(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この方法の実施にあたっては、水中で移動装置が、止水蓋を確実に保持し、また止水蓋を容易に着脱できることが肝要となる。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、水中を移動可能な移動装置により
被搬送体を搬送するもので、その
被搬送体が移動装置から着脱できるものであって、
被搬送体の保持状態が確実に維持され、また移動装置が
被搬送体から容易に離脱できる水中搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1の発明は、水中を移動可能な移動装置と、
被搬送体を備え、移動装置が
被搬送体を保持して水中搬送するものであって、移動装置と
被搬送体との境界には着脱機構を有しており、着脱機構は、移動装置に設けた連結部と、
被搬送体に設けた被連結部からなり、連結部は、電磁石からなるものであり、被連結部は、磁性体からなるものであって、連結部の電源のオンオフによって、被連結部に対して連結部が着脱
可能であり、移動装置の遠隔操作を行うため、移動装置において連結部を配置してある面には、連結された被搬送体側を撮影するカメラを設けてあり、被搬送体においてカメラと対向する位置には覗き窓を設けてあり、カメラは覗き窓を通して水中を撮影可能であることを特徴とする。なお、ここで示した磁性体とは、鉄などの、磁石に強く吸着されるいわゆる強磁性体のことである。また、被連結部は、
被搬送体に対して別途取り付けるものであってもよいし、
被搬送体が磁性体である場合には
被搬送体の一部であってもよい。
【0008】
本発明のうち
請求項2の発明は、
カメラと覗き窓を結ぶ光路には、移動装置と被搬送体の双方に照準部を設けてあり、カメラの画像を通して両照準部を重ね合わせたときに、移動装置の連結部と
被搬送体の被連結部が前後に対向することを特徴とする。
【0009】
本発明のうち
請求項3の発明は、連結部は、移動装置から
被搬送体に向けて突出するものであり、被連結部は、
連結部を挿脱可能な挿入穴を形成したガイド部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明のうち
請求項4の発明は、ガイド部の挿入穴は、少なくとも開口側の一部が開口側に向けて広がっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のうち請求項1の発明によれば、着脱機構の連結部と被連結部が電磁石と磁性体からなるので、連結部の電源をオンにすると、連結部の磁力により被連結部が吸着されて、移動装置により
被搬送体が確実に保持される。そして、連結部の電源のオンオフにより、磁力が瞬時に発生・消滅するので、移動装置により
被搬送体を容易に着脱できる。
【0012】
加えて、被搬送体に覗き窓を設けることで、被搬送体が移動装置に保持されている場合においても、被搬送体の覗き窓を通して水中を撮影可能なので、支障なく遠隔操作できる。
【0013】
本発明のうち
請求項2の発明によれば、
移動装置を操作し、カメラの画像を通して移動装置と被搬送体の双方の照準部を重ね合わせることで、被連結部に対して連結部を位置決めすることができる。その後、移動装置を前進させれば連結部が被連結部に当接するため、連結の際の操作が容易である。
【0014】
本発明のうち
請求項3の発明によれば、連結部が被連結部に設けたガイド部の挿入穴に挿入される構造なので、移動装置に対して
被搬送体が正確に位置決めされる。水中搬送に際しては、移動装置が
被搬送体を正しい位置で保持しないと、浮力のバランスが崩れて移動装置が正しい姿勢を維持できず、スムーズに搬送できないおそれがあるが、本構造により、確実に正しい位置で保持できる。
【0015】
本発明のうち
