(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
添加物として、アルミAl2O3を0から10モル%、ボロンB2O3を0から7モル%、およびシリコンSiO2を0から7モル%の1つ以上を前記主材料に混入し加熱して前記溶融ガラスを生成したことを特徴とする請求項1に記載のガラスフリット。
前記基板に塗布・焼結して導電性電極を形成として、太陽電池の基板に塗布・焼結して導電性アルミ電極を形成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のガラスフリット。
添加物として、アルミAl2O3を1から10モル%およびボロンB2O3を1から20モル%を前記主材料に混入し加熱して前記溶融ガラスを生成したことを特徴とする請求項7に記載のガラスフリット。
添加物として、リンP2O5を5から20モル%およびカルシウムCaOを5から20ル%を前記主材料に混入し加熱して前記溶融ガラスを生成したことを特徴とする請求項7から請求項8のいずれかに記載のガラスフリット。
前記添加物であるリンP2O5と一緒に添加する前記カルシウムCaOとして、リンとアルカリ土類金属の1つあるいは1つ以上との化合物である、リン酸三カルシウムCa3(PO4)2あるいはメタリン酸カルシウムCa(PO3)2としたことを特徴とする請求項10記載のガラスフリット。
前記基板に塗布・焼結して導電性電極を形成として、太陽電池の基板に塗布・焼結して導電性アルミ電極を形成としたことを特徴とする請求項7から請求項13のいずれかに記載のガラスフリット。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の ABSガラス(アートビーム太陽電池用ガラス)の作製フローチャートを示す。
【0025】
図1において、S1は、ガラスの原料を調合して溶融(900℃〜1200℃)(電気炉温度が上がったところに入れて1時間置く)する。これは、電気炉の温度を900℃〜1200℃範囲の実験で決めた最適な温度にあがったときに、調合したガラスの原料をルツボに入れて挿入し、溶解し、1時間置く。尚、ルツボに入れた原料を電気炉で規定温度に上げて溶融し、1時間置いてもよい。ガラスの原料は、実験では、例えば後述する
図2に示す下記などである。
【0026】
・サンプルNo.1:バナジウムV2O5 77.78モル%
バリウムBaO 22.22モル%
・サンプルNo.2:バナジウムV2O5 65モル%
バリウムBaO2 . 25モル%
アルミAl2O3 5モル%
ボロンB2O3 3モル%
シリコンSiO2 2モル%
・サンプルNo.3:バナジウムV2O5 60モル%
バリウムBaO2 . 25モル%
アルミAl2O3 6モル%
ボロンB2O3 5モル%
シリコンSiO2 4モル%
S2は、ガラス破片(3ー5mm)を作製する。これは、下側に記載したように、S1で作製した溶融ガラスを冷やした金属ローラーに流し込みながら作製する。即ち、溶融ガラスを水冷した回転する金属ローラーの間に流し込み急速冷却して3−5mm程度のガラス破片を作製する。
【0027】
S3は、粗粉砕(粉末2−3mm),粉砕(〜50μm)する。これは、S2で急速冷却した3−5mmのガラス破片を、粗粉砕して2−3mmの粉末にし、これを更に粉砕して〜50μm程度の粉末にする。
【0028】
S4は、微粉砕(2〜3μm)(ジェットミル装置)を行う。これは、ジェットミル装置を用い、S3の〜50μmの粉末を更に微粉砕して2〜3μm程度の粉末(ガラス粉末、ガラスフリット)にする。
【0029】
S5は、太陽電池アルミ電極用の焼結助剤のフリットを完成する。
【0030】
以上のように、原料を規定温度(900℃〜1200℃)に上げて溶解して溶融ガラスを作製し、この溶融ガラスを急速冷却してガラス破片(3−5mm)を作製し、これを粗粉砕、粉砕、微粉砕して2−3μm程度のガラスフリット(ガラス粉末)を作製した(
