特許第6898944号(P6898944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6898944MMAから副成物を回収するためのプロセス
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  • 特許6898944-MMAから副成物を回収するためのプロセス 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6898944
(24)【登録日】2021年6月15日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】MMAから副成物を回収するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/54 20060101AFI20210628BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20210628BHJP
   C07C 67/60 20060101ALI20210628BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210628BHJP
【FI】
   C07C67/54
   C07C69/54 Z
   C07C67/60
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-561204(P2018-561204)
(86)(22)【出願日】2017年5月15日
(65)【公表番号】特表2019-516742(P2019-516742A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】US2017032587
(87)【国際公開番号】WO2017205089
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2020年5月8日
(31)【優先権主張番号】62/341,245
(32)【優先日】2016年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジー・ウォーリー
【審査官】 二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−035523(JP,A)
【文献】 特開平11−302224(JP,A)
【文献】 特開2000−005503(JP,A)
【文献】 特開昭58−183641(JP,A)
【文献】 特開2003−252824(JP,A)
【文献】 特開2003−104933(JP,A)
【文献】 特開平06−001744(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0216587(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103420835(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/54
C07C 67/60
C07C 69/54
C07B 61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチル(MMA)、水、メタノール、メタクロレイン、ならびに水性有機性成分混合物中のMMAおよびメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールの総重量に基づいて少なくとも1重量%のメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールを含有する前記水性有機性成分混合物の供給流を蒸留塔において蒸留することと、前記蒸留塔において前記水性有機性成分混合物を、1以下のpKaを有する1種以上の強酸または無機酸と反応させることと、前記蒸留から、塔頂流、並びにメタクリル酸メチルおよび100ppm以下のメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールを含有する塔底流を除去することと、を含む方法。
【請求項2】
前記1種以上の強酸または無機酸が、硫酸、スルホン酸、ハロゲン含有無機酸、硝酸、および1以下のpKaを有する他のプロトン酸から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種以上の強酸または無機酸が0以下のpKaを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応が、(a)メタクリル酸メチル、水、メタノール、メタクロレイン、ならびに水性有機性成分混合物中のMMAおよびメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールの総重量に基づいて少なくとも1重量%のメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールを含有する水性有機性成分混合物の供給流を、下部、中間部、および上部を含む蒸留塔において、前記蒸留塔の前記上部に前記水性有機性成分混合物を供給することにより、蒸留することと、(b)前記蒸留塔の中間部または上部に前記強酸または無機酸を供給して、前記水性有機性成分混合物