(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体、トニック、リキッド、ローション、コンディショナー、トリートメント、スプレー、クリーム又はジェルの形態である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、精神的ストレス、食生活の変化、高齢化などにより、多くの人々が薄毛、抜け毛、脱毛に関する悩みを抱えており、頭皮ケア市場は拡大傾向にある。そのような傾向は、男性のみならず女性にもみられる。正常のヒト毛髪は、毛周期により抜けては生えるを繰り返しており、約90%は成長期(毛が伸びる時期)、約10%が休止期(毛の成長が止まり脱落する時期)の状態にある。脱毛症は、毛包細胞の増殖が抑制され、成長期にあるはずの毛が休止期に入ることによって引き起こされる。
【0003】
男性の脱毛症として通常よく知られるものが男性型脱毛症及び円形脱毛症であり、一方、女性の脱毛症としてびまん性脱毛症が知られている。原因として遺伝的なものの他に老化、男性ホルモンの影響、血行不全、過度のヘアケア、経口避妊薬の多用、栄養失調、リンパ球による毛嚢球部の破壊などが脱毛症の原因として挙げられる。
【0004】
男性型脱毛症の治療薬として、ミノキシジル(外用剤)、フィナステリド(内服治療薬)が知られている。ミノキシジルは毛乳頭細胞を刺激して毛母細胞の増殖を促す成長因子を出させる作用があり、フィナステリドはII型5α−リダクターゼの作用を抑えて、毛包のミニチュア化を防ぐと言われている。また、円形脱毛症の治療薬として、副腎皮質ホルモン(ステロイド)、ミノキシジル、塩化カルプロニウムなどの薬剤が知られている。
【0005】
育毛剤や養毛剤に関する特許文献数は、例えば特開2012−092079号公報(特許文献1),特開2014−218479号公報(特許文献2),特開2014−129383号公報(特許文献3),特開2013−193985号公報(特許文献4)などを含めて1,000件を超すが、上市される薬剤のなかで脱毛症を効果的に改善する薬剤は少ない。単なる血行促進、頭皮代謝改善、毛周期変換だけでは、通常、満足のいく発毛効果が得られない。それほどに脱毛症対策は難しい課題であるといえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
頭皮・頭髪ケア製品には、養毛剤、育毛剤、発毛剤などが含まれる。養毛剤は、毛髪に単に栄養を与える薬剤であり、育毛剤は、毛髪を太く長く成長させ抜け毛を防止する薬剤である。養毛剤及び育毛剤は、それ自体脱毛症の治療や抜け毛の発毛を促進する薬剤ではないと言われている。これに対し、発毛剤は、抜け毛の発毛を促進する薬剤であり、現在我国で市販される発毛剤には、その有効成分としてミノキシジル又はフィナステリドが含まれる。しかし、それらの発毛効果には、個人差や、副作用が認められる例なども知られている。
【0008】
本発明の目的は、副作用がほとんどない、かつ発毛効果のある発毛剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、生体内における還元作用が発毛効果を有することの着想を得て本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、要約すると、以下の特徴を含む。
【0011】
(1)チオ硫酸又はその塩を有効成分として含む発毛組成物。
【0012】
(2)組成物中のチオ硫酸又はその塩の濃度が約1%〜約20%(w/v)又はそれ以上、あるいは約0.06mol/L〜約1.5mol/L又はそれ以上である、(1)に記載の組成物。
【0013】
(3)他の発毛剤、育毛剤又は養毛剤をさらに含む、(1)又は(2)に記載の組成物。
【0014】
(4)他の発毛剤、育毛剤又は養毛剤が、システイン及び/又はミノキシジルである、(3)に記載の組成物。
【0015】
(5)生え際の毛を増加させる、(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
【0016】
(6)頭皮頭髪化粧用である、(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物。
【0017】
(7)脱毛症治療用である、(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物。
【0018】
(8)液体、トニック、リキッド、ローション、コンディショナー、トリートメント、スプレー、クリーム又はジェルの形態である、(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物。
【0019】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2015-199432号の開示内容を包含する。
【0020】
