特許第6899102号(P6899102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンブルーエナジーの特許一覧

<>
  • 特許6899102-バイオマスのガス化装置 図000006
  • 特許6899102-バイオマスのガス化装置 図000007
  • 特許6899102-バイオマスのガス化装置 図000008
  • 特許6899102-バイオマスのガス化装置 図000009
  • 特許6899102-バイオマスのガス化装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899102
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】バイオマスのガス化装置
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/12 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   C10J3/12
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-191607(P2017-191607)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-65160(P2019-65160A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年8月11日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502229565
【氏名又は名称】株式会社ジャパンブルーエナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100113033
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 精孝
(72)【発明者】
【氏名】堂脇 直城
(72)【発明者】
【氏名】上内 恒
(72)【発明者】
【氏名】亀山 光男
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−528222(JP,A)
【文献】 特開2015−178578(JP,A)
【文献】 特開2002−210444(JP,A)
【文献】 特開2011−144329(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/172301(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/203587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス供給口、並びに、非酸化性ガス供給口及び/又はスチーム吹込み口を備えるバイオマス熱分解器と、スチーム吹込み口及び改質ガス排出口を備える熱分解ガス改質器と、上記バイオマス熱分解器において発生した熱分解ガスを上記熱分解ガス改質器へと導入する、上記バイオマス熱分解器と上記熱分解ガス改質器との間に備えられた熱分解ガス導入管とを備え、かつ、上記バイオマス熱分解器が、更に、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物の導入口及び排出口を備え、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の持つ熱により、バイオマスの熱分解を実行し、一方、上記熱分解ガス改質器が、バイオマスの熱分解により発生した熱分解ガスのスチーム改質を実行するバイオマスのガス化装置において、上記熱分解ガス改質器が、更に、空気又は酸素吹込み口を備え、該空気又は酸素により、バイオマスの熱分解により発生した熱分解ガスを部分燃焼しつつ、スチーム改質を実行し、かつ、上記熱分解ガス導入管が、上記バイオマス熱分解器内に形成される、上記複数の粒状物及び/又は塊状物層の上面より下方の上記バイオマス熱分解器の側面に備えられており、かつ、上記熱分解ガス導入管が、その内部に上記複数の粒状物及び/又は塊状物を保有していることを特徴とするバイオマスのガス化装置。
【請求項2】
上記熱分解ガス導入管が、上記バイオマス熱分解器と上記熱分解ガス改質器との間において重力方向に対して略水平に備えられている、請求項1記載のバイオマスのガス化装置。
【請求項3】
上記熱分解ガス導入管の内部底面が、上方に向って突出した構造を有している、請求項1又は2記載のバイオマスのガス化装置。
【請求項4】
上記熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側へと傾斜を備えて上方に向って突出した構造を有している、請求項1〜3のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置。
【請求項5】
上記熱分解ガス導入管の長手方向に垂直な断面の外形が略四角形である、請求項1〜4のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置。
【請求項6】
上記熱分解ガス導入管が、1又は2本備えられている、請求項1〜5のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置。
【請求項7】
上記熱分解ガス改質器が加熱装置を備えない、請求項1〜のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置。
【請求項8】
上記バイオマスが、乾燥基準で5.0質量%以上の灰分を含む高灰分バイオマスである、請求項1〜のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置。
【請求項9】
バイオマスを、非酸化性ガス雰囲気下又は非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気下において加熱するバイオマス熱分解器と、上記バイオマス熱分解器において発生したガスを、スチームの存在下に改質する熱分解ガス改質器とを備え、かつ、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物を、上記バイオマス熱分解器に投入せしめて、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の持つ熱により、バイオマスの熱分解を実行し、次いで、該バイオマスの熱分解により発生した熱分解ガスを、上記熱分解ガス改質器に導入して、該熱分解ガスのスチーム改質を実行するバイオマスのガス化方法において、上記バイオマスの熱分解により発生した熱分解ガスが、上記バイオマス熱分解器内に形成される、上記複数の粒状物及び/又は塊状物層の上面より下方の上記バイオマス熱分解器の側面に備えられ、かつ、その内部に上記複数の粒状物及び/又は塊状物を保有している熱分解ガス導入管を通って、上記熱分解ガス改質器に導入され、次いで、該熱分解ガス改質器に、別途、導入された空気又は酸素により、上記の導入された熱分解ガスが、部分酸化されると同時に、上記空気又は酸素と同時に導入されたスチームにより改質されることを特徴とするバイオマスのガス化方法。
【請求項10】
上記熱分解ガス導入管が、上記バイオマス熱分解器と上記熱分解ガス改質器との間において重力方向に対して略水平に備えられている、請求項記載のバイオマスのガス化方法。
【請求項11】
上記熱分解ガス導入管の内部底面が、上方に向って突出した構造を有している、請求項又は10記載のバイオマスのガス化方法。
【請求項12】
上記熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側へと傾斜を備えて上方に向って突出した構造を有している、請求項11のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法。
【請求項13】
上記バイオマスが、乾燥基準で5.0質量%以上の灰分を含む高灰分バイオマスである、請求項12のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスのガス化装置に関し、更に詳しくは、バイオマス、好ましくは、比較的灰分含有量の高いバイオマスを熱分解するバイオマス熱分解器と、上記バイオマス熱分解器において発生した熱分解ガスを、酸素又は空気及びスチームと混合して、部分燃焼及び改質する熱分解ガス改質器とを備える、バイオマスのガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日に発生した東日本大震災後に再生可能エネルギー及び分散型エネルギー供給施設が見直され、太陽光発電、風力発電、地熱発電、水力発電、潮力発電、バイオマス発電等の再生可能エネルギーによる発電設備が注目されている。また、最近では、再生可能エネルギーで発電した電力を使用する、水の電気分解による水素製造にも注目が高まってきた。
【0003】
再生可能エネルギーのうち、太陽光発電、風力発電及び潮力発電は、一時的な電力供給源として期待されてはいるものの、発電量が安定しないことから、安定した電力供給設備としては期待できない。また、水力発電及び潮力発電は、小規模設備であればある程度の需要が見込まれるが、大規模設備を建設するためには設置場所が限定されるという問題がある。
【0004】
一方、木材、下水汚泥、家畜排せつ物等のバイオマスは、日本国内に均一に存在する。なかでも、下水汚泥、家畜排せつ物は季節変動が少なく継続的に発生するため、安定したバイオマス原料と考えられる。特に、下水汚泥の発生量は、約215万トン(乾燥重量基準、2015年の発生量、国土交通省資料より)であり、そのうち75重量%は未利用であるので、有効利用することが期待されている。
【0005】
しかしながら、下水汚泥には窒素、リン、カリウム及びその他の無機物、並びに、雨水に由来する土壌等が混入するため、灰分が多くて燃え難く、しかも、熱量が低いので、焼却処理をする際に焼却効率が低いという欠点がある。また、燃焼時に窒素由来のNOが発生する。このNOの温暖化係数は、COの298倍(2013年以降、NOの温暖化係数は、COの温暖化係数の310倍から298倍に変更された。環境省資料より)であり、NOの発生を抑えるには850℃以上の高温で燃焼させなければならない。一方、リンは、燃焼されることにより五酸化二リンになる。この五酸化二リンは、昇華性が高く、また潮解性もあるため、配管の低温部で閉塞作用を起こすことが知られている。五酸化二リン以外にカリウムも配管の閉塞及び腐食を促進することが知られている。そのため、下水汚泥を燃焼する場合には、NO及び五酸化二リンの発生を抑制しつつ、五酸化二リン及びカリウムの揮散を抑制する条件下で、燃焼又は加熱処理を行う必要がある。
【0006】
高灰分バイオマスのガス化装置には、例えば、灰分20重量%の下水汚泥を乾燥した後、空気吹き込み式の流動層式熱分解炉にて500〜800℃で熱分解し、その熱分解ガスを空気と共に1,000〜1,250℃の高温で燃焼させ、その熱で水蒸気を発生させてタービン発電を行う方法が提案されている(特許文献1)。この方法によれば、下水汚泥の灰分を効率よく分離すると同時に熱を有効利用しながら、下水汚泥の乾燥と発電を同時行えるとしている。しかしながら、この方法では流動熱分解炉に空気を吹き込むため、熱分解ガスの熱量が低下して熱効率が低くなり、出力の高い発電量を期待することができない。また、製品は電力であり、ガス(例えば、メタンガス及び水素ガス)といった有価ガスを製造することはできない。また、流動層加熱炉であるため、発生した灰と流動媒体との分離が不可能であることから、五酸化二リン及びカリウムにより流動媒体の固着が生じて、流動状態が不安定となる。その結果、頻繁に流動媒体を交換しなければならず、結果として、安定した連続操業ができない等の不具合が想定される。
【0007】
原料である高灰分バイオマスを、空気吹き込み式の循環流動加熱炉にて450〜850℃の温度で熱分解し、熱分解残渣であるチャーをサイクロンで回収する一方、タールを含む熱分解ガスを、酸素の存在下に1,000〜1,200℃で改質する方法が提案されている(特許文献2)。該装置によれば、熱分解ガスを酸素で高温改質することにより、タールが除去された清浄な可燃性ガスが得られる。しかし、この方法はサイクロンで分離回収したチャーを循環流動層炉に戻しているので、特許文献1と同様に発生した灰中の五酸化二リン及びカリウムと流動媒体との固着により、流動状態が不安定になる等の不具合が予見される。また、酸素で改質した熱分解ガスには一酸化炭素が多く含まれるため低熱量であり、メタン及び水素等の有価ガスはほとんど含まれないという不具合がある。また、流動媒体の固着を防ぐために、同様の方法で熱分解してチャーを分離した後に、そのチャーを造粒して循環流動改質炉内に供給し、900〜1000℃の温度で焼結することで造粒焼結体を製造する方法が提案されている(特許文献3)。これによれば、五酸化二リン及びカリウムと流動媒体との固着を防ぐと同時に造粒骨材という副産物を製造することができるというメリットがある。しかしながら、依然として熱分解ガスには一酸化炭素が多く含まれるため低発熱量であり、かつ、メタン及び水素等の有価ガスはほとんど含まれないという不具合が残る。
