(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る放射線遮蔽壁について説明する。
【0018】
図1の正面図、
図1のA−A断面図である
図2、及び
図1のB−B断面図である
図3に示すように、本実施形態の放射線遮蔽体としての放射線遮蔽壁10は、複数の放射線遮蔽ブロック12を積み上げて形成された壁部14と、壁部14の外周に設けられた枠部16と、目地部材収容部18、20と、目地部材収容部18、20へ配置された放射線遮蔽目地部材22とを有して構成されている。
【0019】
放射線遮蔽ブロック12は、積み上げられることにより隣接して配置されている。放射線遮蔽ブロック12は、高密度材料としての粒状又は粉状の重晶石(硫酸バリウム)が配合されたコンクリートにより形成された、放射線を遮蔽する直方体状のブロック部材である。
【0020】
本例では、放射線遮蔽ブロック12として、形状の異なる11種類のブロック(以下、「放射線遮蔽ブロック12A、12B、12C、12D、12E、12F、12G、12H、12I、12J、12K」とする)を用いている。
【0021】
壁部14の1段目には、放射線遮蔽ブロック12G、12F、12F、12F、12Hが、左から右へこの順に並設され、壁部14の2段目には、放射線遮蔽ブロック12B、12A、12A、12A、12Cが、1段目の放射線遮蔽ブロック12の上に左から右へこの順に並設されて積み上げられている。
【0022】
また、壁部14の3段目には、放射線遮蔽ブロック12D、12A、12A、12A、12Eが、2段目の放射線遮蔽ブロック12の上に左から右へこの順に並設されて積み上げられ、壁部14の4段目には、放射線遮蔽ブロック12B、12A、12A、12A、12Cが、3段目の放射線遮蔽ブロック12の上に左から右へこの順に並設されて積み上げられている。
【0023】
さらに、壁部14の5段目には、放射線遮蔽ブロック12J、12I、12I、12I、12Kが、4段目の放射線遮蔽ブロック12の上に左から右へこの順に並設されて積み上げられている。
【0024】
横方向へ並設された放射線遮蔽ブロック12同士の目地は上下段で互い違いになっており、馬目地を構成するように放射線遮蔽ブロック12が配置されている。
【0025】
図4の斜視図、
図5の正面図、
図6の平面図、及び
図7の側面図に示す放射線遮蔽ブロック12Aのように、放射線遮蔽ブロック12Aの上端面、下端面、左端面、及び右端面には、半円状の断面を有する溝部24、26、28、30がそれぞれ形成されている。
【0026】
放射線遮蔽ブロック12Bは、放射線遮蔽ブロック12Aの横方向の長さを半分にして左端面を平坦面にした(左端面に溝部28が形成されていない)ものである。
【0027】
放射線遮蔽ブロック12Cは、放射線遮蔽ブロック12Aの右端面を平坦面にした(右端面に溝部30が形成されていない)ものである。
【0028】
放射線遮蔽ブロック12Dは、放射線遮蔽ブロック12Aの左端面を平坦面にした(左端面に溝部28が形成されていない)ものである。
【0029】
放射線遮蔽ブロック12Eは、放射線遮蔽ブロック12Aの横方向の長さを半分にして右端面を平坦面にした(右端面に溝部30が形成されていない)ものである。
【0030】
放射線遮蔽ブロック12Fは、放射線遮蔽ブロック12Aの下端面を平坦面にした(下端面に溝部26が形成されていない)ものである。
【0031】
放射線遮蔽ブロック12Gは、放射線遮蔽ブロック12Aの下端面及び左端面を平坦面にした(下端面に溝部26が形成されていない、且つ左端面に溝部28が形成されていない)ものである。
【0032】
放射線遮蔽ブロック12Hは、放射線遮蔽ブロック12Aの横方向の長さを半分にして下端面及び右端面を平坦面にした(下端面に溝部26が形成されていない、且つ右端面に溝部30が形成されていない)ものである。
【0033】
放射線遮蔽ブロック12Iは、放射線遮蔽ブロック12Aの上下方向の長さを半分にして上端面を平坦面にした(上端面に溝部24が形成されていない)ものである。
【0034】
放射線遮蔽ブロック12Jは、放射線遮蔽ブロック12Aの上下方向の長さを半分にして上端面及び左端面を平坦面にした(上端面に溝部24が形成されていない、且つ左端面に溝部28が形成されていない)ものである。
