特許第6898532号(P6898532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6898532
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/04 20060101AFI20210628BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20210628BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20210628BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20210628BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   H02M7/04 C
   H01L25/04 C
   H01L23/46 Z
   H05K7/20 M
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-540360(P2020-540360)
(86)(22)【出願日】2019年10月9日
(86)【国際出願番号】JP2019039820
【審査請求日】2020年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 重幸
(72)【発明者】
【氏名】村上 昇太郎
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 育篤
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−340395(JP,A)
【文献】 特開平5−15156(JP,A)
【文献】 特開平7−87742(JP,A)
【文献】 特開平8−28773(JP,A)
【文献】 特開平11−332240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00− 7/98
H01L 25/00−25/16
H01L 23/34−23/46
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモジュールを搭載する第1ステージと、
前記第1ステージ上に積層され、第2のモジュールを搭載する第2ステージと、
前記第1および第2のモジュールに冷媒を循環させるための冷媒循環回路とを備え、
前記冷媒循環回路は、
前記第1ステージに配設され、前記第1のモジュールに前記冷媒を通流させるための第1の冷却配管と、
前記第2ステージに配設され、前記第2のモジュールに前記冷媒を通流させるための第2の冷却配管と、
前記第1の冷却配管の開口端に設けられた第1の接続部材と、
前記第2の冷却配管の開口端に設けられた第2の接続部材と、
前記第1の接続部材と前記第2の接続部材とを接続するための接続配管と、
前記接続配管の第1の端部を前記第1の接続部材に結合する第1のカプラと、
前記接続配管の第2の端部を前記第2の接続部材に結合する第2のカプラとを含む、電力変換装置。
【請求項2】
前記第1のカプラは、
前記第1の接続部材に設けられた第1のソケットと、
前記接続配管の前記第1の端部に設けられ、前記第1のソケットと結合可能に構成された第1のプラグとを有し、
前記第2のカプラは、
前記第2の接続部材に設けられた第2のソケットと、
前記接続配管の前記第2の端部に設けられ、前記第2のソケットと結合可能に構成された第2のプラグとを有する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1および第2のカプラの各々は、ワンタッチカプラである、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1および第2の冷却配管の各々は、
直線部と、
前記直線部と前記開口端との間に位置し、前記直線部に対して折り曲げられた曲げ部とを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記接続配管は、前記第1の端部および前記第2の端部の間に配された絶縁配管を有し、前記絶縁配管は、湾曲部を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記接続配管は、前記第1の端部および前記第2の端部の間に配された絶縁配管を有し、
