特許第6898083号(P6898083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898083
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】押出機の口金および押出機
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/13 20190101AFI20210628BHJP
   B29C 48/30 20190101ALI20210628BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20210628BHJP
【FI】
   B29C48/13
   B29C48/30
   B29C48/92
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-233013(P2016-233013)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-89793(P2018-89793A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】松山 稔矢
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正義
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 勝治
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−009817(JP,A)
【文献】 特開昭52−063264(JP,A)
【文献】 特開2014−172250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性のある被成型材料を押し出す押出機に設けられ、前記被成型材料の流路が内側に形成され、前記被成型材料の押出口が先端に形成された口金において、
前記流路内に進退可能な1または複数の流動抵抗部材が設けられ、前記進退は口金外部からの操作により行われ、
前記流路の流動方向に直交する方向の断面形状が、左右非対称であるか、三角形であり、
前記流路が、前記押出口側の前方部で上下方向に狭く、前記押出機側の後方部で上下方向に広く、
上下方向に広い前記後方部が、前記流路の左右方向の一方側において前記流路の流動方向に長く、前記流路の左右方向の他方側において前記流路の流動方向に短い、押出機の口金。
【請求項2】
前記流路の流動方向に直交する方向の断面が長孔状であり、前記流路の近接する対向面のいずれかに複数の前記流動抵抗部材が並んでいる、請求項1に記載の押出機の口金。
【請求項3】
前記流動抵抗部材が設けられた本体と、前記本体の押し出し方向の端部に設けられた別体とを備え、前記別体には最終プロファイル形状の前記押出口が形成されている、請求項1または2に記載の押出機の口金。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の口金を備える押出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押出機の口金および押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムや合成樹脂等の流動性のある被成型材料の押出成型では、被成型材料が押し出されて形成された成型部材が真っ直ぐである必要があるにもかかわらず、押出機の押出口の形状が非対称であること等が原因となって、成型部材が湾曲してしまう場合がある。また、反対に、成型部材が所定の曲率で湾曲することが望まれる場合もある。
【0003】
そこで、押出機本体と口金との間に成型用金型が設けられた特許文献1の発明が提案されている。この成型用金型の内部には入れ子が設けられており、入れ子には押出機本体から口金へ通じる複数のゴムの流路が形成されている。そして流路毎に内径の大きさが部分的に異なる。内径が大きいほどその流路はゴムの流量が多いので、口金から押し出されるゴム成形物は、内径の大きな流路側が外径側、内径の小さな流路側が内径側となるように湾曲する。
【0004】
また、押出機本体の排出口にダイが設けられ、ダイの排出口に口金が設けられた特許文献2の発明が提案されている。この発明では、口金のダイに対する取付け位置が変更可能となっている。口金のダイに対する取付け位置次第で、口金のゴムの受け口に、ダイから排出されるゴムを直接受ける部分と直接受けない部分が生じ、これらの部分の間でゴムの流速に差が生じる。その結果、口金から押し出されるゴムが所定の曲率で湾曲する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−183750号公報
