(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記認知機能障害が、加齢性認知機能障害、軽度認知機能障害、健忘性軽度認知機能障害、認知症、アルツハイマー病、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症、外傷後ストレス障害、がん療法、双極性障害、精神遅滞、パーキンソン病、自閉症、強迫行動、または物質嗜癖のうちの1つまたは複数に関連している、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用のための持続放出性医薬組成物。
アルツハイマー病に起因する軽度認知機能障害または健忘性軽度認知機能障害の治療、あるいはアルツハイマー病に起因する軽度認知機能障害または健忘性軽度認知機能障害の進行の減速を必要とするヒト被験体においてアルツハイマー病に起因する軽度認知機能障害または健忘性軽度認知機能障害を治療することにおける使用のための、あるいはアルツハイマー病に起因する軽度認知機能障害または健忘性軽度認知機能障害の進行を減速することにおける使用のための、請求項1から16のいずれか一項に記載の持続放出性医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、レベチラセタムの新規持続放出性医薬組成物を提供する。また、本発明は、中枢神経系(CNS)障害に関連する認知機能障害を治療するためまたは認知機能を向上するために、それを必要とするまたはその障害のリスクを有する被験体においてこれらのレベチラセタムの持続放出性医薬組成物を使用する方法を提供する。また、本発明は、中枢神経系(CNS)障害に関連する認知機能障害を治療するためまたは認知機能を向上するための医薬の製造において、それを必要とするまたはその障害のリスクを有する被験体においてこれらのレベチラセタムの持続放出性医薬組成物を使用することを提供する。
【0034】
本明細書に記載される本発明が完全に理解できるように、発明を実施するための形態を以下に示す。
【0035】
本明細書において別途定義されない限り、本出願において使用される科学用語および技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。一般的に、本明細書において記載される、細胞および組織培養、分子生物学、細胞生物学、がん生物学、神経生物学、神経化学、ウイルス学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質および核酸化学、化学、ならびに薬理学に関連して使用される専門語およびこれらの技法は、当技術分野において周知のものであり、一般に使用されている。本明細書において記載される本発明の各実施形態は、単独で、あるいは本発明の1つまたは複数の他の実施形態と組み合わせて採用されてもよい。
【0036】
本発明の方法および技法は一般的に、別途指示の無い限り、当技術分野において周知であり、かつ様々な一般的参考文献、ならびに本明細書全体を通じて引用および考察される、より具体的な参考文献に記載されるような従来型の方法に従って実施される。例えば、「Principles of Neural Science」、McGraw−Hill Medical、New York、N.Y.(2000年)、Motulsky、「Intuitive Biostatistics」、Oxford University Press, Inc.(1995年)、Lodishら、「Molecular Cell Biology、第4版」、W. H. Freeman & Co.、New York(2000年)、Griffithsら、「Introduction to Genetic Analysis、第7版」、W. H. Freeman & Co.、N.Y.(1999年)、Gilbertら、「Developmental Biology、第6版」、Sinauer Associates, Inc.、Sunderland、MA(2000年)を参照されたい。
【0037】
本明細書において使用される化学用語は、「The McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms」、Parker S.編、McGraw−Hill、San Francisco、C.A.(1985年)によって例示されるような、当技術分野における従来型の使用法に従って使用されている。
【0038】
上記のすべて、ならびに本出願において参照される任意の他の刊行物、特許、および特許出願公開は、具体的に、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書が、その具体的な定義も含めて支配することになる。
【0039】
本明細書全体を通じて、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変化形態は、記述される整数(もしくは構成要素)または整数(もしくは構成要素)の群が包含されることを暗示するように理解されるが、任意の他の整数(もしくは構成要素)または整数(もしくは構成要素)の群の排除は暗示しない。
【0040】
別途文脈が明確に規定しない限り、単数形「1つ(種)の(a)」、「1つ(種)の(an)」、および「その(the)」は複数形を含む。
【0041】
「含む(including)」という用語は、「含むがそれに限定されない」ことを意味するように使用される。「含む」および「含むがそれに限定されない」は、交換可能に使用される。
【0042】
本発明をさらに定義するために、以下の用語および定義が本明細書に提供される。
【0043】
定義
「持続放出」、「持続放出形態」、または「持続放出性の剤形」という用語は、製薬科学の技術分野においては、ある薬物の治療上の血中レベルまたは血漿中レベルまたは組織中レベルを長期間維持する系として広く認識されている。持続放出性の剤形は、潜在的には、即時放出性の薬物のものと比較して、慢性疾患または状態の治療におけるより大きな有効性、より大きな簡便性を提供し、副作用を低減し、簡易化された投与スケジュールに起因して、より高いレベルの患者の服薬遵守または治療性能を提供する。持続放出性の医薬製品は、徐々に、かつ24時間などの長期間にわたって予想通りに活性成分を放出するように製剤化されている。
【0044】
「持続放出」、「持続放出形態」、または「持続放出性の剤形」という用語は、長期間、例えば24時間にわたる(その全体を通じた、またはその間の)ある剤形から環境中へのレベチラセタムの制御放出を指すように、本明細書において使用される。持続放出性の剤形は、長期間にわたって実質的に一定の速度で薬物を放出するか、または実質的に一定量の薬物が、長期間にわたって増加的に放出される。本明細書において使用される「持続放出」という用語は、「制御放出」、「延長放出(prolonged release)」、「持効性放出(sustained release)」、「遅延放出」、または「調節放出」という用語が製薬科学においては使用されているため、これらの用語を含む。
【0045】
「活性成分」、「活性医薬成分」、または「API」という用語は、本明細書において使用される場合、レベチラセタムなどの治療効果を有する物質として定義される。
【0046】
「患者」、「被験体」、または「個体」は交換可能に使用され、ヒトまたは非ヒト動物を指す。これらの用語には、ヒト、霊長類、家畜動物(ウシ、ブタなどを含む)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコなど)、および齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物が含まれる。
【0047】
「認知機能」または「認知状態」は、それぞれ、限定されるものではないが、注意、情報取得、情報処理、作業記憶、短期記憶、長期記憶、前向性記憶、逆行性記憶、記憶想起、弁別学習、意思決定、抑制応答制御、注意セットシフト、遅延強化学習、逆転学習、自発的行動の時間積分(temporal integration of voluntary behavior)、ならびに周囲およびセルフケアに関心を示すこと、処理速度、論理的思考および問題解決、ならびに社会的認知を含む、学習および/または記憶に関与する、あらゆるより高次の知的な脳プロセスまたは脳状態を指す。
【0048】
ヒトにおいて、認知機能は、例えば、限定されるものではないが、構造MRIを使用して嗅内皮質の厚さの変化を測定して(例えば、神経細胞傷害を測定するため)、神経細胞傷害を測定すること;臨床全般印象変化尺度(CIBIC−plus尺度);ミニメンタルステート検査(MMSE);神経精神症状評価(NPI);臨床的認知症尺度(CDR)(global、記憶ボックス);ケンブリッジ自動神経心理学的検査バッテリー(Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery)(CANTAB);サンド老年者臨床評価(Sandoz Clinical Assessment−Geriatric)(SCAG)、ブシュケ選択式回想テスト(Buschke Selective Reminding Test)(BuschkeおよびFuld、1974年);言語性対連合サブテスト(Verbal Paired Associates subtest);論理的記憶サブテスト(Logical Memory subtest);ウェクスラー記憶検査改訂版(WMS−R)の視覚的再現サブテスト(Visual Reproduction subtest)(Wechsler、1997年);ベントン視覚保持テスト(Benton Visual Retention Test);または明示的三肢強制選択法(explicit 3−alternative forced choice task);またはMATRICSコンセンサス神経心理学的検査バッテリー(MATRICS consensus neuropsychological test battery);またはADAS−Cog 13項目尺度;ウェクスラー論理記憶IおよびII;BSP−O;神経心理学的検査(トレイルAおよびB、BNT、SR、CFT、R−O、対連合)、他のMRI基準、DTI、休止時fMRI、ならびにGDSによって測定することができる。Folsteinら、J Psychiatric Res 12巻:189〜98頁、(1975年)、Robbinsら、Dementia 5巻:266〜81頁、(1994年)、Rey、L’examen clinique en psychologie、(1964年)、Klugerら、J Geriatr Psychiatry Neurol 12巻:168〜79頁、(1999年)、Marquisら、2002年、およびMasurら、1994年を参照されたい。Buchanan, R.W.、Keefe, R.S.E.、Umbricht, D.、Green, M.F.、Laughren, T.、およびMarder, S.R.(2011年)、The FDA−NIMH−MATRICS guidelines for clinical trial design of cognitive−enhancing drugs: what do we know 5 years later? Schizophr. Bull. 37巻、1209〜1217頁も参照されたい。
【0049】
動物モデル系においては、認知機能は、モリス水迷路(MWM)、バーンズ円形迷路、高架式放射状迷路、T型迷路、または動物が空間的情報を使用する任意の他の迷路を使用することを含む、当技術分野において公知である様々な従来型の方式で測定することができる。認知機能は、逆転学習、次元外セットシフト(extradimensional set shifting)、条件性弁別学習、および報酬期待の評価によって評価することができる。また、当技術分野において公知の他の試験も、新規物体認識課題および匂い認識課題などの認知機能を評価するために使用することができる。
【0050】
認知機能は、イメージング技法、例えば陽電子放出断層撮影法(PET)、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、または脳機能の測定を可能にする任意の他のイメージング技法などを使用して測定することもできる。動物においては、認知機能は、電気生理学的技法によって測定することもできる。
【0051】
認知機能の「促進」とは、損なわれた認知機能が、損なわれていない正常な被験体の機能により酷似するように、損なわれた認知機能に対して影響を及ぼすことを指す。認知機能は、任意の検出可能な程度にまで促進され得るが、ヒトにおいては、損なわれた被験体が、損なわれていない正常な被験体または損なわれていない正常な同齢の被験体に可能な限り近い熟達レベルで、通常の生活の毎日の活動を実行できるように十分に促進されることが好ましい。
【0052】
一部の場合において、加齢性の認知に冒された被験体における認知機能の「促進」とは、損なわれた認知機能が、損なわれていない正常な同齢の被験体の機能または若年成体被験体の機能により酷似するように、損なわれた認知機能に対して影響を及ぼすことを指す。その被験体の認知機能は、任意の検出可能な程度にまで促進され得るが、ヒトにおいては、損なわれた被験体が、損なわれていない正常な被験体または若年成体被験体または損なわれていない正常な同齢の被験体に可能な限り近い熟達レベルで、通常の生活の毎日の活動を実行できるように十分に促進されることが好ましい。
【0053】
認知機能の「保存」とは、正常な認知機能または損なわれた認知機能が、低下しないように、または最初の提示もしくは診断の際の被験体において観察された認知機能より低下しないように、またはそのような低下を遅延するように、正常な認知機能または損なわれた認知機能に対して影響を及ぼすことを指す。
【0054】
認知機能の「向上」には、被験体における認知機能の促進および/または認知機能の保存が含まれる。
【0055】
「認知機能障害」とは、損なわれていない正常な被験体において期待される認知機能ほど頑健ではない、被験体における認知機能を指す。一部の場合において、認知機能は、損なわれていない正常な被験体において期待される認知機能と比較して、約5%、約10%、約30%またはそれを超えて低減している。一部の場合において、加齢性認知機能障害に冒された被験体における「認知機能障害」とは、損なわれていない正常な同齢の被験体において期待される認知機能または若年成体被験体(すなわち、認知試験において所与の年齢にとっての平均スコアを有する被験体)の機能ほど頑健ではない、被験体における認知機能を指す。
【0056】
状態または患者の「治療」とは、臨床結果を含む、有益なまたは所望の結果を得るためのステップを採用することを指す。有益なまたは所望の臨床結果としては、限定されるものではないが、認知機能の向上、認知機能障害の進行の遅延もしくは減速、認知機能の低下速度の低減、疾患もしくは障害の進行の予防もしくは減速、またはCNS障害に関連する認知機能障害、例えば加齢性認知機能障害、軽度認知機能障害(MCI)、健忘性MCI、認知症、アルツハイマー病(AD)、前駆期AD、PTSD、統合失調症もしくは双極性障害(特に躁病)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、もしくはがん療法関連認知機能障害などと関連する1種もしくは複数の症状の緩和、好転(amelioration)、またはその進行の減速が挙げられる。加齢性認知機能障害の治療は、加齢性認知機能障害(MCI、ARCDおよびAAMIを含むがこれらに限定されない)から認知症(例えば、AD)への変換の減速をさらに含む。
【0057】
「認知機能障害を治療する」とは、認知機能障害を有する被験体の1つまたは複数の認知試験におけるパフォーマンスが、任意の検出可能な程度にまで向上されるか、またはさらなる低下が予防されるように、その被験体における認知機能を向上するためのステップを採用することを指す。その被験体の認知機能が、認知機能障害の治療後に、損なわれていない正常な被験体の機能により酷似することが好ましい。ヒトにおける認知機能障害の治療は、任意の検出可能な程度にまで認知機能を向上し得るが、損なわれた被験体が、損なわれていない正常な被験体と同じ熟達レベルで通常の生活の毎日の活動を実行できるように十分に向上されることが好ましい。一部の場合において、「認知機能障害を治療する」とは、認知機能障害を有する被験体の1つまたは複数の認知試験におけるパフォーマンスが、任意の検出可能な程度にまで向上されるか、またはさらなる低下が予防されるように、その被験体における認知機能を向上するためのステップを採用することを指す。その被験体の認知機能が、認知機能障害の治療後に、損なわれていない正常な被験体の機能により酷似することが好ましい。一部の場合において、加齢性認知機能障害に冒された被験体における「認知機能障害を治療する」とは、その被験体の認知機能が、認知機能障害の治療後に、損なわれていない正常な同齢の被験体の機能または若年成体被験体の機能により酷似するように、その被験体における認知機能を向上するためのステップを採用することを指す。一部の場合において、被験体における「認知機能障害を治療する」とは、認知機能障害を有する被験体における認知機能障害の進行を遅延または減速するためのステップを採用することを指す。一部の場合において、被験体における「認知機能障害を治療する」とは、認知機能障害を有する被験体における認知機能の低下速度を低減するためのステップを採用することを指す。
