(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塩化マグネシウム濃度が0.5質量%超であり、塩化ナトリウム濃度が2.0質量%以下であり、10℃のpHが7.2以上8.5未満の浸漬液に未加熱状態のエビを浸漬した後、冷凍されてなる冷凍エビ。
塩化マグネシウム濃度が0.5質量%超であり、塩化ナトリウム濃度が2.0質量%以下であり、10℃のpHが7.2以上8.5未満の浸漬液に未加熱状態のエビを浸漬した後、冷凍する、冷凍エビの製造方法。
塩化マグネシウムを0.5質量%超含有し、塩化ナトリウム濃度が2.0質量%以下であり、10℃のpHが7.2以上8.5未満の浸漬液に未加熱状態のエビを浸漬した後、冷凍する、エビの噛み応え改善方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エビは噛み応えや繊維感のある食感が一般に広く好まれている。
しかしながら、エビの種類等によっては、噛み応えが十分でないものが存在する。例えば市場では、安価であるものの身が柔らかいバナメイ等の小型のエビが広く出回る状況がある。バナメイも含め、噛み応えが強化されたエビ、及びエビの噛み応えを容易に強化できる技術が近年ますます求められている。
【0006】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1記載の方法により得られるエビは、噛み応えが十分なものではなかった。
【0007】
従って、本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る冷凍エビ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために見出されたものであり、マグネシウム量が45mg/100g以上であり、解凍後、沸騰した湯に入れて、95℃以上で2分間ボイル後、加熱した後の破断強度が1.6kgf以上である、冷凍エビを提供するものである。前記の冷凍エビは、噛み応えが良好なものとなる。
【0009】
前記冷凍エビ中のマグネシウム量が80mg/100g以下であることが、エビの加熱した際の異味が抑制され、食味が良好である点で好ましい。
【0010】
前記破断強度が3.5kgf以下であることが、冷凍エビの製造容易性、原料の入手容易性のほか適度な食感を得られる点で好ましい。
【0011】
また、本発明は、塩化マグネシウム濃度が0.5質量%超、塩化ナトリウム濃度が2.0質量%以下であり、pHが7.2以上8.5未満の浸漬液に浸漬した未加熱状態のエビを冷凍してなる、冷凍エビを提供するものである。前記の冷凍エビは、噛み応えが良好なものとなり、且つ異味が抑制され、食味が良好なものとなる。本規定は物の状態を表すものであり、また仮に製法を規定するものだとしても、食品分野では製品が市場に出回る期間が非常に短く、上記製法によるエビの物性をすべて規定することは早期出願が必要な食品分野においては不可能な事情があった。
【0012】
本発明は更に、塩化マグネシウム濃度が0.5質量%超、塩化ナトリウム濃度が2.0質量%以下、pHが7.2以上8.5未満の浸漬液に浸漬した未加熱状態のエビを冷凍してなる、冷凍エビの製造方法を提供する。本製造方法により、異味が抑制されて食味が良好であり、且つ噛み応えの向上効果に優れた冷凍エビを得ることができる。
【0013】
本発明は、塩化マグネシウムを0.5質量%超含有し、塩化ナトリウム濃度が2.0質量%以下、pHが7.2以上8.5未満の浸漬液に未加熱状態のエビを浸漬した後、冷凍する、エビの噛み応え改善方法を提供するものである。本発明の方法により、異味を抑制してエビの食味を良好としながら、エビの噛み応えを効果的に向上させることができる。
【0014】
本発明で用いるエビは、バナメイエビであることが好ましい。安価で広く流通しているバナメイエビの噛み応えを向上させることで、バナメイエビの用途を広げたり、既存の用途における価値を高めることができ、優れた産業上の利用可能性を有するためである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、加熱調理後の噛み応えに優れた冷凍エビを提供する。本発明の冷凍エビは好ましくは異味が抑制され食味が良好なものである。更に、本発明は、前記の冷凍エビを首尾よく製造できる冷凍エビの製造方法、並びに異味を抑制してエビの食味を良好としながら、エビの噛み応えを効果的に向上させることができるエビの噛み応えの改善方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の冷凍エビは、マグネシウム量が45mg/100g以上であることが好ましく、解凍後、沸騰した湯に入れて、95℃以上で2分間ボイル後、加熱した後の破断強度が1.6kgf以上であることが好ましい。
【0018】
本明細書において噛み応えとは、喫食した際エビの筋繊維の噛み応えを感じる食感を指す。
