(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に包含されたガス発生剤が燃焼することで作動ガスが生成される作動ガス生成室と、前記作動ガス生成室で生成された作動ガスが通過するフィルタが収容されたフィルタ室と、を内部に含んでいる長尺円筒状のハウジングと、
点火薬を内包しており、前記ハウジングの軸方向の一端部に前記作動ガス生成室を前記フィルタとともに挟みこむように配置され、前記作動ガス生成室内の前記ガス発生剤を着火燃焼させることが可能なガス発生剤点火手段と、
を備え、
前記作動ガス生成室は、前記ガス発生剤点火手段と前記フィルタ室との間に存在し、
前記作動ガス生成室の内部には、前記ガス発生剤が密に充填されており、前記ガス発生剤が充填されていない空間を形成する部材および前記フィルタが存在せず、
前記ハウジングの前記フィルタ室を規定する部分の周壁部には、前記フィルタを通過した作動ガスを外部に放出するための複数の第1ガス放出口が設けられ、
前記ハウジングの前記作動ガス生成室を規定する部分の周壁部には、閉塞部材によって閉塞された複数の第2ガス放出口が設けられており、
前記第2ガス放出口には、前記フィルタが設けられておらず、
前記閉塞部材は、通常作動時よりもハウジング内圧が高い場合に前記第2ガス放出口に接する部分で破断するものであり、
前記閉塞部材の前記第2ガス放出口に接する部分の破断圧が、以下の関係を満たしていることを特徴とするガス発生器。
120℃における作動時のガス発生器の内部最大圧力<前記閉塞部材の前記第2ガス放出口に接する部分の破断圧<前記ハウジングの破断圧
第1筒状部と、前記第1筒状部より径が小さく前記第2ガス放出口に対向する周壁部を有した第2筒状部と、を含んでおり、前記ガス発生剤を内部に密封した有底筒状部材を備え、
前記閉塞部材が、前記第2筒状部に嵌合するリング状部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス発生器。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で車両等に装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張及び展開させることにより、展開されたエアバッグで乗員の体を受け止めるものである。ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時に瞬時にガスを発生させてエアバッグを膨張及び展開させる機器である。
【0003】
ガス発生器には、車両等に対する設置位置や出力等の仕様に基づき、種々の構成のものが存在している。その一つに、「シリンダ型」と呼ばれる構造のガス発生器が存在する。シリンダ型ガス発生器は、その外形が長尺円柱状であり、サイドエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置等に好適に組み込まれる。これらのエアバッグに組み込まれる場合には、運転席及び助手席用エアバッグに組み込まれる場合に比較して、より速く作動することが要求されている。
【0004】
また、ガス発生器は、所定の設置環境温度において、正常に作動することが要求されている。例えば特許文献1には、設置環境温度に応じてハウジングの内部の圧力が変化(上昇)した際に、その圧力変化に応じてハウジングの内部の火薬燃焼速度を低下させて発生ガスの温度を抑えることができるガス発生器が開示されている。このガス発生器では、環境温度が上昇した状態で作動した場合、通常動作時よりガス通過部が拡大し、温度を抑えられたハウジング内部の発生ガスがフィルタを通過してガス噴出孔よりハウジング外部へと噴出され、発生ガスが導入される側のエアバッグのダメージを低減することができるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガス発生器が組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において何らかの理由(火災が発生した場合等)によって、ガス発生器が外部から加熱されることにより、ガス発生剤が燃焼し(以下では、このような状態を異常作動時と呼ぶことがある。)、ハウジング内部の圧力が急激に上昇することになり、上記特許文献1のガス発生器では、ハウジングに設けられたガス噴出孔の総面積自体が変化するわけではないため、ハウジングの厚み(板厚)を十分に厚くしない限り、その圧力変化に対応するには不十分な可能性があり、ハウジングの破断、飛散が生じてしまうことが懸念される。