【0058】
「薬剤」という用語は、化合物(有機もしくは無機化合物、化合物の混合物など)、生体高分子(その部分を含む、核酸、抗体、ならびにヒト化、キメラおよびヒト抗体、ならびにモノクローナル抗体、タンパク質もしくはその一部、例えばペプチド、脂質、炭水化物)、または細菌、植物、真菌、もしくは動物(特に哺乳動物)細胞もしくは組織などの生体物質から作製された抽出物を意味するよう、本明細書において使用される。薬剤には、例えば、構造に関して公知である薬剤および構造に関して公知ではないものも含まれる。
【0059】
本発明の組成物の説明
本発明は、レベチラセタムの持続放出性組成物を提供する。本発明の組成物は、中枢神経系(CNS)障害に関連する認知機能障害を患っている患者における認知を向上するために、それを必要とするまたはその障害のリスクを有する被験体において使用することができる。本発明の組成物は、認知を向上するために、1日1回(すなわち、24時間毎に1回)投与される。
【0060】
一態様において、本発明は、a)220mgのレベチラセタムと、b)280mgから350mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)と、c)1.2mgから1.4mgのコロイド状二酸化ケイ素と、d)92.8mg〜119.2mgの微結晶ケイ化セルロースと、e)6.0mgから6.7mgのステアリン酸マグネシウムとを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K15M CRである。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K100M Premium CRである。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースは、ProSolv(商標)HD90である。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、HyQual(登録商標)である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。
【0061】
別の態様において、本発明は、a)220mgのレベチラセタムと、b)280mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)と、c)1.2mgのコロイド状二酸化ケイ素と、d)92.8mgの微結晶ケイ化セルロースと、e)6.0mgのステアリン酸マグネシウムとを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K15M CRである。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K100M Premium CRである。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースは、ProSolv(商標)HD90である。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、HyQual(登録商標)である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。
【0062】
別の態様において、本発明は、a)220mgのレベチラセタムと、b)347.5mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)と、c)1.4mgのコロイド状二酸化ケイ素と、d)119.2mgの微結晶ケイ化セルロースと、e)6.7mgのステアリン酸マグネシウムとを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K15M CRである。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K100M Premium CRである。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースは、ProSolv(商標)HD90である。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、HyQual(登録商標)である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。
【0063】
別の態様において、本発明は、a)220mgのレベチラセタムと、b)280mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)Methocel(商標)K15M CRと、c)1.2mgのコロイド状二酸化ケイ素と、d)92.8mgの微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)HD90と、e)6.0mgのステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual(登録商標))とを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。
【0064】
別の態様において、本発明は、a)220mgのレベチラセタムと、b)347.5mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)Methocel(商標)K15M CRと、c)1.4mgのコロイド状二酸化ケイ素と、d)119.2mgの微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)HD90と、e)6.7mgのステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual(登録商標))とを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。
【0065】
別の態様において、本発明は、a)190mgのレベチラセタムと、b)300mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)と、c)1.2mgのコロイド状二酸化ケイ素と、d)102.8mgの微結晶ケイ化セルロースと、e)6mgのステアリン酸マグネシウムとを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K15M CRである。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K100M Premium CRである。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースは、ProSolv(商標)HD90である。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、HyQual(登録商標)である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。
【0066】
別の態様において、本発明は、a)190mgのレベチラセタムと、b)300mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)と、c)1.2mgのコロイド状二酸化ケイ素と、d)102.8mgの無水リン酸二カルシウムと、e)6mgのステアリン酸マグネシウムとを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K15M CRである。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K100M Premium CRである。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、HyQual(登録商標)である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。
【0067】
別の態様において、本発明は、a)190mgのレベチラセタムと、b)300mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)Methocel(商標)K15M CRと、c)1.2mgのコロイド状二酸化ケイ素と、d)102.8mgの微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)HD90と、e)6mgのステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual(登録商標))とを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。
【0068】
別の態様において、本発明は、a)190mgのレベチラセタムと、b)300mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)Methocel(商標)K100M Premium CRと、c)1.2mgのコロイド状二酸化ケイ素と、d)102.8mgの微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)HD90と、e)6mgのステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual(登録商標))とを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。
【0069】
別の態様において、本発明は、a)190mgのレベチラセタムと、b)300mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)Methocel(商標)K100M Premium CRと、c)1.2mgのコロイド状二酸化ケイ素と、d)102.8mgの無水リン酸二カルシウムと、e)6mgのステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual(登録商標))とを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。
【0070】
別の態様において、本発明は、100〜350mgのレベチラセタム、マトリックス形成性ポリマー、流動促進剤(glidant)、希釈剤、および滑沢剤を含む持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、マトリックス形成性ポリマーは、水溶性である。一部の実施形態において、希釈剤は、水溶性である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物中のレベチラセタムの量は、125〜250mgのレベチラセタムである。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物中のマトリックス形成性ポリマーの百分率は、45%w/wから70%w/wの間の任意の範囲、例えば45%、46%、47%、48%、49%、50%、55%、60%、65%、または70%w/wなどである。
【0071】
別の態様において、本発明は、a)30〜40%w/w(例えば、31.7〜36.7%w/w)のレベチラセタムと、b)45〜55%w/w(例えば、46.7〜50%w/w)のヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)と、c)0.01〜5%w/w(例えば、0.2%w/w)のコロイド状二酸化ケイ素と、d)15〜20%w/w(15.5〜17.1%w/w)の微結晶ケイ化セルロースと、e)0.01〜5%w/w(例えば、0.96〜1%w/w)のステアリン酸マグネシウムとを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K15M CRである。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K100M Premium CRである。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースは、ProSolv(商標)HD90である。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、HyQual(登録商標)である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、250mg〜1000mgである。特定の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、600mgである。一部の実施形態において、本持続放出性組成物は、125〜250mgのレベチラセタムを含む。
【0072】
別の態様において、本発明は、a)36.7%w/wのレベチラセタムと、b)46.7%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)と、c)0.2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、d)15.5%w/wの微結晶ケイ化セルロースと、e)1%w/wのステアリン酸マグネシウムとを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K15M CRである。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K100M Premium CRである。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースは、ProSolv(商標)HD90である。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、HyQual(登録商標)である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、250mg〜1000mgである。特定の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、600mgである。一部の実施形態において、本持続放出性組成物は、125〜250mgのレベチラセタムを含む。
【0073】
別の態様において、本発明は、a)31.7%w/wのレベチラセタムと、b)50%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)と、c)0.2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、d)17.1%w/wの微結晶ケイ化セルロースと、e)0.96%w/wのステアリン酸マグネシウムとを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K15M CRである。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K100M Premium CRである。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースは、ProSolv(商標)HD90である。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、HyQual(登録商標)である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、250mg〜1000mgである。特定の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、695mgである。一部の実施形態において、本持続放出性組成物は、125〜250mgのレベチラセタムを含む。
【0074】
別の態様において、本発明は、a)36.7%w/wのレベチラセタムと、b)46.7%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)Methocel(商標)K15M CRと、c)0.2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、d)15.5%w/wの微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)HD90と、e)1%w/wのステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual(登録商標))とを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、250mg〜1000mgである。特定の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、600mgである。一部の実施形態において、本持続放出性組成物は、125〜250mgのレベチラセタムを含む。
【0075】
