特許第6898549号(P6898549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898549
(24)【登録日】2021年6月15日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/04 20060101AFI20210628BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20210628BHJP
   B29C 51/26 20060101ALI20210628BHJP
   B29C 51/36 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   B29C51/04
   B29C51/10
   B29C51/26
   B29C51/36
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-36998(P2017-36998)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-140575(P2018-140575A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】玉田 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 優
(72)【発明者】
【氏名】南川 佑太
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−135580(JP,A)
【文献】 特開2012−192521(JP,A)
【文献】 特開2004−261961(JP,A)
【文献】 特開2004−181630(JP,A)
【文献】 特開2015−104886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00−51/46
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂下工程と、張力印加工程と、賦形工程を備え、
前記垂下工程では、溶融状態の発泡樹脂を樹脂シート形成装置のスリットから押し出すことで、金型の前面側に発泡樹脂シートを垂下させ、
前記張力印加工程では、前記発泡樹脂シートに張力を加え、
前記張力は、エキスパンダによって加えられ、
前記エキスパンダは、一対の把持ユニットを備え、
前記発泡樹脂シートの幅方向の両端が前記一対の把持ユニットによって保持され、
前記一対の把持ユニットの間の距離が増大されることによって前記発泡樹脂シートに前記張力が加えられ、
前記張力は、前記発泡樹脂シートのうち前記金型の前面側に配置される部分の前記幅方向に加えられ、
前記幅方向は、重力方向及び前記金型の開閉方向に直交する方向であり、
前記賦形工程では、前記発泡樹脂シートに前記張力を加えた状態で前記発泡樹脂シートを前記金型に設けられたキャビティの内面に沿った形状に賦形する、成形体の製造方法。
【請求項2】
前記賦形工程の前に吸着工程を備え、
前記吸着工程では、前記金型の前面側に垂下された前記発泡樹脂シートを、前記金型の周面に沿って配置された外枠で吸着し、
前記賦形工程では、前記金型により前記発泡樹脂シートの減圧吸引を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸着工程は、前記張力印加工程の後に行われる、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記外枠は、枠上部及び枠下部を備える、請求項又は請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記枠上部及び前記枠下部のそれぞれは、前記金型の上下方向における上端及び下端から、前記金型の上下方向の長さの50%以内に収まるように配置される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記枠上部及び前記枠下部のそれぞれは、平板形状である、請求項又は請求項に記載の方法。
【請求項7】
垂下工程と、張力印加工程と、吸着工程と、賦形工程を備え、
前記垂下工程では、金型の前面側に樹脂シートを垂下させ、
前記張力印加工程では、前記樹脂シートに張力を加え、
前記吸着工程は、前記賦形工程の前に実施され、前記吸着工程では、前記金型の前面側に垂下された前記樹脂シートを、前記金型の周面に沿って配置された外枠で吸着し、
前記外枠は、枠上部及び枠下部を備え、
前記賦形工程では、前記樹脂シートに前記張力を加えた状態で前記樹脂シートを前記金型に設けられたキャビティの内面に沿った形状に賦形し、且つ、前記金型により前記樹脂シートの減圧吸引を行う、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、Tダイから押し出した溶融状態の熱可塑性樹脂シートを金型内に配置し、樹脂シートを金型のキャビティに押圧して樹脂成形品を成形する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−201661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、金型の前面に垂下する樹脂シートが波打った形状になる場合がある。特に、樹脂シートが発泡樹脂シートである場合には、波打ちの程度が顕著である。この結果、樹脂シートが成形された成形体の品質が低下する恐れがある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂シートの波打ちを低減することが可能な成形体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、垂下工程と、張力印加工程と、賦形工程を備え、前記垂下工程では、金型の前面側に樹脂シートを垂下させ、前記張力印加工程では、前記樹脂シートに張力を加え、前記賦形工程では、前記樹脂シートに張力を加えた状態で前記樹脂シートを前記金型に設けられたキャビティの内面に沿った形状に賦形する、成形体の製造方法が提供される。
