(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の樹脂構造体に関する複数の実施形態を説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
(樹脂構造体)
図1は、第1の実施形態に関する樹脂構造体を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に関する樹脂構造体2は、樹脂フィルムが一方向に折り込まれてなるフィルム折込体4を含む。
図1では、樹脂構造体2は、複数のフィルム折込体4により構成されているが、ひとつのフィルム折込体4により構成されてもよい。
【0014】
フィルム折込体4は、樹脂フィルムを一方向に折り込んで形成される。樹脂フィルムの折り込み方法は特に限定されず、規則的に折り込んでもよいし、不規則に折り込んでもよい。このとき、折り込み線を形成する必要はない。上記樹脂フィルムは、折り込まれた樹脂フィルム同士が部分的に接触するものの、同一の樹脂フィルムの面同士が過度に密着してしまわない程度に一方向にまとめられて縮められ、皺が形成される程度に折り込まれればよい。
【0015】
フィルム折込体4は、一方向に折り込まれた樹脂フィルムが、上記折り込まれた方向と略平行な方向に切断され(
図5参照)、かつ、上記切断により生じた、上記折り込まれた方向とは直交する方向の端部同士が、同一の樹脂フィルム内で部分的に接着されている。これにより、フィルム折込体4は、上記切断により生じた端部に、上記端部同士が部分的に接着している面(液体取込面5)が形成されている。
【0016】
液体取込面5は、上記部分的な接着により強度を付与されている。これにより、フィルム折込体4は、結束部材などがなくても折り込まれた形状を維持することができる。また、液体取込面5は、樹脂フィルムの端部同士が部分的に接着していない部分に複数の開口が形成されている。これにより、フィルム折込体4は、液体取込面5の上記複数の開口から、フィルム折込体4の内部に液体を浸入させることができる。
【0017】
上記接着は、液体取込面5に所定の強度を付与しつつ、液体取込面5の一部に液体を侵入させるための複数の開口が形成されるような接着であればよい。上記接着の例には、熱による樹脂フィルムの端部同士の融着、および接着剤の付与による樹脂フィルムの端部同士の接着などが含まれる。
【0018】
また、フィルム折込体4は、液体取込面5よりも内部において、折り込まれた樹脂フィルムによる壁4aが液体取込面5に略垂直な方向に延在しており、壁4aの間には、液体取込面5に開口し、かつ樹脂フィルムを側壁とする複数の空隙が形成されている。上記複数の空隙は、液体取込面5に略垂直な方向へ延在する、液体取込面5の開口から液体が侵入できる空間(流路)となり得る。なお、上記空隙は、それぞれが液体の通過方向に対して略一定の径を有することが好ましい。
【0019】
一方で、フィルム折込体4は、一般に液体透過性が低い樹脂フィルムによって上記空隙の側壁が構成されているため、液体取込面5を上面としたときに側面となる方向からの上記空隙への液体の侵入を制限する。
【0020】
このような構造を有する樹脂構造体2は、油を含む液体を液体取込面5に接触させたときに、上記液体を液体取込面5から樹脂構造体2の内部に侵入させ、かつ、上記液体に含まれる油を樹脂構造体2の内部で捕集することができる。上記油を含む液体は、油のみからなる液体でもよいし、油と水などを含む混合液であってもよい。上記液体が油と水を含む混合液であるとき、樹脂構造体2は、上記混合液を液体取込面5から樹脂構造体2の内部に侵入させ、かつ、上記油を樹脂構造体2の内部で選択的に捕集することができる。上記油の捕集は、油に対する樹脂フィルムの親和性が高いことによるものと考えられる。特に、上記油に対する樹脂フィルムの親和性は、水に対する樹脂フィルムの親和性よりも高いため、樹脂構造体2は、油と水を含む混合液のうち油を選択的に捕集できると考えられる。
【0021】
なお、樹脂構造体2は、固体状の油や、ほこりおよび室内外の汚れなどに含まれる油なども、たとえば樹脂構造体2の液体取込面5を上記ほこりおよび汚れなどに接触させ、かつ擦擦して摩擦熱によりこれらの油を液化させることで、樹脂構造体2の内部に侵入させて捕集することができる。
【0022】
なお、樹脂構造体2を実際に使用する際には、上記液体状の油または混合液を液体取込面5に注いで付与してもよいが、上記油を含む液体に樹脂構造体2を浸漬させたり、薄い膜状に広がった上記油または混合液の上に液体取込面5を単に接触させたりするのみでもよい。樹脂構造体2は、おそらくは毛細管現象により、特に圧力等を印加しなくても、上記複数の開口から上記油を含む液体を樹脂構造体2の内部に侵入させることができる。
【0023】
フィルム折込体4の高さ(厚み:折り込まれた方向と略直交する方向へのフィルム折込体4の長さ)は、フィルム折込体4の作製を容易にする観点からは0.3cm以上であることが好ましく、同時に油の捕集効率をより高める観点からは0.3cm以上3.0cm未満であることが好ましく、0.3cm以上2.0cm未満であることがより好ましく、0.3cm以上1.2cm未満であることがさらに好ましく、0.5cm以上1.2cm未満であることがさらに好ましい。なお、上記高さが0.3cm以上3.0cm未満であることは、樹脂構造体2をコンパクトなサイズとする観点からも好ましい。一方で、フィルム折込体4は、樹脂フィルムの端部が部分的に接着していることにより、3.0cm未満のような高さでも、フィルム折込体4は、結束部材などがなくても折り込まれた形状を維持することができる。
【0024】
なお、フィルム折込体4を構成する樹脂フィルムの厚みは、5μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0025】
図1においては、いずれも略同じ形状を有する複数のフィルム折込体4が集合して、樹脂構造体2が形成されている。本実施形態では、上記複数のフィルム折込体4は、それぞれのフィルム折込体4の液体取込面5が同一平面に位置し、かつ、それぞれのフィルム折込体4の上記折り込まれた樹脂フィルムによる壁4aが略同一方向に延在するように配置される。なお、
