(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898170
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】吸血性害虫の行動停止方法
(51)【国際特許分類】
A01N 55/10 20060101AFI20210628BHJP
A01N 37/02 20060101ALI20210628BHJP
A01P 7/00 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
A01N55/10 500
A01N37/02
A01P7/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-152433(P2017-152433)
(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2019-31458(P2019-31458A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日塔 彬
【審査官】
阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−509346(JP,A)
【文献】
特表2005−529896(JP,A)
【文献】
特開2006−248994(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/108220(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 55/10
A01N 37/02
A01P 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン化合物を有効成分として含有し、且つガラス面に対する接触角が31度以下に調整された組成物を、シラミ又はシラミが寄生している場所に施用することを特徴とするシラミの動きを2分以内に停止させるシラミの行動停止方法。
【請求項2】
前記組成物が、さらに脂肪酸エステルを含有することを特徴とする請求項1に記載のシラミの行動停止方法。
【請求項3】
前記シロキサン化合物が、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシラミの行動停止方法。
【請求項4】
前記シロキサン化合物が、ジメチルポリシロキサンを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシラミの行動停止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸血性害虫の行動停止方法に関し、より詳しくは、吸血性害虫を駆除するために歩行等の行動を停止させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間に寄生するシラミには、アタマジラミやコロモジラミ等のヒトジラミとケジラミが知られている。中でも、アタマジラミへの感染は近年増加しており、園児、児童等は集団生活によってその被害が著しく、またその家族への感染も報告されている。アタマジラミに吸血されると痒みを伴うだけでなく、外傷からの感染症やリンパ節の腫れや発熱等を生じることもある。
【0003】
また、近年トコジラミ被害が増大してきており、旅行先で鞄や衣類にトコジラミが付着しそのまま旅行先から持ち帰ってしまったり、購入した輸入家具から持ち込まれる等によって、簡易宿泊施設のみならず家庭においても吸血被害を被ることがある。トコジラミは夜間に這い出てきて、吸血行動を行い、毎日産卵を行うことからトコジラミの被害は拡大しやすいことが知られている。
【0004】
また、シラミと同様に吸血性害虫に数えられるノミには、イヌやネコ等に寄生するイヌノミやネコノミが知られている。イヌノミやネコノミの成虫がイヌやネコ等の愛玩動物に寄生すると、愛玩動物に皮膚炎や貧血などを引き起こすだけでなく、飼い主にも刺咬被害を起こし、発赤や発疹等を生じさせ、激しい痒みを伴ったり、アトピー性皮膚炎などのアレルギーの原因となることがある。
【0005】
このような吸血性害虫を駆除する方法としては、ピレスロイド系の殺虫剤を有効成分として含有したシャンプー剤を用いて毛髪や体毛を洗浄する方法や、前記有効成分を含有した皮膚外用剤を皮膚外用投与する方法が一般的になされている。
【0006】