請求項4の発明によれば、連結部をガイド部の挿入穴に挿入する際に、相互の位置が多少ずれていても、連結部が挿入穴の内周面にガイドされてスムーズに挿入されるので、より容易に位置決めできる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の水中搬送装置の第一実施形態の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。この水中搬送装置は、種々の目的に用いることができるものであるが、ここでは、ダム設備においてダム湖10と連通する配管20の開口部(止水対象)を、ダム湖10側から閉塞するために用いる場合を示す。
図1及び
図4及び
図5に示すように、この水中搬送装置は、移動装置1と、
被搬送体である止水蓋2と、着脱機構3を備え、着脱機構3は、移動装置1に設けた連結部4と、止水蓋2に設けた被連結部5からなり、さらに移動装置1は操作機構7を備え、止水蓋2は充水機構8を備える。なお、以下において、前側は
図1における左側、後側は
図1における右側を示し、移動装置1の前後を基準としており、また止水蓋2については後側が表側、前側が裏側となる。
【0018】
移動装置1は、一般にROV(Remotely Operated Vehicle)とよばれる、遠隔操作型の無人潜水機である。
図1に示すように、移動装置1の前側面には、カメラ11を設けてあり、操作者はカメラ11の画像を見ながら移動装置1を遠隔操作できる。このカメラ11は、移動装置1の中心を通る前後方向の軸を中心軸として、この中心軸上に位置しており、透明な樹脂製のケース13に納められていて防水されている。なお、
図3(b)に示すように、このケース13の、カメラ11の前側(撮影方向)の面には、垂直線分と水平線分からなる十字形の図形を描いてあって、図形の中心(交点)が移動装置1の中心軸上に位置しており、これが移動装置1の照準部12となっている。また、スクリュー及びその駆動装置(図示省略)を有しており、これにより水中を移動可能である。さらに、ケーブル14を有しており、このケーブル14が水上の電源、操作者が操作するコントローラ及び操作者が見るモニタ(図示省略)に接続されている。
【0019】
そして、移動装置1の前側面のカメラ11の周囲には、着脱機構3の一方である三つの連結部4を設けてある。各連結部4は、電磁石からなるものであって、移動装置1の前側面から前後方向(移動装置1の進退方向)前側に向けて突出する略円柱形状で、先端の周縁部が面取りされており、前側から見て、移動装置1の中心軸を中心として同一円周上に120度間隔で配置されている。連結部4は、操作者が操作するコントローラにより電源をオンオフすることができるようになっており、電源をオンにすれば磁力が発生し、電源をオフにすれば磁力が消滅する。
【0020】
また、移動装置1の前側面のカメラ11の周囲の、連結部4とは異なる位置には、操作機構7を設けてある。
図4に示すように、操作機構7は、係合部71と、シリンダからなる動作部72を有しており、動作部72は前側からピストンロッド73が進退自在となっていて、ピストンロッド73の先端に係合部71を設けてある。よって、係合部71は動作部72によって前後方向(止水蓋2の表裏方向)に移動自在であり、動作部72は、操作者が操作するコントローラにより操作することができる。係合部71は、略円柱形状で先端部が先細形状となっている。そして、係合部71の上下には、爪部74を設けてある。より詳しくは、係合部71の上面と下面に、前後に延びる切欠部75を形成してあり、切欠部75内の前端部に、切欠部75内に納まる長さの爪部74の前端部を、前後方向に直交する方向の軸周りに回動自在に軸支してある。爪部74の前端部は先細形状となっており、前端部の内周側面が切欠部75の底面(前後方向に平行な面)に当接することで、爪部74が前後方向に対して約45度傾斜する状態より前方に回転することを規制している。また、爪部74の先端部(軸の反対側)は、爪部74が前後方向に対して約45度傾斜する状態で前後方向に平行になるように先細形状となっている。そして、爪部74の回転軸にはねじりバネからなる展開部材76を設けてあり、展開部材76は、爪部74をその先端が外周側へ展開する向きに付勢している。よって、通常状態において爪部74は前後方向に対して約45度傾斜するように外周側に展開しており、展開部材76の付勢力に抗して先端部を押し込めば係合部71の切欠部75内に納まる。
