(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって:(1)二層コーティングのトップコートからの微粒子/移行可能物(migrateable)の放出がごく僅かであるコーティングを開発すること;および、(2)基材と滑らかな機能性層との間の強固な接着を達成するために、異なる基材上に直接適用される多用途のベースコートプラットフォームを開発することの必要性が残っている。(2)の解決は、(1)の改善をもたらし得る可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様では、
重合体接着促進因子;
第一の単量体または重合体架橋剤;
光開始剤;および
溶媒を含む、基材材料に適用するための接着促進コーティング製剤が提供されて、ここで
重合体接着促進因子は、疎水性および親水性ポリマーブロックを含むブロック共重合体および/または親水性官能基を含む親水性ポリマーであり、ここで、親水性官能基の10%〜100%は、疎水性官能基でキャップされる。
【0009】
本発明の第二の態様では、滑らかな上層コーティングをその上に形成することができる基材材料上のベースコーティング層を形成するための接着促進コーティングが提供され、
重合体接着促進因子;
第一の単量体または重合体架橋剤によって形成された、第一の架橋された重合体マトリックスを含み、ここで
重合体接着促進因子は、疎水性および親水性ポリマーブロックを含むブロック共重合体および/または親水性官能基を含む親水性ポリマーであり、ここで、親水性官能基の10%〜100%は、疎水性官能基でキャップされる。
【0010】
本発明の第一および第二の態様の実施態様では:
(a)重合体接着促進因子は、ブロック共重合体であってよく、
親水性ブロックは、多糖類(例えばキトサン)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリメタクリル酸、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリ(2−オキサゾリン)、およびポリエチレンイミン(PEI)から選択される群の1つまたは複数より選択されてよい、および
疎水性ブロックは、ポリスチレン(PS)、ポリブタジエン(PB)、ポリイソプレン(PI)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(ビニルエーテル)(PVE)、ポリ(ビニルメチルエーテル)(PVME)、ポリ(ビニルブチルエーテル)(PVBE)、ポリイミドおよびポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)から選択される群の1つまたは複数より選択されてよい(例えば、親水性ブロックは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)から選択されてよく、疎水性ブロックは、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)から選択される);
(b)重合体接着促進因子が親水性官能基を含む親水性ポリマーである場合は、ここで、親水性官能基の10%〜100%は、疎水性官能基でキャップされ、
親水性官能基を含む親水性ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリルアミド(PAM)、多糖類、およびポリ(ビニルアルコール)(PVA)から選択される群の1つまたは複数であってよく、および
疎水性官能基は、1つまたは2つの親水性官能基をキャップしてよく、メチレン(CH
2)、メチル(CH
3)、エチレン(CHCH
3)、エチル(CH
2CH
3)、C
3−6アルキル、およびC
3−6アルキレン(例えばCH(CH
2)
2CH
3)の1つまたは複数から選択されて、ここで、後半2つの群は、非置換またはヒドロキシル基によって置換される(例えば、親水性官能基を含む親水性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)であり、疎水性官能基は、2つのヒドロキシル基をキャップして、CH(CH
2)
2CH
3である);
(c)親水性官能基の25%〜100%(例えば30%〜100%、例えば35%〜100%、50%〜75%または30%〜50%)は、疎水性官能基によってキャップされてよい;
(d)重合体接着促進因子は、20,000〜2,000,000の数平均分子量を有してよく、および/または、直鎖、分岐または架橋される;
(e)第一の単量体または重合体架橋剤は、架橋が可能な少なくとも2つの官能基を有するモノマーまたはポリマーであってよい(例えば、前記の少なくとも2つの官能基のそれぞれは、アクリレートおよびメタクリレートからなる群より選択されて;および/または、前記の第一の単量体または重合体架橋剤がポリマーである場合は、ポリマーは、ポリエステルまたはポリエーテルである);
(f)第一の単量体または重合体架橋剤は、ブタンジオールジメタクリレート、ビスフェノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート/メタクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート/メタクリレートオリゴマー、およびアクリルアクリレートオリゴマーからなる群より選択されてよく、場合によりここで、第一の単量体または重合体架橋剤は、ビスフェノールAエポキシアクリレート、ビスフェノールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジメタクリレート、プロポキシル化グリセロールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ−アクリレート、トリプロピレンジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、およびトリ(プロピレングリコール)ジアクリレートからなる群より選択される;
(g)第一の単量体または重合体架橋剤は、少なくとも2つの硬化性アクリレートおよび/またはメタクリレート基を有するポリエーテルであってよい;
(h)第一の単量体または重合体架橋剤は、200〜50,000ダルトン(例えば、200〜10,000ダルトン、400〜5,000ダルトン、例えば、400〜2,000ダルトン)の分子量を有してよい。
【0011】
本発明の第一の態様の実施態様では:
重合体接着促進因子は、0.05wt%〜10wt%(例えば0.1wt%〜5wt%)の量で存在してよく;
第一の単量体または重合体架橋剤は、0.2wt%〜7wt%の量で存在してよく;
光開始剤は、0.01wt%〜2wt%の量で存在してよく;および
溶媒は、92wt%〜99wt%の量で存在してよい(例えば、親水性および/または疎水性ポリマーは、0.1wt%〜5wt%の量で存在し、第一の単量体または重合体架橋剤は、0.6wt%〜5wt%の量で存在し、光開始剤は、0.1wt%〜1wt%の量で存在し、溶媒は、94wt%〜98wt%の量で存在する)。
【0012】
本明細書において用いられる場合、用語「オリゴマー」は、2〜10個の繰り返しユニットを有する化合物を指してよく、用語「ポリマー」のサブセットであると考えられる。
【0013】
本発明の第三の態様では、それを必要とする基材表面上に滑らかなコーティングを形成するためのパーツのキットが提供されて、前記コーティングは、基材の表面の直接的に上の接着促進コーティング層および接着促進コーティング層の上の滑らかなコーティング層を含み、キットは、以下を含む:
(a)本発明の第一の態様に記載またはその実施態様の任意の技術的に道理にかなった組み合わせでの、接着促進コーティング製剤;および
(b)以下を含む滑らかなコーティング製剤:
溶媒;
開始剤;および
少なくとも2つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーまたは少なくとも1つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーおよび少なくとも2つの硬化性官能基を有する単量体または重合体架橋剤。
【0014】
本発明の第四の態様では、それを必要とする基材表面をコーティングするための滑らかなコーティングが提供されて、
接着促進コーティングとしての、本発明の第二の態様に記載およびその実施態様の任意の技術的に道理にかなった組み合わせの接着促進コーティング層;および
(a)少なくとも2つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーを、それ自体と硬化させるステップ;または
(b)少なくとも1つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーを、少なくとも2つの硬化性官能基を有する単量体または重合体架橋剤と組み合わせて硬化させるステップ
によって形成される、第二の架橋されたポリマーマトリックスを含む滑らかなコーティング層を含み、ここで、単量体または重合体架橋剤は、200〜5000ダルトン(例えば、200〜1000、例えば、200〜750ダルトン、300〜600ダルトン)の分子量を有する。
【0015】
本発明の第三および第四の態様の実施態様では:
(i)少なくとも1つまたは2つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマー上の官能基(単数または複数)は、アクリレートおよびメタクリレートからなる群の1つまたは複数より選択されてよく;
