1111”、“2222”が使用可能であり、識別情報“XXX.XXX.XXX.002の電話機において、内線番号”3333“が使用可能となるように登録されている。
【0046】
登録部103は、通信IF101及びネットワーク400を介して、個人認証システム300から内線番号等を受信する。登録部103は、多機能電話機200に対するユーザの認証結果(内線番号等)を取得する取得部であるとも言える。登録部103は、認証成功した複数のユーザの内線番号と多機能電話機200の識別情報を受信し、それらの情報からその多機能電話機200のサブラインとして受信した複数の内線番号を登録テーブル102aに自動的に登録(追加)する。また、登録部103は、ユーザが該当多機能電話機200上で自身の内線番号の登録削除操作を行うと、登録テーブル102aから該当する内線番号を削除する(サブライン設定を解除する)。なお、サブライン登録の解除方法として、ユーザ自身が解除操作を行う代わりに、他の多機能電話機で個人認証を行ってサブライン登録した際に、元の多機能電話機へのデータ設定を変更してもよい。
【0047】
制御部104は、電話交換機100の各部の動作を制御する制御部であり、例えば、登録テーブル102aに基づき多機能電話機200の内線番号ごとの発着信や通話を制御する。制御部104は、登録テーブル102aを参照し、登録されている内線番号への着信は該当多機能電話機200へ着信させるよう制御する。
【0048】
図4のような構成により、発信者は電話をかけたい相手の居場所(サテライトオフィスやフリーアドレスフロア、会議室等)を意識することなく、同じ内線番号で発信することで通話可能となるため、確実に相手と音声コミュニケーションをとることが可能となる。
【0049】
次に、本実施の形態に係る電話交換システムの動作について説明する。なお、以下では、一人のユーザによる登録や発着信について説明するが、本実施の形態では、多機能電話機に複数のサブライン(内線番号)を収容可能であり、複数のユーザに対し以下の動作を実施することで、1台の多機能電話機を共有して利用可能となる。
【0050】
図6は、本実施の形態に係る電話交換システム2の登録動作の流れを示している。
図6に示すように、まず、ユーザは、例えば作業する場所に一番身近に設置されている多機能電話機200を選択し(S101)、選択した多機能電話機200の認証機器210を操作して個人認証を実行する(S102)。そうすると、多機能電話機200の認証部203は、認証処理を開始し(S103)、認証機器210に入力された認証データを取得し(S104)、取得した認証データと多機能電話機200の識別情報(例えば“XXX.XXX.XXX.001”)を個人認証システム300へ送信する(S105)。
【0051】
続いて、個人認証システム300の認証部303は、認証処理を実行する(S106)。認証部303は、多機能電話機200から受信した認証データと、予め記憶部302に登録されている照合データとを照合し、個人を特定する。このとき、記憶部202に認証データと一致する照合データがない場合、すなわち、個人が特定できない場合、認証エラーと判断し、エラー結果を多機能電話機200へ送信し(S107)、処理を中断する。
【0052】
一方、記憶部202に認証データと一致する照合データがある場合、すなわち、個人を特定できた場合、検索部304は、検索処理を実行する(S108)。例えば、検索部304は、個人データベース310へユーザの認証結果(照合データに対応する個人データ)を送信し、個人ごとに紐づけられた内線番号を個人データベース310から個人データに対応する内線番号を照合する。個人データベース310は、ユーザの内線番号検索結果(個人データに対応する内線番号)を個人認証システム300へ返信する。検索部304は、返信された結果に含まれる内線番号(例えば“1111”)を、データ変更を要する多機能電話機200の識別情報とともに電話交換機100へ送信する(S109)。
【0053】
続いて、電話交換機100の登録部103は、該当する多機能電話機200のデータ変更処理を実行する(S110)。登録部103は、登録テーブル102aにおいて該当する多機能電話機200のサブラインデータ(内線番号)を変更する。例えば、多機能電話機200の識別情報“XXX.XXX.XXX.001”と内線番号“1111”を受信すると、
図5のように、登録テーブル102aに識別情報“XXX.XXX.XXX.001”と内線番号“1111”を関連付けて登録する。さらに、登録部103は、その処理結果(認証結果およびデータ設定結果)を該当する多機能電話機200へ送信する(S111)。そうすると、多機能電話機200の制御部208は、認証結果および電話交換機100のデータ設定結果を取得し、表示部204が該当ユーザへ取得した結果を表示する(S112)。以後、該当ユーザあての着信は本手順でデータ設定された多機能電話機200へ行われる。
