(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898237
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】レゾルバ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
G01D5/20 110X
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-532524(P2017-532524)
(86)(22)【出願日】2016年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2016072043
(87)【国際公開番号】WO2017022590
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年7月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-152464(P2015-152464)
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】乙部 春樹
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−51749(JP,A)
【文献】
特開2004−7903(JP,A)
【文献】
特開2004−56902(JP,A)
【文献】
実開平3−54365(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/20
G01D 5/244
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティースを備えたステータコアと、
前記ステータコアに装着されたインシュレータと、
前記インシュレータを介して前記ティースに巻回された巻線と、
前記インシュレータと一体に形成され、径方向に延在する端子ピン基台部と、
前記端子ピン基台部に配置され、前記巻線の端部が接続された端子ピンと
を備え、
前記ステータコアの表面全体には表面処理層が形成され、
モールド樹脂によって前記巻線と前記インシュレータと前記端子ピンとを覆う樹脂層が形成され、前記巻線と前記インシュレータと前記端子ピンとが前記樹脂層の中に封止されている、レゾルバ。
【請求項2】
前記ステータコアの表面全体に形成される表面処理層は、めっき、電着塗装、粉体塗装から選択された方法で形成されている、請求項1に記載のレゾルバ。
【請求項3】
前記ステータコアの表面に形成される前記表面処理層は塗布した接着剤で形成された樹脂により構成されている、請求項1に記載のレゾルバ。
【請求項4】
前記ステータコアは、薄板状のコアを複数枚積層した構造を有し、
前記樹脂が前記薄板状のコアとコアの隙間に浸透している、請求項3に記載のレゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水、防油、耐振動、耐衝撃等の耐環境性に優れたレゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
回転角度を検出する手段としてレゾルバが知られている。レゾルバはモータ等の回転軸に固定されて回転するロータと、ハウジング等に固定されてロータと径方向で対応配置されるステータとを備えている。ステータには励磁巻線と検出巻線が巻回され、検出巻線はsin信号とcos信号を出力する巻線から構成されている。励磁電流を励磁巻線に印加し、レゾルバのロータが回転すると、ロータとステータとの間に形成されたギャップの寸法が変化し、この変化に応じた電圧が検出巻線に誘起される。この検出巻線に生じた電圧はロータの回転角度を反映した信号であり、この信号によってモータ等の回転軸の角度を検出することができる。
【0003】
励磁巻線と検出巻線、それぞれの巻線端末は、インシュレータと一体に形成された端子ピン基台部に植設された端子ピンに接合されている。従来、巻線の保護のために樹脂モールドを施して巻線の外面をモールド樹脂で覆ったレゾルバが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図5は、特許文献1に記載されたVR(バリアブルリラクタンス)型レゾルバ200である。
図6は、