(ii)少なくとも1つまたは2つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、ゼラチン、キチン、または、より具体的には、ポリエーテル類、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエステル類、ポリビニルアルコール類、多糖類およびそれらの共重合体からなる群の1つまたは複数より選択されてよく、場合によりここで、少なくとも1つまたは2つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、PEG−co−PPG、PEG−co−PPG−co−PEG、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ε−カプロラクトン−b−エチレングリコール−b−ε−カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−b−エチレングリコール−b−ラクチド)、ポリ[(ラクチド−co−グリコリド)−b−エチレングリコール−b−(ラクチド−co−グリコリド)]、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびPVP−co−PEGからなる群の1つまたは複数より選択されてよく、場合によりここで、前記の少なくとも1つまたは1つの硬化性官能基は、アクリレートであってよい;
(iii)単量体または重合体架橋剤は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,10−ドデカンジオールジメタクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、2−ヒドロキシ1−3−ジメタクリロキシプロパン、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールAエポキシアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、PEGジアクリレートまたはPEGメタクリレートからなる群より選択されてよく、場合によりここで、単量体クロスリンカーは、アミド基を含まない;
(iv)少なくとも1つまたは2つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、20,000〜200,000ダルトンの数平均分子量を有してよい;および/または
(v)少なくとも1つまたは2つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、非イオン性直鎖、分岐または架橋された親水性ポリマーであってよい;および/または
(vi)開始剤は、光開始剤または熱開始剤であってよい;および/または
(vii)溶媒は、水および/または有機溶媒であってよく、場合によりここで、有機溶媒は、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール)からなる群の1つまたは複数より選択されてよい。
【0016】
本発明の第三の態様の実施態様では:
(i)少なくとも2つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、1wt%〜15wt%の量で存在してよく、開始剤は、0.05wt%〜1wt%の量で存在してよく、および、溶媒は、84wt%〜99wt%の量で存在してよい;
(ii)少なくとも1つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、1wt%〜15wt%の量で存在してよく、単量体架橋剤は、0.2wt%〜5wt%の量で存在してよく、開始剤は、0.05wt%〜0.6wt%の量で存在してよく、および、溶媒は、80wt%〜99wt%の量で存在する。
【0017】
本発明の第四の態様の実施態様では:
(a)重合体接着促進因子および第一の架橋された重合体マトリックスは、物理的に一緒に結合されてよい(例えば、重合体接着促進因子および第一の架橋された重合体マトリックスは、物理的に一緒に結合されて相互貫通ネットワークを形成する);
(b)接着促進コーティング層および滑らかなコーティング層は、第一および第二の架橋されたポリマーマトリックスの間の架橋によって相互接続されてよい;
(c)乾燥状態での接着促進コーティング層および滑らかなコーティング層の組み合わされたコーティングの厚さは、50nm〜50μm(例えば0.5μm〜20μm)であってよい;
(d)滑らかなコーティングは、基材表面上であり、ここで、表面は、金属、またはポリマーからなる群の1つまたは複数から作られてよく、場合によりここで、ポリマーは、ポリ(エテン−コ−テトラフルオロエテン)、ポリテトラフルオロエチレン、またはより具体的には、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ラテックス、ぺバックス、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素化エチレンプロピレンおよびシリコーンエラストマーの1つまたは複数であってよい;
(e)接着促進コーティング層には、接着促進因子は、接着促進コーティング層の80wt%以下の量で存在してよい(例えば、15wt%〜65wt%);
(f)接着促進コーティング層には、第一の架橋された重合体マトリックスは、20wt%〜85wt%(例えば、25wt%〜75wt%、25wt%〜70wt%、例えば、35wt%〜65wt%)の量で存在してよい;
(g)滑らかなコーティング層には、第二の架橋されたポリマーマトリックスが、少なくとも1つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーを、少なくとも2つの硬化性官能基を有する単量体または重合体架橋剤と組み合わせて硬化させるステップによって形成される場合は、少なくとも1つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、35wt%よりも多い量(例えば55wt%よりも多い、例えば、55wt%〜99.6wt%)で存在し、単量体または重合体架橋剤は、0.5wt%〜70wt%(例えば、3wt%〜30wt%)の量で存在する。
【0018】
本発明の第五の態様では、アーティクルの全体または一部を、滑らかなコーティングでコーティングする方法が提供されて、以下のステップを含む:
(a)コーティングすべき少なくとも1つの表面を有するアーティクルを提供するステップ;
(b)前記の少なくとも1つの表面を、本発明の第一の態様に記載の接着促進コーティング製剤(またはその実施態様の任意の技術的に道理にかなった組み合わせ)によってコーティングして、ベースコーティングされたアーティクルを形成するステップ;
(c)ベースコーティングされたアーティクルを、硬化させるステップに供して、硬化された、ベースコーティングされたアーティクルを形成するステップ;
(d)硬化された、ベースコーティングされたアーティクルを、本発明の第三の態様に記載の滑らかなコーティング製剤(またはその実施態様の任意の技術的に道理にかなった組み合わせ)によってコーティングして、硬化されていない滑らかなコーティングされたアーティクルを提供するステップ;および
(e)硬化されていない滑らかなコーティングされたアーティクルを、硬化させるステップに供して、滑らかなコーティングされたアーティクルを形成するステップ。
【0019】
本発明の実施態様では、方法のステップ(c)および(e)における硬化させるステップは、紫外線硬化条件を用いて行なわれる。さらに、本発明のさらなる実施態様では、硬化させるステップ(c)は、コーティングされたアーティクル上に生じるコーティングが、潤滑性試験において20サイクルにわたって安定であるように、ステップ(e)においてベースコート層とトップコート層との間に架橋が生じるのを可能にする期間t
1のあいだ行なわれる。
【0020】
本発明の第六の態様では、本発明の第四の態様に記載の滑らかなコーティング(またはその実施態様の任意の技術的に道理にかなった組み合わせ)においてコーティングされた表面を含むアーティクルが提供される。
【0021】
本発明は、付随する図を参照して説明され得る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の滑らかなコーティングは、ベースコーティング層(接着促進コーティング層)およびトップコーティング層(滑らかなコーティング層)を含んでよい。ベースコーティングは、ポリマー/モノマーを含む接着促進コーティング製剤を、硬化性官能基、開始剤、接着促進因子および溶媒と硬化させるステップによって形成される。ベースコーティング層(接着促進コーティング層)では、硬化性ポリマーおよび接着促進因子は、互いに物理的に結合またはトラップされて、硬化させるステップの後にポリマーネットワークを形成する。また、ベースコーティング層(接着促進コーティング層)は、トップコーティング層(滑らかなコーティング層)と共有結合を形成して、安定なコーティングネットワークを発達し得る。
【0024】