を前記1種以上の強酸または無機酸と反応させることと、(c)前記蒸留から、塔頂流、並びにメタクリル酸メチルおよび100ppm以下のメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールを含有する塔底流の各々を除去することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記塔底流を再沸することと、前記再沸された塔底流を前記蒸留中に再循環させることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸留および任意のリボイラにおける前記水性有機性成分混合物および前記強酸または無機酸の滞留時間が、5秒〜90分の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1種以上の強酸または無機酸の量が、水性有機性成分混合物の供給流中のメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールの総重量に基づいて0.1〜5.0重量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸留塔が、トレイまたはパッキングを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
(i)前記蒸留塔がトレイを備える場合には、前記蒸留塔は10〜50個のトレイを備え、または(ii)前記蒸留塔がパッキングを備える場合には、前記蒸留塔は10〜50の平衡段を備える充填塔である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル酸メチル(MMA)、水、メタノール、メタクロレインと、ならびに水性有機性成分混合物中のMMA、およびメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールの総重量に基づいて少なくとも1重量%の、例えば、少なくとも3重量%の、メタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールと、を含有する水性有機性成分混合物の供給流を、例えば、蒸留塔において、蒸留することと、かかる水性有機性成分混合物と、1以下の、好ましくは、0以下のpKaを有する1種以上の強酸または無機酸とを反応させることと、塔頂流、並びにメタクリル酸メチル、および100ppm以下の、好ましくは、25ppm以下の、またはより好ましくは、5ppm未満の、メタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールを含有する塔底流を、かかる蒸留から除去することと、を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の合成経路が、メタクリル酸メチル(MMA)の形成において知られている。使用される経路に関わらず、MMAを形成するためのメタクロレインとメタノールとの反応におけるアセタールおよびヘミアセタールなどの反応の副成物を回収することにより、MMA収率を最大にすることが望ましい。アセタールは約106℃で沸騰するので、このような副成物を蒸留によりMMAから除去することは非常に困難であり、そのため、MMA生成物の純度に悪影響を与えている。
【0003】
Asahiの日本特許第JP03532763B2号は、MMAの製造において酸化的エステル化反応器流出物から採取した原料からメタクロレインジメチルアセタール(MDA)を除去する方法を開示している。第1工程では、蒸留塔内、メタノール回収塔内の塔頂部の過剰なメタノールおよび未反応メタクロレインの大部分と、水相を含有し得る塔底部(粗製MMA)からのMMAと、を除去する。2相を有する塔底流を無機酸で処理して、メタノールおよびメタクロレインへのMDA加水分解を触媒し、それにより、MMAのMDA含有量を<20ppmに低下させる。しかしながら、Asahiの実施例1によれば、このような低いMDAレベルを得ることは、比較的低いMDA含有量、例えば、原料中のMMAに基づき0.49重量%のMDAを有することに依存する。アセタールの加水分解は平衡反応であるため、粗製MMAのMDA含有量が増加すると、MDA含有量も加水分解後に増加する。上記特許の実施例1に教示されているAsahiの方法に従って、原料が、MMAおよびMDAの総重量に基づいて12重量%のMDAを含む場合、得られる加水分解後の混合物は、150ppmのMDAを含む(70℃での結果、平衡は温度によって影響を受ける)。これは、MMAにおいて許容できない不純物レベルとなり得る。
【0004】
したがって、MMAを形成するためのメタクロレインおよびメタノールの反応の副成物の除去の改善が依然として必要である。
【0005】
本発明者らは、メタクリル酸メチルを製造するためのメタクロレインとメタノールとの反応からのメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールの除去を改善するように鋭意努力した。
【発明の概要】
【0006】
