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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898611
(24)【登録日】2021年6月15日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ヘッドレストガイド及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/80 20180101AFI20210628BHJP
【FI】
   B60N2/80
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-46943(P2017-46943)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-149898(P2018-149898A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000165413
【氏名又は名称】建設ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】泉田 真理
(72)【発明者】
【氏名】久保 尚己
(72)【発明者】
【氏名】中村 満
【審査官】 野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−275783(JP,A)
【文献】 特開2001−269242(JP,A)
【文献】 特開2014−008335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N2/00−2/90
A47C7/00−7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストから突出するピラーを保持するためのヘッドレストガイドにおいて、
前記ピラーが挿通される貫通孔が長さ方向に沿って形成された筒状部を備えており、
前記筒状部は、前記貫通孔の内周面に設けられて当該貫通孔に挿通された前記ピラーに当接する突起を有しており、
前記突起は、前記筒状部の長手方向に沿って延在し、その上下方向の長さが、左右又は前後方向の長さに比較して長く設定されており、
前記ヘッドレストガイドの前記筒状部の一部を保持するホルダーが設けられており、
前記突起の少なくとも一部は、前記筒状部のうち前記ホルダーによって保持されていない部位における前記貫通孔の内周面に設けられていることを特徴とするヘッドレストガイド。
【請求項2】
ヘッドレストから突出するピラーを保持するためのヘッドレストガイドにおいて、
前記ピラーが挿通される貫通孔が長さ方向に沿って形成された筒状部を備えており、
前記筒状部は、前記貫通孔の内周面に設けられて当該貫通孔に挿通された前記ピラーに当接する突起を有しており、
前記突起は、前記筒状部の長手方向に沿って延在し、その上下方向の長さが、左右又は前後方向の長さに比較して長く設定されており、
前記突起前記筒状部における薄肉の部分である上下方向の中央部には設けられておらず、当該中央部よりも厚肉部分である上方又は下方に設けられていることを特徴とするヘッドレストガイド。
【請求項3】
前記突起は、前記貫通孔の内周面から前後方向に沿って突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドレストガイド。
【請求項4】
前記筒状部は、前記貫通孔の内周面のうち前記突起と前後方向に対向する位置に設けられた第二突起を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のヘッドレストガイド。
【請求項5】
前記第二突起における上下方向の長さは、前記突起における上下方向の長さと比較して短く設定されていることを特徴とする請求項4に記載のヘッドレストガイド。
【請求項6】
前記第二突起における左右方向の長さは、前記突起における左右方向の長さと比較して短く設定されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のヘッドレストガイド。
【請求項7】
前記突起は、前記筒状部における上下方向の中央部よりも下方に設けられており、
前記筒状部は、前記貫通孔の内周面のうち前記突起から上下方向に離間し、かつ前記筒状部における上下方向の中央部よりも上方に設けられた上方突起を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のヘッドレストガイド。
【請求項8】
前記上方突起における上下方向の長さは、前記突起における上下方向の長さと比較して短く設定されていることを特徴とする請求項7に記載のヘッドレストガイド。
