特許第6898889号(P6898889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898889
(24)【登録日】2021年6月15日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/211 20210101AFI20210628BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20210628BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20210628BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20210628BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20210628BHJP
   H01M 10/613 20140101ALN20210628BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALN20210628BHJP
   H01M 10/653 20140101ALN20210628BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20210628BHJP
   H01M 10/647 20140101ALN20210628BHJP
【FI】
   H01M50/211
   H01M50/289
   H01M50/224
   H01M50/242
   H01M50/50 201
   !H01M10/613
   !H01M10/6555
   !H01M10/653
   !H01M10/625
   !H01M10/647
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-128864(P2018-128864)
(22)【出願日】2018年7月6日
(65)【公開番号】特開2020-9604(P2020-9604A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2018/0183119(US,A1)
【文献】 特開2013−187046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20−50/298
H01M50/50−50/598
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/653
H01M10/6555
H01M10/6557
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部各々から電極が突出され、前記電極の突出方向と直交する方向に積層された複数の電池と、
基板と、
前記複数の電池のうち互いに隣接する何れか2つに挟まれた固定プレートと、を備え、
前記基板には、前記複数の電池の両端部から各々突出された前記電極が前記基板の表側から裏側へ貫通するように挿入される挿入孔が形成されており、
前記固定プレートを挟む2つの電池の電極は、互いに直接接続されており、
前記固定プレートと前記基板とが固定されていることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記固定プレートがアルミから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記固定プレートは、前記複数の電池のうち中央に隣接する2つに挟まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した組電池として特許文献1に記載されたバッテリモジュールが提案されている。上述したバッテリモジュール10は、図4に示すように、上下に積層された複数の電池111〜116と、複数の電池111〜116の上下に配置されたエンドプレート121、122と、複数の電池111〜116を直列接続するためのバスバモジュール131、132と、を備えている。
【0003】
電池111〜116は、端部から電極タブ117が突出されている。バスバモジュール131、132は、複数のバスバ133と、バスバ133の上下に設けられたスリット(図示せず)と、が設けられている。このバスバモジュール131、132のスリットに、電極タブ117を挿入し、電極タブ117とバスバ133とを接合することにより、複数の電池111〜116を直列接続している。上述したバスバモジュール131、132は、図4の一番左、真ん中に示すように、電池111〜116の上下に配置されたエンドプレート121、122に締結されて、固定されている。
【0004】
上述した電池111〜116は、充放電に伴い膨張・収縮する。この膨張・伸縮に伴いバスバモジュール131、132が変形し、電極タブ117に負荷が生じ、繰り返しストレスを与えられることで電極タブ117の疲労破壊や接合部の離脱などが起こる、という問題があった。また、バスバモジュール131、132自体も変形して、破損などの恐れがあった。
【0005】