シラミ駆除用のシャンプー組成物として、例えば、1)特定構造のアミンオキサイド、2)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーおよび、3)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる非イオン性界面活性剤、および薬効成分として3−フェノキシベンジル−d−シス・トランスクリサンテマートを含有するシャンプー組成物(特許文献1)や、ピリプロキシフェン0.001〜5重量%、アニオン性界面活性剤10〜70重量%及び多価アルコール0.5〜20重量%を含有するシャンプー組成物(特許文献2)が提案されている。
【0007】
また、皮膚外用剤として、例えば、フェノトリンを含有するO/Wエマルションからなる動物外部寄生虫防除組成物が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−298628号公報
【特許文献2】特開平10−81616号公報
【特許文献3】特開2012−102033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の駆除用組成物は吸血性害虫に対する殺虫効果は期待できるものの、特にシラミは動きが素早いため、駆除用組成物中の有効成分が十分量作用する前に吸血されたり、逃げられてしまってその効果が得られない等の問題が発生することがあった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、吸血性害虫の駆除効果を高めるために該害虫の動きを速やかに停止する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、吸血性害虫の行動を速やかに停止させるためには、シロキサン化合物が有効に作用すること、また、駆除用組成物の接触角を特定範囲に調整することで吸血性害虫に対して処理した際の行動停止までにかかる時間を短くすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、上記課題は、下記構成(1)〜(5)により解決される。
(1)シロキサン化合物を有効成分として含有し、且つガラス面に対する接触角が31度以下に調整された組成物を、吸血性害虫又は吸血性害虫が寄生している場所に施用することを特徴とする吸血性害虫の行動停止方法。
(2)前記組成物が、さらに脂肪酸エステルを含有することを特徴とする前記(1)に記載の吸血性害虫の行動停止方法。
(3)前記シロキサン化合物が、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の吸血性害虫の行動停止方法。
(4)前記シロキサン化合物が、ジメチルポリシロキサンを含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の吸血性害虫の行動停止方法。
(5)前記吸血性害虫が、咀顎目害虫、隠翅目害虫及び半翅目害虫からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の吸血性害虫の行動停止方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吸血性害虫の行動停止方法によれば、吸血性害虫の行動を速やかに(具体的には、2分以内に)停止させることができる。よって、吸血性害虫に吸血されるのを抑制することができる、吸血性害虫の移動・逃亡を防いで害虫被害の拡散を防ぐことができる、等の効果を奏し、効果的に有効成分を作用させることができ、吸血性害虫の駆除を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0015】
本発明は、使用する駆除用組成物の有効成分と、該組成物自体の物理的性質(具体的には接触角)に着目して成されたものであり、本発明の吸血性害虫の行動停止方法は、有効成分としてシロキサン化合物を含有した組成物について、ガラス面に対する接触角を31度以下に調整することを特徴とする。これにより該組成物を吸血性害虫に対して処理した際には、組成物の吸血性害虫に対する浸透性が高まり、吸血性害虫の行動を2分以内という短い時間で停止させることができるものである。
【0016】
本発明において処理の対象となる吸血性害虫は、生存のために血液や体液を吸う寄生生物であり、例えば、アタマジラミ、ケジラミ、コロモジラミ、ハジラミ、イヌジラミ等の咀顎目害虫、ネコノミ、イヌノミ、ヒトノミ等の隠翅目害虫、トコジラミ等の半翅目害虫等が挙げられる。本発明の吸血性害虫の行動停止方法は、これらの害虫のうちの少なくとも1種の害虫の成虫や幼虫を対象とすることができる。
【0017】
本発明の吸血性害虫の行動停止方法に用いる組成物(以下、「駆除用組成物」ともいう。)は、上記したように、シロキサン化合物を有効成分として含有する。