【請求項9】
前記上方突起は前記貫通孔の内周面に複数設けられており、
前記複数の上方突起は、前記突起を正面視する方向から前記筒状部を透視した場合において前記突起の左右に分かれて配置されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のヘッドレストガイド。
【請求項10】
乗員の臀部を支持するシートクッションと、
前記シートクッションに回動可能に取り付けられたシートバックと、
前記シートバックの上部に設けられたヘッドレストと、を備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のヘッドレストガイドを有する車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストガイド及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドレストから突出するピラーを、シートバックに設けられたヘッドレストガイドに挿通させることによって、ヘッドレストを車両用シートに取り付ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の技術においては、ヘッドレストガイドの筒状部に形成された開口部に対して押付ピースを挿入して筒状部の内部に突出させ、この押付ピースによってピラーを前方に押し付けることにより、ヘッドレストのガタつきを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5592071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来におけるヘッドレストのガタつきを抑制する構造は、ヘッドレストガイドの筒状部に開口部を形成し、さらに、この開口部に挿入される押付ピースを筒状部と一体成型したり、別途製造したりしなければならず、製造に係るコストや手間が余計にかかる場合があった。
そのため、ヘッドレストのガタつきを抑制する構造の簡素化が求められていたが、押付ピースによるガタつき抑制構造を単に省くだけではヘッドレストのガタつきを抑制することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来に比して構造を簡素化しても、ヘッドレストのガタつきを抑制することができるヘッドレストガイド及び車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ヘッドレストから突出するピラーを保持するためのヘッドレストガイドにおいて、
前記ピラーが挿通される貫通孔が長さ方向に沿って形成された筒状部を備えており、
前記筒状部は、前記貫通孔の内周面に設けられて当該貫通孔に挿通された前記ピラーに当接する突起を有しており、
前記突起は、前記筒状部の長手方向に沿って延在し、その上下方向の長さが、左右又は前後方向の長さに比較して長く設定されており、
前記ヘッドレストガイドの前記筒状部の一部を保持するホルダーが設けられており、
前記突起の少なくとも一部は、前記筒状部のうち前記ホルダーによって保持されていない部位における前記貫通孔の内周面に設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、ヘッドレストガイドにおいて、
ヘッドレストから突出するピラーを保持するためのヘッドレストガイドにおいて、
前記ピラーが挿通される貫通孔が長さ方向に沿って形成された筒状部を備えており、
前記筒状部は、前記貫通孔の内周面に設けられて当該貫通孔に挿通された前記ピラーに当接する突起を有しており、
前記突起は、前記筒状部の長手方向に沿って延在し、その上下方向の長さが、左右又は前後方向の長さに比較して長く設定されており、
前記突起前記筒状部における薄肉の部分である上下方向の中央部には設けられておらず、当該中央部よりも厚肉部分である上方又は下方に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のヘッドレストガイドにおいて、
前記突起は、前記貫通孔の内周面から前後方向に沿って突出していることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のヘッドレストガイドにおいて、
前記筒状部は、前記貫通孔の内周面のうち前記突起と前後方向に対向する位置に設けられた第二突起を有することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のヘッドレストガイドにおいて、
前記第二突起における上下方向の長さは、前記突起における上下方向の長さと比較して短く設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のヘッドレストガイドにおいて、
