特許第6898516号(P6898516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898516
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20210628BHJP
   B60K 15/035 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   F02M37/00 301F
   F02M37/00 301P
   F02M37/00 311K
   F02M37/00 311A
   B60K15/035 A
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-513223(P2020-513223)
(86)(22)【出願日】2019年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2019014824
(87)【国際公開番号】WO2019198596
(87)【国際公開日】20191017
【審査請求日】2020年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2018-76252(P2018-76252)
(32)【優先日】2018年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-150777(P2018-150777)
(32)【優先日】2018年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 健太
【審査官】 沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−76467(JP,A)
【文献】 実開平4−52929(JP,U)
【文献】 特開平8−254278(JP,A)
【文献】 特開2009−168045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00−37/54
B60K 11/00−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室とを連通する通気孔が設けられた、ハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に収容され、前記通気孔を開閉するフロート弁とを有し、
前記仕切壁の前記弁室側に弁座が形成され、この弁座の内側に、前記通気孔に連通する開口が設けられており、
前記開口は、第1開口と、この第1開口の外周の少なくとも一箇所から、外方に向けてスリット状に延びる第2開口とを有しており、
前記フロート弁の上方には、前記弁座に接離して、前記第1開口及び前記第2開口を開閉する、弾性を有するシール部が配置されていることを特徴する弁装置。
【請求項2】
前記第2開口は、延出方向の先端側が幅狭に形成されている請求項1記載の弁装置。
【請求項3】
前記第2開口は、前記第1開口の周方向に均等な間隔をあけて、3個以上配置されている請求項1又は2記載の弁装置。
【請求項4】
前記第1開口は円形状をなしており、前記第2開口は、前記第1開口の半径よりも幅狭に形成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の弁装置。
【請求項5】
前記仕切壁の前記弁室側からは、下方に向けて筒状壁が突出しており、この筒状壁の突出方向の先端部が前記弁座をなしており、
前記弁座の内側の、前記通気室側の所定位置には、前記第2開口の奥方端面を覆うカバー部が設けられている請求項1〜4のいずれか1つに記載の弁装置。
【請求項6】
前記シール部は、前記フロート弁の上昇時に、前記第1開口を覆う主体部と、該主体部から外方に向けて延びて、前記第2開口を覆う延出部とからなる請求項1〜5のいずれか1つに記載の弁装置。
【請求項7】
前記仕切壁の前記弁室側からは、下方に向けて筒状壁が突出しており、この筒状壁の突出方向の先端部が前記弁座をなしており、
この弁座の、前記仕切壁からの突出高さは、前記弁座の中心から外方に向けて、次第に低くなるように設けられている請求項1〜6のいずれか1つに記載の弁装置。
【請求項8】
前記フロート弁の上方には、前記弁座の突出形状に整合する、凹部が設けられている請求項7記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、燃料流出防止弁や満タン規制弁等として用いられる、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両の燃料タンクには、車両が傾いたり横転したりしたときに、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れるのを防止する弁装置が取付けられている。
【0003】
このような弁装置は、一般的にハウジングとフロート弁とを有し、ハウジングは、通気孔を有する仕切壁によって、上方に通気室、下方に弁室が形成され、弁室内にフロート弁が昇降可能に配置されている。そして、燃料が揺動して、フロート弁に浮力が作用すると、フロート弁が上昇して、通気孔周囲に設けた弁座に当接して、通気孔を閉じるため、通気室側への燃料流入が規制される。その後、燃料の揺動が収まって、フロート弁に浮力が作用しない状態となった場合には、フロート弁が自重により下降して弁座から離れて、再度通気孔を開口させる。
【0004】
