特許第6898537号(P6898537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6898537B4フラッシュメモリのプログラミング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6898537
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】B4フラッシュメモリのプログラミング方法
(51)【国際特許分類】
   G11C 16/10 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   G11C16/10 140
   G11C16/10 143
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2021-16818(P2021-16818)
(22)【出願日】2021年2月4日
【審査請求日】2021年2月18日
(31)【優先権主張番号】202011269500.7
(32)【優先日】2020年11月13日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520377428
【氏名又は名称】中天弘宇集成電路有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】聶 虹
(72)【発明者】
【氏名】陳 精緯
【審査官】 後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−525932(JP,A)
【文献】 特開2018−190477(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/142548(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0124849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
P型チャネルフラッシュメモリデバイスを提供し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのソースをフローティングとするステップS1と、
前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート、ドレイン及び基板にそれぞれ電圧を印加して電子正孔対を発生させ、正孔が基板に注入されて電子がドレインに蓄積され一次電子を形成するステップS2と、
前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのドレイン及び基板にそれぞれ電圧を印加してドレインと基板との間に電界を形成し、予め定められた時間内に、正孔は電界の作用下で下方に加速度運動し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの基板に衝突することで二次電子を発生させるステップS3と、
前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート及び基板にそれぞれ電圧を印加し、前記二次電子が垂直方向の電界の作用下で三次電子を形成し、当該三次電子がステップS2において形成された一次電子と共に前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの浮遊ゲートに注入されることで、プログラミング操作が完了するステップS4と
を少なくとも含むことを特徴とするB4フラッシュメモリのプログラミング方法。
【請求項2】
ステップS2において、ゲート及び基板に印加する電圧は同じであることを特徴とする請求項1に記載のB4フラッシュメモリのプログラミング方法。
【請求項3】
ステップS2において、ゲート及び基板に印加する電圧とドレインに印加する電圧の差は10V以上であることを特徴とする請求項2に記載のB4フラッシュメモリのプログラミング方法。
【請求項4】
ステップS3において、基板に印加する電圧はドレインに印加する電圧よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のB4フラッシュメモリのプログラミング方法。
【請求項5】
ステップS3において、基板及びドレインに印加する電圧の差は4V以上であることを特徴とする請求項4に記載のB4フラッシュメモリのプログラミング方法。
【請求項6】
前記予め定められた時間は10〜100nsであることを特徴とする請求項1に記載のB4フラッシュメモリのプログラミング方法。
【請求項7】
ステップS4において、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの基板に印加する電圧はゲートに印加する電圧よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のB4フラッシュメモリのプログラミング方法。
【請求項8】
