(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の電解コンデンサにおいて、経年使用により封口体が劣化すると、ケース内の気密性が低下し、電解液の漏れ等によって電解コンデンサの特性が低下して電解コンデンサの寿命が短くなる。このため、封口体の劣化を抑制することにより、電解コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0006】
封口体には金型による成形時にパーティングラインが形成されるため、サンドブラスト等によってパーティングラインが除去処理される。この時、パーティングラインの除去跡には多数の微細な亀裂が生じる。
【0007】
発明者らはパーティングラインの除去跡上の亀裂が封口体の劣化を促進することを見出し、亀裂による封口体の劣化を防止して電解コンデンサの寿命を著しく向上できる本発明に到達したものである。
【0008】
即ち、パーティングラインを除去処理した面をケースの外側に面して封口体が配されると、除去跡上の亀裂が常時大気に触れる。これにより、亀裂を起点として封口体の劣化が急激に進行し、ケース内の気密性が低下する。このため、電解コンデンサの寿命が短くなり、電解コンデンサの信頼性が低下する問題があった。
【0009】
本発明
は、信頼性を向上できる電解コンデン
サを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、弾性材料の成形品により板状に形成されるとともに厚み方向に対向する表面と裏面との間を貫通す
る貫通孔を設け
た封口体と、前記貫通孔に挿通されるリード端子を延出したコンデンサ素子と、一端に開口部を有して前記コンデンサ素子を収容するケースとを備え、前記封口体により前記開口部が封口される電解コンデンサにおいて、
前記封口体は、パーティングラインの除去跡が前記表面上に形成されるとともに
、前記裏面上には
前記パーティングラインの前記除去跡が非形成であり、前記表面と前記裏面とを識別する識別部を設け
られ、前記表面を前記ケースの内側に向けて配されることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の電解コンデン
サにおいて、前記識別部を前記裏面に設けたことを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の電解コンデン
サにおいて、前記識別部が前記裏面から突出する突出部から成り、前記突出部上に前記貫通孔が開口することを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成の電解コンデン
サにおいて、前記突出部上に前記貫通孔と前記突出部の外縁とを連結する溝部を凹設したことを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の電解コンデン
サにおいて、前記貫通孔を複数備え、各前記貫通孔に対応する各前記溝部が異なる方向に延びることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明
の電解コンデンサによる
と、封口体がパーティングラインの除去跡を表面上に形成され、裏面上に非形成になっている。電解コンデンサ用封口体の表面をケースの内側に向けてケースの開口部を封口することにより、除去跡上の亀裂が大気に触れないため電解コンデンサ用封口体の劣化を低減できる。従って、電解コンデンサの長寿命化を図り、信頼性を向上することができる。ま
た、封口体が識別部を備えるた
め、封口体の裏面をケースの内側に向けて配した誤装着を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1及び
図2は一実施形態の電解コンデンサ1を上方から見た斜視図及び下方から見た斜視図を示している。また、
図3は電解コンデンサ1の正面断面図を示している。
【0030】
電解コンデンサ1はコンデンサ本体2と座板6とを備えている。座板6は合成樹脂により形成され、コンデンサ本体2を保持する。座板6には一対の貫通孔6a及び貫通孔6bが設けられる。後述するコンデンサ本体2に設けられたリード端子7、8は貫通孔6a、6bに挿通して折曲され、回路基板に半田付けされる端子部7a、8aが形成される。
【0031】