【0007】
本発明の製造方法では、樹脂シートに張力を加える張力印加工程を行うことによって、樹脂シートの波打ちを低減することができる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記張力は、前記樹脂シートの幅方向に加えられる。
好ましくは、前記張力は、エキスパンダによって加えられ、前記エキスパンダは、一対の把持ユニットを備え、前記樹脂シートの幅方向の両端が前記一対の把持ユニットによって保持され、前記一対の把持ユニットの間の距離が増大されることによって前記樹脂シートに前記張力が加えられる。
好ましくは、前記賦形工程の前に吸着工程を備え、前記吸着工程では、前記金型の前面側に垂下された樹脂シートを、前記金型の周面に沿って配置された外枠で吸着し、前記賦形工程では、前記金型により前記樹脂シートの減圧吸引を行う。
好ましくは、前記吸着工程は、前記張力印加工程の後に行われる。
好ましくは、前記外枠は、枠上部及び枠下部を備える。
好ましくは、前記枠上部及び前記枠下部のそれぞれは、前記金型の上下方向における上端及び下端から、前記金型の上下方向の長さの50%以内に収まるように配置される。
好ましくは、前記枠上部及び前記枠下部のそれぞれは、平板形状である。
好ましくは、前記樹脂シートは、発泡樹脂シートである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の成形体の製造方法で利用可能な成形機1の一例を示す。金型装置31は、図2中のX−X断端面図である。
図2図1中の金型装置31の斜視図である。
図3】外枠33が後退した状態での金型装置31の斜視図である。
図4】金型装置31及び外枠33の前面側に樹脂シート23を垂下させている状態を示す前面斜視図である。
図5】樹脂シート23の下端が枠下部33bよりも下側に到達し、樹脂シート23をエキスパンダ5で把持した状態を示す前面斜視図である。
図6図5の背面斜視図である。
図7】張力印加工程を表す前面斜視図である。
図8図7の背面斜視図である。
図9】外枠33に樹脂シート23を当接させた状態を示す前面斜視図である。
図10図9の背面斜視図である。
図11図9の状態から外枠33で樹脂シート23を吸着しつつ、外枠33を後退させ、樹脂シート23を金型32に当接させた状態を表す図である。
図12図11の背面斜視図である。
図13】エキスパンダ5を金型32の側面まで前進させた状態を表す前面斜視図である。
図14図13の背面斜視図である。
図15】金型32で樹脂シート23を減圧吸引して賦形した状態を示す前面斜視図である。
図16】型締め工程において、金型装置31及び押圧金型34により型締めされた状態を示す断面図である。
図17図17Aは成形体23mの前面斜視図である。図17Bは成形体23mの背面斜視図である。
図18】金型装置31の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.成形機1の構成
最初に、図1図3を用いて、本発明の一実施形態の成形体の製造方法の実施に利用可能な成形機1について説明する。成形機1は、樹脂シート形成装置2と、金型装置31を備える。樹脂シート形成装置2は、ホッパー12と、押出機13と、インジェクタ16と、アキュームレータ17と、Tダイ18を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とTダイ18は、連結管27を介して連結される。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0012】
<ホッパー12,押出機13>
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。スクリューの基端にはギア装置が設けられており、ギア装置によってスクリューが回転駆動される。シリンダ13a内に配置されるスクリューの数は、1本でもよく、2本以上であってもよい。
【0013】
<インジェクタ16>
シリンダ13aには、シリンダ13a内に発泡剤を注入するためのインジェクタ16が設けられる。原料樹脂11を発泡させない場合は、インジェクタ16は省略可能である。インジェクタ16から注入される発泡剤は、物理発泡剤、化学発泡剤、及びその混合物が挙げられるが、物理発泡剤が好ましい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。化学発泡剤は、インジェクタ16から注入する代わりに、ホッパー12から投入してもよい。
【0014】
<アキュームレータ17,Tダイ18>
発泡剤が添加されている又は添加されていない溶融樹脂11aは、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に溶融樹脂11aが貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に溶融樹脂11aが所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて溶融樹脂11aをTダイ18内に設けられたスリットから押し出して垂下させて溶融状態の樹脂シート23を形成する。