【0021】
止水蓋2は、
図1及び
図2に示すように、移動装置1の前側に保持されるものであって、前後方向視して円形で、前側に凹部を有する椀形のもので、円形の金属板を湾曲させて形成したものである。止水蓋2には、前後方向に見通すことが可能な覗き窓21を設けてある。この覗き窓21は、止水蓋2の中心を通る前後方向の軸を中心軸として、この中心軸上に位置しており、より詳しくは、円形の止水蓋2の中心に円形の孔を形成してあって、この孔に円環状の窓枠部材24を嵌め込んであり、窓枠部材24の後側面には、この窓枠部材24と同径で、且つ耐圧性を有する透過度の高いガラスや樹脂を用いた透明部材25を取り付けてあって、止水蓋2の裏側を水密するためにパッキンを挟み込み、後側から窓枠部材24にボルト止めして固定してある。なお、
図3(a)に示すように、この覗き窓21の、窓枠部材24の前側面には、垂直向きの紐と水平向きの紐を交差させて十字形にして取り付けてあって、その中心(交点)が止水蓋2の中心軸上に位置しており、これが止水蓋2の照準部22となっている。
【0022】
そして、止水蓋2の後側面の覗き窓21の周囲には、着脱機構3の他方である三つの被連結部5を設けてある。各被連結部5は、磁性体である鋼鉄製の円形の板材からなり、止水蓋2の後側面に設けた台座51上に、止水蓋2の中心軸に直交する向きとなるように設けてあって、移動装置1の連結部4の位置に対応して、止水蓋2の中心軸を中心として同一円周上に120度間隔で配置されている。移動装置1の連結部4と止水蓋2の被連結部5とは、移動装置1の中心軸と止水蓋2の中心軸が一致し、かつ移動装置1の照準部12の垂直線分と止水蓋2の照準部22の垂直の紐が前後方向視して一致し、さらに移動装置1の照準部12の水平線分と止水蓋2の照準部22の水平の紐が前後方向視して一致したときに、それぞれ前後に対向する。そして、この状態で、覗き窓21は移動装置1のカメラ11に対向しており、カメラ11は覗き窓21を通して止水蓋2の前側を撮影可能である。また、円形の各被連結部5に外挿するようにして、円筒状のガイド部6を設けてあり、ガイド部6の内側が、後側に向けて開口する挿入穴61となっていて、被連結部5が挿入穴61の底面を構成している。ガイド部6は、被連結部5から後側に向けて延びており、挿入穴61は、その前後方向の全長の内、開口側(後側)の略半分の部分が、開口側に向けてラッパ状に広がっている。前側部分(ラッパ状ではない部分)の直径が、移動装置1の連結部4の直径よりも僅かに大きいものとなっていて、連結部4を前後方向(移動装置1の進退方向)に挿脱可能である。
【0023】
また、止水蓋2の最外周部の前側面には、全周にわたって高弾性スポンジゴムからなる止水部26を取り付けてある。さらに、椀形の止水蓋2の前側の凹部内には、環状の前側フロート27を取り付けてあり、止水蓋2の後側の三つのガイド部6には、それぞれ環状の後側フロート28を取り付けてある。これらの前側フロート27及び後側フロート28は、止水蓋2の水中重量を0kgf(中性浮力)とするものであって、止水蓋2を移動装置1で保持した際に、搬送に適した正しい姿勢となるようにするためのものである。
【0024】
また、移動装置1が止水蓋2を保持した状態における、止水蓋2の、移動装置1の操作機構7に対向する位置には、充水機構8を設けてある。これはすなわち、移動装置1の中心軸と止水蓋2の中心軸が一致したときに、操作機構7の中心軸と充水機構8の中心軸も一致するということである。