【0008】
木質系バイオマス等の有機物質のガス化方法として、熱担持媒体(ヒートキャリア)を使用する方法が開示されている。例えば、熱を運ぶための多数のヒートキャリア、例えば、アルミナボール(直径約10mm)と、このヒートキャリアを加熱するための予熱器と、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器と、木質バイオマス原料を熱分解するための熱分解器と、ヒートキャリアとチャーとを分離するための分離機と、チャーを燃焼して熱風を生成する熱風炉とを備えており、上記予熱器、改質器及び熱分解器を、上から順次縦型に配置した装置が開示されている(特許文献5)。該装置においては、上記ヒートキャリアを、予熱器において、予め高温に加熱して、改質器、次いで、熱分解器と順次落下せしめて、改質器においては、熱分解器において発生した熱分解ガスとヒートキャリアとを直接接触させて、熱分解ガスを改質し、該ガスの低タール化及び水素高濃度化が達成され、次いで、熱分解器においては、バイオマスとヒートキャリアとを直接接触させて、バイオマスの熱分解がなされて熱分解ガスが発生させられる。このように装置においては、ヒートキャリアが重力で落下して順次反応が進められるが、予熱器、改質器及び熱分解器を、上から順次縦型に配置することから、装置全体の高さが著しく高くなるという問題があった。例えば、バイオマスとして、木質チップ1トン/日(乾燥基準)を処理するためには、装置高さは約23mにも達し、また、使用するヒートキャリア量も、予熱器において約1,320kg、改質器において約1,320kg、及び、熱分解器において約1,000kgと多大となり、大規模な装置となってしまう。
【0009】
上記のように装置が高くなり過ぎて大規模な装置となるという問題を解決するために、熱分解帯域における熱分解器と、反応帯域におけるガス改質器とを別個独立して備えることを基本として、それにより、直列接続型と並列接続型のいずれをも構成し得ることを特徴する装置が提案されている。例えば、有機物質および物質混合物から高い発熱量を有する生成物ガスを製造する方法であり、循環する熱担持媒体が、約1,100℃の加熱帯域、950〜1,000℃の反応帯域、550〜650℃の熱分解帯域および分離工程を通過し、引き続き加熱帯域に戻り、その際、有機物質または物質混合物を熱分解帯域中で、加熱した熱担持媒体と接触することにより、固体の炭素含有残留物および揮発性相としての熱分解ガスに分離し、熱分解帯域を通過後、固体の炭素含有残留物を、分離工程で熱担持媒体から分離し、熱分解ガスを反応媒体としての水蒸気と混合し、反応帯域中で、加熱した熱担持媒体に含まれる熱の一部を交換することにより、高い発熱量を有する生成物ガスが生じるように更に加熱する、有機物質および物質混合物から高い発熱量を有する生成物ガスを製造する方法において、水蒸気を熱分解帯域で熱分解ガスと混合し、全部の固体の炭素含有残留物を別の燃焼装置に供給し、ここで燃焼し、この燃焼装置の熱い排ガスを、加熱帯域に存在する熱担持媒体の堆積を通過させ、その際、大部分の顕熱を熱担持媒体に与える、有機物質および物質混合物から高い発熱量を有する生成物ガスを製造する方法が知られている(特許文献4)。該方法においては、熱分解反応器を出た直後に、熱分解コークス及び熱担持媒体からなる混合物を分離して得た熱分解コークスを燃焼装置で燃焼して、これにより発生した顕熱を利用して、加熱帯域内で熱担持媒体を加熱するものである故、低いコストで発熱量の高い生成物ガスを得ることができる。また、この方法によれば、空気を吹き込まないで熱分解をするので、メタン及び水素のような有価ガスを多く含む改質ガスが得られるというメリットがある。加えて、熱分解コークス(チャー)を効率よく分離回収し、更に、熱源として再利用するので熱効率が高いというメリットがある。また、下水汚泥のような高灰分で、且つ、窒素を多く含むバイオマスを原料とした場合でも、熱分解時には五酸化二リンの発生を抑制することができると同時に、NOの発生を抑制できるということも期待される。しかしながら、該方法においては、熱分解帯域、即ち、熱分解器で発生した熱分解ガスは、該熱分解器の上部から配管により、反応帯域、即ち、熱分解ガス改質器の下部に導入されていた。このような熱分解ガスの改質器への導入方法では、熱分解ガスが通過する配管の内壁及びバルブ等にタール及び煤塵等が付着して、それにより閉塞トラブルを回避できないという不具合が発生していた。加えて、熱分解コークス(チャー)を燃焼させる時に、熱分解コークス(チャー)中に濃縮されたリン、カリウム等が酸化物となって飛散し、燃焼装置内部及びその下流側の配管部に析出し、水分を吸湿することで潮解作用を示し、配管の閉塞及びアルカリ腐食による配管の破損等が懸念される。そのため、高灰分バイオマスを原料とする時は熱分解コークス(チャー)を燃焼できないという欠点がある。それと同時に、高灰分バイオマスを熱分解して得られるチャーは、さらに灰分が濃縮されて、より高灰分のチャーになるので燃焼に適さないため、このプロセスそのものが成立しにくいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−322902号公報
【特許文献2】特開2004−51745号公報
【特許文献3】特許4155507号公報
【特許文献4】特許4264525号公報
【特許文献5】特開2011−144329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、バイオマス、好ましくは、比較的灰分含有量の高いバイオマスの熱分解温度及び発生した熱分解ガスの改質温度、並びに、これら熱分解及び改質の雰囲気を最適化することにより、最終的に、水素等の有価ガスを多く含む改質ガスを発生させ、かつ、バイオマス中の灰に含まれる五酸化二リン及びカリ(カリウム)の揮散によって引き起こされる配管の閉塞及び腐食を予防することができるばかりではなく、NOの発生を抑制することができ、かつ、タール及び煤塵の発生量をも低減することができる、バイオマスのガス化装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、従来技術の問題点を解決すべく、種々検討を重ねた結果、バイオマス熱分解器と熱分解ガス改質器とを別個に温度コントロールすることができれば、バイオマスの熱分解温度及び熱分解ガスの改質温度を、夫々最適にすることができる故に、バイオマスを熱分解する際に発生するタール及び煤塵の発生、並びに、五酸化二リン及びカリ(カリウム)の揮散を抑制することができると共に、改質器内ではNOの発生を抑制することができる効果が期待できるのではないかという考えに至った。しかし、上記の特許文献4に記載のような装置構成では、バイオマス熱分解器と熱分解ガス改質器との温度を、夫々別個にコントロールすることができるものの、バイオマス熱分解器から熱分解ガス改質器へ熱分解ガスを導入する熱分解ガス導入管において、その内壁及びバルブ等へのタール及び煤塵等の付着が生じてしまい、結局、熱分解ガス導入管の閉塞トラブルが発生してしまう。
【0013】
そこで、本発明者らは、バイオマス熱分解器及び熱分解ガス改質器の夫々の内部温度を別個にコントロールして、バイオマスの熱分解温度及び熱分解ガスの改質温度を、夫々適切な値にすることにより、タール及び煤塵の発生、五酸化二リン及びカリ(カリウム)の揮散、並びに、NO等の発生を低減せしめ、それに加えて、バイオマス熱分解器において発生した熱分解ガスを、熱分解ガス改質器へと導入する熱分解ガス導入管の内壁に、タール及び煤塵等が付着して、該熱分解ガス導入管が閉塞することを回避するためには、ガス化装置を如何なる構成にするべきかに関して、種々の検討を試みた。
【0014】
その結果、バイオマス熱分解器から熱分解ガス改質器に熱分解ガスを導入する熱分解ガス導入管を、バイオマス熱分解器側において、バイオマス熱分解器内に形成される、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物(ヒートキャリア)層の上面より下方のバイオマス熱分解器の側面に設置し、好ましくは、該熱分解ガス導入管を水平配管にすることにより、熱分解ガス導入管の内壁に、タール及び煤塵等が付着して、該熱分解ガス導入管が閉塞するという問題を解決し得ることを見出した。即ち、熱分解ガス導入管のガス取り入れ口(ガス入口)をヒートキャリア層中に設けることにより、該熱分解ガス導入管内に、バイオマス熱分解器中のヒートキャリアを導入せしめて、そして、熱分解ガスが、熱分解ガス導入管内に保有された該ヒートキャリア層を通過することにより、タール及び煤塵等が効率的に除去されると共に、タールが効果的に熱分解されることを見出したのである。加えて、驚くべきことに、該熱分解ガス導入管内に侵入したヒートキャリアは、バイオマス熱分解器内のヒートキャリアの上から下への移動に伴って、逐次入れ替わり、それにより、熱分解ガス導入管内においてヒートキャリアがタール等により固着して閉塞することなく、著しく効率的にタール及び煤塵等が除去され、かつ、タールが熱分解され、好ましくは改質されることを見出したのである。そして、好ましくは、熱分解ガス導入管の内部底面を、上方に向かって突出させておけば、バイオマス熱分解器を流れるヒートキャリアが、熱分解ガス導入管を通して、他方の容器、即ち、熱分解ガス改質器内に流れ込むことを、より効果的に防止し得るばかりではなく、熱分解ガス導入管内のヒートキャリアが効果的に入れ替わり、より効率的にタール及び煤塵等を除去することができることを見出したのである。そして、ヒートキャリアによる加熱を熱分解器内でのバイオマスの熱分解のみに限定し、熱分解ガス改質器内での熱分解ガスの改質には、スチームに加えて、酸素又は空気を使用して熱分解ガスを部分酸化することより熱を発生させて、スチームにより改質を実行させれば、熱分解ガス改質器の内部温度をバイオマス熱分解器と別途にコントロールすることができると共に、スチーム及び酸素又は空気の供給量を適切にコントロールすれば、熱分解ガス中のメタン、一酸化炭素及びタール等を効率的に改質することができて、生成ガス、即ち、改質ガス中のタールを著しく低減することができるばかりではなく、水素濃度をも著しく高くできることを見出したのである。
【0015】
即ち、本発明は、
(1)バイオマス供給口、並びに、非酸化性ガス供給口及び/又はスチーム吹込み口を備えるバイオマス熱分解器と、スチーム吹込み口及び改質ガス排出口を備える熱分解ガス改質器と、上記バイオマス熱分解器において発生した熱分解ガスを上記熱分解ガス改質器へと導入する、上記バイオマス熱分解器と上記熱分解ガス改質器との間に備えられた熱分解ガス導入管とを備え、かつ、上記バイオマス熱分解器が、更に、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物の導入口及び排出口を備え、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の持つ熱により、バイオマスの熱分解を実行し、一方、上記熱分解ガス改質器が、バイオマスの熱分解により発生した熱分解ガスのスチーム改質を実行するバイオマスのガス化装置において、上記熱分解ガス改質器が、更に、空気又は酸素吹込み口を備え、該空気又は酸素により、バイオマスの熱分解により発生した熱分解ガスを部分燃焼することにより、スチーム改質を実行し、かつ、上記熱分解ガス導入管が、上記バイオマス熱分解器内に形成される、上記複数の粒状物及び/又は塊状物層の上面より下方の上記バイオマス熱分解器の側面に備えられていることを特徴とするバイオマスのガス化装置である。
【0016】
好ましい態様として、
(2)上記熱分解ガス導入管が、上記バイオマス熱分解器と上記熱分解ガス改質器との間において重力方向に対して略水平に備えられている、上記(1)記載のバイオマスのガス化装置、
(3)上記熱分解ガス導入管の内部底面が、上方に向って突出した構造を有している、上記(1)又は(2)記載のバイオマスのガス化装置、
(4)上記熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側へと傾斜を備えて上方に向って突出した構造を有している、上記(1)又は(2)記載のバイオマスのガス化装置、
(5)上記熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側へと、5〜45度の傾斜を備えて上方に向かって突出した構造を有している、上記(1)又は(2)記載のバイオマスのガス化装置、