しかし、タンク内圧が高い状態では、フロート弁が弁座に貼り付いてしまって、通気孔を開口させることができないことがあった。特に、フロート弁上方に、ゴム等からなるシール部が配置されている場合には、その傾向が強い。そのため、タンク内圧が高い状態でも、弁座からフロート弁を剥がしやすくして、通気孔を開口させることができる、すなわち、再開弁圧を高くすることができるものが望まれている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、仕切壁を有し上方に通気室、下方に弁室を設けたハウジングと、弁室内に昇降可能に配置されるフロート部材とを備えた、通気弁が記載されている。前記天井壁の下面からは、下方に向けて突出し且つ細長く伸びるリムが設けられており、このリムの下端面が斜めにカットされて弁座をなしており、この弁座の内側に、細長いスリット状出口開口が形成されている。一方、フロート部材の上部壁には、細長いストリップ状の軟質膜片が、固着スタッドを介して固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−254278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の通気弁においては、弁座内側にスリット状出口開口が設けられており、弁座の開口幅が狭いため、フロート部材が上昇して、ストリップ状の軟質膜片が弁座に当接した後、下降しようとした場合に、弁座から軟質膜片が剥がれやすく、再開弁圧が比較的高い。しかしながら、弁座の開口幅が狭いため、仕切壁の上下に配置された通気室と弁室とに、通気孔を通じて燃料蒸気や空気を流通させるための、通気性が低下する。また弁座の開口幅を広げれば通気性は高まるが、フロート下降時に弁座に貼り付きやすくなり、再開弁圧が低下する。このように、通気性維持と再開弁圧向上の両立を図ることが難しい。
【0008】
したがって、本発明の目的は、通気性維持と再開弁圧向上の両立を容易に図ることができる、弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る弁装置は、仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室とを連通する通気孔が設けられた、ハウジングと、前記弁室内に昇降可能に収容され、前記通気孔を開閉するフロート弁とを有し、前記仕切壁の前記弁室側に弁座が形成され、この弁座の内側に、前記通気孔に連通する開口が設けられており、前記開口は、第1開口と、この第1開口の外周の少なくとも一箇所から、外方に向けてスリット状に延びる第2開口とを有しており、前記フロート弁の上方には、前記弁座に接離して、前記第1開口及び前記第2開口を開閉する、弾性を有するシール部が配置されていることを特徴する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、開口は、第1開口と、この第1開口の外周の少なくとも一箇所から、外方に向けてスリット状に延びる第2開口とを有しているので、フロート弁が下降している場合には、第1開口のみならず第2開口によっても、弁室と通気室との通気量を確保することができ、一方、燃料揺動等でフロート弁が燃料浸漬による浮力で上昇し、そのシール部が弁座に当接した状態から、フロート弁に浮力が作用しなくなったときに、スリット状に延びる第2開口によって、シール部を弁座の第2開口側から引き剥がしやすくして、再開弁圧を向上させることができ、その結果、通気性維持と再開弁圧向上の両立を容易に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】同弁装置を構成するハウジングの斜視図である。
図3】同弁装置の要部である通気孔や開口を示しており、(a)はその拡大斜視図、(b)は底面図、(c)は断面図である。
図4】同弁装置を構成するフロート弁の斜視図である。
図5】同弁装置において、フロート弁が下降して、通気孔が開口した状態の断面図である。
図6】同弁装置において、フロート弁が上昇して、通気孔を閉じた状態の断面図である。
図7】同弁装置において、フロート弁が上昇して、通気孔を閉じた状態の断面斜視図である。
図8】同弁装置において、フロート弁が通気孔を閉じた状態から、フロート弁が下降しようとする際の状態の断面図である。
図9図8の状態から、更にフロート弁が下降した状態の断面図である。
図10図8の状態から、更にフロート弁が下降した状態の断面斜視図である。
図11】同弁装置において、通気孔や開口の、他構造を示しており、(a)はその底面図、(b)は断面図である。
図12】同弁装置における、開口の他形状を示しており、(a)は第1他形状の説明図、(b)は第2他形状の説明図、(c)は第3他形状の説明図、(d)は第4他形状の説明図、(e)は第5他形状の説明図、(f)は第6他形状の説明図、(g)は第7他形状の説明図である。
図13】同弁装置における、開口の他形状を示しており、(a)は第8他形状の説明図、(b)は第9他形状の説明図、(c)は第10他形状の説明図、(d)は第11他形状の説明図、(e)は第12他形状の説明図、(f)は第13他形状の説明図、(g)は第14他形状の説明図である。
図14】同弁装置における、開口の他形状を示しており、(a)は第15他形状の説明図、(b)は第16他形状の説明図、(c)は第17他形状の説明図、(d)は第18他形状の説明図、(e)は第19他形状の説明図、(f)は第20他形状の説明図である。
図15】同弁装置における、開口の他形状を示しており、(a)は第21他形状の説明図、(b)は第22他形状の説明図、(c)は第23他形状の説明図、(d)は第24他形状の説明図、(e)は第25他形状の説明図である。
図16】本発明に係る燃料タンク用弁装置の、他の実施形態を示しており、フロート弁が下降して、通気孔が開口した状態の断面図である。
図17】同弁装置において、筒状壁を構成する筒状壁形成部材の、拡大斜視図である。
図18】(a)は筒状壁形成部材の平面図、(b)は筒状壁形成部材の断面図である。
図19】同弁装置において、フロート弁が上昇して、通気孔を閉じた状態の断面図である。
図20図19のA部拡大図である。
図21】同弁装置において、フロート弁が通気孔を閉じた状態から、フロート弁が下降しようとする際の状態の断面図である。
図22】(a)は図21のB部拡大図、(b)は(a)のD部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る弁装置の、一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。また、この弁装置は、自動車等の車両の燃料タンクに取付けられる、燃料タンク用弁装置である。
【0013】
図1に示すように、この実施形態における弁装置10は、略筒状をなし、上方に仕切壁23を設けたハウジング本体20と、該ハウジング本体20の上方に装着されるカバー50と、前記ハウジング本体20の下方に装着されるキャップ55とを有する、ハウジング15を有している。
