特許第6898833号(P6898833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社奥村組の特許一覧

特許6898833シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法
<>
  • 特許6898833-シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法 図000002
  • 特許6898833-シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法 図000003
  • 特許6898833-シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法 図000004
  • 特許6898833-シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法 図000005
  • 特許6898833-シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法 図000006
  • 特許6898833-シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法 図000007
  • 特許6898833-シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法 図000008
  • 特許6898833-シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898833
(24)【登録日】2021年6月15日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20210628BHJP
   E21D 9/087 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   E21D9/093 D
   E21D9/087 A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-219008(P2017-219008)
(22)【出願日】2017年11月14日
(65)【公開番号】特開2019-90215(P2019-90215A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】村中 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸浩
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−180476(JP,A)
【文献】 特開平08−291697(JP,A)
【文献】 特開2017−002564(JP,A)
【文献】 特開2007−032103(JP,A)
【文献】 特開平04−083090(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/166829(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/093
E21D 9/087
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体の前面に回転自在の状態で設けられたカッタ盤と、
前記機器本体による掘削坑の内周に構築され、相互に締結された複数の環状のセグメントで構成され、長さ方向にレールが敷設されたシールド坑と、
前記レール上を走行可能な状態で当該機器本体の後方に配置された複数の後続設備台車と、
前記機器本体と先頭の前記後続設備台車との間に伸縮可能に且つこれらに対して屈折可能に接続されるとともに、中間部位が前記レール上を走行可能に設けられ、前記機器本体の掘進により伸張し、前記機器本体の掘進停止で縮長して、前記後続設備台車を前記機器本体の移動に追従するように牽引する牽引部材と、
を有することを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
前記牽引部材は、前記機器本体の前胴部に接続されている、
ことを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機。
【請求項3】
前記牽引部材は、
前記レール上を走行可能に設けられた牽引中継台車と、
前記機器本体と前記牽引中継台車との間に伸縮可能に設けられた第1の牽引ロッドと、
前記第1の牽引ロッドを縮長する第1の縮長部材と、
前記牽引中継台車と先頭の前記後続設備台車との間に設けられた第2の牽引ロッドと、
を備える、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記第1の牽引ロッドはテレスコピック式であり、前記第1の縮長部材はレバーホイストである、
ことを特徴とする請求項3記載のシールド掘進機。
【請求項5】
前記第2の牽引ロッドは伸縮可能とされ、
