【実施例】
【0063】
<3.1 第1の実施例>
第1の実施例では、熱可塑性樹脂を含有する異方性接合フィルムを用いてLED実装体を作製し、LED実装体の順電圧、ダイシェア強度、及び接合状態について評価した。
【0064】
[固形樹脂のメルトフローレートの測定]
JIS K7210:1999の塑性プラスチックのメルトフローレートの求め方に従い、メルトフローレート測定装置(品名:メルトインデックサG-02、東洋精機製作所社製)を用いて温度190℃,荷重2.16kgの条件で熱可塑性樹脂A−Eのメルトフローレートを測定した。
A:ポリエステル樹脂、プリマロイA1500(三菱ケミカル(株))、MFR=11g/10min
B:エチレン酢ビニル共重合樹脂、エバフレックスEV205WR(三井デュポンケミカル(株))、MFR=800g/10min
C:エチレンアクリル酸共重合樹脂、ニュクレルN1050H(デュポン(株))、MFR=500g/10min
D:ポリアミド樹脂、Griltex D1666A(EMS GRIVORY(株))、MFR=130g/10min
E:フェノキシ樹脂、フェノトートYP70(新日鉄住金化学(株))、MFR=1g/10min
【0065】
[LED実装体の作製]
LEDチップ(デクセリアルズ評価用LEDチップ、サイズ45mil、If=350mA、Vf=3.1V、Au−Snパッド、パッドサイズ300μm×800μmのP電極とN電極がそれぞれ設けられており、パッド間距離(P電極とN電極間距離)150μm)と、基板(デクセリアルズ評価用セラミック基板、18μm厚Cuパターン、Ni−Auメッキ、パターン間(スペース)50μm)とを準備した。異方性接合フィルムを80℃−2MPa−3secの条件で基板上にラミネートし、LEDチップをアライメント搭載した後、リフロー(ピーク温度260℃)によりLEDチップを実装した。
【0066】
[順電圧の測定]
定格電流であるIf=350mAを基板のパターンを介してLEDチップに流し、LEDチップの順電圧値Vfを測定した。電圧オーバーで読み取れない場合を「OPEN」とした。
【0067】
[ダイシェア強度の測定]
ボンディングテスター(品番:PTR−1100、レスカ社製)を用いて、測定速度20μm/secでLEDチップのダイシェア強度を測定した。
【0068】
[接合状態の観察]
ダイシェア強度を測定した後、すなわちLEDチップを引き剥がした後の基板側のはんだ接合状態を光学顕微鏡にて観察した。
【0069】
[フィルム厚みの測定]
フィルム厚みは、デジタルマイクロメータを用いて、10箇所以上測定し、その平均をフィルム厚みとした。
【0070】
<実施例1−1>
表1に示すように、熱可塑性樹脂A、フラックス化合物(グルタル酸(1,3−プロパンジカルボン酸)、和光純薬(株))、はんだ粒子(42Sn−58Bi、Type6 、融点139℃、平均粒子径10μm、三井金属(株))、酸化チタン(平均粒子径0.21μm、CR−60、石原産業(株))を所定の質量部で配合し、異方性接合フィルムを作製した。
【0071】
熱可塑性樹脂A、フラックス化合物、及び酸化チタンを混合溶解したトルエン溶液中にはんだ粒子を分散させた後、ギャップコーターにて、トルエン乾燥後の厚みが20μmになるよう剥離PET(PET−02−BU、四国トーセロ(株))上に塗布して作製した。トルエン乾燥は80℃−10minの条件で行った。乾燥後のフィルム厚みの測定値は20μmであった。
【0072】
表1に、異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体の順電圧、及びダイシェア強度の測定結果を示す。順電圧が3.1V、ダイシェア強度が40N/chipであった。
【0073】
図4は、実施例1−1のLEDチップを引き剥がした後の基板側のはんだ接合状態を観察したときの顕微鏡写真である。はんだがLEDチップ側及び基板側に濡れ広がっており、良好なはんだ接合状態であった。また、一つの電極内に複数のはんだ接合箇所が存在することが確認できた。
【0074】
<実施例1−2>
表1に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Bを用いた以外は、実施例1−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、ダイシェア強度が45N/chipであった。
【0075】
<実施例1−3>
表1に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Cを用いた以外は、実施例1−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、ダイシェア強度が43N/chipであった。
【0076】
<実施例1−4>
