特許第6898513号(P6898513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6898513目封止ハニカムセグメント、及び目封止ハニカム構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898513
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】目封止ハニカムセグメント、及び目封止ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20210628BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20210628BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20210628BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   B01J35/04 301A
   B01J35/04 301B
   B01J35/04 301E
   B01D39/20 DZAB
   B01D46/00 302
   F01N3/022 C
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-508891(P2020-508891)
(86)(22)【出願日】2018年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2018013917
(87)【国際公開番号】WO2019187126
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2020年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕二
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−200741(JP,A)
【文献】 特開2016−168561(JP,A)
【文献】 特開2009−240864(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/013511(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/013513(WO,A1)
【文献】 特開2014−050793(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/024293(WO,A1)
【文献】 特開2001−334114(JP,A)
【文献】 特開2010−131586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 ー 38/74
B01D 39/20
B01D 46/00
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 ー 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配設された、多孔質の隔壁、及び最外周に配設された最外周壁を有する、四角柱状のハニカムセグメントと、
前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部に配設された目封止部と、を備え、
前記隔壁の気孔率が、30〜70%であり、
前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設された前記セルを流入セルとし、前記流入端面側の端部に前記目封止部が配設された前記セルを流出セルとし、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記隔壁によって取り囲まれた前記流入セルの形状が、六角形であり、且つ、前記隔壁によって取り囲まれた前記流出セルの形状が、正方形であり、
複数の前記セルは、前記ハニカムセグメントの最外周の領域を除き、所定の前記流入セルの1辺と、隣接する前記流出セルの1辺とが、同一の長さを有するとともに平行となるよう、1つの前記流出セルの周囲を4つの前記流入セルが取り囲む構造となっており、
前記ハニカムセグメントの最外周に位置する前記セルは、前記隔壁によって取り囲まれた前記セルと同一形状の完全セルと、前記隔壁によって取り囲まれた前記セルの形状の一部が前記最外周壁によって区分された不完全セルと、を含み、
前記不完全セルと接する前記最外周壁の厚さをT1(mm)とし、前記完全セルと接する前記最外周壁の厚さをT2(mm)とし、前記隔壁の厚さをWT(mm)とし、
下記式(1)及び下記式(2)の関係を満たす、目封止ハニカムセグメント。
式(1):0.200mm<T1<T2−(1/2×WT)
式(2):T2≦0.700mm
【請求項2】
厚さがT2(mm)となる前記最外周壁が、前記ハニカムセグメントの端面における角部に位置する、請求項1に記載の目封止ハニカムセグメント。
【請求項3】
前記隔壁の厚さが、0.100〜0.450mmである、請求項1又は2に記載の目封止ハニカムセグメント。
【請求項4】
セル密度が、15〜78個/cmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の目封止ハニカムセグメント。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の目封止ハニカムセグメントの複数個と、
複数個の前記目封止ハニカムセグメントの側面同士を互いに接合する接合層と、