【0019】
冷凍エビは未加熱状態であることが好ましい。未加熱状態とは例えば60℃以上の加熱処理が施されていないことを指し、50℃以上の加熱処理が施されていないことが好ましく、40℃以上の加熱処理が施されていないことが特に好ましい。
【0020】
本発明の冷凍エビは、頭部や殻を有していてもよいが頭部及び殻が除去されたものであることが、冷凍エビの製造容易性の点や通常は喫食しない部分を予め除去する事で可食部を食べ易くする点で好ましい。なお、本発明の冷凍エビは尾を有していてもよいし、尾も除去したものであってもよい。
【0021】
本発明における冷凍エビは、解凍後、沸騰した湯に入れて、95℃以上で2分間ボイルした後の破断強度が1.6kgf以上であることが好ましい。本発明者は、前記の破断強度が前記の特定値以上である冷凍エビは、加熱処理後に噛み応えに優れることを見出したものである。この観点から、前記の破断強度は、1.6kgf以上であることが好ましく、1.8kgf以上であることがより好ましく、2.0kgf以上であることが特に好ましい。
【0022】
前記の破断強度は例えば3.5kgf以下であることが冷凍エビの製造容易性、原料の入手容易性のほか適度な食感を得られる点で好ましく、2.5kgf以下であることがより好ましい。
【0023】
破断強度は、解凍後、沸騰した湯に入れて、95℃以上で2分間ボイルした後に測定する。解凍方法としては、冷凍エビを水に浸ける方法ではなく、水に浸けずに送風又は自然解凍することが、本発明の冷凍エビがマグネシウムを用いた前処理を行った場合に、その前処理に起因してエビ体内に蓄積したマグネシウムの流出を防止する点で好ましい。
【0024】
なお解凍したエビは、冷凍エビが頭又は殻つきの場合には、頭や殻を除去した状態でボイルに供する。ボイルは、解凍したエビ100質量部に対し、湯の量を3000質量部以上とする条件で行う。この場合、湯量に関係ない一定の熱量を与える加熱を行うことができる。湯の量の上限は10000質量部以下であることが作業性の点で好ましい。湯が沸騰した状態で、解凍したエビを入れ、95℃以上で2分間ボイルする。ボイル後すぐに10℃以下の水で冷却し、次いでペーパータオルなど用いて表面の水分を除去する。冷却水の温度の下限は例えば0℃が作業性の点で好ましい。
【0025】
破断強度の測定手段としてはテクスチャーアナライザーを用いることができ、具体的には後述する実施例に記載の方法で測定できる。なお、同等の結果が得られるのであれば、実施例で用いたもの以外の測定装置を用いることも可能である。
破断強度はエビ一尾ごとに測定する。本発明の冷凍エビは、例えば、袋売り又は箱売り等の集合状態で販売又は出荷等されていた場合、そのうちの何れか一尾の破断強度が上記の下限以上であれば、他の尾の破断強度の値に関わらず、本発明の範囲内とする。なお、10尾のエビの破断強度を測定したときに半数以上が本発明の下限以上であることが好ましい。
【0026】
前記破断強度の冷凍エビを得るためには、後述する本発明の好適な冷凍エビの方法により冷凍エビを製造すればよい。
【0027】
本発明の冷凍エビはマグネシウム量が45mg/100g以上である。本発明の冷凍エビは、上記の下限量以上のマグネシウムを体内に含有していることにより、従来よりも、噛み応えが向上したものとなる。冷凍エビのマグネシウム量に係る「/100g」の表示は、エビ100g中の量であることを意味する。ここでいう分母となるエビの質量は、冷凍エビを解凍後に水切りした状態で測定したエビの質量であり、冷凍エビが殻又は頭つきの場合は脚部も含めて殻を除去するとともに頭部及び尾部を除去したむき身の状態とする。
【0028】
噛み応えを向上させる観点から、冷凍エビ中のマグネシウム量は、45mg/100g以上が好ましく、55mg/100g以上がより好ましく、60mg/100g以上が特に好ましい。また、冷凍エビ中のマグネシウム量は多すぎると異味を生じさせることから、80mg/100g以下が好ましく、75mg/100g以下がより好ましい。
前記範囲内のマグネシウム量を有する冷凍エビを得るためには、後述する好適な冷凍エビの製造方法における特定量の塩化マグネシウムを用いた浸漬処理を行えばよい。マグネシウム量は後述する実施例に記載の方法にて測定できる。
【0029】
本実施形態で用いるえびの種類は限定されず、クルマエビ科(Penaeidae)、セミエビ科(Scyllaridae)、イセエビ科(Palinuridae)、アカザエビ科(Nephropidae)、クダヒゲエビ科(Solenoceridae)、タラバエビ科(Pandalidae)等が挙げられる。