すなわち、上記観点から鑑みた場合においては、上記特許文献1のガス発生器のハウジングの厚みを薄くして軽量化することは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、ハウジングの厚みを従来ほど厚くすることなく、何らかの理由によってハウジングの内部の圧力が急激に上昇した場合においても、ハウジングの破断、飛散を防ぎ、安定的に動作を制御することが可能でありながら、従来よりも軽量化されたシリンダ型ガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明のガス発生器は、内部に包含されたガス発生剤が燃焼することで作動ガスが生成される作動ガス生成室と、前記作動ガス生成室で生成された作動ガスが通過するフィルタが収容されたフィルタ室と、を内部に含んでいる長尺円筒状のハウジングと、点火薬を内包しており、前記ハウジングの軸方向の一端部に前記作動ガス生成室を前記フィルタとともに挟みこむように配置され、前記作動ガス生成室内の前記ガス発生剤を着火燃焼させることが可能なガス発生剤点火手段と、を備え、
前記作動ガス生成室は、前記ガス発生剤点火手段と前記フィルタ室との間に存在し、前記作動ガス生成室の内部には、前記ガス発生剤が密に充填されており、前記ガス発生剤が充填されていない空間を形成する部材および前記フィルタが存在せず、
前記ハウジングの前記フィルタ室を規定する部分の周壁部には、前記フィルタを通過した作動ガスを外部に放出するための複数の第1ガス放出口が設けられ、前記ハウジングの前記作動ガス生成室を規定する部分の周壁部には、閉塞部材によって閉塞された複数の第2ガス放出口が設けられており、
前記第2ガス放出口には、前記フィルタが設けられておらず、前記閉塞部材は、通常作動時よりもハウジング内圧が高い場合に前記第2ガス放出口に接する部分で破断するものであ
り、前記閉塞部材の前記第2ガス放出口に接する部分の破断圧が、以下の関係を満たしていることを特徴とする。
120℃における作動時のガス発生器の内部最大圧力<前記閉塞部材の前記第2ガス放出口に接する部分の破断圧<前記ハウジングの破断圧
【0010】
上記(1)
の構成によれば、ガス発生剤が何らかの理由(火災等)によって燃焼し、ガスが発生してしまった場合であって、通常作動時よりもハウジング内圧が高い状態となった場合において、第1放出口からだけでなく第2放出口からもガスが放出されるので、ハウジングが破裂・破断することを防止することができる。したがって、ハウジングの厚みを従来ほど厚くすることなく、ハウジングの内部の圧力が急激に上昇した場合においても、ハウジングの破断、飛散を防ぎ、安定的に動作を制御することが可能でありながら、従来よりも軽量化されたシリンダ型ガス発生器を提供できる。特に、第2放出口から放出されるガスは前記フィルタ手段を通過することなくガス発生器外部に放出されるため、ガス放出に対する抵抗が少なく、前記フィルタ手段を通過する場合に比較して、より速くガスを放出することができる。
【0012】
上記(
1)の構成によれば、通常作動時で想定される最高の温度(120℃)では、第2ガス放出口からガスが放出されることはなく、また、異常作動時にガス発生器の内部圧力が異常に高まった場合でも、ハウジングが破断する前に、第2ガス放出口からガスが放出されるので、より安定的にガス発生器の動作を制御することができる。
【0013】
(
2) 上記(1)
のガス発生器においては、複数の前記第2放出口は、前記ハウジング周方向に、等間隔で少なくとも一列設けられていることが好ましい。
【0014】
2つ以上の第2放出口がハウジング周方向に等間隔で少なくとも一列設けられている場合、各第2放出口から放出するガスの噴出による推力はハウジング中心に向かうため、相殺される。したがって、上記(
2)の構成によれば、異常作動時にガス発生器が飛翔することを防止できる。なお、ハウジング周方向に偶数個の第2放出口を等間隔で設けることは、パンチングなどでの穴あけ作業時において対向する一対の第2放出口を一度で形成することが可能なので、製造のしやすさ、引いては製造コストの点で好ましい。
【0015】
(
3) 上記(1)
又は(
2)のガス発生器においては、前記閉塞部材が、前記作動ガス生成室内において少なくとも第2放出口を閉塞するように形成された筒状部を有した有底筒状部材の一部であり、前記有底筒状部材が、前記ガス発生剤を内部に密封したものであることが好ましい。
【0016】
上記(
3)の構成によれば、有底筒状部材を、閉塞部材としての閉塞機能と、ガス発生剤の収容容器としての収容機能とを併せ持つ部材とすることができるので、部品点数が少なく、第2放出口の内壁にシール部材を貼るよりも製造(組み付け)が容易なガス発生器とすることができる。
【0017】
(
4) 別の観点として、上記(1)
又は(
2)のガス発生器においては、第1筒状部と、前記第1筒状部より径が小さく前記第2放出口に対向する周壁部を有した第2筒状部と、を含んでおり、前記ガス発生剤を内部に密封した有底筒状部材を備え、前記閉塞部材が、前記第2筒状部に嵌合するリング状部材であってもよい。
【0018】
上記(