前記接合層によって接合された前記目封止ハニカムセグメントの接合体の側面を囲繞するように配設された接合体外周壁と、を備えた、目封止ハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目封止ハニカムセグメント、及び目封止ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、圧力損失が低く、触媒を担持した際にセルが詰まり難く、昇温性及びアイソスタティック強度(例えば、耐締め付け強度)に優れた目封止ハニカムセグメント、及び目封止ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境への影響や、資源節約の観点から、自動車の燃費低減が近年求められている。このため、直接噴射式ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の熱効率の良い内燃機関が、自動車用の動力源として使用される傾向にある。
【0003】
一方、これらの内燃機関では、燃料の燃焼の際に生じる燃えかすの発生が問題となっている。大気環境の観点から、排ガスに含まれる有毒成分の除去と同時に、スート(煤)やアッシュ(灰)等の粒子状物質(以下、「PM」ということがある)を大気に放出しないための対策が必要とされている。
【0004】
特に、自動車のエンジン等から排出されるPMの除去に関する規制は世界的に強化される傾向にある。そして、PMを除去するための捕集フィルタとして、ハニカム構造の排ガス浄化フィルタの使用が注目され、種々のシステムが提案されている。ハニカム構造の排ガス浄化フィルタは、通常、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたものであり、セルを交互に目封止することで、セルを形成する多孔質の隔壁がフィルタの役目を果たす構造である。多孔質の隔壁によって複数のセルが区画形成された柱状の構造体を、「ハニカム構造体」ということがある。また、ハニカム構造体に形成されたセルの開口部が目封止部によって目封止されたものを、「目封止ハニカム構造体」ということがある。目封止ハニカム構造体は、ガス浄化フィルタとして広く用いられている。目封止ハニカム構造体の流入端面(第1の端面)から、粒子状物質を含有する排ガスが流入すると、排ガスが隔壁を通過する際に、当該排ガス中の粒子状物質が濾過され、目封止ハニカム構造体の流出端面(第2の端面)から、浄化されたガスが排出される。
【0005】
従来、目封止ハニカム構造体のセルの形状について、四角セルや六角セル、HACセル(八角形と四角形を組み合わせたセル)等があった。昨今、異形のセルを組み合わせたものや、目封止の位置を工夫した新たな目封止ハニカム構造体の開発が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。このような目封止ハニカム構造体によれば、使用初期の圧力損失及びPM堆積時の圧力損失の双方を低減しつつ、PMの燃焼時のクラック発生を抑制し、隔壁にアッシュを多く堆積させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−200741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、目封止ハニカム構造体を、自動車等の内燃機関に設置してガス浄化フィルタとして用いる場合、目封止ハニカム構造体を、特定の大きさの円柱形状のものとして作製することが一般的である。このような目封止ハニカム構造体として、例えば、複数個のハニカムセグメントを接合材によって相互に接合した、セグメント構造の目封止ハニカム構造体が提案されている。
【0008】
特許文献1に記載されたようなセル構造の目封止ハニカム構造体を、セグメント構造の目封止ハニカム構造体とした場合、各ハニカムセグメントの最外周に位置する一部のセルについて、その開口部の大きさが、隔壁の厚さの1/2程度減少してしまう。そして、上記したように、各ハニカムセグメントの最外周に位置する一部のセルの開口部の大きさが減少することにより、目封止ハニカム構造体の圧力損失が高くなるという問題があった。
【0009】
また、排ガス浄化フィルタとして利用される目封止ハニカム構造体には、所定の浄化性能を付与するために、流路となるセルを取り囲むように配設された隔壁に対して、排ガス浄化用の触媒を担持することがある。上述したように、ハニカムセグメントにおいて、最外周に位置する一部のセルの開口部の大きさが減少してしまうと、触媒を担持した際に、開口部の大きさが減少したセル内に、触媒が詰まり易くなってしまうという問題があった。更に、触媒を担持した際には、触媒を液中に懸濁させた触媒スラリーを、目封止ハニカム構造体の一方の端面側から吸引することによって行われるが、均等な吸引力が得られずに、触媒の担持が不均一になってしまうという問題もあった。
【0010】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、圧力損失が低く、触媒を担持した際にセルが詰まり難く、昇温性及びアイソスタティック強度に優れた目封止ハニカムセグメント、及び目封止ハニカム構造体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下に示す、目封止ハニカム構造体、及び目封止ハニカムセグメントが提供される。
【0012】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配設された、多孔質の隔壁、及び最外周に配設された最外周壁を有する、四角柱状のハニカムセグメントと、
前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部に配設された目封止部と、を備え、
前記隔壁の気孔率が、30〜70%であり、
