特許第6899207号(P6899207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6899207-ボイラシステム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899207
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   F22B35/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-199911(P2016-199911)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-63063(P2018-63063A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】大日 正美
(72)【発明者】
【氏名】矢野 清隆
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−119920(JP,A)
【文献】 実開昭61−023001(JP,U)
【文献】 特開昭57−049004(JP,A)
【文献】 特開昭62−037605(JP,A)
【文献】 特開平08−296801(JP,A)
【文献】 特開昭59−020506(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02589763(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02698507(EP,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103925021(CN,A)
【文献】 独国特許発明第00821790(DE,C2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/00
F22B 37/42
F22G 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を導入する導入部、当該導入部から導入された蒸気を過熱する過熱部、及び当該過熱部で過熱された蒸気を排出する排出部を有する過熱器と、
前記過熱器の排出部から排出された蒸気を用いて回転するタービンと、
前記タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、
前記過熱器の前記過熱部から蒸気を抽出して、当該抽出した蒸気を前記再熱器へ供給する第1の蒸気供給部と、を備え、
前記第1の蒸気供給部は、
蒸気を減圧する減圧部と、
ボイラ通常運転時には、制御部からの制御信号によって前記再熱器への蒸気の流通の許可と遮断とを選択することができ、電源喪失時に前記再熱器への蒸気の流通を許容する切替部と、を有する、ボイラシステム。
【請求項2】
前記第1の蒸気供給部から前記再熱器へ供給される蒸気の温度は、前記ボイラ運転時において前記タービンから前記再熱器へ排出される蒸気の温度に対応しており、
前記第1の蒸気供給部から前記再熱器へ供給される蒸気の温度は、前記減圧部の減圧によって調整される、請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項3】
前記第1の蒸気供給部から前記再熱器へ供給される蒸気の温度は、前記ボイラ運転時において前記タービンから前記再熱器へ排出される蒸気の温度に対応しており、
前記第1の蒸気供給部から前記再熱器へ供給される蒸気の温度調整は、前記第1の蒸気供給部が蒸気を抽出する位置を調整することによってなされる、請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項4】
前記過熱器の排出部から蒸気を抽出して、当該抽出した蒸気を前記再熱器へ供給する第2の蒸気供給部と、
前記ボイラシステムを制御する制御部と、を更に備え、