機能性または滑らかなコーティング層が潤滑性を提供する一方で、接着促進コーティング層は、混成コーティングに安定性を与える。接着促進コーティング層における親水性ポリマーの疎水性置換を調整することによって、金属、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ラテックス、ぺバックス、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン(HDPEおよびLDPE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリ(エテン−コ−テトラフルオロエテン)(ETFE)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)およびシリコーンエラストマーなどのような、広範な医療機器基材への接着促進コーティング層の良好な付着を確保することが可能であることが見いだされた。PP、HDPE、FEPおよびETFEのような、これらの材料の一部は、非常に疎水性(低い表面エネルギー)であり、したがって、親水性コーティング溶液がこれらの表面上に自然に広がることは困難である。理論によって拘束されることを望まずに、この問題は、これらの疎水性基材表面が、前記基材表面のためのコーティング製剤の部分として用いられる溶媒の表面エネルギーと比較して、よりいっそう低い表面エネルギーを有するために生じると考えられる。このことは、基材表面を効率的に濡らすことを困難にさせる。したがって、親水性コーティング溶液は、基材のものよりも高い表面エネルギーを有するので、基材表面の表面エネルギーを増大させるために、どうにかして基材を改変する必要が常に存在する。この状況において良好な接着を達成するための最も一般的な方法は、基材表面上に極性基を生じさせるための、表面の酸化またはプラズマ処理のような事前処理を用いることによるものである。しかしながら、そのような事前処理は、製造コストを増大させて、製造効率を低下させる。本発明は、この問題を除去する。
【0025】
滑らかなコーティング層は、親水性硬化性ポリマー、開始剤、および溶媒を、親水性架橋剤とともに/ともなわずに、硬化させるステップによって形成することができる。クロスリンカーを有する硬化性親水性ポリマーまたはそれ自体と架橋することのできる硬化性ポリマーを用いる利点は、ポリマーネットワーク全体が安定であることであり(全ての重合体成分の間の架橋に起因する)、そして、人体の内腔中にデバイスが配置された場合に、落下および移行することのできる最小限の粒子をもたらす。対照的に、架橋能力を有さない完全に形成された親水性ポリマーを、硬化されて別個のポリマーを形成する架橋剤と組み合わせて用いた場合、移行可能な粒子のレベルは、よりいっそう高い。これは、親水性ポリマーが単に架橋剤の支持ポリマーネットワーク(すなわち、互いに貫通するネットワーク)内にトラップされるだけであるからであると考えられ、このことは、重合体ネットワークの安定性がより低いことを意味し、より高レベルの移行可能粒子をもたらす。換言すれば、親水性ポリマーが、架橋されたモノマー材料から作られた支持ネットワーク中にトラップされるだけの場合は、移行可能物(migratable)は、支持ネットワーク内の2つのノード間の距離の増大に比例して有意に増大して、それは順々に、モノマーの分子量およびその硬化効率に関連する。
【0026】
本発明と関連する利点を以下に挙げる。
(1)本明細書に記載のコーティング製剤は、金属、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ラテックス、ぺバックス、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、およびシリコーンエラストマーなどを含む、医療機器の製造において用いられる多種多様の材料に直接適用可能である。安定で均質なコーティングを達成するために、プラズマまたは他の化学的事前処理ステップは必要でない。
(2)コーティングは、医療機器に関する摩擦力の95%以上の低減を達成することができ、多数の挿入/除去サイクル後でさえ、低い微粒子放出を維持する。
(3)医療機器上に適用された場合に、コーティングは、微粒子/移行可能物の放出が非常に低い。
(4)理論によって拘束されることを望まずに、本明細書に記載の特定の滑らかなコーティングの優れた安定性および耐久性は、(a)ベースコーティングおよびトップコーティング層内のポリマーネットワークの絡まりまたは共有結合;および(b)ベースコーティングポリマーと基材との間の強い接着に起因し得ると考えられる。
(5)本明細書に記載のコーティングは、ポリマーネットワーク内の水分子を効率的にトラップすることができ、10分よりも長いドライアウト時間をもたらす。
(6)本明細書に記載の滑らかなコーティング技術は、UV硬化に基づき、完全に形成された均質のコーティングが、生のコーティングされていないアーティクルから5分未満で得られるのを可能にする。さらに、本明細書に記載の方法は、コーティングされた製品を得るために数時間またはそれよりも多く必要とする伝統的な熱硬化と比較して、より高いコーティング効率を有する。
(7)再び理論によって拘束されることを望まずに、ベースコーティングにおける接着促進因子の適用は、コーティングを多種多様の材料上で安定にさせると考えられる。
(8)コーティングは、生体適合性である。
【0027】
したがって、それを必要とする表面をコーティングするための滑らかなコーティングが提供されて、以下を含む:
以下を含む接着促進コーティング層:
重合体接着促進因子;
第一の単量体または重合体架橋剤によって形成された、第一の架橋された重合体マトリックス(ここで、重合体接着促進因子は、疎水性および親水性ポリマーブロックを含むブロック共重合体および/または親水性官能基を含む親水性ポリマーであり、ここで、親水性官能基の10%〜100%は、疎水性官能基でキャップされる);および
(a)少なくとも2つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーを、それ自体と硬化させるステップ;または
(b)少なくとも1つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーを、少なくとも2つの硬化性官能基を有する単量体または重合体架橋剤と組み合わせて硬化させるステップ
によって形成された、第二の架橋されたポリマーマトリックスを含む滑らかなコーティング層。
【0028】
コーティングされたアーティクルを水で濡らした後に、コーティング層は、用いられる基材の表面に対して満足な付着および非常に低い摩擦力を示す(例えば、
図3を参照して以下により詳細に記載する)。
【0029】
用語「少なくとも1つ」は、本明細書において用いられる場合、前記用語が前に付いたアイテムの1つまたは1つよりも多く(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個、例えば、1、2または3個)を指し得ることが理解されよう。例えば、語句「少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーを・・・硬化させるステップ」において用いられる場合、1つまたは複数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個、例えば、1、2または3個)の親水性硬化性ポリマーが、接着促進コーティング層内に含まれ得ることが理解されよう。同様に、用語「少なくとも2つ」は、本明細書において用いられる場合、前記用語が前に付いたアイテムの2つまたは2つよりも多く(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10個、例えば、2または3個)を指し得ることが理解されよう。例えば、語句「少なくとも2つの硬化性官能基」において用いられる場合、2以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10個、例えば、2、3、4、5、6または7個)の架橋可能な官能基が、接着促進コーティング層内に含まれるそれぞれの親水性硬化性ポリマー鎖内に存在すること、および、別のポリマー鎖上に適合するパートナーをそれらが有する限り、それぞれのポリマー鎖上の架橋可能な官能基は、同一または異なってよいことが理解されよう。
【0030】
したがって、本明細書において用いられる場合、用語「少なくとも2つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーを、それ自体と硬化させるステップ」は:それぞれのポリマー鎖上に2つの同一の官能基を有する単一の親水性硬化性ポリマーの使用;官能基が架橋を形成することができる限り、それぞれのポリマー鎖上に2つの異なる官能基を有する単一の親水性硬化性ポリマーの使用(例えば、前記の2つの異なる官能基は、カルボン酸基およびアミノ基またはカルボン酸基およびヒドロキシル基であってよい);それぞれのポリマー鎖上に2つの同一の官能基をそれぞれ有する2つの親水性硬化性ポリマーの使用(すなわち、官能基は、両方のポリマー上で同一であってよく、それにより、ポリマーネットワークが両方のポリマーの間で形成するのを可能にし、または、両方のポリマー上で異なり、それにより、2つの離れているが相互貫通しているポリマーネットワークが形成するのを可能にする);それぞれのポリマー鎖上に2つの非同一の官能基をそれぞれ有する2つの親水性硬化性ポリマーの使用(ここで、非同一の官能基は、単一の重合体ネットワークが架橋結合を介して形成するのを、または、2つの離れているが相互貫通しているポリマーネットワークが形成するのを、可能にすることができる);または、任意の他の技術的に道理にかなった組み合わせを指し得る。
【0031】