コンデンサ本体2はコンデンサ素子4、ケース3及び封口体10を備えている。ケース3はアルミニウム等の金属により、一端に開口部3aを開口した断面円形の有底筒状に形成される。
【0032】
コンデンサ素子4はセパレータを介して対向する帯状の陽極箔及び陰極箔(いずれも不図示)を巻回して円柱状に形成され、ケース3内に収納される。コンデンサ素子4には陽極箔に取り付けられるリード端子7及び陰極箔に取り付けられるリード端子8が延出される。また、ケース3内には電解液(不図示)が充填されている。陽極箔と陰極箔との間に導電性高分子を配してもよい。
【0033】
図4、
図5、
図6、
図7は封口体10の正面図、側面図、上面図及び底面図を示している。また、
図8は封口体10の正面断面図を示している。封口体10はゴム等の弾性材料の成形品により円板状に形成され、ケース3の開口部3aを封口する。封口体10にはリード端子7、8(
図3参照)挿通用の一対の貫通孔17及び貫通孔18が設けられる。貫通孔17及び貫通孔18は封口体10の厚み方向に対向する表面10a及び裏面10bの間を貫通し、厚み方向に直交する方向に所定間隔で配される。
【0034】
表面10a上の貫通孔17及び貫通孔18の周縁には後述する成形加工時のパーティングラインを除去した除去跡17a及び除去跡18aが形成される。裏面10b上にはパーティングラインの除去跡が非形成になっている。
【0035】
また、裏面10b上には下方に突出する突出部11が設けられる。突出部11により表面10aと裏面10bとを識別する識別部が構成される。貫通孔17及び貫通孔18は突出部11上に配される。また、突出部11上には貫通孔17と突出部11の外縁とを連結する溝部12及び貫通孔18と突出部11の外縁とを連結する溝部13が凹設される。貫通孔17から溝部12が延びる方向と、貫通孔18から溝部13が延びる方向とは異なっている。
【0036】
上記構成の封口体10は封口体成形工程、パーティングライン処理工程を順に行って形成される。
図9は封口体成形工程を示す正面断面図である。封口体成形工程では上方を開口する有底筒状の下金型31(第1金型)と、下金型31の内周面に嵌合する上金型32(第2金型)とにより成形加工が行われる。下金型31の内底面には一対のピン31aが植設される。上金型32にはピン31aが嵌合する一対の凹部32aが形成される。
【0037】
下金型31と上金型32との間には封口体10を形成するゴム等の弾性材料が配置される。凹部32aの底面にピン31aの上端が当接するまで下金型31を上昇させると弾性材料が圧縮され、封口体10が成形される。この時、一対のピン31aにより貫通孔17及び貫通孔18が形成される。封口体10の表面10aは上金型32に接し、上金型32の成形面が転写される。また、封口体の裏面10b及び周面10cは下金型31に接し、下金型31の成形面が転写される。
【0038】
封口体成形工程ではピン31aと凹部32aとの隙間によって、封口体10の表面10a上の貫通孔17及び貫通孔18の周縁にパーティングラインが形成される。この時、封口体10の裏面10b上にはパーティングラインが非形成になっている。
【0039】
パーティングラインが薄片状のバリになると、貫通孔17、18とリード端子7、8との間にバリが挟まった際に貫通孔17、18とリード端子7、8との密着性が悪くなる。このため、パーティングライン処理工程において、表面10a上の貫通孔17及び貫通孔18の周縁の面取りによってパーティングラインを除去処理する。
【0040】
これにより、表面10aは貫通孔17、18の周縁にパーティングラインの除去跡17a、18aがそれぞれ形成されたパーティングライン処理面になっている。裏面10b上にはパーティングラインが非形成のため、裏面10bはパーティングラインの除去跡が非形成のパーティングライン非処理面になっている。
【0041】
パーティングラインの除去処理は例えば、サンドブラストにより貫通孔17及び貫通孔18の周縁に面取りを形成する。貫通孔17及び貫通孔18の周縁の面取りをボール盤による切削加工等により形成してもよい。
【0042】
また、表面10a上の貫通孔17、18の周縁の座グリにより除去跡17a及び除去跡18aを形成してもよい。貫通孔17、18の周縁の座グリは上記と同様にサンドブラスト、切削加工等により形成することができる。
【0043】