【0054】
図7は、本実施の形態に係る電話交換システムの動作を示しており、
図6の登録動作が完了した後の着信動作を示している。
【0055】
図7に示すように、まず、発信元の電話機で着信先の内線番号に対する発信操作が行われると、電話交換機100は、発信元の電話機から着信先の内線番号(例えば“1111”)に対する着信要求メッセージを受信する(S201)。なお、発信元の電話機は、電話交換機100が収容する電話機でもよいし、外部のネットワークの電話機でもよい。すなわち、発信元の電話機の電話番号は、内線番号でもよいし外線番号でもよい。
【0056】
電話交換機100の制御部104は、着信要求メッセージを受信すると、登録テーブル102aを参照し、受信した着信要求メッセージに含まれる着信先の内線番号に関連付けられた多機能電話機200(例えば識別情報が“XXX.XXX.XXX.001”の電話機)を選択し(S202)、選択した多機能電話機200へ着信要求メッセージを送信する(S203)。
【0057】
続いて、多機能電話機200の制御部208は、電話交換機100から着信要求メッセージを受信すると、受信した着信要求メッセージに含まれる着信先の内線番号に応じた着信動作を行う。例えば、記憶部202に予め登録されている内線番号に対応した着信音や着信ランプの情報に基づき、スピーカ205から着信先の内線番号に応じた着信音を鳴動し(S204)、表示部204に着信先の内線番号及び着信ランプを表示する(S205)。
【0058】
多機能電話機200において、内線番号(サブライン)ごとに異なる着信音や着信ランプを設定可能とすることで、複数ユーザで共有している場合においても、着信音や着信ランプにより、どのユーザあての電話かを判断することが可能となる。これにより、ひとりひとりに多機能電話機やモバイルデバイスを用意する必要がなくなり、ランニングコストを抑えた効率的な電話システムの構築が可能となる。
【0059】
さらに、多機能電話機200の制御部208は、発信元の電話機に対する着信中メッセージを電話交換機100へ返信する(S206)。この着信中メッセージには、着信先の内線番号(例えば“1111”)が含まれる。さらに、電話交換機100の制御部104は、返信された着信中メッセージを発信元の電話機へ送信する(S207)。
【0060】
続いて、多機能電話機200の操作部207に対しユーザが応答操作を行う(S208)。このとき、応答操作を行うユーザを特定するため認証処理を行う(S209)。この認証処理は、多機能電話機200の認証部203で実行してもよいし、個人認証システム300に認証を要求することで実行してもよい。認証機器210に入力されるユーザの認証データが、着信中の内線番号のユーザの照合データと一致した場合に認証が成功する。なお、在席している他のユーザが代理で応答する場合、認証処理は省略して応答可能としてもよい。
【0061】
認証が成功すると、多機能電話機200の制御部208は、発信元の電話機に対する応答メッセージを電話交換機100へ送信する(S210)。この応答メッセージには、着信先の内線番号(例えば“1111”)が含まれる。さらに、電話交換機100の制御部104は、受信された応答メッセージを発信元の電話機へ送信する(S211)。これにより、通話可能な状態となるため、多機能電話機200の制御部208は、表示部204に通話可能となった内線番号を表示し(S212)、マイク206及びスピーカ205により発信元の電話機と通話が開始される(S213)。
【0062】
図8は、本実施の形態に係る電話交換システムの動作を示しており、
図6の登録動作が完了した後の発信動作を示している。
【0063】
図8に示すように、まず、多機能電話機200の操作部207に対しユーザが着信先の電話機への発信操作を行う(S301)。このとき、発信操作を行うユーザを特定するため認証処理を行う(S302)。この認証処理は、多機能電話機200の認証部203で実行してもよいし、個人認証システム300に認証を要求することで実行してもよい。認証機器210に入力されるユーザの認証データが、多機能電話機200を使用するユーザの照合データと一致した場合に認証が成功し、使用するユーザ及び内線番号が特定される。
【0064】
