特許第6898812号(P6898812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898812
(24)【登録日】2021年6月15日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/01 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   F01N3/01
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-166642(P2017-166642)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-44648(P2019-44648A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】島村 遼一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌司
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一哉
【審査官】 菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−243419(JP,A)
【文献】 特開2006−194116(JP,A)
【文献】 特開2011−241703(JP,A)
【文献】 特開2006−112383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
バッテリーと、
前記バッテリーから電力が供給され、前記エンジンを始動させるスターターモーターと、
前記バッテリーから電力が供給され、前記エンジンから排出される排ガスに含まれる成分を分解するプラズマリアクターと、
前記バッテリーから前記スターターモーターへの電力供給、および、前記バッテリーから前記プラズマリアクターへの電力供給を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記エンジンの回転数が第1の閾値以上となったことを条件として、前記バッテリーから前記スターターモーターへの電力供給を停止し、前記バッテリーから前記スターターモーターへの電力供給を停止した後、前記エンジンの回転数が前記第1の閾値よりも高い第2の閾値以上となる前に、前記バッテリーから前記プラズマリアクターへの電力供給を開始することを特徴とするエンジンシステム。
【請求項2】
さらに、前記エンジンから供給される動力によって発電するオルタネーターを備え、
前記制御部は、前記バッテリーから前記プラズマリアクターへの電力供給を開始した後、前記エンジンの回転数が前記第2の閾値以上となったことを条件として、前記オルタネーターを作動させることを特徴とする、請求項1に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガスに含まれる粒子状物質(PM)などの有害成分を分解する装置として、プラズマリアクターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−014948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有害成分は、エンジン始動直後の低温時に、排ガスに多く含まれるため、プラズマリアクターは、エンジン始動時から起動させることが望ましい。
【0005】
しかし、プラズマリアクターを、エンジン始動時に起動させると、バッテリーの電圧が過度に低下し、エンジンがストールする可能性がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、バッテリーの電圧が過度に低下することを防止しつつ、エンジンが始動した後、燃焼温度が比較的低い状態から、排ガスに含まれる成分を分解することができるエンジンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、エンジンと、バッテリーと、前記バッテリーから電力が供給され、前記エンジンを始動させるスターターモーターと、前記バッテリーから電力が供給され、前記エンジンから排出される排ガスに含まれる成分を分解するプラズマリアクターと、前記バッテリーから前記スターターモーターへの電力供給、および、前記バッテリーから前記プラズマリアクターへの電力供給を制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記バッテリーから前記スターターモーターへの電力供給を停止した後に、前記バッテリーから前記プラズマリアクターへの電力供給を開始する、エンジンシステムを含む。
【0008】
このような構成によれば、制御部は、スターターモーターに電力供給しているときには、プラズマリアクターに電力供給しない。
【0009】
これにより、スターターモーターとプラズマリアクターとに同時に電力供給することによってバッテリーの電圧が過度に低下することを、防止できる。
【0010】
また、制御部は、エンジンが始動し、スターターモーターへの電力供給を停止した後に、プラズマリアクターに電力供給する。
【0011】
これにより、エンジンが始動した後、燃焼温度が比較的低い状態から、排ガスに含まれる成分を分解することができる。
【0012】
本発明[2]は、さらに、前記エンジンから供給される動力によって発電するオルタネーターを備え、前記制御部が、前記バッテリーから前記プラズマリアクターへの電力供給を開始した後、前記エンジンの回転数が所定の閾値以上となったことを条件として、前記オルタネーターを作動させる、上記[1]のエンジンシステムを含む。