図4に示すように、充水機構8は、充水口81と、弁体82と、被係合部83を有している。より詳しくは、止水蓋2に形成した孔に、後側に向けて開口する有底筒状の外筒体84を嵌め込んであり、外筒体84の底部に形成した前後方向(止水蓋2の表裏方向)に貫通する孔が充水口81となっている。弁体82は、充水口81よりも直径が大きな円盤状のものであり、前側に環状のパッキン821を取り付けてあって、パッキン821が充水口81の周囲の面に当接することで、充水口81を後側(止水蓋2の表側)から塞ぐものである。また、弁体82の前側には、前側に向けて開口する筒状で充水口81に丁度嵌まる直径の内筒体822を設けてある。この内筒体822の側周面の後側部には、周方向に等間隔に四つの通水口823を形成してある。さらに、弁体82の後側には、後側に向けて延びるロッド85を設けてあり、外筒体84の後端部が、外筒体84と同直径の閉止板841により塞いであって、ロッド85は閉止板841の中央に形成した孔を貫通して後側に突出している。すなわち、弁体82は外筒体84と閉止板841に囲まれた空間内に納まり、その空間の範囲内で前後方向(止水蓋2の表裏方向)に移動可能である。また、閉止板841の、ロッド85の貫通部の周囲には、前後方向に貫通する流入口842を形成してある。そして、この空間内の、弁体82と閉止板841の間に、ロッド85に外挿してコイルバネからなる付勢部材86を設けてある。付勢部材86により、弁体82が充水口81(止水蓋2の表側)に向けて押圧されている。また、ロッド85の後端に、被係合部83を設けてあり、弁体82と被係合部83とは、ロッド85で接続されて一体となっている。被係合部83は、後側(操作機構7側)に向けて開口する有底筒状のものであって、その内径は、係合部71の外径よりも大きく、爪部74が上下に広がった状態の係合部71が丁度納まる大きさである。被係合部83の後側端の周縁部には、前方内周側に向けて突出する突起部831を有している。突起部831の内周側面は、後側(開口側)に向けて広がる形状となっており、最挟部(突起部831の先端部)の内径は、操作機構7の係合部71が通過可能であるが、爪部74が展開した状態の上下幅よりは狭い大きさである。また、被係合部83の側周面の上下位置には、それぞれ円形の貫通孔87を形成してある。
【0025】
次に、このように構成した移動装置1によって、止水蓋2を水中搬送する方法について説明する。水中の所定箇所に設置された止水蓋2に対して、まず、操作者がカメラ11の画像を見ながら移動装置1を遠隔操作して、
図1(a)に示すように、移動装置1を止水蓋2の後側に位置させる。移動装置1のカメラ11の前側には、ケース13に描いた移動装置1の照準部12が位置しているので、カメラ11の画像には、常にこの十字形の照準部12が映し出された状態である。そして、カメラ11を止水蓋2の覗き窓21に対向させると、覗き窓21を通して、止水蓋2の十字形の照準部22が映し出される。この状態で、移動装置1の位置と姿勢を調整して、カメラ11の画像を通して移動装置1の照準部12と止水蓋2の照準部22を重ね合わせれば、移動装置1の中心軸と止水蓋2の中心軸が一致し、移動装置1の連結部4と止水蓋2の被連結部5が前後に対向する。そして、ここから移動装置1を前進させれば、移動装置1の三つの連結部4がそれぞれ止水蓋2の三つのガイド部6の挿入穴61に挿入される。この際、対流などの影響で移動装置1の照準部12と止水蓋2の照準部22が多少ずれていたとしても、ガイド部6の挿入穴61が開口側に向けてラッパ状に広がっているので、連結部4は支障なく挿入穴61に挿入される。そして、
図1(b)に示すように、連結部4が被連結部5に当接したら、連結部4の電源をオンにすることで、磁力が発生し、被連結部5が吸着されて、移動装置1により止水蓋2が保持され、水中搬送が可能となる。一方、移動装置1を止水蓋2から離脱させるには、止水蓋2を所定箇所に設置した後、連結部4の電源をオフにすることで、磁力が消滅するので、そのまま移動装置1を後退させて、ガイド部6の挿入穴61から連結部4を引き抜けばよい。このように、連結部4の電源のオンオフによって、被連結部5に対して連結部4が着脱するものであり、移動装置1により止水蓋2を確実に保持して水中搬送することができ、また移動装置1を止水蓋2から容易に離脱できる。
【0026】