本発明により、副作用のほとんどない、かつ、発毛効果のある組成物が提供される。特に、毛の成長期、休止期のいずれにおいても発毛/育毛/養毛の作用を有する発毛組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、チオ硫酸又はその塩を有効成分として含む発毛組成物を提供する。以下において、該組成物の有効成分、他の発毛剤、育毛剤若しくは養毛剤の追加、その他の成分の追加、並びに、組成物の形態について説明する。
1.有効成分
本発明の組成物の有効成分は、チオ硫酸又はその塩である。
【0024】
チオ硫酸の塩は、チオ硫酸と製薬上許容可能な塩基との塩であり、塩基には無機塩基及び有機塩基が含まれ、そのような塩の具体例は、チオ硫酸のアルカリ金属塩、例えばチオ硫酸のナトリウム塩、チオ硫酸のカリウム塩など、あるいは、チオ硫酸とアンモニアとのアンモニウム塩、チオ硫酸と脂肪族アミン若しくは環状アミンとのアンモニウム塩などが挙げられる。脂肪族アミン若しくは環状アミンの例は、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジイソプロピルアミン、アミノ酸(アルギニン、リジン、トリプトファン、ヒスチジンなど)、ピリジンなどが含まれる。好ましい塩は、チオ硫酸ナトリウムである。
【0025】
本発明の組成物中のチオ硫酸又はその塩の濃度は、発毛、育毛及び/又は養毛効果(例えば発毛促進など)が認められる任意の量(すなわち、「有効量」という)を含み、通常、約1〜2%〜約20%(w/v)又はそれ以上、好ましくは約3%〜約15%(w/v)、さらに好ましくは約4%〜約10%(w/v)であり、あるいは、約0.10mol/L〜約1.5mol/L又はそれ以上であるが、これらに限定されないものとする。
【0026】
ほとんど毒性のないチオ硫酸又はその塩が、発毛を促進する作用があること、また毛の成長期、休止期のいずれにおいても発毛/育毛/養毛の作用のあることは、本願出願前には知られていなかったとともに、また示唆もされていなかった。
【0027】
チオ硫酸塩は、育毛剤や養毛剤において、マイクロバブルを含有する洗浄液を用いて頭髪を洗浄する頭髪の育毛又は養毛方法において軟水化による洗浄効果を高めるための添加剤(国際公開WO2009/142200)、ビタミンA及びその関連化合物を主要成分とした育毛剤中の抗酸化作用を有する添加剤(特開2001−199843号公報)、などの添加剤として使用しうることは知られているが、チオ硫酸又はその塩が一定の濃度以上で含まれる組成物が発毛剤になることは知られていなかった。
【0028】
チオ硫酸又はその塩を頭皮に、その有効量、例えば約2〜20%(w/v)又はそれ以上の濃度で1日あたり1回若しくは複数回塗布することが好ましい。チオ硫酸又はその塩は、生え際の毛を効果的に増加させる特徴を有している。
2.他の発毛剤、育毛剤若しくは養毛剤
本発明の組成物にはさらに、他の発毛剤及び/又は他の育毛剤若しくは養毛剤を含有させることができる。
【0029】
本発明で使用可能な他の発毛剤は、限定されないが、例えば血管拡張薬が挙げられる。血管拡張薬としては、ミノキシジル、ミノキシジル類縁体(例えば、ピディオキシジルなど)が含まれる。
【0030】
また、他の育毛剤若しくは養毛剤の例としては、限定されないが、システイン、6−ベンジルアミノプリン、ペンタデカン酸グリセリド、塩化カルプロニウム、t−フラバノン、グリチルリチン酸ジカリウム、ポリリン酸ナトリウム、センブリエキスなどが挙げられる。
【0031】
他の発毛剤及び/又は他の育毛剤若しくは養毛剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用しうる。これらの補助成分の含有量は、組成物に対し合計で、例えば0.01〜20%(w/v)又はそれ以上、好ましくは0.1〜10%(w/v)である。
【0032】
チオ硫酸又はその塩、及びミノキシジルの組み合せは、発毛効果を相乗的に向上させる。例えば、当該組み合せにおいて、チオ硫酸又はその塩の含有量は、組成物に対し合計で、1〜20%(w/v)又はそれ以上、好ましくは1.5〜15%(w/v)、さらに好ましくは2〜10%(w/v)であり、あるいは、約0.06mol/L〜約1.5mol/L又はそれ以上であるが、これらに限定されない。
3.その他の成分
本発明の組成物にはさらに、例えば、抗酸化剤、抗炎症剤、紫外線防止剤、角質溶解剤、血行促進剤、細胞賦活剤、殺菌剤、抗脂漏剤、経皮吸収促進剤、清涼剤、香料、界面活性剤、pH調整剤、賦形剤、溶解剤、アミノ酸類、ビタミン類、着色料、などを1種若しくは2種以上含有させることができる。これらの成分の各含有量は、組成物に対し、例えば0.0001〜70%(w/v)又はそれ以上である。
【0033】