前記第二突起における左右方向の長さは、前記突起における左右方向の長さと比較して短く設定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のヘッドレストガイドにおいて、
前記突起は、前記筒状部における上下方向の中央部よりも下方に設けられており、
前記筒状部は、前記貫通孔の内周面のうち前記突起から上下方向に離間し、かつ前記筒状部における上下方向の中央部よりも上方に設けられた上方突起を有することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のヘッドレストガイドにおいて、
前記上方突起における上下方向の長さは、前記突起における上下方向の長さと比較して短く設定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載のヘッドレストガイドにおいて、
前記上方突起は前記貫通孔の内周面に複数設けられており、
前記複数の上方突起は、前記突起を正面視する方向から前記筒状部を透視した場合において前記突起の左右に分かれて配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載のヘッドレストガイドを有する車両用シートにおいて、
乗員の臀部を支持するシートクッションと、
前記シートクッションに回動可能に取り付けられたシートバックと、
前記シートバックの上部に設けられたヘッドレストと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、筒状部の長手方向に沿って延在する突起は、その上下方向の長さが、左右又は前後方向の長さに比較して長く設定されていることから、貫通孔に挿通されたピラーに対して当接する範囲が増えるため、従来に比して構造を簡素化しても、ヘッドレストのガタつきを抑制することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、ピラーを貫通孔に深く挿通させた場合に、ヘッドレストのガタつきを一層抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、ヘッドレストの前後方向におけるガタつきを抑制することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、前後方向に対向する突起と第二突起とによってヘッドレストの前後方向におけるガタつきを一層抑制することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、突起と比較してピラーに対する摺動抵抗を抑制することができるので、ヘッドレストのガタつきを抑制しつつ、ピラーを貫通孔に挿入しやすくすることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、突起と比較してピラーに対する摺動抵抗を抑制することができるので、ヘッドレストのガタつきを抑制しつつ、ピラーを貫通孔に挿入しやすくすることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、突起と上方突起とが上下に離間した位置でピラーに当接することとなり、ヘッドレストのガタつきを一層抑制することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、上方突起がピラーに当接する範囲が狭くなり、突起と比較してピラーに対する摺動抵抗を抑制できるので、ピラーを貫通孔に挿入しやすくすることができる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、上下方向と左右方向に離間する突起と複数の上方突起とがピラーに当接することとなるので、ヘッドレストのガタつきを一層抑制することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、シートバックを構成するシートフレームの上部に設けられたホルダーによって筒状部の一部を保持することができるので、筒状部の貫通孔にピラーが挿通されたヘッドレストを、シートアレンジの動きに合わせて追従させながら、このヘッドレストのガタつきを抑制することができる。
また、突起の少なくとも一部は、筒状部のうちホルダーによって保持されていない部位における貫通孔の内周面に設けられているので、ヘッドレストガイドが撓みやすくなり、ヘッドレストの操作荷重低減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】車両用シートを示す斜視図である。
図2】ヘッドレストを支持するための構造を示す斜視図である。
図3】車両用シートの上端部を示す断面図である。
図4】ヘッドレストを支持するための構造の要部を示す分解斜視図である。
