(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898663
(24)【登録日】2021年6月15日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】飲料水の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/68 20060101AFI20210628BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20210628BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
C02F1/68 510B
C02F1/68 520B
C02F1/68 530A
A23L2/52
A23L2/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-36036(P2019-36036)
(22)【出願日】2019年2月28日
(62)【分割の表示】特願2014-137137(P2014-137137)の分割
【原出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2019-135048(P2019-135048A)
(43)【公開日】2019年8月15日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】502191491
【氏名又は名称】株式会社オクト
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】田中 好郎
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/065734(WO,A1)
【文献】
特開昭51−004494(JP,A)
【文献】
特表2008−512238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/68
A23L 2/00−84
A61K 33/00
B01D 59/00−50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然水から濃縮、分離して得た重水素成分を、天然水に0.0001体積%〜0.4体
積%(0.0001体積%及び0.005体積%以上を除く)添加する飲料水の製造方法
。
【請求項2】
前記重水素成分は、重水(D2O)及び重水素硫酸(D2SO4)として含有し、天然
水に対して、前記重水(D2O)と前記重水素硫酸(D2SO4)とを添加して、これら
化合物全体で0.0001体積%〜0.4体積%(0.0001体積%及び0.005体
積%以上を除く)添加させる請求項1に記載の飲料水の製造方法。
【請求項3】
前記重水素成分は、重水素硫酸(D2SO4)として含有し、天然水に対して、前記重
水素硫酸(D2SO4)を0.0001体積%〜0.4体積%(0.0001体積%及び
0.005体積%以上を除く)添加させる請求項1に記載の飲料水の製造方法。
【請求項4】
前記重水素成分は、重水(D2O)として含有し、天然水に対して、前記重水(D2O
)を0.0001体積%〜0.4体積%(0.0001体積%及び0.005体積%以上
を除く)添加させる請求項1に記載の飲料水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素イオンを導入した飲料水として、例えば特許文献1に記載の如きものが知られている。この飲料水は、イオン交換樹脂を用いて水道水に水素イオンを導入するものであるが、所謂軽水と呼ばれる通常の水素(H
2)を用いたものに過ぎず、重水素(D
2)に関して何ら開示されていない(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−41854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、重水素(D
2)を用いて、体内の活性酸素等を還元させて健康を維持し、摂取した医薬の効能を持続させることの可能な飲料水を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴構成は、天然水から濃縮、分離して得た重水素成分を、天然水に0.0001体積%〜0.4体積%(0.0001体積%及び0.01体積%以上を除く)添加するところにある。
【0006】
本発明の第2の特徴構成は、前記重水素成分は、重水(D
2O)及び重水素硫酸(D
2SO
4)として含有し、天然水に対して、前記重水(D
2O)と前記重水素硫酸(D
2SO
4)とを添加して、これら化合物全体で0.0001体積%〜0.4体積%(0.0001体積%及び0.01体積%以上を除く)添加させるところにある。
【0007】
本発明の第3の特徴構成は、前記重水素成分は、重水素硫酸(D
2SO
4)として含有し、天然水に対して、前記重水素硫酸(D
2SO