【特許文献2】特開2014−172250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の発明では、ゴム成形物の曲率を変えたいときは、作業者が口金および成型用金型を押出機本体から取り外して入れ子を取り替えなければならず、作業者にとって労力となっていた。また、様々な曲率のゴム成形物の生産に対応するためには、曲率毎の多数の入れ子を製造し管理しなければならない。また、作製した入れ子で押し出しのテストをして所望の曲率等が得られなかった場合には、入れ子を設計及び作製し直す必要があり、この設計及び作製が容易なことではなかった。また特許文献2の発明では、押し出されるゴム成形物の曲率を変えたいときは、作業者が口金のダイに対する取付け位置を変えなければならず、作業者にとって労力となっていた。さらに、口金の取付け位置を口金幅方向に変えたときは、それに合わせてゴム成形物を受ける設備例えば成型ドラムや引き取りテーブル等といった受け側も口金幅方向に移動させなければならないため、ゴム成形物を受ける設備にスライド機構が必要になる。
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、口金を押出機本体から取り外したり口金の取付け位置を変更したりしなくても、成型部材の形状を変えることができる押出機の口金および押出機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の押出機の口金は、流動性のある被成型材料を押し出す押出機に設けられ、前記被成型材料の流路が内側に形成され、前記被成型材料の押出口が先端に形成された口金において、前記流路内に進退可能な1または複数の流動抵抗部材が設けられ、前記進退は口金外部からの操作により行われ、前記流路の流動方向に直交する方向の断面形状が、左右非対称であるか、三角形であり、前記流路が、前記押出口側の前方部で上下方向に狭く、前記押出機側の後方部で上下方向に広く、上下方向に広い前記後方部が、前記流路の左右方向の一方側において前記流路の流動方向に長く、前記流路の左右方向の他方側において前記流路の流動方向に短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の押出機の口金および押出機によれば、口金を押出機本体から取り外したり口金の取付け位置を変更したりしなくても、成型部材の形状を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】押出機1の前後方向の断面図。
図2】押出口33の形がビードフィラー形である口金30を押出口33側から見た斜視図。
図3図2のA−A断面図(ボルト36の先端に流動抵抗部材40が固定されている形態)。
図4図2のA−A断面図(棒42の先端に流動抵抗部材40が固定されている形態)。
図5】流動抵抗部材40のバリエーションを示す図。(a)円柱の流動抵抗部材40を流路32側から見た斜視図。(b)四角柱の流動抵抗部材40を流路32側から見た斜視図。(c)角部が面取りされた円柱の流動抵抗部材40を流路32側から見た斜視図。(d)円錐の流動抵抗部材40を流路32側から見た斜視図。(e)円錐の流動抵抗部材40が収容穴34に収容された状態を流路32側から見た斜視図。(f)角部が面取りされた円柱の流動抵抗部材40が収容穴34に収容された状態を流路32側から見た斜視図。
図6】流動抵抗部材40が並んでいる面を被成型材料の流路32側から見た図。(a)複数の流動抵抗部材40が2列に並んでいる形態を示す図。(b)複数の流動抵抗部材40が1列に並んでいる形態を示す図。
図7】口金30からの押し出しの様子を示す図。(a)流動抵抗部材40が流路32内に進出していないときの図。(b)少数の流動抵抗部材40が少し進出したときの図。(c)bのときより多くの流動抵抗部材40がbのときより大きく進出したときの図。
図8】口金130からの押し出しの様子を示す図。(a)流動抵抗部材40が流路132内に進出していないときの図。(b)複数の流動抵抗部材40のうちの一部が流路132内に進出したときの図。
図9】口金230からの押し出しの様子を示す図。(a)流動抵抗部材40が流路232内に進出していないときの図。(b)複数の流動抵抗部材40のうちの一部が流路232内に進出したときの図。
図10】(a)口金330の上下方向中央位置での断面図で、口金330の流路332の下面238を上から見た図。(b)口金330の前後方向の断面図で、(a)のB−B位置での断面図。(c)口金330の前後方向の断面図で、(a)のC−C位置での断面図。
図11】複数の流動抵抗部材40が流路32の左右方向に隙間無く並べられている口金の左右方向の断面図。
図12】本体530aと別体530bとを備える口金530の前後方向の断面図。
図13】第1流動抵抗部材640および第2流動抵抗部材642を備える口金を示す図。(a)左右方向の断面図。(b)前後方向の断面図。