また、このように構成した操作機構7及び充水機構8により、止水蓋2を通して充水する方法について、
図6に基づき説明する。ここでは、止水蓋2が止水対象となる開口部を塞いでいて、止水蓋2の後側(表側)の空間が水で満たされており、前側(裏側)の空間が排水された状態であるとする。この状態では、充水機構8の弁体82が、水圧及び付勢部材86の付勢力により充水口81に向けて押圧されており、充水口81が閉じられている。
図1(a)に示すように、移動装置1の中心軸と止水蓋2の中心軸を一致させると、操作機構7と充水機構8は、前後に対向する(
図6(a))。ただし、操作機構7の動作部72のピストンロッド73は最も後退した位置にあり、操作機構7の係合部71と充水機構8の被係合部83は離隔している。この状態から移動装置1を前進させ、
図1(b)に示すように、移動装置1の連結部4と止水蓋2の被連結部5を当接させて、止水蓋2が移動装置1に保持された状態にすると、操作機構7の係合部71の先端が充水機構8の被係合部83に挿入された配置となる(
図6(b))。その後、操作者がコントローラを操作して操作機構7のピストンロッド73を前進させると、それに伴って係合部71も前進し、係合部71の上下に展開した爪部74が、被係合部83の突起部831に当接し、前進に伴って展開部材76の付勢力に抗して係合部71側に折り畳まれて切欠部75内に納まる(
図6(c))。さらに係合部71を前進させて、爪部74が被係合部83の突起部831を通過すると、展開部材76の付勢力により、爪部74が被係合部83内で再び外周側に展開する(
図6(d))。この状態から、操作機構7の動作部72のピストンロッド73を後退させると、それに伴って係合部71も後退し、さらに係合部71の爪部74の先端が被係合部83の突起部831に係止するので、被係合部83、ロッド85及び弁体82も併せて後退する。すると、弁体82のパッキン821が充水口81の周囲の面から離隔し、内筒体822の通水口823が被係合部83内に露出するので、止水蓋2の後側(表側)の空間から、閉止板841の流入口842及び内筒体822の通水口823を経由し、止水蓋2の前側(裏側)の空間までが連通して、止水蓋2の充水口81を通して後側(表側)の空間から前側(裏側)の空間へ充水される(
図6(e))。なお、これらの動作は全て止水蓋2が移動装置1に保持された状態、すなわち止水蓋2と移動装置1がともに固定された状態で行われるので、動作部72の動作により移動装置1自体が動くことはない。
【0027】
さらに、上記のようにして充水機構8の被係合部83に操作機構7の係合部71が係合した状態において、被係合部83から係合部71を取り外す方法について、
図7に基づき説明する。充水のために充水機構8の充水口81を開いた状態では、係合部71の爪部74の先端が被係合部83の突起部831に係止しており、被係合部83から係合部71を取り外すことができない(
図7(a))。そこでまず、操作機構7の動作部72のピストンロッド73とともに係合部71を前進させて、被係合部83の突起部831から係合部71の爪部74を離脱させる(
図7(b))。すると、弁体82は付勢部材86の付勢力により充水口81を閉じた状態となる。次に、被係合部83の上下の貫通孔87に挿入可能なピン9を有する取外用治具を用意する(
図7(c))。次に、取外用治具のピン9を被係合部83の上下の貫通孔87に挿入し、爪部74を内周側に押し込んで、係合部71の切欠部75内に納める(
図7(d))。そして、取外用治具のピン9を貫通孔87に挿入したままの状態で、操作機構7の動作部72のピストンロッド73とともに係合部71を後退させれば、爪部74が被係合部83の突起部831に引っ掛かることはなく、係合部71が被係合部83から引き抜かれ、取り外しが完了する(
図7(e))。
【0028】
続いて、本発明の水中搬送装置を用いて、ダム設備においてダム湖10に連通する配管20の点検・補修を行う際の手順を説明する。
(1)水上において、移動装置1の連結部4に止水蓋2の被連結部5を当接させ、連結部4の電源をオンにして、止水蓋2を移動装置1に保持させる。