(6)上記熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側へと、10〜30度の傾斜を備えて上方に向かって突出した構造を有している、上記(1)又は(2)記載のバイオマスのガス化装置、
(7)上記熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側へと、15〜25度の傾斜を備えて上方に向かって突出した構造を有している、上記(1)又は(2)記載のバイオマスのガス化装置、
(8)上記熱分解ガス導入管の長手方向(熱分解ガスの流れ方向)に垂直な断面の外形が、略円形又は略多角形である、上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(9)上記熱分解ガス導入管の長手方向(熱分解ガスの流れ方向)に垂直な断面の外形が略四角形である、上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(10)上記熱分解ガス導入管が、1〜3本備えられている、上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(11)上記熱分解ガス導入管が、1又は2本備えられている、上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(12)上記熱分解ガス導入管が、その内部に上記複数の粒状物及び/又は塊状物を保有している、上記(1)〜(11)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(13)スチーム吹込み口が、バイオマス熱分解器及びその近傍、熱分解ガス改質器及びその近傍、並びに、熱分解ガス導入管より成る群から選ばれる一つ以上の位置に備えられる、上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(14)スチーム吹込み口が、バイオマス熱分解器又はその近傍、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に備えられる、上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(15)スチーム吹込み口が、バイオマス熱分解器又はその近傍、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に、夫々、1〜3個備えられる、上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(16)スチーム吹込み口が、バイオマス熱分解器又はその近傍、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に、夫々、1個備えられる、上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(17)空気または酸素吹込み口が、熱分解ガス改質器及びその近傍、並びに、熱分解ガス導入管より成る群から選ばれる一つ以上の位置に備えられる、上記(1)〜(16)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(18)空気または酸素吹込み口が、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に備えられる、上記(1)〜(16)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(19)空気または酸素吹込み口が、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に、夫々、1〜3個備えられる、上記(1)〜(16)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(20)空気または酸素吹込み口が、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に、夫々、1個備えられる、上記(1)〜(16)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(21)複数の粒状物及び/又は塊状物を予め加熱するための予熱器が、バイオマス熱分解器の上部に更に備えられる、上記(1)〜(20)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(22)上記の複数の粒状物及び/又は塊状物の導入口が、バイオマス熱分解器の上方に備えられる、上記(1)〜(21)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(23)上記の複数の粒状物及び/又は塊状物の導入口が、バイオマス熱分解器の頂部に備えられる、上記(1)〜(21)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(24)上記の複数の粒状物及び/又は塊状物の排出口が、バイオマス熱分解器の下方に備えられる、上記(1)〜(23)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(25)上記の複数の粒状物及び/又は塊状物の排出口が、バイオマス熱分解器の底部に備えられる、上記(1)〜(23)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(26)上記熱分解ガス改質器が、加熱装置を備えない、上記(1)〜(25)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(27)上記の粒状物及び/又は塊状物が、金属ボール及びセラミックボールより成る群から選ばれる、上記(1)〜(26)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(28)金属ボールが、ステンレス鋼製である、上記(27)記載のバイオマスのガス化装置、
(29)セラミックボールが、アルミナ、シリカ、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、ジルコニア及び窒化ケイ素のより成る群から選ばれる一以上の材質から成る、上記(27)記載のバイオマスのガス化装置、
(30)上記バイオマス熱分解器の気相温度が400〜700℃である、上記(1)〜(29)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(31)上記バイオマス熱分解器の気相温度が500〜700℃である、上記(1)〜(29)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(32)上記バイオマス熱分解器の気相温度が550〜650℃である、上記(1)〜(29)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(33)上記熱分解ガス改質器の気相温度が700〜1,000℃である、上記(1)〜(32)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(34)上記熱分解ガス改質器の気相温度が850〜950℃である、上記(1)〜(32)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(35)上記熱分解ガス改質器の気相温度が880〜930℃である、上記(1)〜(32)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(36)上記バイオマスが、乾燥基準で5.0質量%以上の灰分を含む高灰分バイオマスである、上記(1)〜(35)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(37)上記バイオマスが、乾燥基準で10.0〜30.0質量%の灰分を含む高灰分バイオマスである、上記(1)〜(35)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(38)上記バイオマスが、乾燥基準で15.0〜20.0質量%の灰分を含む高灰分バイオマスである、上記(1)〜(35)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(39)上記バイオマスが、植物系バイオマス、生物系バイオマス、生活雑排出物及び食品廃棄物より成る群から選ばれるバイオマス資源である、上記(1)〜(38)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置、
(40)上記バイオマスが、下水汚泥及び家畜排せつ物より成る群から選ばれるバイオマス資源である、上記(1)〜(38)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化装置
を挙げることができる。
【0017】
また、本発明は、上記(1)記載のバイオマスのガス化装置を使用したバイオマスのガス化方法である。即ち、本発明は、
(41)バイオマスを、非酸化性ガス雰囲気下又は非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気下において加熱するバイオマス熱分解器と、上記バイオマス熱分解器において発生したガスを、スチームの存在下に改質する熱分解ガス改質器とを備え、かつ、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物を、上記バイオマス熱分解器に投入せしめて、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の持つ熱により、バイオマスの熱分解を実行し、次いで、該バイオマスの熱分解により発生した熱分解ガスを、上記熱分解ガス改質器に導入して、該熱分解ガスのスチーム改質を実行するバイオマスのガス化方法において、上記バイオマスの熱分解により発生した熱分解ガスが、上記バイオマス熱分解器内に形成される、上記複数の粒状物及び/又は塊状物層の上面より下方の上記バイオマス熱分解器の側面に備えられた熱分解ガス導入管を通って、上記熱分解ガス改質器に導入され、次いで、該熱分解ガス改質器に、別途、導入された空気又は酸素により、上記の導入された熱分解ガスが、部分酸化されると同時に、上記空気又は酸素と同時に導入されたスチームにより改質されることを特徴とするバイオマスのガス化方法である。
【0018】
好ましい態様として、
(42)上記熱分解ガス導入管が、上記バイオマス熱分解器と上記熱分解ガス改質器との間において重力方向に対して略水平に備えられている、上記(41)記載のバイオマスのガス化方法、
(43)上記熱分解ガス導入管の内部底面が、上方に向かって突出した構造を有している、上記(41)又は(42)記載のバイオマスのガス化方法、
(44)上記熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側へと傾斜を備えて上方に向って突出した構造を有している、上記(41)又は(42)記載のバイオマスのガス化方法、
(45)上記熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側へと、5〜45度の傾斜を備えて上方に向かって突出した構造を有している、上記(41)又は(42)記載のバイオマスのガス化方法、
(46)上記熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側へと、10〜30度の傾斜を備えて上方に向かって突出した構造を有している、
上記(41)又は(42)記載のバイオマスのガス化方法、
(47)上記熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側へと、15〜25度の傾斜を備えて上方に向かって突出した構造を有している、上記(41)又は(42)記載のバイオマスのガス化方法、