図5】ヘッドレストを支持するための構造の要部を示す斜視図である。
図6】ヘッドレストガイドを示す側方から見た場合の断面図である。
図7】ヘッドレストガイドを示す後方から見た場合の断面図である。
図8】ヘッドレストガイドを示す前方から見た場合の断面図である。
図9】上方突起の位置を示す断面図である。
図10】ピラーと複数の突起との接触状態を説明する断面図である。
図11】他のピラーと複数の突起との接触状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0028】
図1において符号1は、車両用シートを示す。この車両用シート1は、乗員の臀部を支持するシートクッション2と、シートクッション2に回動可能に取り付けられたシートバック3と、シートバック3の上部に設けられたヘッドレスト4と、を備える。
【0029】
シートクッション2は、図示しないフレームをクッションで覆ったものであって、乗員の臀部及び大腿を受けて支持するものである。
また、このシートクッション2は、前後位置調整機構及び高さ調整機構を介して車両のフロアに連結されており、前後位置が前後位置調整機構によって調整され、高さが高さ調整機構によって調整される。なお、このような前後位置調整機構や高さ調整機構としては、従来から公知のものを用いることができる。
【0030】
シートバック3は、リクライニング機構を介してシートクッション2の後端部に連結された背もたれであり、図2図3に示すように、シートフレーム31と、シートフレーム31を覆ったクッション32とを備える。
リクライニング機構はシートクッション2に対してシートバック3の角度を調整するものであり、リクライニング機構によってシートバック3が後ろに倒れたり、前に立ち上がったり、シートバック3をロックしてその角度を維持したりする。なお、当該リクライニング機構と、上述のシートクッション2における前後位置調整機構及び高さ調整機構とを働かせることにより、車両用シート1のシートアレンジが可能となっている。
【0031】
ヘッドレスト4は、乗員の頭部を受けて支持するものであり、図3に示すように、パッド部41と、パッド部41を覆った表皮42と、下端部から下方に突出する複数のピラー43(本実施形態では2本)と、を有する。
このようなヘッドレスト4は、シートバック3のシートフレーム31に設けられた支持構造5によって、シートバック3に支持されている。
なお、複数のピラー43は、ヘッドレスト4の下端部から下方に真っすぐに突出するものと、前方又は後方に湾曲しながら下方に突出するものが採用可能である(図10図11参照)。
【0032】
支持構造5は、図2図5に示すように、シートバック3のシートフレーム31に設けられたホルダー51と、ホルダー51によって保持されるヘッドレストガイド52と、を備える。これらホルダー51及びヘッドレストガイド52の組み合わせは、図2に示すように、複数のピラー43に対応して複数設けられている。
【0033】
ホルダー51は、ヘッドレストガイド52の筒状部(後述する)の一部を保持するものであり、角筒状に形成されている。このようなホルダー51は、下部後面が溶接等によってシートフレーム31の上部前面に接合され、シートバック3の内部において上下に延在している。
なお、ホルダー51は、金属板が曲げ加工により角筒状に巻かれることによって形成されているものとする。
【0034】
ヘッドレストガイド52は、ヘッドレスト4から突出するピラー43を保持するものであり、合成樹脂を筒状に成型したものである。また、このヘッドレストガイド52は、頭部62と、頭部62から垂下した筒状部61と、を有する。
ヘッドレストガイド52には、その全長に亘って、ピラー43が挿通される貫通孔63が形成されている。すなわち、貫通孔63は、頭部62の上端面から筒状部61の下端にかけて貫通している。また、貫通孔63は、ヘッドレストガイド52の長さ方向に沿って一直線に形成されている。
なお、複数のヘッドレストガイド52のうち一方は、ヘッドレスト4の高さ調整を可能とする調整用ノブが備えられている。
【0035】
筒状部61は、ヘッドレストガイド52の全長に対して大部分を占めるものであり、湾曲することなく、ヘッドレストガイド52の長さ方向に沿って一直線に形成されている。
この筒状部61の前側面には、一体形成された複数のリブ61aが形成されている。筒状部61は、当該複数のリブ61aを含めてホルダー51の内側寸法に対応する大きさに設定されている。