図14図10の口金330において流動抵抗部材40の流路332への進出量を変化させたときの成型部材50の外径の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の押出機1およびその口金30について図面に基づき説明する。なお本実施形態は例示であって、発明の範囲はこれに限定されない。また以下の説明において、前方とは押し出し方向のことであり、後方とは押し出し方向と反対の方向のことである。また左右とは口金30より前方から口金30を見たときの左右のことである。また図中の矢印は、特に断りがない限り、被成型材料の流動方向又は成型部材50の移動方向を示す。
【0012】
本実施形態の押出機1はゴムや合成樹脂等の流動性のある被成型材料を押し出し成型するものである。図1に示すように、押出機1は、押出機本体10と、押出機本体10の押し出し方向の先端に設けられた口金30とを備える。
【0013】
押出機本体10は横倒しにされた円筒状のバレル11を備える。バレル11の上部には被成型材料が投入されるホッパー14が接続されている。バレル11の内部には、バレル11の中心軸に沿ってスクリュー12が収容されている。スクリュー12は、バレル11の後方に設けられたモータ13が駆動することにより回転し、ホッパー14から投入された被成型材料を前方へ押し出す。バレル11は図示しないヒータによって温度調節可能となっている。
【0014】
なお、押出機本体10のスクリュー12より前方の場所にギアポンプが設けられていても良い。ギアポンプは送り出し量を制御しながら被成型材料を前方へ送り出す。また、スクリュー12の代わりにピストンが設けられ、ピストンが被成型材料を前方へ押し出す構造であっても良い。
【0015】
口金30は前後方向に貫通する流路32を有する。被成型材料は流路32内を前方へ向かって流動する。流路32の前方の端部が押出口33である。
【0016】
流路32の断面形状(流路の断面形状とは被成型材料の流動方向に直交する方向の断面の形状のことである)および押出口33の形状は限定されない。図2の実施形態の場合は、流路32の断面形状および押出口33の形状は、左右方向に長い長孔状であり、より具体的には横倒しにされたタイヤのビードフィラーの断面形状である。そのため、流路32は、左右方向の一方側(図2では左側)で上下方向に高く、他方側(図2では右側)で上下方向に低い。
【0017】
口金30には流路32内に進退可能な1または複数の流動抵抗部材40が設けられている。流動抵抗部材40は、流路32内に進出したときに被成型材料の流動に対する抵抗となる部材で、例えば円柱の部材である。流動抵抗部材40が設けられる場所は、限定されないが、図2のように流路32の断面が長孔状の場合は、例えば流路32の近接する対向面である上面37および下面38のいずれか一方である。図2では流動抵抗部材40が下面38に設けられている。
【0018】
流動抵抗部材40は口金30の外部からの操作により流路32内に進退可能となっている。流動抵抗部材40の進退に関わる構造は限定されない。図3の場合は、口金30の流路32の下面38に対する凹部として流動抵抗部材40と同一形状の収容穴34が形成され、収容穴34の底部から口金30の外部にかけてボルト孔43が貫通している。ボルト孔43にはボルト36が通され、ボルト36の先端に流動抵抗部材40が固定されている。この構造において、作業者がボルト36を口金30の内部にねじ込む方向に回すと流動抵抗部材40が流路32内に進出し、反対方向に回すと流動抵抗部材40が流路32内から後退する。作業者は、ボルト36のねじ込み量を調整することによって、流動抵抗部材40の流路32内への進出量を調整することができる。流動抵抗部材40が完全に後退したとき、流動抵抗部材40の頂部は流路32を形成する面(図2の場合は下面38)と同一面上にあることが望ましい。
【0019】
なお、流動抵抗部材40の進退に関わる別の構造として図4の構造が挙げられる。図4の場合は、口金30の流路32の下面38に対する凹部として流動抵抗部材40と同一形状の収容穴34が形成され、収容穴34の底部から口金30の外部にかけて貫通孔44が貫通している。貫通孔44には棒42が通され、棒42の先端に流動抵抗部材40が固定されている。この構造において、作業者または作業者の指示で動くシリンダ等の作動部が、口金30の外部から棒42を押したり引いたりすることにより、流動抵抗部材40の流路32内への進出量を調整することができる。
【0020】
