特許第6898324号(P6898324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6898324電磁場誘導を可能にする保護キャップを有する注射デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898324
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】電磁場誘導を可能にする保護キャップを有する注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20210628BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20210628BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   A61M5/32 500
   A61M5/20
   A61M5/24
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-527153(P2018-527153)
(86)(22)【出願日】2016年11月21日
(65)【公表番号】特表2018-535054(P2018-535054A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】EP2016078257
(87)【国際公開番号】WO2017089268
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2019年11月12日
(31)【優先権主張番号】15196688.4
(32)【優先日】2015年11月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ヴェントラント
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ハルムス
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−504440(JP,A)
【文献】 特開2007−160095(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102004046003(DE,A1)
【文献】 国際公開第2015/032715(WO,A1)
【文献】 特表2014−519901(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0225298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/20
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスであって:
液体薬剤または薬剤カートリッジを収容するように配置されたハウジングと;
該ハウジングに配置された電気コイルと;
ハウジングの端部と着脱可能に係合されるように配置された着脱可能なキャップと;
該着脱可能なキャップ内に配置された磁石と;を含み、
ここで、着脱可能なキャップがハウジングから係合解除されるとき、磁石が電気コイルに対して移動し、その結果、電気コイルにおいて電圧が誘起され電流が生成される、前記注射デバイス。
【請求項2】
電気コイルに電気接続されたエネルギー貯蔵装置をさらに含み、ここで、電流はエネルギー貯蔵装置を充電するように生成される、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
エネルギー貯蔵装置はコンデンサを含む、請求項2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
注射デバイスの外面上に配置された太陽電池をさらに含み、ここで、該太陽電池によって生成された電流は、エネルギー貯蔵装置および/または追加のエネルギー貯蔵装置の少なくとも一方に貯蔵される、請求項2または請求項3に記載の注射デバイス。
【請求項5】
電気コイルはハウジングの内面の周囲に配置される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項6】
電気コイルはハウジングの外面の周囲に配置される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項7】
電気コイルはハウジングの遠位端に配置される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項8】
注射デバイスの外面上に配置された少なくとも1つの光源をさらに含み、該少なくとも1つの光源は生成された電流によって電力供給されるように構成される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項9】
生成された電流によって電力供給されるように構成されるRFIDトランスデューサをさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項10】
ハウジングは液体薬剤または薬剤カートリッジを収容している、請求項1〜9のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項11】
デバイスは薬剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項12】
薬剤は注射用インスリンを含む、請求項11に記載の注射デバイス。
【請求項13】
注射デバイスから着脱可能なキャップを係合解除する方法であって、注射デバイスから着脱可能なキャップを係合解除する動きが、注射デバイスのハウジングに配置された電気コイルに対する着脱可能なキャップ内の磁石の動きを引き起こし、それにより電気コイルにおいて電圧が誘起される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
