(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、実施の形態が可能である。なお、本発明において、(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルを意味する。
【0013】
本発明のポリスチレン系樹脂積層体(以下、単に「PS積層体」ともいう。)は、ポリプロピレン系樹脂層と、接着層と、ポリスチレン系樹脂層とをこの順に含み、前記接着層が、(メタ)アクリル変性ポリオレフィン系樹脂を含む接着インキを塗布した層であることが好ましい。
【0014】
前記ポリプロピレン系樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムまたはシートであることが好ましい。これらは、無延伸、一軸延伸、二軸延伸のいずれでもよいが、なかでも成形性に優れる無延伸であるものが好ましい。また、その表面にコロナ放電処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などの表面処理を施していてもよい。
【0015】
前記接着層は、(メタ)アクリル変性ポリオレフィン系樹脂を含む接着インキ(以下、「接着インキ」ともいう。)を塗布した層であることが好ましい。前記(メタ)アクリル変性ポリオレフィン系樹脂は、塩素化ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンおよび酸変性塩素化ポリオレフィンのなかから選ばれる少なくとも1つと(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリルモノマーとをグラフト重合反応することによりなるものであることが好ましい。
【0016】
前記塩素化ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンおよび酸変性塩素化ポリオレフィンのポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、プロピレン−ブテン−エチレン共重合体や、スチレン−ブタジエン−イソプレンなどの共重合体の水添加物、またはこれらがブレンドされたもの、などが挙げられ、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン−ポリプロピレン共重合体、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリプロピレン、酸変性塩素化ポリプロピレンなどが好ましく、なかでも塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンおよび酸変性塩素化ポリプロピレンがより好ましい。これらは、単独または2種類以上混合して使用することができる。
【0017】
前記塩素化ポリオレフィンや酸変性塩素化ポリオレフィンの塩素含有率は、特に限定はないが、塩素含有率が、10〜40質量%であることが好ましく、20〜25質量%であることがさらに好ましい。塩素含有率が、10質量%未満であると、トルエンやキシレンなどの有機溶媒に対する溶解性が劣り、均一な溶液が得られず、低温でゲル化したり、固形分が沈降したりするおそれがある。他方、塩素含有率が、40質量%を超えると、ポリプロピレン系樹脂層との密着性が低下するおそれがある。また、塩素化ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンおよび酸変性塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は、2万〜25万であることが好ましく、5万〜20万であることがより好ましい。塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量が2万未満であると、耐溶剤性が低下するおそれがある。重量平均分子量が25万を超えると、ポリプロピレン樹脂層への密着性が低下するおそれがある。前記塩素化率および重量平均分子量の範囲内であることで、ポリプロピレン系樹脂層との密着性がさらに向上する。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量として評価できる。
【0018】
前記ポリオレフィンにラジカル重合性不飽和基を有する酸成分をグラフト重合させることにより酸変性されたポリオレフィンが作成できる。前記酸性分としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタル酸などが挙げられ、なかでも(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などがより好ましい。前記グラフト重合する方法として、ラジカル発生剤として有機過酸化物の存在下での溶液法や溶融法などの公知の方法が挙げられる。ラジカル発生剤として使用できる過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジ−t−ブチルなどが挙げられ、反応温度と分解温度に従って適宜選択される。酸成分のグラフト化率は、樹脂酸価が10〜150となる量であることが好ましく、20〜100となる量であることがより好ましく、30〜80となる量であることがさらに好ましい。樹脂酸価が10より小さいと、接着インキの溶媒に対する溶解性が劣り、ポリプロピレン系樹脂層との密着性が劣るおそれがある。樹脂酸価が150を超えると、ポリスチレン系樹脂層との密着性が低下するおそれがある。また、前記塩素化ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンおよび酸変性塩素化ポリオレフィンは、市販のものも使用できる。