流動抵抗部材40は、図5(a)に示す円柱の部材であっても良いが、図5(b)のような四角柱の部材、図5(c)のような角部が面取りされた円柱の部材、図5(d)のような円錐の部材等であっても良い。中でも、流動抵抗部材40が流路32内に進出していないときに、収容穴34と流動抵抗部材40との間に大きな隙間(例えば図5(e)の隙間35)を生じさせないという点から、図5(a)、(b)および(c)のように流動抵抗部材40の頂部41が面であることが望ましい。また収容穴34と流動抵抗部材40との間に小さな隙間(例えば図5(f)の隙間35)も生じさせないという点から、図5(a)、(b)のように、流動抵抗部材40の頂部41が1つの面であって、流動抵抗部材40が流路32内に進出していないときに頂部41が流路32の形成面である下面38と一体化して1つの面を形成することが望ましい。
【0021】
流動抵抗部材40の並び方は限定されない。例えば図2および図6(a)のように複数の流動抵抗部材40が間隔を空けて2列に並んでいても良いし、図6(b)のように複数の流動抵抗部材40が間隔を空けて1列に並んでいても良い。複数の流動抵抗部材40が間隔を空けて2列に並ぶ場合は、図6(a)のように、1列目の流動抵抗部材40と2列目の流動抵抗部材40とが互い違いになることが望ましい。また、流路32の左右にそれぞれ流動抵抗部材40が1つずつ設けられていても良いし、流路32に流動抵抗部材40が1つだけ設けられていても良い。
【0022】
この口金30において流動抵抗部材40が流路32内に進出すると、進出した流動抵抗部材40が被成型材料の流動に対する抵抗となり、その流動抵抗部材40の周囲において被成型材料の流速および流量が小さくなり、それに応じて口金30の押出口33から押し出される成型部材50の湾曲形状が変化する。その具体的な様子を図2の口金30を例にして説明する。
【0023】
まず、図2の口金30では流路32が左側で高く右側で低いため、流動抵抗部材40が流路32内に進出していないときは、被成型材料の流速および流量が左側で大きく右側で小さい。そのため、図7(a)に示されるように、口金30の押出口33から押し出された成型部材50は右側へ湾曲する。
【0024】
次に、左側の少数の流動抵抗部材40が流路32内に少し進出すると、流路32内における左側の流速および流量が図7(a)のときより小さくなり、被成型材料の流速および流量が左右で等しくなる。そのため、図7(b)に示されるように、口金30の押出口33から押し出された成型部材50は真っ直ぐになる。
【0025】
次に、図7(b)のときよりも流路32内に進出する左側の流動抵抗部材40の数が増えたり流動抵抗部材40の進出量が大きくなったりすると、流路32内における左側の流速および流量が図7(b)のときよりも小さくなり、被成型材料の流速および流量が左側で小さく右側で大きくなる。そのため、図7(c)に示されるように、口金30の押出口33から押し出された成型部材50は左側へ湾曲する。
【0026】
図7の(a)〜(c)のいずれの場合も、押出口33の形状が変わらないため、押出口33から押し出された成型部材50の断面形状(成型部材の断面形状とは成型部材の延びる方向に直交する方向の断面の形状のことである)は同じである。成型部材50が湾曲するときの成型部材50の曲率の大きさは、流路32内に進出する流動抵抗部材40の数および進出量により変化する。
【0027】
このように、実施形態の口金30では流動抵抗部材40が流路32内に進退可能となっているため、成型部材50の湾曲形状を変えることができる。しかも、流動抵抗部材40の流路32内への進退が口金30の外部からの操作により行われるため、作業者が口金30を押出機本体10から取り外したり口金30の取付け位置を変更したりしなくても、成型部材50の湾曲形状を変えることができる。
【0028】
そのため、様々な曲率の成型部材50の生産に対応するために従来のように多数の入れ子を製造したり管理したりする必要が無い。また、押し出しのテストをして成型部材50が所望の曲率にならなかった場合には、流動抵抗部材40の流路32内への進出量を調整するだけで曲率を変えることができるので、従来のように入れ子を設計し直したり作製し直したりする必要が無い。また、従来のように曲率を変えるために口金の取り付け位置を口金幅方向に移動させる必要が無いため、口金の取り付け位置を移動させたときに成型部材50を受ける成型ドラムや引き取りテーブル等を移動させるためのスライド機構を設ける必要が無い。
【0029】
ここで、口金30に設けられる流動抵抗部材40が複数であれば、流動抵抗部材40の進出のさせ方のバリエーションが多くなり、流路32内の場所による被成型材料の流速および流量を微調整でき、成型部材50の湾曲形状を微調整できる。また、複数の流動抵抗部材40が間隔を空けて2列に並び、1列目の流動抵抗部材40と2列目の流動抵抗部材40とが互い違いになっていれば、1列目と2列目の両方の流動抵抗部材40を進出させることによって流路32内の被成型材料の流速および流量を極端に小さくすることが可能となり、成型部材50の湾曲形状を大きく変えることが可能となる。
【0030】
以上の実施形態に対し発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
【0031】