自己投与による注射によって行われる現行の療法は、糖尿病(インスリンおよび新しいGLP−Aクラスの薬物の両方)、片頭痛、ホルモン療法、抗凝血剤、等のための薬物を含む。注射の投与は、使用者および医療専門家にとって精神的にも身体的にも、いくつかのリスクおよび困難をもたらす工程である。
【0003】
従来の注射デバイスは通常、2つのカテゴリ−手動デバイスおよび自動注射器−に入る。従来の手動デバイスでは、液体薬剤を駆動してデバイスから出すために、使用者は、例えばプランジャを押し込むことによって、力を与えなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動注射器は、注射療法を自ら投与することを使用者にとってより容易なものにすることを目指している。自動注射器は、手動デバイスの薬剤送達に関与する行為の全体または一部を置き換えるデバイスである。これらの行為には、保護用シリンジキャップの取り外し、患者の皮膚への針の挿入、薬剤の注射、針の取り外し、針の遮蔽、デバイスの再使用の防止が含んでもよい。これにより手動デバイスの欠点の多くが克服される。注射の力/ボタンの延伸、手振れ、および用量の不完全な送達の可能性が低減される。多数の手段、例えばトリガボタンまたは注射深さに達した針の作用によって、トリガを行うことができる。
【0005】
一部の手動デバイスおよび自動注射器は、発光ダイオードおよびRFID追跡装置を含む搭載機器を備えている。搭載機器を有するこれらのデバイスのうちの一部は、搭載機器に電力供給するためのバッテリを備えている。しかしながら、これらのデバイスは多くの場合、注射に使用するまでに保管される時間が比較的長い。問題は、この保管の時間中にバッテリの腐食および漏出が生じる場合のあることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様によれば、注射デバイスであって:液体薬剤または薬剤カートリッジを収容するように配置されたハウジングと;ハウジングに配置された電気コイルと;ハウジングの端部と着脱可能に係合されるように配置された着脱可能なキャップと;着脱可能なキャップ内に配置された磁石と;を含み、ここで、着脱可能なキャップがハウジングから係合解除されるとき、磁石が電気コイルに対して移動し、その結果、電気コイルにおいて電圧が誘起され電流が生成される、注射デバイスが提供される。
【0007】
注射デバイスはさらに、電気コイルに電気接続されたエネルギー貯蔵装置を含んでもよく、ここで、電流はエネルギー貯蔵装置を充電するように生成される。
【0008】
エネルギー貯蔵装置はコンデンサを含んでもよい。
【0009】
注射デバイスはさらに、注射デバイスの外面上に配置された太陽電池を含んでもよく、ここで、太陽電池によって生成された電流は、エネルギー貯蔵装置および/または追加のエネルギー貯蔵装置の少なくとも一方に貯蔵される。
【0010】
電気コイルは、ハウジングの内面の周囲に配置してもよい。
【0011】
電気コイルは、ハウジングの外面の周囲に配置してもよい。
【0012】
電気コイルは、ハウジングの遠位端に配置してもよい。
【0013】
注射デバイスはさらに、注射デバイスの外面上に配置された少なくとも1つの光源を含んでもよく、この少なくとも1つの光源は、生成された電流によって電力供給されるように構成される。
【0014】
注射デバイスはさらに、生成された電流によって電力供給されるように構成される、RFIDトランスデューサを含んでもよい。
【0015】
ハウジングは液体薬剤または薬剤カートリッジを収容し得る。
【0016】
デバイスは薬剤を含み得る。
【0017】
薬剤は注射用インスリンを含み得る。
【0018】
本発明の別の態様によれば、注射デバイスから着脱可能なキャップを係合解除する方法が提供され、注射デバイスから着脱可能なキャップを係合解除する動きが、注射デバイスのハウジングに配置された電気コイルに対する着脱可能なキャップ内の磁石の動きを引き起こし、それにより電気コイルにおいて電圧が誘起される。
【0019】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以下に記載の実施形態から明らかになり、これらを参照して説明されるであろう。
【0020】
本発明の例示的な実施形態について、添付の図面を参照して以下の通り記載する:
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本発明の実施形態による自動注射デバイスの側面図である。
図1B】本発明の実施形態による自動注射デバイスの側面図である。
図2】本発明の第1の実施形態による注射デバイスの断面図である。
図3図2の注射デバイスの別の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では実施形態を詳細に参照するが、その例が添付の図面に示されており、図面においては同様の参照番号は全体を通して同様の要素を指す。
【0023】
エネルギーを取り込むためのシステムを有する注射デバイスが提供される。注射デバイスは、液体薬剤または薬剤カートリッジを収容するためのハウジングと、電気コイルと、着脱可能なキャップと、磁石と、を含む。電気コイルは注射デバイスのハウジングの内面または外面の周囲に配置され、磁石は着脱可能なキャップ内に配置され、着脱可能なキャップがハウジングから係合解除されるとき、磁石が電気コイルに対して直線的に移動し、電気コイルにおいて電流を生成させるようになっている。
【0024】