【0019】
前記(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられ、これらは、単独または2種類以上混合して使用することができる。なかでも、クリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどがより好ましい。
【0020】
前記塩素化ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンおよび酸変性塩素化ポリオレフィンのなかから選ばれる少なくとも1つと前記(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリルモノマーとを重量比として、10:90〜90:10の範囲内でグラフト重合反応することが好ましい。塩素化ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンおよび酸変性塩素化ポリオレフィンの重量が、10未満であると、ポリプロピレン樹脂層との密着性が低下するおそれがあり、90を超えると、溶媒に対する溶解性が劣るおそれがある。
【0021】
前記(メタ)アクリル変性ポリオレフィン系樹脂は、接着インキ中に、固形分で1〜70質量%であることが好ましく、2〜65質量%であることがより好ましく、3〜60質量%であることがさらに好ましい。1質量%より少ないと、十分な密着が得られず、70質量%より多いと、固形分が多すぎて、粘度が高くなり、塗布が困難である。
【0022】
前記接着インキには、(メタ)アクリル変性ポリオレフィン系樹脂のほかに他の樹脂、溶媒、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、ワックス、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、酸化防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、pH調整剤、電荷付与剤、殺菌剤、防臭剤、湿潤剤、皮張り防止剤、金属キレート剤などを含有することもできる。
【0023】
前記溶媒は、前記(メタ)アクリル変性ポリオレフィン系樹脂を該溶媒中に溶解または分散させるものを使用することが好ましい。例えば、主にトルエン、メチルシクロヘキサンなどの非極性溶剤が挙げられる。メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸プロピルなどのエステル系溶剤、イソプロピルアルコールなどアルコール系溶剤なども使用することができる。前記溶媒は、接着インキ中に、1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましく、10〜70質量%であることがさらに好ましい。1質量%より少ないと、十分な印刷適性が得られず、90質量%より多いと、固形分が少なくなり、ポリプロピレン系樹脂層への密着性が低下してしまう。
【0024】
前記ポリスチレン系樹脂層は、ポリスチレンシート(PSシート)、汎用ポリスチレン(GPPS)シート、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)シート、発泡スチレンペーパー(PSP)、耐熱PSPシートなどが好ましい。なかでも、ラミネートに適用できるものであることが好ましい。ポリスチレン系樹脂層の厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、5μm〜5mmが好ましく、10〜2mmがより好ましい。また、未処理のものも選択できるが、接着層との密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。容器やトレイに成形するためには、100μm〜5mmであることが好ましく、特に剛直な容器や深絞り成形してなる容器やトレイに成形加工するためには、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のポリスチレン系樹脂積層体は、前記ポリプロピレン系樹脂層と、接着層との間に印刷層を設けてもよい。印刷層を設けることにより、多色カラー画像を付与し、印象を高めるという効果がある。
【0026】