制御部は、ボイラ起動時に、前記再熱器へ蒸気を供給する供給部として、前記第1の蒸気供給部及び前記第2の蒸気供給部の何れかを選択する、請求項1〜3の何れか一項に記載のボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボイラシステムとして、ボイラ火炉の蒸発管からの蒸気を過熱器によって過熱し、当該過熱した蒸気をタービンに供給するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。タービンから排出された蒸気は、再熱器へ供給され、当該再熱器にて再度過熱された蒸気は、後段側のタービンへ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−185524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ボイラシステムは、電源喪失時にはシステムが停止し、タービンも停止していた。このような場合、タービンから再熱器へ向かう蒸気の流れが停止してしまうことで、再熱器での空焚き運転や、温度上昇が発生する可能性があった。そのため、再熱器を構成するための材料として、耐熱性のある材料を選択する必要等があった。従って、電源喪失時においても、再熱器が過度に高温にならないように適切に保護することが要請されていた。
【0005】
本発明は、電源喪失時において再熱器を適切に保護することができるボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るボイラシステムは、蒸気を導入する導入部、当該導入部から導入された蒸気を過熱する過熱部、及び当該過熱部で過熱された蒸気を排出する排出部を有する過熱器と、過熱器の排出部から排出された蒸気を用いて回転するタービンと、タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、過熱器の排出部より上流から蒸気を抽出して、当該抽出した蒸気を再熱器へ供給する第1の蒸気供給部と、を備え、第1の蒸気供給部は、蒸気を減圧する減圧部と、ボイラ運転時に再熱器への蒸気を遮断し、電源喪失時に再熱器への蒸気の流通を許容する切替部と、を有する。
【0007】
本発明に係るボイラシステムは、過熱器の排出部より上流から蒸気を抽出して、当該抽出した蒸気を再熱器へ供給する第1の蒸気供給部を備えている。第1の蒸気供給部は、ボイラ運転時に再熱器への蒸気を遮断し、電源喪失時に再熱器への蒸気の流通を許容する切替部を有する。このような構成によれば、電源喪失によってシステム全体が停止してタービンが停止した場合であっても、切替部の切替により、蒸気が第1の蒸気供給部を流通して、再熱器へ供給される。このとき、第1の蒸気供給部は、過熱器の排出部より上流から蒸気を抽出するため、完全に過熱部での過熱が終わった状態の蒸気よりも低い温度の蒸気を再熱器へ供給することができる。また、第1の蒸気供給部は、蒸気を減圧する減圧部を有しているため、減圧部によって減圧されると共に、当該減圧に伴って温度が低下した蒸気を再熱器へ供給することができる。すなわち、電源喪失時においても、第1の蒸気供給部は、蒸気を供給することで再熱器の空焚きを防止すると共に、蒸気の圧力及び温度を低下させることで、高温高圧の蒸気が再熱器へ供給されて温度上昇が発生することを防止する。以上により、電源喪失時において再熱器を適切に保護することができる。
【0008】
本発明に係るボイラシステムにおいて、第1の蒸気供給部から再熱器へ供給される蒸気の温度は、ボイラ運転時においてタービンから再熱器へ排出される蒸気の温度に対応しており、第1の蒸気供給部から再熱器へ供給される蒸気の温度は、減圧部の減圧によって調整されてよい。このような構成により、電源喪失時に再熱器へ供給される蒸気の温度が、ボイラ運転時において再熱器に供給される蒸気の温度と対応したものとすることができる。これにより、電源喪失時にあっても、通常時と略同じ温度条件に係る蒸気を再熱器へ供給できるため、再熱器を適切に保護することができる。また、当該温度調整が減圧部の減圧によってなされるため、温度調整のための部材を別途設ける必要が無くなる。
【0009】
本発明に係るボイラシステムにおいて、第1の蒸気供給部から再熱器へ供給される蒸気の温度は、ボイラ運転時においてタービンから再熱器へ排出される蒸気の温度に対応しており、第1の蒸気供給部から再熱器へ供給される蒸気の温度調整は、第1の蒸気供給部が蒸気を抽出する位置を調整することによってなされてよい。このような構成により、電源喪失時に再熱器へ供給される蒸気の温度が、ボイラ運転時において再熱器に供給される蒸気の温度と対応したものとすることができる。これにより、電源喪失時にあっても、通常時と略同じ温度条件に係る蒸気を再熱器へ供給できるため、再熱器を適切に保護することができる。また、当該温度調整が蒸気の抽出位置を調整することによってなされるため、蒸気の温度調整のために減圧部で別途調整を行う必要がなくなる。