本明細書に記載の薬物送達デバイスは、患者に薬剤を注射するように構成することができる。例えば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内であり得る。このようなデバイスは、患者、または看護師もしくは医師などの介護者によって操作される可能性があり、様々なタイプの安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器を含み得る。デバイスは、使用前に封止されたアンプルに穿孔する必要のある、カートリッジベースのシステムを含み得る。これら様々なデバイスを用いて送達される薬剤の体積は、約0.5mlから約2mまでの範囲であり得る。さらに別のデバイスは、「大きな」体積の薬剤(典型的には約2mlから約10ml)を送達するためにある時間(例えば、約5、15、30、60、または120分)の間患者の皮膚に接着されるように構成された、大容積デバイス(「LVD(large volume device)」)またはパッチポンプを含み得る。
【0025】
特定の薬剤と組み合わせて、本記載のデバイスを、要求される仕様内で動作するようにカスタマイズしてもよい。例えば、ある時間(例えば、自動注射器では約3から約20秒、LVDでは約10分から約60分)内で薬剤を注射するようにデバイスをカスタマイズしてもよい。他の仕様としては、不快感が低いかもしくは最小限であること、または、人間要素、貯蔵期限、使用期限、生体適合性、環境的配慮、等に関連する特定の条件を挙げることができる。このような多様性は様々な要因に起因して現れる可能性があり、例えば、薬物の粘度が約3cPから約50cPの範囲にわたることが挙げられる。その結果、薬物送達デバイスは多くの場合、約25から約31ゲージのサイズの中空の針を含むことになる。一般的なサイズは27および29ゲージである。
【0026】
本明細書に記載の送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動化された機能も含み得る。例えば、針の挿入、薬剤の注射、および針の引き戻しのうちの1つまたはそれ以上を自動化できる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーを、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって供給できる。エネルギー源としては、例えば、機械的な、空圧式の、化学的な、または電気的なエネルギーを挙げることができる。例えば、機械的なエネルギー源としては、ばね、てこ、エラストマー、またはエネルギーを貯蔵もしくは解放するための他の機械的機構を挙げることができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて、単一のデバイスとすることができる。デバイスはさらに、ギア、弁、またはエネルギーをデバイスの1つもしくはそれ以上の構成要素の動きに変換するための他の機構を含み得る。
【0027】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動化された機能は、起動機構を介してそれぞれ起動させることができる。このような起動機構は、ボタン、レバー、針スリーブ、または他の起動構成要素のうちの、1つまたはそれ以上を含み得る。自動化された機能の起動は、1ステップのまたは複数ステップの工程であってもよい。すなわち、使用者は、自動化された機能を実行させるために、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動させる必要があり得る。例えば、1ステップの工程では、薬剤の注射を実行するために、使用者が針スリーブを自身の身体に押し付けてもよい。他のデバイスでは、自動化された機能を複数ステップで起動する必要があり得る。例えば、使用者は、注射を実行するために、ボタンの押下およびニードルシールドの引き戻しを必要とする場合がある。
【0028】
加えて、自動化された機能の起動により、1つまたはそれ以上の後続の自動化された機能を起動させ、これにより起動シークエンスを形成してもよい。例えば、第1の自動化された機能の起動により、針の挿入、薬剤の注射、および針の引き戻しのうちの、少なくとも2つを起動させてもよい。デバイスによっては、1つまたはそれ以上の自動化された機能を行わせるために、ステップの特定のシークエンスを必要とすることがある。他のデバイスは、独立したステップのシークエンスで動作してもよい。
【0029】
一部の送達デバイスは、安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器の、1つまたはそれ以上の機能を含み得る。例えば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された(自動注射器において典型的に見られるような)機械的なエネルギー源と、(ペン型注射器において典型的に見られるような)用量設定機構と、を含み得る。
【0030】
本開示の一部の実施形態によれば、例示的な薬物送達デバイス10が、図1Aおよび図1Bに示されている。デバイス10は、上記のように、患者の体内に薬剤を注射するように構成されている。デバイス10は、注射される薬剤を収容しているリザーバ(例えばシリンジ)を典型的には収容している、ハウジング11と、送達工程の1つまたはそれ以上のステップを容易にするために必要となる構成要素と、を含む。デバイス10はまた、ハウジング11に取り外し可能に装着できる、キャップ組立体12も含み得る。通常は、デバイス10が操作可能となる前に、使用者がハウジング11からキャップ12を取り外さなければならない。
【0031】
示されているように、ハウジング11は実質的に円筒形であり、長手方向軸Xに沿って実質的に一定の直径を有する。ハウジング11は、遠位領域20および近位領域21を有する。用語「遠位」は注射の部位に相対的により近い位置を指し、用語「近位」は注射部位から相対的により遠い位置を指す。
【0032】
デバイス10はまた、ハウジング11に対するスリーブ13の動きが可能となるようにハウジング11に結合された、針スリーブ13も含み得る。例えば、スリーブ13は、長手方向軸Xと平行な長手方向に可動である。具体的には、近位方向へのスリーブ13の動きにより、針17がハウジング11の遠位領域20から延びることが可能になる。