1.本発明によれば、メタクリル酸メチルを製造するための反応において副成物を除去するための方法は、(a)例えば、下部、中間部、および上部を含む蒸留塔において、蒸留塔の上部へ水性有機性成分混合物を供給することによって、メタクリル酸メチル、水、メタノール、メタクロレイン、ならびに水性有機性成分混合物中のMMAおよびメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールの総重量に基づいて少なくとも1重量%の、または最大20重量%の、または好ましくは、2重量%以上の、例えば、3重量%以上の、または好ましくは、最大15重量%の、メタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールを含有する水性有機性成分混合物の供給流を蒸留することと、(b)例えば、蒸留塔内へ、または好ましくは、蒸留塔の中間部または上部へ、例えば、蒸留塔の塔底と塔頂の中間を位置づける中間点もしくは中間点の上へ、または好ましくは、蒸留塔の上部へ、1以下の、または好ましくは、0以下のpKaを有する1種以上の強酸または無機酸を供給することにより、水性有機性成分混合物と、かかる強酸または無機酸とを反応させることと、(c)例えば、蒸留塔から各流れを別々に除去することにより、塔頂流、並びにメタクリル酸メチル、および100ppm以下、好ましくは、25ppm以下の、またはより好ましくは、5ppm未満のメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールを含有する塔底流の各々を蒸留から除去することと、を含む。
【0007】
2.リボイラ中で塔底流を最沸することと、再沸された塔底流を蒸留または蒸留塔へ再循環させることと、をさらに含む、上記の項目1に記載の本発明の方法。
【0008】
3.水性有機性成分混合物および強酸または無機酸のリボイラにおける滞留時間が、1分〜120分、または好ましくは、2分〜50分の範囲である、上記の項目2に記載の本発明の方法。
【0009】
4.強酸または無機酸が、硫酸、スルホン酸、ハロゲン含有無機酸、硝酸、および1以下の、または好ましくは、0以下のpKaを有する他のプロトン酸から選択される、上記の項目1、2、または3のいずれか1項目に記載の本発明の方法。
【0010】
5.1種以上の強酸または無機酸の量が、水性有機性成分混合物の供給流中および1種以上の強酸または無機酸中の水の総重量に基づいて、0.01〜5.0重量%、または好ましくは、0.05〜0.5重量%の範囲である、上記の項目1、2、3、または4のいずれか1項目に記載の本発明の方法。
【0011】
6.メタノールなどの溶媒中で、前記塔頂流と、フェノチアジンなどの重合防止剤とを組み合わせることをさらに含む、項目1、2、3、4、または5のいずれか1項目に記載の本発明の方法。
【0012】
7.水などの冷却剤を使用して凝縮させることなどにより塔頂流を冷却することと、冷却された塔頂流をスタティックミキサなどのミキサに通すことと、塔頂流をデカントして水相を除去することと、続いて、メタクロレインを含有する塔頂流の有機相を蒸留塔の上部に戻すことによって再循環させることと、をさらに含む、上記の項目1、2、3、4、5、または6のいずれか1項目に記載の本発明の方法。
【0013】
8.水などの冷却剤を使用して凝縮させることなどにより塔底流を冷却することと、このようにして冷却された塔底流をデカントとして、得られた粗製メタクリル酸メチル(粗製MMA)流を、得られた廃水流から分離することと、をさらに含む、上記の項目1、2、3、4、5、6、または7のいずれか1項目に記載の本発明の方法。
【0014】
9.蒸留塔がトレイまたはパッキングを備える、上記の項目1、2、3、4、5、6、7、または8のいずれか1項目に記載の本発明の方法。
【0015】
10.蒸留塔が10〜50個のトレイ、または好ましくは、20〜40個のトレイ、または充填塔内において同じ数の平衡段備える、上記の項目9に記載の本発明の方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
別に指定のない限り、全てのパーセント組成物は、重量パーセント(重量%)であり、全ての温度は℃である。
【0018】
別に指定のない限り、全ての温度は室温(21〜23℃であり、全ての圧力は標準圧力(〜101kPaまたは〜760mm/Hg)である。
【0019】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」は互換的に使用される。用語「含有する」、「含む」、およびそれらの変形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲に現れる場合に限定的な意味を有さない。
【0020】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0021】