(48)上記熱分解ガス導入管の長手方向(熱分解ガスの流れ方向)に垂直な断面の外形が、略円形又は略多角形である、上記(41)〜(47)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(49)上記熱分解ガス導入管の長手方向(熱分解ガスの流れ方向)に垂直な断面の外形が略四角形である、上記(41)〜(47)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(50)上記熱分解ガス導入管が、1〜3本備えられている、上記(41)〜(49)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(51)上記熱分解ガス導入管が、1又は2本備えられている、上記(41)〜(49)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(52)上記熱分解ガス導入管が、その内部に上記複数の粒状物及び/又は塊状物を保有している、上記(41)〜(51)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(53)スチーム吹込み口が、バイオマス熱分解器及びその近傍、熱分解ガス改質器及びその近傍、並びに、熱分解ガス導入管より成る群から選ばれる一つ以上の位置に備えられる、上記(41)〜(52)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(54)スチーム吹込み口が、バイオマス熱分解器又はその近傍、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に備えられる、上記(41)〜(52)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(55)スチーム吹込み口が、バイオマス熱分解器又はその近傍、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に、夫々、1〜3個備えられる、上記(41)〜(52)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(56)スチーム吹込み口が、バイオマス熱分解器又はその近傍、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に、夫々、1個備えられる、上記(41)〜(52)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(57)空気または酸素吹込み口が熱分解ガス改質器及びその近傍、並びに、熱分解ガス導入管より成る群から選ばれる一つ以上の位置に備えられる、上記(41)〜(52)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(58)空気または酸素吹込み口が、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に備えられる、上記(41)〜(52)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(59)スチーム吹込み口が、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に、夫々、1〜3個備えられる、上記(41)〜(52)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(60)空気または酸素吹込み口が、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に、夫々、1個備えられる、上記(41)〜(52)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(61)複数の粒状物及び/又は塊状物を予め加熱するための予熱器が、バイオマス熱分解器の上部に更に備えられる、上記(41)〜(60)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(62)上記の複数の粒状物及び/又は塊状物の導入口が、バイオマス熱分解器の上方に備えられる、上記(41)〜(60)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(63)上記の複数の粒状物及び/又は塊状物の導入口が、バイオマス熱分解器の頂部に備えられる、上記(41)〜(60)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(64)上記の複数の粒状物及び/又は塊状物の排出口が、バイオマス熱分解器の下方に備えられる、上記(41)〜(63)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(65)上記の複数の粒状物及び/又は塊状物の排出口が、バイオマス熱分解器の底部に備えられる、上記(41)〜(63)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(66)上記熱分解ガス改質器における、上記バイオマスの熱分解により発生した熱分解ガスのスチーム改質が、該熱分解ガスが有する熱、該熱分解ガス改質器に導入された空気又は酸素が有する熱、及び、該空気又は酸素と同時に導入されたスチームが有する熱、並びに、該空気又は酸素による該熱分解ガスの部分酸化により発生された熱のみにより実行される、上記(41)〜(65)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(67)上記の粒状物及び/又は塊状物が、金属ボール及びセラミックボールより成る群から選ばれる、上記(41)〜(66)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(68)金属ボールが、ステンレス鋼製である、上記(67)記載のバイオマスのガス化方法、
(69)セラミックボールが、アルミナ、シリカ、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、ジルコニア及び窒化ケイ素のより成る群から選ばれる一以上の材質から成る、上記(67)記載のバイオマスのガス化方法、
(70)上記バイオマス熱分解器の気相温度が400〜700℃である、上記(41)〜(69)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(71)上記バイオマス熱分解器の気相温度が500〜700℃である、上記(41)〜(69)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(72)上記バイオマス熱分解器の気相温度が550〜650℃である、上記(41)〜(69)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(73)上記熱分解ガス改質器の気相温度が700〜1,000℃である、上記(41)〜(72)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(74)上記熱分解ガス改質器の気相温度が850〜950℃である、上記(41)〜(72)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(75)上記熱分解ガス改質器の気相温度が880〜930℃である、上記(41)〜(72)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(76)上記バイオマスが、乾燥基準で5.0質量%以上の灰分を含む高灰分バイオマスである、上記(41)〜(75)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(77)上記バイオマスが、乾燥基準で10.0〜30.0質量%の灰分を含む高灰分バイオマスである、上記(41)〜(75)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(78)上記バイオマスが、乾燥基準で15.0〜20.0質量%の灰分を含む高灰分バイオマスである、上記(41)〜(75)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(79)上記バイオマスが、植物系バイオマス、生物系バイオマス、生活雑排出物及び食品廃棄物より成る群から選ばれるバイオマス資源である、上記(41)〜(78)のいずれか一つに記載のバイオマスのガス化方法、
(80)上記バイオマスが、下水汚泥及び家畜排せつ物より成る群から選ばれるバイオマス資源である、上記(41)〜(78)のいずれか一つに記載の高灰分バイオマスのガス化方法
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の装置においては、バイオマス熱分解器と熱分解ガス改質器とを、別個に温度コントロールすることができることから、バイオマスの熱分解温度及び発生した熱分解ガスの改質温度を、いずれも容易かつ長期間に亘って最適化することができる。それにより、バイオマス熱分解器側ではバイオマス、とりわけ、灰分含有量の高いバイオマスの中に含まれる五酸化二リン及びカリ(カリウム)の発生を抑制し得、かつ、熱分解ガス改質器側ではNOの発生を抑制することができ、かつ、最終製品である水素含有ガスの生産量をも増大させることができるばかりではなく、バイオマスの熱分解により発生するタール及び煤塵の量を極力低減させることができる。更に、改質器側ではスチームに加え空気または酸素を吹き込むことでタールの更なる分解と改質を促進することができる。その結果、五酸化二リン及びカリ(カリウム)、並びに、タール及び煤塵による装置トラブルを著しく軽減し得ると共に、発生したタールのガス化率を最大化して、高熱効率及び低コストで、バイオマス、とりわけ、灰分含有量の高いバイオマスから高熱量のガスを製造し得るのである。加えて、ヒートキャリアによる加熱はバイオマス熱分解器のみであることから、スタートアップから定常状態に至るまでの時間を著しく短縮できる。更に、本発明の装置においては、バイオマス熱分解器と熱分解ガス改質器とを並列に配置することができ、予熱器、改質器及び熱分解器を、上から順次縦型に配置する従来の装置と比較して、装置高さを著しく低くすることができることから、装置製造コストを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明のバイオマスのガス化装置の一実施態様を示した概略図である。
図2図2は、バイオマス熱分解器と熱分解ガス改質器との間に備えられる熱分解ガス導入管のいくつかの異なる実施態様を示した概略図である。
図3図3は比較例において使用した従来のバイオマスのガス化装置の概略図である。
図4図4は、本発明のバイオマスのガス化装置おける熱分解ガス導入管の他の一実施態様を示した概略図である。
図5図5は、本発明のバイオマスのガス化装置おける熱分解ガス導入管の他の一実施態様を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のガス化装置は、バイオマス供給口、並びに、非酸化性ガス供給口及び/又はスチーム吹込み口を備えるバイオマス熱分解器と、スチーム吹込み口及び改質ガス排出口を備える熱分解ガス改質器と、上記バイオマス熱分解器において発生した熱分解ガスを上記熱分解ガス改質器へと導入する、上記バイオマス熱分解器と上記熱分解ガス改質器との間に備えられた熱分解ガス導入管とを備え、かつ、上記バイオマス熱分解器が、更に、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)の導入口及び排出口を備え、一方、熱分解ガス改質器が、更に、空気または酸素吹込み口を備える。そして、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物が、バイオマス熱分解器に導入されて、該複数の粒状物及び/又は塊状物の持つ熱により、バイオマスの熱分解が実行される。ここで発生した熱分解ガスは、上記熱分解ガス導入管を通じて熱分解ガス改質器に送られ、そこで、スチームと同時に導入された空気又は酸素により、導入された熱分解ガスが部分酸化されつつ、導入されたスチームにより熱分解ガスの改質が実行される。ここで、本発明のガス化装置においては、バイオマス熱分解器のみに複数の粒状物及び/又は塊状物が導入されて、バイオマスの熱分解が実行され、熱分解ガス改質器は、複数の粒状物及び/又は塊状物の流れとは切り離されており、熱分解ガスの加熱及び改質は、別途、スチーム及び酸素又は空気を導入することにより実行される。好ましくは、上記の熱分解ガスの加熱及び改質は、熱分解ガス改質器に導入される上記熱分解ガス、及び、同じく熱分解ガス改質器に導入される上記スチーム及び酸素又は空気が持つ熱と、上記酸素又は空気による上記熱分解ガスの部分酸化により発生された熱のみにより実行される。このように、従来のバイオマスのガス化装置のように、バイオマス熱分解器と熱分解ガス改質器とが、複数の粒状物及び/又は塊状物の流れに対して、上下直列に備えられているのではなく、切り離されていることから、夫々の温度を別個にコントロールすることができるのである。
【0022】