【0033】
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行うことができる。例えば、針17は、ハウジング11に対して固定的に位置してよく、最初は延ばした針スリーブ13内に位置してよい。スリーブ13の遠位端を患者の身体に当接させて置き、ハウジング11を遠位方向に移動させることによる、スリーブ13の近位方向への動きによって、針17の遠位端が現れることになる。このような相対的な動きにより、針17の遠位端が患者の体内に延びることが可能になる。このような挿入は、患者がスリーブ13をハウジング11に対して手で動かすことを介して針17が手動で挿入されるので、「手動の」挿入と称される。
【0034】
挿入の別の形態は「自動化された」ものであり、この場合、針17がハウジング11に対して移動する。このような挿入は、スリーブ13の動きによって、または例えばボタン22などの別の形態の起動によって、トリガすることができる。図1Aおよび図1Bに示すように、ボタン22は、ハウジング11の近位端に位置する。ただし他の実施形態では、ボタン22は、ハウジング11の側面上に位置することができる。
【0035】
他の手動のまたは自動化された機能としては、薬物の注射もしくは針の引き戻し、または両方を挙げることができる。注射は、栓またはピストン23がシリンジ(図示せず)内の近位位置からシリンジ内のより遠位の位置へと移動されて、シリンジから針17に薬剤が押し通される工程である。一部の実施形態では、デバイス10が起動される前に、駆動ばね(図示せず)が圧縮されている。駆動ばねの近位端をハウジング11の近位領域21内に固定することができ、駆動ばねの遠位端を、ピストン23の近位表面に圧縮力を加えるように構成することができる。起動後、駆動ばねに貯蔵されているエネルギーの少なくとも一部を、ピストン23の近位表面に加えることができる。この圧縮力がピストン23に作用して、これを遠位方向に移動させる。このような遠位方向への動きはシリンジ内の液体薬剤を圧縮するように作用し、これを針17から押し出す。
【0036】
注射後、スリーブ13またはハウジング11内に針17を引き戻すことができる。引き戻しは、使用者が患者の体からデバイス10を取り外す際に、スリーブ13が遠位方向に移動するときに生じ得る。これが生じ得るのは、針17がハウジング11に対して固定的に位置するままであるからである。スリーブ13の遠位端が針17の遠位端を通り過ぎて、針17が覆われると、スリーブ13をロックすることができる。このようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ13の近位方向への動きをロックすることを含み得る。
【0037】
針の引き戻しの別の形態は、針17がハウジング11に対して移動される場合に生じ得る。このような動きは、ハウジング11内のシリンジがハウジング11に対して近位方向に移動される場合に生じ得る。この近位方向への動きは、遠位領域20内に位置する引き戻しばね(図示せず)を使用することによって達成可能である。圧縮された引き戻しばねは、起動時、シリンジにこれを近位方向に移動させるのに十分な力を供給することができる。十分な引き戻し後、ロッキング機構を用いて、針17とハウジング11との間のどのような相対的な動きもロックすることができる。加えて、デバイス10のボタン22または他の構成要素を、必要に応じてロックすることができる。
【0038】
図2は、第1の実施形態による注射器または注射デバイスの断面図である。
【0039】
図2は、本体18と、着脱可能なキャップ12と、ハウジング11と、電気コイル28と、磁石29と、ニードルシールド24と、エネルギー貯蔵装置25と、発光ダイオード(LED)光源26と、太陽電池27と、を含む注射デバイス10を示している。着脱可能なキャップ12は、ハウジング11の近位端と着脱可能に係合されるように配置され、磁石29およびニードルシールド24は着脱可能なキャップ12内に配置される。具体的には、磁石29およびニードルシールド24は着脱可能なキャップ12に固定的に取り付けられており、着脱可能なキャップ12がハウジング11から係合解除されるときに、磁石29およびニードルシールド24もまたハウジング11から取り外されるようになっている。
【0040】
ハウジング11は、液体薬剤または薬剤カートリッジを収容するように配置されている。本実施形態では、ハウジング11は出口開口を含み、シリンジ18の形態の薬剤カートリッジを収容するように配置されている。ハウジング11は所定位置に固定されているものと一般に考えられるので、他の構成要素の動きはハウジング11との関係において記載されている。本実施形態では、シリンジ18、例えば再充填可能なシリンジは、その出口開口において中空の注射針17を含む。シリンジ18は、注射中に患者に送達されることになる液体薬剤を収容している。ハウジング11の開口部は、着脱可能なキャップ12の端部がハウジング11の開口部と密に係合するのを可能にするように構成される、円筒形のカラーを形成する。
【0041】
注射デバイス10が完全に組み立てられたとき(すなわち、着脱可能なキャップ12がハウジング11と係合されたとき)、ニードルシールド24はシリンジ18の出口開口を遮蔽し、中空の注射針17を覆うためのニードルシールドとして働く。これにより、針が滅菌状態に保たれ、組み立ておよび取り回し中の針の損傷ならびに突き刺し負傷の回避のために針への使用者のアクセスの両方が、防止される。
【0042】
シリンジ18を遠位で封止するための、およびプランジャ構成(図面には示されていない)からの力の下でシリンジ内の液体薬剤を中空の針17を通して変位させるための、ピストン、ストッパ、または栓(図面には示されていない)が配置される。シリンジ18はハウジング11内に保持され、その中のその近位端において支持される。
【0043】