そこで、図4の一番右に示すように、バスバモジュール131、132を上下に配置されたエンドプレート121、122のうち1つのみに締結して、バスバモジュール131、132の変形を抑制することが考えられる。しかしながら、この場合も、締結されていない側(図中上側)の電池111の電極タブ117とバスバモジュール131、132のスリットとに膨張・収縮に伴い大きな位置ズレとして現れる。詳しく説明すると、膨張・伸縮により複数の電池111〜116全体で例えば±2mmの変動が起こるとすると、締結されていない側の電池111の電極タブ117とバスバモジュール131、132のスリットとに最大4mm分の位置ズレが現れる。このため、電極タブ117に負荷が生じ、繰り返しストレスを与えられることで電極タブ117の疲労破壊や接合部の離脱などが起こる、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−229266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、電池の膨張・伸縮に伴い発生する電極の負荷を低減できる組電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様である組電池は、両端部各々から電極が突出され、前記電極の突出方向と直交する方向に積層された複数の電池と、前記複数の電池の両端部から各々突出された前記電極が挿入される挿入孔が形成された基板と、前記複数の電池のうち互いに隣接する何れか2つに挟まれた固定プレートと、を備え、前記固定プレートと前記基板とが固定されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記固定プレートがアルミから構成されていてもよい。
【0010】
また、前記固定プレートは、前記複数の電池のうち中央に隣接する2つに挟まれていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明した態様によれば、電池の膨張・伸縮に伴い発生する電極の負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の組電池としてのバッテリモジュールの一実施形態を示す分解斜視図である。
図2図1に示すバッテリモジュールの電池の膨張時、収縮時における概略側面図である。
図3】他の実施形態を示すバッテリモジュールの一部を断面とした概略側面図である。
図4】従来のバッテリモジュールの問題点を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。同図に示すように、バッテリモジュール1は、積層された複数の電池21〜26と、複数の電池21〜26の積層方向D1両側に位置付けられた一対のエンドプレート31、32と、複数の電池21〜26を直列接続するための一対のバスバモジュール41、42と、1枚のアルミプレート5(固定プレート)と、を備えている。
【0014】
複数の電池21〜26は各々、例えばリチウム二次電池からなるラミネート型電池から構成され、積層方向D1が薄い扁平な電池である。複数の電池21〜26は、積層方向D1一方側から見て矩形状の電池本体201と、帯状の一対の電極タブ202,202(電極)と、を有している。一対の電極タブ202,202は、電池本体201の短辺となる両端部の中央からそれぞれ突出している。これにより、電極タブ202,202の突出方向D2は、積層方向D1と直交する方向となる。
【0015】
また、上記一対の電極タブ202,202の一方が、電池21〜26の正極、他方が電池21〜26の負極となる。複数の電池21〜26は、正極となる電極タブ202と負極となる電極タブ202とが交互となるように、交互の向きで積層されている。そして、後述するバスバ402により隣接する正極となる電極タブ202と負極となる電極タブ202とを互いに接続することで、複数の電池21〜26が直列に接続する。
【0016】
一対のエンドプレート31、32は、硬質合成樹脂や金属材料(鉄、アルミニウム、ステンレススティール等)からなる長方形の板状部材であり、複数の電池21〜26の積層方向D1両側に配置される、これにより、複数の電池21〜26は、積層方向D1両側がこの一対のエンドプレート31、32に挟まれている。また、一対のエンドプレート31、32は、積層方向D1に対して垂直に配置される。
【0017】
一対のバスバモジュール41、42は各々、板状に形成され、複数の電池21〜26の突出方向D2両側に配置されている。これにより、複数の電池21〜26は、突出方向D2両側がこの一対のバスバモジュール41、42に挟まれている。また、一対のバスバモジュール41、42は、突出方向D2に対して垂直に配置される。
【0018】
また、一対のバスバモジュール41、42は各々、基板401と、この基板401に支持されたバスバ402と、を有している。基板401は、合成樹脂などから構成され、突出方向D2側からみて矩形状に形成されている。バスバ402は、銅ないし真鍮などの金属部材で構成され、電極タブ202が溶接やハンダ付けなどによって接合される。上記バスバ402は、基板401の外側面つまり電池21〜26側とは反対側となる面に露出して支持されている。本実施形態では、基板401の形成時にバスバ402が一体にモールドされているが、基板401を形成した後に何らかの手段でバスバ402を取り付けるようにしてもよい。
【0019】
また、バスバ401は、積層方向D1及び突出方向D2の双方に直交する直交方向D3に長尺な直線状に形成され、積層方向D1に複数、並べて設けられている。バスバ401の数は、互いに接続する正負の電極タブ202の組み合わせの数だけ設けられている。本実施形態では、突出方向D2一方側(図2中の左側)のバスバモジュール41においては3つのバスバ402が設けられ、突出方向D2他方側(図2中の右側)のバスバモジュール42においては2つのバスバ402が設けられている。
【0020】
また、基板401には、上記電極タブ202を通す6つの挿入孔としてのスリットSL(図1)が積層方向D1に並べて形成されている。スリットSLは、直交方向D3に長尺な直線状に形成されている。バスバモジュール41において6つのスリットSLは、3つのバスバ402の積層方向D1両端縁に沿って形成されている。バスバモジュール41の6つのスリットSLにそれぞれ挿入された電極タブ202は、バスバ402の積層方向D1両端縁から突出し、バスバ402の表面に沿うように折り曲げられた後、バスバ402に接合される。
【0021】
バスバモジュール42において中央の4つのスリットSLは、2つのバスバ402の積層方向D1両端縁に沿って形成されている。バスバモジュール42に設けられた中央の4つのスリットSLにそれぞれ挿入された電極タブ202は、バスバ402の積層方向D1両端縁から突出し、バスバ402の表面に沿うように折り曲げられた後、バスバ402に接合される。バスバモジュール42に設けられた両端の2つのスリットSLにそれぞれ挿入された電極タブ202は、基板401から突出し、バッテリモジュール1の電極となる。