【0035】
放射線遮蔽ブロック12Kは、放射線遮蔽ブロック12Aの上下方向の長さ及び横方向の長さをそれぞれ半分にして上端面及び右端面を平坦面にした(上端面に溝部24が形成されていない、且つ右端面に溝部30が形成されていない)ものである。
【0036】
なお、放射線遮蔽ブロック12の大きさ(長さ、高さ及び厚さ)は、放射線遮蔽ブロック12を積み上げて壁部14を形成することができ、この壁部14が放射線を遮蔽することができれば、どのようなものであってもよい。
【0037】
図2、
図3、及び
図8の正面図に示すように、隣接して上下及び左右に配置される放射線遮蔽ブロック12同士は、隣接する一方の放射線遮蔽ブロック12の端面に形成された溝部24、26、28、30と、隣接する他方の放射線遮蔽ブロック12の端面に形成された溝部26、24、30、28とを対向させて形成された目地部材収容部18、20へ放射線遮蔽目地部材22を配置することにより接合されている。
【0038】
図9(a)の断面図に示すように、放射線遮蔽目地部材22は、形状記憶合金により渦巻き状に形成された、放射線遮蔽性を有する乾式の部材であり、
図9(b)の断面図に示すように、放射線遮蔽ブロック12の外部から加熱することによって目地部材収容部18、20内で拡がり目地部材収容部18、20の内壁面に当たる。これにより、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する放射線52によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。
【0039】
図8に示すように、横方向へ配置された放射線遮蔽目地部材22は、複数の放射線遮蔽ブロック12に跨って設けられ、上下方向へ配置された放射線遮蔽目地部材22は、放射線遮蔽ブロック12ごとに設けられている。これにより、上下方向へ配置された放射線遮蔽目地部材22は、下端面が、横方向へ配置された放射線遮蔽目地部材22の上面に接触し、上端面が、横方向へ配置された放射線遮蔽目地部材22の下面に接触している。
【0040】
図1、
図2及び
図3に示すように、枠部16は、H形鋼からなる鉛直フレーム部材32、34、及び溝形鋼からなる水平フレーム部材36、38を有するとともに、鉛直フレーム部材32、34の上端部を水平フレーム部材36の左右端部に接合し、鉛直フレーム部材32、34の下端部を水平フレーム部材38の左右端部に接合することによって構成されている。すなわち、放射線を遮蔽する金属製の部材によって構成されている。また、水平フレーム部材38は、平鋼からなるベースプレート40の上面に取り付けられている。
【0041】
枠部16は、建物の床部42に、アンカーボルト44等によりベースプレート40を固定することによって、床部42に固定されている。
【0042】
図2に示すように、壁部14の上縁部を構成する放射線遮蔽ブロック12は、水平フレーム部材36を構成する溝形鋼の溝内へ挿入されて保持され、壁部14の面外方向46へ移動しないようになっている。
【0043】
また、壁部14の下縁部を構成する放射線遮蔽ブロック12は、水平フレーム部材38を構成する溝形鋼の溝内へ挿入されて保持され、壁部14の面外方向46へ移動しないようになっている。
【0044】
さらに、
図3に示すように、壁部14の側縁部を構成する放射線遮蔽ブロック12は、鉛直フレーム部材32、34を構成するH形鋼のフランジ間へ挿入されて保持され、壁部14の面外方向46へ移動しないようになっている。
【0045】
図2に示すように、水平フレーム部材36を構成する溝形鋼の溝天井面と、放射線遮蔽ブロック12の上面との間には、塩ビ、アルミニウム等により形成され放射線遮蔽ブロック12を保護する板状の保護材48が設けられている。
【0046】
また、
図3に示すように、鉛直フレーム部材32、34を構成するH形鋼のウェブ面と、放射線遮蔽ブロック12の側端面との間には、塩ビ、アルミニウム、ステンレス等により形成され放射線遮蔽ブロック12を保護する板状の保護材50が設けられている。
【0047】
図1に示すように、壁部14は、放射線遮蔽ブロック12同士を接着剤等によって接合したり、放射線遮蔽ブロック12同士の間の目地にモルタル等の充填材を充填したりしないで、放射線遮蔽ブロック12を積み上げただけの乾式施工によって組み立てられている。