4)の構成によれば、閉塞部材の厚み、材料又は強度を適宜変更しやすいので、異常作動時の破断条件を容易に制御することができる。
【0019】
(
5) 上記(1)〜(
4)のガス発生器においては、前記第2放出口が、前記作動ガス生成室の中心よりも前記ガス発生剤点火手段側に形成されていることが好ましい。
【0020】
上記(
5)の構成によれば、第1放出口から比較的離れた位置に第2放出口を設けることで、第1放出口と近い位置に第2放出口を設ける場合に比べて、異常作動によるガス発生剤の燃焼がホルダ側から開始された場合でも、異常作動時から短時間でガスを放出することが可能となる。したがって、より安全なガス発生器とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す第1実施形態は、サイドエアバッグ装置等に好適に組み込まれるいわゆるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。
【0023】
図1は本発明の第1実施形態におけるシリンダ型ガス発生器の概略図である。以下においては、これら
図1を参照して、第1実施形態におけるシリンダ型ガス発生器100の外観構造及び内部構造について説明する。
【0024】
図1において、本発明の第1実施形態におけるシリンダ型ガス発生器100は、長尺略円柱状の外形を有しており、ハウジング10とホルダ20とを含んでいる。ハウジング10は、軸方向の少なくとも一端に開口を有する長尺の円筒状部材からなり、筒状部11及び閉塞部12を備えている。ホルダ20は、ハウジング10の開口端を閉塞するようにハウジング10に固定されている。また、ホルダ20は、ハウジング10の軸方向と同方向に延びる貫通部21を有する筒状の部材からなり、その外周面の所定位置に後述するかしめ固定のための環状溝部22と、ハウジング10の内部の空間に面する側の端部にかしめ部23とを有している。上記かしめ固定のための環状溝部22は、ホルダ20の外周面に周方向に向かって延びるように環状に形成されている。上記かしめ部23は、後述する点火器30を固定するための部位である。
【0025】
ハウジング10及びホルダ20は、かしめ固定によってそれぞれが連結・固定されている。具体的には、ハウジング10の開口端にホルダ20の一部が内挿された状態で、ホルダ20の外周面に設けられた環状溝部22に対応する部分のハウジング10の筒状部11を径方向内側に縮径させて(かしめて)当該環状溝部22に係合させることにより、ハウジング10に対するホルダ20のかしめ固定が行なわれている。これらかしめ固定は、いずれもハウジング10の筒状部11を径方向内側に向かって均等に縮径させる八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。
【0026】
また、ハウジング10及びホルダ20は、いずれもステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで有底円筒状に成形された金属製のプレス成形品、またはSTKMに代表される電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理して有底円筒状に成形された金属製の成形品にて構成されていてもよい。特に、ハウジング10を圧延鋼板のプレス成形品又は電縫管の成形品に構成した場合には、より安価にかつ容易にハウジングを形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。
【0027】
また、
図1に示すように、シリンダ型ガス発生器100は、ハウジング10の内部の空間に、作動ガス生成室13とフィルタ室14とを備えている。作動ガス生成室13は、ハウジング10の軸方向の略中央部に位置しており、内部に後述する点火器30、筒状部材(閉塞部材)33、が収容されている。フィルタ室14は、ハウジング10の閉塞部12側に位置しており、内部に後述するフィルタ37が収容されている。
【0028】
ハウジング10のホルダ20が取付けられた反対側の端部近傍(すなわち、フィルタ室14を規定する部分)の筒状部11には、複数の第1ガス放出口15が設けられている。この第1ガス放出口15は、通常作動時に、シリンダ型ガス発生器100の内部において生成されたガスを外部に放出するための孔であり、ハウジング10の周方向及び軸方向に沿って複数個設けられている。
【0029】