本明細書において用いられる場合、用語「滑らか」は、濡れた後に滑りやすい表面を説明する。より完全には、医療機器表面上のコーティング層は、25±2℃の温度で測定した場合に、300gのクランプ力および1cm/sの牽引速度の下で、摩擦力が元の摩擦力の10%未満であるならば、「滑らか」であると考えられる。物体が滑らかであるかどうかを測定するための試験プロトコルは、実施例に提供される。
【0032】
本明細書において用いられる場合、用語「接着促進因子」は、材料表面(例えば基材表面)上へのポリマーの接着を改善するポリマーに関する。
【0033】
本明細書において用いられる場合、用語「親水性」および「疎水性」は、式(1)を用いたDavies法に従って計算される親水性−親油性バランス(HLB)値に関する。ポリマーは、HLB>10である場合に親水性と考えられ、HLB<10である場合に疎水性と考えられる。
【0035】
ここで:
mは、分子内の親水基の数であり;
H
iは、i番目の(i
th)親水基の値であり(例えば、Daviesによって提供される表に基づく);および
nは、分子内の親油基の数である。
【0036】
本明細書において言及されるように、重合体接着促進因子は、HLB>10である親水性主鎖ポリマーを有してよい。親水性主鎖は、疎水性置換基を有してよい。加えて、重合体接着促進因子は、疎水性および親水性ブロックを含むブロック共重合体であってもよい(すなわち、疎水性ブロックはHLB<10を有してよく、親水性ブロックはHLB>10を有してよい)。
【0037】
本明細書において用いられる用語「含む」は、言及される全ての構成要素が存在することを要求することが意図されるが、さらなる構成要素が加わることを許す。用語「含む」は、それぞれ、言及された構成要素のみ、または、少しの不純物と一緒に、言及される構成要素のみに制限される用語、「からなる」および「から本質的になる」をサブセットとしてカバーすることも理解されよう。誤解を避けるために、単語「含む」の使用の全ては、「からなる」および「から本質的になる」およびそれらの変形で置き換えられ得ることが明確に検討される。
【0038】
本発明の特定の実施態様では、滑らかなコーティングのベース(接着促進)コーティング層およびトップ(滑らかな)コーティング層は、第一および第二の架橋されたポリマーマトリックスの間で架橋することによって相互接続され得る。この架橋の証拠は、ベースコーティング層に関する長い硬化時間が、望ましくないコーティングをもたらし得る実施例から得られ得る。理論に束縛されるものではないが、ベースおよびトップコーティング層の間の架橋度は、これらの実施態様において得られる良好な効果に少なくとも部分的に関与し得ると考えられる。
【0039】
滑らかなコーティングは、50nm〜50μm(例えば、0.5μm〜20μm)の乾燥状態での厚さを有してよい。
【0040】
滑らかなコーティングは、(例えば医療機器の)表面に適用されることが意図されることが理解されよう。表面は、金属、または、より具体的には、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ラテックス、ぺバックス、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、およびシリコーンエラストマーからなる群の1つまたは複数から作られてよい。本明細書において言及され得る金属は、鉄、スチール(例えばステンレススチール)、プラチナ、金、銀、銅、ニッケル、チタンおよびそれらの合金を含む。本明細書において言及され得る合金は、ニチノールを含む。
【0041】
滑らかなコーティングのベース(接着促進)コーティング層は、重合体接着促進因子が、ベースコーティング層の80wt%以下の量で存在し(例えば15wt%〜65wt%);および/または、第一の架橋された重合体マトリックスが、20wt%〜85wt%(例えば、25wt%〜75wt%、例えば、35wt%〜65wt%)の量で存在するものであってよい。
【0042】
滑らかなコーティングのトップ(滑らかな)コーティング層は、親水性ポリマーが、35wt%よりも多い量(例えば55wt%よりも多い、例えば、55wt%〜99.6wt%)で存在し;および/または、第二の架橋されたポリマーマトリックスが、0.5wt%〜70wt%(例えば、3wt%〜30wt%)の量で存在するものであってよい。
【0043】
トップ(滑らかな)コーティング層およびベース(接着促進)コーティング層は、それぞれのトップ(滑らかな)およびベース(接着促進)コーティング製剤から形成されて、ここで、表面を有するアーティクルは、ベース(接着促進)コーティング層製剤によってコーティングされて、それから、トップ(滑らかな)コーティング層製剤によってコーティングおよびその後にそれを硬化させるステップの前に、硬化させるステップに供されて、トップ(滑らかな)および底(接着促進)コーティング層によってコーティングされた表面を有するアーティクルを形成する。
【0044】
したがって、本明細書において以前に記載した接着促進コーティング層の調製での使用のための接着促進コーティング製剤が提供されて、以下を含む:
重合体接着促進因子;
第一の単量体または重合体架橋剤;
光開始剤;および
溶媒、ここで
重合体接着促進因子は、疎水性および親水性ポリマーブロックを含むブロック共重合体および/または親水性官能基を含む親水性ポリマーであり、ここで、親水性官能基の10%〜100%は、疎水性官能基でキャップされる。
【0045】
ベース(接着促進)コーティングは、アーティクル上に、ベースコーティング(接着促進)製剤の層を硬化させるステップによって形成される。理論によって拘束されることを望まずに、第一の単量体または重合体架橋剤および接着促進因子は、互いに物理的に結合またはトラップされて、硬化後にポリマーネットワークを形成してよい。そのようなネットワークは、金属、またはより具体的には、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ラテックス、ぺバックス、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、およびシリコーンエラストマーなどを含む、様々な基材材料への良好な付着を提供する。
【0046】
ベース(接着促進)コーティング製剤の親水性および/または疎水性ポリマーは、本明細書において以前に記載したとおりである。本明細書において言及され得る親水性ポリマーの例は、以下を含む:
(a)疎水性および親水性ポリマーブロックを有するブロック共重合体、ここで、
親水性ブロックは、多糖類(例えばキトサン)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリメタクリル酸、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリ(2−オキサゾリン)、およびポリエチレンイミン(PEI)から選択される群の1つまたは複数より選択されてよい、および
疎水性ブロックは、ポリスチレン(PS)、ポリブタジエン(PB)、ポリイソプレン(PI)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(ビニルエーテル)(PVE)、ポリ(ビニルメチルエーテル)(PVME)、ポリ(ビニルブチルエーテル)(PVBE)、ポリイミドおよびポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)から選択される群の1つまたは複数より選択されてよい(例えば、親水性ブロックは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)から選択されてよく、疎水性ブロックは、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)から選択されてよい);
(b)親水性官能基を含む親水性ポリマー、ここで、親水性官能基の10%〜100%は、疎水性官能基でキャップされて、ここで、
親水性官能基を含む親水性ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリルアミド(PAM)、多糖類、およびポリ(ビニルアルコール)(PVA)から選択される群の1つまたは複数であり、および
疎水性官能基は、1つまたは2つの親水性官能基をキャップして、メチレン(CH
2)、メチル(CH
3)、エチレン(CHCH
3)、エチル(CH
2CH
3)、C
3−6アルキル、およびC
3−6アルキレン(例えばCH(CH
2)
2CH
3)の1つまたは複数から選択されて、ここで、後半2つの群は、非置換またはヒドロキシル基によって置換される。
【0047】
本明細書において用いられる場合、メチレン、エチレンおよびC
3−6アルキレン、例えばCH(CH
2)
2CH
3は、1つの炭素原子が2つの酸素原子に結合されているアセタール官能基を指すことが理解される。例えば、メチレン(CH
2)では、単一の炭素原子は、2つの酸素原子に結合されてアセタールを形成し、エチレン(CHCH
3)については、単一の水素原子に結合した炭素原子は、2つの酸素原子に結合して、これはまた、CH(CH
2)
2CH
3に関する場合でもある。
【0048】
本明細書において用いられる場合、特に記載のない限り、「ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)」および「ポリエチレングリコール(PPG)」は、相互交換可能に用いられる。
【0049】