図5のM−Nの線で切断した断面を示す断面図である。VR型レゾルバ200は、部品取り付け部207を有する第1の固定子磁極組立体205と、第2の固定子磁極組立体206とを軟磁性板からなる円環状の固定子コア201の両側から挟んで固定子組立体を形成し、固定子コア201と第1の固定子磁極組立体205、第2の固定子磁極組立体206とは、固定子コア201の磁極歯204が回転子に面する面を露出するように合成樹脂211で囲曉し、固定子巻線208を合成樹脂211で覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−171737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示す構造において、固定子コア201は、一般に、軟磁性板をプレス加工により所定の形状に形成したコアを複数枚数積層してカシメ固定して形成される。しかしながら、特許文献1では、ロータと対向する固定子コア201の磁極歯204、及び固定子コア201の外周面は合成樹脂211で覆われていない。このため、レゾルバの使用環境においては、水分の浸潤によって、合成樹脂211で覆われていない固定子コア201の磁極歯204における外周面及び露出している箇所は水分によって錆が発生する。また、積層した固定子コア201の間に水分が侵入し、固定子コア201の内部に錆が発生する。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、巻線の保護および防水等の耐環境性に優れたレゾルバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ティースを備えたステータコアと、前記ステータコアに装着されたインシュレータと、前記インシュレータを介して前記ティースに巻回された巻線と、前記インシュレータと一体に形成され、径方向に延在する端子ピン基台部と、前記端子ピン基台部に配置され、前記巻線の端部が接続された端子ピンとを備え
る。前記ステータコアの表面
全体には表面処理層が形成され、モールド樹脂によって前記巻線
と前記インシュレータと前記端子ピン
とを覆う樹脂層が形成され、前記巻線
と前記インシュレータと前記端子ピン
とが前記樹脂層の中に封止されてい
る。
【0010】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記ステータコアの表面に形成される表面処理層は、めっき、電着塗装、粉体塗装から選択された方法で形成されている。
【0011】
請求項
3に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記ステータコアの表面に形成される前記表面処理層は
塗布した接着剤で形成された樹脂により構成されている。
【0012】
請求項
4に記載の発明は、請求項
3に記載の発明において、前記ステータコアは、薄板状のコアを複数枚積層した構造を有し、前記樹脂が前記薄板状のコアとコアの隙間に浸透している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、巻線の保護および防水等の耐環境性に優れたレゾルバが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態のレゾルバを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、モールド樹脂で樹脂層を形成する前のステータを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、従来のレゾルバの固定子組立体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、実施形態のレゾルバの斜視図である。
図2は、
図1におけるモールド樹脂で樹脂層を形成する前のステータを示す斜視図である。
図3は、
図2のステータの分解斜視図である。
図4は、
図1の樹脂層箇所の断面を示す部分断面図である。
【0016】
図1には、インナーロータ形のVR(バリアブルリラクタンス)型レゾルバ1が示されている。VR型レゾルバ1は、ステータ2を備えている。ステータ2の内側には、図示しないロータが配置される。ロータは、軟磁性のコアを複数枚数積層して構成され、図示しないモータ等の回転軸に固定されている。
【0017】
ステータ2は、軟磁性の薄板状のコアを複数枚数積層してなるステータコア3と、ステータコア3に装着した樹脂製のインシュレータ4と、インシュレータ4を介してステータコア3のティース5(
図3参照)に巻回した巻線6とを備えている。
【0018】
図3に示すように、ステータコア3を構成する軟磁性の薄板状のコアは、環状ヨーク部7から径内方に延在する複数のティース5(本実施形態では10個のティース)を有している。この薄板状のコアを複数枚数、転積(回転させながら積層)してカシメ固定することで、ステータコア3が構成されている。
【0019】
図4に示すように、カシメ固定したステータコア3には、表面処理(例えば、電着塗装、静電粉体塗装、めっき、等)が施され、軟磁性のコアが露出しないように表面処理層8が形成されている。表面処理層8によって、環状のステータコア3の外周面と内周面が直接露出しない状態が得られている。表面処理層8は、少なくとも、後述するモールド樹脂を注入して樹脂層15を形成した際、ステータコア3が露出する箇所に形成されていればよい。
【0020】