図6参照)。
【0031】
図2は、本発明のABSガラスの作製サンプル例を示す。
【0032】
図2の(a)は、サンプルNo.1,サンプルNo.2、サンプルNo.3を示す。これらは、サンプルに付与した名前を表す。
【0033】
図2の(b)は、各サンプルの原料のモル%を示す。例えばサンプルNo.1は、
・サンプルNo.1:バナジウムV2O5 77.78モル%
バリウムBaO 22.22モル%
の原料からなる。他のサンプルも図示の原料からなる。
【0034】
また、右端の「範囲」は、良好なガラスフリットが作製できる各原料の範囲を示したものであって、図示の下記の範囲内のときに良好なガラスフリットが作製できる。
【0035】
・バナジウムV2O5 55〜80モル%
・バリウムBaO 15〜30モル%
・亜鉛ZnO −
・ニッケルNiO 0モル%
・アルミAl2O3 0〜10モル%
・ボロンB2O3 0〜7モル%
・シリコンSiO2 0〜7モル%
・鉄Fe2O3 0モル%
図2の(c)は、調合比(g)を示す。これは、各原料を
図2の(b)のモル%の割合で、調合したときのgの1例を表したものである。
【0036】
図2の(d)は、本発明のガラスフリットの特性例を示す。
【0037】
・溶融ガラスを金属板上に流し出しても結晶化しないことが観察できた。
【0038】
・サンプルNo.2,No.3は、いずれも結晶化しないことが観察できた。
、 ・軟化性観察:
図1で作製したガラスフリットをルツボに入れて温度を上昇させた場合に、
・サンプルNo.1は570℃で表面が溶け始め、595度で完全に溶けた。
【0039】
・サンプルNo.2、No.3は、いずれも572℃で溶け始め、587℃で完全に溶けた。
【0040】
図2の(e)は、ガラスの遷移温度の例を示す。図示のような各遷移温度について図示の値がそれぞれ得られた。
【0041】
ここでは、結晶溶融温度はサンプルNo.1.2.3で、515℃、525℃、524℃でいずれも600℃以下で、目標とする650℃以下を実現できることが判明した。
【0042】
図3は、本発明の太陽電池用アルミペースト用フリット例(成分モル比)を示す。これは、既述した実験例の
図2の(a),(b)のサンプルNo1.2,3のモル%の部分を取り出して分かり易く整理したものである。
【0043】
・サンプルNo.1は、バナジウムV2O5が77.58モル%であって、範囲55−80モル%の範囲内のものである。バリウムBaOが22.22モル%であって、範囲15−30モル%の範囲内のものである。
【0044】
・サンプルNo.2,No.3も図示のとおり、範囲内のものである。
【0045】
以上のサンプルNo.1,2,3について、既述した
図2の(d),(e)に記載した各種特性が観察、実測でき、特に溶融温度が650℃以下を達成でき、太陽電池のアルミペーストに混合するガラスフリットとして使用できることが判明した。そして、本ガラスフリットは、鉄、銅、ニッケル、クロムを含まなく、長期間の使用でも太陽電池の特性を劣化させることがない。
【0046】
図4は、本発明のABSガラスの各成分の範囲の上限下限例説明図を示す。
【0047】
図4の(a)は、バナジウムV2O5(55〜80モル%)の上限下限例説明を示す。
【0048】
・バナジウムV2O5が下限(55モル%)以下の場合には、ガラスの骨格をなさなくなる。
【0049】
・バナジウムV2O5が上限(80モル%)以上の場合には、機械的な強度を調整することが難しい。耐水性が劣化する。
【0050】
図4の(b)は、バリウムBaO(実際にはBaCO3を原料に加え、加熱溶解時にCO2が放出されて、BaOとなる)の上限下限例説明を示す。
【0051】
・バリウムBaO(BaCO3)が下限(15モル%)以下の場合には、均質なガラス化が困難となる。
【0052】
・バリウムBaO(BaCO3)が上限(30モル%)以上の場合には、機械的な強度が劣化する。
【0053】