本実施形態では、電気コイル28は、図面に示されているように、ハウジング11の外面上に配置される。具体的には、電気コイル28はハウジング11の近位端に配置される。電気コイル28は第1の端部および第2の端部を含み、第1の端部28aの方がハウジング11の遠位端に近く、第2の端部28bの方がハウジング11の遠位端から遠くに離れている。
【0044】
本実施形態では、磁石29は円筒の形状を有し、着脱可能なキャップ12の内面の周囲に配置可能となっている。図2は、脱可能なキャップ12の端部の周囲に配置された磁石29の2つの断面を示している。
【0045】
この実施形態では、電気コイル28はハウジング11の近位端に近い位置に配置され、初期状態では(すなわち、着脱可能なキャップ12がハウジング11に取り付けられているとき)、磁石29が電気コイル28内で電気コイル28の第1の端部28aに近接して位置するようになっている。着脱可能なキャップ12がハウジング11から係合解除され取り外されるとき、磁石29は第1の端部28aから第2の端部28bまで電気コイル28に対して直線的に移動し、その後電気コイル28から離れていく。この特定の構成により、電気コイル28における電圧の生成の有効性が高まる。
【0046】
着脱可能なキャップ12がハウジング11から係合解除されるとき、電気コイル28に対する磁石29の動きにより、電気コイル28において電圧が誘起される。電気コイル28において電流が生成され、これがエネルギー貯蔵装置25を充電するために使用される。本実施形態におけるエネルギー貯蔵装置25はコンデンサを含むが、再充電可能なバッテリセルなどの別の構成要素を代わりに含んでもよい。
【0047】
本実施形態では、ハウジング11および本体18の外面上に、LED光源26および図2には示されていない他の搭載機器に電力供給するための追加の電気を生成するための、太陽電池27が配置されている。太陽電池27は、電気コイル28および磁石29の構成とは別の、さらなる電力源と見なされる。
【0048】
図3は、図2の注射デバイスの別の断面図を示す。
【0049】
説明の目的で、図3では注射デバイス10のいくつかの構成要素が省略されている。図3には、電気コイル28に対する磁石29の動きを説明するために、ハウジング11、注射針17、ニードルシールド24、電気コイルの第1の端部28a、電気コイルの第2の端部28b、および注射デバイス10の磁石29だけが示されている。
【0050】
図3には、着脱可能なキャップ12がハウジングから係合解除されている最中の磁石29の動きの方向、ならびに着脱可能なキャップ12がハウジング11と再び係合されることになった場合の磁石29の動きの方向が示されている。これらは、電気コイル28とニードルシールド24との間の両矢印によって表されている。
【0051】
図3にはまた、着脱可能なキャップ12が係合解除され磁石29に加えられる力Fの方向、磁石29の磁場Bの方向、および磁石29が電気コイル28の第1の端部28aから電気コイル28の第2の端部28bへと移動したときに生成される電流Iの結果的な方向(ページの外)も示されている。
【0052】
上記のように、初期状態では、磁石29は電気コイル28内で電気コイル28の第1の端部28aに近接して位置する。着脱可能なキャップ12がハウジング11から係合解除され取り外されている最中に、磁石29は電気コイル28の第2の端部28bに向かって直線的に移動する。電気コイル28において、動きと反対方向の力が生じるような方向に電流が誘起される。誘起された電流を使用して、注射デバイス10の搭載機器に電力供給できるようにエネルギー貯蔵装置25(この図面には示されていない)を充電する。
【0053】
第1の実施形態による注射デバイス10の動作のシークエンスは、以下の通りである:
【0054】
使用者はハウジング11の近位端から着脱可能なキャップ12を引き抜き、これにより着脱可能なキャップ12がハウジング11から係脱される。ニードルシールド24は着脱可能なキャップ12に配置されているので、着脱可能なキャップ12がハウジング11から係脱されるとき、ニードルシールド24もまた着脱可能なキャップ12と一緒に取り外され、その結果、中空の注射針17がハウジング11の出口開口において露出されて注射できる状態になる。
【0055】
着脱可能なキャップ12がハウジング11から係合解除されている最中に、着脱可能なキャップ23に連結された磁石29は、電気コイル28に対して電気コイルの第1の端部28aから電気コイルの第2の端部28bまで直線的に移動し、電気コイル28の周囲の磁場の変化を引き起こす。
【0056】
これにより電気コイル28において電圧が、および電流が生成され、これがエネルギー貯蔵装置25を充電するために使用される。エネルギー貯蔵装置25に貯蔵されている電気は次いで、LED光源26およびRFIDトランスデューサの形態のRFID追跡装置(図面には示されていない)を含む、注射デバイス10の任意の搭載機器に電力供給するために使用されることになる。RFIDトランスデューサにより、注射デバイスの範囲内に位置する他のデバイスへの情報の通信(例えば、注射デバイスの身元、収容されている薬剤の種類および/または量)が可能になる。注射デバイスの動作状態を使用者に示すためにLED光源を使用してもよい。
【0057】
注射をトリガするために、注射デバイス10は注射部位、例えば患者の皮膚に押し付けられる。使用者、例えば患者または介護者は、注射デバイス10を自身の手全体で把持し、注射デバイス10の近位端を注射部位に押し付ける。
【0058】
針17が注射部位に挿入された後で、プランジャ構成(図面には示されていない)が起動されて、シリンジ18内に収容されている液体薬剤を押して、針17を通して患者の注射部位内に至らせる。
【0059】
本実施形態による注射デバイス10は、注射のために注射針17を露出させるために使用者がキャップ12を取り外すときに、同時に磁石29の動きに起因して電気コイル28において電圧が生成される、という技術的な利点を提供する。電気生成のための追加の操作ステップを必要としないので、これにより注射デバイス10は、より使用者に優しくかつ効率的に使用できるものとなる。