【0048】
次に、本発明の実施形態に係る放射線遮蔽壁の作用と効果について説明する。
【0049】
本実施形態の放射線遮蔽壁10では、
図1に示すように、放射線遮蔽ブロック12を積み上げて壁部14を形成することにより、乾式施工によって放射線遮蔽壁を構築することができる。また、現場を汚すことなく、放射線遮蔽壁を構築することができる。さらに、騒音や振動の少ない施工によって放射線遮蔽壁を構築することができる。
【0050】
また、本実施形態の放射線遮蔽壁10では、
図9(b)に示すように、放射線遮蔽ブロック12により、壁部14の壁面に照射される放射線52が放射線遮蔽壁10を透過するのを抑制することができる。
【0051】
さらに、本実施形態の放射線遮蔽壁10では、
図9(b)に示すように、目地部材収容部18、20へ乾式の放射線遮蔽目地部材22を配置し、この放射線遮蔽目地部材22を目地部材収容部18、20内で拡げて目地部材収容部18、20の内壁面に当てることにより、壁部14の壁面に放射線52が照射されたときに、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する放射線52によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。また、放射線遮蔽ブロック12が寸法誤差を有していても、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間を塞ぐことができる。
【0052】
また、本実施形態の放射線遮蔽壁10では、
図9(b)に示すように、放射線遮蔽目地部材22を、目地部材収容部18、20内で拡がる渦巻き状の部材とすることにより、簡単な機構で、放射線遮蔽目地部材22を目地部材収容部18、20内で拡げることができる。これにより、放射線遮蔽目地部材22を目地部材収容部18、20の内壁面に確実に当てることができる。
【0053】
さらに、本実施形態の放射線遮蔽壁10では、
図4に示すように、重結晶(硫酸バリウム)が配合されたコンクリートにより放射線遮蔽ブロック12を形成することにより、放射線遮蔽ブロック12を、人や環境に配慮した材料(例えば、硫酸バリウム)で構成することができる。よって、放射線を使って殺菌や殺虫をする農業分野、レントゲン撮影を行う医療分野等において特に有効に用いることができる。また、硫酸バリウムは、粒径が小さく略均一の粒状又は粉状の高密度材料なので、放射線遮蔽ブロック12の比重分布を均一にすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0055】
なお、本実施形態では、
図9(b)に示すように、放射線遮蔽壁10によって放射線52を遮蔽する例を示したが、本実施形態の放射線遮蔽壁10は、X線、γ線、中性子線等のさまざまな放射線の遮蔽壁として適用することができる。
【0056】
また、本実施形態では、
図4に示すように、放射線遮蔽ブロック12を、直方体形状のブロック部材とした例を示したが、積み上げて壁を形成できるものであれば、立方体形状等の他の形状のものであってもよい。
【0057】
放射線遮蔽ブロック12は、壁部14が放射線遮蔽壁としての形状を保持できるように、圧縮強さを20N/mm
2以上とし、寸法精度を±1mm以内とするのが好ましい。放射線遮蔽ブロック12を、硫酸バリウム70%配合コンクリートによって形成した場合、圧縮強さを20N/mm
2以上とし、寸法精度を±1.0mm以内とすることができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、
図4に示すように、重晶石(硫酸バリウム)が配合されたコンクリートにより放射線遮蔽ブロック12を形成した例を示したが、放射線遮蔽ブロック12は、ブロック素材としての無機系材料又は有機系材料に、粒状又は粉状の高密度材料を配合することによって形成されていればよい。また、例えば、放射線遮蔽ブロック12は、高密度材料が配合されていない普通コンクリートによって形成してもよい。
【0059】