前記牽引部材は、前記第2の牽引ロッドを縮長する第2の縮長部材をさらに備える、
ことを特徴とする請求項3または4記載のシールド掘進機。
【請求項6】
前記第2の牽引ロッドはテレスコピック式であり、前記第2の縮長部材はレバーホイストである、
ことを特徴とする請求項5記載のシールド掘進機。
【請求項7】
請求項1または2記載のシールド掘進機を用いたシールド掘進機の掘進方法であって、
前記機器本体の掘進により前記牽引部材を伸張させる工程、
および、前記機器本体が掘進を停止したときに、前記牽引部材を縮長して複数の前記後続設備台車を牽引する工程、
の2工程を少なくとも1回実行して地盤を曲線状に掘進する、
ことを特徴とするシールド掘進機の掘進方法。
【請求項8】
請求項3または4記載のシールド掘進機を用いたシールド掘進機の掘進方法であって、
前記機器本体の掘進により前記第1の牽引ロッドを伸張させる工程、
および、前記機器本体が掘進を停止したときに、前記第1の縮長部材により前記第1の牽引ロッドを縮長して複数の前記後続設備台車を牽引する工程、
の2工程を少なくとも1回実行して地盤を曲線状に掘進する、
ことを特徴とするシールド掘進機の掘進方法。
【請求項9】
請求項5または6記載のシールド掘進機を用いたシールド掘進機の掘進方法であって、
前記機器本体が掘削した地盤の曲線部内にあるときには、前記第2の牽引ロッドを伸張不能にしておいて前記機器本体の掘進により前記第1の牽引ロッドを伸張させる工程、および、前記機器本体が掘進を停止したときに、前記第1の縮長部材により前記第1の牽引ロッドを縮長して複数の前記後続設備台車を牽引する工程、の2工程を少なくとも1回実行し、
前記機器本体が掘削した地盤の前記曲線部から脱出し且つ前記牽引部材が前記曲線部内にあるときには、前記第1の牽引ロッドを伸張不能にしておいて前記機器本体の掘進により前記第2の牽引ロッドを伸張させる工程、および、前記機器本体が掘進を停止したときに、前記第2の縮長部材により前記第2の牽引ロッドを縮長して複数の前記後続設備台車を牽引する工程、の2工程を少なくとも1回実行して、地盤を曲線状に掘進する、
ことを特徴とするシールド掘進機の掘進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機およびシールド掘進機の掘進方法に関し、特に地盤を曲線状に掘進する際の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、切羽の安定を図りながら切羽に押し当てられたカッタ盤を回転させることにより地山を掘削する一方、掘削坑の内周にセグメントを組み付けることによりシールド坑を構築する機器である。
【0003】
シールド掘進機の機器本体は、前胴部と後胴部とを備えている。前胴部は、後胴部の前方端部に屈折可能な状態で接続されている。この機器本体内において前胴部と後胴部との間には、中折れジャッキおよびシールドジャッキが機器本体の周方向に沿って複数配置されている。そして、この中折れジャッキやシールドジャッキの選択により機器本体の掘進方向(姿勢)が制御され、地盤を直線状に掘進したり曲線状に掘進している。
【0004】
また、シールド坑の坑内には、その長さ方向に沿ってレールが敷設されて機器本体の後続設備を備えた後続設備台車が配置されており、機器本体の移動に追従して移動するようになっている。
【0005】
さらに、シールド坑の坑内には前述のレールとは別のレールが並行して敷設され、セグメント構成材、レール、枕木、配管、ボルトといった資材などを運搬する運搬台車を走行させている。
【0006】
なお、シールド掘進機については、例えば、特許文献1に記載があり、前胴部と後胴部とを屈折自在に接続する複数の中折れジャッキを備えるシールド掘進機において、左右両側の中折れジャッキのうちの一方の中折れジャッキを伸長させることにより、他方の中折れジャッキの取付部を中心にして前胴部を後胴部に対して屈折させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−20659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、シールド掘進機で地盤を掘進する際には、セグメントの組み付けやレールの延伸等の作業を効率よく行うために、機器本体の直後に、運搬台車で運搬された資材を置いておくことが求められる。すると、機器本体と先頭の後続設備台車との間を後続設備台車の長さ(2.5〜4m程度)以上に(例えば10m程度)空けて資材置き場としてのスペースを設けることになり、そのためは、両者の間に、当該スペースの長さ相当分の牽引部材を介在させることになる。
【0009】
ここで、後続設備台車の長さ以上の牽引部材を介在させた場合、機器本体が地盤を曲線状に掘進する際に制約が発生する。つまり、後続設備台車が牽引部材の先端に向かって引っ張られるようになるので、曲線状の掘削坑で構築されたシールド坑の曲率が大きくなると、内輪差に相当する現象が発生して後続設備台車がレールを曲がることができない。そこで、牽引部材の長さを考慮した曲率で地盤を曲線状に掘進しなければならなくなるという制約である。