別の態様において、本発明は、a)31.7%w/wのレベチラセタムと、b)50%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)Methocel(商標)K15M CRと、c)0.2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、d)17.1%w/wの微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)HD90と、e)0.96%w/wのステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual(登録商標))とを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、250mg〜1000mgである。特定の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、695mgである。一部の実施形態において、本持続放出性組成物は、125〜250mgのレベチラセタムを含む。
【0076】
別の態様において、本発明は、a)31.7%w/wのレベチラセタムと、b)50%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)と、c)0.2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、d)17.1%w/wの微結晶ケイ化セルロースと、e)1%w/wのステアリン酸マグネシウムとを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K15M CRである。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K100M Premium CRである。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースは、ProSolv(商標)HD90である。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、HyQual(登録商標)である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、250mg〜1000mgである。特定の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、600mgである。一部の実施形態において、本持続放出性組成物は、125〜250mgのレベチラセタムを含む。
【0077】
別の態様において、本発明は、a)31.7%w/wのレベチラセタムと、b)50%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)と、c)0.2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、d)17.1%w/wの無水リン酸二カルシウムと、e)1%w/wのステアリン酸マグネシウムとを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K15M CRである。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K100M Premium CRである。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、HyQual(登録商標)である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、250mg〜1000mgである。特定の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、600mgである。一部の実施形態において、本持続放出性組成物は、125〜250mgのレベチラセタムを含む。
【0078】
別の態様において、本発明は、a)31.7%w/wのレベチラセタムと、b)50%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)Methocel(商標)K15M CRと、c)0.2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、d)17.1%w/wの微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)HD90と、e)1%w/wのステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual(登録商標))とを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、250mg〜1000mgである。特定の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、600mgである。一部の実施形態において、本持続放出性組成物は、125〜250mgのレベチラセタムを含む。
【0079】
別の態様において、本発明は、a)31.7%w/wのレベチラセタムと、b)50%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)Methocel(商標)K100M Premium CRと、c)0.2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、d)17.1%w/wの微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)HD90と、e)1%w/wのステアリン酸マグネシウム(例えばHyQual(登録商標))とを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、250mg〜1000mgである。特定の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、600mgである。一部の実施形態において、本持続放出性組成物は、125〜250mgのレベチラセタムを含む。
【0080】
別の態様において、本発明は、a)31.7%w/wのレベチラセタムと、b)50%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)Methocel(商標)K100M Premium CRと、c)0.2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素と、d)17.1%w/wの無水リン酸二カルシウムと、e)1%w/wのステアリン酸マグネシウムHyQual(登録商標)とを含む、持続放出性医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、固体形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、250mg〜1000mgである。特定の実施形態において、本持続放出性医薬組成物の総重量は、600mgである。一部の実施形態において、本持続放出性組成物は、125〜250mgのレベチラセタムを含む。
【0081】
一部の実施形態において、本発明は、本持続放出性組成物において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)を、速度制御ポリマーまたはマトリックス形成性ポリマーとして使用する。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、本発明の組成物において、他の速度制御ポリマーまたはマトリックス形成性ポリマーとともに使用されてもよい。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、本発明の組成物において、他の速度制御ポリマーまたはマトリックス形成性ポリマーによって置き換えられてもよい。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを置き換えることができる、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースとともに使用することができる速度制御ポリマーまたはマトリックス形成性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと類似する性質または特性を有する。これらの速度制御ポリマーまたはマトリックス形成性ポリマーの例としては、限定されるものではないが、セルロース、非セルロース多糖類、ポリビニルポリマー、ヒドロゲル、モノリシックポリマー、またはこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボマー、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、イナゴマメガム(carob gum)、アラビアガム、カラヤガム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、またはこれらの混合物を、本発明の組成物における速度制御ポリマーまたはマトリックス形成性ポリマーとして使用することができる。一部の実施形態において、本発明の組成物におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはヒプロメロース)は、Methocel(商標)K4M、K15M、K100M、E4M、E10M、K4M CR、K15M CR、K100M CR、E4M CR、E10M CR、K4M Premium、K15M Premium、K100M Premium、E4M Premium、E10M Premium、K4M Premium CR、K15M Premium CR、K100M Premium CR、E4M Premium CR、E10M Premium CR、およびK100 Premium LVからなる群より選択することができる。
【0082】
一部の実施形態において、本発明は、本持続放出性組成物において、コロイド状二酸化ケイ素を、流動促進剤として使用する。一部の実施形態において、コロイド状二酸化ケイ素は、本発明の組成物において、他の流動促進剤とともに使用されてもよい。一部の実施形態において、コロイド状二酸化ケイ素は、本発明の組成物において、他の流動促進剤によって置き換えられてもよい。一部の実施形態において、コロイド状二酸化ケイ素を置き換えることができる、またはコロイド状二酸化ケイ素とともに使用することができる流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素と類似する性質または特性を有する。これらの流動促進剤の例としては、限定されるものではないが、トウモロコシデンプン、タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリコンヒドロゲル(silicon hydrogel)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0083】
一部の実施形態において、本発明は、本持続放出性組成物において、微結晶ケイ化セルロースを、希釈剤として使用する。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースは、本発明の組成物において、他の希釈剤とともに使用されてもよい。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースは、本発明の組成物において、他の希釈剤によって置き換えられてもよい。一部の実施形態において、微結晶ケイ化セルロースを置き換えることができる、または微結晶ケイ化セルロースとともに使用することができる希釈剤は、微結晶ケイ化セルロースと類似する性質または特性、例えば水溶解度などを有する。これらの希釈剤(または水溶性希釈剤)の例としては、限定されるものではないが、微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、圧縮糖、粉末セルロース、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン、デキストレート(dextrate)、デキストラン、デキストリン、デキストロース、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、ポリエチレンオキシド、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0084】
一部の実施形態において、本発明は、本持続放出性組成物において、ステアリン酸マグネシウムを、滑沢剤として使用する。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、本発明の組成物において、他の滑沢剤とともに使用されてもよい。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは、本発明の組成物において、他の滑沢剤によって置き換えられてもよい。一部の実施形態において、ステアリン酸マグネシウムを置き換えることができる、またはステアリン酸マグネシウムとともに使用することができる滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムと類似する性質または特性を有する。これらの滑沢剤の例としては、限定されるものではないが、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム(sodium stearyl fumerate)、パルミトステアリン酸グリセリン、ステアリン酸グリセリル、鉱油、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0085】
本明細書に記載される組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含有することができ、レベチラセタムの有効性を増進および/または補完する、あるいはレベチラセタムの持続放出性プロファイルまたは薬物動態プロファイルを増進または向上するように働く他の薬剤を含有してもよい。
【0086】
一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、表1の製剤である。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、190mg錠剤A製剤である。
【0087】
一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、表3の製剤である。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、220mg錠剤D製剤である。
【0088】
一部の実施形態において、本持続放出性レベチラセタム組成物は、1日1回の投与用に製剤化されている。例えば、本持続放出性組成物は、190mgのレベチラセタムを含み、1日1回(すなわち、24時間毎)投与される場合、190mgの1日投与量を提供する。本持続放出性組成物は、220mgのレベチラセタムを含み、1日1回(すなわち、24時間毎)投与される場合、220mgの1日投与量を提供する。一部の実施形態において、本持続放出性レベチラセタム組成物は、1単位剤形の1日1回の投与用に製剤化されている。一部の実施形態において、本持続放出性レベチラセタム組成物は、錠剤1個の1日1回の投与用に製剤化されている。例えば、認知機能障害を患っている被験体は、本発明の持続放出性組成物(例えば、表1の錠剤A、BおよびC、または表3の錠剤DおよびE)の錠剤1個を1日1回服用することになる。各錠剤は、190mgまたは220mgのレベチラセタムを含む持続放出性の剤形である。
【0089】
一部の実施形態において、本持続放出性レベチラセタム組成物は、午前中に投与される。
【0090】
一部の実施形態において、本持続放出性レベチラセタム組成物は、固体形態、例えば錠剤、カプセル剤、ミニタブレット(mini tablet)、カプセル中のミニタブレット、糖衣錠(dragree)、丸剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、フィルム、または溶解性フィルムである。一部の実施形態において、本発明の組成物は、錠剤の形態である。一部の実施形態において、錠剤は、均質な混合物である。
【0091】
一部の実施形態において、本持続放出性レベチラセタム組成物は、経口投与用に製剤化されている。一部の実施形態において、本持続放出性医薬組成物は、経口投与用の固体形態で製剤化されている。一部の実施形態において、本持続放出性レベチラセタム組成物は、経口錠剤である。一部の実施形態において、本持続放出性レベチラセタム組成物は、経口カプセル剤である。一部の実施形態において、本持続放出性レベチラセタム組成物は、注射または舌下投与用に製剤化されている。一部の実施形態において、本持続放出性レベチラセタム組成物は、パッチまたはポンプの形態での投与用に製剤化されている。
【0092】
一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、疎水性の速度制御ポリマーを含まない。
【0093】