また、作動ガス生成室13を規定する部分のフィルタ室14寄りのハウジング10の筒状部11には、第2ガス放出口16が設けられている。この第2ガス放出口16は、ハウジング10の周方向に等間隔をあけて複数個設けられ、ハウジング10の内側から筒状部材33の部位33cにより塞がれている。なお、図示しないが、第2ガス放出口16は、2つ以上の第2ガス放出口がハウジング10周方向に等間隔で少なくとも一列設けられている。すなわち、偶数個でも奇数個でも、ハウジング10周方向に等間隔に設けられていればよい。そして、何らかの理由によってハウジング10の内部の圧力が急激に上昇した場合(異常作動時)にのみ第2ガス放出口16に対向する部位33cが破断し、第2ガス放出口16が開口するようになっている。これにより、ハウジング10の内部の発生ガスを直ちに第2ガス放出口16よりハウジング10の外部へと放出させることができ、ハウジング10の内部の圧力を低下させることが可能となる。なお、第2ガス放出口16の開口条件は、第2ガス放出口16の孔径及び個数を変化させることによって適宜設定可能であるし、筒状部材33の厚み、材料又は強度を変更することでも、適宜設定可能である。例えば、本実施形態においては、筒状部材33のフィルタ37側の端部33aの方が、部位33cよりも破断しやすいようにするために、フィルタ37の中央の穴部の径を第2ガス放出口16の孔径よりも大きく形成している。すなわち、第2ガス放出口16の開口条件(破断圧)をコントロールする方法としては、第2ガス放出口16の孔径が小さいと破断圧は高くなり(第2ガス放出口16の孔径が大きいと破断圧は低くなり)、筒状部材33の厚みを厚くすると破断圧は高くなり(筒状部材33の厚みを薄くすると破断圧は低くなり)、筒状部材33の材料における引っ張り強度が高くなると破断圧は高くなる(筒状部材33の引っ張り強度が低くなると破断圧は低くなる)。特に、第2ガス放出口16の孔径について詳述すると、第2ガス放出口16の孔形が円形でない場合においても、第2ガス放出口16の孔の面積が大きいと破断圧は低くなり(第2ガス放出口16の孔の面積が小さいと破断圧は高くなり)、第2ガス放出口16の孔の周囲の周長が長いと破断圧は高くなる(第2ガス放出口16の孔の周囲の周長が短いと破断圧は低くなる)。
【0030】
点火器30は、ハウジング10のホルダ20側に位置する点火手段であり、後述する粒状のガス発生剤36を燃焼させるための火炎を発生させるためのもので、点火部31を有している。また、点火器30は、ホルダ20の貫通部21に内挿されてかしめ固定されている。より詳細には、ホルダ20が、ハウジング10の内部の空間に面する側の端部にかしめ部23を有しており、点火器30が貫通部21に内挿されてホルダ20に当て留めされた状態で当該かしめ部23をかしめることにより、点火器30はホルダ20に挟持される。これにより、点火器30はホルダ20に固定される。また、別の好適な形態としては、点火器30とホルダ20とを熱可塑性樹脂などで射出成型して一体化する公知の方法も挙げられる。
【0031】
また、点火器30は、一対の端子ピン32を挿通・保持する図示されない基枠と、基枠上に取付けられたスクイブカップとを備えており、スクイブカップ内に挿入された基枠の端子ピン32の先端を連結するように図示されない抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するようにスクイブカップ内に図示されない点火薬が充填され、また、必要に応じて伝火薬も充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用され、伝火薬としては一般に、B/KNO
3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、又は、B/5−アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物などが用いられる。スクイブカップは、一般に金属製又はプラスチック製である。
【0032】
なお、衝突を検知した際には、端子ピン32を介して点火器30内の抵抗体に所定量の電流が流れる。該抵抗体に所定量の電流が流れることにより、該抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納している点火器30内のスクイブカップを破裂させる。上記抵抗体に電流が流れてから点火器30が作動するまでの時間は、上記抵抗体にニクロム線を利用した場合には2ミリ秒以下である。
【0033】
筒状部材33は、カップ状部材(図示せず)と蓋部(図示せず)とからなる有底筒状の形状を有しており、ガス発生剤36が収容されている。また、筒状部材33の外周面はハウジング10の内周面に当接し、第2ガス放出口16を閉塞している。この筒状部材33は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成することができる。なお、筒状部材33は、ガス発生剤36の燃焼により発生したガスの圧力が所定圧力以上になった際、少なくとも部位33cにおいて容易に破断するように、素材としては、アルミニウム薄膜などの材料を強度又は硬度、厚みなどを考慮して用いている。また、筒状部材33の部位33cにおける破断圧が、ハウジング10の破断圧より小さくなるように、筒状部材33の材料の強度又は高度、厚みと、第2ガス放出口16の孔径との関係を適切に調整し、ハウジング10の厚みを安全な範囲で従来よりも薄くしている。