前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設された前記セルを流入セルとし、前記流入端面側の端部に前記目封止部が配設された前記セルを流出セルとし、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記隔壁によって取り囲まれた前記流入セルの形状が、六角形であり、且つ、前記隔壁によって取り囲まれた前記流出セルの形状が、正方形であり、
複数の前記セルは、前記ハニカムセグメントの最外周の領域を除き、所定の前記流入セルの1辺と、隣接する前記流出セルの1辺とが、同一の長さを有するとともに平行となるよう、1つの前記流出セルの周囲を4つの前記流入セルが取り囲む構造となっており、
前記ハニカムセグメントの最外周に位置する前記セルは、前記隔壁によって取り囲まれた前記セルと同一形状の完全セルと、前記隔壁によって取り囲まれた前記セルの形状の一部が前記最外周壁によって区分された不完全セルと、を含み、
前記不完全セルと接する前記最外周壁の厚さをT1(mm)とし、前記完全セルと接する前記最外周壁の厚さをT2(mm)とし、前記隔壁の厚さをWT(mm)とし、
下記式(1)及び下記式(2)の関係を満たす、目封止ハニカムセグメント。
式(1):0.200mm<T1<T2−(1/2×WT)
式(2):T2≦0.700mm
【0013】
[2] 厚さがT2(mm)となる前記最外周壁が、前記ハニカムセグメントの端面における角部に位置する、前記[1]に記載の目封止ハニカムセグメント。
【0014】
[3] 前記隔壁の厚さが、0.100〜0.450mmである、前記[1]又は[2]に記載の目封止ハニカムセグメント。
【0015】
[4] セル密度が、15〜78個/cmである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の目封止ハニカムセグメント。
【0016】
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載の目封止ハニカムセグメントの複数個と、
複数個の前記目封止ハニカムセグメントの側面同士を互いに接合する接合層と、
前記接合層によって接合された前記目封止ハニカムセグメントの接合体の側面を囲繞するように配設された接合体外周壁と、を備えた、目封止ハニカム構造体。
【発明の効果】
【0017】
本発明の目封止ハニカムセグメントは、圧力損失が低く、触媒を担持した際にセルが詰まり難く、昇温性及びアイソスタティック強度に優れるという効果を奏する。即ち、不完全セルと接する最外周壁の厚さであるT1(mm)が、上記式(1)を満たし、且つ、完全セルと接する最外周壁の厚さであるT2(mm)が、上記式(2)を満たすように構成されることで、圧力損失の増大を有効に抑制することができる。更に、上記式(1)及び式(2)を満たすように構成されることで、触媒を担持した際にセルが詰まり難くなり、昇温性及びアイソスタティック強度(例えば、耐締め付け強度)の向上にも寄与する。更に、本発明の目封止ハニカムセグメントは、複数個の目封止ハニカムセグメントを接合層によって接合した際に、接合層の接合強度に優れるという効果も奏する。
【0018】
本発明の目封止ハニカム構造体は、上記した本発明の目封止ハニカムセグメントの複数個が接合層によって接合された目封止ハニカム構造体である。したがって、本発明の目封止ハニカム構造体も、圧力損失が低く、触媒を担持した際にセルが詰まり難く、昇温性及びアイソスタティック強度に優れるという効果を奏する。更に、本発明の目封止ハニカム構造体は、接合層の接合強度に優れるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の目封止ハニカムセグメントの一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
図2図1の目封止ハニカムセグメントの流入端面を模式的に示す平面図である。
図3図1の目封止ハニカムセグメントの流出端面を模式的に示す平面図である。
図4図2のA−A’断面を模式的に示す断面図である。
図5図2の一部を拡大した拡大平面図である。
図6】本発明の目封止ハニカムセグメントの他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
図7】本発明の目封止ハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0021】
(1)目封止ハニカムセグメント:
本発明の目封止ハニカムセグメントの一の実施形態は、図1図5に示すような目封止ハニカムセグメント100である。目封止ハニカムセグメント100は、四角柱状のハニカムセグメント4と、目封止部5と、を備えたものである。ハニカムセグメント4は、ここで、図1は、本発明の目封止ハニカムセグメントの実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。図2は、図1の目封止ハニカムセグメントの流入端面を模式的に示す平面図である。図3は、図1の目封止ハニカムセグメントの流出端面を模式的に示す平面図である。図4は、図2のA−A’断面を模式的に示す断面図である。図5は、図2の一部を拡大した拡大平面図である。
【0022】
ハニカムセグメント4は、流入端面11から流出端面12まで延びる複数のセル2を取り囲むように配設された、多孔質の隔壁1、及び最外周に配設された最外周壁3を有する。ハニカムセグメント4は、流入端面11及び流出端面12を両端面とし、最外周壁3を側面とする、四角柱状のものである。ハニカムセグメント4を構成する隔壁1の気孔率は、30〜70%である。隔壁1の平均細孔径は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の測定は、気孔率の測定と同様に、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。