【0060】
電気コイル28がハウジング11の外面上に配置されると記載されているが、代替の実施形態では、ハウジング11の内面と外面との間の材料に起因する電気的損失の量を低減するために、電気コイル28はハウジング11の内面上に配置される。
【0061】
一部の記載した実施形態では、注射デバイスは自動注射デバイスであるが、代替の実施形態では、注射デバイスは注射が手動で駆動される手動デバイスであってもよい。
【0062】
代替の実施形態では、電気コイルを、近位端の代わりにハウジングの遠位端に配置してもよい。
【0063】
代替の実施形態では、電気コイルにおいて生成された電流を、エネルギー貯蔵装置(例えばコンデンサ)に貯蔵せずに、注射デバイスにおける搭載機器、例えばLED照明およびRFIDトランスデューサに直接電力供給するために使用してもよい。
【0064】
代替の実施形態では、太陽電池に関して他の既知の材料および形態を使用してもよい。
【0065】
代替の実施形態では、磁石は、円筒の形状の代わりに他の形状を採用してもよい。
【0066】
代替の実施形態では、コンデンサの代わりに他の蓄電装置を使用してもよい。
【0067】
代替の実施形態では、注射デバイスにおいてLED光源の代わりに他の光源を使用してもよい。
【0068】
代替の実施形態では、中空の注射針を、他の吐出または注射機構で置き換えてもよい。例えば、出口開口を、注射針が必要なくなるように、吐出開口となるように構成してもよい。別の例として、シリンジの出口開口に液体薬剤の吐出のためのノズルを備えてもよい。
【0069】
代替の実施形態では、RFIDトランスデューサの代わりにパッシブ型RFIDタグを使用してもよい。
【0070】
図2および図3には注射デバイスにおいて単一の磁石が使用されていることが示されているが、代替の実施形態では、複数の磁石を使用してもよい。そのような実施形態では、複数の磁石は、記載したような、すなわち、注射デバイスのハウジングに配置された電気コイルに対して直線的に移動するように構成される、第1の実施形態の磁石の構成と、同様の構成を有してもよい。
【0071】
本出願においては構成の特定の組合せに合わせて特許請求の範囲が策定されているが、本開示の範囲には、本明細書において明示的にもしくは非明示的に開示されている任意の新規な構成もしくは構成の任意の新規な組合せ、またはそれらの任意の一般化もまた含まれ、このときそれが本明細書のいずれかの請求項において特許請求されているのと同じ発明に関連しているか否かは関係がなく、またそれが本発明と同様に同じ技術的問題の一部もしくは全部を軽減するか否かには関係のないことを理解されたい。本出願人はここに、そのような構成および/または構成の組合せに合わせて、本出願のまたはそこから派生した任意のさらなる出願の審査手続の間に、新しい請求項を策定できることを断っておく。
【0072】
本明細書に記載する物質、調合物、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または削除)を、本発明の最大限の範囲および精神から逸脱することなく行うことができ、そこにはかかる修正形態およびそのありとあらゆる均等物が包含されていることを、当業者は理解するであろう。
【0073】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0074】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組合せを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(例えばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0075】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物または薬剤をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。それだけには限らないが、薬物送達デバイスは、注射デバイス(例えばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、潅流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(例えば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(例えば鼻用または肺用)、埋め込み型デバイス(例えば、薬物またはAPIコーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここで説明される薬物は、例えば24以上のゲージ数を有する、例えば皮下針である針を含む注射デバイスでは特に有用であり得る。
【0076】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、例えば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(例えば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。
【0077】