【0010】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、機器本体と後続設備台車との間に牽引部材が設けられたシールド掘進機において、機器本体が地盤を曲線状に掘削する際の曲率が牽引部材により制約されることのない技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のシールド掘進機は、機器本体の前面に回転自在の状態で設けられたカッタ盤と、前記機器本体による掘削坑の内周に構築され、相互に締結された複数の環状のセグメントで構成され、長さ方向にレールが敷設されたシールド坑と、前記レール上を走行可能な状態で当該機器本体の後方に配置された複数の後続設備台車と、前記機器本体と先頭の前記後続設備台車との間に伸縮可能に且つこれらに対して屈折可能に接続されるとともに、中間部位が前記レール上を走行可能に設けられ、前記機器本体の掘進により伸張し、前記機器本体の掘進停止で縮長して、前記後続設備台車を前記機器本体の移動に追従するように牽引する牽引部材と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項1に記載の発明において、前記牽引部材は、前記機器本体の前胴部に接続されている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項1または2に記載の発明において、前記牽引部材は、前記レール上を走行可能に設けられた牽引中継台車と、前記機器本体と前記牽引中継台車との間に伸縮可能に設けられた第1の牽引ロッドと、前記第1の牽引ロッドを縮長する第1の縮長部材と、前記牽引中継台車と先頭の前記後続設備台車との間に設けられた第2の牽引ロッドと、を備える、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項3に記載の発明において、前記第1の牽引ロッドはテレスコピック式であり、前記第1の縮長部材はレバーホイストである、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項3または4に記載の発明において、前記第2の牽引ロッドは伸縮可能とされ、前記牽引部材は、前記第2の牽引ロッドを縮長する第2の縮長部材をさらに備える、ことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項5に記載の発明において、前記第2の牽引ロッドはテレスコピック式であり、前記第2の縮長部材はレバーホイストである、ことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するため、請求項7に記載の本発明のシールド掘進機の掘進方法は、請求項1または2記載のシールド掘進機を用いたシールド掘進機の掘進方法であって、前記機器本体の掘進により前記牽引部材を伸張させる工程、および、前記機器本体が掘進を停止したときに、前記牽引部材を縮長して複数の前記後続設備台車を牽引する工程、の2工程を少なくとも1回実行して地盤を曲線状に掘進する、ことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するため、請求項8に記載の本発明のシールド掘進機の掘進方法は、請求項3または4記載のシールド掘進機を用いたシールド掘進機の掘進方法であって、前記機器本体の掘進により前記第1の牽引ロッドを伸張させる工程、および、前記機器本体が掘進を停止したときに、前記第1の縮長部材により前記第1の牽引ロッドを縮長して複数の前記後続設備台車を牽引する工程、の2工程を少なくとも1回実行して地盤を曲線状に掘進する、ことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するため、請求項9に記載の本発明のシールド掘進機の掘進方法は、請求項5または6記載のシールド掘進機を用いたシールド掘進機の掘進方法であって、前記機器本体が掘削した地盤の曲線部内にあるときには、前記第2の牽引ロッドを伸張不能にしておいて前記機器本体の掘進により前記第1の牽引ロッドを伸張させる工程、および、前記機器本体が掘進を停止したときに、前記第1の縮長部材により前記第1の牽引ロッドを縮長して複数の前記後続設備台車を牽引する工程、の2工程を少なくとも1回実行し、前記機器本体が掘削した地盤の前記曲線部から脱出し且つ前記牽引部材が前記曲線部内にあるときには、前記第1の牽引ロッドを伸張不能にしておいて前記機器本体の掘進により前記第2の牽引ロッドを伸張させる工程、および、前記機器本体が掘進を停止したときに、前記第2の縮長部材により前記第2の牽引ロッドを縮長して複数の前記後続設備台車を牽引する工程、の2工程を少なくとも1回実行して、地盤を曲線状に掘進する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