高密度材料とは、高比重の材料を意味する。高密度材料は、4以上の比重の材料や、放射線遮蔽ブロック12全体の比重が2.4以上となるような比重の材料とするのが好ましい。例えば、高密度材料を、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、銀、バリウム、タンタル、タングステン、プラチナ、金、鉛、ビスマス、ウラン、又はこれらの合金や酸化物としてもよいし、重晶石(硫酸バリウム)、又は劣化ウランとしてもよい。高密度材料を、
10B、
6Li、Cd、Gdとすれば、中性子線に対する放射線遮蔽ブロック12の遮蔽性を高めることができる。
【0060】
また、例えば、ブロック素材を、モルタル、石膏又はエポキシ樹脂としてもよい。放射線遮蔽ブロック12を、硫酸バリウム70%配合コンクリートによって形成した場合、比重を2.5以上とすることができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、
図1に示すように、馬目地を構成するように放射線遮蔽ブロック12を配置した例を示したが、芋目地を構成するように放射線遮蔽ブロック12を配置してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、
図4、
図5、
図6及び
図7に示すように、放射線遮蔽ブロック12の上端面、下端面、左端面、及び右端面に、半円状の断面を有する溝部24、26、28、30をそれぞれ形成した例を示したが、
図10の斜視図、
図11の正面図、
図12の平面図、及び
図13の側面図に示す放射線遮蔽ブロック62のように、放射線遮蔽ブロック62の上端面、下端面、左端面、及び右端面に、矩形状の断面を有する溝部54、56、58、60をそれぞれ形成するようにしてもよい。
【0063】
さらに、
図14の斜視図、
図15の正面図、
図16の平面図、及び
図17の側面図に示す放射線遮蔽ブロック64のように、溝部を、放射線遮蔽ブロック64の上下方向端面に形成された矩形状の断面を有する横溝部66、68と、放射線遮蔽ブロック64の側端面に形成された矩形状の断面を有する縦溝部70、72とで構成し、横溝部66、68と縦溝部70、72とを、放射線遮蔽ブロック64の厚さ方向74に対してずらして形成してもよい。
【0064】
このようにすれば、横溝部66、68と縦溝部70、72とが、放射線遮蔽ブロック64の厚さ方向74に対してずらして形成されているので、横溝部66、68と縦溝部70、72とへ配置される放射線遮蔽目地部材22同士を干渉させずに通しで交差させることができる。これにより、切れ目を設けずに放射線遮蔽目地部材22同士を交差させることができるため、放射線遮蔽目地部材22による放射線遮蔽効果を向上させることができる。なお、横溝部66、68、及び縦溝部70、72は、半円状の断面を有する溝であってもよい。
【0065】
また、本実施形態では、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、放射線遮蔽目地部材22を、形状記憶合金により渦巻き状に形成された放射線遮蔽性を有する乾式の部材とした例を示したが、放射線遮蔽目地部材は、目地部材収容部18、20内で拡がり目地部材収容部18、20の内壁面に当たる、放射線遮蔽性を有する乾式の部材であればよい。
【0066】
放射線遮蔽目地部材は、放射線遮蔽性を有するために、放射線遮蔽ブロック12の比重以上の比重を有する金属又は樹脂によって形成されていればよい。
【0067】
例えば、放射線遮蔽目地部材は、ステンレス、アルミニウム、チタン、鉄、タングステン、モリブデン等の金属によって形成することができる。
【0068】
また、例えば、放射線遮蔽目地部材は、放射線遮蔽ブロック12の比重以上の比重を有する金属や固体(結晶を含む)を含有する樹脂、ゴム、ゲル状の板やシート、粉状の充填材であってもよい。放射線遮蔽ブロック12の比重以上の比重を有する金属や固体(結晶を含む)としては、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、銀、バリウム、タンタル、タングステン、プラチナ、金、鉛、ビスマス、ウラン、又はこれらの合金や酸化物が挙げられ、さらに、水晶、石灰石、重晶石(硫酸バリウム)、大理石、又は劣化ウランが挙げられる。
【0069】