一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、機能性コーティングを含まない。
【0094】
本発明の方法の説明
本発明の方法は、限定されるものではないが、加齢性認知機能障害、軽度認知機能障害(MCI)、健忘性MCI(aMCI)、加齢関連記憶機能障害(AAMI)、加齢性認知低下(ARCD)、認知症、アルツハイマー病(AD)、前駆期AD、外傷後ストレス障害(PTSD)、統合失調症、双極性障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、がん療法関連認知機能障害、精神遅滞、パーキンソン病(PD)、自閉症、強迫行動、および物質嗜癖を有するまたはこれらのリスクを有する被験体を含む、その治療を必要とするまたはその障害のリスクを有する被験体における中枢神経系(CNS)障害に関連する認知機能障害を治療するためのレベチラセタムの持続放出性組成物の投与を含む。
【0095】
一部の実施形態において、治療は、加齢性認知機能障害、軽度認知機能障害(MCI)、健忘性MCI(aMCI)、加齢関連記憶機能障害(AAMI)、加齢性認知低下(ARCD)、認知症、アルツハイマー病(AD)、前駆期AD、外傷後ストレス障害(PTSD)、統合失調症、双極性障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、がん療法関連認知機能障害、精神遅滞、パーキンソン病(PD)、自閉症、強迫行動、および物質嗜癖などの、CNS障害に関連する認知機能障害を患っているまたはそのリスクを有する患者における認知機能を向上することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、CNS障害の進行を減速または遅延することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、CNS障害に関連する認知機能障害の進行を予防、減速、または遅延することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、CNS障害に関連する認知機能の低下速度を低減することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、認知機能障害などのCNS障害に関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。
【0096】
認知機能障害を評価する方法
動物モデルは、CNS障害に関連する認知機能障害に対する治療を開発および評価するための重要なリソースとして働く。動物モデルにおける認知機能障害を特徴付ける特色は、典型的には、ヒトにおける認知機能障害に拡張する。したがって、このような動物モデルにおける有効性は、ヒトにおける有効性を予測するものと期待される。CNS障害用の動物モデルにおける認知機能障害の程度、および前記CNS障害用の治療方法の有効性は、様々な認知試験の使用により試験および確認することができる。
【0097】
放射状迷路(RAM)行動課題は、空間記憶について特異的に試験する、認知試験の一例である(Chappellら、Neuropharmacology 37巻:481〜487頁、1998年)。このRAM装置は、例えば8個の等距離に離間されたアームからなる。迷路アームは、中心プラットフォームの各小面から突出する。食物ウェルが、各アームの遠位端に位置している。食物は報酬として使用される。任意のアームに入ることを防ぐために、ブロックを配置することができる。また、この装置を囲む多数の追加の迷路の手がかりが提供されてもよい。馴化段階および訓練段階の後、被験体の空間記憶を、対照条件または試験化合物で治療した条件において、RAMで試験することができる。この試験の一部として、被験体は、試行前に、ビヒクル対照またはある範囲の投与量の試験化合物のうちの1つで予備治療される。各試行の開始時には、8アーム迷路のうちのある部分集合のアームが遮断されている。被験体は、この試行の初期「情報段階」中にアクセスが許容されている、遮断されていないアームにおいて、食物を得ることができる。次いで、被験体は、この情報段階と後続の「保持試験」との間の遅延期間、例えば60秒間の遅延、15分間の遅延、1時間の遅延、2時間の遅延、6時間の遅延、24時間の遅延、またはより長い遅延の間、この迷路から離され、この間に、迷路上の障壁は取り除かれて、8つすべてのアームへのアクセスが可能となる。遅延期間後、被験体は、中心プラットフォームに戻され(以前遮断されていたアームに対する障壁は取り除かれている)、この試行の保持試験段階中に、残っている食物報酬を得ることができる。遮断されるアームの正体および構成は、試行をわたり変わる。保持試験段階中に被験体が犯した「エラー」の数を追跡する。試行の遅延前構成要素においてすでに食物が取り出されたアームに被験体が入った場合、または遅延後のセッションにおいてすでに訪問したアームを再訪問した場合に、試行におけるエラーが発生する。エラーの数が少ないほど、空間記憶がより良好であることを示す。次いで、様々な試験化合物治療レジメンの下で試験被験体が犯したエラーの数を、CNS障害に関連する認知機能障害を治療する際の試験化合物の有効性に関して比較することができる。
【0098】
CNS障害モデル動物の認知機能障害に対する試験化合物の効果を評価するために使用することができる別の認知試験は、モリス水迷路である。水迷路は、迷路に対する新規パターンのセットで囲まれたプールである。水迷路のための訓練プロトコールは、海馬依存性であることが示されている、改変された水迷路課題に基づき得る(de Hozら、Eur. J. Neurosci.、22巻:745〜54頁、2005年、SteeleおよびMorris、Hippocampus 9巻:118〜36頁、1999年)。被験体は、このプールの表面より下に隠れた、沈められた逃避プラットフォームの位置を探し出すように訓練される。この訓練試行の間、被験体は、プールの周囲の無作為出発位置から迷路(プール)に放される。この出発位置は、試行ごとに変わる。被験体が設定時間以内に逃避プラットフォームの位置を探し出さなかった場合、実験者は、被験体をプラットフォームに案内してそこに置き、プラットフォームの位置を「教える」。最後の訓練試行後にある遅延期間を置いた後、逃避プラットフォームが存在しない保持試験を行って、空間記憶を評価する。被験体の、(現在は存在しない)逃避プラットフォームの位置に対する嗜好性のレベルは、例えばその位置で費やされた時間、またはマウスがその位置を横切る回数により測定されるが、より良好な空間記憶、すなわち認知機能障害の治療を示す。次いで、異なる治療条件の下での逃避プラットフォームの位置に対する嗜好性を、CNS障害に関連する認知機能障害を治療する際の試験化合物の有効性に関して比較することができる。
【0099】
ヒトにおける認知機能を評価するための様々な試験、例えば、限定されるものではないが、臨床全般印象変化尺度(CIBIC−plus尺度);ミニメンタルステート検査(MMSE);神経精神症状評価(NPI);臨床的認知症評価尺度(CDR);ケンブリッジ自動神経心理学的検査バッテリー(CANTAB);サンド老年者臨床評価(SCAG)、ブシュケ選択式回想テスト(BuschkeおよびFuld、1974年);言語性対連合サブテスト;論理的記憶サブテスト;ウェクスラー記憶検査改訂版(WMS−R)の視覚的再現サブテスト(Wechsler、1997年);ベントン視覚保持テスト、またはMATRICSコンセンサス神経心理学的検査バッテリー(これは、作業記憶、処理速度、注意、言語学習、視覚型学習、論理的思考および問題解決、ならびに社会的認知の試験を含む)が、当技術分野において公知である。Folsteinら、J Psychiatric Res 12巻:189〜98頁、(1975年)、Robbinsら、Dementia 5巻:266〜81頁、(1994年)、Rey、L’examen clinique en psychologie、(1964年)、Klugerら、J Geriatr Psychiatry Neurol 12巻:168〜79頁、(1999年)、Marquisら、2002年、およびMasurら、1994年、またはMATRICSコンセンサス神経心理学的検査バッテリー(これは、作業記憶、処理速度、注意、言語学習、視覚型学習、論理的思考および問題解決、ならびに社会的認知の試験を含む)を参照されたい。ヒトにおける認知試験の別の例は、明示的三肢強制選択法である。この試験において、被験体は、3種類の画像対(類似の対、同一の対、および無関係の箔)を混ぜたものからなる、共通の物体のカラー写真を提示される。類似の物体の対の2番目のものは、「おとり(lure)」と呼ばれる。これらの画像対は完全に無作為化され、そして一連の画像として個々に提示される。被験体は、見せられる物体が新しいものか、古いものか、または類似したものであるかの判断を行うように指示される。おとり刺激の提示に対する「類似」という応答は、この被験体の記憶想起が成功していることを示すものである。対照的に、おとり刺激を「古い」または「新しい」とコールすること(calling)は、正しい記憶想起が起こらなかったことを示すものである。
【0100】
認知パフォーマンスを評価することに加えて、加齢性認知機能障害および認知症の進行、ならびに加齢性認知機能障害の認知症への変換を、被験体の脳内の代理変化を評価することによって監視することができる。代理変化としては、限定されるものではないが、局所的脳体積の変化、貫通路分解、ならびに休止状態fMRI(R−fMRI)およびフルオロデオキシグルコース陽電子放出断層撮影法(FDG−PET)によって脳機能に見られる変化が挙げられる。加齢性認知機能障害および認知症の進行を監視する際に有用である局所的脳体積の例としては、海馬体積の低減および嗅内皮質の体積または厚さの低減が挙げられる。被験体におけるこれらの体積は、例えばMRIによって測定することができる。Aisenら、Alzheimer’s & Dementia 6巻:239〜246頁(2010年)。貫通路分解は、年齢および低減した認知機能に結び付けられることが示されている。例えば、より大きい貫通路分解を有するより高齢の成体は、海馬依存性の記憶試験におけるパフォーマンスがより悪い傾向にある。被験体における貫通路分解は、超高分解能拡散テンソル画像法(DTI)によって監視することができる。Yassaら、PNAS 107巻:12687〜12691頁(2010年)。休止状態fMRI(R−fMRI)には、休止中の脳を画像化することと、機能的に関連する領域にわたって時間的に相関付けられるfMRIシグナルの大振幅の自発的低周波数(<0.1Hz)波動を記録することとが伴う。シードベースの機能的関連性、独立成分分析、および/またはシグナルの周波数ドメイン分析が、脳領域、特に、関連性が年齢、ならびに認知機能障害および/または認知症の程度とともに増減するような領域間の機能的関連性を明らかにするために使用される。FDG−PETは、FDGの取り込みを、脳内の局所的代謝活性の尺度として使用する。後帯状皮質、側頭頭頂皮質、および前頭葉前部関連皮質などの領域におけるFDG取り込みの低下は、認知低下および認知症の程度に関連することが示されている。Aisenら、Alzheimer’s & Dementia 6巻:239〜246頁(2010年)、Herholzら、NeuroImage 17巻:302〜316頁(2002年)。
【0101】
加齢性認知機能障害
本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用して加齢性認知機能障害またはそのリスクを治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、治療は、加齢性認知機能障害を有する患者における認知機能を向上することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、加齢性認知機能障害の進行を減速または遅延することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、加齢性認知機能障害に関連する認知機能の低下速度を低減することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、加齢性認知機能障害の進行を予防または減速することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、加齢性認知機能障害に関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。ある特定の実施形態において、加齢性認知機能障害の治療は、加齢性認知機能障害(MCI、ARCDおよびAAMIを含むがこれらに限定されない)から認知症(例えば、AD)への変換の減速を含む。本方法および組成物は、MCI、ARCDおよびAAMIなどの状態の加齢性認知機能障害またはそのリスクの治療における臨床適用で、ヒト患者のために使用することができる。本組成物の用量および本方法の投与間隔は、本明細書に記載されるように、これらの適用において安全かつ有効であるようなものである。
【0102】
一部の実施形態において、本発明の方法および組成物によって治療されるべき被験体は、加齢性認知機能障害を呈するか、またはこのような機能障害のリスクを有する。一部の実施形態において、加齢性認知機能障害としては、限定されるものではないが、加齢関連記憶機能障害(AAMI)、軽度認知機能障害(MCI)、および加齢性認知低下(ARCD)が挙げられる。
【0103】
動物モデルは、このような加齢性認知機能障害に対する治療を開発および評価するための重要なリソースとして働く。動物モデルにおける加齢性認知機能障害を特徴付ける特色は、典型的には、ヒトにおける加齢性認知機能障害に拡張する。したがって、このような動物モデルにおける有効性は、ヒトにおける有効性を予測するものと期待される。
【0104】
加齢性認知機能障害の様々な動物モデルが、当技術分野において公知である。例えば、広範な行動の特徴付けが、高齢のLong−Evansラットの非近交種における認知機能障害の天然に存在する形態を特定している(Charles River Laboratories、Gallagherら、Behav. Neurosci. 107巻:618〜626頁、(1993年))。モリス水迷路(MWM)による行動評価において、ラットは、この迷路の周囲の空間的手がかりの構成によって案内される逃避プラットフォームの位置を学習して覚える。パフォーマンスの認知的基礎が、逃避プラットフォームの位置を探す際の動物の空間的偏りの尺度を使用して、プローブ試行において試験される。この研究被験体集団での高齢ラットは、目に見えるプラットフォームまで泳ぐことに困難はないが、プラットフォームが偽装され、空間情報の使用が必要とされるようになると、年齢依存性の機能障害が検出される。非近交系Long−Evans系統において、個別の高齢ラットのパフォーマンスは大いに異なる。例えば、これらのラットのうちのある割合は、若年成体と同等に行動する。しかしながら、およそ40%〜50%は、若年のパフォーマンスの範囲から外れる。高齢ラットの中でのこの変動性は、確かな個体差を反映している。したがって、高齢集団内で、一部の動物は認知的に損なわれており、老いた障害性(AI)と称され、他の動物は損なわれておらず、老いた非障害性(AU)と称される。例えば、Colomboら、Proc. Natl. Acad. Sci. 94巻:14195〜14199頁、(1997年)、GallagherおよびBurwell、Neurobiol. Aging 10巻:691〜708頁、(1989年)、Gallagherら、Behav. Neurosci. 107巻:618〜626頁、(1993年)、RappおよびGallagher、Proc. Natl. Acad. Sci. 93巻:9926〜9930頁、(1996年)、Nicolleら、Neuroscience 74巻:741〜756頁、(1996年)、Nicolleら、J. Neurosci.19巻:9604〜9610頁、(1999年)、国際特許出願公開第2007/019312号、および国際特許出願公開第2004/048551号を参照されたい。このような加齢性認知機能障害の動物モデルを、加齢性認知機能障害の治療における本発明の方法および組成物の有効性をアッセイするために使用することができる。
【0105】
加齢性認知機能障害の治療における本発明の方法および組成物の有効性は、上で考察したようなモリス水迷路および放射状迷路を含む様々な認知試験を使用して評価することができる。
【0106】
認知症