複数の後続設備台車は、牽引部材の全長である牽引部材の先端点ではなく、牽引部材の中間点に向かって引っ張られるので、牽引部材が長くなっても後続設備台車がレールを曲がることが可能になる。これにより、牽引部材の長さを考慮した曲率で地盤を曲線状に掘進する必要がなくなるので、機器本体が地盤を曲線状に掘削する際の曲率が牽引部材により制約されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態のシールド掘進機およびシールド掘進機による掘削坑の内周に構築されたシールド坑の内部を側面から透かして見せた概念図である。
図2図1のシールド掘進機の要部を示す側面図である。
図3図1のシールド掘進機の要部を示す平面図である。
図4図2のシールド掘進機におけるA−A線に沿った断面図である。
図5図2のシールド掘進機におけるB−B線に沿った断面図である。
図6】本実施の形態のシールド掘進機で地盤を曲線状に掘削している状体を示す説明図である。
図7】機器本体が掘削した地盤の曲線部内にあるときにシールド掘進機で地盤を曲線状に掘削している状体を連続して示す説明図である。
図8】機器本体が地盤の曲線部から脱出し且つ牽引部材が曲線部内にあるときにシールド掘進機で地盤を曲線状に掘削している状体を連続して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
本実施の形態のシールド掘進機Mは、例えば、泥土圧式のシールドマシン(密閉式のシールドマシン)であり、その外形は掘削方向に沿って細長い円柱状に形成されている。このシールド掘進機Mは、カッタヘッド(カッタ盤)1が設けられた機器本体2を備えている。
【0024】
カッタヘッド1は、地盤の切羽を掘削する円盤状の掘削盤であり、機器本体2の前面(切羽に対向する面)に設けられてカッタヘッド1の外周に沿って回転可能な状態で支持されている。カッタヘッド1の前部には、センタービット、ローラカッタ、ビットおよびスクレーパツース等のような地盤を掘削する複数の掘削部材1aが設けられているとともに、掘削土砂をシールド掘進機Mのチャンバ3内に取り込む開口部(図示せず)が設けられている。
【0025】
機器本体2は、シールド掘進機Mを駆動する機器や掘削土砂を後方に搬送する機器等を備えている。機器本体2は、前胴部2−1と、その後方の後胴部2−2と、さらにその後方のテールシール2−3とを備えている。
【0026】
前胴部2−1および後胴部2−2は、例えば円筒状の鋼製板により形成されており、機器本体2の外形を形成するとともに、機器本体2の内部に中空空間を形成する部分である。前胴部2−1と後胴部2−2とは、前胴部2−1の後端側において後胴部2−2の先端の球面軸受部が前胴部2−1の内周面に接した状態で入り込むことで係合されている。
【0027】
テールシール2−3は、掘進作業中に機器本体2の後部から機器本体2内に地下水等が入り込むのを防止する封止部材であり、後胴部2−2の後端部に後胴部2−2の内周に沿って枠状に設置されている。
【0028】
図1に示すように、機器本体2の前端から機器本体2の内方に後退した位置には隔壁4が設けられている。この隔壁4は機器本体2内を切羽側と機内側とに分ける部材であり、切羽側(すなわち、カッタヘッド1と隔壁4との間)には、カッタヘッド1により掘削された土砂(掘削土)等を収容する前述のチャンバ3が設けられている。
【0029】
一方、機器本体2の機内側には、カッタ駆動部2a、中折れジャッキ2b、シールドジャッキ2cおよびスクリュコンベヤ2d等が設けられている他、図示しないエレクタ(セグメント組立装置)、添加材注入部、土圧検出部などの各種の機器等が設けられている。
【0030】
カッタ駆動部2aは、カッタヘッド1を回転させる回転駆動手段であり、駆動源として、例えば、油圧式のモータを備えている。ここでは、カッタ駆動方式として中間支持駆動方式が例示されている。すなわち、カッタ駆動部2aは、カッタヘッド1の正面内の中央と外周との間にカッタヘッド1の周方向に沿って複数個並んで配置されている。
【0031】
中折れジャッキ2bは、前胴部2−1と後胴部2−2とを連結するとともに、シールド掘進機Mの掘削方向を修正する機器であり、機器本体2の機内の内壁近傍において、シールド掘進機Mの周方向に沿って複数個並んで配置されている。この中折れジャッキ2bに圧油を供給し前胴部2−1と後胴部2−2とを予め決められた方向および角度に屈折させた状態でシールド掘進機Mを推進することにより、シールド掘進機Mの推進方向や姿勢を制御することが可能になっている。
【0032】
シールドジャッキ2cは、機器本体2の後方に設置されたセグメントSGに反力をとってシールド掘進機Mを前進させるための推進力を発生させる機器であり、機器本体2の機内の内壁近傍において前胴部2−1と後胴部2−2との境界を跨ぐように、シールド掘進機Mの周方向に沿って複数個並んで配置されている。
【0033】
スクリュコンベヤ2dは、チャンバ3内に取り込まれた掘削土砂を機外に搬送する搬送機器であり、前胴部2−1の下部から高さ方向中央に向かって斜め上向きに延在した状態で設けられている。スクリュコンベヤ2dは、例えば、リボン式のスクリュコンベヤで構成されている。すなわち、スクリュコンベヤ2dの排土管内に回転可能な状態で設けられ回転動作により排土管内の泥土等を後方に押し出す軸無しスクリュ部を備えている。なお、スクリュコンベヤ2dの排出端部には排土管(図示せず)が連結されており、掘削土砂は、その排土管を通じてズリ搬出台車(図示せず)等に載せられて搬出される。