【0013】
このような構成によれば、オルタネーターの負荷によってエンジンがストールすることを防ぎつつ、エンジンが始動した後、なるべく早期からオルタネーターを作動させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バッテリーの電圧が過度に低下することを防止しつつ、エンジンが始動した後、燃焼温度が比較的低い状態から、排ガスに含まれる成分を分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明のエンジンシステムの一実施形態の概略構成図である。
図2図2は、本発明のエンジンシステムの一実施形態の制御を説明するためのフローチャートである。
図3図3は、本発明のエンジンシステムの一実施形態の制御を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.エンジンシステム1の構成
図1に示すように、エンジンシステム1は、例えば、車両100に搭載される。エンジンシステム1は、エンジン2と、バッテリー3と、スターターモーター4と、プラズマリアクター5と、オルタネーター6と、制御部7とを備える。
【0017】
(1)エンジン2
エンジン2は、例えば、車両100のエンジンルーム内に配置される。エンジン2には、図示しない吸気系、および、図示しない燃料噴射系が接続される。吸気系、および、燃料噴射系は、制御部7によって制御される。また、エンジン2には、エンジン2の回転数を計測するための図示しないセンサが取り付けられる。センサは、エンジン2の回転数に応じた電気信号を出力する。センサは、図示しない信号配線を介して、制御部7に電気的に接続される。これにより、制御部7は、センサからの電気信号に基づいて、エンジン2の回転数を判断する。
【0018】
(2)バッテリー3
バッテリー3は、例えば、車両100のエンジンルーム内に配置される。バッテリー3としては、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの公知の二次電池が挙げられる。
【0019】
(3)スターターモーター4
スターターモーター4は、エンジン2を始動させる。スターターモーター4には、バッテリー3から電力が供給される。
【0020】
詳しくは、スターターモーター4は、電源配線8を介して、バッテリー3に電気的に接続される。バッテリー3から電源配線8を介してスターターモーター4に電力が供給されると、スターターモーター4が回転し、スターターモーター4からの駆動力により、エンジン2が回転する。
【0021】
なお、電源配線8の途中には、例えば、図示しないスイッチが介在される。スイッチは、図示しない信号配線を介して、制御部7に電気的に接続される。制御部7は、スイッチをオンすることにより、バッテリー3からスターターモーター4に電力を供給する(スターターモーターON)。また、制御部7は、スイッチをオフすることにより、バッテリー3からスターターモーター4への電力供給を停止する(スターターモーターOFF)。
【0022】
(4)プラズマリアクター5
プラズマリアクター5は、エンジン2から排出される排ガスに含まれる有害成分を分解する。プラズマリアクター5には、バッテリー3から電力が供給される。
【0023】
詳しくは、プラズマリアクター5は、電源配線9を介して、バッテリー3に電気的に接続される。プラズマリアクター5は、少なくとも1対の図示しない電極を有する。1対の電極は、互いに間隔を隔てて対向する。バッテリー3から電源配線9を介してプラズマリアクター5に電力が供給されると、1対の電極の間で放電が生じる。これにより、1対の電極の間の気体が、プラズマ状態となる。すなわち、プラズマリアクター5内にプラズマが発生する。
【0024】
また、プラズマリアクター5は、排気管10の途中に介在される。プラズマリアクター5は、排気管10を介して、エンジン2に接続される。これにより、プラズマリアクター5には、エンジン2から排出された排ガスが、導入される。プラズマリアクター5に導入された排ガスに含まれる有害成分(例えば、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)など)は、プラズマリアクター5内のプラズマにより、分解される。プラズマリアクター5を通過した排ガスは、排気管10を介して、車外に排出される。
【0025】
なお、電源配線9の途中には、例えば、図示しないスイッチと、図示しない昇圧回路(例えば、フライバックコンバーターなど)とが介在される。スイッチは、図示しない信号配線を介して、制御部7に電気的に接続される。制御部7は、スイッチをオンすることにより、バッテリー3からプラズマリアクター5に電力を供給する(プラズマリアクターON)。また、制御部7は、スイッチをオフすることにより、バッテリー3からプラズマリアクター5への電力供給を停止する(プラズマリアクターOFF)。
【0026】
(5)オルタネーター6
オルタネーター6は、エンジン2から供給される動力によって発電する。オルタネーター6は、電源配線12を介して、バッテリー3に電気的に接続される。オルタネーター6で発電された電力は、電源配線12を介して、バッテリー3に充電される。
【0027】
なお、オルタネーター6は、例えば、図示しないアクチュエータによって、エンジン2から動力を受けて発電する発電状態(オルタネーターON)と、エンジン2から動力を受けず、発電しない発電停止状態(オルタネーターOFF)とに切り替えられる。アクチュエータは、図示しない信号配線を介して、制御部7に電気的に接続される。アクチュエータは、制御部7によって制御される。