図3に示すように、ステータコア3の軸方向一方端から第1のインシュレータ11がステータコア3に装着され、ステータコア3の軸方向他方端から第2のインシュレータ12がステータコア3に装着されている。そして、
図2に示すように、第1のインシュレータ11と第2のインシュレータ12により構成されるインシュレータ4を介して、すべてのティース5(
図3参照)に巻線6が巻回されている。巻線6は、励磁巻線と検出巻線からなり、全てのティース5に励磁巻線が巻回され、所定のティース5に励磁巻線の上から検出巻線が巻回される。検出巻線はsin信号とcos信号を出力する2つの巻線から構成され、それぞれ所定のティース5に巻回される。
【0021】
第1のインシュレータ11には、径外方向に延在する端子ピン基台部13が第1のインシュレータ11と一体成形にて一体に形成されている。端子ピン基台部13には複数の端子ピン14が植設されている。端子ピン14はL字形で、一方端に巻線接続部を形成し、他方端にターミナルを形成している。巻線接続部は、軸方向に延在し、ターミナルは、径外方向に延在している。端子ピン基台部13には、上述した端子ピン14のターミナルが配置される溝部13aが設けられている。溝部13aの内部において、端子ピン14のターミナルが露出している。
【0022】
巻線6(励磁巻線の巻線端末と検出巻線)の巻線端末がそれぞれの位置の端子ピン14に絡げられて電気的に接続される。接続手段としては、TIG溶接によって溶接されて電気的に接続する方法が挙げられる。勿論、接続手段は、これに限定されるものではなく、電気的に接続される手段であればよい。
【0023】
図1に示すように、環形状を有したステータ2の軸方向両側(上面と下面)は、樹脂層15で覆われている。樹脂層15は、以下のようにして形成される。まず、表面処理層8(
図4参照)が形成されたステータコア3に、第1のインシュレータ11と第2のインシュレータ12を組み付ける(
図3参照)。次に、インシュレータ4(第1のインシュレータ11および第2のインシュレータ12)を介して、すべてのティース5(
図3参照)に巻線6を巻回すると共に、巻線6の巻線端末を端子ピン14に接続する。こうして、
図2に示す状態を得る。
【0024】
次に、
図2の状態のステータコア3を金型(不図示)にセットし、金型の中にモールド樹脂を注入して樹脂層15を形成する。このモールド樹脂による樹脂層15は、巻線6、及び端子ピン14の巻線端末が接続された箇所を覆う。このため、巻線6の巻線端末と電気的に接続された端子ピン14は樹脂層15の中に封止される。また、
図4に示すように、樹脂層15は、ステータコア3の軸方向の一端側と他端側を覆い、巻線6とインシュレータ4(第1のインシュレータ11および第2のインシュレータ12)も樹脂層15で覆われる。
【0025】
樹脂層15を形成したら、樹脂層15を形成したステータコア3を金型から取り出し、
図1に示す状態を得る。次に、溝部13aの内部で露出している端子ピン14のターミナルに、外部との電気的な接続を行うためリード線(図示せず)を接続する。
【0026】
図1の状態において、巻線6のティース5に巻かれた部分(コイルの部分)、巻線6のティース5に巻かれた部分から端子ピン14に引き回された部分、さらに端子ピン14に巻線6の端部が接続された部分が樹脂層15を構成する樹脂の中に封止される。
【0027】
この構造では、端子ピン14が樹脂層15の中に封止されるため、VR型レゾルバ1を腐食成分の存在する環境、例えば、水分が侵入する環境下やATFオイル等に含まれる硫黄成分が存在する環境下で使用した場合であっても、端子ピン14における水分による錆の発生やATFオイル等に含まれる硫黄成分による腐食の発生を防止できる。
【0028】
また、図示しないロータと対向するステータコア3の内周面、及び外周面はモールド樹脂による樹脂層15で覆われていないが、ステータコア3の表面処理層8(
図4参照)の形成によって、ステータコア3が直接、露出していないので、防水され、ステータコア3の内周面及び外周面における錆の発生を防止できる。また、ステータコア3を構成するコアの間にも水分が侵入しないため、コア内部の錆の発生を防止できる。
【0029】
本実施形態は、ステータコア3の表面に表面処理層8を形成した構成であるが、ステータコア3の表面に形成した表面処理層8に代えて、ステータコア3全体に接着剤を塗布し、ステータコア3、及び複数枚数が積層されるコアの間に樹脂を浸透させて樹脂層を形成する構成であってもよい。また、表面処理層8をめっき層と接着剤の層との積層構造といった多層構造としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…VR型レゾルバ、2…ステータ、3…ステータコア、4…インシュレータ、5…ティース、6…巻線、7…環状ヨーク部、8…表面処理層、11…第1のインシュレータ、12…第2のインシュレータ、13…端子ピン基台部、13a…溝部、14…端子ピン、15…樹脂層。