シロキサン化合物は、主鎖にSi−O結合を有し、側鎖にアルキル基などの有機基を有するものである。シロキサン化合物により吸血性害虫の行動を停止できる理由は定かではないが、シロキサン化合物は吸血性害虫に対して体表及び体節に速やかに浸透し、動きを封じる作用や体表全体に膜を生成し、動きを封じる作用を持つと考えられ、その結果、吸血性害虫の歩行や吸血行為等の行動を停止させるものと考えられる。
【0018】
シロキサン化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等の変性シリコーン;シロキサン化合物共重合体等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。中でも、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも1つを用いることが好ましく、特にジメチルポリシロキサンを含んで構成されることが好ましい。
【0019】
駆除用組成物中のシロキサン化合物の含有量は、40質量%以上であることが好ましい。シロキサン化合物の含有量が40質量%以上であると、吸血性害虫に対する行動停止の効果が得られるため好ましい。シロキサン化合物の含有量は、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。また、シロキサン化合物の含有量の上限は特に限定されず、駆除用組成物の接触角が31度以下となればシロキサン化合物のみ(すなわち、含有量が100質量%)から構成されていてもよく、95質量%以下であることが好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
【0020】
駆除用組成物には、その他の成分として、人体に対して薬理学的に許容される各種成分を含むことができる。その他の成分として、例えば、殺虫成分、溶剤、界面活性剤、香料、色素等が挙げられる。
【0021】
殺虫成分として、本発明では、脂肪酸エステルを好適に用いることができる。脂肪酸エステルは、理由は定かではないがシラミ成虫や幼虫をはじめとする吸血性害虫に対する殺虫効果を有しており、駆除用組成物に含有することにより、吸血性害虫に対する殺虫効果を高めることができる。
【0022】
本発明で用いる脂肪酸エステルは、脂肪酸残基及びアルコール残基を含む脂肪酸エステルであって、前記脂肪酸残基及び前記アルコール残基のいずれもが分岐構造を有し、かつ、前記アルコール残基の炭素数が前記脂肪酸残基の炭素数よりも多い脂肪酸エステルであることが好ましい。脂肪酸エステルにおけるアルコール残基の炭素数は脂肪酸残基の炭素数よりも多ければよく、具体的には、脂肪酸エステル中の脂肪酸残基の炭素数に対するアルコール残基の炭素数の割合が1.1以上であることが好ましい。また、アルコール残基の炭素数が脂肪酸残基の炭素数よりも1〜10程度多いものがより好ましい。脂肪酸エステルにおける脂肪酸残基の炭素数は7〜13であることが好ましく、8〜9がより好ましい。また、脂肪酸エステルは、脂肪酸残基及びアルコール残基それぞれにおいて、末端から2つ目の炭素原子が第2級炭素原子または第3級炭素原子であることが好ましい。
【0023】
脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、2−エチルヘキサン酸2−へキシルデシル等が挙げられ、1種を単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。中でも、イソノナン酸イソトリデシル及び2−エチルヘキサン酸2−へキシルデシルが、吸血性害虫対する殺虫効果が高いため好ましい。さらに、イソノナン酸イソトリデシルは、低温でも固化しにくく、長期間に渡り製剤の保存安定性にも優れているため、特に好ましい。
【0024】
脂肪酸エステルの含有量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定はされないが、例えば、駆除用組成物中、4〜80質量%であることが好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0025】
その他の殺虫成分としては、ピレスロイド系化合物、カーバメート系化合物、有機リン系化合物、ネオニコチノイド系化合物等に属する殺虫剤を用いることができる。中でも、安全性の観点からピレスロイド系化合物を用いることが好ましい。
【0026】