前記印刷層は、ポリウレタン系樹脂および/またはポリオレフィン系樹脂を含む印刷インキを塗布した層であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリブテン、プロピレン−ブテン−エチレン共重合体や、スチレン−ブタジエン−イソプレンなどの共重合体の水添加物などが挙げられ、塩素化、酸変性していてもよい。これらは、単独または2種類以上混合して使用することができる。また、前記印刷インキには、ポリウレタン系樹脂および/またはポリオレフィン系樹脂のほかに、他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂としては、セラック類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、ハロゲン化ビニル系樹脂(例えば、塩化ビニル系樹脂、フッ素含有ビニル系樹脂など)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、アクリルスチレン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ケトン樹脂、ポリアミド系樹脂、ニトロセルロース樹脂、ロジン系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、およびエチレン−ビニルアルコール樹脂などが挙げられる。
【0027】
前記ポリウレタン系樹脂および/またはポリオレフィン系樹脂は、前記他の樹脂を含めて、印刷インキ中に、固形分で1〜70質量%であることが好ましく、2〜65質量%であることがより好ましく、3〜60質量%であることがさらに好ましい。1質量%より少ないと、十分な密着が得られず、70質量%より多いと、固形分が多すぎて、粘度が高くなり、塗布が困難である。
【0028】
前記印刷インキには、樹脂のほかに色材、溶媒、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、ワックス、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、酸化防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、pH調整剤、電荷付与剤、殺菌剤、防臭剤、湿潤剤、皮張り防止剤、金属キレート剤などを含有することもできる。
【0029】
前記色材としては、顔料または染料あるいはその混合物を含有することができる。顔料としては、例えば、酸化チタン、弁柄、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、マイカ、タルク、パール、アルミニウム、カーボンブラックなどの無機顔料、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、ジオキサジン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系などの有機顔料、その他各種蛍光顔料、金属粉顔料、体質顔料などが挙げられる。これらの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、2種以上を併用してもよい。染料としては、溶剤に溶解または分散するものが好ましく、これらの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐久性の観点から、顔料を用いることが好ましい。色材を含有するため、カラーバリエーションや多色カラー画像を付与するという面で非常に有用である。
【0030】
前記溶媒は、印刷層形成時における適度な流動性の付与や、粘度調整のために、各種有機溶剤であることが好ましく、前記ポリウレタン系樹脂および/またはポリオレフィン系樹脂を該溶媒中に溶解または分散させるものであることが好ましい。
【0031】
有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記溶媒は、印刷インキ中に、1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましく、10〜70質量%であることがさらに好ましい。1質量%より少ないと、十分な印刷適性が得られず、90質量%より多いと、固形分が少なくなり、ポリプロピレン系樹脂層への密着性が低下してしまう。
【0033】
前記印刷インキは、市販品としてLG−FKシリーズ(ウレタン系樹脂)、NOPL−Tシリーズ(オレフィン系)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0034】
本発明の接着インキ、印刷インキは、それぞれの樹脂と、色材と、必要に応じて他の樹脂や各種添加剤を、溶媒の存在下で、均一に混合、分散する公知の方法で製造できる。印刷インキ中の顔料を分散させる際は、凝集している顔料を0.01〜1μm程度の平均粒径になるまで微粒子化して、分散体を得ることによって製造できる。
【0035】
前記混合、分散には、各種撹拌機または分散機が使用でき、ディスパー、ボールミル、サンドミル、アトライター、ビーズミル、ロールミル、ペブルミル、ペイントシェーカー、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、パールミル、超音波ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ニーダー、ホモミキサーなどが挙げられる。ビーズミルを使用する際の製造方式は特に制限されないが、パス方式でも循環式でもよく、パス方式は複数回分散体を通す複数パス方式でもよい。