【0028】
(6)制御部7
制御部7は、バッテリー3からスターターモーター4への電力供給、および、バッテリー3からプラズマリアクター5への電力供給を制御する。制御部7は、車両100における電気的な制御を実行するECU(Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備える。制御部7は、電源配線13を介して、バッテリー3に接続される。制御部7は、車両100のイグニションスイッチがオンされたときに、バッテリー3から電源配線13を介して電力が供給されることにより、起動する。
【0029】
2.エンジンシステム1の制御
図2および図3を参照して、エンジンシステム1の制御について説明する。
【0030】
ユーザーが車両100のエンジン2を始動するとき、制御部7は、図2に示すように、ユーザーのキー操作やリモート操作に基づいて、バッテリー3からスターターモーター4に電力を供給する。すると、スターターモーター4がONされる(S1)。
【0031】
すると、図3に示すように、時点t0において、スターターモーター4が回転し、エンジン2が回転する。このとき、エンジン2の回転数Rは、第1の閾値R1よりも低い。また、スターターモーター4が回転することにより、バッテリー3の電圧が低下する。このとき、バッテリー3の電圧は、プラズマリアクター5がOFFされていることにより、少なくとも、制御部7がダウンしない程度の電圧に保たれる。具体的には、バッテリー3の電圧は、例えば、6V以上である。
【0032】
次いで、制御部7は、図2に示すように、吸気系および燃料噴射系を制御して、エンジン2を点火する(S2)。
【0033】
すると、図3に示すように、時点t1において、エンジン2の回転数Rが上昇する。また、バッテリー3の電圧は、徐々に、スターターモーター4がONされる前の電圧(初期電圧V0)に向かって回複する。
【0034】
次いで、制御部7は、図2に示すように、エンジン2の回転数Rが第1の閾値R1以上となったことを条件として(S3:YES)、バッテリー3からスターターモーター4への電力供給を停止する(S4)。
【0035】
第1の閾値R1は、例えば、600rpmである。
【0036】
なお、制御部7は、バッテリー3の電圧が初期電圧V0以上となったことを条件として、バッテリー3からスターターモーター4への電力供給を停止することもできる。
【0037】
図3に示すように、エンジン2の回転数Rは、スターターモーター4がOFFされた時点t2の後、さらに上昇する。
【0038】
次いで、図2に示すように、制御部7は、バッテリー3からプラズマリアクター5への電力供給を開始する(S5)。
【0039】
詳しくは、制御部7は、図3に示すように、スターターモーター4がOFFされた後、エンジン2の回転数Rが第2の閾値R2以上となる前に、時点t3において、バッテリー3からプラズマリアクター5への電力供給を開始する。好ましくは、制御部7は、スターターモーター4がOFFされた直後に、バッテリー3からプラズマリアクター5への電力供給を開始する。より好ましくは、制御部7は、スターターモーター4がOFFされるとほぼ同時に、バッテリー3からプラズマリアクター5への電力供給を開始する。これにより、エンジン2の回転数Rが比較的低く、エンジン2の燃焼温度が低いときから、プラズマリアクター5によって、排ガスに含まれる有害成分(特に、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)など)を分解することができる。
【0040】
次いで、図2に示すように、制御部7は、バッテリー3からプラズマリアクター5への電力供給を開始した後、エンジン2の回転数Rが第2の閾値R2以上となったことを条件として(S6、YES)、オルタネーター6を作動させる(S7)。
【0041】
第2の閾値R2は、オルタネーター6の負荷によってエンジン2がストールしない程度の回転数である。第2の閾値R2は、例えば、700rpm以上、例えば、1000rpm以下である。
【0042】
エンジン2の回転数Rが第2の閾値R2以上となったことを条件としてオルタネーター6を作動させることにより、オルタネーター6の負荷によってエンジン2がストールすることを防ぎつつ、エンジン2が始動した後、なるべく早期からオルタネーター6を作動させることができる。
【0043】
また、図3に示すように、オルタネーター6を作動させた時点t4から後、オルタネーター6からの電力を利用して、バッテリー3の電圧を昇圧することができる。バッテリー3の電圧を昇圧することにより、電源配線9の途中に介在される昇圧回路の効率が向上し、省電力化を図ることができる。
【0044】
3.作用効果
エンジンシステム1によれば、図3に示すように、制御部7は、スターターモーター4に電力供給しているときには、プラズマリアクター5に電力供給しない。
【0045】
これにより、スターターモーター4とプラズマリアクター5とに同時に電力供給することによってバッテリー3の電圧が過度に低下することを、防止できる。
【0046】
また、制御部7は、エンジン2が始動し、スターターモーター4への電力供給を停止した後に、プラズマリアクター5に電力供給する。
【0047】
これにより、エンジン2が始動した後、燃焼温度が比較的低い状態から、排ガスに含まれる有害成分を分解することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 エンジンシステム
2 エンジン
3 バッテリー
4 スターターモーター
5 プラズマリアクター
6 オルタネーター
7 制御部
図1
図2
図3