本発明のガス化装置においては、熱分解ガス導入管は、バイオマス熱分解器側において、バイオマス熱分解器内に形成される、複数の粒状物及び/又は塊状物層、即ち、ヒートキャリア層の上面より下方のバイオマス熱分解器の側面、好ましくは、バイオマス熱分解器の底部側の側面に備えられている。即ち、バイオマス熱分解器側において、バイオマス熱分解器中に形成される、複数の粒状物及び/又は塊状物から成る層中に熱分解ガス導入管のガス取り入れ口(ガス入口)が備えられる。一方、熱分解ガス改質器側においては、導入された熱分解ガスが改質されることができれば、熱分解ガス導入管のガス導入口(ガス出口)の位置に特に制限はないが、好ましくは、熱分解ガス改質器の底部又はその近傍に熱分解ガス導入管のガス導入口が備えられる。そして、該熱分解ガス導入管を通過して、バイオマス熱分解器において発生した熱分解ガスが、熱分解ガス改質器へと導入されるのである。このように、熱分解ガス導入管の熱分解ガスの取り入れ口が、複数の粒状物及び/又は塊状物から成る層中に設けられていることから、バイオマス熱分解器中に存在する複数の粒状物及び/又は塊状物の一部が、該熱分解ガス導入管の内部へと侵入することができて、該熱分解ガス導入管が、その内部に複数の粒状物及び/又は塊状物を保有し得るのである。加えて、熱分解ガス導入管は、好ましくは、重力方向に対して略水平に備えられていることから、複数の粒状物及び/又は塊状物が、熱分解ガス導入管内部に侵入し易くなり、かつ、熱分解ガス導入管内部に保有された複数の粒状物及び/又は塊状物は、バイオマス熱分解器中を、上から下へと重力により移動する複数の粒状物及び/又は塊状物の流れに伴って、上から下へと移動している複数の粒状物及び/又は塊状物と、連続的に徐々に入れ替わることができる。そして、それにより、熱分解ガス導入管内部に保有された複数の粒状物及び/又は塊状物は、新しい状態を保ち得るのである。更には、バイオマス熱分解器から熱分解ガス導入管中に流入した複数の粒状物及び/又は塊状物が、熱分解ガス改質器中に混入することを回避し得る。このように、熱分解ガス導入管内部に複数の粒状物及び/又は塊状物が保有されていることから、そこを通過して熱分解ガス改質器へと導入される熱分解ガス中に含まれるタール及び煤塵等は、該複数の粒状物及び/又は塊状物と接触されて捕捉されるのである。そして、捕捉されたタールの一部分又は大部分は、ここで、複数の粒状物及び/又は塊状物の持つ熱により熱分解されてガス化され、好ましくは、更に改質される。また、ガス化されずに残存したタール及び煤塵等は、複数の粒状物及び/又は塊状物に付着したまま、バイオマス熱分解器底部から排出される。これにより、効果的にタール及び煤塵等を熱分解ガスから除去することが可能となるのである。
【0023】
本発明のガス化装置においては、熱分解ガス導入管の内部底面は、上方に向かって突出した構造を有していることが好ましい。このように、熱分解ガス導入管の内部底面が上方に向かって突出した構造を有していることにより、バイオマス熱分解器から熱分解ガス導入管へと流入した複数の粒状物及び/又は塊状物が、熱分解ガス改質器中に侵入することをより効果的に防止することができる。より好ましくは、熱分解ガス導入管の内部底面は、バイオマス熱分解器側から熱分解ガス改質器側に向かって傾斜を備えて上方に向かって突出した構造を有している。上記傾斜の角度(θ)は、好ましくは5〜45度、より好ましくは10〜30度、更に好ましくは15〜25度である。また、該突出した構造において、熱分解ガス導入管の内部底面が、バイオマス熱分解器及び熱分解ガス改質器の両側から中央部に向かって傾斜を備えて上方に向かって突出した構造を有していてもよい。かかる場合には、該傾斜の角度(θ)は、バイオマス熱分解器及び熱分解ガス改質器の両側において同一であっても、また、夫々異なっていてもよい。このような傾斜を備えることにより、バイオマス熱分解器から熱分解ガス導入管へと侵入した複数の粒状物及び/又は塊状物が、熱分解ガス導入管内において停滞することを防止して、複数の粒状物及び/又は塊状物の熱分解ガス導入管内での入れ替わりを促進するのである。上記熱分解ガス導入管において、その長手方向に垂直な断面、即ち、熱分解ガスの流れ方向に対して垂直な断面の外形は、好ましくは略円形又は略多角形であり、より好ましくは略四角形である。該熱分解ガス導入管の内径は、複数の粒状物及び/又は塊状物が熱分解ガス導入管内に容易に流入しかつ流出し得るものであれば特に制限はない。また、該熱分解ガス導入管は、バイオマス熱分解器と熱分解ガス改質器との間に、好ましくは1〜3本、より好ましくは1又は2本備えられている。
【0024】
本発明のガス化装置において、スチーム吹込み口は、好ましくは、バイオマス熱分解器及びその近傍、熱分解ガス改質器及びその近傍、並びに、熱分解ガス導入管より成る群から選ばれる一つ以上の位置に備えられる。より好ましくは、スチーム吹込み口は、バイオマス熱分解器又はその近傍、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管の全てに備えられる。これにより、バイオマスの熱分解及び熱分解ガスの改質をより良好に達成することができる。熱分解ガスの改質に際しては、好ましくは、熱分解ガス改質器又はその近傍、及び、熱分解ガス導入管に備えられたスチーム吹込み口、より好ましくは、熱分解ガス改質器又はその近傍に備えられたスチーム吹込み口からスチームが吹き込まれる。スチーム吹込み口の個数に特に制限はないが、バイオマス熱分解器又はその近傍、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に、好ましくは、夫々、1〜3個、より好ましくは、夫々、1個備えられる。
【0025】
本発明のガス化装置において、空気または酸素吹込み口は、好ましくは、熱分解ガス改質器及びその近傍、並びに、熱分解ガス導入管より成る群から選ばれる一つ以上の位置に備えられる。より好ましくは、空気または酸素吹込み口は、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管の全てに備えられる。これにより、熱分解ガスの改質をより良好に達成することができる。空気または酸素吹込み口の個数に特に制限はないが、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に、好ましくは、夫々、1〜3個、より好ましくは、夫々、1個備えられる。本発明のガス化装置においては、既に述べた通り、上記の空気または酸素吹込み口から供給される空気又は酸素により、熱分解ガス改質器に導入された熱分解ガスの部分酸化を実行して、それにより発生した熱によりスチーム改質を実行することから、熱分解ガス改質器は、通常、加熱装置、例えば、スチーム又は電熱器等により熱分解ガス改質器外部及び/又は内部から熱を供給する加熱装置等を備えていない。
【0026】
本発明のガス化装置においては、バイオマス熱分解器の上部に、複数の粒状物及び/又は塊状物を予め加熱するための予熱器が備えられる。これにより、該複数の粒状物及び/又は塊状物が所定の温度に加熱される。該予熱器は、バイオマス熱分解器の上部に好ましくは1器設けて、そこで全ての粒状物及び/又は塊状物を所定の温度に加熱して、該温度に加熱された粒状物及び/又は塊状物を、バイオマス熱分解器に重力により導入することができる。この構成を採れば、装置コストを削減することができ、また、バイオマス熱分解器へのスチーム導入量によりバイオマス熱分解温度をコントロールする際には、導入したスチームにより、より効果的かつ容易に熱分解を実行することができると共に、粒状物及び/又は塊状物の加熱に必要なエネルギーの削減が可能となる。
【0027】
また、バイオマス熱分解器の上方(上部)、好ましくは頂部に、複数の粒状物及び/又は塊状物の導入口が備えられ、一方、バイオマス熱分解器の下方(下部)、好ましくは底部に、複数の粒状物及び/又は塊状物の排出口が備えられる。複数の粒状物及び/又は塊状物の導入口及び排出口は、例えば、配管の上下に1個ずつ合計2個のバルブを備えた、いわゆる2段式バルブ方式が使用される。但し、該導入及び抜出し方式は、一例であり、この方式に限定されるものではない。
【0028】
複数の粒状物及び/又は塊状物、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)は、好ましくは、金属及びセラミックより成る群から選ばれる一以上の材質から成る。金属としては、好ましくは、鉄、ステンレス鋼、ニッケル合金鋼、及び、チタン合金鋼より成る群から選ばれ、より好ましくは、ステンレス鋼が選ばれる。また、セラミックとしては、アルミナ、シリカ、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、ジルコニア及び窒化ケイ素より成る群から選ばれ、より好ましくは、アルミナが選ばれる。複数の粒状物及び/又は塊状物の形状は、好ましくは球状(ボール)であるが、必ずしも真球である必要はなく、断面形状が楕円形又は長円形である球状物であってもよい。球状物の直径(最大径)は、好ましくは3〜25mm、より好ましくは8〜15mmである。上記上限を超えては、バイオマス熱分解器内部での流動性、即ち、自由落下性を損なうことがあり、これにより、球状物がバイオマス熱分解器内部で静止して閉塞の原因となることがある。一方、上記下限未満では、バイオマス熱分解器において、球状物に付着したタール及び煤塵等により球状物自体が固着することがあり、閉塞の原因となることがある。例えば、球状物の直径が3mm未満では、球状物に付着したタール及び煤塵等の影響により、球状物が、バイオマス熱分解器の内壁に付着して成長し、最悪の場合には、バイオマス熱分解器を閉塞させてしまうことが懸念される。また、タールが付着した球状物が、バイオマス熱分解器の底部のバルブから抜き出される際、3mm未満の球状物は軽く、そのうえタールが付着しているために自然落下せずにバルブ内部に固着して閉塞を助長することがある。
【0029】
本発明のバイオマスとは、いわゆるバイオマス資源を言う。ここで、バイオマス資源とは、植物系バイオマス、例えば、林業から廃棄される間伐材、製材廃材、剪定枝、林地残材、未利用樹等、農業から廃棄される野菜残渣及び果樹残渣等の農作物、稲藁、麦藁及び籾殻等、その他海洋植物、建設系廃木材等;生物系バイオマス、例えば、家畜排せつ物及び下水汚泥に代表される生物系排せつ物;並びに塵芥等の生活雑排出物及び食品廃棄物等を言う。本発明の装置は、好ましくは植物系バイオマス及び生物系バイオマスのガス化に適している。なかでも、灰分が、乾燥基準で、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10.0〜30.0質量%、更に好ましくは15.0〜20.0質量%である高灰分バイオマス、とりわけ、下水汚泥及び家畜排せつ物のガス化に適している。
【0030】
以下、本発明のバイオマスのガス化装置を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明のバイオマスのガス化装置の一実施態様を示した概略図である。該バイオマスのガス化装置においては、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物(5)、即ち、ヒートキャリアの持つ熱によりバイオマスの熱分解を実行するバイオマス熱分解器(1)と、スチームと同時に別途導入される酸素又は空気により、バイオマスの熱分解により発生した熱分解ガスを部分酸化して得た熱により、該熱分解ガスのスチーム改質を実行する熱分解ガス改質器(2)とが備えられている。そして、複数の粒状物及び/又は塊状物(5)を予め加熱するための予熱器(3)が、バイオマス熱分解器(1)の上部に備えられている。また、熱分解ガス導入管(4)が、バイオマス熱分解器(1)と熱分解ガス改質器(2)との間に1本に備えられており、これにより、バイオマス熱分解器(1)において発生した熱分解ガスが、熱分解ガス改質器(2)へと導入される。ここで、熱分解ガス導入管(4)は、バイオマス熱分解器(1)側において、バイオマス熱分解器(1)内に形成される、複数の粒状物及び/又は塊状物(5)層の上面(13)より下方のバイオマス熱分解器(1)の側面に備えられている。即ち、熱分解ガス導入管(4)のバイオマス熱分解器(1)側ガス取り入れ口(ガス入口)(4−3)が、複数の粒状物及び/又は塊状物(5)層中に設けられている。一方、熱分解ガス改質器(2)側においては、熱分解ガス導入管(4)は、熱分解ガス改質器(2)の底部に接続されている。また、熱分解ガス導入管(4)は、バイオマス熱分解器(1)と熱分解ガス改質器(2)との間において重力方向に対して略水平に備えられている。ここで、熱分解ガス導入管(4)は、バイオマス熱分解器(1)側において重力方向に対して略水平に備えられており、その下流側において、即ち、バイオマス熱分解器(1)と熱分解ガス改質器(2)との中間において、熱分解ガス改質器(2)に向かって略垂直に立ち上がって、熱分解ガス改質器(2)の底部に接続されている構成を採ることも可能である(図4)。あるいは、バイオマス熱分解器(1)と熱分解ガス改質器(2)との中間において、熱分解ガス改質器(2)に向かって、傾斜角度(θ)を有して上方に立ち上がって、熱分解ガス改質器(2)の底部に接続されている構成を採ることも可能である(図5)。また、熱分解ガス導入管(4)の内部底面は、上方に向かって突出した構造を有していることが好ましい。例えば、バイオマス熱分解器(1)側から熱分解ガス改質器(2)側に向かって、水平配管の底部から略25度の傾斜角度(θ)を有する突出部が備えられている。但し、該内部底面は平らな構造であってもよい。