図1では複数のフィルム折込体4がそれぞれの形状(略円筒状)を保ったまま、互いに接して配置されているが、複数のフィルム折込体4を構成する樹脂フィルムがより密にからまり合って、外見からは複数のフィルム折込体4を個別に分離して判別できなくてもよい。
【0026】
また、上記複数のフィルム折込体4は、上記折り込まれた方向とは直交する方向の端部同士が、複数のフィルム折込体4の間でも部分的に接着されている。これにより、樹脂構造体2は、結束部材などがなくても所定の形状(
図1では略円柱状)を維持することができる。上記複数のフィルム折込体4の間での部分的な接着は、複数の液体取込面5が集合してなる樹脂構造体2の端面のうち全面にわたって行われていてもよいし、部分的に(たとえば上記樹脂構造体2の端面の周縁部のみに)行われてもよい。
【0027】
また、樹脂構造体2は、一方の端部のみに上記部分的な接着が行われた液体取込面5を有してもよいし、両方の端部に上記部分的な接着が行われた液体取込面5を有してもよい。
【0028】
樹脂構造体2の全体積に対する、樹脂フィルムの充填率は、1.7vol%より大きく22.3vol%未満であることが好ましく、油の捕集効率をより高める観点からは、2.2vol%以上13.4vol%以下であることがより好ましく、油の捕集効率をより高めつつ形状保持性を高める観点からは、3.1vol%以上8.9vol%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
たとえば、
図1に示すように複数のフィルム折込体4が集合して略円柱状の樹脂構造体2を構成するときなどには、上記樹脂フィルムの充填率は、以下の式で求めてもよい。
フィルム充填率={〔樹脂フィルムの厚さ(cm)×幅(cm)×長さ(cm)〕×フィルム折込体4の数〕/〔樹脂構造体2の半径(cm)
2×円周率π×高さ(cm)〕}×100
【0030】
あるいは、樹脂構造体2を構成する樹脂フィルムを溶融および再固化させるなどして上記樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の比重を求め、上記樹脂組成物を樹脂構造体2の形状のバルク状に成形したときの上記比重から計算される質量と、樹脂構造体2の実際の質量と、の比率を上記フィルム充填率としてもよい。
【0031】
(樹脂フィルム)
上記樹脂フィルムは、樹脂および任意に添加される添加剤を含む樹脂組成物をフィルム状に成形してなるものであればよい。
【0032】
上記樹脂の種類は特に限定されないが、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(以下、単に「PVDC樹脂」ともいう。)、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、およびポリオレフィンなどの親油疎水性樹脂であることが好ましい。上記ポリオレフィンの例には、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどが含まれる。上記樹脂組成物は、これらのうち一種類の樹脂のみを含んでもよいし、二種類以上の樹脂を含んでもよい。
【0033】
これらの樹脂のうち、自己粘着性を有しており、折り込んだ後の形状保持力と弾性回復力とを備えていることから、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエチレン、およびポリ塩化ビニルが好ましく、特に自己粘着性が高いことから、ポリ塩化ビニリデン系樹脂がより好ましい。
【0034】
上記ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC樹脂)は、塩化ビニリデンと、塩化ビニリデンと共重合可能なコモノマーと、の共重合体であることが好ましい。
【0035】
上記PVDC樹脂中の塩化ビニリデンの含有量は、60質量%以上98質量%以下であることが好ましく、65質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましく、75質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。一方で、上記PVDC樹脂中の上記コモノマーの含有量は、2質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以上25質量%以下であることが特に好ましい。上記コモノマーの含有量が2質量%以上であると、PVDC樹脂をより十分に内部可塑化することができ、PVDC樹脂の溶融加工性をより高めることができる。上記コモノマーの含有量が40質量%以下であると、樹脂フィルムのガスバリア性および水蒸気バリア性をより高めることができる。
【0036】
上記コモノマーの例には、塩化ビニル(VC)、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、およびアクリル酸ステアリルなどを含むアルキル基の炭素数が1以上18以下であるアクリル酸アルキルエステル化合物、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、およびメタクリル酸ステアリルなどを含むアルキル基の炭素数が1以上18以下であるメタクリル酸アルキルエステル化合物、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどを含むシアン化ビニル化合物、スチレンなどを含む芳香族ビニル化合物、酢酸ビニルなどを含む炭素数が1以上18以下である脂肪族カルボン酸のビニルエステル化合物、アルキル基の炭素数が1以上18以下であるアルキルビニルエーテル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸などを含むビニル重合性不飽和カルボン酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸などを含むビニル重合性不飽和ジカルボン酸のアルキルエステル(部分エステルを含む。)、アクリル酸グリシジル、およびメタクリル酸グリシジルなどを含むエポキシ基含有ビニルモノマー、ブタジエン、およびイソプレンなどを含むジエン系モノマー、クロロプレンなどを含む塩素化ジエン系モノマー、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、およびエチレングリコールメタクリレートなどを含む分子内に2個以上の重合性二重結合を有する多官能性モノマーなどが含まれる。これらのコモノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのコモノマーのうち、塩化ビニル(VC)、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸ラウリルが好ましく、塩化ビニル(VC)がより好ましい。