分散体における有機顔料の平均粒径は、ビーズミルのビーズ分離機構、ビーズ種、ビーズ粒径、ビーズ充填率、撹拌羽の形状および枚数、回転速度、分散体の粘度、吐出量、プレミックス時間などによって適宜調整できる。
それぞれのインキ中の粗大粒子や気泡は、公知のろ過機や遠心分離機などにより取り除くことができる。
【0036】
それぞれのインキの粘度は、10〜1,000mPa・s/25℃の範囲内であることが好ましい。10mPa・sより小さいと、粘度が低すぎて、顔料が沈降しやすい傾向になり、1,000mPa・sより大きいと、流動性が悪く、インキ製造時に支障が出たり、容器への充填が困難となる。この場合、ブルックフィールド型粘度計やコーンプレート型粘度計などの市販の粘度計を用いて測定することができる。
それぞれのインキ中の固形分としては、2〜80質量%の範囲内であることが好ましい。2質量%より低いと、印刷時の塗布量が十分でなく、80質量%を超えると、流動性が悪く、インキ化が困難となる。
それぞれのインキは、印刷条件に適した粘度や濃度にまで、希釈溶剤で適宜希釈して印刷に供される。
【0037】
前記希釈溶剤は、それぞれのインキの粘度や濃度を調整できるものが使用できる。市販品としては、印刷インキには、PU515溶剤(ウレタン系)、SL9170溶剤(ノントルエン系)、PP575溶剤(オレフィン系)が好ましく、接着インキには、PP575溶剤(オレフィン系)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0038】
前記それぞれのインキが印刷に供される際の粘度は、ザーンカップNo.3((株)離合社製)にて、25℃において13〜25秒の範囲内であることが好ましい。13秒より小さいと、泳ぎやすく、25秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0039】
印刷時に、必要に応じて、それぞれのインキに、硬化剤を添加することもできる。例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、ペンタン−1,5−ジイソシアネート(スタビオPDI)などの脂肪族ジイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパン三量体、イソシアヌレート体、ビュレット体、アロファネート体などの変性体などのポリイソシアネート系硬化剤が挙げられる。これらは、単独または2種類以上混合して使用することができる。
【0040】
本発明のポリスチレン系樹脂積層体は、ポリプロピレン系樹脂層と、接着層とを順に積層(PP接着層)し、さらにPP接着層上に、ラミネートでポリスチレン系樹脂層を積層することが好ましい。接着層が、アクリル変性ポリオレフィン系樹脂を含む接着インキを塗布した層であることで、ポリスチレン系樹脂層と強固に接着する。具体例としては、HIPSシート、PSPや耐熱PSPを前記ポリプロピレン系樹脂層と、前記接着層とを順次積層したPP接着層と積層する際に、PP接着層のポリプロピレン系樹脂層側を加熱ロールで加熱し、この加熱ロールとHIPSシート、PSPや耐熱PSP側に配置したニップロールとでHIPSシート、PSPや耐熱PSPとPP接着層とを加圧して両者を熱接着する。
【0041】
また、前記PP接着層は、それ自体で安定であり、PP接着層を積層体として、通常に巻き取っても、ブロッキングが起こらず、保管をすることができる。したがって、このPP接着積層体を巻き戻しながら、PP接着層上に前記ラミネート加工ができるため、汎用性が非常に高い。
【0042】
さらに、本発明のポリスチレン系樹脂積層体は、ポリプロピレン系樹脂層と、印刷層と、接着層とを順に積層(PP印刷層)し、さらにPP印刷層の接着層上に、ラミネートでポリスチレン系樹脂層を積層してもよい。前記印刷層は、ポリウレタン系樹脂および/またはポリオレフィン系樹脂を含む印刷インキを塗布した層であることが好ましい。接着層が、アクリル変性ポリオレフィン系樹脂を含む接着インキを塗布した層であることで、印刷層を介してもポリプロピレン系樹脂層とポリスチレン系樹脂層とを強固に接着する。具体例としては、HIPSシート、PSPや耐熱PSPを前記順次積層したPP印刷層と積層する際に、PP印刷層のポリプロピレン樹脂層側を加熱ロールで加熱し、この加熱ロールとHIPSシート、PSPや耐熱PSP側に配置したニップロールとでHIPSシート、PSPや耐熱PSPとPP印刷層とを加圧して両者を熱接着する。
【0043】
また、前記PP印刷層は、それ自体で安定であり、PP印刷層を積層体として、通常に巻き取っても、ブロッキングが起こらず、保管をすることができる。したがって、このPP印刷積層体を巻き戻しながら、PP印刷層上に前記ラミネート加工ができるため、汎用性が非常に高い。
【0044】