【0014】
図1に示すように、前記ハウジング本体20は、略円筒状をなした周壁21を有しており、その上方に仕切壁23が配置されている。前記周壁21には、複数の通口21aが形成されていると共に、下方に係止孔21bが形成されている。また、周壁21の上方には、係止突部21cが突設されている。
【0015】
一方、前記キャップ55は、複数の通口56を有していると共に、その外周に複数の係止爪57が形成されている。このキャップ55の係止爪57を、ハウジング本体20の係止孔21bに係止させることで、ハウジング本体20の下方にキャップ55が装着される。その結果、前記仕切壁23を介して、ハウジング下方に図示しない燃料タンク内に連通する弁室Vが形成される(図5参照)。なお、この弁室V内には、上方に、弾性を有するシール部65が配置されたフロート弁60が、昇降可能に配置される(図5参照)。
【0016】
また、図1図7に示すように、前記カバー50は、上部が閉塞し、下方周縁部がフランジ状に広がってなる、略ハット状をなしている。このカバー50の周壁51の所定箇所には、通気口52a(図5参照)が形成されており、この通気口52aの外周縁部から、略円筒状をなした燃料蒸気配管52が外方に向けて延設されている。この燃料蒸気配管52には、図示しない燃料タンクの外部に配置されるキャニスター等に連通する、図示しないチューブが接続される。
【0017】
そして、前記ハウジング本体20の上方寄りの外周にシールリング53を装着した状態で、カバー50を上方から被せて、シールリング53を挟持すると共に、カバー50の図示しない係止片を、ハウジング本体20の係止突部21cに係止させることで、ハウジング本体20の上方にカバー50が取付けられる。その結果、仕切壁23を介して、その上方に燃料タンク外に連通する通気室Rが形成されるようになっている(図5参照)。
【0018】
ハウジング本体20の説明に戻ると、図5図7図10等に示すように、この実施形態における前記仕切壁23は、周壁21の上方開口の内周に配置された略円板状をなしていると共に、その中央部に、前記通気室Rに向けて所定高さで円形状に突出した、突出部24を有している。そして、この仕切壁23の突出部24の中央に、円形状をなした通気孔25が形成されており、該通気孔25を通して前記弁室Vと前記通気室Rとが連通するようになっている。なお、仕切壁は、例えば、ハウジング本体20の周壁21の軸方向途中に設けられていてもよく、その形状も単なる円板状等としたり、或いは、中央部が筒状に隆起して、その周縁部に段状をなす壁部(肩状壁部)を有するような形状としてもよく、位置や形状は特に限定されない。
【0019】
また、図2図5に示すように、仕切壁23の、弁室V側の面(仕切壁23の厚さ方向の下面側)からは、前記通気孔25を囲むようにして、筒状壁27が下方に向けて突出している。
【0020】
図3(a),(b)を併せて参照すると、この実施形態の筒状壁27は、仕切壁23の弁室V側の面であって、通気孔25の周縁に位置する部分から突出した、略円筒状をなした第1壁部28と、該第1壁部28の外周から、周方向に均等な間隔をあけて、外方に向けて延びる、複数の第2壁部29(ここでは4個)とからなる。
【0021】
また、図3(b)に示すように、弁室V側から仕切壁23をハウジング15の軸方向に沿って見たときに、各第2壁部29は、第1壁部28の中心C1を通る直線に沿って延びると共に、延出方向の基端側が幅広で、延出方向の先端側に向けて次第に幅狭となる、くちばしのような形状をなしている。なお、各第2壁部29の延出方向先端側は、やや丸みを帯びた形状となっている。また、図3(c)に示すように、第1壁部28の内周形状、及び、各第2壁部29の内周形状は、筒状壁27の突出方向基端側から突出方向先端側に至るまで、一定形状となっている。
【0022】
そして、筒状壁27の突出方向の先端部が、フロート弁60のシール部65が接離する、弁座31をなしている。この弁座31の内側に、通気孔25に連通する開口33が設けられている。図3に示すように、この実施形態における開口33は、前記筒状壁27の第1壁部28の内側に設けられた略円形状をなした第1開口34と、前記筒状壁27の各第2壁部29の内側に設けられ、前記第1開口34の外周から、周方向に均等な間隔をあけて、外方に向けてスリット状に延びる、複数の第2開口35(ここでは4個)とを有している。前記第1開口34は、前記通気孔25に整合した位置に形成され、かつ、通気孔25に連通している。また、複数の第2開口35は、第1開口34の外周から、途切れることのないように連続して延びており、第1開口34と複数の第2開口35とが互いに連通しており、全体として通気孔25よりも拡開した一つの大きな開口33が設けられている。
【0023】
また、図3(b)に示すように、弁室V側から仕切壁23をハウジング15の軸方向に沿って見たときに、各第2開口35は、第1開口34の中心C2を通る直線に沿って延びると共に、延出方向の基端側が幅狭で、延出方向の先端側に向けて次第に幅狭となる、細長い三角形のような形状を呈したスリット状となっている。
【0024】
なお、この実施形態における第1開口34及び各第2開口35は、前述した第1壁部28及び各第2壁部29の内周形状が、筒状壁27の突出方向基端側から突出方向先端側に至るまで一定形状とされたことに対応して、筒状壁27の突出方向に沿って一定形状で、かつ、所定深さで形成されている。
【0025】
また、図3(b)に示すように、この実施形態における第2開口35の、幅広に形成された延出方向の基端側における開口幅Wは、円形状をなした第1開口34の半径rよりも幅狭に形成されている(W>r)。
【0026】
なお、第2開口34としては、1個や2個、3個でもよく、また、5個以上であってもよく、その個数は特に限定されないが、第1開口34の周方向に均等な間隔をあけて3個以上配置されることが好ましい。
【0027】