クルマエビ科(Penaeidae)としては、バナメイ(Litopenaeus vannamei)、ブラックタイガー(Penaeus monodon)、クルマエビ(Marsupenaeus japonicus)、シバエビ(Metapenaeus joyneri)、プーバラン(Metapenaeus dobsoni)、エンデバーシュリンプ(Metapanaeus endeavouri)、バングラデシュブラウン(Metapenaeus Monoceros)、タイショウエビ(Fenneropenaeus chinensis)、バナナエビ(Fenneropenaeus merguiensis)等が体色による分類としても、各種ピンク系、ブラウン系、ホワイト系の各種のものが挙げられる。
セミエビ科(Scyllaridae)としては、ウチワエビ(Ibacus ciliatus)等のウチワエビ属 (Ibacus)が挙げられる。
イセエビ科(Palinuridae)としては、イセエビ(Panulirus japonicus)等のイセエビ属(Panulirus属)が挙げられる。
アカザエビ科(Nephropidae)としてはオマールエビや各種のヨーロピアンロブスター、アメリカンロブスターなどのロブスター属(Homarus属)が挙げられる。
クダヒゲエビ科(Solenoceridae)としては、アルゼンチンアカエビ(Pleoticus muelleri)等が挙げられる。
タラバエビ科(Pandalidae)としては、ボタンエビ(Pandalus nipponensis)、ホッコクアカエビ(Pandalus eous)等のタラバエビ属(Pandalus)、コスタリカミノエビ(Heterocarpus Affinis)等のミノエビ属(Heterocarpus)が挙げられる。
中でも、クルマエビ科(Penaeidae)、セミエビ科(Scyllaridae)に属するエビを用いることが、本発明を適用することによる経済的効果が高いことから好ましく、クルマエビ科(Penaeidae)のエビを用いることがより好ましく、バナメイ(Litopenaeus vannamei)、ブラックタイガー(Penaeus monodon)、クルマエビ(Marsupenaeus japonicus) 及びタイショウエビ(Fenneropenaeus chinensis)から選ばれる一種を用いることが更に好ましく、とりわけ、バナメイを用いることが身が柔らかく本発明の適用による効果に優れる点、及び本発明による経済的な効果が高い点で最も好ましい。近年養殖におけるバナメイの生産効率の高さなどから、バナメイの養殖業者は増加している。このような背景からバナメイは安値であるが、バナメイは身が柔らかいことからその噛み応えの向上を求める需要家の声が強い。本発明においてバナメイの噛み応えを向上させることで、バナメイに関する新たな用途や既存の用途での付加価値を付与でき、経済的効果に優れている。
【0030】
同様の観点から本実施形態で用いるえびのサイズは、1ポンド(453.6g)あたりに何尾のえびが入るかというえびのサイズの国際規格でいえば、U/6〜300/500
サイズが好ましく、6/8〜100/200サイズが特に好ましい。ここでM及びNを整数とした場合、「M/Nサイズ」とは、1ポンド当たりM〜N尾であるサイズであることを表す。なお、UはUnderを意味し、U/6は1ポンドあたり6尾以下という規格を指す。
【0031】
本発明の冷凍エビは解凍の状態で測定した水分量が70質量%以上88質量%以下であることが風味、食感、噛み応えの点から好ましく、76質量%以上84質量%以下であることがより好ましい。この水分量は常圧加熱乾燥法の方法で測定できる。
水分量が上記範囲内である冷凍エビは後述する本発明の好適な冷凍エビの製造方法により製造できる。
【0032】
なお、本発明の冷凍エビが殻又は頭つきの場合は脚部も含めて殻を除去するとともに頭部を除去した状態でマグネシウム量、水分量を測定することが好ましい。
【0033】
本発明の冷凍エビは、筋切り及び/又は伸展処理がなされているものであってもよく、
筋切り及び/又は伸展処理がなされていないものであってもよい。筋切り及び/又は伸展
処理とは、天麩羅、フライ等の油ちょう用食材として使用するえびについて、殻をむいた状態のまま油で揚げたときに、縮むことを防止するために、その筋を切ったり、全体を伸ばして形を整える作業をいう。
【0034】
次いで本発明の冷凍エビの好適な製造方法について説明する。本発明の冷凍エビの好適な製造方法とは、塩化マグネシウム濃度が0.5質量%超、塩化ナトリウム濃度が2.0質量%以下であり、10℃のpHが7.2以上8.5未満の浸漬液に未加熱状態のエビを浸漬した後、冷凍する方法である。浸漬液の塩化マグネシウム濃度は1.5質量%未満であることが好ましい。
【0035】
本発明の製造方法では、原料として、未加熱状態のエビ、具体的には生エビ又は解凍エビを用いる。第六関節及び殻の乾燥、酸化による変色を防ぐ点で生エビを用いることが好ましい。原料エビは、頭部及び外殻、肢部を除去した後、適宜洗浄して用いることが好ましい。処理後のエビを浸漬液に浸漬させる。
【0036】