表1に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Dを用いた以外は、実施例1−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、ダイシェア強度が46N/chipであった。
【0077】
<実施例1−5>
表1に示すように、異方性接合フィルムの厚みを30μmとした以外は、実施例1−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.1V、ダイシェア強度が47N/chipであった。
【0078】
<比較例1−1>
表1に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Eを用いた以外は、実施例1−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がオープンとなり、ダイシェア強度が19N/chipであった。
【0079】
図5は、比較例1−1のLEDチップを引き剥がした後の基板側のはんだ接合状態を観察したときの顕微鏡写真である。熱可塑性樹脂Eのメルトフローレートが1g/10minであるため、樹脂がほとんど流動せず、はんだ粒子がLEDチップのパッドや基板のパターンに接触せず溶融しなかった。
【0080】
<比較例1−2>
表1に示すように、フラックス化合物を配合しなかった以外は、実施例1−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がオープンとなり、ダイシェア強度が18N/chipであった。
【0081】
図6は、比較例1−2のLEDチップを引き剥がした後の基板側のはんだ接合状態を観察したときの顕微鏡写真である。フラックス化合物が配合されていないため、はんだ粒子が溶融しなかった。
【0082】
<比較例1−3>
表1に示すように、異方性接合フィルムの厚みを40μmとした以外は、実施例1−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がオープンとなり、ダイシェア強度が25N/chipであった。
【0083】
図7は、比較例1−3のLEDチップを引き剥がした後の基板側のはんだ接合状態を観察したときの顕微鏡写真である。異方性接合フィルムの厚みが40μmと厚いため、はんだ粒子の電極間への挟持が不十分で、はんだ接合が不十分となり、はんだ粒子の濡れ広がりがLEDチップ側のみの箇所と基板側のみの箇所が見られた。
【0084】
【表1】
【0085】
比較例1−1では、メルトフローレートが1g/10minである熱可塑性樹脂Eを用いたため、樹脂の流動性が悪く、はんだ粒子が溶融せず、被着体の電極と接合しなかった。このため、順電圧を測定することができなかった。また、樹脂が十分に流動しておらず、はんだ接合も形成されていなためLEDチップの密着性が弱く、ダイシェア強度が低い結果となった。
【0086】
比較例1−2では、フラックス化合物を配合していないため、はんだ粒子が溶融せず、順電圧を測定することができなかった。
【0087】
比較例1−3では、はんだ粒子の平均粒子径10μmに対し、4倍厚みの40μm厚みの異方性接合フィルムを用いたため、はんだ接合が形成されず、順電圧を測定することができなかった。また、ダイシェア強度も低い結果となった。
【0088】
一方、実施例1−1〜実施例1−5では、メルトフローレートが1g/10min以上である熱可塑性樹脂A−Dを用い、はんだ粒子の平均粒子径10μmに対し、2−3倍厚みの20−30μm厚みの異方性接合フィルムを用いたため、樹脂が溶融・流動し、はんだ粒子により被着体の電極間ではんだ接合し、定格電圧3.1Vに近い値を得ることができた。また、ダイシェア強度も良好な結果となった。
【0089】
<3.2 第2の実施例>
第2の実施例では、ラジカル重合性樹脂を含有する異方性接合フィルムを用いてLED実装体を作製し、LED実装体の順電圧、絶縁性及びダイシェア強度ついて評価した。LED実装体の作製、LED実装体の順電圧、及びダイシェ強度の測定は、第1の実施例と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0090】
[固形樹脂のメルトフローレートの測定]
JIS K7210:1999の塑性プラスチックのメルトフローレートの求め方に従い、メルトフローレート測定装置(品名:メルトインデックサG-02、東洋精機製作所社製)を用いて温度190℃,荷重2.16kgの条件で熱可塑性樹脂A−C,E及び固形ラジカル重合性樹脂のメルトフローレートを測定した。
A:ポリエステル樹脂、プリマロイA1500(三菱ケミカル(株))、MFR=11g/10min
B:エチレン酢ビニル共重合樹脂、エバフレックスEV205WR(三井デュポンケミカル(株))、MFR=800g/10min