抗酸化剤として、例えば、ビタミンE、酢酸トコフェロール、d−δ−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、ビタミンC、L−アスコルビン酸−2硫酸、L−アスコルビン酸−2−リン酸、L−アスコルビン酸−2グルコシド、テトライソパルミチン酸L−アスコルビン酸、チオグリコール酸ナトリウム、ポリフェノール、カテキンなどが挙げられる。
【0034】
抗炎症剤として、例えば、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸塩、トラネキサム酸、グリチルリチン、カンゾウ、オウバク、オトギリソウエキス、オウゴンエキス、ボタンピエキスなどが挙げられる。
【0035】
紫外線防止剤として、例えば、メトキシケイ皮酸オクチル、オキシベンゾン、ウロカニン酸などが挙げられる。
【0036】
角質溶解剤として、例えば、サリチル酸、レゾルシンなどが挙げられる。
【0037】
血行促進剤として、例えば、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、塩化カルプロニウム、酢酸ニコチネート、酢酸トコフェロール、ノニル酸バニリルアミド、ジアゾキサイド、セファランチン、ヨウ化ニンニクエキス、スエルチアマリン、トウガラシチンキ、イチョウ抽出エキス、シャクヤクエキス、センブリエキスなどが挙げられる。
【0038】
細胞賦活剤として、例えば、ヒノキチオール、塩酸ピリドキシン、パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、ペンタデカン酸グリセリド、エチニルエストラジオール、プラセンタエキス、コレウスエキス、ジンセンエキス、アデノシン、ヒノキチオール、ピロクトンオラミンなどが挙げられる。
【0039】
経皮吸収促進剤として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、オレイン酸エチル、乳酸オクチルドデシル等の脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0040】
清涼剤として、例えば、メントール、メンチルグリセリルエーテル、メンチルカルボキサミド、バニリルブチルエーテル、メントン、カンファー、ボルネオール、シネオールメントン、サリチル酸メチル、マロン酸メンチル、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、l−メンチル−3−ヒドロキシブチレート、スペアミント油、ペパーミント油、ハッカ油、ユーカリプタス油などが挙げられる。
【0041】
香料として、例えば、特開2002−284660号公報などに記載される毛髪化粧品用香料などが挙げられる。具体的には、香料の例は、3−(4−tert−ブチルフェニル)−プロパナール、アセチルセドレン、5−ヘキシルジヒドロ−5−メチル−2(3H)−フラノン、アセトアルデヒド2−フェニル−2,4−ペンタンジオールアセタ−ル、オキサシクロヘキサデセン−2−オン、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、2,6,10−トリメチル−9−ウンデセナール、ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチルナフト(2,1−b)フラン、1−(1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−エタノン、1−(1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−2,3,5,5−テトラメチル−2−ナフタレニル)−エタノン、4−(4−メチル−3−ペンテン−1−イル)−3−シクロヘキセノン−1−カルボキシアルデヒド、α−イロン、シクロペンタデカノリド、2−メチル−3−(4−t−ブチルフェニル)プロパナール、2−メチル−3−(4−イソプロピルフェニル)プロパナ−ル、2−プロペニルシクロヘキシルオキシアセテート、1−(2−ベンゾフラニル)−エタノン、ヘリオトロピン、β−ヨノン、γ−メチルヨノン、3−(3−イソプロピルフェニル)ブタナール、ドデカナール、γ−ウンデカラクトン、3−メチルシクロペンタデセノン、1−(3−メチル−2−ベンゾフラニル)−エタノン、β−ダマセノン、β−ダマスコン、δ−ダマスコン、及びメチル2−ペンチル−3−オキソ−シクロペンチルアセテートなどを含む。
【0042】
溶解剤として、例えば、精製水、蒸留水、エタノール、多価アルコール、それらの混合物などが挙げられる。
【0043】
賦形剤として、医薬品用及び化粧品用の賦形剤が使用される。例えば、溶液剤、乳化剤、ゲル化剤、噴霧剤などの医薬上又は化粧品上許容可能な成分を使用することができる。
【0044】
ビタミン類として、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、酢酸トコフェロールなどが挙げられる。
4.組成物の形態
本発明の組成物は、頭髪の発毛を促進するための任意の頭皮・頭髪用組成物である。具体的には、該組成物は、例えば頭皮・頭髪化粧用組成物、脱毛症治療用組成物などである。