【0023】
以下、本実施形態のハニカムセグメント4において、流出端面12側の端部に目封止部5が配設されたセル2を流入セル2aとし、また、流入端面11側の端部に目封止部5が配設された前記セルを流出セル2bとする。
【0024】
本実施形態のハニカムセグメント4は、セル2の延びる方向に直交する断面において、隔壁1によって取り囲まれた流入セル2aの形状が、六角形であり、且つ、隔壁1によって取り囲まれた流出セル2bの形状が、正方形である。そして、複数のセル2は、ハニカムセグメント4の最外周の領域を除き、所定の流入セル2aの1辺と、隣接する流出セル2bの1辺とが、同一の長さを有するとともに平行となるよう、1つの流出セル2bの周囲を4つの流入セル2aが取り囲む構造となっている。即ち、ハニカムセグメント4には、セル2の延びる方向に直交する断面において、2種類の形状(即ち、六角形と正方形)のセル2が、所定の繰り返し配列パターンを有するように形成されている。上述した「繰り返し配列パターン」とは、1つの流出セル2bと、4つの流入セル2aとによって構成された配列パターンであって、1つのハニカムセグメント4において、当該配列パターンが、2以上存在するものをいう。以下、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状のことを、「セル形状」、「断面形状」、及び「断面の形状」ということがある。なお、ハニカムセグメント4の最外周の領域は、最外周壁3によってセル2の構造(別言すれば、繰り返し配列パターン)に不完全な部分が存在する。このことから、これまでに説明したハニカムセグメント4のセル2の構造については、ハニカムセグメント4の最外周の領域を除いた領域に関するものとする。
【0025】
ハニカムセグメント4の最外周に位置するセル2は、隔壁1によって取り囲まれたセル2と同一形状の完全セル2xと、隔壁1によって取り囲まれたセル2の形状の一部が最外周壁3によって区分された不完全セル2yと、を含んでいる。即ち、完全セル2xは、六角形の流入セル2a、又は正方形の流出セル2bであり、不完全セル2yは、六角形以外の流入セル2a、又は、正方形以外の流出セル2bである。
【0026】
本実施形態の目封止ハニカムセグメント100は、下記式(1)及び下記式(2)の関係を満たす点を、重要な技術的特徴としている。なお、下記式(1)及び下記式(2)において、T1(mm)は、不完全セル2yと接する最外周壁3の厚さを示す。T2(mm)は、完全セル2xと接する最外周壁3の厚さを示す。WT(mm)は、隔壁1の厚さを示す。
【0027】
式(1):0.200mm<T1<T2−(1/2×WT)
式(2):T2≦0.700mm
【0028】
本実施形態の目封止ハニカムセグメント100は、圧力損失が低く、触媒を担持した際にセル2が詰まり難く、昇温性及びアイソスタティック強度に優れるという効果を奏する。即ち、不完全セル2yと接する最外周壁3の厚さT1(mm)が、上記式(1)を満たし、且つ、完全セル2xと接する最外周壁3の厚さT2(mm)が、上記式(2)を満たすように構成されることで、不完全セル2yと接する最外周壁3の厚さT1(mm)が、厚さT2(mm)に比して、相対的に薄くなるように構成されている。このため、圧力損失の増大を有効に抑制することができる。また、不完全セル2yと接する最外周壁3の厚さT1(mm)が相対的に薄くなるということは、不完全セル2yの開口部の面積が相対的に大きくなるため、触媒を担持した際に、不完全セル2yが詰まり難くなる。更に、不完全セル2yと接する最外周壁3の厚さT1(mm)が相対的に薄くなることにより、目封止ハニカムセグメント100の軽量化及び昇温性の向上を図ることができる。
【0029】
更に、本実施形態の目封止ハニカムセグメント100は、複数個の目封止ハニカムセグメントを接合層によって接合した際に、接合層の接合強度に優れるという効果も奏する。即ち、完全セル2xと接する最外周壁3の厚さT2(mm)を0.700mm以下とし、且つ、不完全セル2yと接する最外周壁3の厚さT1(mm)を厚さT2(mm)に比して相対的に薄くすることで、最外周壁3の吸水量を少なくすることができる。最外周壁3の吸水量が多くなると、接合層を形成するための接合材がひけ易くなり(例えば、接合材の中央が疎になり易くなり)、接合層の接合強度が低下してしまう。本実施形態の目封止ハニカムセグメント100は、接合材がひけ難くなり、接合層の接合強度を向上させることができる。
【0030】
目封止ハニカムセグメント100において、隔壁1の気孔率が、30%未満であると、触媒担持後の圧力損失が高くなる点で好ましくない。また、隔壁1の気孔率が、70%を超えると、機械的強度(アイソスタティック強度)が低くなる点で好ましくない。隔壁1の気孔率は、40〜65%であることが好ましい。
【0031】
不完全セル2yと接する最外周壁3の厚さT1(mm)が、0.200mm未満であると、目封止ハニカムセグメント100の強度が低下してしまう。不完全セル2yと接する最外周壁3の厚さT1(mm)が、「T2−(1/2WT)」の値を超えると、圧力損失が高くなり、また、触媒を担持した際にセル2が詰まり難くなる。
【0032】
完全セル2xと接する最外周壁3の厚さT2(mm)が、0.700mmを超えると、圧力損失が高くなり、また、昇温性も悪化してしまう。完全セル2xと接する最外周壁3の厚さT2(mm)は、0.500mm以下であることが好ましい。
【0033】
本実施形態の目封止ハニカムセグメント100においては、図2及び図4に示すように、厚さがT2(mm)となる最外周壁3が、ハニカムセグメント4の端面における角部に位置することが好ましい。このように構成することによって、圧力損失が低く、触媒を担持した際にセル2が詰まり難く、昇温性及びアイソスタティック強度に優れるという効果をより奏し易くなる。