C:エチレンアクリル酸共重合樹脂、ニュクレルN1050H(デュポン(株))、MFR=500g/10min
E:フェノキシ樹脂、フェノトートYP70(新日鉄住金化学(株))、MFR=1g/10min
固形ラジカル重合性樹脂:ビニルエステル樹脂、リポキシVR−90、昭和電工(株)、MFR=100g/10min
【0091】
[絶縁性の評価]
基板のパターンを介してLEDチップに逆電流0.1μAを流し、電流が流れない場合の評価を「OK」とし、電流が流れた場合の評価を「NG」とした。
【0092】
<実施例2−1>
表2に示すように、熱可塑性樹脂A、液状ラジカル重合性樹脂(水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エポライト4000、共栄社化学(株))、開始剤(ジアシルパーオキサイド、パーヘキサ25B、日油(株))、フラックス化合物A(グルタル酸(1,3−プロパンジカルボン酸)、和光純薬(株))、はんだ粒子(42Sn−58Bi、Type6 、融点139℃、平均粒子径10μm、三井金属(株))、酸化チタン(平均粒子径0.21μm、CR−60、石原産業(株))を所定の質量部で配合し、異方性接合フィルムを作製した。
【0093】
熱可塑性樹脂A、及び液状ラジカル重合性樹脂をトルエンで混合溶解させ、その中にフラックス化合物A、及び酸化チタンを投入し、3本ロール(ギャップ10μmで3回パス)で分散させた後、開始剤とはんだ粒子を分散させることで樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をギャップコーターにて、トルエン乾燥後の厚みが20μmになるよう剥離PET(PET−02−BU、四国トーセロ(株))上に塗布して作製した。トルエン乾燥は80℃−10minの条件で行った。
【0094】
表2に示すように、異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.1V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が42N/chipであった。
【0095】
<実施例2−2>
表2に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Bを用いた以外は、実施例2−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が46N/chipであった。
【0096】
<実施例2−3>
表2に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Cを用いた以外は、実施例2−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が41N/chipであった。
【0097】
<実施例2−4>
表2に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて固形ラジカル重合性樹脂を用いた以外は、実施例2−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が47N/chipであった。
【0098】
<実施例2−5>
表2に示すように、フラックス化合物Aに代えてフラックス化合物B(ブロック化カルボン酸、サンタシッドG、日油(株))を用いた以外は、実施例2−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が46N/chipであった。
【0099】
<実施例2−6>
表2に示すように、異方性接合フィルムの厚みを30μmとした以外は、実施例2−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.1V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が49N/chipであった。
【0100】
<比較例2−1>
表2に示すように、熱可塑性樹脂Eを反応性希釈剤(テトラヒドロフルフリルアクリレート、ビスコート♯150、大阪有機化学工業(株))で溶解させたのちラジカル重合性樹脂、開始剤、フラックス化合物A、酸化チタン、及びはんだ粒子を混合分散させることで異方性接合ペーストを作成した。
【0101】
LEDチップ(デクセリアルズ評価用LEDチップ、サイズ45mil、If=350mA、Vf=3.1V、Au−Snパッド、パッドサイズ300μm×800μm、パッド間距離200μm)と、基板(デクセリアルズ評価用セラミック基板、18μm厚Cuパターン、Ni−Auメッキ、パターン間(スペース)50μm)とを準備した。異方性接合ペーストを厚み30μmのマスクを使用して基板上に塗布し、LEDチップをアライメント搭載した後、リフロー(ピーク温度260℃)によりLEDチップを実装した。
