(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898189
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】原位置訓練装置、方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20210628BHJP
G09B 23/28 20060101ALI20210628BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G09B23/28
A61B17/56
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-180214(P2017-180214)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-77460(P2018-77460A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2020年6月23日
(31)【優先権主張番号】15/289,688
(32)【優先日】2016年10月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518260574
【氏名又は名称】メドトロニック・ホールディング・カンパニー・ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ダブリュー・リー
【審査官】
宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0161872(US,A1)
【文献】
特表2016−500157(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0225288(US,A1)
【文献】
特開2014−069080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00,23/28−23/34
A61B 17/56−17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートする原位置訓練装置であって、
ベース部と、
前記ベース部に支持された加熱装置であって、上側面を含む、加熱装置と、
前記加熱装置の前記上側面に設けられた下側プレートと、
前記隣接する椎体のうちの1つの輪郭がエッチングされた実質的に透明な上側プレートと、
前記ベース部に支持されたフレームであって、前記上側プレートを前記下側プレートに近接する位置に支持するように構成される、フレームと
を備え、
前記下側プレートに近接する位置に支持された前記上側プレートは、前記上側プレートと前記下側プレートとの間に生物材料を保持する、原位置訓練装置。
【請求項2】
前記フレームは、少なくとも1つのツール保持クランプを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのツール保持クランプは、少なくとも1つのカニューレを、その開放された遠位端部が前記上側プレートと前記下側プレートとの間に保持される前記生物材料の方向を向いた状態で、保持するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記カニューレは、ルーメンを画定し、前記ルーメンはトロカールを前記ルーメンおよび前記開放された遠位端部を通って前記生物材料に挿入するように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのツール保持クランプは、少なくとも1つのRF切除デバイスを保持するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記上側プレートは、前記上側プレートの開孔を通って前記下側プレートに設けられた少なくとも1つのロックナット内に挿入される、少なくとも1つの留め具によって、前記下側プレートに近接する位置に固定されるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
原位置訓練装置を利用して、隣接する椎体の間の椎間板腔のRF切除をシミュレートする方法であって、
前記原位置訓練装置は、
ベース部と、
前記ベース部に支持された加熱装置であって、上側面を含む、加熱装置と、
前記加熱装置の前記上側面に設けられた下側プレートと、
前記隣接する椎体のうちの1つの輪郭がエッチングされた実質的に透明な上側プレートと、
前記ベース部に支持されたフレームであって、前記上側プレートを前記下側プレートに近接する位置に支持するように構成され,少なくとも1つのツール保持クランプを含む、フレームと
を備え、前記方法は、
椎間板腔をシミュレートする生物材料を前記下側プレート上に載置するステップと、
前記上側プレートを、前記下側プレートの上方の位置に固定し、それによって前記生物材料を前記上側プレートと前記下側プレートとの間に保持するステップと、
前記少なくとも1つのツール保持クランプの定位置に少なくとも1つのカニューレを固定するステップであって、前記少なくとも1つのカニューレは、トロカールをそこを通して挿入するために構成された軸方向ルーメン及び開放された遠位端部とを含む、ステップと、
トロカールを前記少なくとも1つのカニューレの前記軸方向ルーメンおよび前記開放された遠位端部を通って、前記生物的物質内に挿入するステップと
を備える方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの保持クランプに少なくとも1つのRF切除プローブを固定するステップを更に備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物材料を、前記加熱装置によって、人間の体温をシミュレートする温度まで加熱するステップを更に備える、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎体における、RF切除を含むがそれに限定されない、切除、生検抽出、セメント形成の原位置(in−situ)訓練装置、方法およびシステムに関する。より詳細には、本発明は、患者内の所望の場所における、アクセスツール、トロカールおよびRFプローブなどの他の器具の正確な配置について、医療従事者に訓練を提供する。