ステップS1に先立ち、更に、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスについて事前消去を実施することで、前記浮遊ゲートの残留電荷を除去することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のB4フラッシュメモリのプログラミング方法。
【請求項9】
前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート及び基板にそれぞれ電圧を印加し、基板に印加する電圧はゲートに印加する電圧よりも大きいことを特徴とする請求項8に記載のB4フラッシュメモリのプログラミング方法。
【請求項10】
ゲート及び基板に印加する電圧の差は10V以上であることを特徴とする請求項9に記載のB4フラッシュメモリのプログラミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメモリ分野に関し、特に、B4フラッシュメモリのプログラミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、フラッシュメモリ(Flash memory)は各種記憶媒体(例えば、ICカードやメモリカード等)に幅広く応用されており、非常に重要な半導体デバイスとなっている。回路配列方式によって、NAND型フラッシュメモリとNOR型フラッシュメモリとに分けられる。NOR型フラッシュメモリはアクセス速度が速いため、ブルートゥースイヤホンやマイクロコントローラ等の方面においても幅広く応用されている。現在、大規模に商業化されたNOR Flashは代表的なETOX(EEPROM with Tunnel OXide)構造を用いており、ホットキャリア注入(Hot Carrier Injection,HCI)方式に基づいている。
【0003】
ホットキャリアを発生させるためには、一般的に、ゲートとドレインに高電圧を印加する必要がある。ホットキャリア注入自体の物理的特性により、消費電力は大きく、キャリアの注入効率は低い。現在の市場における低消費電力へのニーズに大きく反しているため、欠点がより顕在化しつつある。一方、キャリアの注入効率を高めるために、SST(シリコンストレージテクノロジー)から、ソースサイドチャネルホットエレクトロン注入方式(Source−side Channel Hot Electron,SSCHE)、及びFN(Fowler−Nordheim)トンネリングを用いてプログラミングを実施する2Tフラッシュメモリユニットが提供されている。しかし、全てのプロセス技術においてN型チャネルのフラッシュメモリデバイスが採用されている。
【0004】
P型チャネルフラッシュメモリはHsuなどによって初めて提供された。P型チャネルフラッシュメモリは従来のN型チャネルフラッシュメモリと異なり、従来のN型チャネルフラッシュメモリは電流飽和領域で動作するが、P型チャネルフラッシュメモリは逆バイアス領域で動作するため、消費電力が大幅に下がる。P型チャネルフラッシュメモリデバイスはバンド間トンネリング(Band−to−Band)方式を用いてプログラミングするため、従来のN型チャネルフラッシュメモリと比較してプログラミングの注入効率が高い、プログラミング速度が速い等の利点がある。
【0005】
P型チャネルフラッシュメモリデバイスをプログラミングするとき、高電圧を印加して電子をトンネルさせる必要があるため、水平方向にパンチスルー(Punch−Through)効果が発生する。この欠点を克服するために、Shukuriらは2006年にPチャネルフラッシュメモリの新たなプログラミング方法を発明した。それが、逆バイアスによるバンド間トンネリング誘起ホットキャリア注入(Back−Bias−assisted Band−to−Band tunneling−induced hot−electron injection,B4−Flashと略称する)である。
【0006】
現在商業化されているB4 Flashにおけるプログラミング操作の電圧を示す図によると、ゲート、ドレイン、ソース及び基板のそれぞれに同時に電圧を印加し、電子をトンネルさせる。更に、ゲートと基板との間の電圧差が、電子が運動エネルギーを得てトンネル酸化膜のポテンシャル障壁を乗り越えることを容易にし、電子がドレインから浮遊ゲートに注入されることでプログラミングが完了する。
【0007】
B4 Flashは65ナノメートル以上のプロセスノードにおいて、大規模な商業化が可能であると証明されている。しかし、フラッシュメモリのチャネル長が微小化するにつれて、当該方法ではパンチスルー効果の回避が難しくなっており、B4 Flashが65ナノメートル以下のプロセスノードにおいて動作を継続できることを保証する新たなプログラミング方法が必要とされている。
【0008】