(2)止水蓋2を保持した移動装置1をダム湖10に投入し、遠隔操作により、対象となる配管20の開口部付近まで移動させる。この際、移動装置1のカメラ11は止水蓋2の覗き窓21を通して止水蓋2の前側を撮影する。
(3)移動装置1を操作して、止水蓋2で配管20の開口部を塞ぐ(
図5に示す状態)。
(4)配管20内を下流側から排水する。これにより、ダム湖10の水中と配管20内との間に生じる圧力差によって止水蓋2が配管側に押圧される。
(5)連結部4の電源をオフにして、止水蓋2から移動装置1を離脱させ、水上で回収する。
(6)配管20の点検・補修を行う。
(7)点検・補修の完了後、移動装置1をダム湖10に投入し、遠隔操作により、対象となる配管20の開口部付近まで移動させる。
(8)カメラ11の画像を通して移動装置1の照準部12と止水蓋2の照準部22を重ね合わせ、止水蓋2に対して移動装置1を位置決めし、移動装置1の連結部4に止水蓋2の被連結部5を当接させ、連結部4の電源をオンにして、止水蓋2を移動装置1に保持させる。
(9)移動装置1の操作機構7により、止水蓋2の充水機構8を操作して、充水口81を開き、止水蓋2を通してダム湖10から配管20内に充水する。これにより、ダム湖10の水中と配管20内との間に圧力差がなくなり、止水蓋2が配管20から離脱可能となる。
(10)止水蓋2を保持した移動装置1を、遠隔操作により浮上させ、水上で回収する。
(11)充水機構8から操作機構7を取り外し、止水蓋2から移動装置1を離脱させる。
以上で、手順が完了する。
【0029】
このように構成した本発明の水中搬送装置の第一実施形態によれば、着脱機構3の連結部4が電磁石からなり、被連結部5が磁性体である鋼鉄からなるので、連結部4の電源をオンにすると、連結部4の磁力により被連結部5が吸着されて、移動装置1により止水蓋2が確実に保持される。そして、連結部4の電源のオンオフにより、磁力が瞬時に発生・消滅するので、移動装置1により止水蓋2を容易に着脱できる。また、連結部4が被連結部5に設けたガイド部6の挿入穴61に挿入される構造なので、移動装置1に対して止水蓋2が正確に位置決めされる。水中搬送に際しては、移動装置1が止水蓋2を正しい位置で保持しないと、浮力のバランスが崩れて移動装置1が正しい姿勢を維持できず、スムーズに搬送できないおそれがあるが、本構造により、確実に正しい位置で保持できる。さらに、連結部4をガイド部6の挿入穴61に挿入する際に、相互の位置が多少ずれていても、連結部4が挿入穴61の内周面にガイドされてスムーズに挿入されるので、より容易に位置決めできる。また、移動装置1のカメラ11の前側に止水蓋2が保持されるが、止水蓋2の覗き窓21を通して止水蓋2の前側を撮影可能なので、支障なく遠隔操作できる。そして、操作者が、カメラ11の画像を通して移動装置1の照準部12と止水蓋2の照準部22が重なり合うように移動装置1を操作することで、被連結部5に対して連結部4が位置決めされるので、そのまま移動装置1を前進させれば連結部4が被連結部5に当接するものであり、操作が容易である。
【0030】
また、止水蓋2をダム湖10から配管20などの止水対象となる開口部に設置し、止水蓋2の前側(裏側)から排水することで、後側(表側)と前側(裏側)の水圧差により、止水蓋2が押圧されて固定されるとともに、弁体82が押圧されて充水口81を閉じる。そして、操作機構7により弁体82を動かして充水口81を開けば、止水蓋2を通して後側(表側)から前側(裏側)に充水することができる。そして、付勢部材86が弁体82を充水口81に向けて押圧するので、水深が浅い場合など、止水蓋2の後側(表側)と前側(裏側)の水圧差が十分でない場合でも、確実に充水口81を閉じることができ、外的要因によって充水口81が開くことがない。さらに、操作機構7の動作部72により係合部71を充水機構8側へ移動させるだけで、係合部71の爪部74が被係合部83の突起部831に係止するので、容易かつ確実に係合部71が被係合部83に係合して、弁体82を動かすことができる。また、止水蓋2の前側(裏側)から排水するとき及び止水蓋2を通して前側(裏側)に充水するときに、止水蓋2の覗き窓21を通して排水又は充水の状況をカメラ11の画像で視認できる。さらに、止水蓋2によりダム湖10に連通する配管20を塞ぐ際、止水蓋2の周縁部が配管20の開口部の周囲の面に当接するが、止水蓋2の最外周部の前側面には、全周にわたって高弾性スポンジゴムからなる止水部26を取り付けてあり、この止水部26には水深に応じた圧縮変形が生じるので、当接面に凹凸があっても、止水部26が凹凸に沿って変形し、確実に止水される。