【0102】
表2に示すように、異方性接合ペーストを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がNG、ダイシェア強度が45N/chipであった。
【0103】
<比較例2−2>
表2に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Eを用いた以外は、実施例2−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がOPEN、絶縁性がOK、ダイシェア強度が19N/chipであった。
【0104】
<比較例2−3>
表2に示すように、フラックス化合物を配合しなかったこと以外は、実施例2−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がOPEN、絶縁性がOK、ダイシェア強度が19N/chipであった。
【0105】
<比較例2−4>
表2に示すように、異方性接合フィルムの厚みを40μmとした以外は、実施例2−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がOPEN、絶縁性がOK、ダイシェア強度が26N/chipであった。
【0106】
【表2】
【0107】
比較例2−1では、メルトフローレートが1g/10minである熱可塑性樹脂Eを用い、ペースト状の異方性接合材料を塗布したため、基板の隣接する端子間ではんだ接合によるショートが発生した。
【0108】
比較例2−2では、メルトフローレートが1g/10minである熱可塑性樹脂Eを用いたため、樹脂の流動性が悪く、はんだ粒子が溶融せず、被着体の電極と接合しなかった。このため、順電圧を測定することができなかった。また、樹脂が十分に流動しておらず、はんだ接合も形成されていなためLEDチップの密着性が弱く、ダイシェア強度が低い結果となった。
【0109】
比較例2−3では、フラックス化合物を配合していないため、はんだ粒子が溶融せず、順電圧を測定することができなかった。
【0110】
比較例2−4では、はんだ粒子の平均粒子径10μmに対し、4倍厚みの40μm厚みの異方性接合フィルムを用いたため、はんだ接合が形成されず、順電圧を測定することができなかった。また、ダイシェア強度も低い結果となった。
【0111】
一方、実施例2−1〜実施例2−5では、メルトフローレートが1g/10min以上である熱可塑性樹脂A−Dを用い、はんだ粒子の平均粒子径10μmに対し、2−3倍厚みの20−30μm厚みの異方性接合フィルムを用いたため、樹脂が溶融・流動し、はんだ粒子により被着体の電極間ではんだ接合し、定格電圧3.1Vに近い値を得ることができた。また、ダイシェア強度も良好な結果となった。
【0112】
<3.3 第3の実施例>
第3の実施例では、エポキシ樹脂を含有する異方性接合フィルムを用いてLED実装体を作製し、LED実装体の順電圧、絶縁性及びダイシェア強度ついて評価した。LED実装体の作製、LED実装体の順電圧、及びダイシェ強度の測定は、第1の実施例と同様のため、LED実装体の絶縁性の評価は、第2の実施例と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0113】
[固形樹脂のメルトフローレートの測定]
JIS K7210:1999の塑性プラスチックのメルトフローレートの求め方に従い、メルトフローレート測定装置(品名:メルトインデックサG-02、東洋精機製作所社製)を用いて温度190℃,荷重2.16kgの条件で熱可塑性樹脂A−C,E及び固形エポキシ樹脂のメルトフローレートを測定した。
A:ポリエステル樹脂、プリマロイA1500(三菱ケミカル(株))、MFR=11g/10min
B:エチレン酢ビニル共重合樹脂、エバフレックスEV205WR(三井デュポンケミカル(株))、MFR=800g/10min
C:エチレンアクリル酸共重合樹脂、ニュクレルN1050H(デュポン(株))、MFR=500g/10min
E:フェノキシ樹脂、フェノトートYP70(新日鉄住金化学(株))、MFR=1g/10min
固形エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、1001、三菱化学(株)、MFR=2600g/10min
【0114】
<実施例3−1>
表3に示すように、熱可塑性樹脂A、液状エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、YL980、三菱化学(株))、硬化剤A(アニオン硬化剤、マイクロカプセル型イミダゾール硬化剤、HX3941HP、旭化成(株))、フラックス化合物A(グルタル酸(1,3−プロパンジカルボン酸)、和光純薬(株))、はんだ粒子(42Sn−58Bi、Type6 、融点139℃、平均粒子径10μm、三井金属(株))、酸化チタン(平均粒子径0.21μm、CR−60、石原産業(株))を所定の質量部で配合し、異方性接合フィルムを作製した。