4)を0.0001体積%〜0.4体積%(0.0001体積%及び0.01体積%以上を除く)添加させるところにある。
【0008】
本発明の第4の特徴構成は、前記重水素成分は、重水(D
2O)として含有し、天然水に対して、前記重水(D
2O)を0.0001体積%〜0.4体積%(0.0001体積%及び0.01体積%以上を除く)添加させるところにある。
【0009】
上記特徴構成によれば、一般的に自然界に存在している天然水には、約0.015体積%の重水素成分が含まれると言われているが、天然水から濃縮、分離して得た重水素成分を、天然水に0.0001体積%〜0.4体積%(0.0001体積%及び0.01体積%以上を除く)添加した飲料水を、生体内に摂取することにより、生体内の酸化ストレス度が低下したり、抗酸化力が向上する。
つまり、生体内で生成される活性酸素やフリーラジカルによる酸化活動に対して、生体内の抗酸化力により打ち消されて健康が維持されるのであるが、活性酸素やフリーラジカルが過剰生成されると、酸化活動と抗酸化活動のバランスが崩れる所謂酸化ストレスが上がり、病気になりやすいと言われている。
【0010】
そこで、天然水から濃縮、分離して得た重水素成分を、わずかでも天然水に0.0001体積%〜0.4体積%(0.0001体積%及び0.01体積%以上を除く)添加した飲料水を、生体内に摂取させることで、天然水だけを摂取するのに比べて、生体内の活性酸素やフリーラジカルが重水素成分により還元されて打ち消されるものと考えられ、健康が維持される。
さらに、重水素(D
2)は、通常の水素(H
2)と化学的性質は基本的に同等であるが、質量が2倍程度あり、やや反応速度が遅くなる「重水素効果」を有する。例えば医薬を服用している患者であれば、この重水素効果によって、代謝反応の速度が低下するので、代謝を防止して体内での医薬の効能を持続させることができ、医薬の投与量を減らすことが可能となる。
【0011】
すなわち、医薬は体内に取り入れられると代謝を受け、不活性な化合物や体外に排泄されやすい形に変換されて効果を失うことが多い。そこで、代謝を受ける位置に水素原子をハロゲンやメチル基等に置き換え、代謝を防ぐ手法が良く用いられてきた。しかし、こうした変換により、肝心の生理活性や水溶性が落ちてしまうケースも少なくない。
そこで、代謝を受ける水素原子を、重水素に置き換えることで、重水素は分子全体の性質にほとんど影響を与えず、代謝反応の速度だけを低下させることができる。
【0012】
従って、代謝を防いで、体内での持続時間を改善することができる。
なお、重水素成分が0.0001体積%より少なければあまり効果がなく、0.4体積%(0.0001体積%及び0.01体積%以上を除く)よりも多ければ、重水素成分による良好な効果があまり向上せず、過剰になると人体に悪影響を与える場合がある。
【0013】
また、上記特徴構成によれば、重水素成分として使用する重水(D
2O)は、一般的に天然の水中に存在し、その天然水の電気分解等により水中に含まれる重水が濃縮されて高濃度の重水が得られる。そのために、天然水に任意の添加量の重水素成分を、容易に供給できる。また、発明者の試験によれば、重水素成分を添加することで、水分子間の酸素原子間距離が小さくなることが分かった。すなわち、重水素成分によって水分子の集まり(クラスター)が小さくなるので、体内でより細部まで行き渡り、効率よく浸透させることができるものと考えられる。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明に係る飲料水の特徴によれば、天然水から濃縮、分離して得た重水素成分を用いて、体内の活性酸素等を還元させて健康を維持し、摂取した医薬の効能を持続させることが可能となった。
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る飲料水は、天然水から濃縮、分離して得た重水素成分として重水(D
2O)及び重水素硫酸(D
2SO
4)を含有したものである。
重水(D
2O)は、0体積%〜0.4体積%含有し、重水素硫酸(D
2SO
4)を0体積%〜0.4体積%含有し、これら化合物全体で0.0001体積%〜0.4体積%を、天然水に添加して含有させたものである。
【0017】
〔第2実施形態〕
次に、第2の実施形態に係る飲料水について説明する。
本実施形態に係る飲料水は、天然水から濃縮、分離して得た重水素成分として重水素硫酸(D
2SO
4)を、天然水に0.0001体積%〜0.4体積%含有した飲料水である。
【0018】
〔第3実施形態〕
次に、第3の実施形態に係る飲料水について説明する。
本実施形態に係る飲料水は、天然水から濃縮、分離して得た重水素成分として重水(D
2O)を、天然水に0.0001体積%〜0.4体積%含有した飲料水である。
【0019】
ここで、第1実施形態の飲料水を用いて本発明に係る飲料水の効果を確認するための実験例を複数の実験対象者(A〜F)について行った。
尚、実験対象者(A〜F)の測定値には個人差があり、また、実験時の体調などによっても異なるが、経過を確認することで、本発明に係る飲料水の効果を確認するものである。