【0010】
本発明に係るボイラシステムにおいて、過熱器の排出部から蒸気を抽出して、当該抽出した蒸気を再熱器へ供給する第2の蒸気供給部と、ボイラシステムを制御する制御部と、を更に備え、制御部は、ボイラ起動時に、再熱器へ蒸気を供給する供給部として、第1の蒸気供給部及び第2の蒸気供給部の何れかを選択してよい。このような構成により、ボイラ起動時に、第1の蒸気供給部及び第2の蒸気供給部のうち、より条件が適切な方の蒸気を再熱器へ供給することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源喪失時において再熱器を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るボイラシステムのブロック構成図である。
図2】変形例に係るボイラシステムのブロック構成図である。
図3】変形例に係るボイラシステムのブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
図1を参照して、本実施形態に係るボイラシステム100の構成について説明する。ボイラシステム100は、外部循環ループを備えた循環流動層ボイラである。このうち、図1では、ボイラシステム100のうち、発電のためにタービン50へ蒸気を供給する部分の構成を図示している。図1に示すように、ボイラシステム100は、蒸発管1と、気水分離器2と、過熱器3と、タービン50,51と、再熱器4と、第1の蒸気供給部6と、第2の蒸気供給部7と、制御部10と、を備えている。
【0015】
蒸発管1は、ボイラ火炉の熱を用いて水を蒸発させて蒸気を生成する。蒸発管1は、上流側から供給される水を蒸発させた後、気水混合物の状態である当該蒸気を気水分離器2へ供給する。気水分離器2は、蒸発管1からの気水混合物から蒸気を分離する。気水分離器2で分離された蒸気は、下流側の過熱器3へ流れる。
【0016】
過熱器3は、気水分離器2からの蒸気を過熱するものであり、飽和蒸気を更に熱することにより、過熱蒸気としてタービン50へ供給するものである。過熱器3は、蒸気を導入する導入部11と、当該導入部11から導入された蒸気を過熱する過熱部12と、当該過熱部12で過熱された蒸気を排出する排出部13と、を有する。
【0017】
導入部11は、気水分離器2と過熱部12とを接続するラインによって構成される。過熱部12は、熱交換部14,16,18と、調整部15,17と、を備えている。熱交換部14,16,18は、熱交換によって蒸気を過熱するものである。最上段の熱交換部14では、蒸気を約300℃に過熱する。最下段の熱交換部18では、蒸気を約500℃に過熱する。調整部15,17は、蒸気に水を供給することで過熱された蒸気を目的の温度に調整するものである。調整部15は、熱交換部14と熱交換部16との間に配置されている。調整部17は、熱交換部16と熱交換部18との間に配置される。ただし、過熱部12の構成はこのような構成に限定されない。排出部13は、熱交換部18とタービン50とを接続するラインによって構成されている。
【0018】
タービン50は、過熱器3の排出部13から排出された蒸気を供給されることによって回転し、電気を発電するものである。また、タービン51は、タービン50の後段に設けられ、再熱器4から供給された蒸気を供給されることによって回転し、電気を発電するものである。従って、タービン50から排出された蒸気の圧力と温度は、過熱器3の排出部13における蒸気よりも低い。特に限定されるものではないが、タービン50へ供給される蒸気の圧力は、13MPa程度であり、温度は510℃程度となる。タービン50から排出された蒸気の圧力は、4MPaであり、温度は360℃程度となる。
【0019】
再熱器4は、タービン50から排出された蒸気を再過熱するものである。タービン50と再熱器4とは、タービン50から排出された蒸気を再熱器4へ供給するためのライン21で接続されている。また、再熱器4とタービン51とは、再熱器4で再過熱された蒸気をタービン51へ供給するためのライン22で接続されている。よって、ライン21を介して再熱器4へ供給された蒸気は、当該再熱器4で熱交換によって再過熱された後、ライン22を介して後段側のタービン51へ供給される。
【0020】