前記第1および第2のプラグの各々は、前記絶縁配管との接続部分の外周面に外側に凸の曲面形状を有する、請求項2または3に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019−22309号公報(特許文献1)には、水冷式のサイリスタバルブを有する電力変換装置が開示される。特許文献1に記載されるサイリスタバルブは、直列接続された複数のサイリスタを有する。特許文献1では、サイリスタバルブの冷却水配管系統として、複数のサイリスタに共通に接続される冷却配管を配設し、冷却配管を経由して複数のサイリスタおよび冷却装置の間に冷却水を循環させる構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−22309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイリスタバルブは、一般的に、複数のサイリスタモジュールが搭載されたステージを上下方向に積み上げることによって構成される。そのため、サイリスタバルブを設置または交換する作業においては、複数のステージを積み上げた状態で冷却配管を配設する必要があり、煩雑で時間のかかる作業が必要であった。
【0005】
本開示では、設置および交換における作業の効率化を可能とする電力変換装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、電力変換装置は、第1のモジュールを搭載する第1ステージと、第1ステージ上に積層され、第2のモジュールを搭載する第2ステージと、第1および第2のモジュールに冷媒を循環させるための冷媒循環回路とを備える。冷媒循環回路は、第1ステージに配設され、第1のモジュールに冷媒を通流させるための第1の冷却配管と、第2ステージに配設され、第2のモジュールに冷媒を通流させるための第2の冷却配管と、第1の冷却配管の開口端に設けられた第1の接続部材と、第2の冷却配管の開口端に設けられた第2の接続部材と、第1の接続部材と第2の接続部材とを接続するための接続配管と、接続配管の第1の端部を第1の接続部材に結合する第1のカプラと、接続配管の第2の端部を第2の接続部材に結合する第2のカプラとを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電力変換装置によれば、設置および交換における作業を効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態に従う電力変換装置の主回路構成図である。
図2図1に示したサイリスタバルブの構成例を示す図である。
図3図2に示したサイリスタモジュールの構成例を示す図である。
図4】サイリスタバルブの正面図である。
図5】サイリスタバルブの上面図である。
図6】冷却回路における冷却水の流れを説明するための図である。
図7】比較例に係る接続配管の構成を示す図である。
図8】本実施の形態に係る接続配管の構成例を示す図である。
図9図8に示した接続配管の断面図である。
図10】サイリスタバルブのうち冷却配管、接続部材および接続配管を抽出して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的には繰返さないものとする。
【0010】
図1は、この発明の実施の形態に従う電力変換装置の主回路構成図である。本実施の形態に従う電力変換装置5は、交流電力および直流電力の間で電力変換を行なうように構成される。図1の例では、電力変換装置5は、三相ブリッジ整流器であり、三相交流電源APから供給される三相交流電力を直流電力に変換して直流回路DCに出力するように構成される。
【0011】
図1を参照して、本実施の形態に従う電力変換装置5は、複数のサイリスタバルブ1と、ゲートドライバ3と、制御盤4とを備える。
【0012】
サイリスタバルブ1は、電力変換のための整流器の一種であり、複数のスイッチング素子を組み合わせた構成を有する。スイッチング素子としては、高電圧および大容量のサイリスタが用いられる。
【0013】
ゲートドライバ3は、サイリスタバルブ1に含まれる複数のサイリスタを駆動するためのゲートパルスを発生する。制御盤4は、ゲートドライバ3と各種信号を遣り取りすることにより、サイリスタバルブ1による電力変換を制御する。
【0014】
図2は、図1に示したサイリスタバルブ1の構成例を示す図である。図2を参照して、サイリスタバルブ1は、複数のサイリスタモジュール2を直列に接続して構成される。図3は、図2に示したサイリスタモジュール2の構成例を示す図である。
【0015】
図3を参照して、サイリスタモジュール2は、直列接続された複数のサイリスタTH1〜THNと、複数のサイリスタTH1〜THNにそれぞれ並列に接続された複数のスナバ回路S1〜SNとを有する。以下、複数のサイリスタTH1〜THNをサイリスタTHと総称し、複数のスナバ回路S1〜SNをスナバ回路Sと総称することがある。