【0037】
上記樹脂フィルムは、業務用または家庭用のラップフィルムまたは食品用ラップフィルムであってもよい。上記ラップフィルムは、巻かれていない状態のラップフィルムであってもよく、ラップフィルムを円筒状等に巻いたものであってもよい。また、複数枚のラップフィルムを積層して形成させたラップフィルムの積層体であってもよい。
【0038】
上記添加剤の例には、可塑剤、安定剤、粘着剤、粘着付与剤、顔料、滑剤、抗酸化剤、フィラー、および界面活性剤などが含まれる。
【0039】
なお、樹脂構造体2は、いずれの同一の樹脂組成物からなる複数のフィルム折込体4が集合してなるものであってもよいし、部分的に異なる樹脂組成物からなるフィルム折込体4を含むものであってもよい。
【0040】
(樹脂構造体の製造方法)
樹脂構造体2は、樹脂フィルムを一方向に折り込む工程(第1工程)と、上記折り込まれた樹脂フィルムを、上記折り込まれた方向とは直交する方向に切断する工程(第2工程)と、上記切断により生じた断面において、前記樹脂フィルムの前記折り込まれた方向とは直交する方向の端部同士を、同一の樹脂フィルム内で接着する工程(第3工程)と、を有する方法により、製造することができる。
【0041】
上記第1工程では、樹脂フィルムを一方向に折り込む。樹脂フィルムは、上述した樹脂組成物を、たとえば厚みが5μm以上40μm以下となるように公知の方法でフィルム状に成形して、製造すればよい。また、市販の樹脂フィルムを購入するなどして、上記樹脂フィルムを用意してもよい。
【0042】
上記折り込み方法は特に限定されないが、自己粘着性が高い樹脂フィルムが折り込むときに同一の樹脂フィルムの面同士で密着してしまうことによる、空隙のつぶれを抑制する観点からは、樹脂フィルムの幅よりも小さい開口径を有するリングなどに上記樹脂フィルムを窄めて通過させて、上記樹脂フィルムを紐状に成形する方法が好ましい。
【0043】
図2は、リングに上記樹脂フィルムを通過させて上記樹脂フィルムを折り込む様子を示す模式図である。まず、樹脂フィルムがロール状に巻回されたフィルム原反10とリング12を用意する。本実施形態では、フィルム原反10は、幅が30cm程度の市販されている樹脂フィルムである。また、リング12は、中央に内径15mmの開口部12aを有する筒状の長さ14mmの金属製リングである。
【0044】
図2に示すように、フィルム原反10から樹脂フィルム14を繰り出して窄め、リング12の開口部12aを通過させて紐状に成形する。その後、この紐状に成形された樹脂フィルム16を所定の長さにカットしてフィルム折込体前駆体4’を作成する。この作業を繰り返すことにより、複数のフィルム折込体前駆体4’が得られる。
【0045】
上記第2工程では、フィルム折込体前駆体4’を、フィルム折込体4の高さに切断する。複数のフィルム折込体4を集合させた樹脂構造体2を製造するときは、複数のフィルム折込体前駆体4’を束ねて、同時に切断することが好ましい。
図3は、複数のフィルム折込体前駆体4’を束ねた様子を示す模式図である。
図3では、複数のフィルム折込体前駆体4’を束ねて樹脂構造体前駆体2’とし、樹脂構造体前駆体2’を、たとえば塩化ビニル製パイプなどの管6内に充填させる。このようにすれば、複数のフィルム折込体前駆体4’を管6から繰り出して、同時に切断することが容易となる。なお、1つのフィルム折込体前駆体4’から樹脂構造体2を作製するときは、1つのフィルム折込体前駆体4’をそのまま樹脂構造体前駆体2’としてもよい。
【0046】
上記第3工程では、上記切断されたフィルム折込体前駆体4’の段部を接着させる。このとき、上記フィルム折込体前駆体4’の端部は、同一の樹脂フィルム内で接着させる。複数のフィルム折込体4を集合させた樹脂構造体2を製造するときは、上記集合されたフィルム折込体前駆体4’の上記折り込まれた方向とは直交する方向の端部同士を、前記複数のフィルム折込体前駆体4’間で接着させる。
【0047】
上記接着は、熱による融着でもよいし、接着剤による接着でもよい。本実施形態では、上記第2工程で、加熱カッターによりフィルム折込体前駆体4’を切断することで、第2工程と第3工程とを同時に行うことが好ましい。このとき、フィルム折込体前駆体4’に対し、樹脂フィルムの折り込まれた方向とは直交する方向の端部側から送風することで、切断される端部を部分的に接着(融着)させ、かつ部分的に接着(融着)しない複数の開口を形成することができる。
【0048】
図4は、本実施形態において使用する、加熱カッターを示す模式図である。加熱カッター8は、切断される樹脂構造体前駆体2’を充填させた管6を載置するテーブル15、樹脂構造体前駆体2’のカットを行う切断線18、切断線18を加熱する温度を調節する温度調節部13、および切断中の樹脂構造体前駆体2’に空気を送風する送風部19が設けられている。なお、切断線18としては、発泡スチロールを加熱しながら切断するために一般的に使用されるニクロム線などであってもよいし、鉄クロム線、ステンレス線、および鉄・クロム・アルミニウム合金などの電熱線であってもよい。
【0049】
加熱カッター8を使用して樹脂構造体2を作製する作業者は、加熱カッター8の電源をオンにした後、温度調節部13により、切断線18を加熱させる(加熱工程)。上記加熱は、樹脂組成物の融点などにもよるが、切断線18の温度が120℃以上250℃以下になる程度に行えばよい。
【0050】
作業者は次に、図示しないスイッチにより、送風部19を起動させ、送風部19から切断線18の方向(図中矢印Aの方向)に向けて空気を送風させる。送付される空気の風速は、毎秒6m以上毎秒12m以下であることが好ましく、毎秒7m以上毎秒11m以下であることがより好ましい。