第2の蒸気供給部7は、過熱器3の排出部13から蒸気を抽出して、当該抽出した蒸気を再熱器4へ供給するものである。第2の蒸気供給部7は、過熱器3の排出部13とライン21とを直接接続することで、タービン50をバイパスするライン23と、ライン23上に設けられる弁24と、によって構成される。弁24は、制御部10の制御信号に基づいて開閉する開閉弁である。また、弁24は、通過する蒸気に対して水を注水する機構を備えており、当該蒸気を冷却(及び減圧)することができる。第2の蒸気供給部7は、ボイラシステム100の起動時に、再熱器4の空焚きを防ぐために用いられる。
【0021】
第1の蒸気供給部6は、過熱器3の排出部13より上流から蒸気を抽出して、当該抽出した蒸気を再熱器4へ供給するものである。第1の蒸気供給部6は、電源喪失時に再熱器4の空焚きを防止するために、当該再熱器4へ蒸気を供給するためのものである。ここで、「電源喪失」とは、ブラックアウトとも称し、外部電源(電力会社からの電源)が停電し、且つ、自己発電も停止して、完全に電力供給が途絶えた状態である。例えば、外部電源が停電しても、自己発電が機能していればシステムは停止しないが、電源喪失時には、完全に電力供給が途絶えることでシステムが停止する。第1の蒸気供給部6は、過熱部12とライン21とを直接接続することで、タービン50をバイパスするライン26と、ライン26上に設けられる弁27と、によって構成される。本実施形態では、ライン26は、熱交換部14と調整部15との間から蒸気を抽出している。ただし、ライン26が過熱部12におけるどの位置から蒸気を抽出するかは特に限定されるものではない。
【0022】
弁27は、ボイラ運転時に再熱器4への蒸気を遮断し、電源喪失時に第1の蒸気供給部6への蒸気の流通を許容する切替部としての機能を有する。具体的に、弁27は、通電時には「閉」の状態を維持し続け、電源喪失によって通電が遮断されたときに「開」となるように設定されている。なお、第2の蒸気供給部7の弁24は、当該設定とはなっておらず、電源喪失によって通電が遮断されたときは、「閉」となる。ただし、弁27は、電源喪失前の状態において、制御部10から積極的に制御信号が送信された場合は、当該制御信号に基づいて開閉状態を切り替えることができる。このような場合でも、電源喪失時は、弁27は「開」の状態で動作不能となる。
【0023】
本実施形態において、弁27は、蒸気を減圧する減圧部としての機能としての機能を有する。すなわち、過熱部12を流れる蒸気はタービン50を回転させるための蒸気であるため高圧である一方、再熱器4に供給される蒸気はタービン50から排出された低圧の蒸気である。よって、弁27は、電源喪失時に再熱器4へ供給する蒸気の圧力を、タービン50から排出された蒸気の圧力に対応させて低下させる。このような減圧部としての機能を発揮するために、弁27として減圧弁を採用してよい。このように、弁27は、減圧部としての機能と、切替部としての機能が一体化された構成を有している。ただし、弁27から減圧部としての機能を切り離すことで、減圧部と切替部とを別体の部材で構成してもよい。例えば、減圧部として、弁27とは別体の構造として、ライン26上に設けられたオリフィスや絞り部等を採用してもよい。なお、これらの減圧部は、絞り量などを調整することによって、減圧量を調整可能であってもよい。または、減圧部の減圧量は一定であり、製造時や設計時に、適切な減圧量となるように予め調整してもよい。
【0024】
また、第1の蒸気供給部6から再熱器4へ供給される蒸気の温度は、ボイラ運転時においてタービン50から再熱器4へ排出される蒸気の温度に対応してよい。この場合、第1の蒸気供給部6から再熱器4へ供給される蒸気の温度は、減圧部として機能する弁27の減圧によって調整される。すなわち、高温高圧の蒸気は、減圧されることにより同時に温度も低下する。従って、弁27による減圧量を予め調整しておくことによって、弁27で減圧された蒸気の温度が、タービン50から排出される蒸気の温度に対応する温度となるように設定してよい。なお、「タービン50から排出される蒸気の温度に対応する温度」とは、タービン50から排出される蒸気の温度と実質的に同じ温度条件と扱うことが可能な範囲の温度である。なお、「第1の蒸気供給部6から再熱器4へ供給される蒸気の温度が、ボイラ運転時においてタービン50から再熱器4へ排出される蒸気の温度に対応する」とは、過熱器3の排出部13より上流側の位置から蒸気を抽出すれば無条件にタービン50から排出される蒸気の対応するわけではない。当該タービン50から排出される蒸気に対応する温度となる位置を排出部13より上流の位置から選び、当該位置から蒸気を抜き出すことで、温度を対応させている。
【0025】