【0115】
熱可塑性樹脂A、及び液状エポキシ樹脂をトルエンで混合溶解させ、その中にフラックス化合物A、及び酸化チタンを投入し、3本ロール(ギャップ10μmで3回パス)で分散させた後、硬化剤Aとはんだ粒子を分散させることで樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をギャップコーターにて、トルエン乾燥後の厚みが20μmになるよう剥離PET(PET−02−BU、四国トーセロ(株))上に塗布して作製した。トルエン乾燥は80℃−10minの条件で行った。
【0116】
表3に示すように、異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.1V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が43N/chipであった。
【0117】
<実施例3−2>
表3に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Bを用いた以外は、実施例3−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が46N/chipであった。
【0118】
<実施例3−3>
表3に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Cを用いた以外は、実施例3−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が41N/chipであった。
【0119】
<実施例3−4>
表3に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて固形エポキシ樹脂を用いた以外は、実施例3−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が47N/chipであった。
【0120】
<実施例3−5>
表3に示すように、硬化剤Aに代えて硬化剤B(カチオン硬化剤、スルホニウム塩、サンエイドSI−80L、三新化学社製)を用い、液状エポキシ樹脂の配合比を調整した以外は、実施例3−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が46N/chipであった。
【0121】
<実施例3−6>
表3に示すように、フラックス化合物Aに代えてフラックス化合物B(ブロック化カルボン酸、サンタシッドG、日油(株))を用いた以外は、実施例3−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が44N/chipであった。
【0122】
<実施例3−7>
表3に示すように、異方性接合フィルムの厚みを30μmとした以外は、実施例3−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.1V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が49N/chipであった。
【0123】
<比較例3−1>
表3に示すように、液状エポキシ樹脂、硬化剤A、フラックス化合物A、酸化チタン、及びはんだ粒子を混合分散させることで異方性接合ペーストを作成した。
【0124】
LEDチップ(デクセリアルズ評価用LEDチップ、サイズ45mil、If=350mA、Vf=3.1V、Au−Snパッド、パッドサイズ300μm×800μm、パッド間距離200μm)と、基板(デクセリアルズ評価用セラミック基板、18μm厚Cuパターン、Ni−Auメッキ、パターン間(スペース)50μm)とを準備した。異方性接合ペーストを厚み30μmのマスクを使用して基板上に塗布し、LEDチップをアライメント搭載した後、リフロー(ピーク温度260℃)によりLEDチップを実装した。
【0125】
表3に示すように、異方性接合ペーストを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がNG、ダイシェア強度が45N/chipであった。
【0126】
<比較例3−2>
表2に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Eを用いた以外は、実施例3−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がOPEN、絶縁性がOK、ダイシェア強度が19N/chipであった。
【0127】
<比較例3−3>