また、例えば、放射線遮蔽目地部材を、ポリエチレンやパラフィン等の樹脂、コンクリート、モルタル、又は石膏等を有する水素密度の大きい材料によって形成すれば、中性子線に対する放射線遮蔽壁10の遮蔽性を高めることができる。また、中性子線に対する放射線遮蔽壁10の遮蔽性をさらに高める場合には、中性子吸収断面積の大きな
10B、
6Li、Cd及びGdの少なくとも1つを含んだ、ポリエチレンやパラフィン等の樹脂、コンクリート、モルタル、又は石膏等を有する水素密度の大きい材料によって形成すれば好適に実施できる。
【0070】
さらに、例えば、
図18(a)、
図19、
図20、
図21、
図22の断面図に示す放射線遮蔽目地部材76、80、86、90、102を、目地部材収容部18、20へ配置するようにしてもよい。
【0071】
図18(a)に示すように、放射線遮蔽目地部材76は、渦巻き状に形成された金属製のステンレス板によって形成されており、弾性復元力によって拡がらないように、縮められた状態で端部が熱溶解形接着剤78によって固定されている。
【0072】
そして、
図18(b)に示すように、加熱手段によって放射線遮蔽ブロック12の外部から熱溶解形接着剤78を加熱して溶かし、放射線遮蔽目地部材76の端部の固定状態を解く。これにより、弾性復元力により放射線遮蔽目地部材76が目地部材収容部18、20内で拡がり、目地部材収容部18、20の内壁面に当たる。これにより、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する放射線52によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。
【0073】
図19に示すように、放射線遮蔽目地部材80は、形状記憶合金により渦巻き状に形成された放射線遮蔽性を有する内部材82と、この内部材82の外側に設けられたポリエチレン樹脂製の外部材84とを有して構成されている。
【0074】
放射線遮蔽目地部材80では、放射線遮蔽ブロック12の外部から内部材82を加熱することによって内部材82が拡がる。これに伴って目地部材収容部18、20内で外部材84が拡がり、目地部材収容部18、20の内壁面に当たる。
【0075】
これにより、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する放射線52によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。特に、ポリエチレン樹脂製の外部材84により、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する中性子線によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。
【0076】
なお、内部材82と外部材84とを逆にして放射線遮蔽目地部材80を構成してもよい。すなわち、内部材82をポリエチレン樹脂により形成し、外部材84を形状記憶合金により形成してもよい。
【0077】
図20に示すように、放射線遮蔽目地部材86は、半円状の断面を有する一対のポリエチレン樹脂製の部材により構成されており、一対の放射線遮蔽目地部材86の間に設けられた付勢部材としてのバネ部材88により、目地部材収容部18、20の内壁面へ押し付けられる。
【0078】
これにより、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する放射線52によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。特に、ポリエチレン樹脂製の放射線遮蔽目地部材86により、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する中性子線によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。
【0079】
また、目地部材収容部18、20内で拡がる機能を放射線遮蔽目地部材86自体に持たせなくてよいので、放射線遮蔽目地部材86をさまざまな種類の材料によって形成することができる。これにより、遮蔽対象とする放射線に有効な材料によって放射線遮蔽目地部材86を形成することができる。
【0080】