【背景技術】
【0002】
外科手術、特には2つの隣接する椎体の間の椎間板腔における切除の分野において、医療従事者を訓練することが知られている。しかしながら、この分野において使用可能な既存の訓練デバイス、方法およびシステムは、しばしば、不十分なものであることが判明しており、そのため、適切に訓練されていない医療従事者によって実施された切除処置のせいで、ある程度の患者が不必要な苦痛を受ける場合があり、その後、結果として医療過誤の申し立てを招く。既存の訓練デバイス、方法およびシステムは、椎間板腔における所望の場所におけるアクセスツール、トロカールおよびRFプローブの十分に正確な配置を教えない。既存の訓練デバイス、方法およびシステムは、原位置測定、ツール、トロカールおよびRFプローブの角度における離隔の視覚化、ならびにツール、トロカールおよびプローブ間の深さの制御を提供することもできない。既存の訓練デバイス、方法およびシステムは、人間の体温を正確にシミュレートすることにも失敗している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術の欠点のうちの1つまたは複数を解消した、外科手術の訓練のための、椎体における切除の訓練に特に有用な原位置装置、方法およびシステムである。本明細書において説明される本発明の好ましい実施形態は、2つの隣接する椎体の間の椎間板腔における切除、より好ましくはRF切除に関連する訓練を含むが、そのような原位置装置、方法およびシステムが、低温切除、レーザー切除、セメント形成、生検抽出などを含むがそれらに限定されない他の特定の外科的処置に関連する訓練に有用であることも、本出願の開示の範囲内にある。更に、2つの隣接する椎体の間の椎間板腔における切除が本発明の好ましい実施形態であるが、原位置装置、方法およびシステムは、全ての軟部組織および骨組織における用途を含み、脊椎の椎体に限定される必要はない。単なる例示ではあるが、骨盤領域、大腿、脛骨および身体の関節に、装置、方法およびシステムは適用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの好ましい実施形態において、隣接する椎体の間の所望の場所における、ツール、トロカールおよびRFプローブの正確な配置について、医療従事者を訓練する原位置訓練装置が提供される。
【0005】
本発明の1つの好ましい実施形態において、訓練装置は、ベース部と、ベース部に支持された加熱装置と、加熱装置の上側面に備えられた下側プレートと、隣接する椎体のうちの1つの輪郭がエッチングされた上側の実質的に透明なプレートと、ベース部に支持されたフレームであって、このフレームは上側プレートを下側プレートに近接する位置に支持するように構成される、フレームと、を含み、下側プレートに近接する位置に支持された上側プレートは、上側プレートと下側プレートとの間に生物材料を保持し、上側および下側プレートは、隣接する椎体をシミュレートし、生物材料は隣接する椎体の間の椎間板腔をシミュレートする。
【0006】
本発明の1つの好ましい実施形態において、訓練装置は、フレーム上に画定された少なくとも1つのヒンジ式の保持クランプであって、トロカールをそこを通して生物材料内へ挿入するための、開放軸方向ルーメンおよび生物材料の方向を指す開放遠位端部が画定されたカニューレ、ツール、トロカールまたはRF切除プローブのうちの1つを支持するように構成された少なくとも1つのヒンジ式の保持クランプを更に含む。
【0007】
本発明のこれらのおよび他の目的は、以下の明細書と添付の図面を検討することから明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートするための、本発明による原位置訓練装置の透視図である。
【
図2】隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートするための、本発明による原位置訓練装置のベース部の部分的透視図である。
【
図3】隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートするための、本発明による原位置訓練装置のベース部の、デバイスの組み付け前の上部透視図である。
【
図4】隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートするための、本発明による原位置訓練装置のベース部、加熱要素、下側プレートおよびフレームの、デバイスの組み付け中の上部透視図である。
【
図5】隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートするための、本発明による原位置訓練装置のベース部、加熱要素、下側プレート、フレームおよび生物的物質の、デバイスの組み付け中の上部透視図である。
【
図6】隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートするための、本発明による原位置訓練装置のベース部、加熱要素、下側プレート、フレーム、生物的物質および上側プレートの、デバイスの組み付け中の上部透視図である。
【
図7】隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートするための、本発明による原位置訓練装置のベース部、加熱要素、下側プレート、フレーム、生物的物質、上側プレート、および開いた保持クランプの定位置に生物的物質内への挿入のために位置決めされたカニューレの、デバイスの組み付け中の上部透視図である。
【
図8】隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートするための、本発明による原位置訓練装置のベース部、加熱要素、下側プレート、フレーム、生物的物質、上側プレート、および閉じた保持クランプの定位置に把持され、生物的物質内へ挿入されたカニューレの、デバイスの組み付け中の上部透視図である。
【
図9】隣接する椎体の間の椎間板腔のRF切除をシミュレートするための、本発明による原位置訓練装置のベース部、加熱要素、下側プレート、フレーム、生物的物質、上側プレート、および閉じた保持クランプの定位置に把持され、生物的物質内へ挿入されたカニューレの、デバイスの組み付け中の上部透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示される装置および関連する使用の方法の例示的な実施形態が、患者の脊椎の2つの隣接する椎体の間の椎間板腔における切除の分野において、医療従事者を訓練するための装置および方法に関して論じられる。