表3に示すように、フラックス化合物を配合しなかったこと以外は、実施例3−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がOPEN、絶縁性がOK、ダイシェア強度が19N/chipであった。
【0128】
<比較例3−4>
表3に示すように、異方性接合フィルムの厚みを40μmとした以外は、実施例3−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がOPEN、絶縁性がOK、ダイシェア強度が26N/chipであった。
【0129】
【表3】
【0130】
比較例3−1では、液状エポキシ樹脂を用い、ペースト状の異方性接合材料を塗布したため、基板の隣接する端子間ではんだ接合によるショートが発生した。
【0131】
比較例3−2では、メルトフローレートが1g/10minである熱可塑性樹脂Eを用いたため、樹脂の流動性が悪く、はんだ粒子が溶融せず、被着体の電極と接合しなかった。このため、順電圧を測定することができなかった。また、樹脂が十分に流動しておらず、はんだ接合も形成されていなためLEDチップの密着性が弱く、ダイシェア強度が低い結果となった。
【0132】
比較例3−3では、フラックス化合物を配合していないため、はんだ粒子が溶融せず、順電圧を測定することができなかった。
【0133】
比較例3−4では、はんだ粒子の平均粒子径10μmに対し、4倍厚みの40μm厚みの異方性接合フィルムを用いたため、はんだ接合が形成されず、順電圧を測定することができなかった。また、ダイシェア強度も低い結果となった。
【0134】
一方、実施例3−1〜実施例3−7では、メルトフローレートが1g/10min以上である熱可塑性樹脂A−Dを用い、はんだ粒子の平均粒子径10μmに対し、2−3倍厚みの20−30μm厚みの異方性接合フィルムを用いたため、樹脂が溶融・流動し、はんだ粒子により被着体の電極間ではんだ接合し、定格電圧3.1Vに近い値を得ることができた。また、ダイシェア強度も良好な結果となった。また、実施例3−6のビニルエーテルでカルボキシル基をブロックしたブロック化フラックス化合物を用いても、良好な結果を得ることができた。
【0135】
<3.4 第4の実施例>
第4の実施例では、フラックス化合物としてカルボン酸を含有する異方性接合フィルムを用いてLED実装体を作製し、LED実装体の順電圧、絶縁性及びダイシェア強度ついて評価した。LED実装体の作製、LED実装体の順電圧、及びダイシェア強度の測定は、第1の実施例と同様のため、LED実装体の絶縁性の評価は、第2の実施例と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0136】
[固形樹脂のメルトフローレートの測定]
JIS K7210:1999の塑性プラスチックのメルトフローレートの求め方に従い、メルトフローレート測定装置(品名:メルトインデックサG-02、東洋精機製作所社製)を用いて温度190℃,荷重2.16kgの条件で熱可塑性樹脂A,E及び固形エポキシ樹脂のメルトフローレートを測定した。
A:ポリエステル樹脂、プリマロイA1500(三菱ケミカル(株))、MFR=11g/10min
E:フェノキシ樹脂、フェノトートYP70(新日鉄住金化学(株))、MFR=1g/10min
固形エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、1001、三菱化学(株)、MFR=2600g/10min
【0137】
<実施例4−1>
表4に示すように、熱可塑性樹脂A、液状エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、YL980、三菱化学(株))、フラックス化合物A(グルタル酸(1,3−プロパンジカルボン酸)、和光純薬(株))、はんだ粒子(42Sn−58Bi、Type6 、融点139℃、平均粒子径10μm、三井金属(株))、酸化チタン(平均粒子径0.21μm、CR−60、石原産業(株))を所定の質量部で配合し、異方性接合フィルムを作製した。
【0138】
熱可塑性樹脂A、及び液状エポキシ樹脂をトルエンで混合溶解させ、その中にフラックス化合物A、及び酸化チタンを投入し、3本ロール(ギャップ10μmで3回パス)で分散させた後、はんだ粒子を分散させることで樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をギャップコーターにて、トルエン乾燥後の厚みが20μmになるよう剥離PET(PET−02−BU、四国トーセロ(株))上に塗布して作製した。トルエン乾燥は80℃−10minの条件で行った。
【0139】
表4に示すように、異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.1V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が44N/chipであった。