更に図3(a)〜(c)に示すように、前記弁座31の内側の、通気室R側の所定位置には、第2開口35の奥方端面を覆うカバー部37が設けられている。この実施形態では、弁座31の内側であって、前記通気孔25の通気室R側の周縁の、複数の第2開口35に整合する位置に、周方向に沿って均等な間隔をあけて、略三角板状をなした、複数のカバー部37(ここでは4個)が設けられている。そのため、図3(b)に示すように、弁室V側から仕切壁23をハウジング15の軸方向に沿って見たときに、第2開口35の奥方端面にカバー部37が配置されている。ただし、第2開口35は、第1開口34に連通しており、第1開口34は、通気孔25に連通しているので、第1開口34を介して、第2開口35も通気孔25に連通している。
【0028】
すなわち、仕切壁23に形成されて弁室Vと通気室Rとを連通する通気孔25は、仕切壁23の厚さ方向における弁室V側の開口部が第2開口35によって拡開したような形状となっており、通気孔25は、仕切壁23の弁室V側に拡開した開口33を有している、ともいえる。
【0029】
更に図3(c)に示すように、仕切壁23の突出部24の、通気室R側の上面であって、前記通気孔25の周縁からは、通気孔25を囲む環状をなし、通気孔25に連通する環状突部39が突設されている。この環状突部39の上端部40は、金属製で円盤状をなしたチェック弁45(図5参照)が接離する弁座をなしている。なお、このチェック弁45は、常時は自重により下降して、環状突部39の弁座をなす上端部40に当接しており、図示しない燃料タンクの内圧が上昇すると、その圧力によって浮き上がって環状突部39の上端部40から離れて、弁室V側から通気室R側に燃料蒸気を排出して、燃料タンク内圧を下げるようになっている。
【0030】
また、図1図5に示すように、仕切壁23の通気室R側の上面であって、突出部24の外周からは、円環状をなした環状壁41が設けられている。この環状壁41の内側には、前記チェック弁45が配置され、その昇降移動をガイドする。
【0031】
更に図2に示すように、ハウジング本体20の周壁21の上方内周の所定箇所には、突条をなした回転規制突部47、及び、同じく突条をなした複数のガイド突部48が、ハウジング15の軸方向に沿って延設されている。
【0032】
なお、この実施形態における開口33は、上述したように、複数の第2開口35の奥方端面がカバー部37で閉塞された形状をなしているが、第2開口35を閉塞しない形状としてもよい。例えば、図11(a)や図11(b)に示すように、通気孔25の外周に、周方向に均等な間隔をあけて、開口33の第2開口35に整合する内周形状を有する、複数の切欠き溝を形成し、この通気孔25と、開口33を形成する第1開口34及び複数の第2開口35とを、互いに整合した形状として、仕切壁23の厚さ方向に沿って貫通した孔形状を設けてもよい。この場合、仕切壁23の弁室V側の下面であって、開口33の周縁部分が、弁座31をなすこととなる。
【0033】
また、この実施形態では、前記開口33は、円形状の第1開口34と、その外周から、周方向に均等な間隔をあけて、略三角形のスリット状に延びる、4個の第2開口35とからなるが、開口としては、この形状に限定されるものではない。図12〜15には、そのような別形状の開口が示されている。
【0034】
図12(a)〜(g)の開口33A〜33Gは、第1開口34が円形である点で共通している。
【0035】
図12(a)の開口33Aは、第1開口34の外周の一箇所から、略三角形の第2開口35が外方に向けて延びている。図12(b)の開口33Bは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、略三角形状をなした3個の第2開口35が延びている。図12(c)の開口33Cは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、略三角形状をなした3個の第2開口35が延びており、各第2開口35の先端が円弧状をなしている。図12(d)の開口33Dは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、略三角形状をなした4個の第2開口35が延びており、各第2開口35の先端が円弧状をなしている。
【0036】
図12(e)の開口33Eは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、一定幅の細長溝状をなした4個の第2開口35が延びており、各第2開口35の先端が円弧状をなしている。図12(f)の開口33Fは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、一定幅の細長溝状をなした4個の第2開口35が延びており、各第2開口35の先端に拡径した円形状をなしている。図12(g)の開口33Gは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、基端側が拡径した円弧状で先端側が先細状の、万年筆のペン先のような形状をなした、4個の第2開口35が延びている。
【0037】
図13(a)〜(g)の開口33H〜33Nは、第1開口34が円形で、かつ、第2開口35が一定幅の細長溝状である点で共通している。
【0038】
図13(a)の開口33Hは、第1開口34の外周の一箇所から、細長溝状の第2開口35が延びている。図13(b)の開口33Iは、第1開口34の外周の対向した箇所から、細長溝状の一対の第2開口35,35が延びている。図13(c)の開口33Jは、第1開口34の外周の2箇所から、周方向に90度の角度をあけて、細長溝状の第2開口35,35が延びている。図13(d)の開口33Kは、第1開口34の外周から3か所から、周方向に90度の角度をあけて、細長溝状の第2開口35が延びている。
【0039】
図13(e)の開口33Lは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、4個の細長溝状の第2開口35が延びている。図13(f)の開口33Mは、図13(e)に示す第1開口34よりも、小径の第1開口34を有しており、その外周から周方向に均等な間隔で、4個の細長溝状の第2開口35が延びている。図13(g)の開口33Nは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、4個の細長溝状の第2開口35が延びており、各第2開口35の先端が先細テーパ状をなしている。
【0040】
図14(a)〜(g)の開口33O〜33Tは、第1開口34が角形である点で共通している。