図4の(c)は、その他の添加物(例えば
図4の(d)の3種類の添加物)の説明を示す。
【0054】
・下記添加物は、アルミ材料(3価)がシリコン(4価)に対してP型機能を形成することを妨げない、又は、増長する役目を担う。場合によっては、添加物は無くても良い。
【0055】
図4の(d)は、添加物の例を示す。
【0056】
・アルミAl2O3(0〜10モル%):、
・ボロンB2O3(0〜7モル%):
・シリコンSiO2(0〜7モル%):
・この3成分の配合比率のバランスが良いことが重要である。そうでないと均一性が保たれず結晶が析出してしまう。任意の2成分又は1成分又はなしでもよい。但し耐水性を保つにはシリコンSiO2を入れるのが良い。
【0057】
図5は、本発明の太陽電池用アルミ電極焼成用フリット説明図を示す。これは、太陽電池の裏面にアルミペーストを塗布・焼結してアルミ電極を形成する場合に、当該アルミペーストに混入するガラスフリットに必要とされる課題(要望)(1)、(2)、(3)と、本発明が解決する手段とを対応づけて表にしたものである。
【0058】
図5の(a)は、課題「(1)低い溶融点」と、本発明の解決手段とを示す。本発明では、既述したように、バナジウムとバリウムを主体とし、600℃以下を実現している。これは、アルミの融点(660℃)とフリットの融点の中間点で焼結温度が決まるので、本発明ではガラスフリットの溶融点を650℃以下と規定し、実験では600℃以下が実現できた(
図2の(e)の結晶溶解温度515℃、525℃、524℃で600℃以下を実現できた)。
【0059】
図5の(b)は、課題「(2)シリコン太陽電池の寿命に影響を与えない成分構成」と、本発明の解決手段とを示す。本発明では、既述したように、鉄、銅、ニッケル、クロム等を含まない。基本はバナジウム、バリウム、シリコン、アルミ、ホウ素の組み合わせである。ここで、シリコン、アルミ、ホウ素は裏面アルミの接触材料である。
【0060】
以上のように、太陽電池の長期の過酷な使用条件のもとで悪影響を与える鉄、銅、ニッケル、クロム等を含まない材料でガラスフリットを作製したので、これら悪影響を回避できる。
【0061】
図5の(c)は、課題「(3)シリコン基板が焼結時に反らない。」と、本発明の解決手段とを示す。本発明では、既述したように、バナジウム、バリウムの構成成分によりアルミ焼結時の基板の反りがなくなる。
【0062】
図6は、本発明のABSガラスの概観写真例を示す。これは、既述した
図1の工程で作製したABSガラスの概観写真例を示す。
【0063】
図6の(a)は、ABSガラスの写真例を示す。これは、既述した
図1のS2のガラス破片(ABSガラスという)を試作実験したときの概観写真例を示す。
【0064】
図6の(b)は、租砕(2−3mm)のABSガラスの概観写真例を示す。ABSガラスは、2〜3mm程度のガラス片に粉砕されている。
【0065】
図6の(c)は、粉砕(〜50μm)のABSガラスの概観写真例を示す。ABSガラスは、〜50μm程度に粉砕されている。更に、ジェットミル装置で2〜3μm程度に微粉砕し、ガラスフリットの完成となる。
【0066】
尚、ガラスフリットを混入したアルミペーストを作製するには、例えば
(1)アルミ微粉末、(2)本発明のガラスフリット(微粉末)、(3)有機材、(4)有機溶媒、(5)樹脂の順番(あるいは順番を入れ替えてもよい)を容器に入れて良く攪拌することにより作製する。
【0067】
そして、作製したアルミペーストを、太陽電池の基板の裏面に所望のアルミパターンを形成するためにスクリーン印刷、溶剤飛ばし、焼結してアルミ電極を形成する。
【0068】
図7は、本発明の ABSガラス(アートビーム太陽電池用ガラス)の作製フローチャート(その2)を示す。
【0069】