誤解を避けるために、群(a)および(b)のブレンドおよびポリマーは、単独または互いと組み合わせて用いてよい。
【0050】
上記のとおり、重合体接着促進因子は、親水性官能基を含む親水性ポリマーであってよく、ここで、親水性官能基の10%〜100%は、疎水性官能基でキャップされる。「100%」は、全ての親水性官能基の全体のキャッピングを指し、一方で、「10%」は、親水性官能基の合計数の10%のキャッピングを指すことが理解されよう。特定の実施態様では、親水性官能基のキャッピングは、25%〜100%(例えば、30%〜100%、例えば、35%〜100%、50%〜75%または30%〜50%)であってよい。親水性官能基を有する適切な親水性ポリマーは、本明細書において以前に言及される。親水性官能基を含む適切なキャップされた親水性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)であり、ここで、アセタール官能基(例えばCH(CH
2)
2CH
3)は、PVAポリマー主鎖に垂れ下がる2つのヒドロキシル基をキャップする。
【0051】
特定の実施態様では、ベース(接着促進)コーティング製剤の重合体接着促進因子は、
(a)20,000〜2,000,000の数平均分子量を有してよく;および/または
(b)直鎖、分岐または架橋されてよい。
【0052】
本明細書において以前に記載したように、滑らかなコーティングのベース(接着促進)コーティング層は、第一の架橋された重合体マトリックスを含み、このマトリックスは、第一の単量体または重合体架橋剤の使用によって形成される。第一の単量体または重合体架橋剤は、架橋が可能な少なくとも2つの官能基を有するモノマーまたはポリマーであってよく、場合により:
(a)前記の少なくとも2つの官能基のそれぞれは、アクリレートおよびメタクリレートから選択される;および/または
(b)第一の単量体または重合体架橋剤がポリマーである場合、ポリマーは、ポリエステルまたはポリエーテルである(例えば、ポリマーは、アミド官能基を含まないポリエステルまたはポリエーテルである)。
【0053】
本明細書において言及され得る単一の単量体または重合体架橋剤の例は、ブタンジオールジメタクリレート、ビスフェノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート/メタクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート/メタクリレートオリゴマー、およびアクリルアクリレートオリゴマーからなる群より選択される1つまたは複数を含む。適切なエポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、およびアクリルアクリレートオリゴマーの例は、ビスフェノールAエポキシアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジメタクリレート、プロポキシル化グリセロールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ−アクリレート、トリプロピレンジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、およびトリ(プロピレングリコール)ジアクリレートからなる群より選択されてよい。アクリレート/メタクリレートポリマー/モノマーの混合物またはブレンドが、本発明の実施において用いられ得ることが理解されよう。特定の実施態様では、第一の単量体または重合体架橋剤は、200〜50,000ダルトン(例えば、200〜10,000ダルトン、400〜5,000ダルトン、例えば400〜2,000ダルトン)の分子量を有してよい。言及され得る特定の第一の単量体または重合体架橋剤は、少なくとも2つの硬化性アクリレートおよび/またはメタクリレート基を有するポリエーテルを含む(例えば、200〜50,000ダルトン(例えば200〜10,000ダルトン、例えば400〜5,000ダルトンまたは400〜2,000ダルトン)の分子量)。
【0054】
誤解を避けるために、本明細書において言及される任意のポリマーまたはオリゴマー分子量は、数平均分子量に基づく。
【0055】
本明細書において上記に記載したベースコーティング製剤は、以下の量の成分の構成要素を含んでよい:
重合体接着促進因子は、0.05wt%〜10wt%(例えば、0.1wt%〜5wt%)の量で存在し;
第一の単量体または重合体架橋剤は、0.2wt%〜7wt%の量で存在し;
光開始剤は、0.01wt%〜2wt%の量で存在し;および
溶媒は、92wt%〜99wt%の量で存在する(例えば、親水性および/または疎水性ポリマーは、0.1wt%〜5wt%の量で存在し、第一の単量体または重合体架橋剤は、0.6wt%〜5wt%の量で存在し、光開始剤は、0.1wt%〜1wt%の量で存在し、および、溶媒は、94wt%〜98wt%の量で存在する)。
【0056】
本明細書において以前に記載の接着促進コーティング製剤を用いて、滑らかな上層コーティングをその上に形成することができる基材材料上のベースコーティング層を形成するための接着促進コーティングを提供することができることが理解されよう。前記接着促進コーティングは、以下を含んでよい:
重合体接着促進因子;
第一の単量体または重合体架橋剤によって形成された、第一の架橋された重合体マトリックス(ここで、重合体接着促進因子は、疎水性および親水性ポリマーブロックを含むブロック共重合体および/または親水性官能基を含む親水性ポリマーであり、ここで、親水性官能基の10%〜100%は、疎水性官能基でキャップされる)。成分の構成要素は、接着促進コーティング製剤に関して本明細書において以前に記載されることが理解されよう。
【0057】
したがって、本明細書において以前に記載した滑らかなコーティングのトップコーティング層の調製での使用のための、トップ(滑らかな)コーティング製剤も提供されて、以下を含む:
溶媒;
開始剤;および
少なくとも2つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーまたは少なくとも1つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーおよび少なくとも2つの硬化性官能基を有する単量体または重合体架橋剤。
【0058】
親水性ポリマーは、水がそれに加えられた場合(すなわち、それが濡れた場合)に、膨張する。この親水性の性質は、イオン基(例えば酸または塩部分)または非イオン性基(例えばエトキシエーテルまたはアミド部分)の使用によって導入され得る。本明細書において言及され得るトップ(滑らかな)コーティング層の親水性ポリマーマトリックスは、2つの可能性を含み、その両方とも、少なくとも1つまたは2つの硬化性官能基を有する硬化性親水性ポリマーを用いる。親水性ポリマーが、少なくとも1つの硬化性官能基(例えばたった1つの硬化性官能基)を有する場合、製剤は、硬化性重合体または単量体架橋剤で補充されてよい。本明細書において言及され得る特定の実施態様では、本明細書において言及される硬化性ポリマーは、アミド部分を含まない非イオン性親水性ポリマーであってよい。
【0059】
本明細書に記載の滑らかなコーティング製剤では、少なくとも1つまたは2つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマー上の官能基(単数または複数)は、アクリレートおよびメタクリレートからなる群の1つまたは複数から選択されてよい。
【0060】
少なくとも1つまたは2つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、非イオン性直鎖、分岐または架橋された親水性ポリマーであってよい。言及され得る滑らかなコーティング製剤での使用のための適切な親水性ポリマーは、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、ゼラチン、キチン、またはより具体的には、ポリエーテル類、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエステル類、ポリビニルアルコール類、多糖類、およびそれらの共重合体を含む。例えば、滑らかなコーティング製剤での使用のための親水性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、PEG−co−PPG、PEG−co−PPG−co−PEG、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ε−カプロラクトン−b−エチレングリコール−b−ε−カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−b−エチレングリコール−b−ラクチド)、ポリ[(ラクチド−co−グリコリド)−b−エチレングリコール−b−(ラクチド−co−グリコリド)]、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびPVP−co−PEGの1つまたは複数であってよく、場合によりここで、前記の少なくとも1つまたは2つの硬化性官能基は、アクリレートであってよい。
【0061】
本明細書において言及され得る少なくとも1つまたは2つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーに関する分子量は、20,000ダルトンの数平均分子量から200,000ダルトンの数平均分子量までの範囲である。