例えば、多機能電話機200の表示部204に特定したユーザが使用する電話帳のデータを表示してもよいし、特定したユーザ用のワンタッチボタンが使用できるようにしてもよい。なお、在席している他のユーザが代理で発信する場合、認証処理は省略し、発信する内線番号を選択できるようにしてもよい。また、着信先の電話機は、電話交換機100が収容する電話機でもよいし、外部のネットワークの電話機でもよい。すなわち、着信先の電話機の電話番号は、内線番号でもよいし外線番号でもよい。
【0065】
認証が成功すると、多機能電話機200の制御部208は、着信先の電話機に対する発信要求メッセージを電話交換機100へ送信する(S303)。この発信要求メッセージには、ユーザが入力した着信先の電話機の電話番号と、認証により特定されたユーザの発信元の内線番号(例えば“1111”)が含まれる。さらに、電話交換機100の制御部104は、受信された発信要求メッセージを着信先の電話機へ送信する(S304)。
【0066】
続いて、電話交換機100は、着信先の電話機から発信元である多機能電話機200の内線番号に対する着信中メッセージを受信する(S305)。そうすると、着信時のS202と同様、電話交換機100の制御部104は、登録テーブル102aを参照し、受信した着信中メッセージに含まれる発信元の内線番号に関連付けられた多機能電話機200(例えば識別情報が“XXX.XXX.XXX.001”の電話機)を選択し(S306)、選択した多機能電話機200へ着信中メッセージを送信する(S307)。
【0067】
続いて、多機能電話機200の制御部208は、電話交換機100から着信中メッセージを受信すると、表示部204に着信中の表示を行う(S308)。このとき、着信時と同様に、発信元の内線番号に応じた表示を行ってもよい。
【0068】
続いて、着信先の電話機で応答操作が行われると、電話交換機100は、着信先の電話機から発信元である多機能電話機200の内線番号に対する応答メッセージを受信する(S309)。そうすると、着信時のS202及びS306と同様、電話交換機100の制御部104は、登録テーブル102aを参照し、受信した応答メッセージに含まれる発信元の内線番号に関連付けられた多機能電話機200を選択し(S310)、選択した多機能電話機200へ応答メッセージを送信する(S311)。これにより、通話可能な状態となるため、多機能電話機200の制御部208は、表示部204に通話可能となった内線番号を表示し(S312)、マイク206及びスピーカ205により着信先の電話機と通話が開始される(S313)。
【0069】
以上のように、本実施の形態では、企業内で利用されている多機能電話機等の内線電話から、その内線電話を利用したいユーザが個人認証を行うことで、そのユーザに紐づけられた内線番号が特定され、その内線電話の1つのライン(サブライン)として自動登録を可能とする。また、1台の内線電話には、個人認証を完了した複数のユーザの内線番号をサブラインとして登録可能とすることにより、1台の内線電話を複数のユーザで共有することを可能とする。
【0070】
なお、このような内線電話のデータ設定は、通常、専門の工事担当者によるデータ変更が必要となるが、システムでリアルタイムかつ、自動で登録・削除することを可能とすることで、ユーザの働く場所を固定しないフレキシブルな電話システムを構築可能とする。
【0071】
本実施の形態にかかるシステムを導入することにより、ユーザは働く場所によらず、身近にある共有の多機能電話機をあたかも自分の端末として利用可能となり、音声によるコミュニケーション手段を確保することが可能となる。企業側としても個人ごとにモバイルデバイスを用意する必要がなくなり、柔軟な電話システムを構築することが可能となるため、通信コストの負担低減を行うことが可能である。
【0072】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態において、複数のライン(サブライン)を収容可能な多機能電話機に代えて、同様な機能を有する、パーソナルコンピュータやスマートフォン上で動作するソフトフォンを共有する電話機としても良い。
【0073】
上述の実施形態における各構成は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。各装置の機能(処理)を、CPUやメモリ等を有するコンピュータにより実現してもよい。例えば、記憶装置に実施形態における方法(電話交換装置の制御方法)を行うためのプログラムを格納し、各機能を、記憶装置に格納されたプログラムをCPUで実行することにより実現してもよい。
【0074】
これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。