また、パーティングライン処理工程で遊離砥粒やサンドブラストによる研磨加工、砥石による研削加工、旋盤による切削加工等によって表面10aの全面を削ってもよい。この時、パーティングラインの除去跡は成形面から成る裏面10bと異なる面粗さの面により表面10a全体に形成される。
【0044】
本実施形態では、下金型31の内周面と上金型32の外周面との隙間をピン31aと凹部32aとの隙間に比して十分小さく形成できる。このため、封口体10の外周縁上ではパーティングラインが殆ど形成されず、パーティングラインの除去処理を行っていない。封口体10の外周縁にパーティングラインが形成される場合には、表面10aにパーティングラインを配してパーティングラインの除去処理を行ってもよい。
【0045】
また、封口体10の周面10cの上部は後述するように大気に触れないため、周面10c上にパーティングラインを配してパーティングラインの除去処理を行ってもよい。
【0046】
電解コンデンサ1は封口工程、組立工程を順に行って形成される。封口工程ではケース3にコンデンサ素子4を収納して電解液を充填し、開口部3aから挿入した封口体10がコンデンサ素子4上に配される。この時、封口体10の表面10aがケース3の内側に向けて配され、貫通孔17、18にそれぞれリード端子7、8が圧入して挿通される。突出部11が設けられるため、封口体10の表面10aと裏面10bとを目視やカメラ等によって容易に識別できる。このため、裏面10bをケース3の内側に向けて配した封口体10の誤装着を防止することができる。
【0047】
ケース3は封口体10の周面10cに対向する領域を径方向内側に押圧して絞られ、周方向全周に延びる環状凹部3bを形成される。また、ケース3の開口部3aの周縁を折り返した折返し部3cが突出部11の外周側に形成される。これにより、開口部3aが封口され、コンデンサ本体2が形成される。
【0048】
リード端子7、8は圧入により貫通孔17、18の内面に密着し、環状凹部3bの内面は絞りにより封口体10の周面10cに密着する。これにより、ケース3内が気密に形成される。
【0049】
また、リード端子7、8の圧入により貫通孔17、18が押し広げられ、環状凹部3bにより封口体10の周面10cが押圧されるため、封口体10が弾性変形する。この時、封口体10を形成する弾性材料が溝部12、13内に押し出され、封口体10の表面10a及び裏面10bの平面性の低下を抑制することができる。このため、コンデンサ素子4上に配される封口体10を環状凹部3bに対して軸方向(上下方向)の所定位置に精度よく配置することができる。従って、ケース3内の気密性を向上することができる。
【0050】
また、折返し部3cが突出部11の外周側に配されるため、コンデンサ本体2を高くすることなく突出部11上の貫通孔17及び貫通孔18を長く形成できる。このため、貫通孔17、18とリード端子7、8との密着面積を大きくすることができ、ケース3内の気密性を向上することができる。
【0051】
図10の上面拡大図に示すように、表面10aのパーティングラインの除去跡17a、18a上には多数の微細な亀裂20が形成される。
【0052】
貫通孔17、18にはリード端子7、8が挿入され、両者が貫通孔17、18内で密着することがケース3内の気密保持には重要なことである。貫通孔17、18につながる部分(除去跡17a、18a)に存在する亀裂20が大気に触れると貫通孔17、18内へと侵入して封口体10の劣化が急激に進行し、やがては亀裂20が貫通孔17、18の長さ方向全体へと延びる。その結果として、電解液漏れ状態を引き起こしてしまう。
【0053】
このため、亀裂20をケース3内に入れて大気への露出を防ぐことが重要である。そこで、この貫通孔17、18の開口縁部分の除去跡17a、18aをケース3内に配するために、表面10aをケース3の内側に向けて封口体10を装着している。これにより、表面10aの亀裂20による封口体10の劣化の進行速度を極めて遅くすることができる。
【0054】
また、周面10c上にパーティングラインの除去跡が形成された場合も同様に、亀裂20による封口体10の劣化の進行速度を極めて遅くすることができる。
【0055】
組立工程では座板6の貫通孔6a、6bにそれぞれリード端子7、8が挿通され、座板6の底面6c上でリード端子7、8が折曲される。これにより、コンデンサ本体2が座板6により保持され、端子部7a、8aが形成される。