【0020】
[実験例1](実験対象者A)
本実験例では、
1) 実験対象者Aの持つ疾患は、「多発性骨髄腫」である。
2) 実験条件として、服薬時に水道水のみを500cc/日、飲用した比較例に対し、本発明の飲料水を500cc/日、飲用した実験例を比較した。
3) 実験結果:(検査項目としてCRTN(クレアチニン)の数値を示す。)
比較例(2008年9月1日測定)は、6.64mg/dl(正常範囲は0.4〜0.8mg/dl)であったのに対し、実験例(2009年1月14日測定)は、0.58mg/dl(正常値は0.4〜0.8mg/dl)であり、正常値になっていることが分かる。
【0021】
[実験例2](実験対象者B)
本実験例では、
1) 実験対象者Bの持つ疾患は、「肺線癌」である。
2) 実験条件として、服薬時に水道水のみを500cc/日、飲用した比較例に対し、本発明の飲用水を500cc/日、飲用した実験例を比較した。
3) 実験結果:(比較する検査項目としてAMY(アミラーゼ)とLY(リンパ球)%の数値を示す。)
比較例(平成23年12月12日測定)は、AMYが306u/l(正常値は37〜125),LY%が70.3(正常値18〜59)であるのに対し、実験例(平成24年2月8日測定)は、AMYが145u/l(正常値は37〜125)、LY%が41.4(正常値18〜59)で、ほぼ正常値になっていることが分かる。
【0022】
[実験例3](実験対象者C)
本実験例では、
1) 実験対象者Cの持つ疾患は、「肺癌」である。
2) 実験条件1として、服薬時に水道水のみを500cc/日、飲用した比較例に対し、本発明の飲用水を500cc/日、飲用した実験例を比較した。
3) 実験結果:(比較する検査項目としてLD(乳酸脱水素酵素)(u/l)の数値を示す。)
比較例(2011年12月14日測定)は、LDが387u/l(正常値119〜229u/8)であるのに対し、実験例1(2012年1月26日測定)は、LDが282u/l(正常値119〜229u/8)で、実験例2(2012年2月8日測定)は、LDが246u/l(正常値119〜229u/8)で、ほぼ正常値に近くなっている。
4) 実験条件2として、一般のミネラル水を80cc×3回/日、2日間飲用した比較例に対し、本発明の飲用水を、80cc×3回/日、2日間飲用した実験例とにおいて、排尿量を比較した。
5) 実験結果:(比較する排尿量は、cc/3回採取/日の数値を示す。)
比較例は、90cc3回採取/日であるのに対し、実験例は、120cc/3回採取/日であり、排尿量が増加していることが明確である。
【0023】
[実験例4](実験対象者D)
本実験例では、
1) 実験対象者の持つ疾患は、「進行型食道癌」、「食道裂孔ヘルニア」、「胃潰瘍」である。
2) 医者の診断報告(実験前)→食道性状:門歯より37〜40cmにかけて6時方向に1/3周性の隆起性病変あり。表面の粘膜は粗造でscopeの接触により容易に出血を認めた。GIF-H260で通過は可能であった。ヨード染色では病変と平坦面1時方向まで不染領域を認めた。→質的診断:進行型食道癌。
胃性状:胃前庭部にびらんが散在している。→質的診断:慢性胃炎(びらん性胃炎)。
3) 実験条件1として、服薬時に水道水のみを500cc/日、飲用した比較例に対し、本発明の飲用水を500cc/日、飲用した実験例を比較した。
4) 実験結果:(食道内の内視鏡画像により比較した。)
比較例の画像1(
図1)は、内面の凹凸が大きい。
実験例の画像2(
図2)は、内面が滑らかな面に回復していることが明確である。
5) 医者の診断報告(実験後)→食道性状:門歯より34cm8時方向にCRT後瘢痕を認める。通常及びNBI観察では腫瘍はほぼ消失していた。→質的診断:食道瘢痕。
胃性状:穹隆部に発赤の散在を認める。→質的診断:慢性胃炎(表面性胃炎)。
【0024】
[実験例5](実験対象者E)
本実験例では、
1) 実験対象者Eの持つ疾患は、「肺癌」である。
2) 実験条件1として、服薬時に水道水のみを500cc/日、飲用した比較 例に対し、本発明の飲用水を500cc/日、飲用した実験例を比較した。
3) 実験結果:(検査項目としてCRP(C反応性蛋白)mg/dLの数値を示す。)
比較例(2012.9月12日測定)は、CRPが5(正常値は0.00〜0.30)であるのに対して、本実験例(2012.10月12日測定)は、CRPが1.03(正常値は0.00〜0.30)で、正常値に近づきつつある。
【0025】
[実験例6](実験対象者F)
本実験では、
1) 実験対象者Fの持つ疾患は、「糖尿」である。
2) 実験条件として、服薬時に水道水のみを500cc/日、飲用した比較例に対し、本発明の飲用水を500cc/日、飲用した実験例を比較した。
3) 実験結果:(検査項目としてHbAIc NGSP(糖化ヘモグロビン)の数値を示す。)
比較例(2012.9月12日測定)は、9%であるのに対し、実験例1(2013.7月18日測定)は、6.9%(正常値46〜6.2%)で、実験例2(2014.1月16日測定)は、7%(正常値46〜6.2%)で減少傾向にある。