【0034】
なお、本発明の目封止ハニカムセグメントは、例えば、図6に示すように構成されたセル構造を有するものであってもよい。ここで、図6は、本発明の目封止ハニカムセグメントの他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。図6に示す目封止ハニカムセグメント200は、図1図5に示す目封止ハニカムセグメント100に対して、最外周に位置するセル2の配置が異なるように構成されている。図6に示す目封止ハニカムセグメント200においては、厚さがT2(mm)となる最外周壁3が、ハニカムセグメント4の端面における各辺に相当する部位のみに位置している。図6において、図1図5に示す目封止ハニカムセグメント100と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
隔壁1の厚さWT(mm)が、0.100〜0.450mmであることが好ましく、0.150〜0.310mmであること更に好ましく、0.150〜0.210mmであることが特に好ましい。隔壁1の厚さWT(mm)が、0.100mm未満であると、目封止ハニカムセグメント100の強度が低下してしまうことがある。隔壁1の厚さWT(mm)が、0.450mmを超えると、圧力損失が増大し、また、昇温性も悪化してしまう。
【0036】
ハニカムセグメント4のセル密度が、15〜78個/cmであることが好ましく、15〜46個/cmであること更に好ましく、31〜46個/cmであることが特に好ましい。ハニカムセグメント4のセル密度が、15個/cm未満であると、煤等の粒子状物質が隔壁に付着した際の圧力損失が高くなる点で好ましくない。ハニカムセグメント4のセル密度が、78個/cm超えると、初期圧損の上昇とスス詰まりによる高圧損が起きやすくなる点で好ましくない。
【0037】
隔壁1を構成する材料に特に制限はない。例えば、隔壁1を構成する材料が、炭化珪素、コージェライト、珪素−炭化珪素複合材料、コージェライト−炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ及びチタン酸アルミニウムから構成される群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。隔壁1を構成する材料は、上記群に列挙された材料を、30質量%以上含む材料であることが好ましく、40質量%以上含む材料であることが更に好ましく、50質量%以上含む材料であることが特に好ましい。なお、珪素−炭化珪素複合材料とは、炭化珪素を骨材とし、珪素を結合材として形成された複合材料である。また、コージェライト−炭化珪素複合材料とは、炭化珪素を骨材とし、コージェライトを結合材として形成された複合材料である。
【0038】
目封止部5の材料についても特に制限はない。目封止部5の材料は、上述のハニカムセグメントの好適な材料として挙げた各種セラミックスの中から選択された1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0039】
ハニカムセグメント4の大きさについては、特に制限はない。ただし、1個のハニカムセグメント4の大きさが大きすぎると、複数個の目封止ハニカムセグメント100を接合して作製した目封止ハニカム構造体において、クラックの発生を防止する効果が十分に発揮されないことがある。また、1個のハニカムセグメント4の大きさが小さすぎると、ハニカムセグメント4の接合層による接合作業が煩雑になることがある。
【0040】
(2)目封止ハニカム構造体:
次に、本発明の目封止ハニカム構造体の実施形態について、図7を参照しつつ説明する。図7は、本発明の目封止ハニカム構造体の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
【0041】
図7に示すように、本実施形態の目封止ハニカム構造体300は、目封止ハニカムセグメント100の複数個と、接合層101と、接合体外周壁103と、を備えたものである。すなわち、本実施形態の目封止ハニカム構造体300は、所謂、セグメント構造の目封止ハニカム構造体300である。目封止ハニカム構造体300の外周には、複数個の目封止ハニカムセグメント100を囲繞するように接合体外周壁103が配設されている。
【0042】
目封止ハニカムセグメント100は、図1図5に示す目封止ハニカムセグメント100と同様に構成されたものである。目封止ハニカム構造体300においては、複数個の目封止ハニカムセグメント100の側面同士が接合層101を介して接合されることにより、目封止ハニカムセグメント100の接合体が形成されている。なお、複数個の目封止ハニカムセグメント100のうち、接合体外周壁103と接している外周部分に配置された目封止ハニカムセグメント100は、四角柱状に形成された目封止ハニカムセグメント100の一部が、接合体外周壁103の形状に沿って研削された柱状に形成されている。
【0043】
接合層101は、複数個の目封止ハニカムセグメント100の側面同士を互いに接合する接合材によって構成されたものである。複数個の目封止ハニカムセグメント100が接合層101を介して接合された接合体を、目封止ハニカムセグメント接合体102ということがある。
【0044】
本実施形態の目封止ハニカム構造体300は、排ガス中に含まれる粒子状物質を除去するための捕集フィルタとして好適に利用することができる。本実施形態の目封止ハニカム構造体300は、圧力損失が低く、触媒を担持した際にセル2が詰まり難く、昇温性及びアイソスタティック強度に優れるという効果を奏する。更に、本実施形態の目封止ハニカム構造体300は、接合層101の接合強度に優れるという効果も奏する。
【0045】