【0041】
図14(a)の開口33Oは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、略三角形状をなした4個の第2開口35が延びている。図14(b)の開口33Pは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、略三角形状をなした4個の第2開口35が延びており、各第2開口35の先端が円弧状をなしている。図14(c)の開口33Qは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、一定幅の細長溝状をなした4個の第2開口35が延びている。図14(d)の開口33Rは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、一定幅の細長溝状をなした4個の第2開口35が延びており、各第2開口35の先端が円弧状をなしている。図14(e)の開口33Sは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、一定幅の細長溝状をなした8個の第2開口35が延びている。図14(f)の開口33Tは、第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、略三角形状をなした3個の第2開口35が延びている。
【0042】
図15(a)〜(e)の開口33U〜33Yは、上記図12〜14とは更に異なる形状となっている。
【0043】
図15(a)の開口33Uは、第1開口35が正五角形をなしており(二点鎖線参照)、第1開口35の各面から、略三角形状をなした第2開口35が延びている。図15(b)の開口33Vは、第1開口35が異形の五角形をなしており(二点鎖線参照)、第1開口35の各面から、略三角形状や略四角形状をなした第2開口35が延びている。図15(c)の開口33Wは、第1開口35が異形の五角形をなしており(二点鎖線参照)、第1開口35の各面から、略三角形状や略四角形状をなした第2開口35が延びており、かつ、略四角形状とされた第2開口35の角部がR状となっている。
【0044】
図15(d)の開口33Xは、第1開口35が五角形をなしており(二点鎖線参照)、第1開口35の対向する面から、略三角形状をなした一対の第2開口35,35が延びている。図15(e)の開口33Yは、円形状をなした第1開口35と、該第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、図12(g)と同様の、万年筆のペン先のような形状をなした4個の第2開口35が延びていると共に、第1開口34の外周であって4個の第2開口35の間から周方向に均等な間隔で、円弧状をなした4個の第2開口35が延設されている。
【0045】
上記のように、本発明における開口としては、第1開口と、その外周からスリット状をなすように、かつ、第1開口から連続して延びる、第2開口とを有してれば、どのような形状であってもよい。
【0046】
また、上記弁室V内には、フロート弁60が昇降可能に配置されるようになっている。図1図4に示すように、このフロート弁60は、上方が閉塞した略円筒状をなしており、平坦面状をなした上面61aを有する、頭部61を備えている。図4に示すように、頭部61の上面61aからは、所定高さで立設した柱状部63aと、該柱状部63aの上端から頭部61の径方向外方に向けて直交して延びる爪部63bとからなる、逆向きの略L字状をなしたフック63が、周方向に均等な間隔をあけて複数設けられている(ここでは4個)。なお、フロート弁60とキャップ55との間に、フロート弁60に付勢力を付与する、コイルスプリングを介在させてもよい。
【0047】
また、頭部61の外周の所定箇所には、フロート弁60の軸方向に沿って凹溝状に延びる、回転規制溝62が形成されている。この回転規制溝62に、ハウジング本体20の上部内周に設けた回転規制突部47(図2参照)が挿入されて、ハウジング15に対してフロート弁60が回転規制される。更に、頭部61の外周には、ハウジング本体20の上部内周に設けた複数のガイド突部48(図2参照)が配置されて、フロート弁60の昇降移動時の傾きが抑制される。
【0048】
また、頭部61の上面61aには、弾性を有するシール部65が配置されるようになっている。図1に示すように、この実施形態におけるシール部65は、略正方形状をなし、頭部61の上面61aの中央に配置される主体部67と、この主体部67の各側部から外方に向けて一定幅で延出した4個の延出部69とからなり、略十字形の板状をなしている。なお、前記主体部67が、弁座31の第1開口34側に接離して、開口33の第1開口34を開閉し、一方、前記複数の延出部69が、弁座31の第2開口35側に接離して、開口33の複数の第2開口35を開閉するようになっている(図5〜10参照)。
【0049】
また、シール部65は、主体部67及び複数の延出部69が、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料から、同一の板厚となるように一体形成されている。なお、シール部65の板厚は、頭部61の上面61aと、頭部61の爪部63bの係止面(頭部61の上面61aに対向する面)との距離よりも、薄くなるように形成されている。更に、各延出部69の延出方向の先端側には、延出方向に沿って長く延びる長孔状をなし、フック孔69aの柱状部63aが挿通されると共に、爪部63bが係止可能とされた、フック孔69aがそれぞれ形成されている。
【0050】
また、シール部としては、例えば、円板状や、楕円状、小判形状としたり、或いは、四角形や、五角形、六角形等の角形状としたりしてもよく、更に、厚さを部分的に変動させてもよく(例えば、主体部を肉厚にし、延出部を肉薄としたりする)、弾性を有するものであって、弁座に接離して、第1開口及び第2開口を開閉可能な形状であれば、特に限定はされない。
【0051】
そして、図4に示すように、各延出部69のフック孔69aに、各フック63をそれぞれ挿通させて、その爪部63bをフック孔69aの周縁に配置することで、図5〜10に示すように、頭部61の上面61aに対して、シール部65が接離するように移動可能に配置される。また、このシール部65が、仕切壁23の弁座31に接離して開口34を開閉することで、通気孔25を介して、弁室V及び通気室Rを連通させたり、或いは、弁室V及び通気室Rの連通を規制するようになっている。