また、筒状部61の下部両側面には、外部側に突出する爪61bが設けられている。爪61bは、筒状部61の下部両側面を、爪61bの下端部を残した状態に切り欠くことによって、筒状部61と一体形成されている。このように下端部を残した状態にした爪61bは、その下端部を基点にして筒状部61の内外方向に弾性的に移動自在となっており、ピラー43が貫通孔63に挿通されていない状態においては、爪61bを、貫通孔63の内部側に入り込むように移動させることができる。そのため、ヘッドレストガイド52をホルダー51に対して抜き差しする場合には爪61bを貫通孔63側に入り込ませることによって抜き差しを可能とし、ヘッドレストガイド52をホルダー51に装着させた場合には爪61bがヘッドレストガイド52の抜け止めとして機能する。
【0036】
頭部62は、筒状部61に対して鍔状(フランジ状ともいう)に広がるようにして設けられている。すなわち、ヘッドレストガイド52の軸方向に直交する径方向外側に突出して設けられている。
この頭部62は、ヘッドレストガイド52がホルダー51によって保持されてシートバック3に対して設けられた場合に、シートバック3の上端面に露出する。したがって、貫通孔63は、シートバック3の上端面から開放された状態となる。
【0037】
貫通孔63の内周面には、図6図9に示すように、当該貫通孔63に挿通されたピラー43に当接する突起64と、第二突起65と、上方突起66と、が設けられている。
換言すれば、筒状部61は、貫通孔63の内周面に設けられて当該貫通孔63に挿通されたピラー43の外周面に当接する複数の突起64,65,66を有している。また、これら複数の突起64,65,66は、貫通孔の内周面に一体形成されている。
【0038】
突起64は、図6図7に示すように、筒状部61の長手方向に沿って延在し、その上下方向の長さが、左右又は前後方向の長さに比較して長く設定されている。すなわち、突起64は、筒状部61の長手方向に沿って長尺に形成された突条である。
また、突起64は、筒状部61の下端部近傍を含む範囲における貫通孔63の内周面に設けられている。より詳細に説明すると、突起64は、筒状部61における上下方向の中央部よりも下方に設けられており、その下端部は、筒状部61の最下端には到達しない状態となっている。
さらに、突起64は、貫通孔63の内周面から前後方向に沿って突出している。具体的には、突起64は、貫通孔63の内周面のうち前側の面から後方に突出するようにして形成されている。
【0039】
突起64は、当接面64aと、上側傾斜面64bと、下側傾斜面64cと、を備える。
当接面64aは、ピラー43が貫通孔63に挿通された場合にピラー43の外周面に当接する面であり、筒状部61の長手方向に沿って長尺に形成されている。
上側傾斜面64bは、突起64の上端部に位置するとともに当接面64aと連続し、当接面64aから貫通孔63の内周面に向かって傾斜している。
下側傾斜面64cは、突起64の下端部に位置するとともに当接面64aと連続し、当接面64aから貫通孔63の内周面に向かって傾斜している。
なお、上側傾斜面64bと下側傾斜面64cは共に、貫通孔63の内周面に向かうにつれて左右の幅寸法が徐々に狭くなるように形成されている。
【0040】
第二突起65は、図6図8に示すように、貫通孔63の内周面のうち突起64と前後方向に対向する位置に設けられている。突起64は、貫通孔63の内周面のうち前側の面に設けられているため、第二突起65は、貫通孔63の内周面のうち後側の面から前方に突出するようにして形成されている。
このような第二突起65は、当接面65aと、上側傾斜面65bと、下側傾斜面65cと、を備える。
当接面65aは、ピラー43が貫通孔63に挿通された場合にピラー43の外周面に当接する面であり、筒状部61の長手方向に沿って長尺に形成されている。
上側傾斜面65bは、第二突起65の上端部に位置するとともに当接面65aと連続し、当接面65aから貫通孔63の内周面に向かって傾斜している。
下側傾斜面65cは、第二突起65の下端部に位置するとともに当接面65aと連続し、当接面65aから貫通孔63の内周面に向かって傾斜している。
なお、上側傾斜面65bと下側傾斜面65cは共に、貫通孔63の内周面に向かうにつれて左右の幅寸法が徐々に狭くなるように形成されている。
【0041】
また、第二突起65は、突起64と同様に、筒状部61の長手方向に沿って長尺に形成された突条であるが、当該第二突起65における上下方向の長さは、突起64における上下方向の長さと比較して短く設定されている。この第二突起65の下端部の位置は、突起64と同様に、筒状部61の最下端には到達しない状態となっている。なお、ここでいう、上下方向の長さとは、突起64全体の上下方向の長さと、第二突起65全体の上下方向の長さを指している。
さらに、第二突起65における左右方向の長さは、突起64における左右方向の長さと比較して短く設定されている。なお、ここでいう、左右方向の長さとは、突起64における当接面64aの左右方向の長さと、第二突起65における当接面65aの左右方向の長さを指しており、突起64と第二突起65の左右方向の長さを比較する場合は、互いの当接面64a,65aを比較する。