【0034】
このシールド掘進機Mにおいて、機器本体2による掘削坑の内周にはシールド坑Tが構築されている。シールド坑Tは、掘削坑の周方向に沿って複数設置されて図示しない締結部材により相互に締結されたセグメントSGで構成されている。セグメントSGは、例えば、平板状のコンクリート製セグメントまたは合成セグメント(コンクリートと鋼材との合成構造)からなり、外部から運び込まれたセグメント構成材7(図4)を掘削坑の内周に円環状に組み立てて構成される。
【0035】
構築されたシールド坑Tの坑内には、その長さ方向に沿って2組のレールR1,R2が敷設されている(図4図5)。レールR1は、後続設備台車5をシールド掘進機Mの掘進に追従してシールド坑Tの長手方向に沿って移動させるためのレールであり、レールR2は、バッテリロコやバッテリロコに牽引された運搬台車6が走行するレールである。したがって、複数の後続設備台車5がレールR1上を走行可能な状態で、また複数の運搬台車6がレールR2上を走行可能な状態で、それぞれ機器本体2の後方に配置されている。なお、後続設備台車5は、シールド掘進機Mの掘進に追従してレールR1上を移動する。
【0036】
ここで、後続設備台車5はシールド掘進機Mの後続設備を備えた台車であり、例えば、操作台車、シールド油圧ユニット台車、カッタ油圧ユニット台車、カッタオイルタンク台車、テールグリスポンプ台車、制御盤台車、トランス台車、加泥台車、エア圧送および材料台車、高圧ケーブル台車、計装ケーブル台車、カプセル風管台車などがある。
【0037】
また、バッテリロコは電気を動力源とする機関車であり、運搬台車6はセグメント構成材7、レール、枕木、配管、ボルトといった資材などを含む部材を運搬するための台車である。
【0038】
図1に示すように、機器本体2と先頭の後続設備台車5との間には、牽引部材10が配置されている。これは、機器本体2の直後に、運搬台車6で運搬された資材を置いておくためのスペースを設けるためである。
【0039】
図2および図3に示すように、牽引部材10は、先端部が機器本体2の前胴部2−1に(詳しくは、前胴部2−1に設けられたスクリュコンベヤ2dに)ジョイントJを介して、後端部が先頭の後続設備台車5にジョイントJを介して、それぞれ屈折可能に接続されている。なお、牽引部材10の先端部の接続部位は前胴部2−1に限られるものではなく、後胴部2−2やそれ以外の場所であってもよい。
【0040】
図2および図3に詳しく示すように、牽引部材10は、中間位置に設けられた牽引中継台車11、機器本体2と牽引中継台車11との間に設けられた第1の牽引ロッド10a、および牽引中継台車11と先頭の後続設備台車5との間に設けられた第2の牽引ロッド10bを備えている。
【0041】
ここで、図4に示すように、牽引中継台車11はレールR1上に設置されて当該レールR1上を走行可能に設けられている。また、第1の牽引ロッド10aおよび第2の牽引ロッド10bはテレスコピック式の伸縮可能な構造となっており、機器本体2の掘進により伸張するようになっている。図4において、レールR2上には運搬台車6の一例としてセグメント構成材7を運搬する台車が示されており、当該運搬台車6でセグメント構成材7を機器本体2の後方まで搬入しておいて、エレクタでセグメントSGを組み立てる。
【0042】
なお、第1の牽引ロッド10aと牽引中継台車11、および第2の牽引ロッド10bと牽引中継台車11も、ジョイントJを介して屈折可能に接続されている。
【0043】
さらに、牽引部材10には、第1の牽引ロッド10aを縮長するためのレバーホイスト(第1の縮長部材)12aが第1の牽引ロッド10aの後部に、第2の牽引ロッド10bを縮長するためのレバーホイスト(第2の縮長部材)12bが第2の牽引ロッド10bの後部に、それぞれ設けられている。そして、機器本体2の掘進が停止したときにこのレバーホイスト12a、12bのレバーを操作することにより、前述のようにして伸張した牽引ロッド10a、10bが作業者の手引力を使って縮長される。
【0044】
ここで、第1の牽引ロッド10aおよび第2の牽引ロッド10bは伸縮可能になっていれば、テレスコピック式以外の構造であってもよい。また、レバーホイスト12aおよびレバーホイスト12bは第1の縮長部材および第2の縮長部材の一例に過ぎず、第1の牽引ロッド10aおよび第2の牽引ロッド10bを縮長できる限り、他の様々な手段を用いることができる。
【0045】
なお、第1の牽引ロッド10aおよび第2の牽引ロッド10bの上部には、上方に向けて開口した略コ字形の形状を呈し、機器本体2から後方へと伸びる配管などを保持するための保持具13aが所定の間隔を空けて複数取り付けられている。また、第1の牽引ロッド10aおよび第2の牽引ロッド10bの下部には、機器本体2から後方へと伸びる配線などを保持するためのフック13bが所定の間隔を空けて複数取り付けられている。
【0046】
次に、以上のような構成のシールド掘進機Mで地盤を曲線状に掘削する場合について、図6図8を用いて説明する。