【0016】
複数のサイリスタTH1〜THNの各々には、例えば光信号(ゲートパルス)により駆動される光トリガサイリスタを用いることができる。各サイリスタTHは、ゲートドライバ3から与えられるゲートパルスに応じて点弧(オン)/消弧(オフ)が制御される。複数のサイリスタTH1〜THNが駆動されることにより、三相交流電力を直流電力に変換することができる。
【0017】
複数のスナバ回路S1〜SNの各々は、コンデンサC1および抵抗R1の直列回路を有する。複数のスナバ回路Sは、サイリスタモジュール2の2端子間に加わる交流電圧成分を均一に分圧するとともに、対応するサイリスタTHのターンオンおよびターンオフ時に発生するスパイク状の高電圧を抑制することにより、サイリスタTHの損傷を防止する。
【0018】
ゲートドライバ3は、制御盤4から与えられる各種信号および複数のサイリスタTHへの電圧の印加状態などに基づいて、ゲートパルスを生成する。ゲートドライバ3は、生成したゲートパルスを所定のタイミングで各サイリスタTHに出力することによって、各サイリスタTHの駆動を制御する。また、ゲートドライバ3は、各サイリスタTHへの電圧の印加状態に基づいて、各サイリスタTHの故障等を検出することができる。
【0019】
制御盤4は、複数のサイリスタTH1〜THNを駆動する位相(タイミング)を決定する処理を実行する。制御盤4は、決定された位相を示す信号をゲートドライバ3に送信する。
【0020】
サイリスタモジュール2は、ヒートシンクHSをさらに有する。ヒートシンクHSには、サイリスタTHおよびスナバ回路S等の発熱部品を冷却するための冷媒が流れる冷媒流路が形成されている。ヒートシンクHSには、冷媒流路に冷媒を導入するための導入管6および、冷媒流路から冷媒を導出するための導出管7が接続される。冷媒には、空気、冷却水(純水)、代替フロン等が用いられる。本実施の形態では冷却水が用いられる。
【0021】
図2に示すように、導入管6および導出管7は、サイリスタバルブ1を構成する複数のサイリスタモジュール2に対して共通に設けられる。導入管6の上流端および導出管7の下流端は、冷却装置8に接続される。冷媒(冷却水)は、導入管6および導出管7を介して冷却装置8と複数のサイリスタモジュール2との間を循環する。
【0022】
具体的には、冷却装置8は、熱交換器を含み、熱交換により冷却した冷却水を導入管6に送り出す。図2中の矢印は、冷却水の通流方向を示している。導入管6に送り出された冷却水は、各サイリスタモジュール2のヒートシンクHS内に導入される。ヒートシンクHSに形成された冷媒流路に冷却水が流れることにより、各サイリスタモジュール2のサイリスタTHおよびスナバ回路SNが冷却される。各サイリスタモジュール2を冷却した後の冷却水は、冷媒流路から導出管7へ送られる。冷却水は、導出管7を経由して冷却装置8に戻されると、熱交換によって冷却された後、再び導入管6に戻される。なお、図示は省略するが、導入管6または導出管7には、冷却装置8、導入管6、ヒートシンクHSおよび導出管7からなる冷媒循環回路に冷却水を循環させるためのポンプが設けられている。
【0023】
次に、図2に示したサイリスタバルブ1の構成例について説明する。
図4は、サイリスタバルブ1の正面図である。図5は、サイリスタバルブ1の上面図である。以下の説明において、左右方向(または横方向)をX方向とし、前後方向をY方向として、上下方向(または縦方向)をZ方向とする。
【0024】
本実施の形態に係るサイリスタバルブ1は、複数のサイリスタモジュール2が搭載されたステージを上下方向(Z方向)に積み上げることによって構成される。図4には、複数のステージのうち、土台となる絶縁架台100上に積層された第1ステージ110および第2ステージ120が代表的に示されている。
【0025】
第1ステージ110は、絶縁架台112と、絶縁架台112上にX方向に並べて配置された複数(例えば4個)のサイリスタモジュール2とを有する。絶縁架台112は、絶縁支柱150によって絶縁架台100と絶縁されている。
【0026】
第2ステージ120は、絶縁架台122と、絶縁架台122上にX方向に並べて配置された複数(例えば4個)のサイリスタモジュール2とを有する。絶縁架台122は、絶縁支柱150によって絶縁架台112と絶縁されている。
【0027】
図2で説明したように、第1ステージ110に搭載される4個のサイリスタモジュール2および第2ステージ120に搭載される4個のサイリスタモジュール2は、電気的に直列に接続されている。
【0028】
サイリスタバルブ1は、複数のサイリスタモジュール2の冷却回路として、冷却配管15,25,31,32、接続部材10,20および、接続配管40A,40Bを有する。