まず、流路の断面形状および押出口の形状の変更例を図8図10に示す。なお図8図10では流動抵抗部材40が2列に並んでいるものとする。
【0032】
図8の口金130では、流路132の断面形状および押出口133の形状は長孔状であってより具体的には頂角が90°以上の二等辺三角形である。この口金130では、流路132の近接する対向面の一方である下面に、流路132内に進退可能な流動抵抗部材40が設けられている。流動抵抗部材40の進退に関わる構造、形状、並び方は、上記実施形態の通りである。
【0033】
この口金130において流動抵抗部材40が流路132内に進出していないとき(図8(a))、流路132の左右両端部で被成型材料の流速および流量が小さくなるため、押出口133から押し出された成型部材50の左右両側が切れやすい。そこで、成型部材50の左右両側が切れる場合は、流路132の左右方向の中央付近の流動抵抗部材40を流路132内に進出させる(図8(b))。すると、流路132の左右方向の中央付近における被成型材料の流速および流量が小さくなり、流路132の左右両側における被成型材料の流速および流量が大きくなる。その結果、押出口133から押し出された成型部材50の左右両側が切れにくくなる。
【0034】
また、図9の口金230では、流路232の断面形状および押出口233の形状は長孔状であってより具体的には左右に長い長方形である。そのため流路232の上下方向の高さが左右で同じである。この口金230では、流路232の近接する対向面の一方である下面に、流路232内に進退可能な流動抵抗部材40が設けられている。流動抵抗部材40の進退に関わる構造、形状、並び方は、上記実施形態の通りである。
【0035】
この口金230において流動抵抗部材40が流路232内に進出していないとき(図9(a))、流路232内の左右で被成型材料の流速分布および流量が同じであるため、押出口233から押し出された成型部材50は真っ直ぐに延びる。しかし、流路232の左右方向のいずれか一方向にある流動抵抗部材40を流路232内に進出させると(図9(b))、進出した流動抵抗部材40付近における被成型材料の流速および流量が小さくなり、押出口233から押し出された成型部材50が湾曲する。
【0036】
また、図10の口金330では、流路332が、押出口333側の前方部332aで上下方向に狭く、押出機本体10側の後方部332bで上下方向に広くなっている。押出口333は長方形である。前方部332aと後方部332bとの境界332cは左右方向に対して傾斜している。そのため、後方部332bは、左右の一方側(例えば右側(図10では下側として描かれている))で前後方向(図10では左右方向として描かれている)に長く、他方側(例えば左側(図10では上側として描かれている))で前後方向に短くなっている。
【0037】
この口金330では、流路332の後方部332bにおける近接する対向面の一方である下面338に、流路332内に進退可能な流動抵抗部材40が設けられている。流動抵抗部材40の進退に関わる構造、形状、並び方は、上記実施形態の通りである。
【0038】
この口金330では、上下方向に広い後方部332bが左右の一方側(例えば右側(図10では下側として描かれている))で前後(図10では左右として描かれている)に長く他方側(例えば左側(図10では上側として描かれている))で前後に短いため、流動抵抗部材40が流路332内に進出していないとき、流路332内の左右の一方側で被成型材料の流速および流量が大きく他方側で被成型材料の流速および流量が小さい。そのため押出口333から押し出された成型部材50が湾曲する。
【0039】
そして、流動抵抗部材40が流路332内に進出すると、押出口333から押し出された成型部材50の湾曲形状が変わる。例えば、複数の流動抵抗部材40のうち左右の一方側(例えば右側(図10では下側として描かれている))の流動抵抗部材40が流路332内に進出すると、流路332内の前記一方側における流速および流量が小さくなり、流速および流量の左右の差が小さくなるため、湾曲の曲率が小さくなる。また、複数の流動抵抗部材40のうち左右の他方側(例えば左側(図10では上側として描かれている))の流動抵抗部材40が流路332内に進出すると、流路332内の前記他方側における流速および流量が小さくなり、流速および流量の左右の差が大きくなるため、湾曲の曲率が大きくなる。
【0040】
以上の他にも、流路の断面形状および押出口の形状としては、長孔状でないものも含めて様々な形状があり得る。流路の断面形状および押出口の形状が上下左右に対称であって、流路内に流動抵抗部材が無ければ成型部材が真っ直ぐに押し出される場合であっても、流動抵抗部材を流路内に進出させて流路内での流速および流量を上下あるいは左右に非対称とすることにより、成型部材を湾曲させることができる。また、流路の断面形状および押出口の形状が上下あるいは左右に非対称であって、流路内に流動抵抗部材が無ければ成型部材が湾曲して押し出される場合であっても、流動抵抗部材を流路内に進出させて流路内での流速および流量を上下左右に対称とすることにより、成型部材を真っ直ぐに押し出すことができる。