【0047】
本実施の形態のシールド掘進機Mでは、地盤を曲線状に掘削する際には、図6に示すように、機器本体2の掘進で牽引部材10を伸張させる工程と、機器本体2が掘進を停止したときに、牽引部材10を縮長して当該牽引部材10に後続した複数の後続設備台車5を牽引する工程との2工程を、1回または複数回繰り返し実行する。
【0048】
すなわち、図7に示すように、機器本体2が掘削した地盤の曲線部内にあるときには、第1の牽引ロッド10aが伸張できるように、第2の牽引ロッド10bが伸張できないようにしておいて機器本体2を掘進し(図7(a))、第1の牽引ロッド10aを伸張させる(図7(b))。
【0049】
次に、機器本体2が例えば1つのセグメントSGの長さ分掘り進んで掘進を停止したならば、レバーホイスト12aを操作して第1の牽引ロッド10aを縮長し、複数の後続設備台車5を牽引する(図7(c))。
【0050】
そして、これらの2工程を1回または複数回繰り返しながら地盤を曲線状に掘進していく。
【0051】
このとき、第1の牽引ロッド10aの縮長により、複数の後続設備台車5は、牽引部材10の全長である牽引部材10の先端点(機器本体2と第1の牽引ロッド10aとの接続点)ではなく、牽引部材10の中間点、つまり牽引部材10の約半分の長さである第2の牽引ロッド10bと牽引中継台車11との接続点Pに向かって引っ張られる。
【0052】
これにより、牽引部材10が長くなっても後続設備台車5がレールR1を曲がることが可能になるので、牽引部材10の長さを考慮した曲率で地盤を曲線状に掘進する必要がなくなる。したがって、機器本体2が地盤を曲線状に掘削する際の曲率が牽引部材10により制約されることがない。
【0053】
そして、機器本体2が地盤の曲線部から脱出し且つ牽引部材10が曲線部内にあるときには、図8に示すように、今度は第1の牽引ロッド10aが伸張できないように、第2の牽引ロッド10bが伸張できるようにしておいて機器本体2を掘進し(図8(a))、第2の牽引ロッド10bを伸張させる(図8(b))。
【0054】
そして、機器本体2が例えば1つのセグメントSGの長さ分掘り進んで掘進を停止したならば、レバーホイスト12bを操作して第2の牽引ロッド10bを縮長し、複数の後続設備台車5を牽引する(図8(c))。
【0055】
これらの2工程を、牽引部材10が曲線状の地盤から脱出するまで1回または複数回繰り返しながら掘進していく。
【0056】
このときには、第2の牽引ロッド10bの縮長により、牽引部材10の約半分の長さである第2の牽引ロッド10bと牽引中継台車11との接続点Pに向かって引っ張られるので、牽引部材10が長くなっても後続設備台車5がレールR1を曲がることが可能になり、機器本体2が地盤を曲線状に掘削する際の曲率が牽引部材10により制約されることがない。
【0057】
なお、第1の牽引ロッド10aのみを伸縮可能にするとともにレバーホイスト12aのみを設け、第2の牽引ロッド10bには伸縮機能を有しないものを用いてレバーホイスト12bも省略し、機器本体2が地盤の曲線部から脱出し且つ牽引部材10が曲線部内にあるときにも、図7に示す工程、つまり機器本体2を掘進して第1の牽引ロッド10aを伸張させる工程、および、機器本体2が掘進を停止したならば、レバーホイスト12aを操作して第1の牽引ロッド10aを縮長して複数の後続設備台車5を牽引する工程を1回または複数回繰り返し行うようにしてもよい。
【0058】
但し、機器本体2が地盤の曲線部から脱出し且つ牽引部材10が曲線部内にあるときに図8に示す工程を実行するようにすれば、直線部を掘進する機器本体2に対して曲線部にある牽引部材10が後続設備台車5をスムーズに牽引することができる。
【0059】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上の説明では、本発明を泥土圧シールドマシンに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、カッタヘッドと機器本体との間の泥水室に泥水を圧送し、泥水室内の泥水の圧力を切羽の土圧および地下水圧に見合う圧力にして切羽の安定を図りながらカッタヘッドを切羽に押し当てて回転させることにより地盤を掘削する泥水式シールドマシンに適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 カッタヘッド
1a 掘削部材
2 機器本体
2−1 前胴部
2−2 後胴部
2−3 テールシール
2a カッタ駆動部
2b ジャッキ
2c シールドジャッキ
2d スクリュコンベヤ
3 チャンバ
4 隔壁
5 後続設備台車
6 運搬台車
7 セグメント構成材
10 牽引部材
10a 第1の牽引ロッド
10b 第2の牽引ロッド
11 牽引中継台車
12a レバーホイスト(第1の縮長部材)
12b レバーホイスト(第2の縮長部材)
13a 保持具
13b フック
J ジョイント
M シールド掘進機
P 接続点
R1,R2 レール
SG セグメント
T シールド坑
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8