目封止ハニカム構造体300の全体形状については、特に制限はない。例えば、図7に示す目封止ハニカム構造体300の全体形状は、流入端面111及び流出端面112が円形の円柱形状である。その他、図示は省略するが、目封止ハニカム構造体の全体形状としては、流入端面及び流出端面が、楕円形やレーストラック形や長円形等の略円形の柱形状であってもよい。また、目封止ハニカム構造体の全体形状としては、流入端面及び流出端面が、四角形や六角形等の多角形の角柱形状であってもよい。
【0046】
接合層101の厚さについては特に制限はない。例えば、接合層101の厚さは、0.5〜2.0mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることが更に好ましく、0.5〜1.0mmであることが特に好ましい。接合層101の厚さが、0.5mm未満であると、目封止ハニカム構造体300の耐熱衝撃性が低下することがある点で好ましくない。接合層101の厚さが、2.0mm超であると、圧力損失が高くなることがある点で好ましくない。
【0047】
(3)目封止ハニカム構造体の製造方法:
次に、本実施形態の目封止ハニカム構造体300の製造方法について説明する。目封止ハニカム構造体300を製造する際には、まず、図1図5に示すような目封止ハニカムセグメント100を、以下に示すような方法で作製する。
【0048】
まず、ハニカムセグメントを作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカムセグメントを作製するための坏土は、原料粉末に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって調製することができる。原料粉末としては、ハニカムセグメントの隔壁が、前述した隔壁の好適な材料となるような原料粉末を適宜選択して用いることができる。
【0049】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを取り囲むように配設された隔壁、及び最外周に配設された最外周壁を有する、四角柱状のハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体は、複数個作製する。
【0050】
得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥し、ハニカム成形体の作製に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を作製する。目封止部を作製した後に、ハニカム成形体を更に乾燥してもよい。
【0051】
次に、目封止部を作製したハニカム成形体を焼成することにより、目封止ハニカムセグメントを得る。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。次に、複数の目封止ハニカムセグメントを、接合材を用いて互いに接合し、乾燥硬化させた後、所望の形状となるよう外周を加工することによって、セグメント構造の目封止ハニカム構造体を得ることができる。
【0052】
接合材としては、セラミックス材料に、水等の溶媒を加えてペースト状にしたものを用いることができる。また、目封止ハニカムセグメントの接合体の外周を加工した後の加工面は、セルが露出した状態となっているため、図7に示すように、その加工面に外周コート材を塗工して接合体外周壁103を形成してもよい。外周コート材の材料としては、例えば、接合材の材料と同じ材料を用いることができる。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
セラミックス原料として、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合した混合原料を準備した。この混合原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加するとともに、水を添加して成形原料を作製した。得られた成形原料を、ニーダーを用いて混練し、坏土を得た。
【0054】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて成形し、図2に示す目封止ハニカムセグメント100と同様の繰り返し配列パターンを有する四角柱状のハニカムセグメントを49個作製した。なお、「図2に示す目封止ハニカムセグメント100と同様の繰り返し配列パターン」とは、断面形状が正方形の流出セルの周りを、断面形状が六角形の4個の流入セルが取り囲むように配列された繰り返し配列パターンのことである。
【0055】
次に、得られたハニカムセグメントを高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。なお、乾燥時には、ハニカムセグメントの流出端面が、鉛直下向きになるように配置して乾燥を行った。
【0056】
乾燥後のハニカムセグメントに、目封止部を形成した。まず、ハニカムセグメントの流入端面にマスクを施した。次に、マスクの施された端部(流入端面側の端部)を目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていないセル(流出セル)の開口部に目封止スラリーを充填した。このようにして、ハニカムセグメントの流入端面側に、目封止部を形成した。そして、乾燥後のハニカムセグメントの流出端面についても同様にして、流入セルにも目封止部を形成した。
【0057】
そして、目封止部の形成されたハニカムセグメントを脱脂し、焼成し、目封止ハニカムセグメントを得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とし、焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。
【0058】