【0031】
複数の粒状物及び/又は塊状物(5)、即ち、ヒートキャリアは、バイオマス熱分解器(1)に導入される前に、予熱器(3)において予め加熱される。ヒートキャリア(5)は、好ましくは650〜800℃、より好ましくは700〜750℃に加熱される。上記下限未満では、バイオマス熱分解器(1)においてバイオマス、例えば、高灰分バイオマスを十分に熱分解することができず、熱分解ガスの発生量が低下する。一方、上記上限を超えては、リンやカリ(カリウム)の揮散を引き起こし、五酸化二リン及びカリ(カリウム)による配管の閉塞及び腐食を引き起こす原因になる。また、余分な熱を与えるばかりで著しい効果の増大は期待できず、却って、コスト高を招くばかりである。また、設備の熱効率低下の原因にもなる。
【0032】
予熱器(3)において上記所定温度に加熱されたヒートキャリア(5)は、次いで、バイオマス熱分解器(1)に導入される。バイオマス熱分解器(1)においては、ヒートキャリア(5)は、別途、バイオマス供給口(7)からバイオマス熱分解器(1)に供給されたバイオマスと接触される。ここで、バイオマス供給口(7)は、バイオマス熱分解器(1)自体に設けられていても良いが、図1に示すように、バイオマス熱分解器(1)近傍、例えば、ヒートキャリア(5)のバイオマス熱分解器(1)への供給配管に設けることもできる。また、バイオマス熱分解器(1)には、非酸化性ガス、例えば、窒素、及び、任意的にスチームが、夫々、非酸化性ガス供給口(12)及びスチーム吹込み口(11)から供給されて、非酸化性ガス雰囲気又は非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気に保たれている。そして、ヒートキャリア(5)とバイオマスとの接触により、バイオマスが加熱されて熱分解し、熱分解ガスが生成する。バイオマス熱分解器(1)を非酸化性ガス雰囲気にすることにより、バイオマスの燃焼を阻止して、バイオマスを効率よく熱分解させることができる。生成した熱分解ガスは、熱分解ガス導入管(4)を通過して、熱分解ガス改質器(2)に導入される。この際、生成した熱分解ガスに含まれるタール及び煤塵等は、熱分解ガス導入管(4)内に保有されるヒートキャリア(5)により捕捉され、タールの一部又は大部分はヒートキャリア(5)により加熱されてガス化され、残存したタール及び煤塵等は、ヒートキャリア(5)に付着したまま、バイオマス熱分解器(1)底部から排出される。バイオマス熱分解器(1)の気相温度は、上限が、好ましくは700℃、より好ましくは650℃あり、下限が、好ましくは400℃、より好ましくは500℃、更に好ましくは550℃である。上記下限未満では、バイオマスの熱分解が進まないことがある。上記上限を超えては、五酸化二リン及びカリ(カリウム)並びに重質なタールを発生させる。このような重質タールは、熱分解ガス改質器(2)内で酸素又は空気により殆どが燃焼されて取り除かれるが、微量残存したものは、スチームにより十分に改質することができないことから、タールによる装置トラブルの原因となることがある。ここで、バイオマス熱分解器(1)の気相温度とは、バイオマス熱分解器(1)内に投入される、予め加熱されたヒートキャリア(5)、原料であるバイオマス及び非酸化性ガスと、任意的に吹き込まれるスチームとが混合されて生ずる温度、並びに、ヒートキャリア(5)層の輻射熱等から総合的に生ずるバイオマス熱分解器(1)内部の気相温度を言う。該バイオマス熱分解器(1)の気相温度は、ヒートキャリア(5)の供給速度及び抜出し速度、バイオマス熱分解器(1)内におけるヒートキャリア(5)層の体積及びその占有率、バイオマスの供給量、非酸化性ガス及び/又はスチームの供給量等により適宜コントロールすることができる。通常、バイオマスの供給量からヒートキャリア(5)の供給速度及び抜出し速度を決定し、次いで、バイオマス熱分解器(1)内におけるヒートキャリア(5)層の体積及びその占有率を徐々に変更しながら、非酸化性ガス及び/又はスチームの供給量を適宜変更することにより、バイオマス熱分解器(1)の気相温度を所定温度にコントロールすることができる。
【0033】
熱分解ガス改質器(2)には、バイオマス熱分解器(1)においてバイオマスを熱分解することにより生成した熱分解ガスが、熱分解ガス導入管(4)を通って導入される。熱分解ガス改質器(2)に導入された熱分解ガスは、空気または酸素により部分酸化され、それにより、熱分解ガス改質器(2)内が加熱される。これにより、熱分解ガスとスチームとが反応して、熱分解ガスを水素に富むガスへと改質することができる。ここで、熱分解ガスに随伴されるタールの一部が、空気または酸素により部分酸化されて熱源として消費され、一部がスチーム及び酸素により改質される。ガス改質に使用されるスチームは、バイオマス熱分解器(1)及びその近傍、熱分解ガス改質器(2)及びその近傍、並びに、バイオマス熱分解器と熱分解ガス改質器との間の熱分解ガス導入管(4)より成る群から選ばれる一つ以上の位置に備えられるスチーム吹込み口(11、11、11)から導入される。好ましくは、バイオマス熱分解器(1)又はその近傍、熱分解ガス改質器(2)又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管(4)に備えられるスチーム吹込み口(11、11、11)の全てから導入される。より好ましくは、熱分解ガス改質器(2)又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管(4)に備えられるスチーム吹込み口(11、11)から導入され、熱分解ガス改質器(2)又はその近傍に備えられるスチーム吹込み口(11)のみから導入することもできる。また、酸素又は空気は、熱分解ガス改質器(2)及びその近傍、並びに、バイオマス熱分解器(1)と熱分解ガス改質器(2)との間の熱分解ガス導入管(4)より成る群から選ばれる一つ以上の位置に備えられる酸素又は空気供給口(14、14)から導入される。好ましくは、熱分解ガス改質器又はその近傍、並びに、熱分解ガス導入管に備えられる酸素又は空気供給口(14、14)の全てから導入される。熱分解ガス改質器(2)における気相温度は、上限が、好ましくは1,000℃、より好ましくは950℃、更に好ましくは930℃であり、下限が、好ましくは850℃、より好ましくは880℃、更に好ましくは900℃である。上記下限未満では、改質反応が進まないことがある。また、NOを発生させる要因にもなり得る。一方、上記上限を超えても、著しい効果の増大は期待できず、加熱に要する熱量が増大して、コスト高を招く。熱分解ガス改質器(2)における気相温度が、上記の好ましい下限値である850℃以上において、スチームによる一酸化炭素の改質が顕著となり、より好ましい下限値である880℃以上において、スチームによるメタンの改質が顕著になる。従って、一酸化炭素及びメタンの両方を効率的に改質するためには、熱分解ガス改質器(2)における気相温度が880℃以上であることがより好ましい。熱分解ガス改質器(2)における気相温度のより好ましい上限は950℃であり、該温度以下で十分に熱分解ガスを改質し得るが、燃料使用量の削減を図るためには930℃以下であることが更に好ましい。ここで、熱分解ガス改質器(2)の気相温度とは、熱分解ガス改質器(2)内に導入される熱分解ガス並びスチーム及び空気または酸素が混合されて生ずる温度から総合的に生ずる熱分解ガス改質器内部の気相温度を言う。熱分解ガス改質器(2)の気相温度は、空気または酸素の供給量により適宜コントロールすることができる。
【0034】
上記のバイオマス熱分解器(1)におけるバイオマスの熱分解に必要な熱の殆どは、上記の温度に予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物(5)、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)の持つ熱により供給される。ヒートキャリア(5)のバイオマス熱分解器(1)への導入、並びに、ヒートキャリア(5)のバイオマス熱分解器(1)からの抜出しは、例えば、配管の上下に1個ずつ合計2個のバルブを備えた、いわゆる2段式バルブ方式(図示せず)を使用して行われる。該2段式バルブ方式の操作を簡単に説明すると、上下2個のバルブを閉じておき、まず、上のバルブを開いてヒートキャリア(5)を配管内部に落下させ、下のバルブと上のバルブとの間にヒートキャリア(5)を充填する。次いで、上のバルブを閉じ、下のバルブを開くことによって、2個のバルブの間に充填されたヒートキャリア(5)をバイオマス熱分解器(1)へ導入し、又は、バイオマス熱分解器(1)から抜き出す。このようなバルブ操作を繰り返すことによって、ヒートキャリア(5)はバイオマス熱分解器(1)にほぼ連続的に導入され、かつ、バイオマス熱分解器(1)からほぼ連続的に抜出される。該導入及び抜出し方式は、一例であり、この方式に限定されるものではない。ヒートキャリア(5)のバイオマス熱分解器(1)への導入及びヒートキャリア(5)のバイオマス熱分解器(1)からの抜出し速度を制御することにより、バイオマス熱分解器(1)においてヒートキャリア(5)層を形成せしめると共に、その層の厚さを適切な値に制御し、かつ、バイオマス熱分解器(1)の温度を上記所定温度に制御することができる。このように、バイオマス熱分解器(1)のみにヒートキャリア(5)を導入して、その熱でバイオマスの熱分解をし、一方、熱分解ガス改質器(2)にはスチーム及び酸素又は空気を導入して、それにより改質をすることにより、バイオマス熱分解器(1)と熱分解ガス改質器(2)との内部温度を個別にコントロールすることが可能になる。これにより、熱分解ガス改質器(2)における改質反応を適正温度で進行させることが可能になると共に、バイオマス熱分解器(1)におけるバイオマスの熱分解を適正温度で実行させることが可能となるのである。更には、熱効率を改善することが可能となる。また、バイオマス熱分解器(1)のみにヒートキャリア(5)を導入し、かつ、予熱器(3)とバイオマス熱分解器(1)とを好ましくは竪型に配置して、ヒートキャリア(5)を重力により自然落下させることにより、ヒートキャリア(5)を移動させるための動力を必要とせず、エネルギー節約型の効率的なガス化装置にすることができる。
【0035】
ここで、ヒートキャリア(5)のバイオマス熱分解器(1)からの抜出し速度が速過ぎると、バイオマス熱分解器(1)の温度が高くなり、一方、抜出し速度が遅過ぎると、ヒートキャリア(5)が放熱して、バイオマス熱分解器(1)の温度が低くなる。ヒートキャリア(5)のバイオマス熱分解器(1)への供給速度及び抜出し速度は、原料であるバイオマスの供給量及びその種類、並びに、バイオマスの水分及び灰分量等に依存するが、通常、バイオマスの供給量に対して決定される。通常、乾燥原料、即ち、乾燥バイオマスのバイオマス熱分解器(1)への供給速度の5〜60質量倍に設定される。好ましくは、乾燥バイオマスのバイオマス熱分解器(1)への供給速度の5〜30質量倍に設定され、より好ましくは10〜20質量倍に設定される。上記下限未満では、バイオマスを熱分解するために必要な熱量を供給できない。一方、上記上限を超えては、ヒートキャリア(5)の供給量が過剰になるばかりであり、そのためバイオマス熱分解器(1)を必要以上に大きくしなければならず、また、ヒートキャリア(5)の加熱に余分な熱量を必要とする。
【0036】
バイオマス熱分解器(1)及び熱分解ガス改質器(2)中の圧力の上限は、好ましくは104.33kPa、より好ましくは102.33kPaであり、下限は、好ましくは100.33kPa、より好ましくは101.23kPaである。上記上限を超えては、生成した熱分解ガスが、バイオマス供給口(7)から逆流してバイオマス熱分解器(1)の外部へと漏れることがある。一方、上記下限未満では、生成した熱分解ガスが、バイオマス熱分解器(1)及び熱分解ガス導入管(4)におけるヒートキャリアの層内部に均一分散して通過せず、熱分解ガス及び同伴するタール等が十分にガス化及び改質されないことがある。
【0037】