本発明の本発明のポリスチレン系樹脂積層体の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂層を準備する工程と、該ポリプロピレン樹脂層の一方に、接着層を作成するグラビア印刷工程と、前記接着層上にポリスチレン系樹脂層を作成するラミネート工程と、を含み、前記接着層が、アクリル変性ポリオレフィン系樹脂を含む接着インキを塗布した層であることが好ましい。
【0045】
前記ポリプロピレン系樹脂層を準備する工程は、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムまたはシートを準備すればよく、無延伸、一軸延伸、二軸延伸のいずれでもよいが、ラミネート加工に対する耐性を有する無延伸であるものが好ましく、食品用に用いられるものがより好ましいが、機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものを準備することが好ましい。また、印刷層の形成面には密着性を向上させるため、フィルム表面にコロナ放電処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などの表面処理を施すか、あらかじめ施されたものを選択して準備することが好ましい。
【0046】
前記グラビア印刷工程は、前記ポリプロピレン樹脂層の一方に、接着層を作成することが好ましい。さらに、前記グラビア印刷工程は、前記ポリプロピレン樹脂層の一方に、印刷層と、接着層とをこの順にPP印刷層を作成する前記工程であることが好ましい。印刷層を設けることにより、多色カラー画像を付与し、印象を高めるという効果がある。
【0047】
前記グラビア印刷工程は、品質および生産性の高さからグラビア印刷工程による印刷工程が好ましく、特に多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷工程であることがより好ましい。
【0048】
前記グラビア印刷工程により、基材の全面に印刷層および/または接着層を形成することもできるが、特に容易に部分的に印刷層および/または接着層を形成することもでき、多色カラー画像の付与も実現できる。
【0049】
前記PP接着層またはPP印刷層上にポリスチレン系樹脂層を作成するラミネート工程は、従来公知の方法による工程であることが好ましい。具体例としては、HIPSシート、PSPや耐熱PSPを前記順次積層したPP接着層またはPP印刷層と積層する際に、PP接着層またはPP印刷層のポリプロピレン樹脂層側を加熱ロールで加熱し、この加熱ロールとHIPSシート、PSPや耐熱PSP側に配置したニップロールとでHIPSシート、PSPや耐熱PSPとPP接着層またはPP印刷層とを加圧して両者を熱接着する。
【0050】
前記作成した積層体は、包装用、食品用、食品保存用、農業用、土木用、漁業用、自動車内外装用、船舶用、日用品用、建材内外装用、住設機器用、医療・医療機器用、医薬用、家電品用、家具類用、文具類・事務用品用、販売促進用、商業用、電機電子産業用などに使用できる。
【0051】
本発明の成形容器は、ポリスチレン系樹脂積層体を成形することによりなることが好ましい。形態としては、カップ、トレイ、ボトル、コンテナ、ボックス、ケース、番重、カバー、蓋材、キャップ、ラベル、インモールドカップなど包装用途に用いられる周知の形態のいずれでもよい。
【実施例】
【0052】
以下に実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は質量部を、%は質量%を表す。
【0053】
[接着インキの作製]
接着インキa(製造例1)
冷却器、温度計、モノマー滴下装置および撹拌機を備えた2リットル4つ口フラスコに、塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニス(スーパークロン803L、塩素化率26%、固形分30%、日本製紙(株)製)250g、トルエン700gを投入し、85℃に加温した。次に、ラジカル発生剤として過酸化ベンソイル7gを添加し、30分間攪拌した後、メチルメタクリレート90g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30g、n−ブチルメタクリレート180gを約3時間かけて添加し、さらに7時間グラフト重合反応を行ない、固形分30%のアクリル変性塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニスを得た。
さらに、前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニス50部、トルエン30部、メチルエチルケトン15部、ブロッキング防止剤(添加剤M、東京インキ(株)製)5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、接着インキa(略称:接着インキa)を作製した。
接着インキb(製造例2)
製造例1の塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニスを酸変性ポリオレフィン系(PP他)共重合樹脂(アウローレン100S、固形分100%、日本製紙(株)製)に変更し、同様にグラフト重合反応を行ない、固形分30%のアクリル変性酸変性ポリオレフィン系樹脂ワニスを得た。さらに、前記アクリル変性酸変性ポリオレフィン系樹脂ワニス50部、トルエン30部、メチルエチルケトン15部、ブロッキング防止剤(添加剤M、東京インキ(株)製)5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、接着インキb(略称:接着インキb)を作製した。