【0051】
この状態で、作業者は、
図5に示すように、樹脂構造体前駆体2’の一方の端部を管6から突出させる。そして、樹脂構造体前駆体2’の上記突出した側の端部が切断線18側を向くように、管6をテーブル15に配置する。次に、樹脂構造体前駆体2’の側面を加熱された切断線18に接触させた後、管6を上記樹脂フィルムが折り込まれた方向と略直交する方向(図中矢印Bの方向)に移動させ、樹脂構造体前駆体2’を切断する。上記切断は、切断線18に対する樹脂構造体前駆体2’の移動速度が毎秒0.3cm以上毎秒1.0cm以下の範囲になるように管6を移動させることが好ましく、毎秒0.4cm以上毎秒0.8cm以下の範囲になるように管6を移動させることがより好ましい。
【0052】
上記送風により、樹脂構造体前駆体2’の上記切断される端部は、切断と同時に冷却される。そのため、樹脂フィルムが過剰に溶解して切断された端部の全面が融着することはなく、樹脂フィルムの融着による開口の封止が制限される。また、上記送風により、切断された後の樹脂フィルムの端部はすぐに冷却されるため、切断後の樹脂フィルムの端部同士の融着も抑制される。これにより、製造される樹脂構造体2の上記切断により形成された端部には、樹脂フィルムの端部同士が部分的に接着し、かつ部分的に接着しない複数の開口を有する、液体取込面5が形成される。
【0053】
なお、このときの切断線18の温度、風速、および管6の移動速度などを適切に制御することで、液体取込面5が有する開口の大きさを変化させて、毛細管現象による液体の浸入しやすさ、油の捕集効率、および樹脂構造体2の強度などを変化することもできる。なお、本発明者らの知見によれば、切断線18による切断時に送風を行わなかった場合、樹脂フィルムの切断された端部のより広い面積が融着してしまい、液体の浸入しやすさが低下して油の捕集効率も低下する。
【0054】
このようにして、フィルム折込体前駆体4’を繰り出しつつ、送風しながらの加熱した切断線18による切断を繰り返し行うことで、両方の端部に上記部分的な接着が行われた液体取込面5を有する樹脂構造体2が得られる。一方で、フィルム折込体前駆体4’を繰り出しつつ、加熱した切断線18による切断と、加熱しない切断線18による切断と、を交互に行うことで、一方の端部のみに上記部分的な接着が行われた液体取込面5を有する樹脂構造体2が得られる。
【0055】
なお、このとき、空気に換えて、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性気体を吹き付けてもよい。
【0056】
(用途)
樹脂構造体2は、油捕集体として、家庭のキッチン、業務用厨房、海洋、港湾、河川などにおいて、油の捕集に使用することができる。
【0057】
家庭のキッチンで使用するとき、三角コーナーの内部などに油捕集体としての樹脂構造体2を配置して、家庭排水の油分を吸収してもよく、キッチンその他の排水管の内部に油捕集体としての樹脂構造体2を配置して、排水中の油を捕集してもよい。樹脂構造体2は排水管の断面形状などにあわせて変形しやすいため、三角コーナーや排水管への配置および取出しが容易である。
【0058】
また、フライパンなどの調理器具、食器類、IHヒーターの天板、魚焼きグリル、ガスコンロ、ステンレス製作業台やシンク、タイルなどに付着した油分を拭き取るために、樹脂構造体2を使用してもよい。油分を拭き取る際には、樹脂構造体2に少量の水を含ませると効率よく油を浮かせて拭き取ることができる。このとき、
図6に示すように、複数の樹脂構造体2を束ねて花形等の所定の形状としてもよい。花形の形状とした樹脂構造体200は、各花びらの間に指が入り、握った際にフィット感が生じるため、作業者の作業性が良好である。一方、樹脂構造体2は適度な柔軟性と形状安定性とを有するため、作業者が手で絞るなどして水や油を樹脂構造体200から容易に除去することができ、かつその後に油捕集体200を元の形状に回復させやすい。なお、
図6では、後述する第2の実施形態のように複数のフィルム折込体を巻回体で巻回した樹脂構造体を束ねて油捕集体200としているが、第1の実施形態のように巻回体を用いない樹脂構造体を束ねて油捕集体としてもよい。
【0059】
また、業務用厨房のグリストラップに樹脂構造体2を配置し、グリストラップに溜まった廃液に含まれる油分を吸収してもよい。グリストラップにどの程度の油分が溜まったのかは視認しづらく、油分回収を専門業者に依頼することが多いが、樹脂構造体2をグリストラップに散布するだけで、容易にかつ低コストで、溜まった油分を回収することもできる。
【0060】
また、海洋、港湾、河川等の水面に多数の樹脂構造体2を散布することにより、これらの水面に流出した油分を回収することもできる。
【0061】
あるいは、樹脂構造体2は、油水分離膜として使用することもできる。
図7は、グリストラップの第2槽において複数の樹脂構造体2を油水分離膜として使用する態様を示す模式図である。
【0062】
図7に示すように、一般的なグリストラップ70は、厨房などからの排水が投入される第1槽71、油と水とを分離させる第2槽72、および油から分離された水を回収する第3槽73を有する。第1槽71と第2槽72とは底部側で連通しており、第2槽72と第3槽73とは液面側で連通している。なお、
図7では、処理される排水の流通方向を矢印で示している。
【0063】
第1槽71は、排水が投入される投入口74、および網目状のバスケット75を有する。投入口74から投入された排水は、バスケット75で投入された排水の中に含まれる残飯や野菜くずなどを取り除かれ、第1槽71と第2槽72とを連通する底部側に移動する。上記底部では、汚泥などの固形物が沈殿し、水と油とを含む液体が第2槽72の液面側に移動する。
【0064】
第2槽72は、比重がより小さい油を液面側に浮上させて、油と水とを分離させる。このとき、比重がより小さい油は、第2槽72の液面側に留まって油層77を形成し、比重がより大きい水は、油層77より底部側に水層78を形成して、その後、第2槽72の底部側から第3槽73へと移動する。
【0065】