図21に示すように、放射線遮蔽目地部材90は、切り欠き部92が設けられた円環状の断面を有するポリエチレン樹脂製の部材により構成されている。また、放射線遮蔽目地部材90の内側に、切り欠き部94が設けられた円環状の断面を有する金属製の中間部材96が設けられている。放射線遮蔽目地部材90は、隣り合う放射線遮蔽ブロック12同士の目地と切り欠き部92とが目地部材収容部18、20の直径方向に対して直線状に位置しないように配置されている。
【0081】
例えば、
図21に示すように、目地部材収容部18、20の内壁面に突起部100を設け、この突起部100が切り欠き部92に配置されるようにして放射線遮蔽目地部材90の回転を抑えることにより、隣り合う放射線遮蔽ブロック12同士の目地と切り欠き部92とが目地部材収容部18、20の直径方向に対して直線状に位置しないようにしてもよい。また、例えば、目地部材収容部18、20の内壁面に粗面処理を施して放射線遮蔽目地部材90の回転を抑えることにより、隣り合う放射線遮蔽ブロック12同士の目地と切り欠き部92とが目地部材収容部18、20の直径方向に対して直線状に位置しないようにしてもよい。
【0082】
さらに、中間部材96の内側には、放射線遮蔽性を有する樹脂、無機系硬化体、又は発泡ウレタン等によって形成された、円形断面を有する内部材98が設けられている。内部材98の外周面は、中間部材96の内周面に接着されている。
【0083】
放射線遮蔽目地部材90は、弾性復元力によって中間部材96が拡がることによって目地部材収容部18、20内で拡がり、目地部材収容部18、20の内壁面に当たる。
【0084】
これにより、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する放射線52によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。特に、ポリエチレン樹脂製の放射線遮蔽目地部材90により、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する中性子線によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。
【0085】
また、中間部材96の内側を放射線52が通過することを内部材98によって抑制し、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する放射線52によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのをより抑制することができる。
【0086】
図22に示すように、放射線遮蔽目地部材102は、L字状の断面を有するポリエチレン樹脂製の部材により構成されている。また、放射線遮蔽目地部材102の内側に、切り欠き部104が設けられた円環状の断面を有する金属製の中間部材106が設けられている。放射線遮蔽目地部材102は、放射線遮蔽目地部材102の端部同士の間に形成される隙間と、隣り合う放射線遮蔽ブロック12同士の目地とが直線状に位置しないように配置されている。
【0087】
さらに、中間部材106の内側には、放射線遮蔽性を有する樹脂、無機系硬化体、又は発泡ウレタン等によって形成された、円形断面を有する内部材108が設けられている。内部材108の外周面は、中間部材106の内周面に接着されている。
【0088】
放射線遮蔽目地部材102は、弾性復元力によって中間部材106が拡がることによって目地部材収容部18、20内で(
図22の上下方向へ)拡がり、目地部材収容部18、20の内壁面に当たる。
【0089】
これにより、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する放射線52によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。特に、ポリエチレン樹脂製の放射線遮蔽目地部材102により、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する中性子線によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。
【0090】