【0034】
ガス発生剤36は、点火器30によって点火された点火薬が燃焼することによって生じたガス、あるいは熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させるものである。ガス発生剤36は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成型体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩、過塩素酸アンモニウム又は過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、又は燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、又は、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0035】
ガス発生剤36の成型体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状など様々な形状のものがある。また、成型体内部に孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状又は多孔筒形状等)の成型体も利用される。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器が組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤36の形状の他にも線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズ又は/及び充填量を適宜選択することが好ましい。
【0036】
なお、ガス発生剤36としては、燃料としてグアニジン系化合物を含み、酸化剤として過塩素酸塩を含むものを利用することが特に好適である。このグアニジン系化合物と過塩素酸塩とを含むガス発生剤36を利用することとすれば、アジ化化合物のような毒性の問題を生じることもない。特にガス発生剤36に過塩素酸塩を含有させ、ガス発生剤36の燃焼を促進させることで、衝突を検出してから短時間でエアバッグを膨らませ、ガスを出し切ることを可能となることから好ましい。特に、ガス発生剤36において、過塩素酸塩を3〜15重量パーセント含有させることで、上記効果が高まることからより好ましい。
【0037】
上述したように、第1実施形態におけるシリンダ型ガス発生器100においては、筒状部材33にガス発生剤36を封入した構成であるため、予めガス発生剤36を筒状部材33に封入しておくことにより、シリンダ型ガス発生器100の組立作業が容易化するのみならず、部品点数の削減と構成の簡素化とが可能になる。
【0038】
フィルタ室14には、上述したようにフィルタ37が収容され、ハウジング10の筒状部11に設けられた第1ガス放出口15を介して外部と通じている。フィルタ37は、ハウジング10の軸方向と同方向に延びる中空部を有する円筒状の部材からなり、その軸方向の作動ガス生成室13側の端面が筒状部材33に当接しており、他方の端面がハウジング10の閉塞部12に当接している。また、フィルタ37の外周面は、ハウジング10の筒状部11の内周面に当接している。このような円筒状の部材からなるフィルタ37を利用すれば、シリンダ型ガス発生器100の作動時においてフィルタ室14を流動するガスの流動抵抗が低く抑えられ、効率的なガスの流動が実現可能となる。また、作動ガス生成室13にて発生したガスがこのフィルタ37中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ等を除去する除去手段としても機能する。
【0039】
フィルタ37は、たとえばステンレス鋼又は鉄鋼等の金属からなる線材又は網材を巻き回したもの、プレス加工することによって押し固めたもの、あるいは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。具体的には、メリヤス編みの金網又は平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。また、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタル、又は、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことで該バリを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさ又は形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさ又は形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)又はステンレス鋼板が好適に利用してもよいし、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル又はこれらの合金等の板を利用することもできる。このように金属線材又は網材を円筒状に巻き回して焼結したり押し固めたりすることで形成されたフィルタは、その内部に空隙が含まれることになり、上述したガスの冷却を可能にするとともに、ガス中に含まれるスラグ等の除去も可能にすることになる。