第3槽73は、固形物および油を水からさらに分離させる。第2槽72と第3槽73とを連通する底部でも、汚泥などの固形物が沈殿し、水と油とを含む液体が第3槽73の液面側に移動する。その後、第3槽73で、比重がより小さい油が液面側に浮上して油と水とが分離し、水のみがトラップ管76から下水道などへと放流される。
【0066】
第2槽72では、液面側に分離した油の酸化による異臭の発生や、油による詰まりの発生、液面側への油の蓄積による阻集効率の低下などを防ぐため、定期的に油を回収することが求められている。しかし、たとえばバケツや柄杓などで油を回収しようとするとき、液面側から第2槽72を観察しても、蓄積した油の量(深さ)が目視では判別しにくいため、どの程度まで油をすくえばよいのか、判断しにくい。
【0067】
ここで、樹脂構造体2を構成する樹脂は、比重が油よりも大きい。たとえば、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含む樹脂組成物からなるフィルムの比重はおよそ1.7であり、食用油や重油などの一般的な油の比重は0.9である。また、樹脂構造体2は、その内部には大きい体積の空隙が存在するので、樹脂よりも多い量の油を樹脂構造体2の内部に侵入させて捕集することができる。そして、充分な量の油を空隙の内部に捕集した樹脂構造体2は、そのみかけの比重(樹脂構造体2と捕集された油との平均比重)が、油よりも大きく水よりも小さくなる。
【0068】
そのため、樹脂構造体2を第2槽72に投入すると、油を捕集した樹脂構造体2は、油層77と水層78との界面に留まり、これらを分離する油水分離膜として作用する。そのため、液面側から第2槽72に投入すると、油水分離膜としての樹脂構造体2が障壁となるため、バケツや柄杓などを入れる深さが判別しやすくなり、油のみの効率的な回収が容易となる。
【0069】
このとき、上述した樹脂を含む樹脂組成物から作製された樹脂構造体2であれば、油を捕集した後のみかけの比重が油よりも大きく水よりも小さくなるため、油水分離膜として良好に使用することができる。油水分離膜として油層と水層との界面により留まりやすくする観点からは、樹脂組成物を構成する樹脂の比重は1.2以上1.8以下であることが好ましく、1.3以上1.7以下であることがより好ましい。このような比重を有する樹脂の例には、PVDC樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどが含まれる。
【0070】
また、このとき、油層と水層との界面に留まる樹脂構造体2を目視で判別しやすくする観点から、樹脂構造体2は着色されていてもよい。
【0071】
また、上記油水分離膜としての樹脂構造体2は、グリストラップの第2槽のみならず、油と水とを含む液体が滞留して油層と水層とが形成される公知の液槽において、油層と水層とを分離するために用いることができる。
【0072】
[第2の実施形態]
(樹脂構造体)
図8は、第2の実施形態に関する樹脂構造体を示す模式図である。
図8に示すように、本実施形態に関する樹脂構造体22は、樹脂フィルムが一方向に折り込まれてなる複数のフィルム折込体4と、上記複数のフィルム折込体4を巻回する巻回体7と、を有する。なお、フィルム折込体4の構成は第1の実施形態と同様である。その他、第1の実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0073】
巻回体7は、複数のフィルム折込体4を巻回することで、フィルム折込体4の樹脂フィルム同士が使用中に分離することを抑制し、樹脂構造体2の強度をより高める。巻回体7は、フィルム折込体4には接着されずに巻回していてもよいし、フィルム折込体4の液体取込面5と巻回体7の端部とが融着するなどして、フィルム折込体4に接着されていてもよい。
【0074】
巻回体7の材料は特に限定されず、樹脂フィルム、筒状に成形された金属、紐、紙などとすることができるが、作製を容易にする観点からは、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0075】
特に樹脂構造体22の注水面5の平面方向への大きさを大きくしようとするときは、巻回体7により樹脂構造体22の強度をより高くすることで、樹脂構造体22の形状維持性などをより高めることができる。
【0076】
なお、巻回体を有する樹脂構造体についてのフィルム充填率は、巻回体を構成する樹脂フィルムの体積を含めずに求めた値とする。
【0077】
(樹脂構造体の製造方法)
巻回体7を有する樹脂構造体22は、第1の実施形態と同様に樹脂構造体を作製した後、樹脂構造体の外周を巻回体7で巻回して、製造することができる。
【0078】
[第3の実施形態]
(樹脂構造体)
図9は、第3の実施形態に関する樹脂構造体を示す模式図である。
図9に示すように、本実施形態に関する樹脂構造体23は、樹脂フィルムが一方向に折り込まれてなる複数のフィルム折込体4と、上記複数のフィルム折込体4を巻回する巻回体7’と、を有する。なお、フィルム折込体4の構成は第1の実施形態と同様である。その他、第1の実施形態または第2の実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0079】
巻回体7’は、フィルム折込体4を構成する樹脂フィルムと同一種の樹脂フィルムからなる。巻回体7’は、フィルム折込体4を構成する樹脂フィルムの端部から連続して延在する樹脂フィルムで、フィルム折込体4の外周を巻回させたものである。巻回体7’は、フィルム折込体4とは分離して巻回していてもよいし、フィルム折込体4の液体取込面5と巻回体7’の端部とが融着するなどして、フィルム折込体4に接着されていてもよい。
【0080】
なお、
図9では、1枚の樹脂フィルムからフィルム折込体4および巻回体7’を形成して、1枚の樹脂フィルムから樹脂構造体23を形成しているが、第1の実施形態および第2の実施形態のように、複数のフィルム折込体4を用いて樹脂構造体23を形成してもよい。このとき、複数のフィルム折込体4のうち1つのフィルム折込体4を構成する樹脂フィルムの端部から連続して延在する樹脂フィルムを、上記複数のフィルム折込体4の外周を巻回する巻回体7’とすればよい。
【0081】
また、