また、中間部材106の内側を放射線52が通過することを内部材108によって抑制し、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する放射線52によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのをより抑制することができる。
【0091】
図19、
図20、
図21、及び
図22に示す放射線遮蔽目地部材80(外部材84)、86、90、102は、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入する中性子線に対して特に有効なものであるが、放射線遮蔽目地部材80(外部材84)、86、90、102を、ステンレス、アルミニウム、チタン、鉄、タングステン、モリブデン等の金属によって形成すれば、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入するX線やγ線に対して特に有効なものとなる。すなわち、放射線遮蔽目地部材80(外部材84)、86、90、102により、放射線遮蔽ブロック12同士の間の隙間から進入するX線やγ線によって放射線遮蔽壁10の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。
【0092】
なお、
図21に示した内部材98及び
図22に示した内部材108は、X線やγ線に対する放射線遮蔽壁10の遮蔽効果を高める場合には、高比重の材料にするのが好ましく、中性子線に対する放射線遮蔽壁10の遮蔽効果を高める場合には、ポリエチレンやパラフィン等の樹脂、コンクリート、モルタル、又は石膏等を有する水素密度の大きい材料によって形成するのが好ましい。また、中性子線に対する放射線遮蔽壁10の遮蔽効果をさらに高める場合には、中性子吸収断面積の大きな
10B、
6Li、Cd及びGdの少なくとも1つを含んだ、ポリエチレンやパラフィン等の樹脂、コンクリート、モルタル、又は石膏等を有する水素密度の大きい材料によって形成すれば好適に実施できる。
【0093】
さらに、本実施形態では、
図8に示すように、隣接して上下に配置される放射線遮蔽ブロック12間の目地と、隣接して左右に配置される放射線遮蔽ブロック12間の目地に放射線遮蔽目地部材22を設けた例を示したが、
図23及び
図24の正面図に示すように、壁部14の面外方向46に対して放射線遮蔽目地部材22同士がラップするように(側面視にて重なり合う形状となるように)して、放射線遮蔽目地部材22同士を繋ぐようにしてもよい(
図23及び
図24には、繋げられた状態の放射線遮蔽目地部材22のみが示されている)。このようにすれば、放射線遮蔽目地部材22同士の繋ぎ目を通過する放射線52を低減し、放射線遮蔽目地部材22同士を繋ぐことによる放射線遮蔽性の低下を抑制することができる。
【0094】
さらに、本実施形態では、
図8に示すように、隣接して上下に配置される放射線遮蔽ブロック12間の目地と、隣接して左右に配置される放射線遮蔽ブロック12間の目地に放射線遮蔽目地部材22を設けた例を示したが、隣接して上下に配置される放射線遮蔽ブロック12間の目地、及び隣接して左右に配置される放射線遮蔽ブロック12間の目地の一方に放射線遮蔽目地部材22を設けて、他方に通常の目地材(例えば、モルタル)や、
図25(a)〜(e)の断面図に示すような放射線遮蔽目地部110、112、114、116、118を設けてもよい。
【0095】
放射線遮蔽目地部110、112、114、116、118は、放射線遮蔽ブロック12の比重以上の比重を有する金属製又は樹脂製の部材であればよく、例えば、ステンレス板、アルミニウム、チタン、鉄、タングステン、モリブデン等の金属や、放射線遮蔽ブロック12の比重以上の比重を有する金属や固体(結晶を含む)を含有する樹脂、ゴム、ゲル状の板やシート、粉状の充填材によって形成することができる。
【0096】
放射線遮蔽ブロック12の比重以上の比重を有する金属や固体(結晶を含む)としては、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、銀、バリウム、タンタル、タングステン、プラチナ、金、鉛、ビスマス、ウラン、又はこれらの合金や酸化物が挙げられ、さらに、水晶、石灰石、重晶石(硫酸バリウム)、大理石、又は劣化ウランが挙げられる。例えば、