そのため、如何にしてP型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート長を更に微小化できる新たなプログラミング方法を提供するかは、当業者にとって早急に解決を要する課題の一つとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術の欠点に鑑みて、本発明の目的は、従来技術においてP型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート長を更に微小化することができないという課題を解決するためのB4フラッシュメモリのプログラミング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的及びその他関連の目的を実現するために、本発明は、B4フラッシュメモリのプログラミング方法を提供する。前記B4フラッシュメモリのプログラミング方法は、P型チャネルフラッシュメモリデバイスを提供し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのソースをフローティングとするステップS1と、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート、ドレイン及び基板にそれぞれ電圧を印加して電子正孔対を発生させ、正孔が基板に注入されて電子がドレインに蓄積され一次電子を形成するステップS2と、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのドレイン及び基板にそれぞれ電圧を印加してドレインと基板との間に電界を形成し、予め定められた時間内に、正孔は電界の作用下で下方に加速度運動し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの基板に衝突することで二次電子を発生させるステップS3と、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート及び基板にそれぞれ電圧を印加し、前記二次電子が垂直方向の電界の作用下で三次電子を形成し、当該三次電子がステップS2において形成された一次電子と共に前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの浮遊ゲートに注入されることで、プログラミング操作が完了するステップS4とを少なくとも含む。
【0011】
選択的に、ステップS2において、ゲート及び基板に印加する電圧は同じである。
【0012】
より選択的に、ゲート及び基板に印加する電圧とドレインに印加する電圧の差は10V以上である。
【0013】
選択的に、ステップS3において、基板に印加する電圧はドレインに印加する電圧よりも小さい。
【0014】
より選択的に、ステップS3において、基板及びドレインに印加する電圧の差は4V以上である。
【0015】
選択的に、前記予め定められた時間は10〜100nsである。
【0016】
選択的に、ステップS4において、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの基板に印加する電圧はゲートに印加する電圧よりも小さい。
【0017】
より選択的に、ステップS1に先立ち、更に、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスについて事前消去を実施することで、前記浮遊ゲートの残留電荷を除去する。
【0018】
より選択的に、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート及び基板にそれぞれ電圧を印加し、基板に印加する電圧はゲートに印加する電圧よりも大きい。
【0019】
より選択的に、ゲート及び基板に印加する電圧の差は10V以上である。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明におけるB4フラッシュメモリのプログラミング方法は、以下の有益な効果を有する。
【0021】
本発明におけるB4フラッシュメモリのプログラミング方法では、プログラミング電圧の操作方式を改良・改善することで、三次電子の励起とバンド間トンネリングの2つの方式を合わせてプログラミングを実施し、プログラミング効率を効果的に向上させることができる。更に、パンチスルー効果を回避可能となり、フラッシュメモリを更に微小化するための条件が構築される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明におけるB4フラッシュメモリのプログラミング方法のフローチャートである。
図2】本発明におけるP型チャネルフラッシュメモリデバイスの構造模式図である。
図3】本発明のB4フラッシュメモリのプログラミング方法におけるソースをフローティングとする操作を示す図である。
図4】本発明のB4フラッシュメモリのプログラミング方法における事前消去操作を示す図である。
図5】本発明のB4フラッシュメモリのプログラミング方法における一次電子を形成する操作を示す図である。
図6】本発明のB4フラッシュメモリのプログラミング方法における二次電子を形成する操作を示す図である。
図7】本発明のB4フラッシュメモリのプログラミング方法における三次電子を形成し、三次電子が一次電子と共に浮遊ゲートに注入される操作を示す図である。
図8】従来のB4 Flashのプログラミング方法の原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、特定の具体的な実施例を通じて本発明の実施手段を説明するが、当業者であれば本明細書で開示された内容によって本発明の他の利点と効果を容易に理解することができる。また、本発明は、その他の異なる具体的実施形態による実施又は応用も可能である。本明細書における各詳細については、異なる視点及び応用に基づき、本発明の精神を逸脱しないことを前提に各種の補足又は変更を行ってもよい。