また、本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用して認知症を治療するための方法も提供する。ある特定の実施形態において、治療は、認知症を有する患者における認知機能を向上することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、認知症の進行を減速または遅延することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、認知症に関連する認知機能の低下速度を低減することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、認知症の進行を予防または減速することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、認知症に関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。ある特定の実施形態において、治療されるべき症状は、認知機能障害である。ある特定の実施形態において、認知症は、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、レヴィ小体型認知症、または前頭側頭型認知症である。本方法および組成物は、認知症の治療における臨床適用で、ヒト患者のために使用することができる。本組成物の用量および本方法の投与間隔は、本明細書に記載されるように、これらの適用において安全かつ有効であるようなものである。
【0107】
動物モデルは、認知症に対する治療を開発および評価するための重要なリソースとして働く。動物モデルにおける認知症を特徴付ける特色は、典型的には、ヒトにおける認知症に拡張する。したがって、このような動物モデルにおける有効性は、ヒトにおける有効性を予測するものと期待される。PDAPP、Tg2576、APP23、TgCRND8、J20、hPS2 Tg、およびAPP+PS1トランスジェニックマウスなどの認知症の様々な動物モデルが当技術分野において公知である。Sankaranarayanan、Curr. Top. Medicinal Chem. 6巻:609〜627頁、2006年、Kobayashiら、Genes Brain Behav. 4巻:173〜196頁。2005年、AsheおよびZahns、Neuron. 66巻:631〜45頁、2010年。このような認知症の動物モデルを、認知症の治療における本発明の方法および組成物の有効性をアッセイするために使用することができる。
【0108】
認知症または認知症に関連する認知機能障害の治療における本発明の方法および組成物の有効性は、上で考察したような当技術分野において公知の様々な認知試験を使用して、認知症の動物モデルおよび認知症を有するヒト被験体において評価することができる。
【0109】
外傷後ストレス障害
また、本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用して外傷後ストレス障害(PTSD)を治療するための方法も提供する。ある特定の実施形態において、治療は、PTSDを有する患者における認知機能を向上することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、PTSDの進行を減速または遅延することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、PTSDに関連する認知機能の低下速度を低減することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、PTSDの進行を予防または減速することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、PTSDに関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。ある特定の実施形態において、治療されるべき症状は、認知機能障害である。本方法および組成物は、PTSDの治療における臨床適用で、ヒト患者のために使用することができる。本組成物の用量および本方法の投与間隔は、本明細書に記載されるように、これらの適用において安全かつ有効であるようなものである。
【0110】
PTSDを有する患者(およびPTSDを有しない、より低い程度に外傷に曝露された患者)は、より小さい海馬体積を有する(Woonら、Prog. Neuro−Psychopharm.& Biological Psych. 34巻、1181〜1188頁、Wangら、Arch. Gen. Psychiatry 67巻:296〜303頁、2010年)。また、PTSDは、損なわれた認知パフォーマンスにも関連する。PTSDを有するより高齢の個体は、対照患者と比較して、認知パフォーマンスにおけるより大きな低下を有し(Yehudaら、Bio. Psych. 60巻:714〜721頁、2006年)、認知症を生じるより大きな可能性を有する(Yaffeら、Arch. Gen. Psych. 678巻:608〜613頁、2010年)。
【0111】
動物モデルは、PTSDに対する治療を開発および評価するための重要なリソースとして働く。動物モデルにおけるPTSDを特徴付ける特色は、典型的には、ヒトにおけるPTSDに拡張する。したがって、このような動物モデルにおける有効性は、ヒトにおける有効性を予測するものと期待される。PTSDの様々な動物モデルが、当技術分野において公知である。
【0112】
PTSDのラットモデルの1つは、時間依存性感作(TDS)である。TDSには、重度にストレス性の事象に対する動物の曝露と、引き続く先行ストレスを状況的に思い出させるもの(situational reminder)とが伴う。以下はTDSの一例である。ラットを保定器に入れ、次いで水泳タンクに入れ、ある一定の期間、例えば20分間泳がせる。この後、各ラットを即座に意識を失うまでガス麻酔薬に曝露して、最終的に乾燥させる。これらの動物を、数日間(例えば1週間)静置する。次いで、これらのラットを、初期ストレス要因、例えば水泳タンクでの水泳セッションからなる「再ストレス」セッションに曝露する(Liberzonら、Psychoneuroendocrinology 22巻:443〜453頁、1997年、Harveryら、Psychopharmacology 175巻:494〜502頁、2004年)。TDSは、ラットにおける聴覚驚愕反応(ASR)の増進をもたらし、これは、PTSDの顕著な症状である過剰聴覚驚愕に匹敵する(KhanおよびLiberzon、Psychopharmacology 172巻:225〜229頁、2004年)。このようなPTSDの動物モデルを、PTSDの治療における本発明の方法および組成物の有効性をアッセイするために使用することができる。
【0113】
また、PTSDまたはPTSDに関連する認知機能障害の治療における本発明の方法および組成物の有効性も、上で考察したような当技術分野において公知の様々な認知試験を使用して、PTSDの動物モデルおよびPTSDを有するヒト被験体において評価することができる。
【0114】
統合失調症
本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用して統合失調症または双極性障害(特に躁病)を治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、治療は、統合失調症を有する患者における認知機能を向上することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、統合失調症の進行を減速または遅延することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、統合失調症に関連する認知機能の低下速度を低減することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、統合失調症または双極性障害(特に躁病)の進行を予防または減速することを含む。統合失調症は、陽性症状、例えば異常なまたはゆがんだ精神表出(例えば、幻覚、妄想)など、意欲および適応性の目標指向動作の減少(例えば、快感消失症、感情の平坦化(affective flattening)、意欲消失)によって特徴付けられる陰性症状、ならびに認知機能障害を含めた広範なスペクトルの精神病理によって特徴付けられる。ある特定の実施形態において、治療は、統合失調症に関連する1種または複数の陽性症状および/または陰性症状、ならびに認知機能障害の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。さらに、統合失調症と重なる総体的症状を有するいくつかの他の精神疾患、例えば統合失調型(schizotypical)障害および統合失調感情障害、他の急性および慢性の精神病、ならびに双極性障害(特に、躁病)などが存在する。一部の実施形態において、治療は、双極性障害(特に躁病)に関連する1種または複数の症状、および認知機能障害の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。本方法および組成物は、統合失調症または双極性障害(特に躁病)の治療における臨床適用で、ヒト患者のために使用することができる。本組成物の用量および本方法の投与間隔は、本明細書に記載されるように、これらの適用において安全かつ有効であるようなものである。
【0115】
認知機能障害は、統合失調症に関連している。これらは精神病の発症の前に起こり、そして罹患していない親類に存在する。統合失調症に関連する認知機能障害は、機能的転帰の良好な予測因子を構成し、この障害の中心的特色である。統合失調症における認知の特色は、前頭皮質および海馬回路における機能不全を反映している。また、統合失調症を有する患者は、例えば海馬体積の低減、ニューロンサイズの低減、および機能不全性の機能亢進などの海馬の病理を呈する。また、これらの脳領域における興奮と抑制との不均衡については、統合失調症患者において記録されており、抑制機構を標的とする薬物が治療的であり得ることを示唆している。例えば、Guidottiら、Psychopharmacology 180巻:191〜205頁、2005年、Zierhut、Psych. Res. Neuroimag. 183巻:187〜194頁、2010年、Woodら、NeuroImage 52巻:62〜63頁、2010年、Vinkersら、Expert Opin. Investig. Drugs 19巻:1217〜1233頁、2009年、Youngら、Pharmacol. Ther. 122巻:150〜202頁、2009年を参照されたい。
【0116】
動物モデルは、統合失調症に対する治療を開発および評価するための重要なリソースとして働く。動物モデルにおける統合失調症を特徴付ける特色は、典型的には、ヒトにおける統合失調症に拡張する。したがって、このような動物モデルにおける有効性は、ヒトにおける有効性を予測するものと期待される。統合失調症の様々な動物モデルが、当技術分野において公知である。
【0117】
統合失調症の動物モデルの1つは、メチオニンによる長期処置である。メチオニンで処置されたマウスは、前頭皮質および海馬におけるGAD67の発現が不足しており、死後の統合失調症患者の脳において報告されたものに類似している。また、これらのマウスは、驚愕のプレパルス抑制および社会的相互作用の不足を呈する(Tremonlizzoら、PNAS、99巻:17095〜17100頁、2002年)。統合失調症の別の動物モデルは、ラットにおける酢酸メチルアゾキシメタノール(methylaoxymethanol acetate)(MAM)処置である。妊娠したメスのラットに対して、妊娠17日目にMAMを投与する(20mg/kg、腹腔内)。MAM処置は、解剖学的変化、挙動欠陥、および変化したニューロン情報処理を含む、統合失調症様表現型への病理発症(pathodevelopmental)プロセスを、子孫において反復させる。より具体的には、MAMで処置されたラットは、前頭前皮質および海馬の部分において、パルブアルブミン陽性のGABA作動性介在ニューロンの減少した密度を示す。行動試験において、MAMで処置されたラットは、低減された潜在制止(latent inhibition)を示す。潜在制止とは、任意の結果をともなった以前の曝露が存在する刺激についての学習が低減された行動現象である。以前の良性の刺激を無視し、このような刺激との関連性の形成を低減するというこの傾向は、感覚過負荷を防ぐためと考えられる。低い潜在制止は精神病を示している。潜在制止は、ラットにおいて、以下の様式で試験することができる。ラットを2つの群に分ける。一方の群は、複数の試行にわたってある音に予め曝露される。他方の群は、音の提示を受けない。次いで、両方の群を聴覚恐怖条件付け手順に曝露する。この手順で、同じ音を、有害刺激、例えば足への電気ショックと同時に提示する。その後、両方の群に対してこの音を提示し、そして音の提示中のラットの自発運動活性における変化を監視する。恐怖条件付けの後、ラットは、自発運動活性を強く低減することによって、音の提示に対して応答する。しかし、条件付けの期間より前にこの音に対して曝露されていた群は、頑強な潜在制止を示すため、音の提示に応答する自発運動活性の抑制は低減される。対照的に、MAMで処置されたラットは、損なわれた潜在制止を示す。すなわち、恐怖条件付け手順より前の音への曝露は、恐怖条件付けの抑制に対しては有意な効果を有しない。(Lodgeら、J. Neurosci.、29巻:2344〜2354頁、2009年を参照されたい)。このような統合失調症の動物モデルを、統合失調症または双極性障害(特に躁病)の治療における本発明の方法および組成物の有効性をアッセイするために使用することができる。
【0118】
MAMで処置したラットは、低用量D−アンフェタミンの投与に対して有意に増進された自発運動応答(または異常な自発運動活性)を示す。また、MAMで処置したラットは、有意により多い数の自発的に発火する腹側被蓋ドーパミン(DA)ニューロンを示す。これらの結果は、過剰な海馬活性の結果であると考えられ、これは、MAMで処置したラットにおいて、腹側海馬(vHipp)の不活性化(例えば、ナトリウムチャネル遮断薬であるテトロドトキシン(TTX)の、MAMラットへのvHipp内投与による)が、上昇したDAニューロン集団活性を完全に逆転させ、また、増強されたアンフェタミン誘導性自発運動行動を正常化したためである。海馬機能不全と、DA系の過剰応答性との相関関係が、MAMで処置した動物におけるアンフェタミンに対する増強された応答および統合失調症患者における精神病の根底にあると考えられる。Lodge D. J.ら、Neurobiology of Disease(2007年)、27巻(42号)、11424〜11430頁を参照されたい。上の研究におけるMAMで処置したラットの使用は、統合失調症または双極性障害(特に躁病)の治療における本発明の方法および組成物の有効性をアッセイするための使用にとって好適であり得る。例えば、本発明の方法および組成物は、MAMで処置した動物を使用して、MAMで処置した動物における、中心海馬(vHipp)調節、上昇したDAニューロン集団活性、およびアンフェタミンに対する機能亢進性の自発運動応答に対するそれらの効果について評価することができる。
【0119】
MAMで処置したラットにおいて、海馬(HPC)機能不全は、ドーパミン系機能亢進につながる。GABA
A受容体のα5サブユニットに対して選択的なベンゾジアゼピン陽性アロステリック調節因子(PAM)、SH−053−2’F−R−CH
3を、海馬(HPC)の出力に対するその影響に関して試験する。また、SH−053−2’F−R−CH
3の、MAMで処置した動物におけるアンフェタミンに対する機能亢進性の自発運動応答に対する効果についても調べられる。α5GABAAR PAMは、全身投与した場合および腹側HPCに直接注入した場合の両方で、MAMラットの腹側被蓋領域(VTA)における自発的に活性なDAニューロンの数を、生理食塩水で処置したラット(対照群)において観察されたレベルまで低減する。また、生理食塩水で処置した動物とMAMで処置した動物との両方において、HPCニューロンは、α5GABAAR PAM処置後に、低下した皮質誘発応答を示す。加えて、MAMで処置したラットにおいて観察されるアンフェタミンに対する増大した自発運動応答は、α5GABA
AR PAM処置後に低減される。Gill K. Mら、Neuropsychopharmacology(2011年)、1〜9頁を参照されたい。上の研究におけるMAMで処置したラットの使用は、統合失調症または双極性障害(特に躁病)の治療における本発明の方法および組成物の有効性をアッセイするための本発明における使用にとって好適であり得る。例えば、本発明の方法および組成物は、MAMで処置した動物を使用して、MAMで処置した動物における、海馬(HPC)の出力およびアンフェタミンに対する機能亢進性の自発運動応答に対するそれらの効果について評価することができる。
【0120】
胎生15日(E15)の妊娠ラットへのMAMの投与は、その子孫の、空間記憶または8アーム放射状迷路における4つの品目の空間位置を学習する能力を重度に損なう。加えて、胎生17日(E17)のMAMで処置したラットは、訓練の初期段階においては、対照ラットのパフォーマンスのレベルに達し得るが、30分間の遅延が挿入されると、空間情報を処理して想起することが不可能となり、作業記憶における有意な機能障害が示される。Gourevitch R.ら、(2004年)、Behav. Pharmacol、15巻、287〜292頁を参照されたい。このような統合失調症の動物モデルを、統合失調症または双極性障害(特に躁病)の治療における本発明の方法および組成物の有効性をアッセイするために使用することができる。
【0121】