図9では折り込まれた樹脂フィルムが渦巻き状に配置されているが、樹脂フィルムがより密にからまり合って、外見からは樹脂フィルムの配置を判別できなくてもよい。
【0082】
(樹脂構造体の製造方法)
樹脂構造体23は、第1の実施形態と同様に、樹脂フィルムを一方向に折り込む工程(第1工程)と、上記折り込まれた樹脂フィルムを、上記折り込まれた方向とは直交する方向に切断する工程(第2工程)と、上記切断により生じた断面において、前記樹脂フィルムの前記折り込まれた方向とは直交する方向の端部同士を、同一の樹脂フィルム内で接着する工程(第3工程)と、を有する方法により、製造することができる。
【0083】
図10および
図11は、本実施形態において、上記第1工程で樹脂フィルムを折り込む様子を示す模式図である。まず、
図10(a)に示すように、樹脂フィルムがロール状に巻回されたフィルム原反10から樹脂フィルム14を所定の長さだけ引き出し、引き出された樹脂フィルム14をMD方向(図のα方向)に端部から折り込んでいく。たとえば、折り込む前の長さが1mの樹脂フィルム14を、その長さが10cm程度になるように折り込む。
【0084】
その後、
図10(b)および
図10(c)に示すように、折り込まれた樹脂フィルムをMD方向に巻いていく。その後、樹脂フィルムを折り込まれていない部分で切断することで、
図11(a)に示すように、折り込まれていない樹脂フィルム14がその端部から連続して延在するフィルム折込体前駆体4’が得られる。
【0085】
次に、折り込まれていない樹脂フィルム14をフィルム折込体前駆体4’に巻回することで、
図11(b)に示すような束状の樹脂構造体前駆体23’が得られる。複数のフィルム折込体4を有する樹脂構造体23を製造するときは、このときに複数のフィルム折込体4を折り込まれていない樹脂フィルム14で巻回すればよい。このとき、樹脂フィルム14は、自己粘着力によりフィルム折込体前駆体4’に密着して剥離しないため、結束部材などがなくても樹脂構造体前駆体23’の所定の径を維持することができる。
【0086】
その後、第1の実施形態と同様に第2工程および第3工程を行うことで、端部に液体取込面5を有する樹脂構造体23を製造することができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
【0088】
[実施例1]
1.樹脂構造体の作製
1−1.樹脂構造体1(第1の実施形態参照)
PVDC樹脂を含む樹脂組成物からなる市販の樹脂フィルムが巻かれた原反フィルムを用意した。樹脂フィルムの幅は30cm、厚みは10.5μmだった。
【0089】
上記フィルム原反から樹脂フィルムを繰り出して窄め、中央に内径15mmの開口部を有する筒状の長さ14mmの金属製リングの、上記開口部を通過させて、紐状に成形した後、所定の長さにカットした(
図2参照)。このようにして折り込まれた10本の紐状の樹脂フィルム(フィルム折込体前駆体)を束ねて内径が3cmである塩化ビニル製パイプの管内に充填させた(
図2参照)。
【0090】
その後、束ねられた10本の紐状の樹脂フィルムを管の端部から1.5cm繰り出し、
図4に示す加熱カッターを用いて、送風しながら
図5中B方向に管を移動させて、加熱された切断線によって、束ねられた10本の紐状の樹脂フィルムを同時に切断した。送風部からは、風速を毎秒7mとして空気を送風した。切断線に対する管の移動速度は、毎秒0.6cmとした。
【0091】
これにより、一方の端部が融着した、直径3.0cm、高さ1.5cmの円柱状の樹脂構造体1が得られた。使用した樹脂フィルムの体積を樹脂構造体1の体積で除算して得られる、樹脂構造体1のフィルム充填率は、4.5vol%であった。
【0092】
1−2.樹脂構造体2(第2の実施形態参照)
樹脂構造体1と同様に作製した樹脂構造体の外周を、同一の樹脂フィルムで巻回して、樹脂構造体2を得た。使用した樹脂フィルムの体積(巻回に使用した樹脂フィルムを除く)を樹脂構造体2の体積で除算して得られる、樹脂構造体2のフィルム充填率は、4.5vol%であった。
【0093】
1−3.樹脂構造体3(第3の実施形態参照)
上記原反フィルムから、長さ300cmの樹脂フィルムを引き出し、引き出された樹脂フィルムをMD方向に端部から折り込んだ。折り込まれた樹脂フィルムをMD方向に巻いていき、さらに折り込まれていない樹脂フィルムを引き出して、折り込み部分から30cmの長さで切断した。その後、上記折り込んだ樹脂フィルムを直径3cmの円状に巻いていき、さらに上記折り込まれていない樹脂フィルムでその外周を巻回して、内径が3cmである塩化ビニル製パイプの管内に充填させた。
【0094】
その後、樹脂構造体1と同様に切断して、直径3.0cm、高さ1.5cmの円柱状の樹脂構造体3が得られた。使用した樹脂フィルムの体積を樹脂構造体3の体積で除算して得られる、樹脂構造体3のフィルム充填率は、4.5vol%であった。
【0095】
1−4.比較油捕集材
PVDC樹脂を含む樹脂組成物からなる市販の樹脂フィルムを10枚重ねにして、粉砕機(ホーライ社製粉砕機UO−360F、メッシュ径φ7.5mm)を用いて、粉砕回転数を645rpmに設定して粉砕した。得られたラップフィルムの粉砕品を20±0.5g計量し、編物からなる、一端開口の袋状体である株式会社クレハ製「ダストマン兼用」(サイズ:横100mm、縦215mm、材質:ポリエステル)に封入し、その開口部を集束して縛った。これにより、比較油捕集材が得られた。
【0096】
2.油捕集量の測定
2−1.樹脂構造体1〜樹脂構造体3の油捕集量の測定
上記得られた樹脂構造体1〜樹脂構造体3の重量を測定した。
【0097】
その後、樹脂構造体1〜樹脂構造体3を、サラダ油(日清オイリオグループ株式会社製の食用調合油)に、その全体が完全に沈むようにして浸漬させた。24時間後に樹脂構造体1〜樹脂構造体3を取り出し、金網上に0.5時間静置して油切りを行った後の樹脂構造体1〜樹脂構造体3の重量を測定した。
【0098】
なお、これらはすべて23℃の環境下で行った。
【0099】