接着インキc(製造例3)
製造例1の塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニスを酸変性塩素化ポリオレフィン系樹脂ワニス(スーパークロン822、塩素化率24.5%、固形分20%、日本製紙(株)製)に変更し、同様にグラフト重合反応を行ない、固形分30%のアクリル変性酸変性塩素化ポリオレフィン系樹脂ワニスを得た。さらに、前記アクリル変性酸変性塩素化ポリオレフィン系樹脂ワニス50部、トルエン30部、メチルエチルケトン15部、ブロッキング防止剤(添加剤M、東京インキ(株)製)5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、接着インキc(略称:接着インキc)を作製した。
接着インキd(製造例4)
冷却器、温度計、モノマー滴下装置および撹拌機を備えた2リットル4つ口フラスコに、塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニス(スーパークロン803L、塩素化率26%、固形分30%、日本製紙(株)製)1000g、トルエン175gを投入し、85℃に加温した。次に、ラジカル発生剤として過酸化ベンソイル7gを添加し、30分間攪拌した後、メチルメタクリレート22.5g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート7.5g、n−ブチルメタクリレート45gを約3時間かけて添加し、さらに7時間グラフト重合反応を行ない、固形分30%のアクリル変性塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニスを得た。
さらに、前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニス50部、トルエン30部、メチルエチルケトン15部、ブロッキング防止剤(添加剤M、東京インキ(株)製)5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、接着インキd(略称:接着インキd)を作製した。
接着インキe(製造例5)
冷却器、温度計、モノマー滴下装置および撹拌機を備えた2リットル4つ口フラスコに、塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニス(スーパークロン803L、塩素化率26%、固形分30%、日本製紙(株)製)625g、トルエン437.5gを投入し、85℃に加温した。次に、ラジカル発生剤として過酸化ベンソイル7gを添加し、30分間攪拌した後、メチルメタクリレート56.25g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート18.75g、n−ブチルメタクリレート112.5gを約3時間かけて添加し、さらに7時間グラフト重合反応を行ない、固形分30%のアクリル変性塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニスを得た。
さらに、前記アクリル変性塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニス50部、トルエン30部、メチルエチルケトン15部、ブロッキング防止剤(添加剤M、東京インキ(株)製)5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、接着インキe(略称:接着インキe)を作製した。
接着インキf(製造例6)
塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニス(スーパークロン803L、塩素化率26%、固形分30%、日本製紙(株)製)50部、トルエン30部、メチルエチルケトン15部、ブロッキング防止剤(添加剤M、東京インキ(株)製)5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、接着インキf(略称:接着インキf)を作製した。
接着インキg(製造例7)
アクリル系樹脂(ダイヤナールBR−106、固形分100%、Tg47℃、重量平均分子量60,000、三菱ケミカル(株)製)20部、イソプロピルアルコール30部、酢酸n−プロピル25部、酢酸エチル25部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、接着インキg(略称:接着インキg)を作製した。
接着インキh(製造例8)
塩素化ポリプロピレン系樹脂ワニス(スーパークロン803L、塩素化率26%、固形分30%、日本製紙(株)製)30部、アクリル系樹脂(ダイヤナールBR−106、固形分100%、Tg47℃、重量平均分子量60,000、三菱ケミカル(株)製)10部、トルエン40部、イソプロピルアルコール10部、酢酸エチル10部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、接着インキh(略称:接着インキh)を作製した。