【0041】
また、図11のように、複数の流動抵抗部材40が、流路32の左右方向に隙間無く並べられ、棒42に押される等して流路32の下面438から上面437まで進出できるように構成されていても良い。この場合、連続する2以上の流動抵抗部材40が下面438から上面437まで進出することにより、流路32内に壁を作ることができ、その壁の所で被成型材料の流動を止めることができる。
【0042】
また、図12に示すように、口金530が、本体530aと、本体530aの前方に設けられた別体530bとを備えるものであっても良い。別体530bはボルト等の固定手段で本体530aの前方端部に固定される。本体530aは、実質的に上記実施形態および変更例の口金と同じものであり、流路32内に進退可能な流動抵抗部材40が設けられたものである。別体530bは押出口533が開けられたプレート状のものである。押出口533の形状は、押し出される成型部材の断面形状である最終プロファイル形状と同じである。
【0043】
この口金530によれば、別体530bを付け替えるだけで最終プロファイル形状を変更することができる。そして、別体530bを付け替えたときに流動抵抗部材40の流路32内への進出状態も変更して、流路32内における被成型材料の流れを、そのときの最終プロファイル形状に適したものとすることができる。例えば、別体530bを付け替えて最終プロファイル形状を図9のような長方形から図8のような二等辺三角形に変更したときに、それまで流路32内に進出していなかった左右方向中央付近の流動抵抗部材40を流路32内に進出させ、成型部材50の左右両側が切れないようにする。また、押出口533が本体530aの流路32の左側半分だけに開口している別体530bを取り付けたときは、流路32の右側に被成型材料を流す必要がないため、右側の流動抵抗部材40を流路32内に進出させて流路32の右側における被成型材料の流れを阻害する。
【0044】
また、図13に示すように、流路32内に上下方向に進退する複数の第1流動抵抗部材640が左右方向に並べて設けられ、さらに、流路32内の第1流動抵抗部材640の場所よりも後方の場所に左右方向に進退する第2流動抵抗部材642が設けられていても良い。第2流動抵抗部材642の上下方向の太さは限定されないが、図13では、第2流動抵抗部材642の上下方向の太さが流路32の上下方向の高さよりも長い。この図13の場合、第2流動抵抗部材642がその進出した範囲において被成型材料の流れを完全に止める。このような第2流動抵抗部材642が、流路32の左右いずれか一方側に設けられていても良いし、左右両側に設けられていても良い。
【0045】
図10の口金330を用いて流動抵抗部材40を流路332へ進出させたときの効果を調査した。上記のように、図10の口金330は、流動抵抗部材40が流路332内へ進出していなくても成型部材50が左(図10の上)へ湾曲するものである。調査に用いられた口金330の押出口333の形状は、左右が60mm、上下が8mmの長方形であった。流動抵抗部材40は直径が4mmの円柱の部材であった。21個の流動抵抗部材40が間隔を空けて2列に並べられていた。前方の列には10個の流動抵抗部材40が等間隔で並べられ、後方の列には11個の流動抵抗部材40が等間隔で並べられていた。前方の列と後方の列の流動抵抗部材40は互い違いになっていた。
【0046】
この口金330において、後方の列の左側(図10の上側)の4個の流動抵抗部材40の流路332内への進出量を変化させた。押出口333から押し出された成型部材50は左へ湾曲し略円形になったので、その外径を測定した。
【0047】
結果は図14の通りで、流動抵抗部材40の流路332内への進出量が大きくなるほど、成型部材50の曲率が大きくなり、外径が小さくなった。
【符号の説明】
【0048】
1…押出機、10…押出機本体、11…バレル、12…スクリュー、13…モータ、14…ホッパー、30…口金、32…流路、33…押出口、34…収容穴、35…隙間、36…ボルト、37…上面、38…下面、40…流動抵抗部材、41…頂部、42…棒、43…ボルト孔、44…貫通孔、50…成型部材、130…口金、132…流路、133…押出口、230…口金、232…流路、233…押出口、330…口金、332…流路、332a…前方部、332b…後方部、332c…境界、333…押出口、338…下面、437…上面、438…下面、530…口金、530a…本体、530b…別体、533…押出口、640…第1流動抵抗部材、642…第2流動抵抗部材
図1
図2
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図14