【0040】
なお、シリンダ型ガス発生器100のホルダ20が配置された側の端部には、雌型コネクタが取付けられる。この雌型コネクタは、シリンダ型ガス発生器100とは別途設けられる衝突検知手段からの信号を伝達するハーネスの雄型コネクタが接続される部位である。雌型コネクタには、必要に応じてショーティングクリップが取付けられる。このショーティングクリップは、シリンダ型ガス発生器100の搬送時等において静電放電等によってシリンダ型ガス発生器100が誤動作することを防止するために取付けられるものであり、エアバッグ装置への組付け段階においてハーネスの雄型コネクタが雌型コネクタに挿し込まれることによってその端子ピン32への接触が解除されるものである。
【0041】
次に、シリンダ型ガス発生器100の作動時における動作について説明する。第1実施形態におけるシリンダ型ガス発生器100が組み込まれたエアバッグ装置が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器30が作動する。点火器30が作動すると、点火薬の燃焼によって点火部31内の圧力が上昇し、これによって点火部31が破裂し、火炎が点火部31の外部へと流出する。この点火薬の燃焼により、上述の火炎が筒状部材33へと至る。筒状部材33へと達した火炎は、筒状部材33を溶融させて、筒状部材33のホルダ20側の端部33bを開口または分断し、これによって火炎がガス発生剤36へと至る。
【0042】
筒状部材33内に流れ込んだ火炎により、ガス発生剤36は着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。このガス発生剤36の燃焼により、作動ガス生成室13内の圧力が上昇し、筒状部材33のフィルタ37側の端部33aは破壊される。このとき、フィルタ37の中央の穴部の径は、第2ガス放出口16の孔径よりも大きいので、筒状部材33のフィルタ37側の端部33aが破壊されることになるが、部位33cが破断することはない。そして、このようにして発生したガスは、フィルタ室14に流動し、フィルタ37を経由して所定の温度にまで冷却され、第1ガス放出口15からシリンダ型ガス発生器100の外部へと放出される。第1ガス放出口15から放出されたガスは、エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張・展開させる。
【0043】
また、何らかの理由(例えば、外部の火災)によってハウジング10の内部の圧力が通常作動時よりも急激に上昇した場合(異常作動時)は、部位33cが破断し第2ガス放出口16が開口することにより、ハウジング10の内部の発生ガスは、筒状部材33のフィルタ37側の端部33aが開口してフィルタ37を経由して第1ガス放出口15から放出されることに加えて、第2ガス放出口16からも外部へと放出される。よって、通常動作時よりもハウジングに設けられたガス放出口の総面積が増加することにより、ガス放出量が増加して、直ちにハウジング10の内部の圧力を低下させ、ハウジング10の破断に至ることを回避することができる。また、複数の第2ガス放出口16がハウジング10の周方向に等間隔に設けられていることにより、第2ガス放出口16から多量のガスが放出した場合においても推力を相殺できるので、ガス発生器100の飛翔を防ぐことができる。また、ガス発生器100においては、120℃における作動時のガス発生器の内部最大圧力 < 筒状部材(閉塞部材)33の破断圧 < ハウジング10の破断圧、の関係を満たすように各部を形成している。具体的には、例えば、本発明のガス発生器における120℃でのガス発生器内部の内部最大圧力が30MPaであった場合、筒状部材33の部位33Cが破断する圧力が50MPa、ハウジング10の破断圧が100MPaとなるように、各部を形成することができる。
【0044】
以上において説明したように、第1実施形態におけるシリンダ型ガス発生器100では、何らかの理由によってハウジング10の内部の圧力が急激に上昇した場合においても、ハウジング10の破断、飛散を防ぎ、従来よりも効率良くハウジング10の内部の圧力を低下させることができるので、安定的にシリンダ型ガス発生器100の動作を制御することが可能になる。
【0045】