【0062】
本明細書において言及され得る滑らかなコーティング製剤において使用される適切な単量体または重合体架橋剤は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,10−ドデカンジオールジメタクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、2−ヒドロキシ1−3−ジメタクリロキシプロパン、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールAエポキシアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、PEGジアクリレートまたはPEGメタクリレートを含み、場合によりここで、単量体クロスリンカーは、アミド基を含まない。単量体または重合体架橋剤は、200〜5000ダルトン(例えば200〜1000ダルトン、例えば200〜750ダルトン、例えば300〜600ダルトン)の分子量を有する。
【0063】
また、ベースコーティング製剤およびトップコーティング製剤は、開始剤も含む。開始剤は、以下により詳細に記載されるように、トップおよびベースコーティング製剤が硬化させるステップに供された場合に、単量体または重合体架橋剤の重合体連鎖反応を開始するために存在する。本発明で用いられ得る典型的な開始剤は、熱開始剤および光開始剤およびそれらの混合物を含む。本発明の特定の実施態様では、接着促進コーティング製剤および/または滑らかなコーティング製剤で用いられる開始剤は、光開始剤(例えば、他のあり得る選択肢の中でも、ノリッシュI型光開始剤)であってよい。
【0064】
本明細書において言及され得る光開始剤の一般的クラスは、α−ヒドロキシケトン類、フェニルグリオキシル酸、α−アミノケトン類、モノアシルホスフィン、ビスアクリルホスフィンおよびそれらの混合物を含む。用いられ得る光開始剤の例は、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、イソプロピルチオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−4−(4−モルホリニル)フェニル−1−ブタノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセト−フェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−4−(メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−1−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−メチル−1−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、メチルベンゾイルホルマート、オキシ−フェニル−酢酸2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェノール−酢酸(acetic)2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンおよび2−メチル(methyll)−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンの1つまたは複数を含む。
【0065】
本明細書において言及され得る熱開始剤は、4,4−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネート、1,1−ビス(tert−ブチルぺルオキシ)シクロヘキサン、ジ(sec−ブチル)ペルオキシジカーボネート、t−ブチルぺルオキシネオデカノエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、(t−ブチルぺルオキシ)ブチレート、t−ブチルぺルオキシベンゾエート、および、ジ−t−ブチルぺルオキシオキサレート、2,2−ビス(tert−ブチルぺルオキシ)ブタン、および過硫酸カリウムからなる群より選択される1つまたは複数を含む。
【0066】
上記に規定されるように、本明細書に記載のベースコーティング製剤およびトップコーティング製剤は、溶媒の存在を必要とする。溶媒は、水および/または有機溶媒であってよい。本明細書において言及され得る有機溶媒は、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール)からなる群より選択される1つまたは複数を含む。本明細書において言及され得る特定の溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、およびt−ブタノールを含む。
【0067】
滑らかなコーティング製剤が、少なくとも2つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーに関する場合、少なくとも2つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、1wt%〜15wt%の量で存在してよく、開始剤は、0.05wt%〜1wt%の量で存在してよく、および、溶媒は、84wt%〜99wt%の量で存在してよい。滑らかなコーティング製剤が、少なくとも1つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーに関する場合、少なくとも1つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、1wt%〜15wt%の量で存在してよく、単量体架橋剤は、0.2wt%〜5wt%の量で存在してよく、開始剤は、0.05wt%〜0.6wt%の量で存在してよく、および、溶媒は、80wt%〜99wt%の量で存在してよい。滑らかなコーティング層は、それが形成されている場合、溶媒を含まず(またはその乾燥状態での少量のその残余物のみ)、したがって、残りの構成要素の比率は比例して増大することが理解されよう。
【0068】
本明細書において以前に記載の滑らかなコーティングを調製するためには、接着促進コーティング製剤および滑らかなコーティング製剤の両方が必要であることが理解されよう。したがって、両方の製剤がパーツのキットとして、すなわち、それを必要とする基材表面上に滑らかなコーティングを形成するためのパーツのキットとして提供されることが検討されて、前記コーティングは、基材の表面の直接的に上の接着促進コーティング層および接着促進コーティング層の上の滑らかなコーティング層を含み、キットは以下を含む:
(a)本明細書において以前に記載した接着促進コーティング製剤;および
(b)本明細書において以前に記載した滑らかなコーティング製剤。
【0069】
本明細書に記載の滑らかなコーティングは、接着促進コーティング層(すなわち、基材の表面に直接接触する)および滑らかなコーティング層の両方を含む。前記滑らかなコーティングでは:
(a)重合体接着促進因子および第一の架橋された重合体マトリックスは、一緒に物理的に結合されてよく(例えば、重合体接着促進因子および第一の架橋された重合体マトリックスは、一緒に物理的に結合されて相互貫通ネットワークを形成してよい);および/または
(b)接着促進コーティング層および滑らかなコーティング層は、第一および第二の架橋されたポリマーマトリックスの間を架橋することによって相互接続されてよい;および/または
(c)接着促進コーティング層および滑らかなコーティング層の乾燥状態での組み合わされたコーティングの厚さは、50nm〜50μm(例えば0.5μm〜20μm)であってよい;および/または
(d)滑らかなコーティングは、基材表面上であり、ここで、表面は、金属、またはポリマーからなる群の1つまたは複数から作られてよく、場合によりここで、ポリマーは、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ラテックス、ぺバックス、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリ(エテン−コ−テトラフルオロエテン)、ポリテトラフルオロエチレンおよびシリコーンエラストマーの1つまたは複数である;および/または
(e)(例えば乾燥状態での)接着促進コーティング層には、接着促進因子は、接着促進コーティング層の80wt%以下(例えば15wt%〜65wt%)の量で存在してよい;および/または
(f)(例えば乾燥状態での)接着促進コーティング層には、第一の架橋された重合体マトリックスは、20wt%〜85wt%(例えば25wt%〜75wt%、例えば25wt%〜70wt%、例えば35wt%〜65wt%)の量で存在する;および/または
(g)滑らかなコーティング層には、第二の架橋されたポリマーマトリックスが、少なくとも1つの硬化性官能基を有する少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーを、少なくとも2つの硬化性官能基を有する単量体または重合体架橋剤と組み合わせて硬化させるステップによって形成される場合、少なくとも1つの硬化性官能基を有する前記の少なくとも1つの親水性硬化性ポリマーは、35wt%よりも多い量(例えば55wt%よりも多い、例えば55wt%〜99.6wt%)で存在してよく、単量体または重合体架橋剤は、0.5wt%〜70wt%(例えば3wt%〜30wt%)の量で存在する。
【0070】