制御部10は、ボイラシステム100全体の制御を行うことができる装置である。制御部10は、ECU、メモリ等によって構成されている。制御部10は、第2の蒸気供給部7の弁24に対して制御信号を送信することによって、当該弁24の開閉を切り替えることができる。また、制御部10は、第1の蒸気供給部6の弁27に対して制御信号を送信することによって当該弁27の開閉を切り替えることができる。ここで、ボイラ起動時は、タービン50を回転させることができる程度に蒸気が高圧になっていない場合がある。当該場合に再熱器4の空焚きを防止するため、制御部10は、ボイラ起動時に、蒸気供給部6,7を制御することで、タービン50をバイパスして再熱器4へ蒸気を供給することができる。制御部10は、このような供給部として、第1の蒸気供給部6及び第2の蒸気供給部7の何れかを選択することができる。すなわち、制御部10は、第1の蒸気供給部6及び第2の蒸気供給部7のうち、選択した方を「開」とし、選択しなかった方を「閉」とする。
【0026】
次に、ボイラシステム100の動作について説明する。
【0027】
まず、ボイラシステム100の起動時については、蒸気がタービン50を回転させるまでの圧力に達していない。従って、制御部10は、第1の蒸気供給部6及び第2の蒸気供給部7の何れかから、タービン50をバイパスして蒸気を再熱器4へ供給する。制御部10は、起動時における蒸気の温度条件や圧力条件を判定し、第1の蒸気供給部6と第2の蒸気供給部7のどちらから蒸気を抽出するかを判定する。その後、制御部10は、選択した方の供給部の弁を開くことで蒸気を抽出し、再熱器4へ当該蒸気を供給する。このとき、タービン50へ向かうラインの弁(不図示)を閉じる。ただし、制御部10は、上述のような選択を行うことなく、起動時においては、第2の蒸気供給部7を用いて再熱器4への蒸気の供給を行うように設定してもよい。
【0028】
ボイラシステム100の蒸気の温度及び圧力が安定すると、通常運転へ移行する。このとき、制御部10は、各蒸気供給部6,7の弁24,27を閉じて(閉じた状態を維持する)、タービン50へ向かうラインの弁を開く。これにより、過熱器3で過熱された蒸気がタービン50へ供給される。また、タービン50から排出された蒸気が再熱器4へ供給され、再過熱された蒸気が後段側のタービン51へ供給される。
【0029】
ここで、電源喪失によってボイラシステム100のシステム全体が停止した場合について説明する。このとき、第1の蒸気供給部6の弁27への通電が停止することにより、弁27が開き、過熱部12から第1の蒸気供給部6への蒸気の流通が許容された状態となる。また、タービン50へ向かうラインの弁を電源喪失に伴って自動的に閉じてよい。従って、過熱部12で完全に過熱される前の蒸気が、再熱器4へ供給される。更に、蒸気は弁27にて減圧され、且つ当該減圧に伴って温度が低下した状態で、再熱器4へ供給される。これにより、電源喪失時の再熱器4の空焚きや設計以上の温度上昇が防止される。
【0030】
次に、本実施形態に係るボイラシステム100の作用・効果について説明する。
【0031】
本実施形態に係るボイラシステム100は、過熱器3の排出部13より上流から蒸気を抽出して、当該抽出した蒸気を再熱器4へ供給する第1の蒸気供給部6を備えている。第1の蒸気供給部6は、ボイラ運転時に再熱器4への蒸気を遮断し、電源喪失時に第1の蒸気供給部6への蒸気の流通を許容する弁(切替部)27を有する。このような構成によれば、電源喪失によってシステム全体が停止してタービン50が停止した場合であっても、弁27の切替により、蒸気が第1の蒸気供給部6を流通して、再熱器4へ供給される。このとき、第1の蒸気供給部6は、過熱器3の排出部13より上流から蒸気を抽出するため、完全に過熱部12での過熱が終わった状態の蒸気よりも低い温度の蒸気を再熱器4へ供給することができる。また、第1の蒸気供給部6は、蒸気を減圧する弁(減圧部)27を有しているため、弁27によって減圧されると共に、当該減圧に伴って温度が低下した蒸気を再熱器4へ供給することができる。すなわち、電源喪失時においても、第1の蒸気供給部6は、蒸気を供給することで再熱器4の空焚きを防止すると共に、蒸気の圧力及び温度を低下させることで、高温高圧の蒸気が再熱器4へ供給されて温度上昇が発生することを防止する。以上により、電源喪失時において再熱器4を適切に保護することができる。
【0032】