図25(d)においては、放射線遮蔽目地部116をH形鋼としてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、
図1に示すように、枠部16を、H形鋼からなる鉛直フレーム部材32、34、及び溝形鋼からなる水平フレーム部材36、38を有して構成し、ベースプレート40を平鋼により構成した例を示したが、枠部16及びベースプレート40は、放射線を遮蔽する金属製の部材によって構成されていればよい。例えば、枠部16及びベースプレート40を、H形鋼、溝形鋼、L形鋼、平鋼等によって構成してもよい。
【0098】
また、本実施形態では、
図1に示すように、放射線遮蔽壁10を、壁部14と枠部16とを有して構成した例を示したが、壁部14を面外方向46(
図2を参照のこと)へ複数重ねて遮蔽性能を向上させてもよい。
【0099】
さらに、放射線遮蔽壁10を1つのユニットにして、このユニットを壁部14の面内方向に対して複数並べることにより大きな壁面積の放射線遮蔽壁を構成するようにしてもよい。
【0100】
さらに、本実施形態では、
図1に示すように、放射線遮蔽壁10を、壁部14と枠部16とを有して構成した例を示したが、枠部16を用いないで、放射線遮蔽ブロック12同士を鋼板等の接合部材を介して接合するようにしてもよい。
【0101】
また、本実施形態の放射線遮蔽壁10は、放射線に対する遮蔽を必要とする、部屋の壁、パーティション、ドアとして利用することができる。
【0102】
さらに、本実施形態の放射線遮蔽壁10は、放射線遮蔽ブロック12の積み上げにより容易に構築することができるので、部屋を改修する際に有効である。例えば、放射線加速器施設において、放射線加速器を高出力のものにリプレイスする際に発生量が増加する二次γ線に対応させて、この放射線加速器が設置された部屋の既設の壁の放射線遮蔽性能を容易に高めることができる。また、例えば、γ線照射装置の移設やリプレイスに伴って行われる部屋のレイアウト変更に対しても容易に対応することができる。
【0103】
また、本実施形態の放射線遮蔽壁10は、
図1及び
図2に示すように、枠部16を床部42に固定することにより自立するものであるが、例えば、建物の柱梁架構に放射線遮蔽壁10を設置して、部屋同士を仕切る戸境壁や、部屋内部を仕切る間仕切り壁としてもよい。
【0104】
さらに、本実施形態では、放射線遮蔽体を放射線遮蔽壁10とした例を示したが、放射線遮蔽体を放射線遮蔽床としてもよい。すなわち、複数敷き並べることにより隣接して配置された複数の放射線遮蔽ブロックと、前記放射線遮蔽ブロックの端面に形成された溝部と、前記溝部同士を対向させて形成された目地部材収容部へ配置され、前記目地部材収容部内で拡がり前記目地部材収容部の内壁面に当たる乾式の放射線遮蔽目地部材と、を有する放射線遮蔽床を構成してもよい。放射線遮蔽ブロックは、例えば、建物の床版上に複数敷き並べるようにすればよい。
【0105】
放射線遮蔽体を放射線遮蔽床とした場合においても、放射線遮蔽ブロックの端面に形成された溝部を対向させて形成された目地部材収容部へ乾式の放射線遮蔽目地部材を配置し、この放射線遮蔽目地部材を目地部材収容部内で拡げて目地部材収容部の内壁面に当てることにより、乾式施工で、放射線遮蔽ブロック同士の間の隙間から進入する放射線によって放射線遮蔽体の放射線遮蔽性が低下するのを抑制することができる。
【0106】
放射線遮蔽体を放射線遮蔽床とした場合、放射線遮蔽ブロック12の圧縮強さは、必要に応じて適宜決めればよい。例えば、放射線遮蔽ブロック12の圧縮強さを12N/mm
2以上とするのが好ましい。
【0107】
また、放射線遮蔽体を放射線遮蔽床とする場合、放射線遮蔽ブロックの第1側端面に形成された第1横溝部と、この第1側端面と直交する放射線遮蔽ブロックの第2側端面に形成された第2横溝部とで、溝部を構成し、第1横溝部と第2横溝部とを、放射線遮蔽ブロックの厚さ方向(上下方向)に対してずらして形成するようにしてもよい。
【0108】
このようにすれば、第1横溝部と第2横溝部とへ配置される放射線遮蔽目地部材同士を干渉させずに通しで交差させることができる。これにより、切れ目を設けずに放射線遮蔽目地部材同士を交差させることができるため、放射線遮蔽効果を向上させることができる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。