上述のように、ベース(接着促進)コーティング製剤およびトップ(滑らかな)コーティング製剤は、アーティクルをコーティングするための方法において用いられ得る。したがって、本明細書において以前に記載した滑らかなコーティングにおいてコーティングされたアーティクルを作成するための方法がさらに開示されて、以下のステップを含む:
(a)コーティングすべき少なくとも1つの表面を有するアーティクルを提供するステップ;
(b)前記の少なくとも1つの表面を、本明細書において以前に記載したベース(接着促進)コーティング製剤でコーティングして、ベースコーティングされたアーティクルを提供するステップ;
(c)ベースコーティングされたアーティクルを、硬化させるステップに供して、硬化された、ベースコーティングされたアーティクルを形成するステップ;
(d)硬化された、ベースコーティングされたアーティクルを、本明細書において以前に記載したトップ(滑らかな)コーティング製剤によってコーティングして、硬化されていない滑らかなコーティングされたアーティクルを提供するステップ;および
(e)硬化されていない滑らかなコーティングされたアーティクルを硬化させるステップに供して、滑らかなコーティングされたアーティクルを形成するステップ。
【0071】
コーティング溶液は、任意の適切な手段を用いて、例えばUV光、可視光、および熱によって、硬化することができる。本発明の特定の実施態様では、ステップ(c)および(e)における硬化させるステップは、紫外線硬化条件を用いて行なわれ得る。
【0072】
本発明の特定の実施態様では、上述の方法において、硬化させるステップ(c)は、コーティングされたアーティクル上に生じるコーティングが、潤滑性試験において20サイクルにわたって安定であるように、ステップ(e)においてベースコート層とトップコート層との間に架橋が生じるのを可能にする期間t
1のあいだ行なわれてよい。
【0073】
理論によって拘束されることを望まずに、第一の架橋された重合体マトリックス内の実質的な比率の架橋基がフリーのままであることを確実にすることは、トップコーティング層が上記の方法のステップ(e)における硬化条件に供されたときに、ベースコーティング層とトップコーティング層との間を架橋することによって共有結合が形成されるのを可能にすることが検討される。
【0074】
理解されるように、当該方法はアーティクルを提供し、そのアーティクルは、本明細書において以前に記載した滑らかなコーティングを含む。
【0075】
本発明のさらなる態様が、ここで実施例に関して説明され、それは、本発明および/または特許請求の範囲によって包含される変形の主旨および範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0076】
材料および方法
アクリレート官能基を有する共重合体PVP−PEG−AAの合成
共重合体PVP−PEGを、酸化還元系過硫酸アンモニウムおよびN、N、N’、N’、−テトラメチルエチレンジアミンを開始剤として用いて、水中でラジカル共重合体化によって調製した。1−ビニル−2−ピロリドン(NVP,Aldrich,99%)10gおよびポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA,Mn500)(Aldrich,99%)2.25gを、50mLの水中に、窒素雰囲気下で溶解させた。水中の過硫酸アンモニウム(0.02g)およびN、N、N’、N’、−テトラメチルエチレンジアミン(0.02g)を、上記に滴下添加した。混合物を、45℃で8時間反応させた。反応していないモノマーを、透析方法を用いることによって除去した。生じたPVP−PEG共重合体を凍結乾燥させて、それから、45℃で乾燥クロロホルム(Merck)中に再溶解させた。トリエチルアミン(Aldrich)をクロロホルム溶液に添加して、50mLの乾燥クロロホルムに溶解された塩化アクリロイル(Aldrich)の1時間を超える液滴添加を続けた。反応混合物を45℃で8〜12時間、窒素雰囲気下で撹拌した。それから溶媒を減圧下で除去した。溶液の濃縮後、アクリレート官能基を有する生じた共重合体PVP−PEG(PVP−PEG−AA)を、ジエチルエーテルを用いて沈殿させた。
【0077】
ベース(接着促進)コーティング溶液
以下の表1に示される量で構成要素を一緒に混合することによって、ベースコーティング溶液を調製した。
【0078】
【表1】
【0079】
上(滑らかな)コーティング溶液
以下の表2に示される量で構成要素を一緒に混合することによって、トップコーティング溶液を調製した。
【0080】
【表2】
【0081】
一般的な手順1
コーティングおよび硬化のプロセス
カテーテルサンプルを、上述のベース(または接着促進)コーティング溶液を用いて、1cm/sの浸漬および牽引速度で最初に浸漬コーティングした。それから、ベースコート内に浸漬されたサンプルを、少なくとも15秒間、25〜45mW/cm
2のUV密度を有するUVランプ下で硬化させた。硬化された、ベースコーティングされたサンプルを、それから、同一の浸漬および牽引速度を用いてトップ(または滑らかな)コーティング溶液によって浸漬コーティングして、それから、UV硬化(同一のUV密度)に少なくとも30秒間供した。
【0082】
形態観察
硬化されたサンプルのそれぞれを、顕微鏡下で観察した(10x;デジタル対眼レンズYYEYE01−130&リングライトHX6060LED−2を備えるズーム実体顕微鏡TXB2−D 10,Nanyang city state optical instrument manufactory)。
【0083】
潤滑性試験
サンプルの潤滑性を、ASTM D1894−Standard Test Method for Static and Kinetic Coefficients of Friction of Plastic Film and Sheetingに従って特徴付けた。
試験温度:25±3℃
クランプ力:300g
牽引力:1cm/s
【0084】
試験から得られた測定された摩擦を以下の等式に帰属させて、摩擦係数を得た。
摩擦係数(COF)=(測定された摩擦(g))/(クランプ力(g))
【0085】
潤滑性試験を設定された回数(例えば20回)繰り返して、COFを、測定された摩擦を用いてそれぞれのサイクルの後に計算した。
【0086】
安定性試験
20回の潤滑性試験(上述)後にサンプルが滑らかなままである場合は、コーティングは安定であると考えた。測定された摩擦に有意な変動が存在した場合は、潤滑性試験中に測定される摩擦値の増大はサンプルの表面からのコーティングの剥がれに起因し得るので、コーティングは不安定であると考えた。
【0087】
微粒子試験
微粒子試験を、USP 788−Particulate Matter in Injectionsに従って、コーティングされたサンプルに対して行なった。約10mLの粒子を含まない水を用いてガイドカテーテルを水和した。コーティングされた経皮経管冠状動脈形成術(PTCA)カテーテルサンプルを、デバイスによる使用を模倣するために、ガイドワイヤを通したガイドカテーテルを通して挿入した。PTCAカテーテルを、臨床的に有意な回数引き込ませた。引き込み後に、ガイドカテーテルおよびインビトロモデルを、約40mLの粒子を含まない水で流した。廃液を集めて、Liquid Particle Counterによって測定した。
【0088】
[実施例]
実施例1−ぺバックス(商標)チューブのコーティング性能に対する、ベースおよびトップコートの効果
ぺバックス(商標)チューブで作られた8本のカテーテルサンプルを、一般的な手順1に概説されるトップコーティング方法に従ってぺバックス(商標)チューブをトップコーティング溶液によって直接コーティングしたサンプル8を除いて、一般的な手順1に従って浸漬コーティングに供した。様々なベースおよびトップコーティング溶液が表3に概説されて、本明細書において以前に記載した潤滑性および安定性測定手順に従って行われた、潤滑性および安定性を確立するために行なわれた試験の結果である。
【0089】
【表3】
【0090】
サンプル8に関する試験結果は、トップコーティング単独の使用は、ぺバックス(商標)カテーテルの表面を濡らすのに十分でないことを示す。対照的に、サンプル1〜7は、ベースコートおよびトップコートの組み合わせを用いてカテーテルをコーティングすることは、ぺバックス(商標)カテーテル上の親水性トップコーティングの表面を濡らす能力を改善することを示す。
【0091】
表3は、サンプル1〜4の間の安定性の比較を可能にし、ベースコーティングが、基材材料の表面上へのコーティング層全体の接着を決定することを示す。換言すれば、PEOのホモポリマーは、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(プロピレングリコール)コ−ポリマーおよびポリ(ビニルブチラール)(ポリ(ビニルアルコール)由来のヒドロキシル基の25%換算(Mw 130,000)よりも、ぺバックス(商標)に適用されるベースコート内の接着促進因子としての使用に適していないと考えられる。
【0092】
コーティング後のサンプル4および7に関するCOF値は、3つのタイプのトップコーティングの全てが十分な潤滑性および安定性を発揮することを示す。サンプル8は、トップコーティング層内に硬化性ポリマーを含まず、このことは、場合によりトップコーティング層表面から親水性ポリマーが徐々に放出されるため、それぞれの摩擦試験後にコーティングの潤滑性を徐々に低減させる。対照的に、サンプル4〜7は、25回の試験サイクルを通して安定かつ滑らかなトップコーティングを維持し、少なくともトップコーティング層内に形成された架橋されたネットワークは、親水性ヒドロゲルが単独でトップコーティングとして用いられる場合に生じるコーティングされたデバイスの表面からのコーティング摩耗(例えばカテーテルの適用中)の作用を除去することを示唆する。