また、筒状部材33が、作動ガス生成室13内において第2ガス放出口16を閉塞するとともに、ガス発生剤36を内部に密封したものであるので、部品点数が少なく、第2ガス放出口16の内壁にシール部材を貼るよりも製造しやすいシリンダ型ガス発生器100とすることができる。
【0046】
なお、第1実施形態においては、第2ガス放出口16が作動ガス生成室13を規定する部分のフィルタ室14寄りのハウジング10の筒状部11に設けられている場合を例示して説明を行なったが、第2ガス放出口16が設けられる位置はこれに限定されず、たとえば
図2に示すように、第2ガス放出口116が作動ガス生成室113を規定する部分の点火器130寄りのハウジング110の筒状部111に設けられていてもよい。すなわち、第2ガス放出口116がハウジング110の周方向に等間隔に形成され、何らかの理由によってハウジング110の内部の圧力が急激に上昇した場合にのみ部位33cが破裂し、第2ガス放出口116が開口するように構成される場合には、上述した第1実施形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。特に、異常作動時に、作動ガス生成室113内の点火器130寄りのガス発生剤136が燃焼し始めた場合において、迅速に、第2ガス放出口116を介して、発生したガスを外部に放出することができるので有効である。なお、第2ガス放出口116が作動ガス生成室113を規定する部分の点火器130寄りのハウジング110の筒状部111に設けられている以外、下二桁に同じ番号を使用した部位に関しては、上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0047】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態におけるシリンダ型ガス発生器の概略図である。以下、
図3を参照して、第2実施形態におけるシリンダ型ガス発生器300の構成について説明する。なお、特に示さないかぎり、下二桁に同じ番号を使用した部位に関しては、上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
図3に示すように、本発明の実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器300は、上述した本発明の第1実施形態におけるシリンダ型ガス発生器100と比較した場合に、筒状部材の形状が相違している。具体的には、本実施形態におけるシリンダ型ガス発生器300にあっては、ハウジング210の筒状部211に設けられた第2ガス放出口216に周壁部が面する筒状部材233の縮径部233dの径が、点火器230に面する筒状部材233の本体部233eの径よりも小さくなるように形成されている。また、リング状部材245は、外周部が第2ガス放出口216の内側に当接して第2ガス放出口16を塞ぐように、且つ、内周部が筒状部材233の縮径部233dの外周面に当接するように設けられている。
【0049】
ここで、リング状部材245の第2ガス放出口216に当接する部位245aは、何らかの理由によってハウジング210の内部の圧力が急激に上昇した場合に、第2ガス放出口216に対向する縮径部233dの部位233cの破断に続いて破断し、第2ガス放出口216が開口するようになっている。これにより、ハウジング210の内部の発生ガスを第2ガス放出口216よりハウジング210の外部へと放出させることができ、異常作動時において、ハウジング210の内部の圧力を低下させることが可能となる。なお、第2ガス放出口216の開口条件は、第2ガス放出口216の孔径及び個数、第2ガス放出口216に対応する縮径部233dの厚み、リング状部材245の厚みなどを変化させることによって適宜設定可能である。特に、第2ガス放出口216の開口条件の設定においては、リング状部材245の厚みによって変更することが容易である。
【0050】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器300とした場合にも、上述した第1実施形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0051】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。例えば、第2実施形態も第1実施形態の変形例と同様に、第2ガス放出口を作動ガス生成室のホルダ側に配設した上で、リング状部材が嵌合された第2実施形態の筒状部材を180°回転して、縮径部側がホルダ側となるようにハウジング内に配設し、第2ガス放出口とリング状部材とが当接するようにすれば、第1実施形態の変形例と同様の効果を奏することができる。
【0052】
また、第1実施形態及び第1実施形態の変形例における筒状部材の代わりに、シール部材を第2ガス放出口の内側から貼付したガス発生器としてもよい。