【0042】
上方突起66は、図6図8図9に示すように、貫通孔63の内周面のうち突起64から上下方向に離間し、かつ筒状部61における上下方向の中央部よりも上方に設けられている。具体的に説明すると、上方突起66は、ヘッドレストガイド52のうち頭部62に形成された貫通孔63の内周面に設けられている。
このような上方突起66における上下方向の長さは、突起64における上下方向の長さと比較して短く設定されている。また、第二突起65と比較しても上下方向の長さは短く設定されている。さらに、その幅寸法も、突起64及び第二突起65と比較して短く設定されている。すなわち、この上方突起66は、貫通孔63の内周面に小さく突き出た部分であり、ピラー43に対する接触面積は、突起64及び第二突起65と比較して狭い。
【0043】
さらに、上方突起66は、貫通孔63の内周面に複数設けられており、これら複数の上方突起66は、突起64(又は第二突起65)を正面視する方向から筒状部61を透視した場合において突起64の左右に分かれて配置されている。
本実施形態においては、左右の上方突起66は、突起64に対して等間隔に離間しているが、これに限られるものではなく、突起64の左右に分かれて配置されていればよい。
【0044】
以上のように構成されたヘッドレストガイド52の貫通孔63にピラー43を挿通させた場合は、図10に示すように、ピラー43は、複数の突起64,65,66に当接した状態となっている。
図10に示すピラー43は、ヘッドレスト4の下端部から下方に真っすぐに突出するストレートタイプであり、矢印Y1で指す位置は、ピラー43と貫通孔63の内周面とが所謂“ゼロタッチ(ゼロ当たりともいう)”した状態となっている。すなわち、ピラー43と貫通孔63の内周面とが触れている状態となっている。さらに、矢印Y2で指す位置は、ピラー43と第二突起65とがゼロタッチした状態となっている。
また、矢印Y3で指す位置は、ピラー43と上方突起66とが強く接した状態となっており、場合によっては、ヘッドレストガイド52が弾性変形する。さらに、矢印Y4で指す位置は、ピラー43と突起64とが強く接した状態となっており、場合によっては、ヘッドレストガイド52が弾性変形する。
【0045】
図11に示すピラー43は、ヘッドレスト4の下端部から前方に湾曲しながら下方に突出する湾曲タイプであり、説明の便宜上、符号43Aを付し、ストレートタイプのピラー43と区別する。
矢印Y5で指す位置は、ピラー43Aと貫通孔63の内周面とがゼロタッチした状態となっている。さらに、矢印Y6で指す位置は、ピラー43Aと突起64とがゼロタッチした状態となっている。
また、矢印Y7で指す位置は、ピラー43Aと上方突起66とが強く接した状態となっており、場合によっては、ヘッドレストガイド52が弾性変形する。さらに、矢印Y8で指す位置は、ピラー43Aと第二突起65とが強く接した状態となっており、場合によっては、ヘッドレストガイド52が弾性変形する。
【0046】
なお、本実施形態においては、ストレートタイプのピラー43と、湾曲タイプのピラー43Aについて説明したが、貫通孔63の内周面に形成された複数の突起64,65,66に対して接するものであればよいため、その形状は問わないものとする。
【0047】
以上のように構成されたヘッドレストガイド52がホルダー51によって保持された場合、突起64及び第二突起65の少なくとも一部は、図5図6に示すように、筒状部61のうちホルダー51によって保持されていない部位における貫通孔63の内周面に設けられている。
より詳細に説明すると、ヘッドレストガイド52は、ホルダー51の下端部開口から突き出るようにしてホルダー51によって保持されている。この状態において爪61bはホルダー51の下端面よりも下方に位置しており、ヘッドレストガイド52の抜け止めとして機能している。また、ヘッドレストガイド52のうち爪61bにおける上端部から下方に位置する部位は、ホルダー51によって保持されてない状態となっている。すなわち、貫通孔63の内周面に設けられた突起64及び第二突起65の一部は、ホルダー51によって保持されていない部位に設けられた状態となっている。また、上方突起66も、頭部62における貫通孔63の内周面に設けられているため、ホルダー51によって保持されていない部位に設けられた状態となっている。
例えば筒状部61全体をホルダー51によって保持してしまうと、筒状部61が変形しにくくなってしまうため、ピラー43を貫通孔63に挿通させにくい。これに対して、ピラー43を貫通孔63に挿通させた際にピラー43と強く接触する各突起64,65,66の位置が、ホルダー51によって保持されていない箇所にあれば、ピラー43挿通時にヘッドレストガイド52が撓みやすくなるという利点がある。
【0048】