図7において、S11は、ガラスの原料を調合して溶融(900℃〜1200℃)(電気炉温度が上がったところに入れて1時間置く)する。これは、電気炉の温度を900℃〜1200℃範囲の実験で決めた最適な温度にあがったときに、調合したガラスの原料をルツボに入れて挿入し、溶解し、1時間置く。尚、ルツボに入れた原料を電気炉で規定温度に上げて溶融し、1時間置いてもよい。ガラスの原料は、実験では、例えば後述する
図8および
図9に示す下記などである。
【0070】
サンプル11 サンプル12 サンプル13
原料(材料)
V2O5 25 24 24
BaO 28 25 25
B2O3 15 17 15
Al2O3 2 2 2
P2O5 13 13 13
CaO 13 13 13
ZnO 4 4 4
WO3 0 0 2
SbO3 0 2 2
(単位はモル%である。)
S12は、ガラス破片(3ー5mm)を作製する。これは、下側に記載したように、S11で作製した溶融ガラスを冷やした金属ローラーに流し込みながら作製する。即ち、溶融ガラスを水冷した回転する金属ローラーの間に流し込み急速冷却して3−5mm程度のガラス破片を作製する。
【0071】
S13は、粗粉砕(粉末2−3mm),粉砕(〜50μm)する。これは、S12で急速冷却した3−5mmのガラス破片を、粗粉砕して2−3mmの粉末にし、これを更に粉砕して〜50μm程度の粉末にする。
【0072】
S14は、微粉砕(2〜3μm)(ジェットミル装置)を行う。これは、ジェットミル装置を用い、S13の〜50μmの粉末を更に微粉砕して2〜3μm程度の粉末(ガラス粉末、ガラスフリット)にする。
【0073】
S15は、太陽電池アルミ電極用の焼結助剤のフリットを完成する。
【0074】
以上のように、原料を規定温度(900℃〜1200℃)に上げて溶解して溶融ガラスを作製し、この溶融ガラスを急速冷却してガラス破片(3−5mm)を作製し、これを粗粉砕、粉砕、微粉砕して2−3μm程度のガラスフリット(ガラス粉末)を作製した。
【0075】
図8は、本発明のABSガラスの作製サンプル例(その2)を示す。
【0076】
図8において、(a)の「サンプル11」は、サンプル11を示す。これらは、サンプル11に付与した名前を表し、その下段は原料(材料)名を示す。
【0077】
図8において、(b)の「モル比%(範囲)」中の「モル比%」は、サンプルの原料のモル%を示す。
例えばサンプル11は、
・バナジウムV2O5 25モル%
・バリウムBaO 28モル%
・ボロンB2O3 15モル%
・アルミAl2O3 2モル%
・リンP2O5 13モル%
・カルシウムCa 13モル%
・亜鉛ZnO 4モル%
・タングステンを3 0モル%
・アンチモンSbO3 0モル%
の原料からなる。
【0078】
また、
図8の(b)の「モル比%(範囲」中の「範囲」は、良好なガラスフリットが作製できる各原料の範囲を示したものであって、図示の下記の範囲内のときに良好なガラスフリットが作製できる。
【0079】
・バナジウムV2O5 10〜55モル%
・バリウムBaO 10〜40モル%
・ボロンB2O3 1〜20モル%
・アルミAl2O3 1〜10モル%
・リンP2O5 5〜20モル%
・カルシウムCa 5〜20モル%
・亜鉛ZnO 1〜10モル%
・タングステンを3 0
・アンチモンSbO3 0
図8において、(c)は、質量(g)を示す。これは、各原料を
図8の(b)のモル%の割合で、調合したときのgの1例を表したものである。
【0080】
図8において、(d)は、本発明のガラスフリットの特性例を示す。
【0081】
・るつぼ内状態は、良好であった。これは、上記原料をるつぼに入れて溶解したときの状態が良好であったことである。
【0082】
・流し出し状態表面が「かなり曇る」とは、るつぼ内から溶解した溶解物を急速冷却装置に流し出した状態における溶解物の表面が「かなり曇る」という状態であったことを表す。
【0083】
・軟化性観察が「500℃:粒が丸みを帯びる。600℃:粒同士がくっつく。」とは、
図7で作製したガラスフリットをるつぼに入れて温度を上昇させた場合に、500℃付近で粒が丸みを帯び、600℃で粒同士がくっついて溶解したことを表す。