【0056】
本実施形態の電解コンデンサ1について、温度が150℃の環境下でリード端子7及びリード端子8の間に50ボルトの電圧を印加する耐久試験を行った。また、比較例として封口体10の裏面10b上にパーティングラインを配してパーティングラインの除去処理を行った電解コンデンサについて同様に耐久試験を行った。
【0057】
その結果、静電容量が初期の70%に低下するまでの時間が本実施形態では約4000時間であるのに対して比較例では約3000時間であり、1.3倍以上長くなった。
【0058】
本実施形態によると、封口体10がパーティングラインの除去跡17a、18aを表面10a上に形成され、裏面10b上に非形成になっている。封口体10の表面10aをケース3の内側に向けてケース3の開口部3aを封口することにより、除去跡17a、18a上の亀裂20が大気に触れないため封口体10の劣化を低減できる。従って、電解コンデンサ1の長寿命化を図り、信頼性を向上することができる。また、封口体10が突出部11から成る識別部を備えるため、封口体10の裏面10bをケース3の内側に向けて配した誤装着を防止することができる。
【0059】
また、突出部11により封口体10の表面10aと裏面10bとを識別する識別部を容易に実現することができる。加えて、突出部11上に貫通孔17、18が開口するため、貫通孔17、18を長く形成できる。従って、貫通孔17、18とリード端子7、8との密着面積を大きくしてケース3内の気密性を向上することができる。
【0060】
尚、封口体10の表面10a、裏面10b及び周面10cのいずれかに成形や印刷等による他の目印により表面10aと裏面10bとを識別する識別部を形成してもよい。しかし、表面10aや周面10cに識別部を設けるとパーティングラインの除去処理を行う際に識別部が削られて不鮮明になる場合がある。このため、本実施形態のように裏面10b上に識別部を設けるとより望ましい。
【0061】
また、突出部11上に貫通孔17、18と突出部11の外縁とを連結する溝部12、13を凹設したので、封口体10を形成する弾性材料が弾性変形により溝部12、13に押し出される。これにより、封口体10の表面10aの平面性の劣化が抑制され、ケース3内の気密性を向上することができる。
【0062】
また、溝部12及び溝部13がそれぞれ貫通孔17及び貫通孔18から異なる方向に延びる。これにより、リード端子7、8により押し広げられる貫通孔17、18の周囲の弾性材料がそれぞれ異なる方向に配される溝部12、13に押し出される。従って、封口体10の表面10aの平面性の劣化を更に抑制することができる。
【0063】
また、パーティングラインの除去跡17a、18aが貫通孔17、18の周縁の面取りまたは座グリにより形成されるので、パーティングラインを容易に除去処理することができる。
【0064】
また、開口部3aの周縁が突出部11の外周側に折り返されているので、コンデンサ本体2を高くすることなく貫通孔17、18を長く形成してケース3内の気密性を向上できる。
【0065】
また、封口体10を成形する封口体成形工程でパーティングラインを表面10a上に形成して裏面10b上に非形成にしている。パーティングライン処理工程では表面10a上のパーティングラインが除去処理される。これにより、封口工程で封口体10の表面10aをケース3の内側に向けてケース3の開口部3aを封口することにより、除去跡17a、18a上の亀裂20が大気に触れないため封口体10の劣化を低減できる。このため、電解コンデンサ1の長寿命化を図り、信頼性を向上することができる。また、封口体成形工程により突出部11から成る識別部を形成するため、封口体10の裏面10bをケース3の内側に向けて配した誤装着を防止することができる。
【0066】
また、封口体成形工程が封口体10の裏面10bに接する下金型31(第1金型)と、表面10aに接する上金型32(第2金型)とにより成形を行う。下金型31は貫通孔17、18を形成するピン31aを有し、上金型32はピン31aに嵌合する凹部32aを有する。これにより、表面10aにパーティングラインを配した封口体10を容易に成形することができる。
【0067】
また、パーティングライン処理工程が、貫通孔17、18の周縁に面取りまたは座グリを形成するので、パーティングラインを容易に除去処理することができる。