浸漬液は、塩化マグネシウム濃度が0.5質量%超1.5質量%未満であることが好ましい。塩化マグネシウム濃度が0.5質量%超であることで、冷凍エビに加熱調理後の良好な噛み応えを付与することができる。1.5質量%未満であることで、異味を抑制し、良好な食味を有する冷凍エビとすることができる。これらの点から、浸漬液中の塩化マグネシウム量は0.55質量%以上1.45質量%以下であることがより好ましく、0.60質量%以上1.30質量%以下であることが特に好ましく、0.80質量%以上1.20質量%以下であることが最も好ましい。
【0037】
浸漬液は、10℃のpHが8.5未満であることが好ましい。pHが8.5超であると、加熱後に上記の破断強度を有し、噛み応えのあるエビが得難い。この観点から、浸漬液は、10℃のpHが8.3以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましい。8.0未満であってもよい。浸漬液のpHは10℃のpHが7.2以上であることが、風味や噛み応えの向上の点で好ましく、7.5以上であることが更に好ましい。
【0038】
浸漬液は、塩化ナトリウム濃度が2.0質量%以下であることが上記破断強度及びマグネシウム量のエビを首尾よく得る点で好ましく、塩化ナトリウム濃度が、0.1質量%以上であることが冷凍エビの保存性や保水性の点で好ましく、0.5質量%以上1.8質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
浸漬液は、適宜、保水剤を含有していてもよい。保水剤としては、例えば、リン酸塩、炭酸水素塩、クエン酸、クエン酸塩が挙げられる。これらを溶解させた水溶液にえび肉を接触させると、えび肉の筋肉の間に水溶液の水分が保持されやすい。リン酸塩としては、オルトリン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩等が挙げられる。リン酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩としては、特にアルカリ金属塩が好ましい。オルトリン酸塩としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウムが挙げられ、メタリン酸塩としてはメタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムが挙げられ、ポリリン酸塩としてはポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムが挙げられ、ピロリン酸塩としてはピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウムが挙げられる。また、炭酸水素塩としては、例えば炭酸水素ナトリウムが挙げられる。クエン酸塩としてはクエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウムなどが挙げられる。保水剤は、これらの1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0040】
浸漬液が保水剤を含有する場合、冷凍エビ中の水分を高く、例えば80質量%以上に保持して、より食感を高めることができる。
この観点及び保水剤の量の点から、保水剤の量は合計で浸漬液中に0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。特にクエン酸ナトリウム等のクエン酸塩を含有する場合、浸漬液中0.01質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。
【0041】
浸漬液は、炭酸塩の量が低減されたものであることが、得られる冷凍エビの噛み応えを良好なものにする点で好ましい。炭酸塩としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられる。浸漬液における炭酸塩の量は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0042】
浸漬液は、グリシン、アラニン等のアミノ酸やスクラロースやショ糖、ブドウ糖等の甘味料を含有していてもよい。アミノ酸量は例えば、合計で浸漬液中に0.05質量%以上3質量%以下であることが、呈味性等の点で好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。また甘味量の量は例えば、合計で浸漬液中に0.001質量%以上5質量%以下であることが、呈味性等の点で好ましく、0.005質量%以上4質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
浸漬液中における保水剤、塩化ナトリウム及び塩化マグネシウム以外の成分の量は、合計で塩化マグネシウム100質量部に対し、80.0質量部以下であることが風味や噛み応えの向上の点で好ましく、60.0質量部以下であることがより好ましく、40.0質量部以下であることが特に好ましい。