【0029】
冷却配管31,32は、各サイリスタモジュール2に接続される。具体的には、冷却配管31は、一方端がサイリスタモジュール2のヒートシンクHS(図2参照)に接続され、他方端が冷却配管15に接続される。冷却配管32は、一方端がサイリスタモジュール2のヒートシンクHSに接続され、他方端が冷却配管25に接続される。冷却配管31は、ヒートシンクHS内の冷媒流路に冷却水を導入するための導入管6(図2参照)の一部分を構成する。冷却配管32は、ヒートシンクHS内の冷媒流路から冷却水を導出するための導出管7(図2参照)の一部分を構成する。
【0030】
第1ステージ110において、4個のサイリスタモジュール2にそれぞれ対応する4本の冷却配管31は、冷却配管15に共通に接続される。冷却配管15は、横方向(X方向)に延在する。冷却配管15は、一方端が閉じており、他方端が開口部となっている。当該開口部には接続部材10が設けられている。
【0031】
さらに第1ステージ110において、4個のサイリスタモジュール2にそれぞれ対応する4本の冷却配管32は、冷却配管25に共通に接続される。冷却配管25は、横方向(X方向)に延在する。冷却配管25は、一方端が閉じており、他方端が開口部となっている。当該開口部には接続部材20が設けられている。冷却配管15および冷却配管25は、少なくとも1つの支持部材50によって絶縁架台112上に支持されている。第1ステージ110の冷却配管15,25は「第1の冷却配管」の一実施例に対応する。
【0032】
第2ステージ120においても、第1ステージ110と同様に、4個のサイリスタモジュール2にそれぞれ対応する4本の冷却配管31は、冷却配管15に共通に接続される。4個のサイリスタモジュール2にそれぞれ対応する4本の冷却配管32は、冷却配管25に共通に接続される。冷却配管15の他方端の開口部には接続部材10が設けられている。冷却配管25の他方端の開口部には接続部材20が設けられている。冷却配管15および冷却配管25は、少なくとも1つの支持部材50によって絶縁架台122上に支持されている。第2ステージ120の冷却配管15,25は「第2の冷却配管」の一実施例に対応する。
【0033】
接続部材10は、隣接するステージ間で冷却配管15を互いに接続するための部材である。ただし、第1ステージ110では、接続部材10は、冷却配管15を、第2ステージ120の冷却配管15に接続するとともに、冷却装置8との接続配管(図示せず)に接続するために用いられる。
【0034】
接続部材20は、隣接するステージ間で冷却配管25を互いに接続するための部材である。ただし、第1ステージ110では、接続部材20は、冷却配管25を、第2ステージ120の冷却配管25に接続するとともに、冷却装置8との接続配管(図示せず)に接続するために用いられる。第1ステージ110の接続部材10,20は「第1の接続部材」の一実施例に対応し、第2ステージ120の接続部材10,20は「第2の接続部材」の一実施例に対応する。
【0035】
接続配管40Aは、第1ステージ110の接続部材10と、第2ステージ120の接続部材10との間に接続される。図4に示すように、接続配管40Aは、Z方向における第1の端部が第1ステージ110の接続部材10に接続され、第2の端部が第2ステージ120の接続部材10に接続される。
【0036】
接続配管40Bは、第1ステージ110の接続部材20と、第2ステージ120の接続部材20との間に接続される。図4に示すように、接続配管40Bは、Z方向における第1の端部が第1ステージ110の接続部材20に接続され、第2の端部が第2ステージ120の接続部材20に接続される。
【0037】
以上説明した構成において、第1ステージ110の冷却配管15,31および接続部材10、接続配管40A、ならびに第2ステージ120の冷却配管15,31および接続部材10は、図2に示した導入管6の一部分を構成する。第1ステージ110の冷却配管25,32および接続部材20、接続配管40B、ならびに第2ステージ120の冷却配管25,32および接続部材20は、図2に示した導出管7の一部分を構成する。
【0038】
図6は、冷却回路における冷却水の流れを説明するための図である。図6には、サイリスタバルブ1の斜視図が示される。図中の矢印は冷却水の流れる方向を示す。
【0039】
図6を参照して、接続部材10は、上下方向(Z方向)に延びる管状部13と、管状部13の両端に設けられた接続部11,12とを有する。第1ステージ110において、接続部材10は、接続部11が接続配管40Aの第1の端部に接続され、接続部12が冷却装置8との接続配管(図示せず)の端部に接続される。第2ステージ120において、接続部材10は、接続部11が第3ステージとの接続配管(図示せず)の第1の端部に接続され、接続部12が接続配管40Aの第2の端部に接続される。