作製した目封止ハニカムセグメントは、図6に示す目封止ハニカムセグメント200と同様に、流入セル2aの形状が、六角形であり、且つ、流出セル2bの形状が、正方形であった。また、ハニカムセグメント4の最外周の領域を除き、流入セル2aの1辺と、隣接する流出セル2bの1辺とが、同一の長さを有するとともに平行となるよう、1つの流出セル2bの周囲を4つの流入セル2aが取り囲む構造となっていた。表1の「セル構造(参照図)」の欄には、目封止ハニカムセグメントのセルの形状及びセルの配置を参照するための図面を示す。
【0059】
作製した目封止ハニカムセグメントは、軸方向に直交する断面が四角形で、四角形の端面は、一辺の長さが39.0mmで、もう一辺の長さが39.0mmであった。また、ハニカムセグメントは、その軸方向の長さが254.5mmであった。
【0060】
目封止ハニカムセグメントの最外周壁の厚さは、不完全セルと接する最外周壁の厚さをT1(mm)と、完全セルと接する最外周壁の厚さをT2(mm)とが異なる厚さであった。このような目封止ハニカムセグメントについて、表1の「最外周壁の厚さ」の欄に、「不均一」と記す。なお、不完全セルと接する最外周壁の厚さをT1(mm)と、完全セルと接する最外周壁の厚さをT2(mm)とが同じ厚さの場合には、表1の「最外周壁の厚さ」の欄に、「均一」と記す。不完全セルと接する最外周壁の厚さをT1(mm)は、0.400mmであった。完全セルと接する最外周壁の厚さをT2(mm)は、0.700mmであった。また、「T2−(1/2×WT)」の値は、0.611であった。表1に各値を示す。また、厚さがT2(mm)となる最外周壁は、ハニカムセグメントの端面における辺を構成する位置に存在していた。
【0061】
目封止ハニカムセグメントの隔壁の厚さ(WT(mm))は、0.178mmであった。セル密度は46個/cmであった。隔壁の気孔率は48%であった。隔壁の気孔率は、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)によって測定した。
【0062】
49個の焼成済の目封止ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように配置された状態で、接合材によって接合し、140℃で2時間乾燥してハニカムセグメント接合体を得た。得られたハニカムセグメント接合体の外周を円筒状に研削加工後、その外周面をコーティング材で被覆し、700℃で2時間乾燥硬化させて、実施例1の目封止ハニカム構造体を作製した。接合材としては、無機粒子、無機接着剤を主成分とし、副成分として、有機バインダ、界面活性剤、発泡樹脂、水等を含むものを用いた。実施例1の目封止ハニカム構造体は、端面の直径が266.7mmであり、セルの延びる方向の長さが254mmであった。表1の「目封止ハニカム構造体のサイズ(mm×mm)」の欄に、端面の直径、及びセルの延びる方向の長さを示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1の目封止ハニカム構造体について、以下の方法で、「流出セルの触媒詰まり」、「締め付け強度」、「圧力損失」、及び「接合強度」に関する評価を行った。また、「流出セルの触媒詰まり」、「締め付け強度」、「圧力損失」、及び「接合強度」の評価結果に基づき、以下の方法で、総合評価を行った。各結果を表2に示す。
【0065】
[流出セルの触媒詰まり]
まず、以下の方法で、目封止ハニカム構造体に触媒を担持して、ハニカム触媒体を得た。平均粒子径5μmのγ−アルミナ100gに水1kg加え、ボールミルにて湿式粉砕した。得られた解砕粒子に、バインダとしてアルミナゾルを10g加えて、触媒スラリーを調製した。この触媒スラリーは、粘度が5mPa・sとなるように調製した。そして、得られた触媒スラリーの中に、目封止ハニカム構造体を浸漬させた。その後、触媒スラリーから目封止ハニカム構造体を取り出し、120℃で2時間乾燥させ、550℃で1時間焼き付けし、ハニカム触媒体を得た。その後、得られたハニカム触媒体の流出端面側の目封止部が配設された部分を切断して、触媒詰まり評価用の試料片を作製した。作製した試料片の片側の端面から光を透過させて、試料片に形成されている流出セルのうち、閉塞している流出セルの数を数える。そして、以下の評価基準に基づき評価を行った。
評価「A」:閉塞している流出セルが無い場合(流出セルの触媒詰まりが無い場合)。
評価「B」:閉塞している流出セルが有り、流出セルの総個数に対して、閉塞している流出セルの個数比率が、0.05%未満の場合。
評価「C」:閉塞している流出セルが有り、流出セルの総個数に対して、閉塞している流出セルの個数比率が、0.05%以上の場合。
【0066】
[締め付け強度]
まず、目封止ハニカム構造体のアイソスタティック強度の測定を行った。アイソスタティック強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)のM505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。具体的には、まず、目封止ハニカム構造体を、ゴム製の筒状容器に入れ、アルミ製板で筒状容器に蓋をする。ごして、この筒状容器を水中に投入し、筒状容器に等方加圧圧縮を加える。アイソスタティック破壊強度試験によって測定されるアイソスタティック強度は、目封止ハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。そして、以下の評価基準に基づき評価を行った。
評価「A」:比較例1の目封止ハニカム構造体のアイソスタティック強度に対して、+10%以上の向上が見られる場合。
評価「B」:比較例1の目封止ハニカム構造体のアイソスタティック強度に対して、+5%以上、10%未満の向上が見られる場合。
評価「C」:比較例1の目封止ハニカム構造体のアイソスタティック強度に対して、+5%未満の向上が見られる場合。