【0093】
実施例2−全体的なコーティング性能に対する、ベースコーティングに関するUV硬化持続時間の効果
ベースコーティング式1−4およびトップコーティング式2−3を、さらなる研究に選択した。これらのコーティングを、1つのサンプルをそのベースコーティングに関して(15秒の代わりに)120秒のより長いUV硬化時間に供した点を除き、一般的な手順1を用いてぺバックス(商標)チューブの2つのカテーテルサンプルに適用した。サンプルの外観を水中で濡らした前後で調べて、潤滑性および安定性に関して試験した。結果を表4に示す。形態および摩擦試験曲線を、
図1および
図2にそれぞれ示す。
【0094】
【表4】
【0095】
サンプル10の試験結果は、ベースコーティングの硬化時間の増大が、湿潤および摩擦試験後に、より滑らかでなくて安定でないコーティング層をもたらすことを示す。このことは、ベースコーティングが、アクリレート架橋を通してトップコーティングと共有結合され得て、ベースコーティングとトップコーティングとの間に相互貫通する架橋ネットワークをもたらすことを示唆する。そのような層間架橋の存在は、コーティングの安定性を強めると考えられる。換言すれば、理論によって拘束されることを望まずに、底コーティング層の硬化時間の増大は、底層上に、より少ない利用可能な「フリー」の架橋部位をもたらし得て、より少ない層間架橋を形成させて、次々に、より均質でなくてより安定でない上層をもたらすと考えられる。
【0096】
実施例3−接着促進因子の親水性主鎖に対する、疎水性置換の効果
接着促進因子の親水性主鎖の疎水性置換を試験した。この実施例では、PVAを親水性主鎖ポリマーとして使用して、アセタールを形成するようにブチルアルデヒドを用いることによって改変した。PVA上のヒドロキシル基の置換%を調整することによって、ベースコーティング内の異なる接着特性を達成することができる。
【0097】
この実施例で用いたトップコーティングは2−3であり、ベースコーティング製剤は1−3に基づくが(ポリマーの2.0wt%)、疎水性基は可変量である。これらの製剤を、ラテックス、シリコーンおよびぺバックス(商標)で作られた異なる基材に適用した。摩擦試験反復の最大回数は、90回にセットした。
【0098】
図3に示されるように、ブチルアルデヒドによるキャップされたヒドロキシル基の最適レベルは、問題とされる基材材料に応じて異なる。親水性ポリマーの疎水性が非常に高レベルまで増大する場合は、親水性トップコーティング層に関する湿潤の問題も生じ得る。したがって、置換パーセンテージに関する最適な値が存在する。一般に、サンプルが50回を超える摩擦試験を耐えることができる場合、コーティングは、所望の適用に関して安定である。
図3は、親水性部分の45〜75%キャッピングを有するPVAが、ラテックスおよびぺバックス(商標)の両方に関して良好な接着を提供することができることをさらに示す。しかしながら、シリコーン表面基材は非常に疎水性であるので、良好な接着および所望の安定性を達成するためには、親水性部分の75〜90%キャッピングが必要である。このことは、現在の製剤を、所望の基材の表面特性に合わせるように仕立てることができることを示す。
【0099】
実施例4−接着促進因子としての共重合体の疎水性/親水性モル比の効果
接着促進因子の共重合体の疎水性/親水性モル比を試験した。この実施例では、PEG−PPG共重合体を用いた。PGポリマーブロックおよびEGポリマーブロック(エチレングリコールブロック)の数を調整することによって、ベースコーティングにおける異なる接着特性を達成することができる。
【0100】
この実施例で用いたトップコーティングは、2−3であり、ベースコーティング製剤は1−4に基づくが、PGおよびEGブロックは可変量である。ぺバックス上のコーティングは、
図4に示されるように、PGブロック/EGブロックの比が2〜6の範囲である場合は、機械的に安定である。PGモノマーユニット含有量の増大に起因して共重合体の疎水性が高すぎる場合は、コーティングは落ちる傾向にある。
【0101】
実施例5−ラテックスカテーテルのコーティング性能に対する、ドライアウト時間の効果
尿路カテーテルの重要な特性は、ドライアウト時間である。ドライアウト時間は、カテーテルを挿入する前および/またはカテーテルを引き抜く前に患者が待つことのできる時間を決定する。コーティングは、COFが、コーティング前のCOFの10%よりも高い場合は、滑らかであるとは考えられない。
【0102】
ラテックス製のカテーテルサンプルを、一般的な手順1を用いて表5に示されるようにコーティングした。サンプルを、潤滑性および安定性に関して試験およびテストして、結果は表5にも示される。
【0103】
【表5】
【0104】
表5は、ラテックス基材に関する滑らかで安定なコーティングは、ベースおよびトップコーティング層の様々な組み合わせを通して達成することができることを示す。
【0105】
コーティングの潤滑性に対する、湿潤および乾燥の効果を判定するために、コーティングされたラテックスカテーテルサンプルを、水中で1分間濡らして、10分間、空中で乾燥させた。それに続き、サンプルを水と接触させないようにして摩擦値(COF)を再度測定した。グリッパーは、それぞれのテスト後に拭いて乾燥させた。
【0106】
表5は、ドライアウトテスト前およびドライアウトテスト後の3つのラテックスサンプルのCOF値を比較する。表5に示されるように、サンプル11および12は、ドライアウトテスト後に潤滑性を保つが、サンプル13の表面は、ほとんど乾燥しているので、湿潤および乾燥前のその最初のCOFと比較して、よりいっそう高いCOFを提供する。
【0107】
実施例6−異なる材料に対するコーティングの適用
ここで用いられるコーティング式はプラットフォームとして意図されるので、全く異なる表面電位を有する多種多様の材料のコーティングを可能にするように調整することができる。この潜在性を示すために、様々な材料を、一般的な手順1を用いて表6に示されるようにコーティングした。
【0108】
【表6】
【0109】
サンプルを、潤滑性に関して試験およびテストした。COF値を
図5に示し、それは、コーティングが、コーティングされた材料のCOFを、コーティングされていない材料の元のCOF値の5%未満まで低減させたことを示す。
【0110】
実施例7−PP、FEPおよびシリコーン上のコーティング
ベースコーティング接着および湿潤が十分に良好の場合、事前処理は取り除くことができる。表8に示されるように、FEPサンプルを、3つの異なるタイプのベースコート式1−4、1−7およびコーティング溶液サプライヤーからのベースコーティングによってコーティングした。プラズマ処理をしない場合は、ベースコート1−4およびコーティング溶液ComfortCoat(商標)を用いることによって安定なコーティングは達成され得ない。プラズマ処理後にのみ、均質で安定なコーティングが表8に示されるように達成され得る。サンプル14と15との間の比較は、接着促進因子がより疎水性であるように調整される場合、その結果、プラズマ事前処理は必要でないことを示す。サンプル14、18および19上のコーティングは、表7に示されるように、均質で安定かつ滑らかであることが見いだされた。
【0111】
【表7】
【0112】
実施例8−微粒子放出に対する(on particulate release)、トップコートモノマー/硬化性ポリマーの分子量
UV硬化により形成される架橋ネットワークは、微粒子放出制御において重要な役割を果たす。アクリレート官能基を有する共重合体PVP−PEG(PVP−PEG−AA)を合成した(上記参照)。フリーのアクリレート基のパーセンテージは、PVPとPEGMAとの間の比(すなわち、フリーのヒドロキシル基の量)を変更することにより、または、PVP−PEGの改変中の塩化アクリロイルの量を変更することにより(フリーのヒドロキシル基のキャッピング)、調整することができる。生じるPVP−PEG−AAは、多くの数の硬化性基を有し、したがって、UV硬化して親水性コーティング層を形成することができる。
【0113】
以前に示されたように、表8のベースコーティングおよびトップコーティング式を、PTCAカテーテル上に適用して、均質の、滑らかで機械的に安定なコーティングを達成した。サンプル20のCOF値は、コーティングされていないデバイスの95%よりも低い。コーティングされたサンプルを、その微粒子放出に関してさらに試験した。表8に示されるように、サンプル20および21は、サンプル22と比較して、非常に少ない数の10μmより大きい微粒子および25μmよりも大きい微粒子を有する。一般に、より低い分子量を有するモノマーは、より高い架橋密度に起因して、堅いネットワークを形成する。結果として、より堅いネットワークは、コーティングから外側環境へのPVPの移行または移動を低減させ得る。しかしながら、サンプル22からの高い微粒子放出は、この場合では、PVPポリマーが、堅く架橋されたネットワーク中に相互貫通するにもかかわらず、ネットワークは、ネットワークからのPVPポリマー移行を止めることはできないことを示唆する。一方で、同じデザインに関して、より堅いポリマーネットワークは、サンプル20を21と比較して、より少ない微粒子の数を与えた。
【0114】
【表8】