【0015】
<金型装置31>
図2及び図3に示すように金型装置31は、樹脂シート23を成形するための金型32と、金型32の周面32sに沿って移動可能に構成された外枠33を備える。外枠33は、シリンダ機構などによって移動可能に構成されている。
【0016】
金型32は、略直方体状であり、前面32fと、背面32rと、これらの間の周面32sを備える。前面32fは、樹脂シート23に対向する面であり、背面32rは、前面32fの反対側の面である。周面32sは、上面32st、底面32sb、右側面32sr、及び左側面32slを備える。上面32stと底面32sbが互いに対向し、右側面32srと左側面32slが互いに対向する。
【0017】
金型32は、キャビティ32aを有し、キャビティ32aを取り囲むようにピンチオフ部32bが設けられている。キャビティ32a内には、減圧吸引孔(図示せず)が設けられており、減圧吸引孔を通じて樹脂シート23を減圧吸引して金型32のキャビティ32aの内面に沿った形状に賦形することが可能になっている。減圧吸引孔は、極小の孔であり、一端が金型32内部を通ってキャビティ32aの内面にまで連通されてり、他端が減圧装置に接続されている。
【0018】
外枠33は、枠上部33t及び枠下部33bを備える。本実施形態では、枠上部33t及び枠下部33bのそれぞれは平板形状である。外枠33には、溝状の減圧吸引孔33sが設けられている。減圧吸引孔33sは、減圧装置に接続されており、減圧吸引により樹脂シート23を外枠33に吸着できるように構成されている。
【0019】
枠上部33t及び枠下部33bは、それぞれ、金型32の上側及び下側に配置され、独立して移動可能に構成されている。つまり、枠上部33t及び枠下部33bは、それぞれ、金型32の上面32st及び底面32sbに沿って配置されており、各面に沿って平行に移動可能に構成されている。
【0020】
そして、金型装置31は、図1に示すように、押圧金型34との間で樹脂シート23を挟んで押圧する。押圧金型34は、金型装置31のピンチオフ部32bと対応するピンチオフ部34bを有する。また、押圧金型34は、キャビティ32aと対応する押圧部34aを有する。キャビティ32aと押圧部34aにより形成される空間に、樹脂シート23が充填される。
【0021】
2.成形体の製造方法
ここで、図1図17を用いて、本発明の一実施形態の成形体の製造方法について説明する。本実施形態の方法は、垂下工程と、張力印加工程と、吸着工程と、賦形工程と、型締め工程を備える。以下、詳細に説明する。
【0022】
2−1. 垂下工程
垂下工程では、図1に示すように、金型32の前面側に樹脂シート23を垂下させる。このとき、外枠33は前進した状態となっている。ここで、樹脂シート23は、溶融状態の樹脂をTダイ18内に設けられたスリットから押し出して垂下させることによって形成されたものであり、図4図6に示すように、通常、波打った形状になっている。これを解消するため、図4に示すように、金型32及び外枠33の前面側にある樹脂シート23に張力を加えるためのエキスパンダ5が設けられている。エキスパンダ5は、一対の把持ユニット5aを備える。各把持ユニット5aは把持部5a1,5a2を備え、図5に示すように、把持部5a1,5a2の間に樹脂シート23を把持可能になっている。また、一対の把持ユニット5aは、その間の距離Lが可変になっている。一対の把持ユニット5aが樹脂シート23の幅方向の両端を把持した状態で距離Lを大きくすることによって樹脂シート23に幅方向の張力を加えることが可能になっている。また、エキスパンダ5は、金型32に対して、前後左右方向に相対移動が可能になっている。エキスパンダ5が金型32に向かって相対移動することによって樹脂シート23を金型32のピンチオフ部32b及び外枠33の前面に押し付けることが可能になっている。
【0023】
2−2. 張力印加工程
次に、張力印加工程では、樹脂シート23に張力を加える。具体的には、図5及び図6に示すように、樹脂シート23の下端23eが枠下部33bよりも下側に到達した後に、一対の把持ユニット5a間の距離Lを近づけ、把持部5a1,5a2により樹脂シート23を把持する。樹脂シート把持工程では、金型32及び外枠33の前面側にある樹脂シート23の幅方向の各端部を把持部5a1,5a2で挟むことによって樹脂シート23を把持する。そして、図7及び図8に示すように、一対の把持ユニット5aをそれぞれ左右方向に移動させつつ、エキスパンダ5を後方向に移動させることにより、樹脂シート23の波打ちを低減する。樹脂シート23が発泡樹脂シートである場合には、波打ちの程度が顕著であるので、樹脂シート23に幅方向の張力を加える技術的意義が顕著である。そして、図9及び図10に示されるように、エキスパンダ5を前進させ、樹脂シート23を外枠33の前面に当接させる。
【0024】
2−3. 吸着工程
吸着工程では、金型32の前面側に垂下された樹脂シート23を、金型32の周面に沿って配置された外枠33で吸着する。
【0025】
具体的には、外枠33を樹脂シート23に当接させた状態で外枠33の減圧吸引孔33sに繋がっている減圧装置を作動させることによって樹脂シート23を外枠33に吸着させる。本実施形態では、図11及び図12に示すように、外枠33で樹脂シート23を吸着した状態で、外枠33の前面が金型32の前面とツライチとなる位置まで外枠33を後退させる。外枠33を後退させつつ吸引することにより、樹脂シート23の上部及び下部を金型32の前面32fの上部及び下部に押し付けることができる。ここで、外枠33を後退させるタイミングは特に限定されず、樹脂シート23が外枠33の前面に当接した直後、又は樹脂シート23を外枠33の前面に当接してからわずかに送れて外枠33の後退を開始してもよい。