また、ボイラシステム100において、第1の蒸気供給部6から再熱器4へ供給される蒸気の温度は、ボイラ運転時においてタービン50から再熱器4へ排出される蒸気の温度に対応している。第1の蒸気供給部6から再熱器4へ供給される蒸気の温度は、弁27の減圧によって調整されてよい。このような構成により、電源喪失時に再熱器4へ供給される蒸気の温度が、ボイラ運転時において再熱器4に供給される蒸気の温度と対応したものとすることができる。これにより、電源喪失時にあっても、通常時と略同じ温度条件に係る蒸気を再熱器4へ供給できるため、再熱器4を適切に保護することができる。また、当該温度調整が弁27の減圧によってなされるため、温度調整のための部材を別途設ける必要が無くなる。
【0033】
ボイラシステム100において、過熱器3の排出部13から蒸気を抽出して、当該抽出した蒸気を再熱器4へ供給する第2の蒸気供給部7と、ボイラシステム100を制御する制御部10と、を更に備えている。制御部10は、ボイラ起動時に、再熱器4へ蒸気を供給する供給部として、第1の蒸気供給部6及び第2の蒸気供給部7の何れかを選択してよい。このような構成により、ボイラ起動時に、第1の蒸気供給部6及び第2の蒸気供給部7のうち、より条件が適切な方の蒸気を再熱器4へ供給することができる。
【0034】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0035】
例えば、図2に示すように、第1の蒸気供給部6が、蒸気を抽出する位置を調整可能であってもよい。このような構成により、第1の蒸気供給部6から再熱器4へ供給される蒸気の温度調整が、第1の蒸気供給部6が蒸気を抽出する位置を調整することによって可能となる。また、当該調整により、第1の蒸気供給部6から再熱器へ供給される蒸気の温度が、ボイラ運転時においてタービン50から再熱器4へ排出される蒸気の温度に対応させることができる。
【0036】
具体的には、第1の蒸気供給部6は、複数(ここでは2本)の蒸気抽出ライン26A,26Bを有している。蒸気抽出ライン26Aは、上述の図1の実施形態と同じ位置から蒸気を抽出可能であり、蒸気抽出ライン26Bは、熱交換部16と調整部17との間から蒸気を抽出できる。このような構成を有する場合、例えば、ボイラシステム100の運転前、又は運転中に、制御部10が上記蒸気抽出ライン26A,26Bの各位置における蒸気の温度を検出する。そして、制御部10は、各位置における温度条件及びタービン50から排出される蒸気の温度に基づいて、電源喪失時にどちらの位置から蒸気を抽出するかを予め選択しておく。蒸気抽出ライン26A,26Bは、それぞれ弁31A,31Bを有している。制御部10は、選択された方の蒸気抽出ラインの弁(弁31A,31Bの何れか一方の弁)を開いておくと共に、選択されなかった方の蒸気抽出ラインの弁(弁31A,31Bの何れか他方の弁)を閉じておくことで、再熱器4へタービン50から排出される蒸気の温度に対応した温度の蒸気を供給するための調整が完了する。あるいは、電源喪失時に予備バッテリー等で制御部10を動作させ、蒸気抽出ライン26A,26Bの位置に係る温度条件を検出し、タービン50から排出される蒸気の温度に近い方の蒸気抽出ラインの弁を開くように調整してもよい。なお、制御部10が蒸気抽出ライン26A,26Bの位置における温度条件を判定する際、弁27での減圧の影響による温度低下も考慮してよい。
【0037】
以上のようなボイラシステム100において、第1の蒸気供給部6から再熱器4へ供給される蒸気の温度は、ボイラ運転時においてタービン50から再熱器4へ排出される蒸気の温度に対応しており、第1の蒸気供給部6から再熱器4へ供給される蒸気の温度調整は、第1の蒸気供給部6が蒸気を抽出する位置を調整することによってなされてよい。このような構成により、電源喪失時に再熱器4へ供給される蒸気の温度が、ボイラ運転時において再熱器4に供給される蒸気の温度と対応したものとすることができる。これにより、電源喪失時にあっても、通常時と略同じ温度条件に係る蒸気を再熱器4へ供給できるため、再熱器4を適切に保護することができる。また、当該温度調整が蒸気の抽出位置を調整することによってなされるため、蒸気の温度調整のために減圧部で別途調整を行う必要がなくなる。
【0038】
また、図3に示すように、第2の蒸気供給部7を省略してもよい。この場合、ボイラ起動時は、第1の蒸気供給部6にて蒸気を再熱器4に供給してもよい。
【符号の説明】
【0039】
3…過熱器、4…再熱器、6…第1の蒸気供給部、7…第2の蒸気供給部、10…制御部、11…導入部、12…過熱部、13…排出部、27…弁(切替部、減圧部)、100…ボイラシステム。
図1
図2
図3