ピレスロイド系化合物の例としては、アクリナトリン、アレスリン、d−アレスリン、dd−アレスリン、シフルトリン、ベータ−シフルトリン、ビフェントリン、シクロプロトリン、シハロトリン、シペルメトリン、ジメフルトリン、エンペントリン、デルタメトリン、テラレスリン、テフルトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、フルフェンプロックス、フルメトリン、フルバリネート、プロフルトリン、ハルフェンプロックス、イミプロトリン、ペルメトリン、ベンフルスリン、プラレトリン、ピレトリン、レスメトリン、d−レスメトリン、シグマ−サイパーメトリン、シラフルオフェン、テフルトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、テトラメトリン、d−テトラメトリン、フェノトリン、d−フェノトリン、シフェノトリン、アルファシペルメトリン、ゼータシペルメトリン、ラムダシハロトリン、ガンマシハロトリン、フラメトリン、タウフルバリネート、メトフルトリン、天然ピレトリン等が挙げられる。
【0027】
カーバメート系化合物の例としては、アラニカルブ、ベンダイオカルブ、ベンフラカルブ、BPMC、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、クロエトカルブ、エチオフェンカルブ、フェノブカルブ、フェノチオカルブ、フェノキシカルブ、フラチオカルブ、イソプロカルブ、メトルカルブ、メソミル、メチオカルブ、NAC、オキサミル、ピリミカーブ、プロポキスル、XMC、チオジカルブ、キシリルカルブ、アルジカルブ等が挙げられる。
【0028】
有機リン系化合物の例としては、アセフェート、リン化アルミニウム、ブタチオホス、キャドサホス、クロルエトキシホス、クロルフェンビンホス、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、シアノホス、ダイアジノン、DCIP、ジクロフェンチオン、ジクロルボス、ジメトエート、ジメチルビンホス、ジスルホトン、EPN、エチオン、エトプロホス、エトリムホス、フェンチオン、フエニトロチオン、ホスチアゼート、ホルモチオン、リン化水素、イソフェンホス、イソキサチオン、マラチオン、メスルフェンホス、メチダチオン、モノクロトホス、ナレッド、オキシデプロホス、パラチオン、ホサロン、ホスメット、ピリミホスメチル、ピリダフェンチオン、キナルホス、フェントエート、プロフェノホス、プロパホス、プロチオホス、ピラクロホス、サリチオン、スルプロホス、テブピリムホス、テメホス、テトラクロルビンホス、テルブホス、チオメトン、トリクロルホン、バミドチオン、フォレート、カズサホス等が挙げられる。
【0029】
ネオニコチノイド系化合物の例としては、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、チアメトキサム、チアクロプリド、ジノテフラン、クロチアニジン等が挙げられる。
【0030】
溶剤は、駆除用組成物中の各成分を溶解させたり、組成物の接触角を調整するために含有することができる。溶剤としては、例えば、水、水溶性溶剤(グリセリン等)、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール等)、炭化水素系溶剤(流動パラフィン等)等が挙げられる。
【0031】
界面活性剤は、駆除用組成物による処理後の洗い流しにおいて、洗浄力を高めるために含有することができる。駆除用組成物に界面活性剤を含有することで処理後の駆除用組成物を洗い落とししやすくなる。界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(POE)ソルビット、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(PEG)などが挙げられる。
【0032】
香料は、駆除用組成物への香りの付与、処理時に使用感を高めるための香りの付与を目的として含有することができる。香料を含有することにより、使用効果感を高めることができる。香料としては、例えば、じゃ香、ベルガモット油、シンナモン油、シトロネラ油、レモン油、レモングラス油等の天然香料、ピネン、リモネン、リナロール、メントール、ボルネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ヘリオトピン、ワニリン等の人造香料等が挙げられる。
【0033】
色素は、駆除用組成物の外観向上のために含有することができる。色素としては、ニトロ系色素、アゾ染料、ニトロソ染料、トリフェニルメタン染料、キノリン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料等の法定色素が挙げられる。これらの中でも水溶性のものが好ましい。
【0034】
駆除用組成物は、シロキサン化合物のみで又はシロキサン化合物とその他の任意の成分を混合することにより調製することができる。
【0035】