【0010】
1つの好ましい実施形態において、原位置訓練装置20は、隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートするために構成される。
図1〜
図4を参照すると、原位置訓練装置20は、外科医が、下側プレート24および上側プレート26を含む2つのプレートの間に配置された、椎間板腔をシミュレートする生物材料22においてRF切除または他の外科的方法において訓練されることを可能にするように構成される。少なくとも上側プレート26は透明であり、椎体の外観を実質的にシミュレートする輪郭27を含むように刻みが入れられる。別の好ましい実施形態の原位置訓練装置20が別の種類の外科手術の訓練のために使用されるなら、上側プレート26は、患者の解剖学的構造の別の部分を表すように刻みを入れられ、またはさもなければ印を付けられ、その特定の外科手術において使用される特定の器具に関連付けて使用されよう。そのような刻みまたは印の例としては、骨盤領域の一部分、大腿、脛骨、または身体の関節の1つを表現する画像のいずれかを含むがそれらに限定されない。
【0011】
1つの好ましい実施形態において、訓練装置20は、好ましくは凹形の皿である、ベース部28を含む。
図1〜
図4を参照すると、ベース部28は、加熱装置30と、フレーム34の脚部32とを支持する。下側プレート24は、加熱装置30の上側面に支持される。フレーム34は、上側プレート26を下側プレート24の上方に近接して支持するように構成される。
図10を参照すると、上側プレート26は、留め具36を、上側プレート26に画定され、フレーム34に画定されたスロット38と整列する開孔を通って、フレーム34の下方のロックナット40に挿入することによって、定位置に保持される。
【0012】
1つの好ましい実施形態において、
図5〜
図10を参照すると、フレーム34は、ヒンジ44を介して開位置と閉位置との間で枢動するように適合された少なくとも1つの保持クランプ(換言すれば、締め付け具)42を含む。1つの好ましい実施形態において、
図7〜
図10を参照すると、保持クランプ42は、内部にカニューレ46を保持するように構成される。カニューレ46は、トロカール48をルーメン(換言すれば、内腔)を通して生物材料22に挿入するような大きさに形成された中央軸方向ルーメン(不図示)を含む。しかしながら、本発明は生物材料22へのトロカール48の挿入だけに限定されるものではない。保持クランプ42の位置決め、およびその結果としてのクランプによるカニューレ46の位置決めは、上側プレート26と下側プレート24との間の生物材料22へのトロカール48の挿入中に、トロカール48の適切な位置決めと方向とを確保する。このようにして、隣接する椎体の間の実際の椎間板腔内へのトロカール48の挿入の適切な位置決め、適切な方向、および適切な角度について医療従事者に訓練が提供される。
【0013】
1つの好ましい実施形態において、少なくとも1つの保持クランプ42は、RF切除デバイスまたは他の脊椎の外科的ツール(不図示)を、上側プレート26と下側プレート24との間の生物材料22への挿入のために、適切な位置および方向に保持するように構成され、それによって、隣接する椎体の間の実際の椎間板腔内へのRF切除デバイスまたは他の外科的ツールの挿入の適切な位置決め、適切な方向、および適切な角度について医療従事者に訓練を提供する。
【0014】
1つの好ましい実施形態において、隣接する椎体の間の椎間板腔の切除をシミュレートする方法は、上述の原位置訓練装置20を利用するステップを含む。
【0015】
シミュレーションにおいて使用するために生物材料22が準備される。当業者は、例えば鶏の胸肉などの標準的な市販の鶏肉部位が生物材料22としての使用に適していることを理解する。鶏肉部位/生物材料22は、椎間板腔の切除をシミュレートする方法の実施まで、冷凍状態に維持され得る。方法を実施するとき、生物材料22は解凍され、加熱装置30において通常の人間の体温まで加熱される。加熱された生物材料は最も下側のプレート24の上側面に載置される。次に、留め具36を支持フレーム34のスロット38を通って支持フレーム34の下方に位置するロックナット40に挿入することによって、上側プレート26が定位置に固定される。留め具36がロックナット40内に固定されると、生物材料22は、上側プレート26と下側プレート24との間に圧縮によって保持される。支持フレーム34の脚部32に備えられたツール保持クランプ42は、それぞれのヒンジ44上でそれぞれの開位置に移動される。例えば、カニューレ46、RF切除プローブおよび必要に応じて他の外科的ツールといった、様々な外科的ツールが開かれた各ツール保持クランプ42に挿入され得る。次に、ツール保持クランプ42は、それぞれのヒンジ44上でそれぞれの閉位置に移動される。少なくとも1つのトロカール48が、少なくとも1つのカニューレ46の軸方向ルーメンを通って挿入される。
図7〜
図10を参照すると、ツール保持クランプ42の位置決めが、上側プレート26と下側プレート24との間の生物材料22への挿入のための位置決めと方向とを制御し、それによって、隣接する椎体の間の実際の椎間板腔内への少なくとも1つのトロカール48、RF切除デバイスまたは任意の他の外科的ツールの挿入の適切な位置決め、適切な方向、および適切な角度について医療従事者に訓練を提供する。
【0016】
本発明の他の実施形態は、本明細書および本明細書で開示される本発明の実施を考察することによって、当業者には明らかであろう。本明細書および例は、例示とのみ見なされるものであり、本発明の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されるものと意図される。
【符号の説明】
【0017】
20 原位置訓練装置
22 生物材料
24 下側プレート
26 上側プレート
27 輪郭
28 ベース部
30 加熱装置
32 脚部
34 フレーム、支持フレーム
36 留め具
38 スロット
40 ロックナット
42 保持クランプ、ツール保持クランプ
44 ヒンジ
46 カニューレ
48 トロカール