【0054】
【表1】
【0055】
製造例1〜8で作製した各接着インキ、および次の各印刷インキを用いた積層体を作製した。
【0056】
黄インキ1(Y1):LG−FK230黄(ウレタン系、東京インキ(株)製)
紅インキ1(R1):LG−FK110紅(ウレタン系、東京インキ(株)製)
藍インキ1(C1):LG−FK390R藍(ウレタン系、東京インキ(株)製)
墨インキ1(B1):LG−FK920R墨(ウレタン系、東京インキ(株)製)
黄インキ2(Y2):NOPL−T230黄(ポリプロピレン系、東京インキ(株)製)
紅インキ2(R2):NOPL−T110紅(ポリプロピレン系、東京インキ(株)製)
藍インキ2(C2):NOPL−T390藍(ポリプロピレン系、東京インキ(株)製)
墨インキ2(B2):NOPL−T910墨(ポリプロピレン系、東京インキ(株)製)
【0057】
<実施例1、4>
6色機グラビア印刷機を用いて、製造例1で作製した接着インキaを、希釈溶剤PP575(東京インキ(株)製)にて、ザーンカップNo.3で粘度15秒に調整した後、第1ユニットのインキパンに接着インキaを投入した。厚み25μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム、KT、サン・トックス(株)製)に印刷して、CPPフィルム/接着層のPP接着積層体PR1を8,000m得た。また、印刷中は粘度コントローラー((株)メイセイ製)にて、一定に保った。
【0058】
<実施例2〜3、5〜6>
接着インキaを接着インキb〜eに変更し、実施例1と同様にしてPP接着積層体PR2〜5をそれぞれ8,000m得た。
【0059】
<比較例1〜4>
PP接着積層体PR9は、前記CPPフィルムとした。また、接着インキaを接着インキfおよび接着インキhに変更し、実施例1と同様にしてPP接着積層体PR10〜11を8,000m得た。
【0060】
<比較例8>
さらに、接着インキf、接着インキgをこの順に印刷し、実施例1と同様にして2層の接着層を有するPP接着積層体PR14を8,000m得た。
【0061】
<実施例7、10>
6色機グラビア印刷機を用いて、印刷インキY1、R1、C1、B1、製造例1で作製した接着インキaを、それぞれ希釈溶剤PU515、PP575(東京インキ(株)製)にて、ザーンカップNo.3で粘度15秒に調整した後、第1ユニットのインキパンにB1インキ、第2ユニットのインキパンにC1インキ、第3ユニットのインキパンにR1インキ、第4ユニットのインキパンにY1インキ、第5ユニットのインキパンに接着インキaをそれぞれ投入した。厚み25μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム、KT、サン・トックス(株)製)に印刷して、CPPフィルム/印刷層/接着層のPP印刷積層体PR6を8,000m得た。また、印刷中は粘度コントローラー((株)メイセイ製)にて、一定に保った。
【0062】
<実施例8>
各印刷インキY1、R1、C1およびB1をY2、R2、C2およびB2ならびに接着インキaを接着インキbに変更し、希釈溶剤PU515、PP575、SL9170(東京インキ(株)製)にて、ザーンカップNo.3で粘度15秒に調整した後、実施例7と同様にしてPP印刷積層体PR7を8,000m得た。また、印刷中は粘度コントローラー((株)メイセイ製)にて、一定に保った。
【0063】
<実施例9>
また、接着インキaを接着インキcに変更し、実施例7と同様にしてPP印刷積層体PR8を8,000m得た。
【0064】
<比較例5、参考例1>
前記CPPフィルムを使用し、各印刷インキY1、R1、C1およびB1とし、実施例7と同様にしてPP印刷積層体PR12およびPR15を8,000m得た。
【0065】
<比較例6、7>
また、接着インキfを使用し、実施例7と同様にしてPP印刷積層体PR13を8,000m得た。
【0066】
【表2】
【0067】
[ラミネート積層体の作製]
PP接着積層体PR1の接着層面と、厚さ2mmの耐熱性ポリスチレンシート(略称:耐熱PSP、東洋ポリスチレン(株)製)を合わせ、該PP接着積層体PR1のフィルム面に厚さ12μmのポリエステルフィルムを置き、ラミネータを用いて、温度160℃、速度10m/minの条件で熱圧着でラミネートを行い、その後ポリエステルフィルムを取り去り、PR1/耐熱PSPの積層体LAM1を得た。(「/」は、熱ラミネートを表わす。)
同様に、表2の構成に従い、積層体LAM2〜LAM3、LAM5〜LAM9、LAM11〜LAM13、LAM15〜LAM16およびLAM18を得た。
また、PP接着積層体PR1の接着層面上に、押出ラミネート機で、ライン速度100m/分にて、耐衝撃性ポリスチレン樹脂E640N(略称:HIPS、東洋ポリスチレン(株)製)を溶融押出し、200μmで積層して、PR1//HIPSの積層体LAM4を得た。(「//」は、押出ラミネートを表わす。)