【0031】
次に、
図8に基づき、本発明の水中搬送装置の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、第一実施形態と比較して、移動装置1並びにこれに設けた連結部4及び操作機構7は同じである。また、止水蓋2の全体形状並びにこれに設けた被連結部5及び充水機構8も同じであるが、止水蓋2が覗き窓を有していない点のみが異なっており、以下、その点に絞って説明する。第二実施形態の止水蓋2は、覗き窓がないので、中心に孔がないものとなっており、これを移動装置1の前側で保持すると、移動装置1のカメラ11の撮影方向が塞がれ、カメラ11により止水蓋2の前側を撮影することができない。そこで、止水蓋2の前側の凹部内の中心に、カメラ23を設けてある。このカメラ23は、止水蓋2の中心軸上に位置しており、透明な樹脂製のケース29に納められていて防水されている。なお、このケース29の、カメラ23の前側(撮影方向)の面には、垂直線分と水平線分からなる十字形の図形を描いてあって、図形の中心(交点)が止水蓋2の中心軸上に位置しており、これが第二実施形態の止水蓋2の照準部(図示省略)となっている。また、カメラ23はケーブル30を有しており、このケーブル30が水上の電源及び操作者が見るモニタ(図示省略)に接続されている。操作者は、止水蓋2によって遮られた移動装置1のカメラ11に替えて、止水蓋2のカメラ23の画像を見ながら、移動装置1を遠隔操作することができる。なお、移動装置1のカメラ11の前側には、ケース13に描いた移動装置1の照準部12が位置しているので、カメラ11の画像には、常にこの十字形の照準部12が映し出された状態であり、止水蓋2のカメラ23の前側には、ケース29に描いた止水蓋2の照準部22が位置しているので、カメラ23の画像には、常にこの十字形の照準部22が映し出された状態である
。このように構成した本発明の水中搬送装置の第二実施形態によれば、止水蓋2が移動装置1のカメラ11の前側に保持されていても、操作者は止水蓋2の前側に設けたカメラ23の画像を見られるので、支障なく遠隔操作できる。
【0032】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、被連結部は、磁石に強く吸着されるいわゆる強磁性体であれば、どのような素材からなるものであってもよく、
被搬送体(止水蓋)が磁性体である場合には、
被搬送体の一部であってもよい。また、カメラに設ける照準部は、カメラを納めたケースに直線状の溝を形成したり、直線状のテープを貼ったりしたものであってもよいし、物理的構成を有さず、モニタ上のみにカメラの画像に重ね合わせて映し出されるものであってもよい。さらに、上記実施形態では、移動装置の中心軸と
被搬送体の中心軸を一致させているが、これは必ずしも一致させなくてもよく、
被搬送体を保持した状態で移動装置が適切な姿勢となり、かつ
被搬送体により移動装置の前側が死角となっても、前側を見通せる構成(覗き窓や
被搬送体のカメラ)を備えるものであればよい。また、
被搬送体は、移動装置の前側以外の面で保持するものであってもよい。さらに、
被搬送体の対象物は、止水蓋に限られず、フロートやバラストを付加することにより、対象物を水中搬送できる水中重量にできるものであれば、どのようなものであってもよい。また、移動装置は、ROVに限られず、その他、遠隔操作により水中を移動可能な装置や、さらに自律的に水中を移動可能な装置であってもよい。