【0084】
・冷却後の状態が表面が「茶色。650℃まであげてるつぼから剥がれる。」とは、溶解物の冷却後の状態の表面が「茶色」であり、るつぼに入れた溶解物を650℃まで上げるとるつぼから容易に溶解物が剥がれたことを表す。
【0085】
図8において、(e)のDTAでは,DTA測定(転移点、軟化点、結晶化、結晶溶解などの各温度測定)のピークは現れずらかった。
【0086】
図9は、本発明の太陽電池用アルミペースト用フリット例(成分モル比)(その2)を示す。これは、既述した実験例の
図8のサンプル11および図示外の他のサンプル12,13のモル%の部分を取り出して分かり易く整理し、結果(密着性、I/V特性)を付加したものである。
【0087】
ここで、アルミAl2O3は添加するとガラス化し易くなる。
【0088】
また、リンP2O5は、このままでは添加してもガラス化が困難であった。そこで、リンをアルカリ土類金属(例えばカルシウム)の化合物として添加することで初めて主材料(バリウムV2O5,バナジウムBaOからなる主骨格)の溶解物中に溶解してガラス化が可能となった。例えばリン酸二水素カルシウム(又はリン酸カルシウム)の水和物(Ca(H2PO4)2・H2O)として添加する。
【0089】
以上のサンプル11,12,13について、既述した
図8の(d),(e)に記載した各種特性を観察、実測し、特に溶融温度が650℃以下を達成し、更に、結果欄に記載した密着性(ガラスフリットを使用した太陽電池のアルミペーストを太陽電池基板の例えば裏面に塗付・乾燥・焼結した後の密着性)、更に、太陽電池のI/V特性を評価して従来よりも良好(例えば2倍程度以上良好)の結果がサンプル11で得られた。そして、本ガラスフリットは、鉄、銅、ニッケル、クロムを含まなく、長期間の使用でも太陽電池の特性を劣化させることがない。
【0090】
図10は、本発明のABSガラスの各成分の範囲の上限下限例説明図(その2)を示す。
【0091】
図10の(a)は、バナジウムV2O5(10〜55モル%)の上限下限例説明を示す。
【0092】
・バナジウムV2O5が下限(10モル%)以下の場合には、ガラスの骨格をなさなくなる。
【0093】
・バナジウムV2O5が上限(55モル%)以上の場合には、機械的な強度を調整することが難しい。耐水性が劣化する。
【0094】
ここで、バナジウムV2O5の範囲(10−55モル%)が
図4の(55−80モル%)から大幅に減少したのは、リンP2O5(5−20モル%)とCaO(5−20モル%)などを添加したために、一番多い主材料のバナジウムV2O5の添加割合が減少したものである。
【0095】
図10の(b)は、バリウムBaO(実際にはBaCO3を原料に加え、加熱溶解時にCO2が放出されて、BaOとなる)の上限下限例説明を示す。
【0096】
・バリウムBaO(BaCO3)が下限(10モル%)以下の場合には、均質なガラス化が困難となる。
【0097】
・バリウムBaO(BaCO3)が上限(40モル%)以上の場合には、機械的な強度が劣化する。
【0098】
図10の(c)は、その他の添加物(例えば
図10の(d)の2種類の添加物)の説明を示す。
【0099】
・アルミ材料(3価)がシリコン(4価)に対してP型機能を形成することを妨げない、または、増長する役目を担う。場合によっては添加しなくてもよい。
【0100】
図10の(d)は、添加物の例を示す。
【0101】
・アルミAl2O3(1〜10モル%):、
・ボロンB2O3(5〜20モル%):
・この2成分の配合比率のバランスが重要である。そうでないと均一性が保たれず結晶が析出してしまい、ガラス化しない。
【0102】
図10の(e)は、リンP205(5−20モル%)、カルシウムCaO(5−20モル%)の添加例を示す。リンP205(5−20モル%)およびカルシウムCaO(5−20モル%)を添加するには、リン酸三カルシウムCa3(PO4)2を添加する。
【0103】