上記油切りを行った後の樹脂構造体1〜樹脂構造体3の重量から、サラダ油に浸漬させる前の樹脂構造体1〜樹脂構造体3の重量のそれぞれを減算して、樹脂構造体1〜樹脂構造体3の重量それぞれの油捕集量を求めた。さらに、上記油捕集量を、樹脂構造体1〜樹脂構造体3を使用した樹脂フィルムの体積に樹脂フィルムの密度を乗算して得られる樹脂構造体1〜樹脂構造体3の計算上の重量で除算して、樹脂構造体1〜樹脂構造体3のそれぞれの、樹脂フィルム1gあたりの油捕集量を求めた。
【0100】
2−2.比較油捕集材の油捕集量の測定
ビーカーに満たした200mLのサラダ油に比較油捕集材を液没させ、30分間放置した。合成樹脂の粉状体を入れていない「ダストマン兼用」も同様に、ビーカーに満たした200mLのサラダ油へ液没させ、30分間放置した。その後、比較油捕集材をサラダ油から引き揚げて、宙づり状態で30分間放置した後、新東科学社製スリーワンモーターBLh−600を用いて120rpmで1分間、回転面が地面に対して垂直になるように回転させて油切りを行った。合成樹脂の粉状体を入れていない「ダストマン兼用」も同様に、サラダ油から引き揚げて、宙づり状態で放置した後、油切りを行った。
【0101】
油切りを行った後の比較油捕集材および合成樹脂の粉状体を入れていない「ダストマン兼用」の重量を求め、前者の重量から後者の重量を減算して、比較油捕集材が捕集した油の重量を求めた。比較油捕集材が捕集した油の重量を、最初に計量した合成樹脂の粉状体の重量で除算して、合成樹脂の粉状体1g当たりの油捕集量を求めた。
【0102】
表1に、樹脂構造体1〜樹脂構造体3についての、巻回体の有無、円柱状の形状の直径および高さ、樹脂フィルム充填率、ならびに樹脂フィルム1gあたりの油捕集量(表1では単に「油捕集量」と表す。)を示す。
【0103】
【表1】
【0104】
なお、比較油捕集材の油捕集量は0.4g/gである。表1に示すように、樹脂構造体1〜樹脂構造体3のいずれも、比較油捕集材よりも高い油捕集量を有していた。
【0105】
[実施例2]
樹脂構造体3と同様にして、樹脂構造体4〜樹脂構造体23を作製した。このとき、引き出して折り込んだ樹脂フィルムの長さ、および巻回するための折り込まない樹脂フィルムの長さを変更して、円柱状の形状の直径(6cmまたは3cm)、および樹脂フィルムの充填率を樹脂構造体ごとに変化させた。
【0106】
なお、このとき、フィルム充填率が1.1vol%の樹脂構造体を作製しようとしたが、樹脂フィルムの量が少なすぎて作製できなかった。
【0107】
樹脂構造体4〜樹脂構造体23について、実施例1と同様に油捕集量を求めた。また、油切りを行った後の樹脂構造体の重量からサラダ油に浸漬させる前の樹脂構造体の重量を減算した値(捕集した油の重量)を使用したサラダ油の密度(0.91g/cm
3)で除算して捕集された油の体積(単位:cm
3)を求めた。
【0108】
樹脂構造体の体積から、樹脂構造体の作製に使用した樹脂フィルムの体積を減算して、空隙の全体積(単位:cm
3)を求めた。捕集された油の体積を空隙の全体積で除算して、それぞれの樹脂構造体ごとの、油の捕集効率を求めた。
【0109】
表2および表3に、樹脂構造体4〜樹脂構造体23についての、円柱状の形状の直径および高さ、樹脂フィルム充填率、樹脂フィルム1gあたりの油捕集量(表2および表3では単に「油捕集量」と表す。)、捕集された油の体積、空隙の全体積、ならびに油の捕集効率を示す。
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
表2および表3に示すように、フィルム充填率が大きくなるほど、樹脂構造体による油の捕集効率も高まっていた。なお、フィルム充填率を22.3vol%にすると、おそらくは液体取込面の開口のサイズが小さくなりすぎ、油が液体取込面から樹脂構造体の内部に十分に侵入できなかったため、油の捕集効率が低下した。
【0113】
[実施例3]
樹脂構造体1と同様にして、直径8.0cm、高さ2.0cmの円柱状の樹脂構造体24を得た。使用した樹脂フィルムの体積を樹脂構造体24の体積で除算して得られる、樹脂構造体24のフィルム充填率は、4.5vol%であった。
【0114】
樹脂構造体2と同様にして、直径8.0cm、高さ2.0cmの円柱状の樹脂構造体25を得た。使用した樹脂フィルムの体積を樹脂構造体25の体積で除算して得られる、樹脂構造体25のフィルム充填率は、4.5vol%であった。
【0115】
樹脂構造体24および樹脂構造体25を六角回転機に投入して、常温で回転速度30rpmで30分回転させた。
【0116】
図12に、回転前後の樹脂構造体24および樹脂構造体25の写真を示す。
図12(a)のサンプル1’は、回転させる前の樹脂構造体24の写真であり、
図12(a)のサンプル2’は、回転させる前の樹脂構造体25の写真である。
図12(b)のサンプル1’は、回転させた後の樹脂構造体24の写真であり、
図12(b)のサンプル2’は、回転させた後の樹脂構造体25の写真である。
【0117】
外周を巻回体で巻回した樹脂構造体25は、巻回体を有さない樹脂構造体24よりも回転後のほつれが少なく、耐久性が高く、形状保持性に優れていた。
【0118】
[実施例4]
樹脂構造体1と同様にして、直径3.0cmの円柱状の樹脂構造体を得た。このとき、樹脂構造体の作製に使用する紐状の樹脂フィルム(フィルム折込体前駆体)の数、および切断時に管から繰り出した樹脂フィルムの長さを変えて、フィルム充填率が3.6vol%または4.5vol%、高さが1.5cm、1.0cmまたは0.5cmの樹脂構造体26〜樹脂構造体31を得た。
【0119】
さらに、樹脂構造体26〜樹脂構造体31をそれぞれ7個ずつ花形に集合させて束ね(
図6参照)、樹脂構造体32〜樹脂構造体37を得た。
【0120】
樹脂構造体26〜樹脂構造体37の樹脂フィルム1gあたりの油捕集量および油の捕集効率を、実施例1および実施例2と同様に求めた。
【0121】
表4および表5に、樹脂構造体26〜樹脂構造体37についての、円柱状の形状の直径および高さ、樹脂フィルム充填率、樹脂フィルム1gあたりの油捕集量(表4および表5では単に「油捕集量」と表す。)、ならびに油の捕集効率を示す。
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【0124】
表4および表5から明らかなように、高さ(厚み)が0.3cm以上1.2cm以下であるときに、樹脂フィルム1gあたりの油捕集量、および油の捕集効率がともに高くなっていた。