【0024】
図1図8を参照されたい。説明すべき点として、本実施例で提供する図面は概略的に本発明の基本思想を説明するためのものにすぎない。図面には本発明に関連するアセンブリのみを示しているが、実際に実施する際のアセンブリの数、形状及びサイズに基づき記載しているわけではない。実際に実施する際の各アセンブリの形態、数量及び比率は任意に変更してもよく、且つ、アセンブリのレイアウトや形態がより複雑になることもある。
【0025】
図1に示すように、本発明はB4フラッシュメモリのプログラミング方法を提供する。前記B4フラッシュメモリのプログラミング方法は、以下を含む。
【0026】
ステップS1において、P型チャネルフラッシュメモリデバイスを提供し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのソースをフローティングとする。
【0027】
具体的には、まず、P型チャネルフラッシュメモリデバイスを提供する。一例として、図2に示すように、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスは、基板領域1と、前記基板領域1内に形成されるソース領域2及びドレイン領域3と、前記基板領域1上に順に形成されるトンネル酸化膜4、浮遊ゲート5、誘電酸化膜6及び制御ゲート7とを含む。前記基板領域1はN型基板であり、前記ソース領域2及び前記ドレイン領域3はP型ドーピング領域である。
【0028】
具体的には、図3に示すように、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのソースSourceにフローティング処理を施す(このとき、ソースSourceの電圧VSをフローティング(Floating)とみなす)。プログラミングの全ての過程においてソースSourceに電圧を印加しないため、電界は発生せず、パンチスルー効果の発生を回避できる。これにより、P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート長を65nmよりも小さくして、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのサイズを更に微小化することができる。
【0029】
本発明の別の実現方式として、ステップS1を実行する前に、更に、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスについて事前消去を実施することで、前記浮遊ゲート5の残留電荷を除去する。プロセスの製造工程又は環境内の静電気要素等の原因によって、前記浮遊ゲート5には電荷が蓄積される。そのため、ステップS1を実行する前に事前消去を実施することで、その後の操作に対する残留電荷の影響を除去しておけばよい。具体的には、図4に示すように、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲートGate及び基板Bulkにそれぞれ電圧を印加する。基板Bulkに印加する電圧VBはゲートGateに印加する電圧VGよりも大きい。一例として、ゲートGate及び基板Bulkに印加する電圧の差は10V以上とする。選択的に、基板Bulkに印加する電圧VBを15Vとし、ゲートGateに印加する電圧VGを0Vとする。実際に使用する際には、必要に応じてVB及びVGの電圧値及びこれらの差圧を設定すればよいが(VB=10V,VG=−5V、又は、VB=8V,VG=−1Vの場合を含むがこれらに限らない)、本実施例に限らず、その後の操作に支障をきたさないよう、前記浮遊ゲート5の残留電荷を除去できればよい。
【0030】
説明すべき点として、前記浮遊ゲート5の残留電荷がその後の操作に支障をきたさないことを保証可能な場合には、本実施例に限らず、事前消去ステップを省略してもよい。また、本実施例に限らず、事前消去を実現できる任意の方法であれば、いずれも本発明に適用される。
【0031】
ステップS2において、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲートGate、ドレインDrain及び基板Bulkにそれぞれ電圧を印加して電子正孔対を発生させる。正孔が基板Bulkに注入されて電子がドレインDrainに蓄積され一次電子を形成する。
【0032】
具体的には、図5に示すように、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲートGateに電圧VGを印加し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのドレインDrainに電圧VDを印加し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの基板Bulkに電圧VBを印加する。ゲートGate及び基板Bulkに印加する電圧は同じとする。ドレインDrainに印加する電圧とゲートGate及び基板Bulkに印加する電圧との間には差圧が存在する。一例として、ゲートGate及び基板Bulkに印加する電圧は、ドレインDrainに印加する電圧よりも大きい(ゲートGate及び基板Bulkに印加する電圧は、ドレインDrainに印加する電圧より小さくてもよい)。