【0052】
具体的に説明すると、まず、フロート弁60が燃料に浸漬されておらず、弁室Vの下方に配置された通常の状態では、シール部65は頭部61の上面61aに載置されている(図5参照)。そして、燃料の揺動等によって、フロート弁60に燃料が浸漬して、浮力が生じて浮き上がると、シール部65は、それに伴って移動して仕切壁23に設けた弁座31に当接して、開口33を閉じる(図6参照)。ここでは図7に示すように、シール部65の主体部67が、弁座31の第1開口34側に当接して、第1開口34を閉塞し、一方、複数の延出部69の基端側が、弁座31の第2開口35側に当接して、複数の第2開口35をそれぞれ閉塞する。
【0053】
この状態で、燃料の揺動等が収まって、フロート弁60に燃料からの浮力が作用しなくなると、フロート弁60が自重によって下降する。この場合、図8に示すように、弁座31に当接して貼り付いた状態のシール部65に対して、フロート弁60が所定距離だけ下降して、フック63の爪部63bが、シール部65の延出部69のフック孔69aの周縁に係止して、図8の矢印に示すように、延出部69にフロート弁60の荷重が集中して作用する。すると、図9図10に示すように、弁座31の第1開口34側に貼り付いた状態の主体部67に対して、複数の延出部69が斜め下方に向けて引張られるように弾性変形して、各延出部69の基端側が、弁座31の第2開口35側の部分から徐々に離れていく。そして、各延出部69が弁座31の第2開口35側から離れると、複数の延出部69を介して、フロート弁60の荷重がシール部65の主体部67に作用することとなり、弁座31の第1開口34側に貼り付いた主体部67を、弁座31から容易に引き剥がされるようになっている。
【0054】
上記のように、この実施形態においては、弾性を有するシール部65が、フロート弁60に対して移動可能に配置されていることで、上述したように、フロート弁60の下降時に、シール部65の延出部69に、フロート弁60の荷重が作用しやすくなっているが、シール部65がフロート弁60に対して移動可能でなくても、フロート弁下降時に開口33から剥がれやすくなっている。
【0055】
すなわち、シール部65がフロート弁60に対して移動しない構成の場合には、弁座31にシール部65が当接した状態から、フロート弁60に浮力が作用しなくなり、フロート弁60が下降しようとすると、シール部65の、弁座31の第1開口34側に貼り付いた部分に対して、同シール部65の、弁座31の第2開口35側の部分が弾性変形して、弁座31の第2開口35側から引き剥がされ、その後、シール部65の、弁座31の第1開口34側に貼り付いた部分が、容易に引き剥がされて、第1開口34を開口させることが可能となっている。
【0056】
次に、上記構成からなる本発明に係る弁装置10の作用効果について説明する。
【0057】
図5に示すように、燃料タンク内の燃料液面が上昇せず、フロート弁60が燃料に浸漬されていない状態では、弁室V内においてフロート弁60が下降して、開口34が開いて、通気孔25を通じて、弁室Vと通気室Rとが連通した状態となっている。このとき、この弁装置10においては、弁座31の内側に設けられた、通気孔25に連通する開口33が、第1開口34と、その外周から外方に向けてスリット状に延びる第2開口35とを有しているので、第1開口34のみならず第2開口35によって、通気孔25の弁室V側の開口を広げることができ、弁室Vと通気室Rとの通気量を増大させることができる。
【0058】
そして、上記状態で車両の走行等によって、燃料タンク内での燃料蒸気が増大してタンク内圧が高まると、燃料蒸気は、キャップ55の通口56や、ハウジング本体20の通口21aから、弁室V内に流入し、開口34や通気孔25を通過して、通気室R内へと流れて、燃料蒸気配管52を介して図示しないキャニスターに送られて、燃料タンク内の圧力上昇が抑制される。
【0059】
そして、車両が、カーブを曲がったり、凹凸のある道や坂道等を走行したり、或いは、事故によって転倒したりして、燃料タンク内の燃料が激しく揺動して燃料液面が上昇して、フロート弁60が燃料に浸漬した状態となると、フロート弁60自体の浮力によって、フロート弁60が上昇して、図6図7に示すように、シール部65の主体部67が、弁座31の第1開口34側に当接して、同第1開口34を閉塞すると共に、複数の延出部69が、弁座31の第2開口35側に当接して、複数の第2開口35をそれぞれ閉塞する。
【0060】
この状態で、燃料の揺動等が収まって、フロート弁60に燃料からの浮力が作用しなくなると、フロート弁60が自重によって下降して、上述したように、シール部65に対してフロート弁60が所定距離だけ下降して、図9図10に示すように、主体部67に対して複数の延出部69がそれぞれ弾性変形して、各延出部69を弁座31の第2開口35側から引き剥がすことができると共に、この延出部69の引き剥がしを契機として、上述したように、弁座31の第1開口34側に貼り付いた主体部67を、弁座31から容易に引き剥がすことができ、再度、図5に示すように、開口33を完全に開口させることができる。
【0061】
このように、この弁装置10においては、開口33が、第1開口34と、その外周から外方に向けてスリット状に延びる第2開口35とを有しているので、上述したように、フロート弁60が下降している場合には、第1開口34及び第2開口35によって、弁室Vと通気室Rとの通気量を確保することができる。一方、燃料揺動等によってフロート弁60が燃料浸漬による浮力で上昇し、シール部65が弁座31に当接した状態から、フロート弁60に浮力が作用しなくなったときに、スリット状に延びる第2開口35によって、シール部65を、弁座31の第2開口35側から引き剥がしやすくして、再開弁圧を向上させることができる。すなわち、燃料タンク内の圧力が高い状態であっても、弁座31からフロート弁60を剥がしやすくして、通気孔25を開口させることができる。その結果、通気性維持と再開弁圧向上の両立を容易に図ることができる。
【0062】