マウスにおけるアポモルフィン誘発クライミング(apomorphine−induced climbing)(AIC)およびアポモルフィン誘発常同性(apomorphine−induced stereotype)(AIS)は、本発明において有用な別の動物モデルである。薬剤を、マウスに対して所望の用量レベルで投与する(例えば、腹腔内投与によって)。その後、例えば30分後に、実験マウスにアポモルフィンでチャレンジする(例えば、1mg/kg、皮下注射で)。このアポモルフィン注射の5分後、アポモルフィンにより誘発された、嗅ぐ−舐める−齧る症候群(sniffing−licking−gnawing syndrome)(常同行動)およびクライミング挙動を、各動物についてスコア付けして記録する。読み取りは、30分間の試験セッションの間で、5分毎に繰り返すことができる。各動物についてのスコアをこの30分間の試験セッションにわたって、各症候群(常同行動およびクライミング)に関して合計する。効果が少なくとも50%の阻害に達した場合、ID
50の値(95%信頼区間)を、逆予測(inverse prediction)による非線形最小二乗計算を使用して計算する。平均クライミングスコアおよび常同性スコアは、アポモルフィンを受容した、ビヒクル(vehible)で処置された(例えば、生理食塩水で処置された)マウスにおいて観察された対照値のパーセントとして表すことができる。Grauer S. M.ら、Psychopharmacology(2009年)204巻、37〜48頁を参照されたい。このマウスモデルを、統合失調症または双極性障害(特に躁病)の治療における本発明の方法および組成物の有効性をアッセイするために使用することができる。
【0122】
また、統合失調症の治療における本発明の方法および組成物の有効性も、上で考察したような当技術分野において公知の様々な認知試験を使用して、統合失調症または双極性障害(特に躁病)の動物モデルおよび統合失調症を有するヒト被験体において評価することができる。
【0123】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
加えて、本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用してALSを治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、治療は、ALSを有する患者における認知機能を向上することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、ALSの進行を減速または遅延することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、ALSに関連する認知機能の低下速度を低減することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、ALSの進行を予防または減速することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、ALSに関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。ある特定の実施形態において、治療されるべき症状は、認知機能障害である。本方法および組成物は、ALSの治療における臨床適用で、ヒト患者のために使用することができる。本組成物の用量および本方法の投与間隔は、本明細書に記載されるように、これらの適用において安全かつ有効であるようなものである。
【0124】
運動ニューロンの変性に加えて、ALSは、嗅内皮質および海馬におけるニューロン変性、記憶欠損、ならびに皮質などの異なる脳領域におけるニューロン過剰興奮性によって特徴付けられる。
【0125】
また、ALSまたはALSに関連する認知機能障害の治療における本発明の方法および組成物の有効性も、上で考察したような当技術分野において公知の様々な認知試験を使用して、ALSの動物モデルおよびALSを有するヒト被験体において評価することができる。
【0126】
がん療法関連認知機能障害
加えて、本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用してがん療法関連認知機能障害を治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、治療は、がん療法関連認知機能障害を有する患者における認知機能を向上することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、がん療法関連認知機能障害の進行を減速または遅延することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、がん療法関連認知機能障害に関連する認知機能の低下速度を低減することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、がん療法関連認知機能障害の進行を予防または減速することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、がん療法関連認知機能障害に関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。本方法および組成物は、がん療法関連認知機能障害の治療における臨床適用で、ヒト患者のために使用することができる。本組成物の用量および本方法の投与間隔は、本明細書に記載されるように、これらの適用において安全かつ有効であるようなものである。
【0127】
化学療法、放射線、またはこれらの組合せを含む、がん治療において使用される療法は、患者において、記憶、学習および注意などの機能における認知機能障害を引き起こし得る。がん療法の細胞傷害性および脳に対する他の有害な副作用は、この形態の認知機能障害の基礎であり、これは、数十年間持続する可能性がある。(Dietrichら、Oncologist 13巻:1285〜95頁、2008年、Soussainら、Lancet 374巻:1639〜51頁、2009年)。
【0128】
がん療法後の認知機能障害は、正常な認知のために必須である前頭皮質および海馬回路における機能不全を反映している。動物モデルにおいて、化学療法または放射線のいずれかへの曝露は、これらの脳の系、特に海馬に対して特異的に依存する認知試験のパフォーマンスに悪影響を及ぼす(Kimら、J. Radiat. Res. 49巻:517〜526頁、2008年、Yangら、Neurobiol. Learning and Mem. 93巻:487〜494頁、2010年)。したがって、これらの皮質系および海馬系を標的とする薬物は、がん療法を受けている患者において神経保護的であり得、がん療法として使用される介入よりも長く続き得る認知機能障害の症状の治療において有効であり得る。
【0129】
動物モデルは、がん療法関連認知機能障害に対する治療を開発および評価するための重要なリソースとして働く。動物モデルにおけるがん療法関連認知機能障害を特徴付ける特色は、典型的には、ヒトにおけるがん療法関連認知機能障害に拡張する。したがって、このような動物モデルにおける有効性は、ヒトにおける有効性を予測するものと期待される。がん療法関連認知機能障害の様々な動物モデルが、当技術分野において公知である。
【0130】
がん療法関連認知機能障害の動物モデルの例としては、シクロホスファミド(CYP)などの抗腫瘍性薬剤または放射線、例えば
60Coガンマ線で動物を治療することが挙げられる。(Kimら、J. Radiat. Res. 49巻:517〜526頁、2008年、Yangら、Neurobiol. Learning and Mem. 93巻:487〜494頁、2010年)。次いで、がん療法関連認知機能障害の動物モデルの認知機能は、がん療法関連認知機能障害の治療における本発明の方法および組成物の有効性をアッセイするための認知試験で試験することができる。上で考察したような当技術分野において公知の様々な認知試験を使用した、がん療法関連認知機能障害およびがん療法関連認知機能障害を有するヒト被験体の治療における本発明の方法および組成物の有効性。
【0131】
パーキンソン病(PD)
パーキンソン病(PD)は、随意運動の減少によって特徴付けられる神経障害である。罹患した患者は、正常な個体と比較して、運動活動の低減およびより緩徐な随意運動を有する。患者は、特徴的な「仮面」顔、歩行中に急ぐ傾向、屈曲姿勢(bent over posture)、および筋肉の全体的な衰弱を有する。典型的な、受動運動の「鉛管」様硬直が存在する。この疾患の別の重要な特色は、安静時に起こり、運動中は減少する四肢の震えである。
【0132】
パーキンソン病は、その病因は未知であるが、パーキンソン症候群という名称の最も一般的な運動障害の一群に属し、これは、およそ1000人当たり1人に影響を与えている。パーキンソン症候群の名称に分類されるこれらの他の障害は、ウイルス感染症、梅毒、動脈硬化症、および外傷、ならびに毒性化学物質および麻薬への曝露から生じ得る。それでもなお、シナプス安定性の不適当な喪失が、神経回路の混乱および脳疾患につながり得ると考えられている。遺伝的特質、薬物使用、老化プロセス、ウイルス感染症、または他の様々な原因の結果としてであれ、ニューロン連絡における機能不全が、PDなどの多くの神経疾患の根底にある原因であると考えられている(Myrrhe van SpronsenおよびCasper C. Hoogenraad、Curr. Neurol. Neurosci. Rep. 2010年、10巻、207〜214頁)。
【0133】
この疾患の原因とは無関係に、主な病理学的特色は、脳幹神経節、特に黒質におけるドーパミン作動性細胞の変性である。黒質におけるドーパミン含有ニューロンの早期死亡に起因して、脳幹神経節の最大の構造体である線条体では、黒質からの入力が低減され、ドーパミンの放出が減少する。根底にある病理を理解することで、パーキンソン病を緩和できる最初の成功的治療の導入につながった。この疾患の療法に対する事実上すべての手法が、ドーパミン置換に基づくものである。この治療において現在使用されている薬物は、血液脳関門を越えた後にドーパミンに変換され得るか、あるいはドーパミンの合成を後押ししてその崩壊を低減させ得る。不運なことに、主な病理学的事象である、黒質における細胞の変性は救済されない。この疾患は進行し続け、ある特定の期間の後に、多くの場合、ドーパミン置換治療はその有効性を失うことになる。
【0134】
本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用してPDを治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、治療は、PDの進行を予防または減速することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、PDに関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。ある特定の実施形態において、治療されるべき症状は、認知機能障害である。例えば、本開示の方法および組成物は、パーキンソン病の症状である運動機能障害/認知機能障害を向上するために使用することができる。また、本開示の方法および組成物は、パーキンソン病の症状である記憶機能障害の治療にとって有用であり得る。
【0135】
PD用の多数の動物モデルが存在する。PD用の例示的な動物モデルとしては、レセルピンモデル、メタンフェタミンモデル、6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)モデル、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)モデル、パラクアット(PQ)−Manebモデル、ロテノンモデル、3−ニトロチロシンモデル、およびトランスジェニックマウスを使用する遺伝モデルが挙げられる。トランスジェニックモデルとしては、α−シヌクレインを過剰発現するマウス、α−シヌクレインのヒト変異体型を発現するマウス、またはLRKK2変異を発現するマウスが挙げられる。Ranjita B.らによるこれらのモデルの概説を参照されたい。(Ranjita B.ら、BioEssays 2002年、24巻、308〜318頁)。これらの動物モデルに関するさらなる情報は、Jackson Laboratories(http://research.jax.org/grs/parkinsons.htmlも参照されたい)、およびこれらの検証済みモデルの使用について開示している多数の刊行物から容易に入手可能である
【0136】
PDまたはPDに関連する認知機能障害の治療における本発明の方法および組成物の有効性は、上で考察したような当技術分野において公知の様々な認知試験を使用して、PDの上記動物モデルおよびPDを有するヒト被験体のいずれかにおいて評価することができる。
【0137】
自閉症
「自閉症」とは、本明細書において使用される場合、限定されかつ反復性の行動による損なわれた社会的相互作用および意思疎通につながる、神経発達障害によって特徴付けられる、自閉症スペクトル障害を指す。「自閉症スペクトル障害」とは、一群の発育障害を指し、この群には、自閉症;アスペルガー症候群;特定不能の広汎性発達障害(PDD−NOSまたは非定型自閉症);レット症候群;および小児期崩壊性障害が含まれる。
【0138】
自閉症とは、3つの主要な行動次元(behavioral dimension):反復行動、社会的欠損、および認知障害における機能不全によって特徴付けられる神経発達障害である。反復行動の領域は、強迫行動、目的物に対する異常な愛着、慣例または儀式の厳格な固守、ならびに常同症および自己刺激行動などの反復運動の衒奇を含む。社会的欠損の次元は、相互の社会的相互作用の欠損、目を合わせることの欠如、会話を続ける能力の低下、および損なわれた日常的な相互作用の技量を含む。これらの認知障害には、言語の異常が含まれる場合がある。自閉症は、数千人の米国人に影響を及ぼす障害性の神経障害であり、多くのサブタイプが包含され、様々な推定上の原因は存在するが、記録された好転性の治療はほとんど存在しない。自閉症スペクトルの障害は、出生時点で存在したり、あるいはより遅く、例えば2歳または3歳で発症したりする。自閉症についての、明快な生物学的マーカーは存在しない。この障害の診断は、不良な意思疎通能力、社会的能力および認知能力の特殊性、ならびに適応性のない行動パターンによって特徴付けられる行動症候群に対して、小児が一致する程度を考慮することによって行われる。ニューロン連絡における機能不全は、自閉症の根底にある原因のうちの1つであると考えられている(Myrrhe van SpronsenおよびCasper C. Hoogenraad、Curr. Neurol. Neurosci. Rep. 2010年、10巻、207〜214頁)。
【0139】
本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用して自閉症を治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、治療は、自閉症の進行を予防または減速することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、自閉症に関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。ある特定の実施形態において、治療されるべき症状は、認知障害である。例えば、本開示の方法および組成物は、自閉症の症状である運動障害/認知障害を向上するために使用することができる。
【0140】
精神遅滞
精神遅滞とは、有意に損なわれた認知機能および適応行動の欠陥によって特徴付けられる広汎性の障害である。精神遅滞は多くの場合、70未満の知能指数(IQ)スコアとして定義される。先天性の原因が、精神遅滞の根底にある多くの原因の中に存在する。また、ニューロン連絡における機能不全も、精神遅滞(mental redardation)の根底にある原因のうちの1つであると考えられている(Myrrhe van SpronsenおよびCasper C. Hoogenraad、Curr. Neurol. Neurosci. Rep. 2010年、10巻、207〜214頁)。
【0141】
一部の事例において、精神遅滞としては、限定されるものではないが、ダウン症候群、口蓋心臓顔面症候群(velocariofacial syndrome)、胎児アルコール症候群、脆弱X症候群、クラインフェルター症候群、神経線維腫症、先天性甲状腺機能低下症、ウィリアムズ症候群、フェニルケトン尿症(PKU)、スミス・レムリ・オピッツ症候群、プラダー・ウィリー症候群、フェラン・マクダーミド症候群、モワット・ウィルソン症候群、繊毛関連疾患、ロウ症候群、およびシデリウムX型関連精神遅滞(siderium type X−linked mental retardation)が挙げられる。ダウン症候群は、ある程度の精神遅滞、特徴的な顔面の特色、および多くの場合、心臓欠陥、増大した感染、視覚および聴覚に関する問題、ならびに他の健康上の問題が挙げられる、出生時欠損の組合せを含む障害である。脆弱X症候群は、遺伝性精神遅滞の一般的形態であり、男性4,000人に1人および女性8,000人に1人の頻度で発生する。また、この症候群も、発達遅延、多動、注意欠陥障害、および自閉様行動によって特徴付けられる。脆弱X症候群に対する有効な治療は存在しない。