【0026】
その後、図13及び図14に示すように、エキスパンダ5が金型32の側面の略中央に位置するまで、エキスパンダ5を前進させる。これによって、金型32のキャビティ32aが樹脂シート23で塞がれ、キャビティ32aが密閉空間となる。ここで、本実施形態では、樹脂シート23が幅方向に拡張されることにより金型32及び外枠33側に引き寄せられるので、金型32の左右に外枠を設けたのと同等の効果が得られる。これにより、枠上部33t及び枠下部33bを移動させるときに左右の外枠との位置決めが不要になるので、外枠33と金型32の干渉を抑制することができる。
【0027】
2−4. 賦形工程
賦形工程では、樹脂シート23に張力を加えた状態で樹脂シート23を金型32に設けられたキャビティ32aの内面に沿った形状に賦形する。本実施形態では、金型32により樹脂シート23の減圧吸引を行う。ここで、賦形方法はこれに限定されず、ブロー成形により樹脂シート23を賦形することもできる。
【0028】
具体的には、図15及び図16に示すように、金型32により樹脂シート23の減圧吸引を行って樹脂シート23をキャビティ32aの内面に沿った形状に賦形する。
【0029】
2−5. 型締め工程
型締め工程では、図16に示すように、金型装置31及び押圧金型34の型締めを行う。これによって、金型32によって形成される、キャビティ32aの内面に沿った形状の中空の成形体23mが得られる。この後は、図17に示すように、金型32から成形体23mを取り出し、バリ23bを除去することによって、所望の成形体が得られる。
【0030】
3.変形例
上記実施形態では、枠上部33t及び枠下部33bは平板形状であったが、これらは、必ずしも平板形状でなくてもよい。例えば、図18の変形例では、枠上部33t及び枠下部33bはそれぞれ、その端部において、金型32の側面に沿って突出した突出部33te及び突出部33beが形成されている。また、枠上部33t及び枠下部33bのそれぞれは、金型32の上下方向における上端及び下端から、金型32の上下方向の長さHの50%以内に突出部33te及び突出部33beが収まるように配置されることが好ましい。さらに好ましくは、長さHの40%、さらに好ましくは、30%、さらに好ましくは、20%、さらに好ましくは、10%、さらに好ましくは、0%の範囲に突出部33te及び突出部33beが収まるように配置される。また、別の表現では、金型32の上下方向における上端及び下端の中点Mから、金型32の上下方向に対して長さHの0%以上の空間SPが設けられる。好ましくは、10%、さらに好ましくは、20%、さらに好ましくは、30%、さらに好ましくは、40%、さらに好ましくは、50%の空間SPが設けられる。ここで、これらの数値は単なる例示であり、各数字の間の値としてもよい。このような形状の場合でも、上記実施形態と同様の作用効果によって、外枠33と金型32の干渉を抑制することができる。
【0031】
4.その他
本実施形態は、以下の態様でも実施可能である。
・上記実施形態では、外枠33には、溝状の減圧吸引孔33sが設けられているが、減圧吸引孔33sの形状は限定されず、例えば、円形の減圧吸引孔33sが多数配置されているような構成であってもよい。
・賦形工程及び型締め工程は、同時に行ってもよく、賦形工程からわずかに遅れて型締め工程を開始してもよい。このとき、押圧金型34により、金型32と逆方向に樹脂シート23の減圧吸引を行ってもよい。
・上記実施形態では、一対の金型装置31及び押圧金型34を用いて中空の成形体23mを形成する方法を例に挙げて説明を行ったが、1つの金型装置31を用いて、1枚の樹脂シート23を賦形して、成形体を形成してもよい。この場合、賦形工程の後に型締め工程が不要である。
・一対の金型装置31を用いる場合には、成形体23mは中空であってもよく、成形体23m内に発泡体などを充填してもよい。
・樹脂シート23は、発泡樹脂シートであってもよい。
・外枠33を前進させた状態(図2参照)で樹脂シート23を外枠33の前面に当接させた後、金型32を前進させてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 :成形機
2 :樹脂シート形成装置
5 :エキスパンダ
5a :把持ユニット
5a1 :把持部
5a2 :把持部
11 :原料樹脂
11a :溶融樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a :シリンダ
16 :インジェクタ
17 :アキュームレータ
17a :シリンダ
17b :ピストン
18 :Tダイ
23 :樹脂シート
23b :バリ
23e :下端
23m :成形体
25 :連結管
27 :連結管
31 :金型装置
32 :金型
32a :キャビティ
32b :ピンチオフ部
32f :前面
32r :背面
32s :周面
32sb :底面
32sl :左側面
32sr :右側面
32st :上面
33 :外枠
33b :枠下部
33l :枠左部
33r :枠右部
33t :枠上部
33s :減圧吸引孔
33te :突出部
33be :突出部
34 :押圧金型
34a :押圧面
34b :ピンチオフ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18