評価「D」:比較例1の目封止ハニカム構造体のアイソスタティック強度に対して、−40%未満の低下が見られる場合(なお、アイソスタティック強度が同じ場合を含む)。
評価「E」:比較例1の目封止ハニカム構造体のアイソスタティック強度に対して、−40%以上の低下が見られる場合。
【0067】
[圧力損失]
目封止ハニカム構造体の流入端面側から、流量が15Nm/minとなるように空気を通気し、目封止ハニカム構造体の流入端面側と流出端面側との差圧を測定した。測定した差圧を、目封止ハニカム構造体の圧力損失とし、以下の評価基準に基づき評価を行った。
評価「A」:比較例1の目封止ハニカム構造体の圧力損失に対して、同等又はそれ以下の値の場合。
評価「B」:比較例1の目封止ハニカム構造体の圧力損失を100%とした場合に、圧力損失の値が100%を超え、130%未満の場合。
評価「C」:比較例1の目封止ハニカム構造体の圧力損失を100%とした場合に、圧力損失の値が130%以上の場合。
【0068】
[接合強度]
まず、以下の方法で、目封止ハニカム構造体の接合層の接合強度を測定した。まず、実施例1の目封止ハニカム構造体と同様の条件下で接合した2つのハニカムセグメントを接合した測定サンプルを準備した。次に、準備した測定サンプルを、以下のような状態で、せん断荷重測定装置に固定した。測定サンプルの2つのハニカムセグメントのうち、一方のハニカムセグメントを浮遊させた状態で、せん断荷重測定装置に固定した。次に、浮遊した状態のハニカムセグメントの端面(即ち、セルが開口している面)から、ハニカムセグメントの全長方向に荷重を加え、測定サンプルが、2つのハニカムセグメントを接合している接合部で破断する強度を測定した。このようにして測定された強度を、接合層の接合強度とした。そして、以下の評価基準に基づき評価を行った。
評価「A」:比較例1の目封止ハニカム構造体の接合層の接合強度に対して、+15%以上の向上が見られる場合。
評価「B」:比較例1の目封止ハニカム構造体の接合層の接合強度に対して、+10%以上、15%未満の向上が見られる場合。
評価「C」:比較例1の目封止ハニカム構造体の接合層の接合強度に対して、+5%以上、+10%未満の向上が見られる場合。
評価「D」:比較例1の目封止ハニカム構造体の接合層の接合強度に対して、+5%未満の向上、又は向上が見られない場合。
【0069】
[総合評価]
「流出セルの触媒詰まり」、「締め付け強度」、「圧力損失」、及び「接合強度」の各評価結果について、Aを5点、Bを4点、Cを3点、Dを2点、Eを1点として、各評価の点数の総和にて、以下の総合評価を行った。
評価「A」:総和が20点。
評価「B」:総和が16点以上、19点未満。
評価「C」:総和が14点以上、16点未満。
評価「D」:総和が14点未満。
【0070】
【表2】
【0071】
(実施例2〜8)
目封止ハニカムセグメントの構成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、目封止ハニカム構造体を作製した。なお、実施例8の目封止ハニカム構造体は、厚さがT2(mm)となる最外周壁が、ハニカムセグメントの端面における角部を構成する位置に存在していた。
【0072】
(比較例1)
目封止ハニカムセグメントの構成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、目封止ハニカム構造体を作製した。
【0073】
(比較例2)
目封止ハニカムセグメントの構成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、目封止ハニカム構造体を作製した。なお、比較例2の目封止ハニカム構造体は、不完全セルと接する最外周壁の厚さをT1(mm)と、完全セルと接する最外周壁の厚さをT2(mm)とが同じ厚さとなるものとした。
【0074】
(比較例3)
目封止ハニカムセグメントの構成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、目封止ハニカム構造体を作製した。
【0075】
実施例2〜8及び比較例1〜3の目封止ハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、「流出セルの触媒詰まり」、「締め付け強度」、「圧力損失」、「接合強度」、及び「総合評価」に関する評価を行った。各結果を表2に示す。
【0076】
(結果)
実施例1〜8の目封止ハニカム構造体は、「流出セルの触媒詰まり」、「締め付け強度」、「圧力損失」、及び「接合強度」の各評価において、全て良好な結果を得ることができた。一方、比較例2の目封止ハニカム構造体は、「流出セルの触媒詰まり」及び「接合強度」において、極めて低い評価となった。また比較例3の目封止ハニカム構造体は、「締め付け強度」及び「接合強度」において、極めて低い評価となった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の目封止ハニカムセグメント及び目封止ハニカム構造体は、排ガスを浄化するためのフィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、2x:完全セル、2y:不完全セル、3:最外周壁、4:ハニカムセグメント、5:目封止部、11:流入端面、12:流出端面、100,200:目封止ハニカムセグメント、101:接合層、102:目封止ハニカムセグメント接合体、103:接合体外周壁、111:流入端面、112:流出端面、300:目封止ハニカム構造体、T1:厚さ(不完全セルと接する最外周壁の厚さ)、T2:厚さ(完全セルと接する最外周壁の厚さ)、WT:厚さ(隔壁の厚さ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7