【0022】
また、基板401の積層方向d1略中央には後述するアルミプレート5の両端を挿入する溝Gが形成されている。溝Gは、直交方向D3に沿って形成されている。
【0023】
アルミプレート5は、電池本体202とほぼ同じ大きさ、同じ厚さの板状に設けられている。アルミプレート5は、複数の電池21〜26のうち中央に隣接する2つの電池23、24に挟まれて配置されている。アルミプレート5は、2つの電池23、24に挟まれることにより、積層方向D1が電池21〜26に固定される。
【0024】
また、このアルミプレート5の突出方向D2両端部が、バスバモジュール41、42の溝Gに嵌め込まれる。これにより、アルミプレート5とバスバモジュール41、42とが固定される。なお、バスバモジュール41、42はエンドプレート31、32に固定されていない。
【0025】
なお、「複数の電池21〜26のうち中央に隣接する2つ」とは、以下に述べることを意味する。即ち、本実施形態のように、複数の電池21〜26の数が6つ(即ち、偶数)である場合、アルミプレート5を挟んだ積層方向D1一方側(図2中の上側)の電池21〜23の数と、他方側(図2中の下側)の電池24〜26の数と、が同数になるような2つの電池23、24であることを意味する。
【0026】
これに対して、複数の電池21〜25の数が本実施形態より一つ少ない5つ(即ち、奇数)である場合、積層方向D1の真ん中の電池23と、この真ん中の電池23に対して積層方向D1一方側に隣接する電池22又は積層方向D1他方側に隣接する電池24と、であることを意味する。
【0027】
上述したバッテリモジュール1によれば、複数の電池21〜26のうち中央に隣接する2つの電池23、24にアルミプレート5を挟み、アルミプレート5と、バスバモジュール1と、を固定している。これにより、アルミプレート5とバスバモジュール41、42とが固定されているため、車両が振動しても、バスバモジュール41、42と電池21〜26とが一緒に動くため、電極タブ202に負荷が与えられることがない。また、バスバモジュール41、42はエンドプレート31、32に固定されていないため、電池21〜26が膨張・収縮して、積層方向D1の寸法が変動しても、バスバモジュール41、42が変形することがない。
【0028】
しかも、アルミプレート5を中心にバスバモジュール41、42のスリットSLと電極タブ202との位置ズレが発生するため、図4に示す従来の片側締結時に比べて位置ズレを半減することができる。具体的に説明すると、膨張・伸縮により複数の電池21〜26全体で例えば±2mmの変動が起こるとすると、締結されていない側の電池21の電極タブ202とバスバモジュール41、42のスリットSLとには最大4mm分の位置ズレが現れる。これに対して、本実施形態によれば、積層方向D1両端にある電池21、26の電極タブ202とバスバモジュール41、42のスリットSLとの位置ズレは半分の2mmとなり、電池21〜26の膨張・伸縮に伴い発生する電極タブ202の負荷を低減できる。
【0029】
また、上述した実施形態によれば、固定プレートとしてアルミからなるアルミプレート5を用いていた。これにより、電池21〜26の冷却効果も得ることができる。
【0030】
また、上述した実施形態によれば、複数の電池21〜26のうち中央に隣接する2つの電池23、24にアルミプレート5を挟んでいる。これにより、上述したように位置ズレを半分にできるだけでなく、温度が高くなる中央にアルミプレート5を挿入することで、より一層、冷却効果を得ることができる。
【0031】
なお、上述した実施形態によれば、固定プレートはアルミプレート5から構成されていたが、これに限ったものではない。固定プレートとしては2つの電池23、24に挟んでバスバモジュール41、42を固定できるものであればよく、合成樹脂などから構成されていてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態によれば、複数の電池21〜26のうち中央に隣接する2つの電池23、24にアルミプレート5を挟んでいたが、これに限ったものではない。アルミプレート5は、複数の電池21〜26のうち互いに隣接する何れか2つに挟まれていればよく、例えば、電池21と電池22との間に挟まれていてもよい。この場合も、膨張・伸縮により複数の電池21〜26全体で例えば±2mmの変動が起こるとすると、積層方向D2一端にある電池21の電極タブ202とバスバモジュール41、42のスリットSLとの位置ズレは4mmよりも小さくなり、電極タブ202の負荷を低減することができる。
【0033】
また、上述した実施形態によれば、バスバモジュール41、42はエンドプレート31、32に固定されていないが、これに限ったものではない。バスバモジュール41、42の基板401をゴムのような弾性部材で構成して収縮機能を持たせれば、バスバモジュール41、42をエンドプレート31、32に締結するようにしてもよい。
【0034】
また、上述した実施形態によれば、アルミプレート5をバスバモジュール41、42の溝Gに嵌め込んで積層方向D1が動かないように固定していたいが、これに限ったものではない。アルミプレート5にバスバモジュール41、42に重ねるタブを設けて、ネジで締結して固定するようにしてもよい。
【0035】
また、上述した実施形態によれば、基板401に支持されたバスバ402を用いて電池21〜26の電極タブ202を接続していたが、これに限ったものではない。本発明は、互いに隣接する電池21〜26の電極タブ202同士を接続して、複数の電池21〜26を直列接続するために、電極タブ202を挿入する基板401があればよく、例えば、図3に示すように、バスバ402を用いずに、電極タブ202同士を溶接してもよい。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 バッテリモジュール(組電池)
5 アルミプレート(固定プレート)
21〜26 電池
401 基板
202 電極タブ(電極)
402 バスバ
D2 突出方向
SL スリット(挿入孔)
図1
図2
図3
図4