ゲートGateとドレインDrainの電圧の作用下でバンド間トンネリングが起こり、正孔が基板領域1に注入される。ゲートGateと基板Bulkとの間には電圧の差がないため、電子が十分な運動エネルギーを得てトンネル酸化膜4のポテンシャル障壁を乗り越えて浮遊ゲート5に注入されることはできない。そのため、電子はドレイン領域3に蓄積され(動的平衡)、一次電子を形成する。ゲートGate及び基板Bulkに印加する電圧とドレインDrainに印加する電圧との差は、バンド間トンネリングが起こり、電子正孔対を発生させられる差であればよい。一例として、ゲートGate及び基板Bulkに印加する電圧とドレインDrainに印加する電圧の差は10V以上とする(10.5V、12V、15Vを含むがこれらに限らない)。選択的に、ゲートGateに印加する電圧VG及び基板Bulkに印加する電圧VBを6Vとし、ドレインDrainに印加する電圧VDを−4.5Vとする。実際に使用する際には、必要に応じてVG、VB、VDの電圧値、及びVG、VBとVDとの電圧差を設定すればよいが、本実施例に限らず、電子正孔対を取得し、正孔を基板に進入させ、電子をドレイン近傍に蓄積させることができればよい。
【0033】
ステップS3において、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのドレインDrain及び基板Bulkにそれぞれ電圧を印加し、ドレインDrainと基板Bulkとの間に電界を形成する。予め定められた時間内に、正孔は電界の作用下で下方に加速度運動し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの基板Bulkに衝突することで二次電子を発生させる。
【0034】
具体的には、図6に示すように、ステップS2を10ns程度(5〜20nsを含むがこれらに限らない)実行した後、ゲートGateに印加する電圧を除去し、基板Bulk及びドレインDrainにそれぞれ電圧を印加する。基板Bulkに印加する電圧とドレインDrainに印加する電圧の差は4V以上とする(4.3V、5V、6V、7V、8Vを含むがこれらに限らない)。一例として、基板Bulkに印加する電圧VBを−4.5Vとし、ドレインDrainに印加する電圧VDを6Vとする。ドレインDrainと基板Bulkとの間に電界が形成され、正孔は電界の作用下で下方に加速度運動する。
【0035】
説明すべき点として、ステップS2においてゲートGate及び基板Bulkに印加する電圧がドレインDrainに印加する電圧よりも小さく、且つ、ドレインDrainと基板Bulkとの間に形成される電界によって正孔が加速度運動して基板に衝突するとき、ステップS3においてゲートGateに印加する電圧を除去し、ドレインDrain及び基板Bulkの電圧を維持し、かつドレインDrain及び基板Bulkの電圧値を変えないことで操作ステップを簡素化できる。
【0036】
具体的には、一例として、前記予め定められた時間は10〜100nsである。実際に使用する際には、電界強度等の要素に応じて前記予め定められた時間を調整すればよいが、本実施例に限らず、本発明で必要な二次電子を発生させられればよい。
【0037】
具体的には、前記予め定められた時間内に、加速運動する重い正孔が基板Bulkに衝突して軽い電子、即ち二次電子を発生させる。
【0038】
ステップS4において、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲートGate及び基板Bulkにそれぞれ電圧を印加する。前記二次電子が垂直方向の電界の作用下で三次電子を形成し、当該三次電子がステップS2において形成された一次電子と共に前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの浮遊ゲート5に注入されることで、プログラミング操作が完了する。
【0039】
具体的には、図7に示すように、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲートGateに電圧VGを印加し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの基板Bulkに電圧VBを印加する。前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲートGateと基板Bulkとの間には差圧が存在し、垂直方向の電界が形成される。一例として、ゲートGate及び基板Bulkに印加する電圧の差は7V以上とする。選択的に、基板Bulkに印加する電圧VBを0Vとし、ゲートGateに印加する電圧VGを8Vとする。実際に使用する際には、実際の必要に応じてVB及びVGの電圧値及びこれらの差圧を設定すればよいが(VB=0V,VG=6Vの場合を含むがこれに限らない)、本実施例に限らず、電子が十分な運動エネルギーを得てSi−Oxideポテンシャル障壁を乗り越え、前記トンネル酸化膜4を通過して前記浮遊ゲート5に進入できるよう保証可能であればよい。
【0040】