【0045】
組成物は、液体又は固体若しくは半固体のいずれの形態であってもよく、例えば、液体、トニック、リキッド、ローション、コンディショナー、トリートメント、スプレー、クリーム、ジェルなどの形態であり、具体的には、整髪料、シャンプー、リンス、ヘアカラー、パーマ剤、育毛剤、養毛剤などに配合しうる。
【0046】
本発明の組成物のpHは、通常、4〜8が好ましく、6〜7.5がより好ましい。また、粘度は、上記の組成物形態に応じて適宜選択しうる。粘度の調節剤として、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、 ヒアルロン酸ナトリウムなどが使用されうる。
【実施例】
【0047】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって制限されないものとする。
[実施例1]
<休止期モデルの検討1>
ヘアサイクルが成長期、退行期及び休止期の順番で繰り返すC3H/HeNマウス(日本チャールズリバー(神奈川、日本))6週齢を1週間順化飼育し、7週齢(休止期が開始する週齢)の時点で、背部を電気バリカンとシェーバーで剃毛し、一晩飼育した後、剃毛部位に試験液の塗布(一部位あたり200μL)を開始した。
【0048】
試験液として、試験1について、50%エタノール水溶液にチオ硫酸ナトリウム1%、2%、4%(w/v)を溶解した溶液、40%エタノール水溶液にチオ硫酸ナトリウム10%(w/v)を溶解した溶液を使用し、また、試験2について、50%エタノール水溶液にミノキシジル1%とチオ硫酸ナトリウム(1%、2%、4%)(w/v)を溶解した溶液、40%エタノール水溶液にミノキシジル1%とチオ硫酸ナトリウム10%(w/v)を溶解した溶液、40%エタノール水溶液にチオ硫酸ナトリウム10%(w/v)を溶解した溶液を使用した。これらの試験での陽性対照は、ミノキシジル1%(w/v)であり、また陰性対照は、0%チオ硫酸ナトリウムである。
【0049】
試験1及び試験2のいずれにおいても各試験液を1群あたり5〜12匹のマウスの背部剃毛部位に1日1回の頻度で毎日塗布した。養毛効果の評価は、塗布1日目、47日目、59日目及び76日目に、剃毛部位あたりの発毛部位を写真撮影し発毛状態を視覚的に、あるいは、場合により発毛面積の%値を算出することによって行った。
【0050】
試験1及び試験2の評価結果をそれぞれ、表1及び表2に示す。算出された発毛面積が、0%以上10%未満のスコアを1とし、10%以上25%未満のスコアを2とし、25%以上50%未満のスコアを3とし、50%以上75%未満のスコアを4とし、75%以上のスコアを5として表した。また、
図1に76日目のマウス背部剃毛部位の発毛状態の例を示す。図中、破線で囲った箇所は発毛が観察された領域を表す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2-1】
【0053】
【表2-2】
【0054】
【表2-3】
【0055】
上記の表1、表2、及び
図1の結果から、陰性対象と比較すると、チオ硫酸ナトリウム単独塗布では4%(w/v)以上、ミノキシジルとの混合塗布ではチオ硫酸ナトリウムが2%(w/v)以上の試験液においてマウス背部剃毛部位での発毛が早い段階から起こり、発毛面積も増加する傾向が明らかに認められた。多くの場合、生え際での発毛が認められた。
【0056】
次に、どの群が最も早く毛が生え始めるかについてカプランマイヤー曲線を作成して各試験を評価した結果を
図2、
図3に示す。チオ硫酸ナトリウムの濃度が高い程、早い時期から毛が生え始める傾向が認められた。
[実施例2]
<休止期モデルの検討2>
チオ硫酸ナトリウムの塗布による皮膚症状の変化を確認するため、各試験薬(40%エタノール水溶液にチオ硫酸ナトリウム10%(w/v)を溶解した溶液、40%エタノール水溶液にミノキシジル1%(w/v)とチオ硫酸ナトリウム10%(w/v)を溶解した溶液)を実施例1と同様に剃毛されたマウスに塗布して混合塗布の効果を検討した。1群あたり5〜6匹のマウスの背部剃毛部位に1日1回の頻度で毎日塗布(一部位あたり200μL)して20日目の塗布から10分後、30分後の平均体表温度(℃)を調べた。これらの試験での陽性対照は、ミノキシジル1%(w/v)であり、また陰性対照は、0%チオ硫酸ナトリウムである。体表温度(℃)の測定は、剃毛部位あたりを赤外線サーモグラフィカメラThermoshot F30S(NEC/Avio, Tokyo, Japan)で撮影して行った。面積あたりの平均体表温度は、InfRec Analyzer NS9500 Standard(NEC/Avio, Tokyo, Japan)を用いて算出した。
【0057】
結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