以上のような本実施の形態によれば、筒状部61の長手方向に沿って延在する突起64は、その上下方向の長さが、左右又は前後方向の長さに比較して長く設定されていることから、貫通孔63に挿通されたピラー43(43A)に対して当接する範囲が増えるため、ヘッドレスト4のガタつきを抑制することができる。
【0049】
また、突起64は、筒状部61の下端部近傍を含む範囲における貫通孔63の内周面に設けられているので、ピラー43(43A)を貫通孔63に深く挿通させた場合に、ヘッドレスト4のガタつきを一層抑制することができる。
【0050】
また、突起64は、貫通孔63の内周面から前後方向に沿って突出しているので、ヘッドレスト4の前後方向におけるガタつきを抑制することができる。
【0051】
また、筒状部61は、貫通孔63の内周面のうち突起64と前後方向に対向する位置に設けられた第二突起65を有するので、前後方向に対向する突起64と第二突起65とによってヘッドレスト4の前後方向におけるガタつきを一層抑制することができる。
【0052】
また、第二突起65における上下方向の長さは、突起64における上下方向の長さと比較して短く設定されているので、突起64と比較してピラー43(43A)に対する摺動抵抗を抑制することができる。そのため、ヘッドレスト4のガタつきを抑制しつつ、ピラー43(43A)を貫通孔63に挿入しやすくすることができる。
【0053】
また、第二突起65における左右方向の長さは、突起64における左右方向の長さと比較して短く設定されているので、突起64と比較してピラー43(43A)に対する摺動抵抗を抑制することができる。そのため、ヘッドレスト4のガタつきを抑制しつつ、ピラー43(43A)を貫通孔63に挿入しやすくすることができる。
【0054】
また、筒状部61は、貫通孔63の内周面のうち突起64から上下方向に離間し、かつ筒状部61における上下方向の中央部よりも上方に設けられた上方突起66を有するので、突起64と上方突起66とが上下に離間した位置でピラー43(43A)に当接することとなり、ヘッドレスト4のガタつきを一層抑制することができる。
【0055】
また、上方突起66における上下方向の長さは、突起64における上下方向の長さと比較して短く設定されているので、上方突起66がピラー43(43A)に当接する範囲が狭くなり、突起64と比較してピラー43(43A)に対する摺動抵抗を抑制することができる。そのため、ピラー43(43A)を貫通孔63に挿入しやすくすることができる。
【0056】
また、貫通孔63の内周面に設けられた複数の上方突起66は、突起64を正面視する方向から筒状部61を透視した場合において突起64の左右に分かれて配置されているので、上下方向と左右方向に離間する突起64と複数の上方突起66とがピラー43(43A)に当接することとなり、ヘッドレスト4のガタつきを一層抑制することができる。
【0057】
また、ヘッドレスト4は、シートバック3を構成するシートフレーム31の上部に設けられてヘッドレストガイド52の筒状部61の一部を保持するホルダー51を有するので、ホルダー51によって筒状部61の一部を保持することができ、筒状部61の貫通孔63にピラー43(43A)が挿通されたヘッドレスト4を、シートアレンジの動きに合わせて追従させながら、このヘッドレスト4のガタつきを抑制することができる。
また、突起64の少なくとも一部は、筒状部61のうちホルダー51によって保持されていない部位における貫通孔63の内周面に設けられているので、ヘッドレストガイド52が撓みやすくなり、ヘッドレスト4の操作荷重低減に寄与する。
【0058】
なお、本実施形態においては、貫通孔63の内周面に突起64、第二突起65、複数の上方突起66が設けられているものとしたが、これに限られるものではない。
すなわち、貫通孔63の内周面に突起64のみが設けられていてもよい。
また、貫通孔63の内周面に上方突起66はなく、突起64と第二突起65だけが設けられていてもよい。
また、貫通孔63の内周面に第二突起65はなく、突起64と上方突起66だけが設けられていてもよい。
また、貫通孔63の内周面に設けられる上方突起66は一つでもよいし、複数でもよい。上方突起66が一つの場合は、突起64の左右どちらかではなく、貫通孔63の内周面のうち後側の面から前方に突出するようにして形成されることが望ましい。すなわち、このような場合には、突起64と一つの上方突起66が同一垂直面上に位置する。
【符号の説明】
【0059】
1 車両用シート
2 シートクッション
3 シートバック
31 シートフレーム
4 ヘッドレスト
43 ピラー
43A ピラー
5 支持構造
51 ホルダー
52 ヘッドレストガイド
61 筒状部
64 突起
65 第二突起
66 上方突起
62 頭部
63 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11