【0125】
また、表5から明らかなように、複数の樹脂構造体を集合させてサイズを大きくしても、樹脂フィルム1gあたりの油捕集量、および油捕集効率はいずれも高かった。
【0126】
[実施例5]
樹脂構造体1と同様にして、直径3.0cmの円柱状の樹脂構造体を得た。このとき、樹脂構造体の作製に使用する紐状の樹脂フィルム(フィルム折込体前駆体)の数、および切断時に管から繰り出した樹脂フィルムの長さを変えて、フィルム充填率が3.1vol%、3.6vol%、4.0vol%、または4.5vol%であり、かつ高さが0.5cmまたは1.5cmである8個の樹脂構造体、フィルム充填率が3.1vol%、3.3vol%、4.0vol%、4.5vol%であり、かつ高さが1.5cmである4個の樹脂構造体、ならびに、フィルム充填率が4.5volであり、かつ高さが0.3cm、3.0cm、または6.0cmである3個の樹脂構造体を作製した。
【0127】
なお、これらの樹脂構造体は、それぞれ7個ずつ花形に集合させて束ねて(
図6参照)、実験に供した。
【0128】
これら15個の樹脂構造体について、実施例1と同様に樹脂フィルム1gあたりの油捕集量を求めた。
【0129】
図13は、本実施例で得られたフィルム充填率と樹脂フィルム1gあたりの油捕集量との関係をプロットして、樹脂構造体の高さごとに各プロットを結んだグラフである。なお、
図13に示すフィルム充填率は、直径3.0cmの円柱状の樹脂構造体1個あたりのフィルム充填率である。
【0130】
図13から明らかなように、いずれの高さでもフィルム充填率と樹脂フィルム1gあたりの油捕集量とは同様の関係を有しており、特に高さ(厚み)が0.5cm以上1.2cm以下であるときに、樹脂フィルム1gあたりの油捕集量が高くなっていた。
【0131】
[実施例6]
実施例1で作製した樹脂構造体1、および樹脂構造体3、ならびに樹脂構造体1の作製時に加熱しないカッターナイフで樹脂フィルムを切断した比較樹脂構造体1、および樹脂構造体3の作製時に加熱しないカッターナイフで樹脂フィルムを切断した比較樹脂構造体2について、液体取込面の表面硬さ(加圧時の形状保持力)を測定した。
【0132】
図14は、測定機器を用いて上記形状保持力の測定を行う状況を示す図である。
図14に示すように、テクスチャーアナライザーである測定装置30は、サンプル(樹脂構造体または比較樹脂構造体)を載置するテーブル部32、計測用棒状具34、計測用棒状具34を上下に駆動させる図示しない駆動部、および計測用棒状具34の下端に取付けられた球状部36を備えている。球状部36の重さは5gであった。
【0133】
図14に示すように、テーブル部32の、球状部36の直下に柱状の保持具40を載置し、保持具40上にサンプルを液体取込面が保持具40および球状部36に対向するように載置した。次に、1.7mm/minの速度で球状部36を降下させ、球状部36をサンプルの液体取込面に5mm押し込んだ。
【0134】
このとき測定された樹脂構造体1の最高表面硬さは170g程度であり、樹脂構造体3の最高表面硬さは250g程度であった。また、測定された比較樹脂構造体1の最高表面硬さは70g程度であり、比較樹脂構造体2の最高表面硬さは130g程度であった。
【0135】
また、樹脂構造体1および樹脂構造体3は、球状部36を押し込んだときに樹脂フィルムの抜け落ちが生じなかったが、比較樹脂構造体1および比較樹脂構造体2は、球状部36を押し込んだときに樹脂フィルムの抜け落ちが生じていた。
【0136】
これらの結果から、樹脂フィルムの端部同士を接着(融着)させて液体取込面とすることで、薄型(高さ1.5cm)の形状にしても樹脂構造体が充分な強度を有し、高い形状保持力を有することがわかった。
【0137】
[実施例7]
樹脂構造体2と同様にして、直径6.0cm、高さ1.5cmの円柱状の樹脂構造体38を得た。送風部からは、風速を毎秒12mとして空気を送風した。切断線に対する管の移動速度は、毎秒0.3cmとした。使用した樹脂フィルムの体積を樹脂構造体38の体積で除算して得られる、樹脂構造体38のフィルム充填率は、4.5vol%であった。
【0138】
送風部から送風する空気の風速を7mとした以外は樹脂構造体38と同様にして、直径6.0cm、高さ1.5cm、フィルム充填率4.5vol%の円柱状の樹脂構造体39を得た。
【0139】
送風部から空気を送風しなかった以外は樹脂構造体38と同様にして、直径6.0cm、高さ1.5cm、フィルム充填率4.5vol%の円柱状の樹脂構造体40を得た。
【0140】
切断線に対する管の移動速度を毎秒0.6cmとした以外は樹脂構造体38と同様にして、直径6.0cm、高さ1.5cm、フィルム充填率4.5vol%の円柱状の樹脂構造体41を得た。
【0141】
切断線に対する管の移動速度を毎秒0.6cmとし、送風部から送風する空気の風速を7mとした以外は樹脂構造体38と同様にして、直径6.0cm、高さ1.5cm、フィルム充填率4.5vol%の円柱状の樹脂構造体42を得た。
【0142】
切断線に対する管の移動速度を毎秒0.6cmとし、送風部から空気を送風しなかった以外は樹脂構造体38と同様にして、直径6.0cm、高1.5cm、フィルム充填率4.5vol%の円柱状の樹脂構造体43を得た。
【0143】
表6に、樹脂構造体38〜樹脂構造体43についての、円柱状の形状の直径および高さ、樹脂フィルム充填率、樹脂フィルム1gあたりの油捕集量(表6では単に「油捕集量」と表す。)、ならびに油の捕集効率を示す。
【0144】
【表6】
【0145】
表6から明らかなように、加熱した切断線による切断時に、樹脂フィルムに対して送風すると、樹脂フィルム1gあたりの油捕集量および油の捕集効率がいずれも高くなっていた。これは、液体取込面に十分な大きさおよび数の開口が形成され、液体が空隙内により侵入しやすくなったためと考えられる。
【0146】
本出願は、2017年10月16日出願の日本国出願番号2017−200194号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の明細書、特許請求の範囲および図面に記載された内容は本出願に援用される。