【0140】
<実施例4−2>
表4に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて固形エポキシ樹脂を用いた以外は、実施例4−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.1V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が45N/chipであった。
【0141】
<実施例4−3>
表4に示すように、フラックス化合物Aに代えてフラックス化合物B(ブロック化カルボン酸、サンタシッドG、日油(株))を用いた以外は、実施例4−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が44N/chipであった。
【0142】
<実施例4−4>
表4に示すように、異方性接合フィルムの厚みを30μmとした以外は、実施例4−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.1V、絶縁性がOK、ダイシェア強度が48N/chipであった。
【0143】
<比較例4−1>
表4に示すように、液状エポキシ樹脂、硬化剤A、フラックス化合物B、酸化チタン、及びはんだ粒子を混合分散させることで異方性接合ペーストを作成した。
【0144】
LEDチップ(デクセリアルズ評価用LEDチップ、サイズ45mil、If=350mA、Vf=3.1V、Au−Snパッド、パッドサイズ300μm×800μm、パッド間距離200μm)と、基板(デクセリアルズ評価用セラミック基板、18μm厚Cuパターン、Ni−Auメッキ、パターン間(スペース)50μm)とを準備した。異方性接合ペーストを厚み30μmのマスクを使用して基板上に塗布し、LEDチップをアライメント搭載した後、リフロー(ピーク温度260℃)によりLEDチップを実装した。
【0145】
表4に示すように、異方性接合ペーストを用いて作製したLED実装体は、順電圧が3.0V、絶縁性がNG、ダイシェア強度が45N/chipであった。
【0146】
<比較例4−2>
表4に示すように、熱可塑性樹脂Aに代えて熱可塑性樹脂Eを用いた以外は、実施例4−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がOPEN、絶縁性がOK、ダイシェア強度が19N/chipであった。
【0147】
<比較例4−3>
表4に示すように、フラックス化合物を配合しなかったこと以外は、実施例4−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がOPEN、絶縁性がOK、ダイシェア強度が18N/chipであった。
【0148】
<比較例4−4>
表4に示すように、異方性接合フィルムの厚みを40μmとした以外は、実施例4−1と同様に異方性接合フィルムを作製した。異方性接合フィルムを用いて作製したLED実装体は、順電圧がOPEN、絶縁性がOK、ダイシェア強度が25N/chipであった。
【0149】
【表4】
【0150】
比較例4−1では、固形樹脂を配合せず、ペースト状の異方性接合材料を塗布したため、基板の隣接する端子間ではんだ接合によるショートが発生した。
【0151】
比較例4−2では、メルトフローレートが1g/10minである熱可塑性樹脂Eを用いたため、樹脂の流動性が悪く、はんだ粒子が溶融せず、被着体の電極と接合しなかった。このため、順電圧を測定することができなかった。また、樹脂が十分に流動しておらず、はんだ接合も形成されていなためLEDチップの密着性が弱く、ダイシェア強度が低い結果となった。
【0152】
比較例4−3では、フラックス化合物を配合していないため、はんだ粒子が溶融せず、順電圧を測定することができなかった。
【0153】
比較例4−4では、はんだ粒子の平均粒子径10μmに対し、4倍厚みの40μm厚みの異方性接合フィルムを用いたため、はんだ接合が形成されず、順電圧を測定することができなかった。また、ダイシェア強度も低い結果となった。
【0154】
一方、実施例4−1〜実施例4−4では、メルトフローレートが1g/10min以上である熱可塑性樹脂A又は固形エポキシ樹脂を用い、はんだ粒子の平均粒子径10μmに対し、2−3倍厚みの20−30μm厚みの異方性接合フィルムを用いたため、樹脂が溶融・流動し、はんだ粒子により被着体の電極間ではんだ接合し、定格電圧3.1Vに近い値を得ることができた。また、ダイシェア強度も良好な結果となった。また、実施例4−3では、硬化剤としてフラックス化合物を用いても、良好な結果を得ることができた。
【0155】
なお、上述の実施例では、フィルム状の異方性接合材料を用いたが、ペースト状の異方性接合材料を所定厚みに調整すれば、同様の結果が得られると考えられる。