また、この実施形態においては、図2図3に示すように、第2開口35は、その延出方向の先端側が幅狭に形成されている。そのため、フロート弁60が上昇して、シール部65が弁座31に当接した状態から、フロート弁60に浮力が作用しなくなったときに、シール部65を弁座31の第2開口35側から、より引き剥がしやすくして、再開弁圧を更に向上させることができる。すなわち、フロート弁60はその自重により下降しようとする際に、第2開口35の先端側が幅狭だと、弾性を有するシール部65が剥がれやすい。なお、第2開口35の先端側が幅広だと、弾性を有するシール部65が貼り付きやすくなり剥がれにくくなる。
【0063】
更に、この実施形態においては、開口33を構成する第2開口35は、第1開口34の周方向に均等な間隔をあけて、3個以上配置されている(図3参照)。そのため、フロート弁60が傾いた状態で下降する際に、どの方向に傾いたとしても、シール部65を弁座31の第2開口35側から引き剥がしやすくすることができ、再開弁圧を更に向上させることができる。
【0064】
また、この実施形態においては、図3(b)に示すように、開口33を構成する第1開口34は円形状をなしており、第2開口35は、第1開口34の半径rよりも幅狭に形成されているので、通気性維持と再開弁圧向上の両立を、より容易に図ることができる。
【0065】
更に、この実施形態においては、図3に示すように、仕切壁23の弁室側Vからは、下方に向けて筒状壁27が突出しており、この筒状壁27の突出方向の先端部が弁座31をなしており、弁座31の内側の、通気室R側の所定位置には、第2開口35の奥方端面のみを覆うカバー部37が設けられている。そのため、燃料タンク内の燃料が激しく揺動して、フロート弁60が上昇して弁座31に当接して開口33を閉塞する前に、燃料が開口33や通気孔25を通って通気室R側に噴出しようとする際に、燃料をカバー部37に衝突させて、カバー部37と、筒状壁27の第2開口35側の部分(ここでは第2壁部29)とで囲まれた空間内に留まらせることができ、通気室R側への燃料流入を抑制することができる。また、カバー部37を設けたことで、通気孔25の通気室R側から、弁座をなす突部(環状突部39)を設けやすくなり、燃料タンク内の圧力を調整するチェック弁45を配設しやすくすることができる。
【0066】
また、この実施形態においては、図4図7に示すように、フロート弁60の上方に配置された弾性のシール部65は、フロート弁60の上昇時に、第1開口34を覆う主体部67と、主体部67から外方に向けて延びて、第2開口35を覆う延出部69とからなる。そのため、シール部65が弁座31に当接した状態から、フロート弁60に浮力が作用しなくなったときに、弁座31の第1開口34側に主体部67が貼り付いた状態となっても、図9図10に示すように、主体部67に対して延出部69を弾性変形させやすくして、弁座31の第2開口35側から引き剥がしやすくすることができ、再開弁圧を更に効果的に向上させることができる。
【0067】
図16〜22には、本発明に係る弁装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0068】
この実施形態の弁装置は10Aは、主として、筒状壁部及び弁座の構造が前記実施形態と異なっている。
【0069】
図16に示すように、ハウジング本体20Aの仕切壁23には、図18(a)に示さような、略十字形のスリット状をなした通気孔25が形成されている。そして、仕切壁23の弁室V側(下面側)から、通気孔25を囲む筒状壁が下方に向けて突出している。この実施形態の筒状壁は、仕切壁23の通気孔25の周縁から下方に向けて、略十字枠状に突出した第1筒状壁85と、この第1筒状壁85の突出方向先端部から下方に向けて、第1筒状壁85よりも一回り小さい略十字枠状に突出した第2筒状壁87とからなり、十字枠状壁が2段に連設された構造となっている。
【0070】
そして、第2筒状壁87は、通気孔25の中心に整合する位置に配置される、略円筒状の第1壁部88と、この第1壁部88の外周から、周方向に均等な間隔で、外方に向けて延びる4個の第2壁部89とからなり、これらの壁部88,89の突出方向先端部が弁座90をなしている。この弁座90の内側に、通気孔25に連通する開口33が設けられている。図18(a)に示すように、この実施形態における開口33は、略円形状をなした第1開口34と、この第1開口34の外周から周方向に均等な間隔で、一定幅の細長スリット溝状に延出した4個の第2開口35とからなる。
【0071】
そして、図17図18(b)に示すように、弁座90の、仕切壁23からの突出高さは、弁座90の中心C3から外方に向けて、次第に低くなるように設けられている。すなわち、この弁座90は、その中心C3側が下方に向けて大きく突出して、フロート弁上面からの高さが低い形状をなすと共に、弁座外方に向けて突出量が次第に小さくなり、フロート弁上面からの高さが高い形状となっている。具体的には図18(b)に示すように、弁座90は、仕切壁23の弁室側V側の面(以下、単に「下面」ともいう)からの、第1壁部88の突出高さH1が最も高く(仕切壁下面からの突出量が大きい)、弁座外方に向けて次第に突出高さが低くなって、仕切壁23の下面からの、第2壁部89の突出高さH2が最も低くなるように(仕切壁下面からの突出量が小さい)設けられている。また、弁座90は、その中心C3から弁座外方に向けて、緩やかな曲面状を描きつつ次第に低くなるように形成されている(図18(b)参照)。
【0072】
そして、この弁装置10においては、図19に示すように、フロート弁60Aが上昇して、そのシール部65が弁座90に当接する際に、弁座90の突出形状に対応して、シール部65が弾性変形して当接するようになっている。すなわち、シール部65が弁座90に当接する際には、シール部65の主体部67が、弁座90の最も下方に突出した部分(第1開口34側)に当接すると共に、シール部65の各延出部69が、弁座90の、中心C3から外方に向けて緩やかな曲面状を描きつつ突出高さが次第に低くなる部分(第2開口35側)に当接することで、図20に示すように、各延出部69が緩やかな曲面状をなすように、シール部中心から外方に向けて、フロート弁上方からの高さが次第に高くなるように弾性変形し、その結果、弁座90に対してシール部65の延出部69が斜めに当接するようになっている。
【0073】