【0142】
本発明は、軽度精神遅滞、中等度精神遅滞、重度精神遅滞、最重度精神遅滞(profound mental retardation)、および重篤度が特定されていない精神遅滞の治療を企図する。このような精神遅滞は、必ずしもそうである必要はないが、染色体変化(例えば、21トリソミーに起因するダウン症候群)、遺伝、妊娠および周産期の問題、ならびに他の重度精神障害に関連する場合がある。本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用して精神遅滞を治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、治療は、精神遅滞の進行を予防または減速することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、精神遅滞に関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。ある特定の実施形態において、治療されるべき症状は、認知障害/認知機能障害である。例えば、本開示の方法および組成物は、精神遅滞の症状である運動機能障害/認知機能障害を向上するために使用することができる。
【0143】
数種の動物モデルが、精神遅滞について開発されている。例えば、ノックアウトマウスモデルが、脆弱X症候群に関して開発されている。脆弱X症候群とは、FMR1タンパク質、FMRPの不在によって引き起こされる、一般的形態の精神遅滞である。FMRPの2種のホモログ、FXR1PおよびFXR2Pが同定されている。FXR2Pは、FMRPと同様に、脳および精巣において高い発現を示す。Fxr2ノックアウトマウスおよびFmr1ノックアウトマウス、ならびにFmr1/Fxr2二重ノックアウトマウスはどれも、脆弱X症候群などの精神遅滞にとって有用なモデルであると考えられている。Bontekoe C. J. M.ら、Hum. Mol. Genet. 2002年、11巻(5号):487〜498頁を参照されたい。精神遅滞または精神遅滞に関連する認知障害/認知機能障害の治療における本発明の方法および組成物の有効性は、上で考察したような当技術分野において公知の様々な認知試験を使用して、精神遅滞に関して開発されたこれらのマウスモデルおよび他の動物モデル、ならびに精神遅滞を有するヒト被験体において評価することができる。
【0144】
強迫行動(強迫性障害)
強迫性障害(「OCD」)とは、最も一般的には、強迫行動をもたらす侵入的な反復性の望ましくない思考(強迫観念)と、個体が行う衝動を感じる精神活動(強迫行為)とによって特徴付けられる精神状態である。現在の疫学的データは、OCDが、米国において4番目に一般的な精神障害であることを示している。一部の研究では、OCDの有病率が1から3%の間であると示唆されているが、臨床的に認識されているOCDの有病率はこれより遥かに低いため、この障害を有する多くの個体が診断されていない可能性があることが示唆される。OCDを有する患者はしばしば、心理学者、精神科医、または精神分析専門医によって、強迫観念および強迫行為の特徴を含む、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版テキスト改訂版(DSM−IV−TR)(2000年)の診断基準に従って診断される。強迫観念の特徴としては、(1)侵入的なものとして経験され、顕著な不安または苦悩を引き起こす、反復性かつ持続性の思考、衝動、またはイメージ;(2)これらの思考、衝動、またはイメージが、現実の問題に関する単なる過度の心配ではないこと;および(3)その人物が、このような思考、衝動、またはイメージを無視または抑制しようと試みている、あるいはこれらを何らかの他の思考または動作で中和しようと試みていることが挙げられる。この人物は、これらの強迫性の思考、衝動、またはイメージが、自分自身の精神の産物であり、現実に基づくものではないことを認識している。強迫行為の特徴としては、(1)強迫観念に応答して、または厳格に適用されなければならない規則に従って、その人物が行う衝動を感じる反復行動または精神活動;(2)これらの行動または精神活動は、苦悩を予防または低減するか、あるいは何らかの恐ろしい事象もしくは状況を防ぐことを目的とするが、これらの行動または精神活動は、実際にはその問題に関連していないか、またはこれらは過度であることが挙げられる。
【0145】
OCDを有する個体は、典型的には、強迫観念に関連する不安の軽減を求めるために課題(または強迫行為)を行う。手洗い、勘定、確認、または清掃などの反復行動は、多くの場合、強迫性の思考を防ぐことまたはこれらをなくすことを望んで行われる。しかしながら、これらの「儀式」を行うことは、一時的な軽減しか提供しない。OCDを有する人々はまた、他の精神障害のスペクトル、例えば、全般性不安障害、神経性食欲不振、パニック発作、または統合失調症などを有すると診断される場合がある。
【0146】
ニューロン連絡における機能不全は、強迫観念障害の根底にある原因のうちの1つであると考えられている(Myrrhe van SpronsenおよびCasper C. Hoogenraad、Curr. Neurol. Neurosci. Rep. 2010年、10巻、207〜214頁)。OCDは、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質の異常なレベルに関連付けられ得ることを、研究が示唆している。OCDの一次治療は、行動療法、認知療法、および薬物治療からなる。治療のための薬品としては、セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)、例えばパロキセチン(Seroxat(商標)、Paxil(登録商標)、Xetanor(商標)、ParoMerck(商標)、Rexetin(商標))、セルトラリン(Zoloft(登録商標)、Stimuloton(商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標)、Bioxetin(商標))、エスシタロプラム(Lexapro(登録商標))、およびフルボキサミン(Luvox(登録商標))、ならびに三環系抗うつ剤、特にクロミプラミン(Anafranil(登録商標))が挙げられる。また、ベンゾジアゼピンも治療において使用される。しかしながら、患者のうちの40〜60%もの多くが、SRI療法に対して十分に応答せず、さらにより多くの割合の患者が、自身の症状の完全な軽快を経験していない。
【0147】
本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用してOCDを治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、治療は、OCDの進行を予防または減速することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、OCDに関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。ある特定の実施形態において、治療されるべき症状は、認知障害である。例えば、本開示の方法および組成物は、OCDにおける認知障害を治療するため、および/またはOCDを有する患者における認知機能を向上するために使用することができる。キンピロール感作ラットモデルが、OCDに関して開発されている。キンピロール感作ラットの強迫確認行動は、中断されやすく、これはOCD強迫行為に特徴的な属性である。OCD、またはOCDに関連する認知障害の治療における本発明の方法および組成物の有効性は、上で考察したような当技術分野において公知の様々な認知試験を使用して、このラットモデルおよびOCDについて開発された他の動物モデル、ならびにOCDを有するヒト被験体において評価することができる。
【0148】
物質嗜癖
物質嗜癖(例えば薬物の物質嗜癖、アルコールの物質嗜癖)は精神障害である。この物質嗜癖は、乱用物質に曝露された際に即座に誘起されるわけではない。むしろ、これには、数時間から数日間、数ヶ月間までの範囲の異なった時間経過で生じる、複数の複雑な神経適応が関与する(Kauer J. A.、Nat. Rev. Neurosci. 2007年、8巻、844〜858頁)。物質嗜癖への経路は一般に、1種または複数の規制物質、例えば麻薬、バルビツレート、メタンフェタミン、アルコール、ニコチン、および様々な他のこのような規制物質のうちのいずれかを自発的に使用することから始まる。規制物質を長期間使用すると、経時的に、規制物質を自発的に控える能力が、脳機能、したがって挙動に対する延長された使用の影響に起因して損なわれる。したがって、物質嗜癖は一般に、好ましくない結果に直面しても持続する、強迫性の物質の切望、希求および使用によって特徴付けられる。この切望は、患者の根底にある神経生物学における変化を表し得、これはおそらく、回復が得られるべきである場合に、有意義な方式で対処されるべき可能性が高い。また、物質嗜癖は多くの場合、禁断症状によっても特徴付けられ、これらの禁断症状は、一部の物質については生命を脅かし(例えばアルコール、バルビツレート)、他の物質においては実質的な病的状態(これには、吐き気、嘔吐、熱、眩暈感、および発汗過多が含まれ得る)、苦悩、ならびに回復を得る能力の減少をもたらし得る。例えば、アルコール依存としても公知であるアルコール中毒は、このような物質嗜癖の1つである。アルコール中毒は主として4つの症状によって特徴付けられ、これらには、切望、制御消失、身体依存および耐性が含まれる。これらの症状はまた、他の規制物質に対する物質嗜癖についても特徴付け得る。アルコールおよび他の規制物質に対する切望はしばしば、食物または水に対する必要性と同程度に強い。したがって、アルコール依存者は、家族、健康状態および/または法律上の重大な分岐点においても飲酒を続け得る。
【0149】
アルコール、中枢興奮薬、およびアヘン剤を乱用することの、中枢神経系(CNS)に対する影響を探求する最近の研究により、物質により誘発される認知機能障害を含む、精神健康に関する様々な悪影響が実証されている。Nyberg F.、Cognitive Impairments in Drug Addicts、第9章を参照されたい。いくつかの研究所および診療所において、脳機能の実質的な損傷が、これらの薬物からもたらされることが見出されている。脳に対するこれらの乱用性薬物の有害な影響の中でも、加速された退行に寄与するものが存在する。近年特別な注目を集めた観察は、慢性的な薬物使用者が、実行機能および記憶機能に関連する脳の領域において、顕著な機能障害を示しているというものである。アルコール、中枢興奮薬、およびアヘン剤などの依存性薬物によって引き起こされる顕著な神経適応は、海馬の顆粒細胞下帯(SGZ)における神経発生の低下を伴う。実際に、SGZにおける神経発生の成体での減少は、海馬の機能を、乱用行動を再発および維持するように寄与する方式で変更し得ることが提唱されている。これはまた、減少した神経発生が、これらの乱用性薬物によって惹起される認知障害に寄与し得る可能性を高める。
【0150】
本発明は、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物を使用して物質嗜癖を治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、治療は、物質嗜癖の進行を予防または減速することを含む。ある特定の実施形態において、治療は、物質嗜癖に関連する1種または複数の症状の緩和、好転、またはその進行の減速を含む。ある特定の実施形態において、治療されるべき症状は、認知機能障害である。例えば、本開示の方法および組成物は、物質嗜癖を有する患者における認知機能障害を治療するため、および/または認知機能を向上するために使用することができる。
【0151】
数種の動物モデルが、物質嗜癖を研究するために開発されている。例えば、遺伝的に選択されたMarchigian Sardinianのアルコールを好む(msP)ラットモデルが、アルコール中毒の神経生物学を研究するために開発された。Ciccocioppo R.ら、Substance addiction Biology 2006年、11巻、339〜355頁を参照されたい。また、物質嗜癖または物質嗜癖に関連する認知機能障害の治療における本発明の方法および組成物の有効性も、上で考察したような当技術分野において公知の様々な認知試験を使用して、物質嗜癖の動物モデルおよび物質嗜癖を有するヒト被験体において評価することができる。
【0152】
また、本発明の持続放出性組成物を投与する適切な方法は、例えば被験体の年齢、被験体が投与時に活発であるかもしくは不活発であるか、被験体が投与時に認知的に損なわれているかどうか、または機能障害の程度に左右されることになる。一部の実施形態において、本発明の持続放出性レベチラセタム組成物は、例えば経口摂取によって、被験体に対して経口投与される。一部の実施形態において、経口投与される組成物は、持続放出用のデバイスを使用して投与される。
【0153】
本明細書において記載される組成物および方法は、対処する適用にとって適切であるように適合および調節されてもよいこと、ならびに本明細書において記載される組成物および方法は、他の好適な適用において用いられてもよいこと、ならびにそのような他の付加および修正形態は、本発明の範囲から逸脱しないことが、当業者には理解されるであろう。
【0154】
本発明は、後続の実験的詳細からより良好に理解される。しかしながら、考察される具体的方法および結果は、その後に続く実施形態においてより完全に説明されるように、本発明を例証するに過ぎないことが、当業者には容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0155】
(実施例1:190mgのレベチラセタムを含む持続放出性組成物を作製するためのプロセス)
【表1】
表1に示されるように、190mgのレベチラセタムを含む3種類の持続放出性錠剤A、B、およびCを、
図1の流れ図に例示されるプロセスに従って製造する。
図9の流れ図に例示されるプロセスも使用することができる。簡潔に述べれば、微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)SMCC HD90(またはEncompress、無水リン酸二カルシウム)を、デアグロメレート(deagglomerate)#30U.S.メッシュふるいにかけた後、コロイド状二酸化ケイ素とともにブレンドする(16qtのVシェルブレンダー、75rev±5rev)。次いで、ブレンドした試料を、丸型1601インペラー(2A024Rスクリーン)にかける。また、190mgのレベチラセタムおよびヒプロメロース2208(Methocel(商標)K15M Premium CR)(またはMethocel(商標)K100M Premium CR)もデアグロメレート#30U.S.メッシュふるいにかけた後、粉砕した微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)HD90およびコロイド状二酸化ケイ素とともに、1立方フィートの傾斜円錐ブレンダーでブレンドする(250rev±5rev)。次いで、このブレンドした試料を、丸型1601インペラー(2A024Rスクリーン)にかけた後、ふるいにかけたステアリン酸マグネシウム(HyQual(登録商標))(デアグロメレート#30U.S.メッシュふるいにかけた)とともに、1立方フィートの傾斜円錐ブレンダーでブレンドする(125rev±5rev)。このブレンドした試料を、錠剤へと圧縮する。任意選択で、これらの錠剤はさらに、Opadry(登録商標)完全フィルムコーティング系などのヒプロメロース系(HPMC系)コーティングでフィルムコーティングされる。
【0156】
(実施例2:190mgのレベチラセタムを含む持続放出性組成物の溶解プロファイル)
下の表2は、表1の190mgレベチラセタム持続放出性錠剤Aに関する溶解プロファイルを示している。
【表2】
持続放出性錠剤Aを、0.1NのHCL中の様々なEtOH濃度に置いた場合でも、過量放出(dose dumping)は観察されない。
【0157】
(実施例3:220mgのレベチラセタムを含む持続放出性組成物を作製するためのプロセス)
【表3】
表3に示されるように、220mgのレベチラセタムを含む2種類の持続放出性錠剤DおよびEを、
図1の流れ図に例示されるプロセスに従って製造する。
図9の流れ図に例示されるプロセスも使用することができる。簡潔に述べれば、微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)SMCC HD90(またはEncompress、無水リン酸二カルシウム)を、デアグロメレート#30U.S.メッシュふるいにかけた後、コロイド状二酸化ケイ素とともにブレンドする(16qtのVシェルブレンダー、75rev±5rev)。次いで、ブレンドした試料を、丸型1601インペラー(2A024Rスクリーン)にかける。また、220mgのレベチラセタムおよびヒプロメロース2208(Methocel(商標)K15M Premium CR)(またはMethocel(商標)K100M Premium CR)もデアグロメレート#30U.S.メッシュふるいにかけた後、粉砕した微結晶ケイ化セルロースProSolv(商標)HD90およびコロイド状二酸化ケイ素とともに、1立方フィートの傾斜円錐ブレンダーでブレンドする(250rev±5rev)。次いで、このブレンドした試料を、丸型1601インペラー(2A024Rスクリーン)にかけた後、ふるいにかけたステアリン酸マグネシウム(HyQual(登録商標))(デアグロメレート#30U.S.メッシュふるいにかけた)とともに、1立方フィートの傾斜円錐ブレンダーでブレンドする(125rev±5rev)。このブレンドした試料を、錠剤へと圧縮する。任意選択で、これらの錠剤はさらに、Opadry(登録商標)完全フィルムコーティング系などのヒプロメロース系(HPMC系)コーティングでフィルムコーティングされる。