括弧を含む全ての語句は、含まれる括弧内の事項およびその欠如のいずれかまたは両方を示す。例えば、「(メタ)アクリレート」という語句は、代替的に、アクリレートおよびメタクリレートを含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ガスクロマトグラフィー」または「GC」という用語は、試料をアセトンが10:1に希釈され、製造元(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)の推奨にしたがって較正され、かつ水素炎イオン化検出器およびRestek Stabilwax(商標)(400〜20,000g/molの式量を有するポリエチレングリコールの分布、Restek Corporation、Bellefonte、PA)カラム(30m×0.32mm ID×1μm d)、ここで、「ID」は、内径を意味し、「d」はフィルム厚を意味する)を装着したAgilent 6890N GC装置を用いて特性決定されるという方法を用いて、材料およびかかる材料の量を分析するために用いられる方法を意味する。GC法では、1μLの容量の各試料を、225℃に設定したインジェクタポートに20:1の比率でキャピラリースプリットインジェクションで注入した。初期カラム温度は50℃であり、平衡時間は1分であり、初期保持時間は6分であり、続いて10℃/分の速度で加熱して215℃の最終温度を達成し、最終保持時間を2分とし、合計実行時間を24.5分とした。カラムおよび初期流速は、1.8ml/分のヘリウム一定流量であった。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「ppm」という用語は、重量による百万分率を意味する。
【0024】
本発明は、メタクロレインとメタノールとの反応中のメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールの形成の本質的に完全な反転を可能にし、また、より多くのメタクリル酸メチル(MMA)を製造するために再利用するためのメタノールおよびメタクロレインの同時回収を可能にする。本発明は、加水分解反応において、蒸留塔内の混合物を1種以上の強酸または無機酸と反応させることを含む。本発明では強酸が蒸留塔に添加されるが、この蒸留塔へ、酸化エステル化反応器からなどの、反応の流出物が供給され、この蒸留塔から、過剰なメタノールおよび未反応のメタクロレインが除去される。蒸留塔の内部で本発明の方法を実施することにより、加水分解反応の平衡限界を「打ち破る」ことが可能になる。したがって、本発明によれば、本発明者らは、メタクロレインおよびメタノールを生成するためのメタクロレインジメチルアセタールの加水分解反応の平衡拘束を打ち破る方法を見出した。したがって、反応の副成物は、反応が起こっているのと同時に、蒸留塔で除去される。例えば、粗製MMAに基づき12重量%の割合のメタクロレインジメチルアセタールまたはヘミアセタール(MDA)は、20ppm未満まで反応で軽減できる。対照的に、この方法が蒸留の外で実施される場合、平衡限界はMDAの140ppm未満のレベルではない。本発明の別の利点は、メタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールと強酸または無機酸との加水分解反応によって生成されるメタノールおよびメタクロレインを除去するのに好適な蒸留塔を、加水分解反応を実施するのに有用な装置と組み合わせることである。
【0025】
メタクリル酸メチルを形成するためのメタノールとメタクロレインの反応において、蒸留塔の塔底部の内容物の主成分はメタクリル酸メチルであり、一方、蒸気に含まれるメタノールおよびメタクロレインの濃度は、塔頂周辺においてより高い。
【0026】
任意の好適な強酸または無機酸は、その酸が妥当な時間で反応を起こすのに十分に強い限り、本発明において有用である。このような酸としては、硫酸、スルホン酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、またはアルキルスルホン酸などの有機スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、塩酸などのハロゲン含有無機酸、硝酸、および1以下の、または好ましくは、0以下のpKaを有する他のプロトン酸、が挙げられる。
【0027】
図1に示すように、メタクリル酸メチル、水、メタノール、メタクロレイン、およびメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタール、例えば、メタクロレインジメチルアセタール(MDA)を含有する水性有機性成分混合物または供給流(1)が、蒸留塔(A)の塔頂部へ供給される。別に、強酸または無機酸を含有する水性混合物(2)が、蒸留塔(A)に供給され、これは、例えば、蒸留塔(A)の塔底部と塔頂部の中間を位置づける中間点において、または中間点より上部で、行われてもよい。水性有機性成分混合物(1)を蒸留する際に、メタクリル酸メチルおよびメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールである塔底流(9)が形成され、また、塔頂流(3)は、水、メタノール、およびメタクロレインを含有する第2の水性有機性成分混合物として形成される。重合防止剤のための任意の入口(4)を有する塔頂流(3)は、次いで、凝縮器(B)を通過し、冷却水を用いて塔頂流(3)は冷却水の温度まで冷却される。次いで、冷却された塔頂流(5)は、水供給部(6)と組み合わされ、スタティックミキサ(C)を通過し、デカンタ(D)でデカントされて、メタノールを含有する水相が除去され、この水相は、出口(8)から除去される。メタクリル酸メチル、メタクロレイン、およびヘキサンを含有するデカンタ(D)からの有機相(7)は、蒸留塔(A)の塔頂部に再循環される。リボイラ(E)は、塔の内容物を加熱し、蒸留を焚きつける。生成物の塔底流(9)は、冷却器(F)を通過して、それにより冷却され、冷却された塔底流(10)を得、この塔底流は、塔底部のデカンタ(G)でデカントされ、得られた廃水流(12)は、100ppm未満のメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールを含有する粗製メタクリル酸メチル(粗製MMA)流(11)から分離される。