【0040】
接続部材20は、上下方向(Z方向)に延びる管状部23と、管状部23の両端に設けられた接続部21,22とを有する。第1ステージ110において、接続部材20は、接続部21が接続配管40Bの第1の端部に接続され、接続部22が冷却装置8との接続配管(図示せず)の端部に接続される。第2ステージ120において、接続部材20は、接続部21が第3ステージとの接続配管(図示せず)の第1の端部に接続され、接続部22が接続配管40Bの第2の端部に接続される。
【0041】
第1ステージ110において、接続部材10は、図示しない接続配管を介して、冷却装置8により冷却された冷却水を受ける。冷却水は、接続部材10から第1ステージ110の冷却配管15内に導入されるとともに、接続配管40A内に導入される。第1ステージ110の冷却配管15内に導入された冷却水は、冷却配管31を経由して、各サイリスタモジュール2のヒートシンクHS内に導入される。これにより、第1ステージ110の4個のサイリスタモジュール2が冷却される。冷却後の冷却水は、各サイリスタモジュール2のヒートシンクHSから冷却配管32を経由して冷却配管25内に導出される。冷却配管25に導出された冷却水は、接続部材20を経由して図示しない接続配管に送り出される。
【0042】
これに対して、接続部材10から接続配管40A内に導入された冷却水は、第2ステージ120の接続部材10に導かれる。第2ステージ120において、冷却水は、接続部材10を経由して冷却配管15内に導入される。第2ステージ120の冷却配管15内に導入された冷却水は、冷却配管31を経由して、各サイリスタモジュール2のヒートシンクHS内に導入される。これにより、第2ステージ120の4個のサイリスタモジュール2が冷却される。冷却後の冷却水は、各サイリスタモジュール2のヒートシンクHSから冷却配管32を経由して冷却配管25内に導出される。冷却配管25に導出された冷却水は、接続部材20を経由して接続配管40Bに送り出される。接続配管40Bに送り出された冷却水は、第1ステージ110の接続部材20において第1ステージ110からの冷却水と合流された後、図示しない接続配管に送り出される。これにより、冷却後の冷却水は冷却装置8に戻され、冷却される。
【0043】
このように複数のステージをタワー状に積層して構成されたサイリスタバルブ1においては、ステージごとに配設された冷却配管15,25を、接続部材10,20および接続配管40A,40Bによって互いに接続することにより、サイリスタバルブ1を構成する複数のサイリスタモジュール2と冷却装置8との間に冷媒循環回路(図2参照)を形成することができる。
【0044】
その一方で、上記サイリスタバルブ1を新たに設置または交換する場面においては、ステージを積み上げる工程と、積み上げられたステージ間に接続配管40A,40Bを配設する工程とを実施する必要が生じる。
【0045】
ここで、接続配管40A,40Bの各々に、図7に示される比較例に係る接続配管400を適用する場合を考える。図7を参照して、比較例に係る接続配管400は、直線状に延びる絶縁配管405と、継手403,404と、フランジ401,402とを有する。継手403は絶縁配管405の一方端部に接続され、継手404は絶縁配管405の他方端部に接続される。フランジ401は継手403に接続され、フランジ402が継手404に接続される。
【0046】
積み上げられたステージ間に接続配管40Aを配設する場合には、比較例に係る接続配管400のフランジ401を、環状のパッキンを介して第2ステージ120の接続部材10の接続部12に設けられたフランジに接合させ、パッキンを介して対向する2つのフランジをボルトおよびナットにより締結する。同様に、接続配管400のフランジ402を、環状のパッキンを介して第1ステージ110の接続部材10の接続部11に設けられたフランジに接合させ、パッキンを介して対向する2つのフランジをボルトおよびナットにより締結する。
【0047】
さらに、ステージ間に接続配管40Bを配設する場合には、接続配管400のフランジ401を、環状のパッキンを介して第2ステージ120の接続部材20の接続部22に設けられたフランジに接合させ、パッキンを介して対向する2つのフランジをボルトおよびナットにより締結する。同様に、接続配管400のフランジ402を、環状のパッキンを介して第1ステージ110の接続部材20の接続部21に設けられたフランジに接合させ、パッキンを介して対向する2つのフランジをボルトおよびナットにより締結する。
【0048】