上記の表3に示された通り、いずれの試験薬においても陰性対照と変わらぬ体表温度であった。これらの動物については、最終週に心臓採血を行い、生化学検査を行った。心臓採血後の血液は、30分以上氷上に静置した後、10000rpm, 15分(4℃)の遠心分離を2回行い、上清(血清)を別容器に移し替えた後、冷凍保存(−80℃)した。この血清は、動物用臨床化学分析装置(FUJI DRI−CHEM 3500V)を用いて、専用スライドで各値[GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ),GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ),GGT(γ−グルタミルトランスフェラーゼ),LDH(乳酸脱水素酵素),CHE(コリンエステラーゼ),CPK(クレアチンホスホキナーゼ),ALB(アルブミン),TP(総蛋白),TCHO(総コレステロール),TG(トリグリセライド)]を測定した。
【0060】
その結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
上記の結果は、いずれの試験薬においても陰性対照と比較して有意差のない生化学検査値であった。以上の結果より、本発明の組成物の副作用の低さが確認された。
[実施例3]
(成長期モデルの検討1)
C3H/HeNマウス(日本チャールズリバー)を、6週齢で入手し、5日間順化飼育した後に、シェービングフォームを用いてカミソリで刈毛した。刈毛3日後から、刈毛部位に下記の試験液の塗布(一部位あたり200μL)を開始し、その後24日間に渡って塗布を続け、成長期における効果を検討した(5群、各8匹)。
【0063】
陰性対照(対照(Control)):40%エタノール水溶液(n=8)
陽性対照(5%MXD):5%ミノキシジル(w/v) (n=8)
試験液1(4%STS):4%チオ硫酸ナトリウム(w/v) (n=8)
試験液2(10%STS):10%チオ硫酸ナトリウム(w/v) (n=8)
試験液3(10%STS)+(5%MXD):10%チオ硫酸ナトリウム+ 5%ミノキシジル(w/v) (n=8)
試験液1、2、3(10%STS)は40%エタノール水溶液に溶解し、陽性対照、試験液3(5%MXD)は60%エタノール水溶液に溶解した。除毛部に対する効果は背部皮膚の状態を次のスコアで評価した。試験液3は、10%STS投与後に5%MXDを投与した。
【0064】
スコア1:皮膚がピンク色を呈する
スコア2:皮膚が灰色に変色する(除毛部の30%未満)
スコア3:皮膚が灰色に変色(除毛部の60%未満)あるいは毛の伸長が認められる(除毛部の30%未満)
スコア4:皮膚が灰色に変色(除毛部の60%以上)あるいは毛の伸長が認められる(除毛部の60%未満)
スコア5:毛の伸長が認められる(除毛部の60%以上)
検討の結果、試験液1、2において陰性対照より早くに毛の伸長が確認され、本発明の組成物が成長期においても作用することが示された(
図4)。また、ミノキシジルと混合した試験液3が陽性対照より早くに毛の伸長が始まることから、チオ硫酸ナトリウムはミノキシジルの効果を高めることが示された。
[実施例4]
<成長期モデルの検討2>
実施例3の成長期モデル試験終了後の個体から、除毛後に毛が伸長した箇所の皮膚組織を採取し、組織学的検査を実施した。具体的には、採取した皮膚組織を10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン切片を作成してヘマトキシリン・エオジン(HE)染色して顕微鏡観察し、毛根密度、成長期と休止期の比率を評価した。その結果を表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
陽性対照の5%ミノキシジルは、休止期の割合は成長期よりも多くなっており、成長期から休止期に移行していると推測される。それに対し、本発明の試験液2、3も陽性対照と同じ傾向を示している(表5)。特に試験液3については、5%ミノキシジル以上の効果が認められる。また、皮下組織は、陽性対照の5%ミノキシジルで厚くなっている。本発明の試験液2、3も陽性対照と同じ傾向を示している(表5)。本発明による育毛の効果を確認することができた。
[実施例5]
<成長期モデルの検討3>
実施例3の成長期モデル試験終了後の個体から、除毛後に毛が伸長した箇所の皮膚組織を採取し、毒性病理組織学的検査を実施した。具体的には、採取した皮膚組織を10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン切片を作成してHE染色して顕微鏡観察を行った。
【0067】
陰性対照(対照(Control))、陽性対照(5%MXD)、試験液2(10%STS)、試験液3(10%STS+5%MXD)のいずれにおいても、組織異常を持つ個体は認められず、成長期モデル試験においても本発明の組成物による副作用の低さが確認された。