・リンは水と反応するのでリン酸として入れるのが望ましい。
【0104】
・アルカリ金属を含む化合物は、太陽電池特性劣化を生ずるので、アルカリ土類金属(例えばカルシウム)とのリン化合物を添加する。
【0105】
・ホウ素(3価)とリン(5価)とアンチモン(5価)の化合物を添加した場合、3種を同時に入れたものはI/V特性、密着性においてホウ素、リンの2種を入れたものに比較して劣る。
【0106】
尚、上記アルカリ土類金属(例えばカルシウム)とのリン化合物として、リン酸三カルシウムCa3(PO4)2あるいはメタリン酸カルシウムCa(PO3)2を添加して実験したがいずれも良好な結果が得られた。特に、前者のリン酸三カルシウムCa3(PO4)2は食品添加材として用いられ安価に入手可能である点、更に、後者のものに比して酸素Oの数が8(後者は数が6)で若干多いが良好な結果が得られた。また、本発明のガラスフリットを製造する際に原料に炭素C(化合物も含む)が微量に付着あるいは混入している可能性があり、この微量の炭素Cを当該酸素Oで酸化してガス(炭酸ガスCO2など)として放出させ、浄化することも可能であるので、若干の酸素Oを含むことは必要である。
【0107】
尚2.リン酸P2O5およびカルシウムCaOを直接に添加したのでは、良好なガラスフリットは製造不可であった。同様に、カルシウムCaOとしてアルカリ土類金属以外のもの、例えばナトリウム、カリウムなどを添加したのでは太陽電池のように強い太陽光に長期間(例えば10年以上)さらされる場合には劣化して使用不可である。
【0108】
図11は、本発明の太陽電池用アルミ電極焼成用フリット説明図(その2)を示す。これは、太陽電池の裏面にアルミペーストを塗布・焼結してアルミ電極を形成する場合に、当該アルミペーストに混入するガラスフリットに必要とされる課題(要望)(1)、(2)、(3)、(4)と、本発明が解決する手段とを対応づけて表にしたものである。
【0109】
図11の(a)は、課題「(1)低い溶融点」と、本発明の解決手段とを示す。本発明では、既述したように、バナジウムとバリウムを主体とし、600℃以下を実現している。これは、アルミの融点(660℃)とフリットの融点の中間点で焼結温度が決まるので、本発明ではガラスフリットの溶融点を650℃以下と規定し、実験では600℃以下が実現できた。
【0110】
図11の(b)は、課題「(2)シリコン太陽電池の寿命に影響を与えない成分構成」と、本発明の解決手段とを示す。本発明では、既述したように、鉄、銅、ニッケル、クロム等を含まない。基本はバナジウム、バリウム、アルミ、ホウ素、リン、カルシウム、亜鉛の組み合わせである。ここで、アルミ、ホウ素は裏面アルミの接触材料である。
【0111】
以上のように、太陽電池の長期の過酷な使用条件のもとで悪影響を与える鉄、銅、ニッケル、クロム等を含まない材料でガラスフリットを作製したので、これら悪影響を回避できる。
【0112】
図11の(c)は、課題「(3)シリコン基板が焼結時に反らない。」と、本発明の解決手段とを示す。本発明では、既述したように、バナジウム、バリウムの構成成分によりアルミ焼結時の基板の反りがなくなる。
【0113】
図11の(d)は、課題「(4)密着性、I/V改善」と、本発明の解決手段とを示す。本発明では、既述したように、リンおよびカルシウム等を添加した構成成分によりアルミ焼結時の基板との密着性が良好となり、かつI/V特性も改善された。
【0114】
次に、
図12から
図14を用い、
図1から
図11で既述した本発明のガラスフリットを助剤として添加してアルミペーストを製造する工程および該製造したアルミペーストを太陽電池の裏面に塗布して焼結し、アルミニウム電極を形成する工程について詳細に順次説明する。
【0115】
図12は、本発明のアルミペーストの説明図を示す。これは、アルミペーストの構成成分の1例であって、例えば図示の下記である。これら構成成分を混合してアルミペーストを製造する(