【0044】
エビを浸漬液に浸漬させる際の液温としては、エビの保存性の点で10℃以下が好ましく、保水効率(エビが浸漬液を吸いすぎない様にする)の点で0℃以上が好ましい。この観点から、液温は7℃以上10℃以下がより好ましい。
【0045】
エビを浸漬液に浸漬させる際の浸漬時間としては、保水効率(エビが浸漬液を吸いすぎない様にする)の点で10時間未満が好ましく、破断強度を上記の範囲とし、噛み応えを向上させる点で0.5時間以上が好ましい。この観点から浸漬時間は、0.5時間以上8時間以下がより好ましく、3時間以上5時間以下が更に好ましい。
【0046】
浸漬後のエビは水で洗浄後に冷凍することが好ましい。冷凍温度は−40℃〜−18℃であることが好ましい。得られた冷凍エビは、加熱用に供されることが、本発明の加熱調理後の噛み応えの効果を得られる点で好ましい。
【0047】
以上の工程により得られる冷凍エビはかみごたえとその食味の良好さの点から、油ちょうする、煮る、蒸す、焼く等の各種の調理に使用でき、冷凍食品、レンジ加熱用食品、ダイエット用食品、フライ等の油ちょう商品、チルド食品等の各種加工食品の製造原料として用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。浸漬液のpHはTA XT plus Texture Analyzer(メーカー:英弘精機)を用いて測定した。
【0049】
(実施例1〜8、比較例1及び2)
下記の表1に記載の組成の浸漬液を調製した。
エビとして解凍した未加熱のバナメイを用い、頭部、外殻、肢部、尾を除去し、真水で洗浄した。得られたエビを浸漬液に水温8℃で3時間浸漬させた。真水で洗浄後、芯温−18℃で凍結し、冷凍保管した。
なお、比較例1の浸漬液の組成は、特許文献1に記載の実施例1と同組成であった。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1〜8、比較例1〜2について、以下の評価に供した。
(評価)
●水分量
冷凍エビの水分量は上述した方法で測定した。結果を表2に示す。
●マグネシウム量
冷凍エビをザルに入れて扇風機の風をあてて解凍後、ペーパータオルで表面の水分を拭き取り、フードミキサーで均質化した。この均質化したものを必要量測り取り、乾式灰化法により灰化後、原子吸光光度法により測定した。結果を表2に示す。
【0052】
●破断強度
冷凍エビをザルに入れて扇風機の風をあてて解凍後、水分の拭き取りはせずに解凍したエビ100質量部を、沸騰した湯3000質量部に入れて、95℃以上で2分間ボイル後、10℃の水で冷却し、次いでペーパータオルを用いて表面の水分を除去した。
得られたボイル後のエビについて、下記方法にて物性として、破断強度を測定した。
【0053】
(破断強度測定方法)
加熱したむきエビを横向きにおいてテクスチャーアナライザー(英弘精機、TA XT plus)により評価した。測定条件として、プランジャーはプラスチック(ポリアセタール樹脂)製のくさび形(先端が長さ13mm、1mm幅の長方形状の平面を有し、先端の角度が30°である先端平面くさび)、プランジャーの進入速度は0.5mm/sec、サンプルの上部からサンプルの高さに対して99%まで荷重をかけた。測定は、プランジャーの先端平面の長手方向と、エビの長手方向が直交するように配置して行った。測定時のプランジャー及びエビの配置を示す写真を
図1に示す。なお、サンプルであるエビは第一腹節および第六腹節を切断した後、第三腹節部分を測定部位とした。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例1〜5、比較例1及び2について、破断強度に供したものと同様の方法にてボイルしたエビを下記の官能評価に供した。
●官能評価
ボイル後のエビを健常な成人であるパネラー9人(男性6人、女性3人、平均年齢44歳)に摂食させ、以下の基準で食感及び食味を評価した。なお、噛み応えについて、ブラックタイガーの未加熱エビについて上記と同様の方法でボイルしたものと食べ比べさせた。
9人の評価点の平均値について、3.5点超を◎、3.0点超〜3.5点以下を○、2.5点超〜3.0点以下を△、2.5点以下を×として評価した。結果を表3及び表4に示す。
【0056】
(噛み応え評価基準)
5点:ブラックタイガーよりも噛み応えが良好である。
4点;ブラックタイガーのような噛み応えを感じる。
3点:ブラックタイガーよりは若干噛み応えが弱いが良好な噛み応えを感じる。
2点:ブラックタイガーよりも噛み応えが明らかに弱い。
1点:噛み応えがない
【0057】
(呈味性の評価基準)
5点:異味がなく、非常に良好である。
4点:異味がなく、良好である。
3点:異味はなく、まあまあ美味しさを感じる。
2点:若干異味があり、美味しさを感じない。
1点:異味があり、美味しくない。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】