【0028】
蒸留塔は、メタクリル酸メチル、水、メタノール、メタクロレイン、およびメタクロレインのアセタールまたはヘミアセタールを含有する水性有機性成分混合物と反応させるために、強酸または無機酸を含有する水性混合物を蒸留塔に供給するための入口を含む。
【0029】
好ましくは、蒸留塔内を上昇する蒸気を発生させるために、水性有機性成分混合物の少なくとも一部は、リボイラによって蒸留塔の塔底部で加熱されて、熱交換を起こし、蒸留塔中で流下する水性有機性成分混合物と反応する。したがって、水性有機性成分混合物から水、メタクロレイン、およびメタノールを分離するために使用される好適な蒸留塔は、当業者に周知の基準に従って選択されることができる。例えば、蒸留塔は、低圧ドロップワイヤーゲージ構造パッキングのようなトレイまたはパッキングを備えることができる。
【0030】
本発明によれば、ヘキサンの使用は必要とされない。補助(entrainer)溶媒を使用しない蒸留方法は、供給部中のアセタール/ヘミアセタールを反応させるために同様に良好に機能し得る。
【0031】
蒸留塔は、任意の場所に、10〜50個のトレイ、または好ましくは、20〜40個のトレイを有してもよい。より多いトレイも機能し得るが、必須ではない。当該技術分野において慣用的であるように、パッキングは、トレイの代わりに使用されることができる。
【0032】
本発明の方法において、蒸留塔における温度および圧力は、蒸留される材料の組成に依存する。例えば、蒸留塔は、ある圧力で、例えば、50〜500kPa、または65〜110kPaで、操作される。1気圧の単位は、101kPaに相当する。有利には、リボイラ温度は、60〜110℃、または好ましくは、80〜90℃である。
【実施例】
【0033】
以下の化学的略号を使用した。MMA=メタクリル酸メチル;MAn=メタクロレイン;MDA=メタクロレインジメチルアセタール;HEX=ヘキサン;MeOH=メチルアルコール;4−ヒドロキシテンポ=4−ヒドロキシ2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル;MSA=メタンスルホン酸
【0034】
実施例1:メタクロレインとメタノールの反応からメタクリル酸メチルを除去するための蒸留
本発明を実証するためにラボ実験を行った。蒸留塔を大気圧(101kPaまたは760mmHg)で運転した。リボイラ圧力は、塔内の圧力低下に依存し、これは、30段のトレイの塔内では約15〜20mmHgとなり、したがって、リボイラ圧力は、約775〜780mmHgとなり、その結果、プロセス側温度は塔底部で84℃となる。
【0035】
蒸留装置が氾濫することなく、または過度に長いリボイラ/廃液溜め滞留時間を用いることなく、水性有機性供給流を処理することが確実に可能となるように、供給流は大規模装置の場合よりも低いメタノール含有量を含み、一方で、蒸留塔の下部では適切な濃度を維持する。
【0036】
実施例1では、塔に供給される流体の総量に基づいて、塔に供給される酸の含有量が980ppm(の水性有機性供給流および強酸または無機酸供給流)となるように強酸が添加され、pH2.8を生じた(12、図1)。水性の強酸を、30個のトレイを下から上方向に数えて、蒸留塔のトレイ24に添加した。供給流中、MDA/(MMA+MDA)の合計量は12.1重量%であった。リボイラにおける滞留時間は30分であった。蒸留装置中の種々の流れの構成を以下の表1に示す。処理されたメタクリル酸メチル塔底流の生成物は、ガスクロマトグラフィー(GC)で測定して16ppmのMDAであった。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例2:より低い含有量のMDAを用いて開始することを除き、実施例1を繰り返した。実施例2では、流体供給の合計に基づいて塔に供給された酸の含有量は、1040ppmであった。水性の強酸を、30個のトレイを下から上方向に数えて、蒸留塔のトレイ24に添加した。供給流中、MDA/(MMA+MDA)の総量は5.4重量%であった。リボイラにおける滞留時間は30分であった。蒸留装置中の種々の流れの構成を以下の表2に示す。処理されたメタクリル酸メチル塔底流の生成物(参照11)は、GCで測定して<3ppmであった。
【0039】
【表2】
【0040】
比較例1 メタクリル酸メチルを含有する水性有機性混合物からメタノールおよびメタクロレインを除去するために使用された、蒸留塔の下流方向の反応器を用いる(日本特許第JP03532763B2号の実施例1と同様の)プロセスを実施して、本発明の有用性を示した。反応は、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)ポリマー、Chemours、Wilmington、DE)コーティングされたスピンバーで攪拌した50mlの丸底フラスコ中で、70℃で30分間作動させながら、実施して、メタクリル酸メチルの重量に基づいて約10.8重量%のメタクロレインジメチルアセタール(MDA)を含有する水性メタクリル酸メチル流を処理した。MMA中の10.8%のMDAの14.8gの試料を、反応器中の5重量%の硫酸溶液の4.8gと接触させた。30分後、MDA含有量は、MMAおよびMDAに基づいてGCで測定して150ppmまで低下した。
図1