上記のようにスチーム吹込み口(11、11、11)は、好ましくは、バイオマス熱分解器(1)、熱分解ガス改質器(2)の底部、及び、バイオマス熱分解器(1)と熱分解ガス改質器(2)との間の熱分解ガス導入管(4)に設置される。バイオマス熱分解器(1)に設置するに際しては、とりわけ、バイオマス熱分解器(1)の上部に設置することが好ましい。これにより、バイオマス熱分解器(1)中に導入したスチームとヒートキャリア(5)との接触を、より効果的に実行することができ、かつ、該スチームと、バイオマス(5)の熱分解により発生したガスとの接触時間をより長くとることができるばかりではなく、ヒートキャリア(5)との接触時間をも長くとることができる。そして、その結果として、熱分解ガス、及びヒートキャリア(5)に付着したタール等のガス化及び改質を効率的に実施することができる。図1においては、スチーム吹込み口は、熱分解ガス改質器(2)の下部(11)、バイオマス熱分解器(1)の上部(11)、及び、熱分解ガス導入管(4)(11)に、夫々、1個、合計3個設置されているが、これに限定されるものではない。スチーム吹込み口は、夫々の箇所に、複数個設置することもできる。供給するスチームの温度は、特に限定されないが、好ましくは130〜200℃、より好ましくは約160℃である。また、好ましくは500〜600℃の過熱蒸気を使用することもできる。例えば、より好ましい約160℃のスチームを供給するに際して、スチームの供給量は、原料であるバイオマスの供給量とほぼ等量が供給されることが好ましい。ただし、スチームの量は原料の水分量によって増減するので、上記に限定されるものではない。
【0038】
空気または酸素の吹込み口(14、14)は、好ましくは、熱分解ガス改質器(2)の底部、及び、バイオマス熱分解器(1)と熱分解ガス改質器(2)との間の熱分解ガス導入管(4)に設置される。空気または酸素を吹き込むことにより、バイオマスの熱分解ガス、とりわけ、随伴されるタール等を部分酸化して、その熱により、スチーム改質を効率的に実施することができる。図1においては、空気または酸素吹込み口は、熱分解ガス改質器(1)の下部(14)、及び、熱分解ガス導入管(4)(14)に、夫々、1個、合計2個設置されているが、これに限定されるものではない。空気または酸素吹込み口は、夫々の箇所に、複数個設置することもできる。供給する空気または酸素の温度は、特に限定されないが、好ましくは室温〜700℃、より好ましくは300〜600℃である。
【0039】
バイオマス供給口(7)は、バイオマス熱分解器(1)に、効果的にバイオマスを供給し得る位置に設置されていればよい。好ましくは、バイオマス熱分解器(1)の上方、即ち、予熱器(3)からバイオマス熱分解器(1)にヒートキャリア(5)を落下させる配管に設置されることが望ましい。これにより、バイオマスとヒートキャリア(5)との混合を効率よく行うことができ、バイオマス熱分解器(1)内部での接触時間を適切に確保することができて、バイオマスを十分に熱分解することができる。図1においては、バイオマス供給口(7)は、1個記載されているが、これに限定されることはない。バイオマス供給口(7)は、好ましくは1個以上、より好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個、更により好ましくは1又は2個設置することができる。バイオマス供給口(7)を複数設置することにより、性状の異なるバイオマスを、夫々の供給口から、同時に供給することもできる。
【0040】
バイオマス熱分解器(1)におけるバイオマスの滞留時間は、好ましくは5〜60分間、より好ましくは10〜40分間、更に好ましくは15〜35分間である。上記下限未満では、バイオマスに均一に熱が伝わらず、均一な熱分解が行なわれないことから熱分解ガスの発生量が低減する。一方、上記上限を超えても、著しい効果の増大は認められず、却って、設備コストの増加を招く。ここで、バイオマス熱分解器(1)におけるバイオマスの滞留時間は、ヒートキャリア(5)の移動速度とバイオマス供給量とから適切に調節され得る。また、熱分解ガス改質器(2)におけるガスの滞留時間は、好ましくは1〜10秒、より好ましくは2〜5秒である。熱分解ガス改質器(2)におけるガスの滞留時間は、スチームと空気または酸素の供給量並びに予定される熱分解ガス発生量とから設定し得る。従来のように、熱分解ガス改質器(2)とバイオマス熱分解器(1)とを、上下直列に接続すると、夫々の容器における滞留時間、即ち、バイオマス熱分解器(1)におけるバイオマス熱分解のための滞留時間及び熱分解ガス中のタールの分解のための滞留時間、並びに、熱分解ガス改質器(2)における熱分解ガスとスチームとの改質反応に必要な滞留時間を、夫々個別にコントロールすることが不可能であった。しかし、本発明のように、バイオマス熱分解器(1)にのみをヒートキャリア(5)にて加熱し、熱分解ガス改質器(2)は別途、スチームと酸素又は空気を導入して、熱分解ガスの部分酸化により加熱する方式にすることにより、夫々の容器(1,2)における滞留時間を夫々独立してコントロールすることができることから、夫々の容器(1,2)内部の温度を夫々独立してコントロールすることが可能になった。
【0041】
上記のようにして、バイオマス熱分解器(1)を通過したヒートキャリア(5)は、バイオマスの熱分解残渣(チャー)、及び、ヒートキャリア(5)に付着した熱分解されないで残った微量のタール及び煤塵等と一緒に、バイオマス熱分解器(1)の底部から排出される。排出されたヒートキャリア(5)を含む排出物の処理は、図1に示すように排出物処理装置(9)においてチャーを分離する等の従来公知の方法によって実施される。例えば、上記の特許文献4及び5に記載されている方法及び装置を採用することができる。このようにして処理されたヒートキャリア(5)は、再度、予熱器(3)に戻されてバイオマス熱分解器(1)に供給される。
【0042】
図2は、バイオマス熱分解器(1)と熱分解ガス改質器(2)との間に備えられた熱分解ガス導入管(4)のいくつかの異なる実施態様(I,II,III,IV,V,VI)を示した概略図である。図2は、熱分解ガス導入管(4)の長手方向の断面(熱分解ガスの流れ方向に沿う断面)を示したものである。また、図2中、(g)は熱分解ガスの流れ方向を模式的に示したものである。図2において、向かって右側がバイオマス熱分解器(1)であり(図2中、と表示している。)、左側が熱分解ガス改質器(2)である(図2中、と表示している。)。また、熱分解ガス導入管(4)内のヒートキャリア(5)のみを着色して模式的に示しており、バイオマス熱分解器(1)内のヒートキャリア(5)は表示していない。また、図2には示していないが、熱分解ガス導入管(4)は、その内部底面が、上方に向かって突出していない、平面のものであっても構わない。図2に示された全ての熱分解ガス導入管(4)は、本発明のバイオマスの熱分解装置、例えば、図1及に示したバイオマスの熱分解装置に使用し得るものである。即ち、バイオマス熱分解器(1)側において、バイオマス熱分解器(1)内に形成される、ヒートキャリア(5)層の上面(13)より下方のバイオマス熱分解器(1)の側面に備えられており、かつ、該熱分解ガス導入管(4)が、好ましくは、重力方向に対して略水平に備えられ、かつ、熱分解ガス導入管(4)の内部底面が、上方に向かって突出した構造を有しているものである。熱分解ガス導入管(4)は、図2の(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)に示した構造にすることが好ましい。即ち、熱分解ガス導入管(4)の内部底面の突出部分の高さ(h)が、熱分解ガス導入管(4)のガス取り入れ口(ガス入口)及び導入口(ガス出口)の垂直方向の幅(高さ)(h,h)と同一である構造(I,IV)、又はそれより高い構造(II,III,V,VI)である。より好ましくは、上記の突出部分の高さ(h)が、熱分解ガス導入管(4)のガス取り入れ口及び導入口の垂直方向の幅(高さ)(h,h)より高い構造(II,III,V,VI)である。このような構造を採用すれば、ヒートキャリア(5)がバイオマス熱分解器(1)から熱分解ガス改質器(2)中に流入することをより確実に防止することができる。より好ましくは、図2の(IV)、(V)及び(VI)の構造である。例えば、図2の(II)のように2段階で傾斜角度(θ)を備える構造は、同一の傾斜角度(θ)を有する図2の(V)の構造と比較して、熱分解ガス導入管(4)内でのヒートキャリア(5)の停滞を回避する作用に劣ることがある。従って、図2の左列に示されているような段階的に突出する形状の突出部においては、その段階の数をより増やすことがより好ましい。該傾斜角度(θ)は、好ましくは5〜45度、より好ましくは10〜30度、更に好ましくは15〜25度である。また、図2の(III)及び(VI)に示す熱分解ガス導入管(4)のように、その構造は基本的には水平配管であるが、(III)のように配管の内部上面に凹部を設けたり、また、(VI)のように配管の内部上面に傾斜を設けた凹部を設けた構造とすることもできる。また、熱分解ガス導入管(4)のガス取り入れ口及びガス導入口の垂直方向の幅(高さ)(h,h)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。図2に示された熱分解ガス導入管(4)は例示であって、これに限定されるものではない。また、熱分解ガス導入管(4)の長手方向に垂直な断面(熱分解ガスの流れ方向に対して垂直な断面)の外形は、上記の通りであり、好ましくは略円形又は略多角形であり、より好ましくは略四角形である。また、該熱分解ガス導入管(4)の内径、即ち、ガス取り入れ口の垂直方向の幅(高さ)(h)及びガス導入口の垂直方向の幅(高さ)(h)は、ヒートキャリア(5)が熱分解ガス導入管(4)内に容易に流入しかつ流出し得るものであれば特に制限はなく、好ましくは、ヒートキャリア(5)の寸法(最大径)の8〜50倍、より好ましくは10〜40倍、更に好ましくは10〜30倍である。
【0043】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
実施例1において使用したバイオマス原料、並びに、該バイオマス原料の熱分解及びガス改質に使用したガス化装置は、下記の通りである。
【0045】
バイオマス原料としては、下水汚泥を造粒して使用した。造粒後の下水汚泥の大きさは、最大寸法が6〜15mm程度のものであった。該下水汚泥の性状を表1に示す。また、該下水汚泥を燃焼して得られた灰の組成を表2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の各値に関して、
水分、揮発分及び固定炭素は、JIS M8812に準拠し、灰分は、JIS Z 7302−4:2009に準拠し、かつ、高位発熱量は、JIS M8814に準拠して測定したものである。また、元素組成のうち、炭素(C)、水素(H)及び窒素(N)は、いずれもJIS Z 7302-8:2002に準拠し、硫黄(S)は、JIS Z 7302‐7:2002に準拠し、かつ、塩素(Cl)は、JIS Z 7302‐6:1999に準拠して測定したものである。また、酸素(O)は、100質量%から、C、H、N、S、Cl及び灰分の各質量%を差し引いて求めたものである。ここで、灰分、揮発分、固定炭素及び元素組成は、いずれも乾燥基準で算出したものである。また、水分は、バイオマス原料(下水汚泥)の受け入れ時のものである。
【0048】
【表2】
【0049】
表2の各値に関して、
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、五酸化二リン及び酸化マンガンは、JIS M8815に準拠して測定したものである。また、水銀、クロム、カドミウム、酸化銅、酸化鉛、酸化亜鉛及びニッケルは、JIS Z 7302‐5:2002に準拠して測定したものである。
【0050】