例えば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(例えば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(例えば約20℃)または冷蔵温度(例えば約−4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(例えばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。例えば、2つのチャンバは、これらが(例えば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0078】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、例えば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、例えば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0079】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、例えばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GLP−1類似体もしくはGLP−1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、元の物質と構造的に十分に類似しており、それによって同様の機能または活性(例えば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。特に、用語「類似体」は、天然のペプチドの構造、例えばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(例えば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、例えばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0080】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0081】
インスリン誘導体の例としては、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N−テトラデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ω−カルボキシヘプタデカノイル−γ−L−グルタミル−des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0082】
GLP−1、GLP−1類似体およびGLP−1受容体アゴニストの例としては、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標)、エキセナチド(エキセンディン−4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン−4、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、ラングレナチド/HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン(Eligen)、ORMD−0901、NN−9924、NN−9926、NN−9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、GSK−2374697、DA−3091、MAR−701、MAR709、ZP−2929、ZP−3022、TT−401、BHM−034、MOD−6030、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド−XTENおよびグルカゴン−Xtenがある。
【0083】
オリゴヌクレオチドの例としては、例えば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0084】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0085】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0086】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、例えば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG−F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0087】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(例えばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。例えば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、例えば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0088】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(例えば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0089】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0090】
抗体の例としては、アンチPCSK−9mAb(例えばアリロクマブ)、アンチIL−6mAb(例えばサリルマブ)、およびアンチIL−4mAb(例えばデュピルマブ)がある。
【0091】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、例えば酸付加塩および塩基性塩である。
【0092】
本明細書に記載のAPI、調合物、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または削除)を、本発明の最大限の範囲および精神から逸脱することなく行うことができ、そこにはかかる修正形態およびそのありとあらゆる均等物が包含されていることを、当業者は理解するであろう。
図1a
図1b
図2
図3