同様に、表2の構成に従い、積層体LAM10、LAM14、およびLAM17を得た。
また、参考例として、PP印刷積層体PR15(接着層なし)上に、タケラックA−969V/タケネートA−5(略称:DL、三井化学(株)製)をドライラミネート機で、ライン速度150m/分にて、塗布量2.6g/m
2となるように塗工して、厚み30μmのポリスチレンシート(略称:PS、三井化学東セロ(株)製)を貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行って、PR15/DL/PSの積層体を得、さらに、PS面と、厚さ2mmの耐熱性ポリスチレンシート(略称:耐熱PSP、東洋ポリスチレン(株)製)を合わせ、該PP印刷積層体PR15のフィルム面に厚さ12μmのポリエステルフィルムを置き、ラミネータを用いて、温度160℃、速度10m/minの条件で熱圧着でラミネートを行い、その後ポリエステルフィルムを取り去り、PR15/DL/PS/耐熱PSPの積層体LAM19を得た。
【0068】
積層体LAM1〜LAM19について、積層体のラミネート強度、電子レンジ適性およびコスト性を評価し、同表2に示した。
【0069】
<ラミネート強度>
積層体を15mm巾の短冊状にして、試験片とし、この試験片を万能型引張試験機(RTE−1210、(株)オリエンテック製)にて、90°剥離、引張速度300mm/分にて、引っ張り、剥離時の最大荷重をラミネート強度として測定した。ラミネート強度が大きいほど、ラミネート性が良好と判断した。ラミネート強度が、○:200g以上、△:100g以上、200g未満、×:100g未満、の3段階で評価した。
【0070】
<電子レンジ適性>
積層体を真空成形機(小型真空成形機フォーミングシリーズ300X型、成光産業(株)製)により、CPPフィルム側が容器内面となる口径50mm、深さ50mmの角形容器に成形後、サラダ油を20ml入れ、電子レンジ(NE−1802、パナソニック(株)製)で、1800W、45秒加熱したときの、CPPフィルムの浮き具合を目視にて観察し、評価した。CPPフィルムの浮き具合の少ないものが、電子レンジ適性が良好と判断した。CPPフィルムの浮き具合が、○:浮きがまったくない、×:浮きがある、の2段階で評価した。
【0071】
<コスト性>
〇:準備する接着インキが1種類か、または使わなくても積層体を作製できる、×:準備する接着インキが2種類以上か、または他の工程を入れて積層体を作製できる、の2段階で評価した。
【0072】
表2によると、実施例1〜4の積層体は、CPPフィルムとPS樹脂層との密着性が良好で、ラミネート強度が良好であることが明確である。特に、耐熱PSPの場合、電子レンジ加熱でもポリプロピレンフィルムの浮きがまったく発生しないことが明確である。実施例5は、ポリオレフィンとアクリルの重量比を80:20としてグラフト重合反応させたアクリル変性ポリオレフィン樹脂を用いた積層体の例(接着インキd)、実施例6は、ポリオレフィンとアクリルの重量比が50:50でグラフト重合反応させたアクリル変性ポリオレフィン樹脂を用いた積層体の例(接着インキe)であるが、どちらもCPPフィルムとPS樹脂層との密着性が良好で、ラミネート強度が良好であることが明確である。
また、印刷層を含む実施例7〜10の積層体もラミネート強度、電子レンジ適性ともに良好であることが明確である。さらに、実施例1〜10の積層体は、PSシートをドライラミネートし、その後に耐熱性PSPをラミネートする従来一般的な構成による積層体(参考例1)よりもコスト性が明らかに良好である。
比較例1および4の積層体は、接着層がないため、CPPフィルムとPS樹脂層との密着性が悪く、ラミネート強度が劣る。特に、耐熱PSPの場合、電子レンジ加熱でポリプロピレンフィルムの浮きが発生することが明確である。比較例2の積層体は、アクリル変性ポリオレフィン系樹脂ではない接着層であるため、ラミネート強度、電子レンジ適性が劣ることが明確である。比較例3の積層体は、塩素化ポリオレフィン系樹脂とアクリル系樹脂を混合したのみの(グラフト重合していない)接着層であるが、ラミネート強度、電子レンジ適性ともに劣ることが明確である。
また、印刷層を含む比較例5の積層体も、接着層がないため、CPPフィルムとPS樹脂層との密着性が悪く、ラミネート強度、電子レンジ適性が劣ることが明確である。比較例6〜7の積層体も、アクリル変性ポリオレフィン系樹脂ではない接着層であるため、ラミネート強度、電子レンジ適性が劣ることが明確である。特に、耐熱PSPの場合、電子レンジ加熱でポリプロピレンフィルムの浮きが発生することが明確である。
引用文献1に類似の比較例8は、2層の接着層により、ラミネート強度、電子レンジ適性は良好であるが、接着インキを2種類準備する工程や2層の印刷工程が増えるためコスト性は劣る。
参考例1は、従来一般的なドライラミ工程が必要となる構成の積層体の例であるので、コスト性は劣る。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂層と、接着層と、ポリスチレン系樹脂層とをこの順に含み、前記接着層が、アクリル変性ポリオレフィン系樹脂を含む接着インキを塗布した層であることを特徴とするポリスチレン系樹脂積層体。