具体的には、前記二次電子が垂直方向の電界の作用下で三次電子を形成し、更に、ステップS2において形成された一次電子が垂直方向の電界の作用下で前記三次電子と共に前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの浮遊ゲート5に注入される。これにより、三次電子の励起とバンド間トンネリングとがプログラミング過程に共に機能し、プログラミング効率を大幅に向上させる。
【0041】
図8に示すように、従来のB4 Flashプログラミング方法は、ゲートGate、ドレインDrain、ソースSource、基板Bulkのそれぞれに同時に電圧を印加し、電子をトンネルさせる。更に、ゲートGateと基板Bulkとの間の電圧差が、電子が運動エネルギーを得てトンネル酸化膜4のポテンシャル障壁を乗り越えることを容易にし、電子がドレインDrainから浮遊ゲート5に注入されることでプログラミングが完了する。従来のB4 Flashプログラミング方法にはバンド間トンネリング工程しか存在しないため、本発明と比較すると、プログラミング効率が低い、フラッシュメモリデバイスの消費電力が大きい等の問題が存在する。
【0042】
本発明におけるB4フラッシュメモリのプログラミング方法は、三次電子衝突の原理に基づくとともに、横方向及び縦方向の電界を形成し、三次電子の励起とバンド間トンネリングの2つの方式を合わせてプログラミングを実施する。これにより、プログラミング効率を大幅に向上させることが可能となり、消費電力が低下する。更に、プログラミング過程においてソースは常にフローティング状態であるため、パンチスルー効果を回避可能であり、フラッシュメモリを更に微小化するための条件が構築される。
【0043】
以上述べたように、本発明は、B4フラッシュメモリのプログラミング方法を提供する。当該方法は、P型チャネルフラッシュメモリデバイスを提供し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのソースをフローティングとし、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート、ドレイン及び基板にそれぞれ電圧を印加して電子正孔対を発生させ、正孔を基板に注入させ、電子をドレインに蓄積させて一次電子を形成し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのドレイン及び基板にそれぞれ電圧を印加してドレインと基板との間に電界を形成し、予め定められた時間内に、正孔は電界の作用下で下方に加速度運動し、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの基板に衝突することで二次電子を発生させ、前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスのゲート及び基板にそれぞれ電圧を印加し、基板に印加する電圧をゲートに印加する電圧よりも小さくし、前記二次電子が垂直方向の電界の作用下で三次電子を形成し、当該三次電子が一次電子と共に前記P型チャネルフラッシュメモリデバイスの浮遊ゲートに注入されることで、プログラミング操作が完了する。本発明におけるB4フラッシュメモリのプログラミング方法では、プログラミング電圧の操作方式を改良・改善することで、三次電子の励起とバンド間トンネリングの2つの方式を合わせてプログラミングを実施し、プログラミング効率を効果的に向上させることができる。更に、パンチスルー効果を回避可能となり、フラッシュメモリを更に微小化するための条件が構築される。したがって、本発明は従来技術における種々の欠点を効果的に克服し、高度な産業利用価値を有する。
【0044】
上述の実施例は本発明の原理と効果を例示的に説明するにすぎず、本発明を制限するものではない。本技術を熟知する者であれば、本発明の精神及び範疇を逸脱しないことを前提に、上述の実施例を補足又は変更することが可能である。したがって、当業者が本発明で開示する精神と技術思想を逸脱することなく完了するあらゆる等価の補足又は変更は、依然として本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 基板領域
2 ソース領域
3 ドレイン領域
4 トンネル酸化膜
5 浮遊ゲート
6 誘電酸化膜
7 制御ゲート
S1〜S4 ステップ
【要約】      (修正有)
【課題】プログラミング電圧の操作方式を改良し、、プログラミング効率を効果的に向上させ、パンチスルー効果を回避し、フラッシュメモリを更に微小化するB4フラッシュメモリのプログラミング方法を提供する。
【解決手段】B4フラッシュメモリのプログラミング方法であって、P型チャネルフラッシュメモリデバイスのソースをフローティングとし、ゲート、ドレイン及び基板にそれぞれ電圧を印加し、正孔が基板に注入され電子がドレインに蓄積され一次電子を形成し、ドレイン及び基板にそれぞれ電圧を印加しドレインと基板間に電界を形成し、正孔は電界の作用下で下方に加速度運動し、基板に衝突することで二次電子を発生させ、ゲート及び基板にそれぞれ電圧を印加し、二次電子が垂直方向の電界の作用下で三次電子を形成し、当該三次電子が一次電子と共に浮遊ゲートに注入されることで、プログラミング操作が完了する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8