このように接続配管40A,40Bに比較例に係る接続配管400を適用した場合には、ステージを積み上げる工程を実施した後に、各接続配管400の両端のフランジ401,401を接続部11,12に設けられたフランジにそれぞれボルト締結することによって、隣接するステージ間に接続配管40A,40Bが配設される。そのため、サイリスタバルブ1を構成するステージ数が増えるに従って、接続配管40A,40Bを配設するための作業工数が増えることになり、サイリスタバルブ1の組立コストが増大することが懸念される。
【0049】
そこで、本実施の形態においては、接続配管40A,40Bに、図8に示される接続配管40を適用する。図8に示す接続配管40は、接続部材10,20との接続にカプラを使用するように構成される。好適には、接続配管40は、接続部材10,20との接続にワンタッチカプラを使用することができる。
【0050】
具体的には、図8を参照して、本実施の形態に係る接続配管40は、絶縁配管43と、プラグ41,42とを有する。絶縁配管43は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルおよびテフロン(登録商標)などにより形成されている。絶縁配管43には湾曲部430が形成されている。
【0051】
プラグ41は絶縁配管43の第1の端部に接続され、プラグ42は絶縁配管43の第2の端部に接続される。プラグ41,42は、ステンレスなどにより形成される。プラグ41,42の外周面には、接続部材10,20の接続部11,12,21,22の内周面にとの間をシールする環状のシール部材としてのOリングが設けられている。
【0052】
図9は、図8に示した接続配管40の断面図である。図9には、プラグ41および絶縁配管43の一部分の断面が示されている。
【0053】
図9に示すように、プラグ41と絶縁配管43との連結部分44においては、絶縁配管43がプラグ41の外周面46を覆っている。そのため、プラグ41の端部において絶縁配管43の内周面とプラグ41の外周面との間に電界が集中する可能性がある。本実施の形態では、電界集中を抑制するために、プラグ41の外周面46を外側に凸の曲面形状とする。
【0054】
図10は、サイリスタバルブ1のうち冷却配管15、接続部材10および接続配管40Aを抽出して示す斜視図である。
【0055】
図10を参照して、接続部材10の接続部11,12には、ソケット11P,12Pがそれぞれ設けられている。ソケット11P,12Pは、接続配管40のプラグ41,42と結合可能に構成される。ソケット12Pおよびプラグ41はカプラCP1を構成する。ソケット11Pおよびプラグ42はカプラCP2を構成する。カプラCP1は「第1のカプラ」の一実施例に対応し、カプラCP2は「第2のカプラ」の一実施例に対応する。
【0056】
第1ステージ110および第2ステージ120の間に接続配管40Aを配設する場合には、接続配管40のプラグ41を第2ステージ120の接続部材10のソケット12Pに結合するとともに、接続配管40のプラグ42を第1ステージ110の接続部材10のソケット11Pに結合する。図示は省略するが、第1ステージ110および第2ステージ120の間に接続配管40Bを配設する場合には、接続配管40のプラグ41を第2ステージ120の接続部材20の接続部21に設けられたソケット21Pに結合するとともに、接続配管40のプラグ42を第1ステージ110の接続部材20の接続部22に設けられたソケット22Pに結合する。
【0057】
例えば、第1ステージ110上に第2ステージ120を積み上げる工程を実施するときには、第2ステージ120を積み上げるための準備作業として、第2ステージ120の接続部材10のソケット12Pおよび接続部材20のソケット22Pの各々に対して、接続配管40のプラグ41を結合する。次に、接続配管40が接続された第2ステージ120を、第1ステージ110上に積み上げる。次に、第2ステージ120を積み上げた状態で、第1ステージ110の接続部材10のソケット11Pおよび接続部材20のソケット21Pの各々に対して接続配管40のプラグ42を結合する。
【0058】
特に、カプラCP1,CP2にワンタッチカプラを適用した場合には、作業者は、接続配管40A,40Bを容易に配設することができる。その結果、ステージを積み上げる工程に並行して、接続配管40A,40Bを配設する工程を実施することが可能となる。これによると、サイリスタバルブ1を構成するステージが増えることによる作業工数の増加を抑制することができる。
【0059】
ここで、図8で説明したように、本実施の形態に係る接続配管40においては、絶縁配管43に湾曲部430が形成されている。これによると、接続配管40A,40Bを配設した状態において、隣接するステージ間の沿面距離を増加させることができる。
【0060】