【0158】
(実施例4:220mgのレベチラセタムを含む持続放出性組成物の溶解プロファイル)
下の表4は、表3の220mgレベチラセタム持続放出性錠剤Dに関する溶解プロファイルを示している。
【表4】
持続放出性錠剤Dを、0.1NのHCL中の様々なEtOH濃度に置いた場合でも、過量放出は観察されない。
【0159】
(実施例5:イヌにおける薬物動態についての190mgレベチラセタムの持続放出性組成物の評価)
概要
この研究の目的は、オスのイヌにおけるレベチラセタム(190mg)の新規持続放出性製剤の経口投与後の薬物動態を調査するための試料を回収することである。表1に、本研究において利用した3種の製剤(190mg錠剤A、BおよびC)の説明が提供されている。
【0160】
動物
これらの研究では、Covance Stock colonyからの、30頭の非ナイーブであるオスの純血のビーグル犬を使用する。これらの動物は、用量投与前におよそ3日間研究条件に慣れさせる。投薬時、これらの動物の体重は8.4〜12.8kgであり、年齢は1〜2歳である。すべての動物は、順応中および試験期間中、Covance SOPに従う混合飼育(commingling)の期間中を除き、個別のステンレス鋼製ケージに収容する。別途用量投与について特定されない限り、認定されたHarlan Teklad 2021、21%プロテインのイヌ用食餌が自由に提供される。新鮮な水も毎日自由に提供される。動物室の環境調節は、温度を68〜79°F、相対湿度を50±20%、明暗サイクルを12時間/12時間に維持するように設定する。必要に応じて、12時間の暗サイクルは、研究手順に順応するように中断する。
【0161】
研究デザイン
本研究では、5つの群のイヌ(群当たりN=6)を利用する。即時放出性の250mgレベチラセタム(LEV IR)錠剤を、250mgの経口BIDレジメンとして投与する(総用量500)。持続放出性の500mgレベチラセタム錠剤(LEV XR)を、500mgの単回経口用量として投与する。錠剤A、BおよびCを、190mgの単回経口用量として投与する。血漿薬物動態試料を、用量前、用量の0.25、0.5、1、2、4、6、8、12、13(LEV IRのみ回収)、18、24、および48時間後に回収する。LEV IRに関して、12時間目の血液試料は、2回目の用量の投与の直前に回収する。
【表5】
【0162】
分析方法
試料分析を、Covance所有の汎用方法および類似の内部標準を使用して実施する。この方法は、研究において使用された特定の試験物質に関して適宜調整される。データ回収およびクロマトグラフィーの解釈はAnalystで実施し、研究で使用した実験室情報管理システム(LIMS)はWatsonである。
【0163】
吸収および血漿中レベル
LEV IR対LEV XR:LEV IRは、250mgの経口BIDレジメンとして投与される(1日の総用量500mg)。LEV XRは、500mgの単回経口用量として投与される。平均血漿中C
maxおよびAUC
0−infに基づけば、レベチラセタムに対するイヌの全体的な曝露は、両方の製剤で同様である(
図2、表6)。血漿T
maxは、XR製剤(範囲は2.00〜4.00時間、平均は3.33時間)よりもIR製剤(範囲は0.25〜2.00時間、平均は1.00時間)の方が早い。血漿中のレベチラセタムの見かけの消失半減期は、LEV IRおよびLEV XR製剤に関して、それぞれ平均で、3.50±0.273時間および4.23±0.590時間である。
【0164】
190mg錠剤A、BおよびC:表1の190mg錠剤A、BおよびCは、190mgの単回経口用量として投与される。レベチラセタムに対する最高の曝露は、錠剤Aによって達成され(
図2、表6)、血漿中C
maxおよびAUC
0−infは、それぞれ平均で、8650±1440ng/mLおよび90000±27200ng・h/mLであった。血漿T
maxは概して、2.00〜4.00時間の範囲である。血漿中のレベチラセタムの見かけの消失半減期は、平均で4.15±1.26時間である。
【表6】
【0165】
イヌにおけるレベチラセタムの最高の全体的な曝露は、LEV XRおよびLEV IR製剤によって達成される。190mg錠剤A、BおよびCの中でも、イヌにおけるレベチラセタムの最高の全体的な曝露は、190mg錠剤Aによって達成される。用量調整した平均血漿中C
maxおよびAUC
0−infの値に基づけば、190mg錠剤Aによって達成されるレベチラセタムの曝露は、それぞれ、LEV XR製剤によって達成された曝露のおよそ69%および88%であり、それぞれ、LEV IR製剤によって達成された曝露の80%および91%である。
【0166】
(実施例6:イヌにおける薬物動態についてのレベチラセタム220mgの持続放出性組成物の評価)
概要
この研究の目的は、オスのイヌにおけるレベチラセタム(220mg)の新規持続放出性製剤の経口投与後の薬物動態を調査するための試料を回収することである。表3に、本研究において利用した2種の製剤(220mg錠剤DおよびE)の説明が提供されている。
【0167】
動物
これらの研究では、Covance Stock colonyからの、18頭の非ナイーブであるオスの純血のビーグル犬を使用する。これらの動物は、用量投与前におよそ3日間研究条件に慣れさせる。投薬時、これらの動物の体重は7.6〜11.7kgであり、年齢はおよそ1歳である。すべての動物は、順応中および試験期間中、Covance SOPに従う混合飼育の期間中を除き、個別のステンレス鋼製ケージに収容する。別途用量投与について特定されない限り、認定されたHarlan Teklad 2021、21%プロテインのイヌ用食餌が自由に提供される。新鮮な水も毎日自由に提供される。動物室の環境調節は、温度を68〜79°F、相対湿度を50±20%、明暗サイクルを12時間/12時間に維持するように設定する。必要に応じて、12時間の暗サイクルは、研究手順に順応するように中断する。
【0168】
研究デザイン
本研究では、3つの群のイヌ(群当たりN=6)を利用する。LEV XRを、500mgの単回経口用量として投与する。220mg錠剤DおよびEを、220mgの単回経口用量として投与する。血漿薬物動態試料を、用量前(すなわち0時間)、用量の0.25、0.5、1、2、4、6、8、12、18、24、および48時間後に回収する。表7を参照されたい。
【表7】
【0169】
分析方法
試料分析を、Covance所有の汎用方法および類似の内部標準を使用して実施する。この方法は、研究において使用された特定の試験物質に関して適宜調整される。データ回収およびクロマトグラフィーの解釈はAnalystで実施し、研究で使用した実験室情報管理システム(LIMS)はWatsonである。
【0170】
吸収および血漿中レベル
LEV−XRは、500mgの単回経口錠剤の用量として投与される。220mg錠剤DおよびEは各々、220mgの単回経口錠剤の用量として投与される。用量調整した平均血漿中C
maxおよびAUC
0−tに基づけば、レベチラセタムに対するイヌの全体的な曝露は、LEV−XRおよび220mg錠剤D製剤で同様である(
図3、表8)。
【0171】
LEV XR対220mg錠剤
220mg錠剤Dの血漿中C
maxおよびAUC
0−infは、それぞれ平均で、10900±2540ng/mLおよび110000±23000ng・h/mLである。血漿T
maxは概して、2.00〜6.00時間の範囲である。血漿中のレベチラセタムの見かけの消失半減期は、平均で4.41±0.06時間である。用量調整した平均血漿中C
maxの値は、LEV−XRおよび220mg錠剤Dに関してそれぞれ、46.6±7.37および49.3±11.5ng/mLである。用量調整した血漿中AUC
0−tの値は、LEV−XRおよび220mg錠剤Dに関してそれぞれ、452±67.2および499±104ng・h/mLである。
【0172】
血漿T
maxは、LEV XRおよび220mg錠剤Dについて同様である(LEV−XR:範囲は1.0〜3.6時間、平均は1.6時間、220mg錠剤D:範囲は2.0〜6.0時間、平均は2.7時間)。血漿中のレベチラセタムの見かけの消失半減期は、LEV−XRおよび220mg錠剤D製剤に関して、それぞれ平均で、5.16±1.44時間および4.41±0.614時間である。
【表8】
【0173】
用量調整した平均血漿中C
maxおよびAUC
0−tの値に基づけば、220mg錠剤D製剤によって達成されるレベチラセタムの曝露は、それぞれ、LEV−XR製剤によって達成された曝露のおよそ107%および110%である。
【0174】
(実施例7:190mgおよび220mgレベチラセタムの持続放出性組成物の第I相食物効果研究)
この実施例は、2種の持続放出性レベチラセタム製剤、すなわち表1の190mg錠剤Aおよび表3の220mg錠剤Dについての、2つの群、単回用量、2つの期間、双方向交差(two−way crossover)の食物効果研究について記載する。
【0175】
目的
この研究の目的は、2種の持続放出性レベチラセタム製剤、すなわち表1の190mg錠剤Aおよび表3の220mg錠剤Dの吸収の速度および程度に対する食物の影響を評価することである。
【0176】
定常状態の製剤の目標:好ましい範囲目標:2.9から4.4μg/mLの間は、aMCIの第II相ヒト研究に基づいて確立される。許容範囲目標:1.9から4.4μg/mLの間は、老いた障害性(AI)ラットおよびaMCIの第II相ヒト研究に基づいて確立される。
図6を参照されたい。
【0177】
研究デザイン
これは、非盲検、無作為化、2つの群、単回用量、2つの期間、交差の食物効果研究である。56人の健康な被験体が登録される。スクリーニングプロセスを成功裏に完了した被験体は、最初の用量の前の晩に研究センターでチェックインする。服用の朝に、組み入れ/除外基準を満たし続けている被験体には、必要とされるスクリーニングプロセスおよび手順を成功裏に完了した順序に基づいて、被験体番号が割り振られる。投薬日は、少なくとも7日間の休薬期間だけ離される。
【0178】
被験体は、2つの群のうちの一方に無作為に割り振られる。
群1:表1の持続放出性錠剤A(190mg)を受容する被験体(n=28)
治療A: 錠剤A
用量=1×190mg錠剤、絶食条件下で経口投与
治療B: 錠剤A
用量=1×190mg錠剤、摂食条件下で経口投与
群2:表3の持続放出性錠剤D(220mg)を受容する被験体(n=28)
治療A: 錠剤D
用量=1×220mg錠剤、絶食条件下で経口投与
治療B: 錠剤D
用量=1×220mg錠剤、摂食条件下で経口投与
【0179】
摂食治療:少なくとも10時間の1晩の絶食の後、被験体は、食品医薬品局(FDA)標準の高カロリーかつ高脂肪の朝食の消費を始め、30分後に研究薬物が投与された。
【0180】
絶食治療:被験体は、少なくとも10時間の1晩の絶食の後、投薬される。
【0181】
各薬物投与は、少なくとも7日間の休薬期間だけ離される。
【0182】
各用量は、およそ240mL(8液量オンス)の室温の水とともに経口投与される。投薬後は、用量の4時間後までは食物は許されない。用量とともに提供された240mLの室温の水を除き、用量の1時間前から1時間後まで、一切の水は消費されない可能性がある。水の消費については、セクション5.4.2のガイドラインに従った。各研究期間について、摂食治療期間中に提供されたFDA標準の高カロリーかつ高脂肪の朝食を除き、食事は同じであり、用量に対してほぼ同じ時間に計画される。
【0183】
研究から離脱した被験体については、置き換えない。
【0184】
臨床手順の概要
各試験期間中、各投薬前、および各用量の後、用量後24時間までの選択された時間において、6mLの血液試料を得る。各被験体からは、各試験期間において17の試料が、合計で34の薬物動態血液試料が回収されることになる。加えて、スクリーニングおよび研究終了時に、臨床検査用に血液が抜かれ、尿が回収される。
【0185】
各試験期間において、被験体は、計画された服用の前の晩に研究ユニットに入れられる。被験体は、各研究期間中、24時間の採血および他の研究手順が完了するまで、研究センターに拘束される。
【0186】
薬物動態分析用試料を回収するための手順
血液試料(1×6mL)は、K
2−EDTAを保存料として含有するバキュテナー管に、用量前(0時間)、ならびに投薬の1.0、2.0、3.0、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、8.0、9.0、10、12、18、および24時間後に回収する。
【0187】
生物分析の概要
血漿試料は、検証済みのLC−MS−MS手順を使用して、レベチラセタムについて分析する。この方法は、0.200mLのヒトEDTA血漿の分析に基づいて、レベチラセタムについて、0.0500〜30.0μg/mLの範囲に関しては検証済みである。データは、Watson実験室情報管理システム(LIMS:バージョン7.2.0.03、Thermo Fisher Scientific)に保存する。
【0188】
薬物動態分析
データを、WinNonlinにおいて非コンパートメント方法で分析する。定量限界未満(BLQ)の濃度時間データは、データ要約および記述統計においてはゼロとして扱う。薬物動態分析において、BLQの濃度は、ゼロ時から最初の定量可能な濃度が観察される時間までゼロとして扱われ、埋没した、かつ/または終末のBLQ濃度は、「欠測」として扱われる。実際の試料時間が、すべての薬物動態分析および統計的分析について使用される。
【0189】
以下の薬物動態パラメーター:血漿中ピーク濃度(C
max)、ピーク濃度までの時間(T
max)、消失速度定数(λ
z)、終末相半減期(T
1/2)、ゼロ時から最後の定量可能な濃度が観察される時間までの濃度−時間曲線下面積(AUC
last)、および無限大まで外挿されたゼロ時からの血漿濃度時間曲線下面積(AUC
inf)について計算する。加えて、C
max、AUC
last、およびAUC
infについては用量に関して正規化する。
【0190】
分散分析(ANOVA)および有意性レベル5%でのSchuirmannの両側t検定手順を、対数変換した薬物動態曝露パラメーター、C
max、AUC
last、およびAUC
infに対して適用する。幾何平均の比(試験/参照)についての90%信頼区間を計算する。対数変換されたパラメーターの下側および上側の信頼区間が80%〜125%内である場合、食物効果の欠如が示される(190mg錠剤A摂食対190mg錠剤A絶食、220mg錠剤D摂食対220mg錠剤D絶食)。加えて、用量に関して正規化したC
max、AUC
last、およびAUC
infを、絶食条件および摂食条件内で比較して、用量比例性(dose−proportionality)を決定する。用量に関して正規化され、対数変換されたパラメーターの下側および上側の信頼区間が80%〜125%内である場合、用量比例性が結論付けられる(220mg錠剤D絶食対190mg錠剤A絶食、220mg錠剤D摂食対190mg錠剤A摂食)。
【0191】
結果
群1の55人の被験体および群2の54人の被験体からのデータが、薬物動態分析および統計的分析に含まれている。平均濃度−時間データは、表9および10、ならびに
図4および5に示されている。薬物動態分析および統計的分析の結果は、下の表9〜15に示されている。
【0192】
結論
食物効果:
対数変換した曝露パラメーター、C
max、AUC
last、およびAUC
infについての90%信頼区間は、190mgおよび220mgの用量に関して、80%〜125%の範囲内である。食物の存在が、190mgおよび220mgのレベチラセタムの用量の薬物動態を変えることはない。
【0193】
用量比例性:
用量に関して正規化して、対数変換した曝露パラメーター、C
max/D、AUC
last/D、およびAUC
inf/Dについての90%信頼区間は、摂食条件および絶食条件に関して、80%〜125%の範囲内である。C
max/D、AUC
last/D、およびAUC
inf/Dによって測定されるレベチラセタムの曝露は、190mg(錠剤A)から220mg(錠剤D)へと比例的に増加している。
【0194】
定常状態モデリング
190mg錠剤AのPKプロファイルの定常状態モデリングによれば、この錠剤は、許容範囲目標、すなわち1.9から4.4μg/mlの間を満たしている。
図7を参照されたい。
【0195】
220mg錠剤DのPKプロファイルの定常状態モデリングによれば、この錠剤は、好ましい範囲目標、すなわち2.9から4.4μg/mlの間を満たしている。
図8を参照されたい。
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】