なお、この実施形態における仕切壁は、弁座中心から外方に向けて次第に低くなる弁座を設けた筒状壁が、ハウジング本体の仕切壁から一体的に突出した構造となっているが、ハウジング本体20とは別体の部材を設けて、この別部材に仕切壁を設けた構造としてもよい。また、筒状壁は、第1筒状壁85と第2筒状壁87との2段構造となっているが、仕切壁の下面側から突出方向先端に至るまで、段差なしに突出した形状としてもよい。更に、この実施形態の弁座90は、中心C3から弁座外方に向けて緩やかな曲面状を描きつつ次第に低くなるように形成されているが、例えば、弁座中心から弁座外方に向けてテーパ面状をなしつつ次第に低くなるように形成されていてもよく、特に限定はされない。
【0074】
一方、この実施形態におけるフロート弁60Aの上方には、上記弁座90の突出形状に整合する、凹部70が設けられている。図16に示すように、この実施形態における凹部70は、フロート弁60Aの頭部61の上面61aに形成されるものであって、その内面70aが、フロート弁中心が最も深く、フロート弁外方に向けて次第に浅くなるように、緩やか曲面状をなした凹状を呈している。
【0075】
そして、図19に示すようにフロート弁60Aが浮き上がり、シール部65が弁座90の突出形状に対応して弾性変形しつつ当接した状態となると、図20に示すように、凹部70内にシール部65が入り込んで、その主体部67が凹部70の内面70aの最も深い部分に密接すると共に、各延出部69が凹部70の内面70aの湾曲部分に密接して、弁座90と、フロート弁60Aの上方の凹部70との隙間が、シール部65によってシールされるようになっている。
【0076】
なお、この実施形態における凹部70は、弁座90の突出形状に整合するように、内面70aが曲面状をなした凹部70が設けられているが、凹部としては、例えば、略角形状に凹んだ形状等としてもよい。
【0077】
次に、上記構成からなる弁装置10Aの作用効果について説明する。
【0078】
すなわち、この実施形態では、弁座90の、仕切壁23からの突出高さは、弁座90の中心C3から外方に向けて、次第に低くなるように設けられている。そのため、図16に示すように、フロート弁60Aが燃料に浸漬されていない状態から、燃料の揺動等によって、図19に示すように、フロート弁60Aが燃料に浸漬して上昇して、シール部65が弁座90に当接すると、その主体部67が弁座90の最も下方に突出した部分に当接する。それと共に、シール部65の各延出部69が、弁座90の、中心C3から外方に向けて緩やかな曲面状を描きつつ突出高さが次第に低くなる部分に当接するので、図20に示すように、各延出部69が緩やかな曲面状をなすように、シール部中心から外方に向けて、フロート弁上方からの高さが次第に高くなるように弾性変形して、弁座90に対してシール部65の延出部69が斜めに当接する。
【0079】
この状態で、燃料の揺動等が収まって、フロート弁60Aに燃料からの浮力が作用しなくなると、フロート弁60Aが自重によって下降して、シール部65に対してフロート弁60Aが所定距離だけ下降し、図21に示すように、主体部67に対して複数の延出部69がそれぞれ弾性変形して、各延出部69に引張り力F1(図22(a)参照)が作用する。このとき、図22に示すように、弁座90に対してシール部65の延出部69の一部が斜めに当接しているので、図22(b)の拡大図に示すように、引張り力F1が分解されて斜め方向の分力となって、弁座90とシール部65の延出部69との界面に、斜め方向の引き剥がし力F2が作用するため、シール部65の延出部69を弁座90から、より引き剥がしやすくすることができ、再開弁圧をより向上させることができる。なお、弁座とシール部とが斜めに当接せず水平方向に沿って当接していると、フロート弁の自重により、シール部に作用する引張り力が分解されず、弁座とシール部との界面に斜め方向の引き剥がし力が作用しないため、弁座からのシール部の引き剥がし性は向上しない。
【0080】
また、この弁座90は、その中心C3側が下方に向けて大きく突出した形状をなすと共に、弁座外方に向けて突出量が次第に小さくなる形状となっていているので、フロート弁60Aが上昇して、そのシール部65が弁座90に当接する際に、まず、シール部65の主体部67が弁座90の中心側の突出部分に当接した後、それに追随してシール部65の各延出部69が弾性変形しつつ弁座90の外周部分に当接するので、弁座90に対するシール部65の追従性(弾性変形しやすさ)を高めることができ、弁座90とシール部65とのシール性を向上させることができる。
【0081】
また、この実施形態においては、図16に示すように、フロート弁60Aの上方には、弁座90の突出形状に整合する、凹部70が設けられている。そのため、フロート弁60Aの上昇後に下降する際に、弁座90とシール部65との界面に斜め方向の引き剥がし力F2が作用することによる、弁座90からのシール部65の引き剥がしやすさを確保しつつ、フロート弁60Aが上昇して、シール部65が弁座90に当接し、シール部65が弁座90の突出形状に対応して弾性変形すると、図20に示すように、シール部65の下面がフロート弁60Aの凹部70の内面70aに当接して、弁座90とフロート弁60Aとの隙間がシール部65でシールされるため、弁座90とシール部65とのシール性を向上させることができる。
【0082】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
10,10A 弁装置
15 ハウジング
20,20A ハウジング本体
23 仕切壁
25 通気孔
27 筒状壁
31,90 弁座
33,33A,33B,33C,33D,33E,33F,33G,33H,33I,33J,33K,33L,33M,33N,33O,33P,33Q,33R,33S,33T,33U,33V,33W,33X,33Y 開口
34 第1開口
35 第2開口
37 カバー部
45 チェック弁
50 カバー
53 シールリング
55 キャップ
60,60A フロート弁
63 フック
65 シール部
67 主体部
69 延出部
70 凹部
R 通気室
V 弁室
図1
図2
図3
図4
図5
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