図13参照)。
【0116】
(1)アルミニウム粉末:
・純度:99.7%以上
・平均粒度:1〜20μm
・形状:球状、楕円球状
(2)本発明のバナジン酸塩ガラス(ガラスフリット):
・粒径:1〜3μm
・アルミペースト全体の重量比0.1〜1%
(3)その他のガラス粉末:
・粒径:1〜3μm
・アルミペースト全体の重量比0〜1%
(4)樹脂:
・アルミペースト全体の重量比0.1〜3%
・エチルセルローズ類、ニトロセルローズ類等
(5)溶剤:
・アルミペースト全体の重量比〜25%位(スクリーン印刷等に適する粘土)
・ジエチレングリコール、モノブチルエーテル等
図13は、本発明のアルミペーストの製造フローチャートを示す。
【0117】
図13において、S21は、溶剤と樹脂を混合機で混ぜる(有機ビヒクル)。これは、既述した
図12の(5)溶剤と(4)樹脂とを混合機に入れて良く混合し、有機ビヒクルを製造する。
【0118】
S22は、有機ビヒクルにガラスを混ぜる。これは、S21で製造した有機ビヒクルに、既述した
図12の(2)本発明のバナジン酸塩ガラス粉末(ガラスフリット)と、必要に応じて(3)その他のガラス粉末とを混合機に入れて良く混合する。
【0119】
S23は、アルミニウム粉末を混ぜる。これは、更に、既述した
図12の(1)のアルミニウム粉末を混ぜる工程であって、
図12の(1)のアルミニウム粉末100重量部に対して、有機ビヒクル1.5〜100重量部(好ましくは30〜50重量部)となるように当該(1)のアルミニウム粉末を混合する。
【0120】
S24は、アルミペースト完成する。
【0121】
以上のS21からS24の手順により、既述した
図12の(5)溶剤と(4)樹脂、(2)本発明のバナジン酸塩ガラス粉末(ガラルフリット)と必要に応じて(3)その他のガラス粉末、更に(1)アルミニウム粉末を混合機で順番に良く混合し、アルミペーストを製造することが可能となる。
【0122】
図14は、本発明のアルミペーストの焼成フローチャートを示す。これは、既述した
図13で製造したアルミペーストを、太陽電池の裏面に塗布・乾燥・焼成し、アルミ電極を形成するときの焼成フローチャートの1例を示す。
【0123】
図14において、S31は、太陽電池セルの裏面、シリコン面に塗布する。例えば5〜13mg/cm2の厚さで塗布する。これは、アルミ電極を形成する対象の例えば太陽電池セルの裏面に塗布、あるいはシリコン基板の裏面のシリコン面に直接に塗布する。
【0124】
S32は、乾燥する。これは、S31で塗布したアルミペーストを例えば100〜300℃の乾燥炉に1分〜10分入れて溶剤を飛ばして乾燥する。また、熱風を送って乾燥してもよい。
【0125】
S33は、アルミニウム焼結する。これは、例えば500〜900℃程度(必要あれば1200℃)の焼結炉に1〜300秒入れて焼結し、アルミ電極を太陽電池セルの裏面あるいはシリコン面に形成する。また、赤外線ランプで赤外線を直接に照射して焼結してもよい。この焼結の際、助剤の特に本発明のバナジン酸塩ガラスが溶融して太陽電池セルの裏面あるいはシリコン面に強固に固着すると共にアルミニウム粉末に強く固着し、従来のガラス粉末では実現できなかった強い固着力を発揮することが確認された。つまり、焼結で形成されたアルミ電極にリード線をハンダ付けした場合に、当該リード線を引っ張っても従来のように容易に剥離しなく、従来の数倍の固着強度があることが実験で確認された。
【0126】
S34は、室温冷却し、完成する。これは、S33でアルミニウム焼結した後、室温冷却し、太陽電池の裏面、シリコン面にアルミ電極の形成を完了する。
【0127】
以上のように、本発明のバナジン酸塩ガラス粉末を助剤として添加したアルミペーストを、太陽電池セルの裏面あるいはシリコン面に塗布し(S31)、乾燥(S32)し、次に焼成(S33)することににより、太陽電池セルの裏面あるいはシリコン面に、従来の数倍、強く固着したアルミ電極を形成することが可能となった。