さらに、絶縁配管43に湾曲部430を設けたことにより、絶縁配管43に撓みを持たせることができる。図10の例では、接続配管40のプラグ41と接続部材10のソケット12Pとを結合するときには、ソケット12Pの内周面とプラグ41の外周面との間をシールするために、ソケット12Pに対して水平方向(Z方向に相当)にプラグ41を挿入する必要がある。同様に、接続配管40のプラグ42と接続部材10のソケット11Pとを結合するときには、ソケット11Pに対して水平方向(Z方向に相当)にプラグ42を挿入する必要がある。
【0061】
本実施の形態では、絶縁配管43に撓みを持たせているため、第1ステージ110の接続部材10のソケット11Pと、第2ステージ120の接続部材10のソケット12Pとの間に組立誤差に基づく位置ずれが生じていても、作業者は、絶縁配管43を変形させることによって、ソケット11P,12Pに対してプラグ41,42をそれぞれ、水平方向に挿入することができる。
【0062】
さらに、本実施の形態においては、各ステージの接続部材10においても、隣接するステージ間におけるソケット11P,12Pの位置ずれを許容するように、冷却配管15に曲げ部16を形成する。具体的には、冷却配管15は、Y方向に延びる直線部17と、直線部17に対して折り曲げられた曲げ部16とを有する。曲げ部16は、冷却配管15の開口端と、支持部材50と接触する支持部分との間に位置する。図10の例では、曲げ部16は、直線部17の延びる方向(Y方向)と交差する方向(X方向)に折り曲げられている。
【0063】
このような構成とすることにより、曲げ部16を介して接続部材10を直線部17に対して変位させることができる。例えば、図10中に矢印A1に示すように、接続部材10を水平方向(X方向)に変位させることができる。また、図10中に矢印A2に示すように、接続部材10を垂直方向(Z方向)に変位させることができる。なお、各方向における接続部材10の変位量は、冷却配管15の剛性、曲げ部16の曲率半径、接続部材10から曲げ部16までの距離などに依存する。
【0064】
これによると、接続配管40のプラグ41,42を接続部材10のソケット11P,12Pにそれぞれ結合するときには、作業者は、ソケット11P,12Pの位置および傾きなどを調整することができる。したがって、第1ステージ110の接続部材10のソケット11Pと、第2ステージ120の接続部材10のソケット12Pとの間に組立誤差に基づく位置ずれが生じていても、接続配管40のプラグ41,42を、ソケット11P,12Pに対して水平方向に挿入することができる。この結果、作業工数を増やすことなく、接続配管40と接続部材10とを確実に結合させることができる。
【0065】
なお、図示は省略するが、冷却配管25においても、冷却配管15と同様に、折り曲げ部が形成されている。したがって、接続配管40と接続部材20とを確実に結合させることができる。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 サイリスタバルブ、2 サイリスタモジュール、3 ゲートドライバ、4 制御盤、5 電力変換装置、6 導入管、7 導出管、8 冷却装置、10,20 接続部材、11,12,21,22 接続部、11P,12P ソケット、13,23 管状部、16 曲げ部、17 直線部、40,40A,40B,400 接続配管、41,42 プラグ、43,405 絶縁配管、44 連結部分、46 外周面、50 支持部材、100,112,122 絶縁架台、110 第1ステージ、120 第2ステージ、401,402 フランジ、403,404 継手、430 湾曲部、CP1,CP2 カプラ、HS ヒートシンク、S1〜SN スナバ回路、TH1〜THN サイリスタ。
【要約】
電力変換装置は、第1のモジュールを搭載する第1ステージ(110)と、第1ステージ(110)上に積層され、第2のモジュールを搭載する第2ステージ(120)と、第1および第2のモジュールに冷媒を循環させるための冷媒循環回路とを備える。冷媒循環回路は、第1ステージ(110)に配設される第1の冷却配管(15)と、第2ステージ(120)に配設される第2の冷却配管(15)と、第1の冷却配管(15)の開口端に設けられた第1の接続部材(10)と、第2の冷却配管(15)の開口端に設けられた第2の接続部材(10)と、第1の接続部材(10)と第2の接続部材(10)とを接続するための接続配管(40)と、接続配管(40)の第1の端部を第1の接続部材(10)に結合する第1のカプラ(CP1)と、接続配管(40)の第2の端部を第2の接続部材(10)に結合する第2のカプラ(CP2)とを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10