バイオマス原料の熱分解及び発生した熱分解ガスの改質に使用したガス化装置としては、図1に示したものを使用した。該ガス化装置は、基本的には、バイオマス熱分解器(1)、熱分解ガス改質器(2)及び予熱器(3)を有するものであり、バイオマス熱分解器(1)と熱分解ガス改質器(2)とは、バイオマス熱分解器(1)において発生した熱分解ガスを、熱分解ガス改質器(2)へと導入する熱分解ガス導入管(4)により接続されている。ここで、バイオマス熱分解器(1)の上部に予熱器(3)が1器備えられており、該予熱器(3)は、バイオマス熱分解器(1)に供給する複数の粒状物及び/又は塊状物(ヒートキャリア)(5)を予め加熱するものであり、加熱されたヒートキャリア(5)は、バイオマス熱分解器(1)に供給されて、バイオマスの熱分解に必要な熱を供給した後、その底部から抜き出され、再び、予熱器(3)に戻される。一方、バイオマス熱分解器(1)において発生した熱分解ガスは、熱分解ガス導入管(4)を通って、熱分解ガス改質器(2)へと導入される。ここで、熱分解ガス改質器(2)へは、別途、空気又は酸素が、空気又は酸素導入管(14)から導入されて、これにより、熱分解ガスが部分燃焼され、かつ、同時にスチームが、スチーム吹込み口(11)から導入されて、熱分解ガスがスチームにより改質され、これにより得られた改質ガスが、改質ガス排出口(8)から取り出される。また、空気又は酸素及びスチームは、上記の空気又は酸素導入管(14)及びスチーム吹込み口(11)に代えて、熱分解ガス導入管(4)に備えられた、空気又は酸素導入管(14)及びスチーム吹込み口(11)からに導入することもできるし、全ての空気又は酸素導入管(14、14)及びスチーム吹込み口(11、11)からに導入することもできる。バイオマス熱分解器(1)の直胴部分の内径は約550mmであり、高さは約1,100mmであり、内容積は約260リットルであった。また、熱分解ガス改質器(2)の直胴部分の内径は約600mmであり、高さは約1200mmであり、内容積は約340リットルであった。また、熱分解ガス導入管(4)としては、図2の(V)に示す構造のものを使用した。ここで突出部の傾斜角度(θ)は、バイオマス熱分解器(1)側から熱分解ガス改質器(2)側に向って、該配管の内部底面に対して25度であった。熱分解ガス導入管(4)は、バイオマス熱分解器(1)側においては、バイオマス熱分解器(1)内に形成されるヒートキャリア(5)層の上面(13)より下方のバイオマス熱分解器(1)の側面に備えられており、一方、熱分解ガス改質器(2)側においては、熱分解ガス改質器(2)の底面近傍の側面に備えられていた。また、熱分解ガス導入管(4)は、重力方向に対して略水平に備えられていた。該熱分解ガス導入管(4)としては、長さ約1,000mm及び内径約80mmの配管が使用され、その内部は断熱材で被覆されて、かつ、上記突出部も該断熱材で形成されていた。ヒートキャリア(5)としては、直径(最大径)10〜12mmの略球形のアルミナ製ボールを使用した。
【0051】
バイオマス熱分解器(1)、並びに、予熱器(3)内部に、ヒートキャリア(5)を予め夫々の容器の70%程度の高さまで充填し、次いで、該ヒートキャリア(5)を、予熱器(3)において略700℃の温度に加熱した。次いで、該ヒートキャリア(5)を、バイオマス熱分解器(1)の頂部から200キログラム/時間の量で導入し、かつ、バイオマス熱分解器(1)の底部から適量を抜出し、ヒートキャリア(5)の循環を開始した。該ヒートキャリア(5)の循環により、バイオマス熱分解器(1)内部の気相温度及び容器自体の温度が徐々に上昇した。このようなヒートキャリア(5)の循環を継続しながら、同時に、予熱器(3)内部のヒートキャリア(5)温度を800℃まで徐々に昇温した。ヒートキャリア(5)が該温度に達した後、更に、循環を継続して、バイオマス熱分解器(1)内部の気相温度を徐々に上昇させ、バイオマス熱分解器(1)の気相温度が550℃を超えるころから、バイオマス供給口(7)、非酸化性ガス供給口(12)及びスチーム吹込み口(11)からバイオマス熱分解器(1)に、夫々、バイオマス原料、窒素ガス及びスチームを導入し、バイオマス熱分解器(1)の温度が600℃になるようにコントロールした。このとき、ヒートキャリア(5)は、バイオマス熱分解器(1)において、層状に堆積しており、その堆積量は、バイオマス熱分解器(1)の内容積の約60体積%であった。バイオマス熱分解器(1)からのヒートキャリア(5)の抜出し量は、いずれも供給量と同一であり、バイオマス熱分解器(1)において200キログラム/時間であった。また、抜出し時のヒートキャリア(5)の温度は650℃であった。但し。バイオマス熱分解器(1)からのヒートキャリア(5)の抜出し量は、その温度状況に応じて適宜コントロールすることも可能である。
【0052】
上記の操作において、バイオマス原料としての下水汚泥を、定量フィーダーを使用して、バイオマス供給口(7)からバイオマス熱分解器(1)に、徐々に供給量を増やしつつ、最終的に約22キログラム/時間(乾燥基準)になるように連続的に導入した。バイオマス熱分解器(1)の温度は、バイオマス原料の導入に伴って徐々に低下したが、同時に、窒素ガス及び過熱蒸気を、その供給量を調節しながらバイオマス熱分解器(1)に導入することによって、バイオマス熱分解器(1)の温度を600℃に保持した。また、バイオマス熱分解器(1)内の圧力を101.3kPaに保持した。ここで、窒素ガスは、バイオマス熱分解器(1)の上部に設けられた非酸化性ガス供給口(12)から、最終的に1,000リットル/時間の一定量で導入された。また、スチームとしては、過熱蒸気(160℃、0.6MPa)が使用され、バイオマス熱分解器(1)の上部に設けられたスチーム吹込み口(11)から、最終的に1キログラム/時間の一定量で導入された。バイオマス熱分解器(1)におけるバイオマス原料の滞留時間は、約1時間であった。これにより、バイオマス熱分解器(1)において熱分解により生じたガスが15キログラム/時間で得られた。また、チャー及び灰が合計で6.5キログラム/時間で熱分解残渣(チャー)排出口(6)から排出された。
【0053】
バイオマス熱分解器(1)において得られた熱分解ガスは、続いて、バイオマス熱分解器(1)の側面下部から熱分解ガス導入管(4)を通過して、熱分解ガス改質器(2)に導入された。熱分解ガスの導入当初は、熱分解ガス改質器(2)内の温度は不安定になるが、熱分解ガス改質器(2)下部に設けられたスチーム吹込み口(11)から導入される過熱蒸気の量、及び、空気または酸素導入管(14)から導入される酸素の量を調節することにより、熱分解ガスを部分燃焼させて、熱分解ガス改質器(2)内部の温度が1,000℃になるように調節した。この時、熱分解ガス改質器(2)は、圧力101.3kPaに保持されていた。熱分解ガス改質器(2)下部に設けられたスチーム吹込み口(11)からの過熱蒸気は、最終的に3.7キログラム/時間の一定量で導入された。空気または酸素導入口(14)からの酸素は、最終的に2.3m−normal/時間の一定量で導入された。但し、この酸素量は熱分解ガス改質器(2)内部の温度上昇度合いによって、適宜増減させた。
【0054】
上記操作により、バイオマス熱分解器(1)が温度600℃及び圧力101.3kPaに保持され、かつ、熱分解ガス改質器(2)が温度950℃及び圧力101.3kPaに保持された。これにより、温度1,000℃の改質ガスが31キログラム/時間の量で改質ガス排出口(8)から得られた。
【0055】
得られた改質ガスをゴム製バッグに捕集し、ガスクロマトグラフィーによりガス組成を測定した。表3には、得られた改質ガスの組成を示した。また、該操業を3日間連続して実施することができた。該操業期間中、トラブル、とりわけ、タールに起因するトラブルのない良好な連続運転を維持することができた。また、操業期間中、熱分解ガス導入管(4)内でヒートキャリア(5)がタール等により閉塞するというトラブルを生ずることもなく、バイオマス熱分解器(1)から熱分解ガス改質器(2)への熱分解ガスのスムーズな導入が維持された。また、熱分解ガス改質器(2)出口から取り出された改質ガス中のタール量は、約10mg/m−normalであった。
【0056】
【表3】
【0057】
表3の各値に関して、
水素(H)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)及び窒素(N)は、TCD(Thermal Conductive Detector)検出器付きのガスクロマトグラフィー[島津製作所製GC−14A(商標)]にて分析して定量した。また、硫化水素(HS)は、FPD(Flame Photometric Detector)検出器付きのガスクロマトグラフィー[島津製作所製GC−8A(商標)]にて分析して定量した。塩化水素(HCL)に関しては、改質ガスを純水中に流通させ、純水のpH値を株式会社堀場製作所製ポータブル型pHメーターD−72(商標)により測定することにより塩化水素量を定量した。
【0058】
(比較例1)
バイオマス原料の熱分解及び発生した熱分解ガスの改質に使用したガス化装置としては、図3に示したものを使用した。該装置は特許文献5記載したものと類似するものである。該ガス化装置は、バイオマス熱分解器(100)及び熱分解ガス改質器(200)を、ヒートキャリア(500)の流れに対して直列に配置した装置構成を有するものであった。熱分解ガス改質器(200)の上部に予熱器(300)を1器備えており、該予熱器(300)において、バイオマス熱分解器(100)及び熱分解ガス改質器(200)に供給するヒートキャリア(500)を、予め加熱するものであった。予熱器(300)の直胴部分の内径は約800mmであり、高さは1400mmであり、内容積は約700リットルであった。バイオマス熱分解器(100)の直胴部分の内径は約800mmであり、高さは約1000mmであり、内容積は約500リットルであった。また、熱分解ガス改質器(200)の直胴部分の内径は約800mmであり、高さは約1300mmであり、内容積は約650リットルであった。また、熱分解ガスがバイオマス熱分解器(100)から熱分解ガス改質器(200)に送られる配管(400)は、長さ約3,000mm及び内径約400mmであり、その内部は断熱剤で被覆されており、重力方向に対して略垂直に備えられていた。該配管(400)は、ヒートキャリア(500)が、熱分解ガス改質器(200)からバイオマス熱分解器(100)へと導入される管とは別個に備えられていた。ヒートキャリア(500)としては、直径(最大径)10〜12mmの略球形のアルミナ製ボールを使用した。
【0059】
バイオマス原料としては、実施例と同じ下水汚泥を使用した。該下水汚泥を、定量フィーダー(図示せず)を使用してバイオマス供給口(700)から、温度550℃及び圧力0.103MPaに保持されたバイオマス熱分解器(100)に30.0kg/時間の量で連続的に導入した。バイオマス熱分解器(100)における該下水汚泥のみかけの滞留時間は約1時間であった。
【0060】
バイオマス熱分解器(100)の頂部から熱分解により生じたガスが14.7kg/時間の量で得られた。該ガスは、続いて、温度950℃及び圧力0.103MPaに保持された熱分解ガス改質器(200)に導入された。同時に熱分解ガス改質器(200)には、スチーム吹込み口(110)から、20.0kg/hrの量で過熱スチーム(180℃、1MPa)が導入されてガス改質がなされた。
【0061】
改質ガス排出口(800)から、950℃の改質されたガスが34.7kg/時間の量で得られた。次いで、該ガスは、ガス冷却装置(図示せず)に導入されて水と接触され、40℃に冷却された。該ガスの組成は、表4に示す通りである。
【0062】
【表4】
【0063】
このように改質ガスを得ることはできたが、熱分解ガスがバイオマス熱分解器(100)から熱分解ガス改質器(200)に送られる配管(400)、及び、熱分解ガス改質器(200)から熱分解ガスを抜き出す配管、即ち、改質ガス排出口(800)及びその以降の配管に、タール並びに五酸化二リン及びカリウム等の付着が観察された。従って、長期間の連続操業では、これらの配管に閉塞及び腐食が発生する可能性があると推察される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のバイオマスのガス化装置は、バイオマス、好ましくは、比較的灰分含有量の高いバイオマスから、水素等の有価ガスを多く含む改質ガスを発生させることができ、かつ、バイオマス中の灰に含まれる五酸化二リン及びカリ(カリウム)の揮散によって引き起こされる配管の閉塞及び腐食を予防し得るばかりではなく、NOの発生を抑制し得、かつ、タール及び煤塵の発生量をも低減し得ることから、今後、バイオマス、とりわけ、比較的灰分含有量の高いバイオマスのガス化装置として、大いに利用されることが期待される。
【符号の説明】
【0065】
1 バイオマス熱分解器
2 熱分解ガス改質器
3 予熱器
4 熱分解ガス導入管
4−2 熱分解ガス導入管の熱分解ガス改質器側ガス導入口(ガス出口)
4−3 熱分解ガス導入管のバイオマス熱分解器側ガス取り入れ口(ガス入口)
5 複数の粒状物及び/又は塊状物(ヒートキャリア)
6 熱分解残渣(チャー)排出口
7 バイオマス供給口
8 改質ガス排出口
9 排出物処理装置
11、11、11スチーム吹込み口
12 非酸化性ガス供給口
13 バイオマス熱分解器内に形成される、複数の粒状物及び/又は塊状物(ヒートキャリア)層の上面
14、14 空気又は酸素導入管
g 熱分解ガスの流れ方向
h 熱分解ガス導入管内部底面の突出部分の高さ
熱分解ガス導入管のガス取り入れ口の垂直方向の幅(高さ)
熱分解ガス導入管のガス導入口の垂直方向の幅(高さ)
θ 熱分解ガス導入管の内部底面突出部の傾斜角度
100 バイオマス熱分解器
200 熱分解ガス改質器
300 予熱器
400 熱分解ガスがバイオマス熱分解器から熱分解ガス改質器に送られる配管
500 複数の粒状物及び/又は塊状物(ヒートキャリア)
700 バイオマス供給口
800 改質ガス排出口
110、110スチーム吹込み口
図1
図2
図3
図4
図5