駆除用組成物は液体状であり、本発明においては、駆除用組成物のガラス面に対する接触角が31度以下であることが肝要である。駆除用組成物のガラス面に対する接触角が31度以下であれば、吸血性害虫の寄生場所である毛髪等に対しても浸透性が高くなり、速やかに広範囲に広がるので、施用した後は速やかに吸血性害虫との接触がなされ、吸血性害虫の行動停止までの時間を短くすることができる。接触角は、30度以下であることが好ましく、また、その下限は特に限定されないが、3度以上であることが好ましい。
【0036】
なお、接触角は、市販の接触角計を用いて測定することができ、例えば、協和界面科学株式会社製のFACE接触角計CA−X型を用いて、スライドガラスに所定量の駆除用組成物を滴下した際のガラス面に対する接触角を測定することにより計測できる。
【0037】
なお、本発明において、駆除用組成物のガラス面に対する接触角を31度以下とする方法としては、従来公知の方法により行うことができ、例えば、シロキサン化合物の含有量を調整し、必要により溶媒等を用いて接触角を調整すること等が挙げられる。添加する溶剤としてはエタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、重合度が40より小さい流動パラフィンなどの炭化水素系溶剤、イソノナン酸イソトリデシルやミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステルを使用することが挙げられる。使用するシロキサン化合物についても重合度が150より小さい低〜中程度の重合度のシロキサン化合物を使用すること等により、ガラス表面に対する接触角を31度以下とすることが出来る。また、油性感触付与剤として使用される親水性シリカなどのヒュームドシリカ、パルミチン酸デキストリンなどのデキストリン脂肪酸エステルを適量配合することでも接触角を調整することができる。
【0038】
駆除用組成物の処理対象物への施用方法としては、吸血性害虫に駆除用組成物の有効量を直接施用する又は吸血性害虫が寄生している場所に駆除用組成物の有効量を施用する。具体的には、対象面100cm
2当たり0.8〜100mL程度の駆除用組成物を滴下、塗布、噴霧、浸漬等により施用する方法等が挙げられる。例えば、毛髪に処理する場合は、吸血性害虫に直接又は吸血性害虫が寄生している場所に向けて駆除用組成物を滴下、塗布、噴霧等すればよく、衣類等の布帛を処理する場合は、駆除用組成物を容器に溜めてそこに布帛を浸漬する等すればよい。施用後は、数秒〜5分ほど放置し、駆除用組成物を洗い流せばよい。
【0039】
上記のように、本発明の駆除用組成物の有効量を、吸血性害虫又は吸血性害虫が寄生している場所に施用することにより吸血性害虫の行動を停止させることができ、よって、吸血性害虫を効果的に駆除することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0041】
(実施例1〜5、比較例1〜5)
下記の表1に示す処方に基づき、各成分を加え、常温で10分程均一になるまで混合撹拌し、実施例1〜5、比較例1〜5の検体組成物を作製した。
【0042】
スライドガラス(26mm×76mm)に、各検体組成物をスポイトで1滴(0.4〜3.0μL)滴下し、滴下直後の接触角をFACE接触角計CA−X型(商品名、協和界面科学株式会社製)にて測定した。以上は全て室温25℃にて実施した。結果を表1に併せて示す。
【0043】
【表1】
【0044】
<試験例1:行動停止までの時間の測定>
各例に対し、直径9cmのシャーレに同寸のガーゼを入れたものをそれぞれ準備し、実施例1〜5、比較例1〜5の検体組成物をそれぞれのガーゼに1.6mL滴下し、全体に広げた。
続いて、コロモジラミ雌成虫1頭をガーゼの上に放ち、歩行が停止し、動きが無くなるまでの時間(行動停止までの時間)を計測した。なお、計測はコロモジラミを供試後10分まで行った。
試験は、全て室温25℃で3回行い、その平均を求め、平均が60秒以内に行動停止したものを高い効果ありとして「◎」で評価し、60秒を超えて2分以内に行動停止したものを効果ありとして「○」で評価し、2分を超えたものは効果なしとして「×」と評価した。結果を表2に示す。
なお、行動停止までの時間が60秒以内であると、より速やかに吸血性害虫の行動を停止させることができるので高い駆除効果が得られると評価できる。
【0045】
【表2】
【0046】
表2の結果より、実施例1〜5では全ての試験でコロモジラミが60秒以内に行動停止し、平均で行動停止までの時間が60秒以内であった。これに対し、シロキサン化合物を含むが接触角が31度より大きい比較例1〜4、接触角は31度以下であるがシロキサン化合物を含有しない比較例5は、いずれも行動停止までに時間がかかり、特に比較例2、3、5については10分以上歩行したコロモジラミがあった。これらの結果より、シロキサン化合物を含有し、且つ接触角が31度以下の組成物を施用することで、シラミ成虫に対する浸透がし易く、優れた行動停止効果が得られることがわかった。